MONET Technologies株式会社 MaaS事業部 プロダクト開発室 室長 川崎俊介さん

「便利だけど、つながらない」デマンド交通の課題

 通院や買い物、通学の送り迎え。日常の移動を支えているデマンド交通が、いま各地で広がりを見せています。一方で、「地域が違えば、アプリも使い方も違う」といった声も多く、せっかくの便利な仕組みがうまく活用されていない場面も見られます。

 このサービスの壁を取り払うため、MONET Technologies株式会社が取り組んでいるのが「デマンドバスシステム標準化プロジェクト」です。

 デマンド交通の予約や配車を支えるシステムは、いまやさまざまな民間企業が提供しています。それぞれに工夫があり、地域の実情に合わせて進化してきたのが特徴です。

 プロジェクトを担当するMONET Technologies株式会社 MaaS事業部の川崎俊介さんは「どのアプリも、それぞれの地域に合った“ちょうどいい”形で運用されています。でもそのぶん、他の地域のサービスとはつながりにくいという課題が残ってしまっているんです」と説明します。

 例えば、「ある自治体で使っていたアプリが、引っ越し先では使えない」、「隣の地域に行くだけなのに、また別のアプリを入れて、使い方を覚え直さなければならない」といった不便や、「地域のMaaSアプリにデマンド交通をつなげたいけど、それぞれ仕様が違って大変」といった連携を促進できない状況が、各地で生まれています。

「標準化」は一律化ではなく、“つながる”ための工夫

 今回のプロジェクトでは、MONETが提供する「デマンド交通キット」をベースに、共通インターフェースとなるAPIを整備。他社のシステムと連携できる仕組みをつくり、実際にその有用性を検証していきます。

 「標準化というと、“機能が同じになる”という印象を持たれることもありますが、私たちが目指しているのは“連携しやすくすること”です。良いものを残しながら、他の仕組みとも自然につながっていく。そんな“柔らかい標準化”を進めたいと思っています」と川崎さん。

 アプリの違いを超えて、ユーザーがスムーズに使えるようになれば、移動のしやすさも大きく向上します。さらに、他サービスとの連携によって新たな移動のカタチやサービスが生まれる可能性もありますし、相互連携が実現すれば、自治体や運行事業者の業務負担の軽減やコスト削減にもつながるかもしれません。

スマホアプリのイメージ

全国53自治体との取り組みから生まれた視点

 MONET Technologiesは、これまで全国53の自治体でオンデマンド交通の導入支援を行ってきました。定時定路線のバスから、地域全体をカバーするデマンド型の運行に切り替えた事例もあります。

 「地域の足を維持するには、システムだけではなく、運用の知恵も必要です。私たちは自治体や交通事業者のみなさんと一緒に、現場に合った仕組みを考えてきました。今回の標準化でも、技術的な話にとどまらず、現場で本当に使えるかどうかを大事にしたいと思っています」と川崎さんは言います。

データ活用や地域連携にも広がる可能性

 今回整備する標準APIは、将来的に他の交通サービスや地域の活動とつながっていくための入り口にもなります。

 「観光や医療、買い物などと連携できれば、“移動の目的”まで含めて移動の支援が可能となります。デマンド交通が、ただの移動手段ではなく、地域で暮らす人の生活を支える基盤になっていくはずです」

 また、標準化によって交通データの共通化が進めば、地域交通の計画や分析にも活かすことができます。もちろん、個人情報やプライバシーに配慮したうえでの活用が前提です。

 「例えば、どこで移動に困っている人が多いのかを可視化できれば、交通の改善にもつながります。行政や住民と共有できる共通のデータが生まれるという点でも、標準化の意義は大きいと思います」

「住みたい場所に住み続けられる」社会を支えるために

 今回のプロジェクトにかける思いについて、川崎さんはこう話しています。

 「私たちがやろうとしているのは、“住みたい場所に、住み続けられる環境づくり”です。移動ができないから家を離れる、通えないから仕事をあきらめる、そんなことが少しでも減るようにしたい。標準化はそのための一歩だと思っています」

 標準APIが整備されれば、デマンド交通だけでなく、移動販売や医療の予約など、さまざまな生活関連サービスとの連携が可能になります。交通と他のサービスがシームレスにつながることで、地域での暮らしが今よりもっと便利で快適になるかもしれません。

Updated:

撮影: 森裕一朗(Yuichiro Mori)

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