新技術等を活用した駅ホームにおける視覚障害者の安全対策検討会(第4回) 令和3年2月12日(金)14:00〜16:50 中央合同庁舎2 号館地下1 階 国土交通省第2 会議室A・B (※ウェブ会議) 議 事 次 第 1.開 会 2.報告事項 ・東京メトロにおける視覚障害者ナビゲーションシステム「shikAI」のサービス開始等について 3.議 事 (1) ホームからの転落に関するアンケート及びヒアリング結果について (2) ホーム上における歩行動線について (3) 新技術を活用した転落防止対策等に関するフォローアップ等について (4) その他 4.閉 会 新技術等を活用した駅ホームにおける視覚障害者の安全対策検討会(第4回) 【障害者団体・支援団体】 日本視覚障害者団体連合 情報部長 三宅 隆 日本弱視者ネットワーク(筑波大学附属視覚特別支援学校 教諭) 宇野 和博 東京都盲人福祉協会 常任理事 市原 寛一 埼玉県網膜色素変性症協会 会長 田村彰之助 日本歩行訓練士会 事務局長 堀内 恭子 日本盲導犬協会 顧問 吉川 明 【学識経験者】 成蹊大学 名誉教授 大倉 元宏 慶應義塾大学 経済学部 教授 中野 泰志 (欠席) 鉄道総合技術研究所 人間科学研究部 主任研究員 大野 央人 【鉄道事業者】 JR東日本 執行役員 安全企画部長 松橋 賢一 JR西日本 鉄道本部 駅業務部長 佐伯 祥一 東京メトロ 経営企画本部 企業価値創造部長 川上 幸一 (代理出席:経営企画本部 企業価値創造部 課長 大原 恭子) 小田急電鉄 常務取締役 交通サービス事業本部長 五十嵐 秀 近畿日本鉄道 取締役常務執行役員 企画統括部 副統括部長 湖東 幸弘 阪急阪神ホールディングス グループ開発室 部長 山本 隆弘 【国土交通省】 大臣官房 技術審議官(鉄道) 江口 秀二 総合政策局 安心生活政策課長 真鍋 英樹 (代理出席:総合政策局 安心生活政策課 交通バリアフリー政策室長 平野 洋喜) 鉄道局 総務課 鉄道サービス政策室長 森 龍平 鉄道局 都市鉄道政策課長 金指 和彦 鉄道局 技術企画課長 岸谷 克己 鉄道局 安全監理官 森 信哉 【厚生労働省(オブザーバー)】 社会・援護局 障害保健福祉部 企画課 自立支援振興室長 金原 辰夫 (代理出席:障害保健福祉部 企画課 自立支援振興室 室長補佐 水村 慎也) (事務局 鉄道局技術企画課) 報告事項 (東京メトロニュースリリース) 2021年1月18日 視覚障がい者ナビゲーションシステム「shikAI」のサービスが本格始動! 東京メトロの駅構内にてご利用いただけます! 1 月27 日(水)より副都心線西早稲田駅など5 駅に導入 東京地下鉄株式会社(本社:東京都台東区、代表取締役社長:山村 明義、以下「東京メトロ」)及びリンクス株式会社(本社:東京都港区、代表取締役会長:小西 祐一、以下「リンクス」)は、2021年1月27日(水)より、東京メトロ線5駅で視覚障がい者ナビゲーションシステム「shikAI(シカイ)」(以下、「shikAI」)のアプリを公開します。 「shikAI」は、駅構内の点字ブロックにQRコードを設置し、iPhoneのカメラで読み取ることで、現在地から目的地までの駅構内の移動ルートを導き出し、音声で目的地までご案内するシステムです。視覚障がい者の方に安心して駅をご利用いただくことを目的に、「Tokyo MetroACCELERATOR 2016」で最終審査を通過したリンクス株式会社(当時「プログレス・テクノロジーズ株式会社」)が2017年に開発をスタートし、東京メトロ総合研修訓練センターや有楽町線辰巳駅、新木場駅などで合計150名以上の視覚障がい者の方にご協力いただきながら、実用化に向けた検証を重ねてきました。 この度、度重なる検証の結果を踏まえ、お客様のご要望を反映したシステムが完成したことから、2021年1月27日(水)より「shikAI」アプリを公開します。ホームドアが整備され、視覚障がい者の方のご利用が多い副都心線西早稲田駅など計5駅でご利用いただけるほか、2021年4月までに順次東京メトロ線内での対象駅を拡大し、合計9駅での運用を予定しています。また、その後も対象駅の拡大を検討してまいります。なお、「shikAI」アプリのご利用には事前準備(別紙参照)が必要となります。 