フューチャーアーキテクト株式会社 Technology Innovation Group コンサルタント 相羽侑果さん、同 マネージャー 太田章弘さん、株式会社みちのりホールディングス グループディレクター 浅井康太さん

バスが走り続けるには、属人的な体制の見直しが必須

 今、多くのバス事業者が深刻な人手不足に直面しています。特にドライバーや運行管理の人材確保が難しくなる中で、業務の多くは「担当者の経験や勘」に依存した属人的なやり方にとどまっており、効率化が進まないのが現状です。

 さらに、そうした非効率な体制を維持するために時間もコストもかかり、採算性まで悪化。新たな投資ができず、業務改善も進まない、という悪循環に陥っているケースも少なくありません。

 日々の運行を支えるために多くの工夫や努力が払われている一方で、業界全体の仕組みそのものを見直さなければ、この流れは止められません。 そうした危機感から始まったのが、「バス業務標準化プロジェクト」です。

 プロジェクトを推進するのは、フューチャーアーキテクト株式会社と株式会社みちのりホールディングス。全国のバス事業者が直面する共通課題に挑みます。

業務全体を調査し、バス事業の課題を洗い出す

 このプロジェクトでは、まず全国のさまざまなバス事業者が現在どのような業務やシステムで運用しているのかを徹底的に調査します。そのうえで、「今後どのような形が望ましいか」という視点から業務の流れを再設計し、誰もが使いやすい「標準業務モデル」としてまとめていきます。

 「システムだけを更新しても、肝心の業務プロセスが旧来のままでは根本的な改善にはなりません。属人化やベンダー依存など、業界共通の課題を“構造ごと見直す”というのが今回の取り組みです」と語るのは、フューチャーアーキテクトの太田章弘さん。

 標準モデルの策定にあたっては、バス事業者の業界団体やシステムベンダーと連携し、勉強会を通じた意見交換も実施。現場感覚を反映しながら、現実的かつ持続可能な業務のあり方を目指しています。

現場・経営・ITをつなぐ三位一体の設計思想

 プロジェクトを進めるうえで強みとなるのが、両社の知見です。みちのりホールディングスは、複数のバス会社を傘下に持つ事業者として、現場レベルの実務と、業界ネットワークの双方に精通しています。一方、フューチャーアーキテクトは、業務の可視化と構造設計、IT・経営への橋渡しを一貫して行うコンサルティングノウハウを持っています。

 「我々は、現場の作業をどうシステムや機能に落とし込むか、その先にある経営の意思決定にどうつなげるかという、“三位一体の設計思想”を重視しています。見えない非効率を整理し、使える仕組みへと転換することで、将来への投資余力を生み出すことができます」(太田さん)

国・自治体・ベンダーにも広がる効果

 この標準業務モデルが実現すれば、恩恵を受けるのはバス事業者だけではありません。例えば、システム投資の根拠が明確になれば、補助金の妥当性を検証しやすくなり、自治体にとっても予算配分の判断材料になります。ベンダーにとっても、仕様のばらつきが減ることで開発や導入の負荷が軽減し、参入障壁の低下による新たな競争も期待されます。

 さらに、業務を通じて発生するデータが共通の形式で整理されれば、事業者横断での分析やデータ利活用も現実味を帯びてきます。

規格化だけではなく、現場で“本当に使える”業務モデルに

 本プロジェクトでは、2025年度中に標準業務モデルを策定し、2026年度以降にはその試験導入やプロダクト開発を進める計画です。将来的には、標準モデルに基づく運行管理・労務管理・営業支援などのシステム展開、データを活用した交通政策へのフィードバックも視野に入れています。

 フューチャーアーキテクトの相羽侑果さんは「単に“標準を決める”のではなく、実際に使えて、現場から積極的に活用されるような業務のかたちをつくることが私たちのゴールです。大小を問わず、すべてのバス事業者にとって価値のあるモデルにしたいと思います」と語ります。

現場の知恵と声が、“共通解”を育てる

 「今のままでは立ち行かない」と感じているのは、特定の地域や企業だけではありません。すべてのバス事業者にとって、業務の効率化やシステムの最適化は“待ったなし”の課題です。

 みちのりホールディングス グループディレクターの浅井康太さんは、「すべてのバス事業者が等しく直面する問題だからこそ、業界全体で“共通解”を育てる必要があります。今回のプロジェクトでは、業界の知恵と経験が集まりやすい土壌をつくっていきたい。勉強会などを通じて、現場からのリアルな声をお聞かせいただければと思います」と呼びかけます。

 業務が標準化され、誰もが同じ前提で業務設計やシステム導入を考えられるようになれば、バス業界全体の変化スピードも加速します。実証の成果は、単なる業務効率化を超え、持続可能な地域交通の基盤づくりにつながっていくはずです。

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写真: 高橋智(Takahashi Satoshi)

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