新技術等を活用した駅ホームにおける視覚障害者の安全対策検討会(第1回) 令和2年10月9日(金)15:00〜17:00 中央合同庁舎2 号館地下2 階 講堂 議 事 次 第 1.開 会 2.出席者紹介 3.議 事 (1) 検討会の趣旨、検討事項等について (2) 講 演 「白杖歩行中の駅ホームからの転落事例について」 成蹊大学 大倉元宏 名誉教授 (3) 意見交換 4.閉 会 新技術等を活用した駅ホームにおける視覚障害者の安全対策検討会 【障害者団体・支援団体】 日本視覚障害者団体連合 情報部長 三宅 隆 日本弱視者ネットワーク(筑波大学附属視覚特別支援学校 教諭) 宇野 和博 東京都盲人福祉協会 常任理事 市原 寛一 埼玉県網膜色素変性症協会 会長 田村彰之助 日本歩行訓練士会 事務局長 堀内 恭子 日本盲導犬協会 顧問 吉川 明 【学識経験者】 成蹊大学 名誉教授 大倉 元宏 慶應義塾大学 経済学部 教授 中野 泰志 鉄道総合技術研究所 人間科学研究部 主任研究員 大野 央人 【鉄道事業者】 JR東日本 執行役員 安全企画部長 松橋 賢一 JR西日本 鉄道本部 駅業務部長 佐伯 祥一 (代理出席:鉄道本部 駅業務部 担当部長 高本 浩明) 東京メトロ 経営企画本部 企業価値創造部長 川上 幸一 小田急電鉄 常務取締役 交通サービス事業本部長 五十嵐 秀 (代理出席:安全・技術部長 野中 俊昭) 近畿日本鉄道 取締役 常務執行役員 湖東 幸弘 阪急阪神ホールディングス グループ開発室 部長 山本 隆弘 【国土交通省】 大臣官房 技術審議官(鉄道) 江口 秀二 総合政策局 安心生活政策課長 真鍋 英樹 鉄道局 総務課 鉄道サービス政策室長 森 龍平 鉄道局 都市鉄道政策課長 金指 和彦 鉄道局 技術企画課長 岸谷 克己 鉄道局 安全監理官 森 信哉 (事務局 鉄道局技術企画課) 資料1 新技術等を活用した駅ホームにおける視覚障害者の安全対策検討会 1. 設置趣旨 令和2 年1 月、JR 日暮里駅において視覚障害者がホームから転落する事故が発生し、同年7 月にもJR 阿佐ヶ谷駅において同様の事故が発生するなど、視覚障害者が犠牲となった痛ましい事故が続いている。 このような転落事故を防ぐためにはホームドアの整備が有効であるが、整備に多くの時間や費用を要することや、構造等の要因で整備が困難なホームもあることから、ホームドアに依らない転落防止対策が喫緊の課題となっている。 このため、ホームドアの設置を引き続き推進するとともに、ホームドアが整備されていない駅ホームにおいて、ITやセンシング技術等を積極的に活用し、駅係員のみならず鉄道利用者による協力も視野に入れて、視覚障害者の方々に駅ホームを安全に利用いただくための対策についての検討を行うことを目的として「新技術等を活用した駅ホームにおける視覚障害者の安全対策検討会」を設置する。 2. 主な検討内容 ・ 視覚障害者によるホーム転落の実態把握と原因分析 ・ 視覚障害者がホーム端に接近した場合に、センサーやカメラでこれを検知し、危険であることを知らせる方策 ・ 駅係員やスマホの音声等により視覚障害者を適切に案内・誘導するための方策(誘導ブロックの適切な設置方法を含む) など 3. 検討会メンバー 視覚障害者団体・支援団体、学識経験者、鉄道事業者、国土交通省で構成 4. スケジュール 第1回検討会 令和2年10月9日(その後、月1回程度開催し、令和2年度中に検討結果をとりまとめる予定) 当面のスケジュール(案) 令和2 年10 月9 日 第1 回検討会 ・検討会の趣旨、検討事項等について ・視覚障害者の駅ホームからの転落事例について ・今後の進め方について など 令和2 年10〜12 月 転落防止対策に関する取り組みと課題について議論 ・新しい転落防止技術等に関するヒアリング IT やセンシング技術を活用したホーム転落防止技術 アプリを活用した駅係員や一般旅客による支援 ・誘導ブロックの設置方法に関する現状と課題の整理 ・その他 令和3 年1〜3 月 とりまとめに向けた議論 令和2年度内 とりまとめ 資料2 駅ホームからの転落防止対策等について ※図につき、テキスト版では割愛 別紙1 【概要】 ・電車停車時以外の状態において、人がホーム端に接近すると、音声で注意喚起を行うとともに、駅務室へ通知するシステムを開発(京急蒲田駅で実証実験中) 【システムの具体的な仕組み】 @ホームのカメラの画像を、AIで解析することにより、ホーム端に接近する人を認識 A自動音声による注意喚起とともに、駅務室の駅係員に対しPCとパトライトにより通知 【システムの特徴】 ・既設のカメラや放送機器(スピーカー等)を活用することで、システムの導入コストの低減を図ることが可能。 別紙2 【概要】 ・視覚障害者がホーム端に近づくと、ホーム端に設置されたICタグからの信号を足首や白杖の先端に取り付けた受信機が感知し、手首や白杖の握りに付けたバイブレーターの振動によってホーム端への接近を注意喚起するシステムを開発中(今後、鉄道駅での実証実験等に向けて調整中) ○オムロンソーシアルソリューションズ(株)開発中のシステム 【システムの具体的な仕組み】 @ホーム縁端に4列程度ICタグを設置し、視覚障害者は足首に受信機、手首にバイブレーターを装着 A視覚障害者の受信機がICタグに接近すると、手首のバイブレーターを振動させる。4列設置しているICタグはホーム縁端部の近くに設置されているものほど強く振動させる仕組みとなっており、これにより、視覚障害者がホーム縁端部に近づいている、遠ざかっていることを確認。 ○京セラ(株)開発中のシステム 【システムの具体的な仕組み】 @視覚障害者が持つ白杖の先端に受信機を設置し、手が触れるグリップ部にはバイブレーターを設置 A受信機と応答するICタグを、ホーム縁端部に設置、また、車両自体に組み込むことを予定 B受信機とICタグが接近すると、白杖のグリップ部が振動し、視覚障害者がホーム縁端部に接近していることを確認 C併せて、ICタグとスマートフォンとの連携も開発中。