東京メトロは、これからも全てのお客様が便利に安心して地下鉄をご利用いただけるよう、「安心な空間」の整備に取り組んでまいります。 「shikAI」アプリ公開に関する詳細は、別紙のとおりです。 ※QR コードは(株)デンソーウェーブの登録商標です。 別紙 視覚障がい者ナビゲーションシステム「shikAI」アプリ公開 詳細 1 アプリ概要 「shikAI」(読み:シカイ) 駅構内の点字ブロック上またはその付近にQR コードを設置し、「shikAI」アプリでそのQR コードを読み取ることで、現在地から目的地までの駅構内の移動ルートを導き出し、音声で進む方向や距離を伝えることで目的地までご案内します。 2 アプリ公開日 2021 年1 月27 日(水) 3 利用方法 (1)事前準備 @iOS14.0 以降に対応するiPhone をご用意の上、AppStore にて「shikAI」と検索し、アプリをダウンロードします。 ※android には対応しておりません。 Aアプリを起動し、アプリ内でshikAI アカウントを登録いただくと、ご登録頂いたメールアドレスにご利用案内のメールが届きます。ご利用案内に沿って必要事項を入力頂くと、後日歩行指導員から電話にて、アプリ説明日程の案内があります。 B歩行指導員がアプリの操作方法をご説明し、実際に点字ブロック上でご使用いただきます。そして、歩行指導員からshikAI 認証キーが付与されるとアプリが利用できるようになります。 (2)アプリの利用 @「shikAI」アプリを起動します。※VoiceOver 機能を有効にして操作します Aメインメニューでナビゲーションを選択し、ナビゲーションメニューが表示されたら、点字ブロック上のQR コードを読み込みます。※選択はスワイプとダブルタップにて操作します BQR コードを読み込むと目的地選択画面が表示されるので、目的地のカテゴリ、目的地を順に選択します。 C目的地が選択されると画面がナビゲーションメニューに戻り、音声ガイドが開始されます。ガイドに従い点字ブロックに沿って移動し、移動先のQR コードを読み込むと次の移動先への音声ガイドが提供され、目的地までナビゲートします。 ※shikAI は視覚障がい者の方向け専門アプリのため、晴眼者の方はご利用いただけません 4 shikAI アプリ公開駅 千代田線・副都心線 明治神宮前〈原宿〉駅 有楽町線 新木場駅、辰巳駅 副都心線 北参道駅、西早稲田駅 【2021 年4 月までに順次公開する駅】 銀座線 外苑前駅 有楽町線 東池袋駅、護国寺駅、豊洲駅 5 利用料金 無 料(通信料はお客様ご負担となります。) 6 お客様の問い合わせ先 (shikAI 利用窓口)リンクス株式会社 担当:田中 電話 : 050-8880-6234 メール: shikAI_contact@linkx.dev 【参考】「shikAI」アプリ公開までの経緯 2016 年12 月 「Tokyo Metro ACCELERATOR 2016」でプログレステクノロジーズの提案が最終審査を通過 2017 年3 月〜 東京メトロ総合研修訓練センター内の模擬駅等で位置情報の正確な取得等を目的とした実証実験を実施(計7 回) 2018 年8〜12 月 QR コードを使ったシステムの有用性を確認するため有楽町線辰巳駅で実証実験を実施 2019 年8〜9 月 有楽町線辰巳駅及び新木場駅で一般公開に向けた導入検証を実施 資料1 P1 ホームからの転落に関するアンケート及びヒアリング結果について P2 ホームからの転落に関するアンケート及びヒアリングについて 1.転落の要因分析等のためのアンケート アンケートの目的 ○ホームから転落した経験、ヒヤリハットの経験のある方に転落時・ヒヤリハット時の状況等をお伺いし、転落の要因・傾向を分析することで、今後の転落対策の検討に役立てる。 対象・実施方法 【対象】 日本視覚障害者団体連合の会員等約11,500名 日本弱視者ネットワークの会員約220名 日本網膜色素変性症協会の会員約3,900名 →回答総数303名 【方法】・メールで配信・回収 ・11月中旬〜12月17日 アンケートの主な内容 ○当事者自身に関する質問 ・年齢、性別 ・視力の状況 ・歩行訓練の経験の有無 ・鉄道の利用頻度等 ○転落・ヒヤリハット経験時の状況に関する質問(転落・ヒヤリハット経験者のみ) ・発生場所、日時、移動の理由 ・当事者自身が考える転落の要因 ・介助者の有無、声掛けの有無 ・転落・ヒヤリハット経験時の白杖の使用方法等 2.