スマホからの警告メッセージにより、視覚障害者の危険を通知 ※ オムロンソーシアルソリューションズ(株)、京セラ(株)の資料をもとに作成 別紙3 駅員等による案内・支援@ 【概要】 ・改札口に設置されたカメラの画像から白杖や車椅子をAIで認識し、視覚障害者を検知の上、駅係員に自動通知することで、駅係員のお声掛けにつながるシステムを開発(近鉄大和西大寺駅で実証実験中) 【システムの具体的な仕組み】 @駅改札口付近に設置したカメラ画像を、AIを導入したシステムにより解析 Aシステムで白杖を検知した場合、通知用パソコンやパトライトにより駅事務所内にいる駅係員に通知し、視覚障害者の元に駆けつけ、お声掛けを実施 【課題】 ・白杖とそれ以外の類似物の区別の精度の向上 ※引き続き精度向上に向けた調整を実施中 ※ 近畿日本鉄道(株)、アイテック阪急阪神(株)の資料をもとに作成 別紙4 駅員等による案内・支援A 交通弱者をサポートするマッチングアプリはあるが、対象を視覚障害者に絞り、視覚障害者の使い勝手を最大限考慮したスマホアプリの開発を検討。このシステムの支援機能はリモート(音声介助)とダイレクト(直接介助)の2つがあり、「視覚障害者(要サポート者)」と「サポータ」をマッチングするシステム。 リモート(音声介助) 【システムの概要】 要サポート者からの要請に応じたサポータが、要サポート者のスマホ映像も見ながら、音声でサポートする方式。 また、鉄道事業者の駅IPインターフォンシステムと駅WiFiの接続により、要サポート者は指定のアプリで直接駅員にインターフォン通話が可能。 ※デンマーク発祥のグローバルサービス「Be My Eyes」と同等の機能 ダイレクト(直接介助) 【システムの概要】 GPSとBeacon信号で要サポート者とサポータの位置を特定し、要サポート者の要請により近くにいるサポータへクラウドから介助を要請し、直接介助する方式。 【課題】 @サポータの教育、認定制度の確立Aサポータの数を増やすための施策(インセンティブ)の確立 B介助時の障害をサポートする保険制度の確立C鉄道事業者とサポータの関係整理(駅構内立ち入り等) ※アイテック阪急阪神(株)の資料をもとに作成 別紙5 誘導ブロックによる適切な案内 【概要】 ・警告ブロックに貼付したQRコードをスマホで読み取り、専用アプリによる音声案内で誘導ブロック上を安全に誘導するシステムを開発(東京メトロ辰巳駅、新木場駅で実証実験を実施、及びJR西日本新神戸駅で実証実験中) 【システムの具体的な仕組み】 @専用アプリで目的地を設定 Aスマートフォンのカメラを近くの警告ブロックに向け、QRコードを読み取り、現在位置情報を取得 Bアプリ内の駅構内データとの照合により設定される、目的地までのルートの音声案内に従い移動 C分岐箇所等で新たにQRコードを読み取る度に流れる、現在位置を踏まえた音声案内に従い移動 【システムの特徴】 ・白杖を用い、誘導ブロックに沿って単独歩行が可能な視覚障害者を、目的地までの移動をサポート 【実績】 ・東京メトロ辰巳駅及び新木場駅で視覚障害者の協力を得て実施した実証実験において、視覚障害者から、駅の乗り換えにとても役立つ、本格的に導入して欲しいとの声が多数寄せられた 【課題】 ・システムを使用中の視覚障害者が「歩きスマホ」と誤解されないよう、システムの認知度向上 ・アプリの利用に関しては、視覚障害者の歩行スキルを確認し、認証する仕組みが必要。 ※ 東京地下鉄(株)の資料をもとに作成 別紙6 転落検知通報システム 【概要】 ・駅構内の既設カメラの映像をリアルタイムに解析し、線路への人物の転落等を検知した際に駅執務室内の駅係員へ通報するシステムを開発(小田急経堂駅・祖師ヶ谷大蔵駅で導入) 【システムの具体的な仕組み】 @既設カメラにより、駅構内の映像を撮影し、リアルタイムに画像解析(具体的には、人とそれ以外の対象物(動物、ごみなど)を判別) A線路への転落等を検知すると、駅務室の通知用端末にて音と光、映像により駅係員へ通知 B駅係員は通知用端末により、検知前後の映像を確認し、転落状況を確認 C確認後、駅係員は駅務室の非常停止ボタンにより列車停止を手配。これにより転落者の安全を確保 【システムの特徴】 ・既設のカメラを活用することで(新設カメラなし)、システムの導入コストを低減 ・当該システムにより転落検知を行うが、駅係員が目視で検知前後の映像を確認することにより、転落状況を再度確認 【実績】 ・導入(R2年4月〜)後の検知:1件(ホーム端を歩く酔客と思われる旅客) 【課題】 ・ホームからごみを投棄する人、保線作業員等の誤検知 ※小田急電鉄(株)の資料をもとに作成 資料3 P1 白杖歩行中の駅ホームからの転落事例について 成蹊大学名誉教授 地域共生社会研究所所員 理工学部客員研究員 大倉元宏 P2 視覚障がい者の駅ホームからの転落 ・2016年8月銀座線青山1丁目駅 盲導犬使用者の転落死亡事故 ・同年12月国交省「駅ホームにおける安全性向上のための検討会」中間とりまとめ ・ハード面:ホームドアと内方線付き点状ブロックの整備 ・ソフト面:駅員等による乗車・降車の誘導案内 ・転落件数等は減らず高止まり ・2019年10月:京成立石駅,JR新宿駅 ・2020年1月:JR石岡駅,JR日暮里駅 ・2020年7月:JR阿佐ヶ谷 ・石岡駅以外では転落者死亡 ・追加策の検討が必要 ・転落の誘導要因の分析 P3 転落事例の公開 ・2016年6月日本語版PC ・2018年12月日本語版スマホ ・2019年7月英語版PC/スマホ 事例DBのURL: https://omresearch.jp/fall/browse (日本語版PC/スマホ共通) P4 移動様式と転落 白杖使用(19) ・ホーム端の未確認 ・長軸9(乗車4,降車5) ・短軸10(乗車7,降車3) ・長軸9(縁端5,中央→縁端4) 