ヒアリング ○より詳細に転落の要因を分析するため、アンケートに回答いただいた転落・ヒヤリハット経験者のうち、国土交通省からのヒアリングを受けてもよいと回答いただいた方に対して、順次ヒアリング・現地調査を実施。ヒアリングを受けてもよいと回答※ ※アンケート回答者に加え、回答者から紹介頂いた転落経験者(3名)も含む 36名の転落経験者に対して、計57件の転落事例のヒアリングを実施。(注)2000年以降に転落経験のある方を中心にヒアリングを実施 P3 アンケート結果 P4 ホームからの転落に関するアンケート集計結果(速報版) アンケート回答者の基本情報 ○アンケートの回答総数303人の基本情報について整理。 @回答者の性別・年齢 ○50代〜70代の回答者が全体の約7割を占める。 A回答者の視力 ○回答者の約8割が全盲〜指数弁。 ○移動に活用できる視力(視力0.01以上)がある回答者は約2割。 B回答者が最初に手帳を取得した年齢 ○回答者の約半数が30歳未満で最初に手帳を取得。 C鉄道の利用状況 ○回答者の約8割が月1回以上鉄道を利用する。 D転落・ヒヤリハットの経験の有無 ○回答者の約3〜4割が転落経験あり。ヒヤリハットまで含めると約6〜7割が経験あり。 P5 ホームからの転落に関するアンケート集計結果(速報版) 転落に関係する項目の集計結果 ○転落経験者109人、ヒヤリハット経験者81人のうち、アンケートに事例として記入頂いた転落・ヒヤリハット184件を中心に分析。 @転落・ヒヤリハット時の移動方向・乗降の別 ○長軸方向での転落・ヒヤリハットが多い。 ○短軸方向での転落・ヒヤリハットは、大半が乗車時に発生。 【転落・ヒヤリハット事例(184件)】 転落件数 長軸方向の移動 乗車・降車時47件 短軸方向の移動 乗車時24件 降車時3件 計74件 ヒヤリハット件数 長軸方向の移動 乗車・降車時44件 短軸方向の移動 乗車時34件 降車時2件 計80件 計 長軸方向の移動 乗車・降車時91件 短軸方向の移動 乗車時58件 降車時5件 計154件 視力による分析(注)転落・ヒヤリハット時の視力 ○視力によって、大きな傾向の違いはない。 (全盲〜指数弁の件数が多いのは、回答者に全盲〜指数弁の方が多いためと考えられる) 手帳取得時期による分析 ○30歳以上で最初に手帳を取得した方の事例は、短軸方向での転落・ヒヤリハットが多い。 P6 ホームからの転落に関するアンケート集計結果(速報版) 転落に関係する項目の集計結果 A転落・ヒヤリハット時の歩行方法(白杖の使用方法) ○転落に至った事例の場合、ヒヤリハットに比べて「肩幅に振らず時折地面に触れる」「白杖をシンボルとして持ち、目視をしながら歩行」「白杖を持たずに、目視をしながら歩行」という歩き方をしている人の割合が高い。 視力による分析(注)転落・ヒヤリハット時の視力 手帳取得時期による分析 ○視力や手帳取得時期によって白杖の使用傾向は異なるものの、転落に至った事例では、「肩幅に振らず時折地面に触れる」「白杖をシンボルとして持ち、目視をしながら歩行」「白杖を持たずに、目視をしながら歩行」という歩き方をしている人の割合が高い。 ◯ 白杖を常時接地し、肩幅に振ることを徹底することで、転落する危険性を減少させることにつながる。また、状況によりやむを得ず、それ以外の使用法をする場合は、より慎重に歩行する必要がある。 P7 ホームからの転落に関するアンケート集計結果(速報版) 転落に関係する項目の集計結果 B駅ホームでの歩行方法等の訓練受講状況 ○回答者の半数が駅ホームでの歩行訓練の受講経験あり。 ○「訓練しなくても歩けると思った」「訓練があることを知らなかった」といった理由で、訓練を受けていない人が多い。((ア)参照) ※転落経験後も同様の理由で訓練を受けない人が多い。 視力による分析(注)転落・ヒヤリハット時の視力 ○視力0.01以上の場合、全盲〜指数弁の場合に比べて、「訓練しなくても歩けると思った」といった理由で、訓練を受けていない人が多い。((イ)参照) 手帳取得時期による分析 ○手帳の取得時期によって、訓練を受けない理由に、大きな傾向の違いはない。 ○ 半数が駅ホームでの歩行訓練の受講経験がないことから、受講率の向上が今後の課題。 P8 ヒアリング結果 P9 転落経験者へのヒアリング概要 1. 対象者 ・アンケート回答者の中から、ヒアリングを受けることを承諾頂いた方のうち、2000年以降に転落経験のある方 ・ヒアリングを実施した方の紹介で、アンケートには回答していない転落経験のある方 ・上記に該当する36名57件 2. 実施期間・方法 ・令和2年11月〜令和3年1月 ・対面または電話により、担当職員2〜4名にて1時間〜1時間半程度聞き取り 3. その他 ・当時と現在で駅の構造が大きく変わっているケースや視覚障害が転落の要因ではないと思われるケース(居眠り、酩酊など)、当事者の記憶が極めて曖昧なケースは除外 P10 ヒアリングで得られた転落に関係する事象 ◯ ヒアリングを通して、視覚障害者から以下のような具体的な事象が挙げられた。 【分類】 定位に関する事項 【具体的事象】 線状ブロックの無い箇所を歩行 照明に頼った歩行 ホーム上の施設への接触による定位喪失 方向転換の繰り返しによる定位喪失 バランスを崩したことによる定位喪失 他人からの声掛けによる定位喪失 他人との接触回避に伴う定位喪失 【分類】 点状ブロックに関する事項 【具体的事象】 点状ブロックを跨いで通過 点状ブロックから逸れたことに気付かない 点状ブロックに気付かない 点状ブロックと階段のブロックを誤認 滑り止めゴムを点状ブロックと誤認 仮設点状ブロックによる誤認 擦り減った点状ブロックの誤認 雪で点状ブロックが確認できない 【分類】 当事者の誤認に関する事項 【具体的事象】 対面側車両の音の聞き間違い ホーム幅の誤認 対面側車両の見間違い 車両とホーム床を誤認 到着番線の勘違い 【分類】 外的要因に関する事項 【具体的事象】 他人との接触回避に伴う転落 ホーム上の施設との接触に伴う転落 ホーム上の施設の回避に伴う転落 他人との接触に伴う転落 床の凍結による滑動に伴う転落 【分類】 本人の状態に関する事項 【具体的事象】 遅刻等の焦り 酒酔い 発熱・睡眠不足等体調不良 電話・他の人と会話をしながらの歩行 考え事 タンデム歩行 盲導犬のリードだけを持った歩行 大量の荷物を所持 P11 駅ホームからの転落要因の体系的整理(案) ◯ 視覚障害者の転落は、ホーム端の接近の仕方によって以下の3ケースに大別されると考えられる。 ・ケース@ 本人が気付かずホーム端に接近 ・ケースA 列車が停車していると勘違いし、本人の意思でホーム端に接近 ・ケースB 他人との接触など、本人の意思によらず転落 ◯ いずれのケースも転落に至るまでに物理的に「点状ブロック」「白杖によるホーム端または車両の確認」の2つのセーフティネットを通過する。その際、セーフティネットが機能すれば、視覚障害者の転落を防ぐことが可能。 ◯ しかし、各セーフティネットが存在しても複数の事象が重なることでセーフティネットが機能しなければ、転落を防ぐことが困難となる。 ◯ さらに本人の状態に関する事項・現地の状況に関する事項が加わることで転落に結び付く事象が発生する可能性が増し、転落に至る危険性が増大する。 ※図につき、テキスト版では割愛 資料2 ホーム上における歩行動線について 【資料2−1】「ホーム上における歩行動線調査について」(事務局) ※本資料は、ホーム上における歩行動線の検討をするにあたり、視覚障害者の方々の意見を聴くための材料として、事務局の判断により検討会委員の鉄道事業者の協力のもと、首都圏・関西圏の92駅について調査したものであり、全国の鉄道駅における実情を表したものではない。 【資料2−2】「ホーム長軸方向の移動時における安全対策」 (日本弱視者ネットワーク宇野委員) 【資料2−3】「ホーム上における視覚障害者誘導用ブロックの敷設経緯」 (鉄道総研大野委員) 資料2-1 P1 ホーム上における歩行動線調査について 1.調査目的 ホーム上における歩行動線のあり方について検討するため、検討会委員の鉄道事業者に協力を仰ぎ、一定数の駅において、ホーム上の支障物や長軸方向の歩行動線距離等に関する実態調査を実施した。 2.調査方法等 (1)調査対象 協力事業者: 検討会委員の鉄道事業者に協力を依頼 (JR東日本、JR西日本、東京メトロ、小田急電鉄、近畿日本鉄道、阪急電鉄、阪神電鉄) 調査ホーム: 92駅124ホーム(うち島式:63駅69ホーム、相対式:29駅55ホーム) (2)調査方法 各事業者において、ホーム平面図等をもとに以下を調査。 ・視覚障害者の長軸方向の「歩行動線」として、幅1m程度のエリアをホーム上に設定する。(歩行動線は、内方線付点状ブロックから50p以上の離隔をとったエリア内とする) ・ホーム全長にわたり長軸方向に「歩行動線」を設定した場合の、支障物の数、1カ所あたりの長軸方向の長さを求める(その際、ベンチ等移設可能支障物と移動不可支障物は区別して整理)。 (3)集計項目 当該ホームにおける、@支障物箇所数、A平均的な長軸方向歩行動線1カ所の長さ等を明らかにし、ホーム上における誘導案内ブロックの設置など歩行動線のあり方に関する検討材料とする。 P2 ホーム上における歩行動線調査概要(1) <調査結果> @支障物箇所数(1ホーム200mあたり) 平均支障物箇所数 島式:約5箇所、相対式:約2箇所 ○1ホーム200mあたりの支障物箇所数を整理した。なお、本検討では、昇降施設や待合室など、移設が困難な施設を支障物として設定した。 ○島式ホーム(69ホーム) ・平均約5箇所の支障物がある。 ・全体の5割以上(36ホーム/69ホーム)のホームでは、5箇所以上の支障物がある。 (およそ車両2両分※を移動するにあたり、1箇所の支障物がある。) ○相対式ホーム(55ホーム) ・平均約2箇所の支障物がある。 ・相対式ホームは壁側(線路とは逆側)に昇降施設等が配置されており、ホーム中央には支障物が少ない。 A歩行動線長さ(1カ所あたり)の平均値 ○島式ホーム(69ホーム) ・動線長さは平均で約25m(およそ車両1両分強※)。 ○相対式ホーム(55ホーム) ・動線長さは平均で約52m(およそ車両2.5両分※)。 P3 ホーム上における歩行動線調査概要(2) ※図につき、テキスト版では割愛 P4 ホーム上における歩行動線調査概要(3) B動線カバー率(ホーム全長のうち、動線を確保できる延長の割合) 平均動線カバー率 島式:約66%、相対式:約74% ○島式ホーム(69ホーム) ・25ホームが動線カバー率50%〜69%、23ホームが70%〜89% (あわせて全体の約7割)。 ・全体での平均動線カバー率は約66%。 ○相対式ホーム(55ホーム) ・27ホームが動線カバー率70%〜89%(全体の約5割)。 ・14ホームが動線カバー率90%以上の一方、6ホームは30%未 満。 ・全体での平均動線カバー率は約74%。 ※動線カバー率は複数の動線の延長を合計して算出しており、支障物箇所数や動線1本あたりの長さはホームにより異なる。 →調査結果@、A参照 動線カバー率の計算例 ・動線@〜G計139.5m ・ホーム全長216.2m 動線カバー率:139.5÷216.2=64.5% P5 ホーム上における歩行動線調査概要(まとめ) 島式ホーム 支障物箇所数(平均) 約5箇所 歩行動線長さ(平均) 約25m 相対式ホーム 支障物箇所数(平均) 約2箇所 歩行動線長さ(平均) 約52m 注1)調査対象:首都圏と関西圏の92駅124ホーム(島式:63駅69ホーム、相対式:29駅55ホーム) 注2)1ホームの長さを200mとして換算 注3)上表は、ホーム上における歩行動線を検討するにあたり、視覚障害者の方々の意見を聴くために事務局の判断により調査したものであり、全国の鉄道駅における実情を表したものではない。 P6 参考)調査対象駅の基礎データ ※表につき、テキスト版では割愛 資料2-2 2021年2月12日 新技術等を活用した駅ホームにおける視覚障害者の安全対策検討会資料 「ホーム長軸方向の移動時における安全対策」 日本弱視者ネットワーク 筑波大学附属視覚特別支援学校 宇野和博 【意見】 視覚障害者がホームを長軸方向に移動する時に、ホーム端の点字警告ブロックとは別に、安全な場所に「道しるべ」とできる点字誘導ブロックを敷設するべきである。 【理由】 視覚障害者がホームを長軸方向に歩いている時に転落する事故が少なからず起きている。これは、警告ブロックの敷設方法を検討した時に、警告と誘導を混同していたことに起因する。結果的に、視覚障害者が長軸方向に移動する時、警告ブロックを頼りにせざるを得ないという状況になっている。横断歩道の中央に敷設してあるエスコートゾーンが好事例だが、たとえ点字ブロックから多少ずれても転落に直結しないような歩行環境が望まれる。 「視覚障害者はホーム上を移動しない方がよい。」