盲導犬の利用(3) ・ホーム端の未確認 ・犬の反対側に転落 ・乗車時1,降車後2 ・すべて長軸 ・白杖の携行の勧め 補助具なし(2) ・ホーム端の未確認 ・サリドマイド被害者 乗車時ホームと車両間への踏み外し ・盲導犬ユーザ 降車後盲導犬機能せず,方向誤認 誘導歩行(3) ・すべて乗車時,短軸 ・ホームと車両間への踏み外し ・誘導者とのコミュニケーション不足 P5 ホームの形状と転落 白杖歩行 単式(1) 短軸×乗車1 常時接地1 相対式(2) 短軸×乗車2 シンボル1 不明1 相対式櫛形(1) 長軸×降車1 1点接地1 島式(13) 長軸×乗車4 長軸×降車3 短軸×乗車3 短軸×降車3 常時接地3 2点接地3 1点接地1 シンボル4 不明2 島式櫛形(2) 長軸×降車1 短軸×乗車1 シンボル2 P6 白杖歩行における転落まとめ ・白杖歩行(19/27) ・島式系ホーム(15/19) ・長軸(9)≒短軸(10) ・長軸:乗車(4)≒降車(5) ・短軸:乗車(7)>降車(3) ・常時接地操作(4) P7 いくつかの転落事例 P8 事例1 ・帰宅時,会社の最寄り駅からいつもの5号車に乗車 ・第1扉から2番線ホームに降車 ・いつもは降車後,エスカレータの側壁を利用して下りエスカレータ口に向かっていた ・エスカレータには「上り/下り」のアナウンスあり ・当日はエスカレータ側壁に達することができなかった ・電車がいつもより先に停車したか? ・やむなくそのまま前進して下りエスカレータに向かう ・ホーム上には乗客が多く,エスカレータのアナウンスも聞こえなかった ・乗客を掻き分けて進んでいたところ1番線に右足から転落 ・移動中,ホーム端は気になっていたが,白杖を常時接地で操作していたため,縁端部の点字ブロックは検知可能と考えていたが,検知できず ・幸運にも二足で着地 ・しかし白杖を強く握って離さなかったため着地時に右腕に強い力が加わり,上腕部骨折 ・ホーム下の退避エリアに入ろうとするも骨折の痛みで断念 ・大声で助けを呼ぶ ・乗客が列車非常停止ボタンを押し,駅員が駆けつける ・救急車で病院へ搬送 P9 事例2 ・自宅最寄り駅から最後尾に乗車。3番線に降車 ・降車後、同じホームの4番線に来る電車に乗り換え予定 ・階段の側壁に沿って移動 ・白杖は左右に振らないで、前方に出して、周期的に路面を打つように操作していた ・階段の壁が切れたところで4番線側に向かおうとしたが降車客の流れに抗することできず ・このとき,付近の乗客から介助の申し出があったが,まだ見えていると思い,断る。もう少し先に進むと降車客に途切れが出るのでは ・降車した側の内方線付き点字ブロックを伝っていると、それに近接して他の乗客の荷物があることを検知した ・それを線路側に回避して3、4歩進んだところ、左足から転落した ・線路側に避けたのは、点字ブロックの内側にはまだ出口に向かう降車客の流れがあったため。転落時,レールに肩を打ち、骨折した P10 事例3 ・帰宅時,会社の最寄り駅,特急のいつもの最後尾(8号車)に乗車 ・1番線に降車 ・白杖はシンボル的に保持,間欠的に路面を突く ・階段の側壁に沿って移動,角を曲がる ・さらに壁に沿って移動して2番線へ ・いつも準急が停車,壁に沿って行くと扉の前に。ところがその日に限り,準急がいなかった。ダイヤ乱れ ・ダイヤ乱れについては車内放送があった気もするが定かでない ・自宅の部屋のようにふるまう。白杖による車体,床の未確認 ・転落後,二人の外国人に救助される ・翌日受診,左肘亀裂骨折,両足打撲 P11 誘発要因に関する考え方 ・転落の原因はホーム端の未確認 ・そこに至るまでに転落に関連する様々な要因(誘発要因)が発生 ・その誘発要因を避けられれば転落の未然防止につながる ・8種類の誘発要因 P12 8種類の誘発要因と発生頻度 ※表につき、テキスト版では割愛 P13 避けられる要因と避けるのが困難な要因 ※表につき、テキスト版では割愛 P14 誘発要因の分析 まとめ ・「いつもと異なる事態」「白杖の不適切操作」は長軸/短軸,乗車/降車に依存せず発生した ・「無謀行為」「心理的あせり」「状況誤認」は短軸移動で乗車の際に多発。時間的な余裕のなさから心理的あせりが惹起され,安全な乗車手順のスキップに結びつく ・視覚障がい固有の「歩行特性」は長軸移動の際に発生した ・誘発要因は避けられる可能性のあるものと避けるのが困難なものに分かれる ・避けられる可能性のある要因:白杖の不適切操作,無謀行為,心理的あせり,およびいつもと異なる事態と他課題の割り込みの一部。本人の意識づけが重要:常時接地による白杖操作の励行,安全な乗車手順の遵守,余裕をもった行動のスケジューリング,いつもと異なる事態は極力避ける ・避けるのが困難な要因:状況誤認,固有の歩行特性,予想外のホームの構造,およびいつもと異なる事態と他課題の割り込みの一部。ハードウェアや周りの晴眼者の配慮必須 ・ハードウェアについてはホームドアの整備が有効,ただし短時間には無理,そこまでのつなぎの対策の検討。長軸方向移動の際にホーム縁端部を歩かなくてもよい工夫,縁端部から離れたところに移動のための手がかりを用意 ・上記の手がかりを外した場合の備えとして,縁端部の強調,例えば,点状ブロックのホーム端まで拡張敷設。CP(Color Psychology)ラインとのハイブリッド型 ・拡張敷設しても,電車到着と判断して乗車すべく短軸方向に進む場合,それを止めることは不可能。ホームドア,もしくは晴眼者の介助が必須。電車の到着判断する手がかりを増やす。