とか「電車内で移動すればよい。」という意見もあったが、現実的ではない。 視覚障害者はホーム上で警告ブロックと誘導ブロックをあまり区別していないという調査結果も示された。しかし、だからといって視覚障害者が警告ブロックに沿って歩くことが正当化されるわけでもない。また、論理的にホーム中央の誘導ブロックの必要性を否定する根拠にはなっていない。 過去の議論で視覚障害当事者も会議に参加していたという意見もあったが、大事なのは「論より証拠」である。内方線付き警告ブロックが敷設されているホームでも転落事故が起きている現実を直視し、事故原因やヒヤリハットをなくす策を講じる必要がある。 狭いホームもあるという意見があったが、極端に狭い一部のホームはだれにとっても危険である。よって、そのようなホームについてはそもそも優先的にホームドアの設置を考えるべきである。どうしても難しい場合でも、その手前で誘導ブロックを停めればよいのであって、多くの誘導ブロック敷設可能エリアまで妨げる理由にはならない。 ホーム中央に売店等があるホームもあるが、その場合は売店の手前までとその向こう側に誘導ブロックを敷設し、視覚障害者は売店を「コ」の字のように迂回すればよいと考える。また、中央に連続的に柱が立っている場合は、柱と警告ブロックの間にスペー スがあるはずなので、そのエリアに敷設することがきると考えられる。また、ベンチや自動販売機は移動可能ではなかろうか。 新技術の紹介の中でAI カメラを活用し、ホーム端に人が立ち入った時に警告音を発するという技術も紹介されたが、現状の点字ブロックの敷設状態では視覚障害者は警告 ブロック沿いを歩かざるを得ないため、困ってしまう。このような技術を導入するためにも、視覚障害者がホーム中央の安全なエリアを歩けるようにしておく必要がある。 資料2-3 P1 視覚障害者における駅ホーム上での安全な歩行に関する打合せ 2021年2月12日 ホーム上における視覚障害者誘導用ブロックの敷設経緯 鉄道総合技術研究所 大野央人 P2 はじめに ○駅ホームの上には、長軸方向に向けての線状ブロックは敷設されていない ○このように敷設されることになった経緯は? P3 駅ホームにおける点字ブロック敷設の初期経緯 1965年三宅精一氏が「点状突起を持ったコンクリートブロック」を考案【点状ブロックの原型】 1970年阪和線「我孫子町」駅に敷設【駅ホームに初敷設】 1983年運輸省「公共交通ターミナルにおける身体障害者用施設整備ガイドライン」 【バリアフリー整備ガイドライン(旅客施設編)の前身】 P4 我孫子町駅における敷設(1970年) 現在の敷設方法と大きく相違 ・幅が狭い ・連続していない ・点状ブロックのみ P5 公共交通ターミナルにおける身体障害者用施設整備ガイドライン(1983年) 現在の敷設方法とかなり共通点が多い ※2002年に大幅拡充 P6 駅ホームにおける点字ブロック敷設の初期経緯 1965年三宅精一氏が「点状突起を持ったコンクリートブロック」を考案【点状ブロックの原型】 1970年阪和線「我孫子町」駅に敷設【駅ホームに初敷設】 1974年誘導ブロックの考案【線状ブロックの原型】 1975年前後道路,建築,旅客施設の分野ごとに、敷設方法が検討される 1983年運輸省「公共交通ターミナルにおける身体障害者用施設整備ガイドライン」 【バリアフリー整備ガイドライン(旅客施設編)の前身】 P7 旅客駅における身障者設備の研究 1974年〜1976年旅客駅における身障者設備の研究 ・国鉄が日本鉄道技術協会(JREA)に委託して実施 ・視覚障害者と車椅子利用者が主たる対象 駅の利用実験(平塚駅、護国寺駅、郡山駅) 誘導用床材の実験⇒点字ブロックの形状の研究 ・この検討結果に基づいて、国鉄施設局が「身体障害者の利用を考慮した旅客駅設備設計資料集」を作成(1977年) P8 実施場所 平塚駅 ・橋上駅 ・ブロックが誘導に終始した配列ではなく、安全の範囲・方向転換の目印としての使い方が考慮されている ⇒線状ブロックと点状ブロックの両方に重点 ・ホーム縁端のブロック幅は15cm 護国寺駅 ・地下駅 ・ブロックが旅客の移動ルートを終始誘導している ⇒線状ブロックに重点 ・ホーム中央部にも連続して敷設 ・誘導用チャイムを階段前に設置 郡山駅 ・地上駅 ・点字ブロックが旅客の誘導ルートを終始誘導している⇒線状ブロックに重点 ・ホーム縁端のブロックは30cm P9 実験結果(ホームに関連する事項のみ抜粋) 平塚駅 ・誘導に終始した配列でなく、安全の範囲・方向転換の目印としての使い方が考慮されているので、駅に慣れた人には使いやすい反面、初めて駅を使う人には使いにくい ・縁端部のブロック幅は15cmでは危険 護国寺駅 ・点字ブロックが旅客の誘導ルートを終始案内しているため、ブロックを辿れば誰でもホームに到達できる反面、僅かなブロックの途切れや折れ曲がりが混乱の原因になる。誘導ルートを間違えたり踏み外したりすると、影響が非常に大きい。 ・ホーム中央部のブロックはホーム上の移動に使われている 郡山駅 ・縁端部のブロック幅が30cmのため危険は少ない ・縁端部のブロックの上を歩くことが容易だが、階段と接続していないので、通り過ぎてしまう P10 上記研究で得られた結論 ・ブロックで伝達できる情報は限られているため、最低限必要な情報を確実に伝えるよう配慮することが重要 ・視覚障害者にとって最優先すべき情報は段差(ホーム縁端、階段)の接近(特にホーム縁端は重要) ・これらの箇所に警告ブロック(=点状ブロック)のみを敷設することで、危険に対する知覚を単純かつ効果的なものにするこれにより、現在のような敷設方法になったと考えられる。 ・誘導ブロック(=線状ブロック)については、複雑な曲がりや分岐をなるべく少なくして、単純な配置で敷設する →これにより、現在のような敷設方法になったと考えられる。 P11 ※図につき、テキスト版では割愛 資料3-1 P1 新技術を活用した転落防止対策等に対するフォローアップ(1) 第2回検討会(11月9日)、第3回検討会(12月11日)においてヒアリングした8件の転落防止対策等について、検討会での質疑や各委員へのアンケートに寄せられた意見・課題は以下の通り。 発言者:(A)視覚障害者団体・支援団体、(B)学識経験者、(C)鉄道事業者 1.ホーム端接近時に注意喚起等 1-1.AIカメラによるホーム端部歩行時の注意喚起システム(アイテック阪急阪神) <概要> ホーム端や車両に設置されたICタグからの信号を足首や白杖の先端に取り付けた受信機が感知し、バイブレーターの振動で注意喚起するもの。 <主な意見等> @状況判断のための情報が増えることにより、注意の分散が起こる可能性。(A)(B) A白杖により伝わる床面の凹凸の情報と機器による振動を混同する可能性。(A)(B) B白杖が重いこと、ホーム・車両へのタグ設置コストが課題。(A)(C) C車両へのタグ設置は落下の懸念あり。(C) ⇒ 白杖の検知や動きの追跡により対象者を特定するなど、適時適切な警告の実現に向けた検討が必要。 1-2.白杖による歩行支援システム(京セラ) <概要> ホーム端や車両に設置されたICタグからの信号を足首や白杖の先端に取り付けた受信機が感知し、バイブレーターの振動で注意喚起するもの。 <主な意見等> @状況判断のための情報が増えることにより、注意の分散が起こる可能性。(A)(B) A白杖により伝わる床面の凹凸の情報と機器による振動を混同する可能性。(A)(B) B白杖が重いこと、ホーム・車両へのタグ設置コストが課題。(A)(C) C車両へのタグ設置は落下の懸念あり。(C) ⇒ 白杖の軽量化、得られる情報の差別化など利用者にとって混乱なく利用できるような検討が必要。 P2 新技術を活用した転落防止対策等に対するフォローアップ(2) 1-3.画像認識によるホーム転落検知システム(パナソニックシステムソリューションズジャパン) <概要> ホームのカメラ映像から転落する人をAIで認識し、駅執務室に通報するシステム。 列車停止は駅係員により非常停止ボタンを押下して行うもの。 <主な意見等> @転落を検知後、即座に列車を緊急停止する仕組みが必要。(A)(B) (一方で、誤認によるダイヤ乱れの増加が懸念される)(C) A転落そのものを防止することはできないため、他のシステムとの併用が必要。(A)(B) B転落発生前の時点で転落に結び付きそうな動きをする旅客を検出して警報を発するシステムに改良すべき。(B) ⇒ 転落直後の対応として有効なシステムであり、検知精度の向上(誤認防止)、速やかな列車停止の仕組みの検討が必要(転落自体を防止する対策との併用等が必要)。 2.視覚障害者の案内・誘導 2-1.