乗車前には白杖で車両の存在を確認することをルーチンにすることが望まれる ・周りの晴眼者の配慮:点字ブロック付近に荷物を置かない,乗車時や混雑時における積極的声掛け P15 いくつかの対策の予備的検討 P16 白杖の常時接地法の有効性 ・実験参加者視覚障がいを有する5名(男2・女3名),25~65歳 ・全員歩行訓練済,イヤマフの装着 ・実験変数:接近角度(30,90度),白杖の操作法(常時,2点);計4条件 ・各条件で出発位置を変えて4試行,ランダムな試行順 ・仮説:「接近角度によらず常時接地操作のほうがより確実に止まれる」 P17 結果(停止位置) ・4条件において5名×4試行;計20試行 ・停止距離 ・常時接地>2点接地 ・2点接地では足がブロック上に入る割合が高い P18 ホーム中央部における触覚マーカの有効性 ・大学構内に模擬プラットホームの設置 ・高さ10p,長軸15m×短軸6.3m,1面2線の島式ホーム ・長軸方向の一端には階段の昇降口を想定した点字ブロック敷設 ・模擬売店と乗客人形を配置(5体) ・実験変数:ホームの中央部の触覚マーカ(線状ブロック)の有無 ・実験参加者視覚障がいを有する5名 ・男2・女3名,25~65歳 ・全員歩行訓練済 ・イヤマフの装着 ・歩行軌跡の計測 ・高性能のGPSアンテナ使用 ・仮説:触覚マーカを敷設した方が安全な歩行軌跡を確保できる P19 結果(中央部の触覚マーカ) ・マーカ有/無;5名×4試行,計20試行 ・触覚マーカがあると歩行軌跡安定 ・特に模擬売店回避後,顕著 P20 駅ホームからの転落防止に向けて ・第三者機関による事故の調査 ・当事者も含め関係者の協力で事故の原因を排除 ご清聴ありがとうございました。 資料4 日視連発第72号 令和2年9月23日 国土交通大臣 赤羽 一嘉 殿 社会福祉法人日本視覚障害者団体連合 会長 竹下 義樹 鉄道駅の安全対策に関する要望書 日頃より、バリアフリー社会の実現に向けて日々ご尽力いただいておりますことに心より敬意を表します。 さて、貴省の取り組みにより鉄道駅の安全対策はハード面・ソフト面の両面において向上しつつあり、安全な鉄道利用を望む全国の視覚障害者は貴省の取り組みに大きな期待を寄せています。しかしながら、今年に入っても視覚障害者の駅ホームからの転落事故は後を絶たず、多くの視覚障害者は、その期待の裏で不安を感じながら鉄道を利用しています。 ついては、貴省の鉄道駅における安全対策を更に推進するため、次の要望を行います。要望の実現を通して、視覚障害者を含む全ての鉄道利用者の安全確保に努めていただきますよう、お願い申し上げます。 1 ハード面の安全対策 ( 1 )鉄道駅のホームドア整備を更に推進し、ホームドアが必要な駅への早期設置を実現してください。 【説明】 ここ数年、ホームドア設置目安の利用客数10万人以下の駅において、視覚障害者のホーム転落事故が頻発しています。特に、視覚障害者にとってホームの構造が分かりづらい駅、多くの視覚障害者が利用する駅には、ホームドアの設置を求める声が高まっています。 また、ホームドアが設置予定となった駅での転落事故もあることから、設置計画の前倒しを求める声もあります。特に、複数の鉄道会社の車両が乗り入れを行う駅ではホームドアの設置が遅れていることから、設置計画の前倒しを求める声が高まっています。 そのため、設置基準の大幅な緩和、設置計画の前倒しを行うために、貴省のホームドア整備計画の再検討、鉄道事業者及び自治体への更なる補助等を求めます。 ( 2 )視覚障害者が安全に利用できる新型ホームドアが早期に開発されるよう、関係機関への働きかけ・支援を行ってください。 【説明】 ホームドアを早期に設置するためには、コスト等が負担とならない新型ホームドアの開発が重要と思われます。しかしながら、コスト面等を重視しすぎて、視覚障害者にとって利用しづらい仕様も見受けられます。そのため、ホームドアが早期に設置されること、視覚障害者を含む鉄道利用者が確実に利用できることを両立させた新型ホームドアの開発推進を求めます。 なお、新型ホームドアの開発においては、開発時点で視覚障害者が参加し、視覚障害者の利便性を盛り込むことも必要です。 ( 3 )視覚障害者が確実に認知できる内方線付き点状ブロックの敷設を推進してください。 【説明】 内方線付き点状ブロックを敷設している駅によっては、足の裏や白杖で認知しづらい素材、目視確認がしづらい色合いや敷設方法が見受けられます。また、同ブロックが摩耗・破損しているため、認知できないものもあります。つまり、同ブロックを敷設しているものの、機能していないものも少なくはないのが現状です。そのため、新設と整備補修の両面で、視覚障害者が確実に認知できる状態の同ブロックの敷設を求めます。 ( 4 ) ロービジョン( 弱視者) の安全対策も強化してください。 【説明】 視覚障害者の事故は、全盲の視覚障害者だけではなく、ロービジョン( 弱視者)の事故も多く発生しています。そして、ロービジョン( 弱視者)の事故については、各種設備の見やすさの不備による事例が多いです。そのため、確実にロービジョン( 弱視者)が目視で確認できる基準を定めた上で、ホーム端へのC P ラインの敷設、階段段鼻の視認性に配慮したラインの敷設、目視確認がしやすいサインの設置等の推進を求めます。 また、ホームドアが設置されていない駅には、早期にホーム端にCPラインを敷設し、ホーム上の待機列を示すサインの視認性向上も求めます。 2 ソフト面の安全対策 ( 1 )駅員や乗客からの「声かけ」「見守り」の更なる推進を行ってください。 【説明】 昨今、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、「3 密回避」や「ソーシャルディスタンスの確保」により、駅員や乗客から視覚障害者への「声かけ」「見守り」が行いづらい状況が生まれています。視覚障害者は、場合によっては「声かけ」「見守り」がないと、安全に駅ホーム等を移動することはできません。そのため、改めて視覚障害者への「声かけ」「見守り」の必要性を認識した上で、駅員や乗客からの「声かけ」「見守り」が行われることを目指した取り組みを求めます。 また、「声かけ」「見守り」を行うためには、駅員等の資質の向上も必要です。そのためには、視覚障害当事者を交えた接遇研修の実施が必要です。 ( 2 ) 改札や駅ホームには必ず駅員等を常駐させてください。 【説明】 近年、一部の鉄道駅では、駅員削減が進み、様々な無人化対策が取られています。例えば、駅員に連絡するためのインターホンの設置等が普及し始めているものの、全国の視覚障害者からは、インターホンの設置場所が分からない、操作方法が分からない等の不満の声が寄せられています。また、駅員等がいないことから、改札や駅ホームで危険な目にあっても、誰からも助けられなかった事例もあります。そのため、視覚障害者が鉄道駅を安心安全に利用するためには、駅員等が常駐することが必要です。特に、前述した「声かけ」「見守り」の更なる推進を図るためにも、改札や駅ホームに駅員等が常駐することを強く求めます。 ( 3 ) ソフト面の対応を支えるための各種設備の導入を推進してください。 【説明】 鉄道駅における視覚障害者への支援は「利用者と支援者が繋がること」が重要で、支援を必要とする視覚障害者と駅員等を上手く繋げることが必要になります。また、限られた駅員の数では、駅業務の全てを担うことができないことを踏まえると、鉄道利用者の安全を守るための各種設備の推進も必要となっています。そのため、駅員等のソフト対応に繋げるための各種設備の導入の推進を求めます。例えば、駅ホームからの転落を早期に把握するためには、転落検知マット等の導入が必要です。また、視覚障害者が改札を通過したこと等を駅員に知らせる各種システムを開発し、必要とされる駅に導入することも必要です。 3 更なる安全対策 ( 1 )視覚障害者の駅ホーム転落事故の原因を客観的に究明する取り組みを実施してください。 【説明】 視覚障害者の駅ホームからの転落事故が発生した際、当該駅の所管警察が実況見分等を行うものの、公表される情報からは「なぜ、視覚障害者が転落したのか」が見えてこないのが現状です。そして、この「なぜ」が整理できなくては、鉄道駅における視覚障害者への安全対策の有効性が高まりません。特に、視覚障害者はその者の見え方等によって移動方法が大きく異なるため、視覚障害者のことを熟知した者でないと、この「なぜ」の整理ができないと思われます。そのため、視覚障害者の駅ホーム転落事故が発生した際は、視覚障害に関する有識者( 研究者、歩行訓練士等)を交えた原因究明を行い、その結果を各種安全対策に繋げることが必要です。 ( 2 ) いわゆる「歩きスマホ」を無くす取り組みを強化してください。 【説明】 駅ホーム上で、視覚障害者が遭遇する事故で一番多いものは、他の歩行者との接触になります。特に、ここ最近、歩行者の「歩きスマホ」を理由とする前方不注意による事故が多く発生しています。このような接触事故がホーム上で発生すると、視覚障害者によっては方向感覚を失い、誤って駅ホームから転落する恐れがあります。また、接触した歩行者も怪我をすることもあります。そのため、全ての駅利用者の安全を守るため、「歩きスマホ」を無くす取り組みの強化を求めます。 4 備考 まず、視覚障害者が安全に歩行するためには、視覚障害者自身が「歩行訓練」を受け、安全な歩行方法を身に付けることが最善とされています。そのため、近年の視覚障害者の駅ホーム転落事故を受け、視覚障害者自身も歩行訓練の必要性を再認識し、歩行訓練を受ける者も増えています。本連合としては、鉄道駅の各種安全対策と併せて、視覚障害者自身も歩行訓練等の安全対策を行うことが必要であると考えています。 資料5 2020 年10 月9 日 駅ホームにおける視覚障害者の安全対策検討会資料 「最近10 年間のホーム転落死亡事故」 筑波大学附属視覚特別支援学校 日本弱視者ネットワーク ホーム転落をなくす会 宇野和博 2011 年1 月 JR山手線「目白」 2011 年7 月 東急田園都市線「つくし野」 2011 年10 月 JR 青梅線「拝島」 2012 年3 月 東武東上線「川越」 2012 年9 月 JR山手線「新橋」 2014 年5 月 新京成線「高根木戸」 2015 年3 月 阪急宝塚線「服部天神」 2016 年8 月 東京メトロ銀座線「青山一丁目」 2016 年10 月 近鉄大阪線「河内国分(かわちこくぶ)」 2017 年1 月 JR京浜東北線「蕨(わらび)」 2017 年10 月 JR阪和線「富木(とのき)」 2017 年12 月 阪急京都線「上新庄(かみしんじょう)」 2018 年6 月 JR横須賀線「保土ヶ谷」 2018 年9 月 東急大井町線「下神明(しもしんめい)」 2019 年10 月 京成線「立石(たていし)」 2019 年10 月 JR山手線「新宿」 2020 年1 月 JR京浜東北線「日暮里」 2020 年3 月 JR神戸線「垂水(たるみ)」 2020 年7 月 JR総武線「阿佐ヶ谷」 新所沢駅 蕨駅 護国寺駅 青山一丁目駅 ※写真につき、テキスト版では割愛 資料6 P1 転落事故を防ぐために 日本歩行訓練士会堀内恭子 1.環境整備 物理的環境 人的環境 2.視覚障害当事者の取り組み P2 環境整備 1)物理的環境 @転落防止対策 @ホーム柵 ・可動式ホーム柵 ・固定式ホーム柵 A視覚障害者誘導用ブロック ・ホーム縁端ブロック・内方線の敷設 ・ホーム中央の視覚障害者誘導用ブロックの敷設 BCPライン P3 環境整備 A転落後の対応 ・非常停止ボタン ・転落検知マットの設置 ・転落検知システムの導入 2)人的環境 @駅係員の声かけ、誘導、見守り A一般客の声かけ、誘導、見守り BAIを活用した視覚障害者検知システム P4 視覚障害当事者の取り組み ・歩行訓練の受講 白杖を常に床に接地 肩幅に白杖を振る 乗車時に床の確認 ・変調時の援助依頼 ・駅ホーム環境の把握 (ホームドアの有無・ホームの形状など) ・支援機器の利用 センサーを活用等 P5 1997年12月 中部桜通線今池駅島式 男性22歳ベーチェット病 全盲歩行訓練:6ヶ月程度 JIS型点字ブロック有り。 寝不足。人が多く、杖を短めに少し立てて振った。人の流れに乗りながら中央部の階段に誘導している線状ブロックを探した。線状ブロックを左に見つけ、点状ブロックがでてきたので、階段だと思い、足を出して転落 (大倉:データーベース) P6 1986年近畿阪和線堺市駅 相対式ホーム 19歳全盲女性 盲学校で歩行訓練受講 白杖常に使用 向かいの下りホームに到着した電車を上りの乗車と誤認し、そのまま線路に転落 上りのアナウンスの10秒後に下り電車入線 意識不明で入院後死亡 P7 ロービジョン者(視力0以外)8名 複回転落含む 常に白杖を床に接地し、肩幅に振っていた人は0 面高雅紀 (1984:視覚障害リハビリテーション第20号視覚障害者の交通機関(電車)利用における問題点―アンケート調査よりー) P8 ロービジョン者の転落時の白杖使用状況 常時白杖を地面に設置させ、肩幅以上に振っていたのは0回。 転落理由 ・見間違い:線路を日陰だと思い歩行した 連結部の光が車内の蛍光灯の光だと勘違い 朝陽の当たった光を壁と間違え、壁にもたれようとして転落。 ・人にぶつかりよけたら落ちた。 ・車体を手で伝い、丸くなっているところで乗り込んだら、連結部だった。 ・ホーム真ん中に下がろうとして後ろ下がりし、転落。 ※ いずれも電車の床の所在を白杖で確認していなかった (面高:1984) P9 日本歩行訓練士会ホームページより 視覚障害者の駅ホームからの転落事故をなくすために 10 月1 日京成立石駅、10 月2 日JR新宿駅、2020 年1 月6 日JR石岡駅、1 月11 日JR日暮里駅と、視覚障害者の駅ホームからの転落事故が続いて起きました。亡くなられた方に心より哀悼の意を表します。 日本歩行訓練士会として、視覚障害者の駅ホームからの転落事故をなくすためにお願いしたいことがあります。 ●視覚障害者の方へのお願い ・白杖操作について受講した経験がない方は、歩行訓練を受けて下さい。 ・受講経験のある方も、よく使う駅のホームの形状や安全な歩行経路等について、いま一度歩行訓練士等と確認してください。※歩行訓練士についてのお問合せは事務局まで ・電車のドアに白杖が挟まれたまま発車してしまう事故もあるため、日頃から白杖のゴムを手首に通さないで白杖を持ちましょう。 ・駅ホーム上では、白杖を浮かさず接地したまま、肩幅より少し広く左右に振って歩いて下さい。 ・乗降時には、必ず白杖で床が有ることを確認してから、足を出してください。 ・普段と異なる状況(体調や環境)が有れば、駅員や乗客に援助を依頼してください。 ●一般の方へのお願い 視覚障害者を見かけられたら、お声かけをお願いいたします。 ・線路に向かって歩いているなど、危険を感じたら、迷わず呼びかけてください。 「盲導犬の人、止まって!」など、「(その人が自分に声がかかっていると分かる一言)+止まって」と声をかけてください。 ・無言でいきなり腕や肩をつかむのはやめてください。相手が驚いてしまい、かえって危険になる場合もあります。ただし、本当に命の危険が迫っている時は、ためらわずに「止まって、危ない!」など声をかけながら腕をつかんで助けてください。 ・命の危険が迫っていない状況の声かけは、「こんにちは、何かお手伝いしましょうか」を基本にお願いします。声を出すことで、あなたの存在を伝えてください。 ●鉄道事業者の方へのお願い 視覚障害者を見かけられたら、お声かけいただき、見守りをお願いいたします。 またホームドアの設置など環境面における駅の安全対策をすすめてください。 視覚障害者の誘導方法や視覚障害者誘導用ブロックについてなど、ぜひ地域の歩行訓練士にご相談ください。詳細は日本歩行訓練士会までお問合せください。 二度と大切な命が失われないように、日本歩行訓練士会として、歩行訓練や視覚リハビリテーションの普及と向上をはかってまいります。 皆様のご協力をよろしくお願い申し上げます。 2020 年1 月23 日 日本歩行訓練士会 P10 新型コロナウイルス(COVID-19)感染予防における視覚障害者の手引き誘導のガイドライ ン 2020年8月7日 日本歩行訓練士会 新型コロナウイルスの感染拡大の予防に向けた取り組みにおいてはいまだ全国的にも予断を許さない状況が続いています。 このような状況の中、視覚に障害のある方々の生活にも大きな影響が出ており、その一つとして「外出時の手引き誘導」においては視覚障害者だけでなく、同行援護従業者や医療従事者、公共交通機関の職員等からも今後のガイドラインを求める声があがっております。 日本歩行訓練士会では、全国で活動している歩行訓練士から情報を集め、訓練士の視点から手引き誘導の方法についてのガイドラインを出すことで、視覚障害者のみならず、様々な場面で支援にあたられている方々の安全、安心に寄与していく所存です。 なお、本ガイドラインの内容は、今後の政府対処方針の変更のほか、新型コロナウイルスの感染の地域における動向や専門家の知見、意見等を踏まえ、必要に応じて適宜改訂を行います。 1.手引き誘導の基本的な考え方 感染予防の対策をしたうえで手引き誘導の方法は「いつも通りに」! 日常生活を安全に過ごすために濃厚接触をせざるを得ない視覚障害者の特性をまず理解したうえで、下記の基本的な考えのもと支援にあたるようにします。 視覚障害者を手引き誘導する際には安全性・安心感の確保が最優先であり、その安全性の確保の中には新型コロナウイルスの感染防止も重要な観点として含まれます。 一方で感染の防止を優先するあまりにつまずきや転落、物への接触等、危険な状態を招くことは避けなければならず、感染防止と危険回避の両立をもって安心感の確保を実現するよう工夫していくことが求められています。 ポイント! ・手引き誘導の方法は原則、肘の上をつかむ、もしくは肩に手を置くなどの方法をとります。 (手引き誘導の方法は、盲導犬使用者も含め視覚障害者の数だけあるので話し合うことが大切です) ・手引き誘導の際に白杖や盲導犬、腕などを引っ張ったり、後ろから押したりするような方法は取らないでください。 ・検温、マスクの着用、手洗い、消毒等の配慮は双方が十分に注意するようにします。 ・向かい合っての会話は避け、話す際には双方とも同方向を向くようにします。 ・視覚障害者が直接ものに手で触れる機会は必要最低限にし、口頭での説明に努めるようにします。 ・マスクやフェイスシールドの着用により声が聞こえにくくなりますので、はっきりと確実に伝えるようにします。 ・飛沫防止フィルムの設置やベンチの移動、間隔を空ける列など、従来の環境と変化している場合は状況を説明します。 2.場面別手引き誘導の方法 (1)同行援護従業者による手引き誘導 感染予防の対策を十分行った上で、手引き誘導の方法は肘の上をつかんでもらう、もしくは肩に手を置いてもらう方法によることを原則とします。事前に外出の目的を確認し、視覚障害者と相談しながら、混雑する場所やルートを避けて目的地に向かうように努めます。 同行援護時に従事者がアームカバーを使用する場合は、対象者ごとに交換(アームカバーは洗濯)します。 脱ぐ時は静かに端から外側を内側に入れ込むようにし、カバーを扱った後にはよく手を洗います。 携帯用の消毒液を携帯し、こまめに消毒するように心がけるようにします。 ※マスク、アームカバーの着用は基本とし、フェイスシールド、ゴーグル、手袋については必須ではありませんが地域の感染状況を考慮し判断をしてください。 (2)公共交通機関の職員による手引き誘導 改札を通過する際には声掛けをしてください。視覚障害者の希望に応じて手引き誘導を行いますが、駅ホーム上や階段などは特に安全確保に努めます。切符の購入などの際は間隔を空けて並ぶことが難しいため、具体的に並ぶ位置を指示する、もしくは窓口での購入対応をお願いします。 (3)医療機関・介護施設の職員による手引き誘導 通常の診察、介護の際には十分に感染予防をしたうえで手引き誘導をします。 視覚障害者に風邪の症状、または感染が疑われる症状が認められる場合には各医療機関、介護施設の感染予防対策をとりながら、いつも通りの手引き誘導をします。 (4)一般市民や通行者による手引き誘導 感染予防の対策として行っている「距離を保って列に並ぶこと」や、「間隔を空けて席に座ること」が難しい場合があります。 その他にも困っている視覚障害者を見かけたら声掛けをし、手引き誘導の方法を視覚障害者に尋ねてください。 ただし、マスクの着用等、感染防止対策を双方が取っていることを原則とします。 また支援者がどのような対策をしているのかを情報として視覚障害者に伝えてください。 3.その他 2メートルの物理的な距離をとるという観点からの工夫として視覚障害者と支援者が直接腕や肩に触れずに白杖、棒、紐、ペットボトル等を介して手引き誘導する方法も提案されていますが、視覚障害者が自ら望む場合を除き、距離をとることでの危険性や心理的不安を考慮することが非常に重要であります。 特に転落の危険性のある駅ホームや段差のある場所では視覚障害者、支援者の双方が慣れている基本姿勢を維持し、不慣れな方法をとらないようにしてください。 視覚障害者にとっては、支援者と物理的な距離をとることで却って安全性を損ない、場合によっては命にかかわる危険にさらされる状況が生じ得ることを理解していただきますようお願いいたします。 注記 視覚障害者の歩行介助の呼称については手引き以外にもガイド等も使われていますが、ここでは『手引き誘導』と表記させていただきます。 日本歩行訓練士会 事務局 〒538-0042 大阪市鶴見区今津中2-4-37 社会福祉法人日本ライトハウス 養成部内 TEL:06-6961-5521 FAX:06-6968-2059 メールアドレス:nippokai@lighthouse.or.jp 参考資料1 P1 視覚障害者における駅ホームからの転落に関する現状と傾向分析 P2 視覚障害者の転落及び接触事故件数の推移(過去10年) ※表につき、テキスト版では割愛 P3 最近の視覚障害者の主な接触事故一覧(ホームからの転落に係るもの) (H22〜R2年度発生) ※ホームから転落し、列車との接触により人身障害事故に至ったもの (鉄道事故等報告規則に基づく報告より作成) 発生日 鉄道事業者名 路線名 駅名 死亡・負傷の別 1 平成23年1月8日札幌市交通局南北線自衛隊前駅負傷 2 平成23年1月16日JR東日本山手線目白駅死亡 3 平成23年7月11日名古屋市交通局第1号線本郷駅負傷 4 平成23年7月26日東京急行電鉄田園都市線つくし野駅死亡 5 平成24年3月6日東武鉄道東上線川越駅死亡 6 平成24年4月21日JR東日本中央線神田駅負傷 7 平成26年5月14日新京成電鉄新京成線高根木戸駅死亡 8 平成27年3月23日阪急電鉄宝塚線服部天神駅死亡 9 平成28年8月15日東京地下鉄銀座線青山一丁目駅死亡 10 平成28年10月16日近畿日本鉄道大阪線河内国分駅死亡 11 平成29年1月14日JR東日本京浜東北線蕨駅死亡 12 平成29年10月1日JR西日本阪和線富木駅死亡 13 平成29年12月18日阪急電鉄京都線上新庄駅死亡 14 平成30年5月21日JR貨物上越線五日町駅死亡 15 平成30年6月19日JR東日本横須賀線保土谷駅死亡 16 平成30年9月4日東京急行電鉄大井町線下新明駅死亡 17 令和元年4月17日JR東日本相模線海老名駅負傷 18 令和元年10月1日京成電鉄押上線京成立石駅死亡 19 令和元年10月2日JR東日本山手線新宿駅死亡 20 令和2年1月11日JR東日本京浜東北線日暮里駅死亡 21 令和2年3月19日JR西日本神戸線垂水駅死亡 22 令和2年7月26日JR東日本中央線阿佐ヶ谷駅死亡 注)検討会後、誤植を修正(5について、「平成23年3月6日」から「平成24年3月6日」に修正) P4 ホームからの転落後の接触事故に関する傾向分析(視覚障害者の転落に係るもの) ○平成22〜令和2年度の転落事案のうち、列車との接触により人身障害事故に至った22件について分析。 @ホームの形式 相対式11件島式11件 A内方線付点状ブロックの有無 有14件無8件 BCPラインの有無 有4件無18件 Cホームからの転落箇所 広い箇所13件 狭い箇所5件 狭い箇所の例:階段や待合所の横など 不明4件 D介助者の有無(転落時) 無22件 参考資料2 P1 鉄道駅におけるホームドアの整備等 P2 ホームドア設置駅数の推移 全ホームドア設置駅数 H23年度末 519駅 H24年度末 564駅 H25年度末 583駅 H26年度末 615駅 H27年度末 665駅 H28年度末 686駅 H29年度末 725駅 H30年度末 783駅 R1年度末 855駅 ※R1年度末は速報値 10万人以上駅におけるホームドア設置駅数 H23年度末 30駅 H24年度末 39駅 H25年度末 50駅 H26年度末 60駅 H27年度末 82駅 H28年度末 85駅 H29年度末 105駅 H30年度末 125駅 R1年度末 157駅 P3 新型ホームドアの技術開発と実用化等について 昇降式 昇降ロープ式ホーム柵 (支柱伸縮型) (株)JR西日本テクシア 開口部が昇降する5本のロープで構成されており、開口幅を大きくとることが可能。 視認性向上のため、支柱が伸縮型となっている。 【実用化:5駅】 JR西日本 ・六甲道駅(注) (H27年4月〜) ・高槻駅(H28年3月〜) ・大阪駅(H31年2月〜) ・三ノ宮駅(R1年10月〜) ・明石駅(R2年2月〜) 【整備計画:3駅】 JR西日本 ・神戸駅(R2年度予定) ・京都駅(R3年度予定) ・西明石駅(注)(R3年度予定) 昇降バー式ホーム柵 (株)高見沢サイバネティックス 開口部が昇降する3本のバーで構成されており、開口幅を大きくとることが可能。視認性向上のため、支柱が伸縮型となっている。 【実用化:1駅】 箱根登山鉄道鋼索線 ・早雲山駅(注) (R2年7月〜) 軽量型 軽量型ホームドア 日本信号(株)・(株)音楽館 重量を従来型ホームドアの半分程度まで軽量化し、ホームの補強工事や設置工事費用を低減。 【実用化:1駅】 JR九州筑肥線 ・九大学研都市駅(注) (H31年2月〜) 【整備計画:7駅】 JR九州筑肥線 ・下山門駅〜筑前前原駅間 (6駅(注)) (R2〜3年度中) 京急 ・汐入駅(注) (R2年度末完成予定) スマートホームドアR JR東日本メカトロニクス(株) ドア部をフレーム構造として軽量・簡素化などを図り、本体機器費用、設置工事費用等を低減。 【実用化:1駅】 JR東日本 ・蕨駅(R2年2月〜) 【整備計画:11駅】 JR東日本 ・亀戸駅(R2年10月予定) ・小岩駅(R2年11月予定) ・与野駅(注)(R2年12月予定) ・東十条駅(注) (R2年12月予定) ・町田駅(R3年1月予定) ・新子安駅(注)(R3年1月予定) ・上中里駅(注)(R3年2月予定) ・淵野辺駅(注)(R3年2月予定) ・市ヶ谷駅(注)(R3年3月予定) ・大宮駅(R4年度末予定) ・鶯谷駅(注) (R3年度以降整備予定) ※ (注)は10万人未満の駅(平成31年3月時点)。なお、各種の状況により、計画が変更となる場合がある。 ※令和2年9月時点 P4 バリアフリー法に基づく基本方針における次期目標について(中間とりまとめ)(概要)@ 背景 ・現行の基本方針におけるバリアフリー化の目標は令和2年度までの期限となっていることから、「バリアフリー法及び関連施策のあり方に関する検討会」において、学識経験者、高齢者・障害者等団体、事業者団体の方々から専門的・具体的なご意見をいただきながら、次期目標に関する考え方を整理。今後、新型コロナウイルス感染症による影響等の状況変化も見極めつつ、さらに検討を進め、目標値を具体化していく。 (第8回検討会:令和元年11月15日、第9回検討会:令和2年1月16日、第10回検討会:令和2年6月17日) 次期目標の設定に向けた見直しの視点 ・現行目標においては、施設等の種別ごとにバリアフリー化の目標を設定し、国、地方公共団体、施設設置管理者等が連携してバリアフリー化に取り組み、一定程度の進捗がみられるが、引き続きバリアフリー化を進める必要がある。 ・次期目標については、ハード・ソフト両面でのバリアフリー化をより一層推進していく観点から、以下の点に留意して検討する。 ・各施設等について地方部を含めたバリアフリー化の一層の推進 (平均利用者数(※1)が2,000人以上3,000人未満/日であって基本構想に位置付けられた旅客施設等に関する目標を追加) ・聴覚障害及び知的・精神・発達障害に係るバリアフリーの進捗状況の見える化 (旅客施設のバリアフリー指標として、案内設備(文字等及び音声による運行情報提供設備、案内用図記号による標識等)を明確に位置付け) ・マスタープラン・基本構想の作成による面的なバリアフリーのまちづくりの一層の推進 ・移動等円滑化に関する国民の理解と協力、いわゆる「心のバリアフリー」の推進 目標期間 ・現行目標期間:平成23年度(2011年度)から令和2年度(2020年度)までの10年間 ・次期目標期間:社会資本整備重点計画等の計画期間、バリアフリー法に基づく基本構想等の評価期間、新型コロナウイルス感染症による影響への対応等を踏まえ、時代の変化により早く対応するため、おおむね5年間(※2) ※1:新型コロナウイルス感染症のような特殊な外的要因により、年度によっては前年度に比べ著しく増減する可能性があることから、適切に補正した結果(例えば、過去3年度における平均値を用いる)も考慮したうえで、取組む ※2:新型コロナウイルス感染症による更なる影響、新技術の開発など予見し難い状況の変化が生じた場合には、次期目標期間内であっても、必要に応じて目標の見直しに努める3 P5、P6 バリアフリー法に基づく基本方針における次期目標について(中間とりまとめ)(概要) ※表につき、テキスト版では割愛