白杖等改札口見守りシステム(アイテック阪急阪神) <概要> 改札口のカメラの映像から白杖や車椅子をAIで認識し、駅係員へ 通知するもの。 <主な意見等> @障害者用ICカードの開発・普及とその活用を検討すべき。(A)(B) A手助けを求める視覚障害者が自発的に鉄道事業者側にリクエスできるシステムが望ましい。(A)(B)(C) B盲導犬や、白杖不使用者への対応が課題。列車からホームに降りてきた視覚障害者の検知ができない。(A)(B)(C) C有人駅でないと即時対応が難しい。(A)(B) ⇒ 盲導犬にも対応可能となるよう改良を進めるとともに、到着列車から降車した視覚障害者への対策との併用や、他のシステムとの連携も視野に入れた検討が必要。 P3 新技術を活用した転落防止対策等に対するフォローアップ(3) 2-2.視覚障害者移動支援アプリ「shikAI」(リンクス) <概要> 警告ブロックに貼付したQRコードをスマホで読み取り、専用アプリによる音声案内で誘導ブロック上を安全に誘導するもの。 <主な意見等> @自分の位置を確認できることは良い。(A) A歩きスマホになるおそれがある。(A)(B) B認識間違いや聞き間違いがあった場合は危険。(A) C新たな情報を得るために注意の分散が起こらないか懸念。(A)(B)(C) D電車の存在の有無も知らせないと転落が防止できない。(B) ⇒ホームドアの設置されているホームやコンコース階における誘導支援システムとして有効。ただし、注意の分散や歩きスマホと誤解されないような配慮が必要。 (本年1月27日より、東京メトロ西早稲田駅、明治神宮前駅など5駅(いずれもホームドア設置済)においてサービス開始) 2-3.スマホを用いたマッチング・クラウドサービス(アイテック阪急阪神) <概要> 視覚障害者がスマホアプリで送信した支援要請を駅係員等が受信し、案内・支援をするもの。地上設備が不要で安価、クラウドとスマホで完結するためシステムの拡充や複数事業者での展開が期待できる。 <主な意見等> @視覚障害者が必要を感じた時に支援要請できることはメリット。(A)(B) Aリモートサポート(スマホを活用して遠隔から視覚障害者を誘導するシステム)は、勘違いや聞き間違いなど安全性に課題。(A)(B)(C) B一般人による介助には資格要件の付与などが必要。(A)(C) ⇒低コストで拡張性が期待されるシステムであり、実際に駅を利用する視覚障害者が駅係員に介助要請する際の利便性・操作性等を検証するための実証実験を計画中。 P4 新技術を活用した転落防止対策等に対するフォローアップ(4) 2-4.音声標識ガイドシステム(エクシオテック) <概要> 改札口に設置した音声標識ガイド装置の利用エリア内でシグナルエイドを操作することで、音声案内や駅員の呼び出しを行うもの。 <主な意見等> @端末購入の利用者負担や、持ち物の増加が課題。スマホへの搭載が望ましい。(A) A動作する場所が改札付近に限定される。(B) B他駅から列車で到着して、降車した乗客には対応できない。(B) ⇒使用範囲が限られることから、より広範囲での使用に向けた検討が必要。 2-5.スマホを用いた信号情報確認システム(日本信号) <概要> スマホにより交通信号の状態を音声で知らせたり、歩行横断時の青時間を延長することにより、歩行者の安全を支援するもので、今後、駅ホームにおける情報提供に係る応用も考えられる。 <主な意見等> @歩きスマホになるおそれがある。(A)(B)(C) A駅ホームでの利用については、より具体的な検討が必要。(A)(B)(C) ⇒鉄道分野での応用に向けて更なる検討が必要。 P5 今後の進め方について(案) ○ これまでの検討会においてヒアリングした転落防止対策等に加え、今後、技術開発や実用化が期待され、有効と考えられる転落防止対策等については、引き続き、本検討会の場等を活用しながら、関係者との情報共有や意見交換、実証実験の実施などを進め、効果的な改良や早期導入に向けて取り組む。 ○ 導入にあたっては、本資料で赤字で記載した改良の方向性等に加えて、 (1)操作性等に関する視覚障害者の意向に十分配慮する (2)ホーム監視カメラなどの既存設備や今後導入が見込まれる(転落防止対策とは別の) システム、クラウドシステムの活用等により、コストの低廉化・導入の迅速化に努めることが重要と考えられる。