第10回 新技術等を活用した駅ホームにおける視覚障害者の安全対策検討会 議 事 要 旨 日時:令和4年2月24日(木)15:00~17:30 場所:中央合同庁舎第3号館8階特別会議室(※ウェブ会議) 【開会挨拶(権藤課長)】 ・本日はお忙しい中、完全ウェブでの開催ということとなったが、お集まりいただき感謝申し上げる。 ・本日は、前回の検討会に引き続き、駅ホームの長軸方向の安全な移動のための方策について、事務局で整理したこれまでの論点と、事務局からの提案について、ご議論いただく。また、ホーム中央部における触覚マーカーについてのその後の実験経過について大倉委員よりご報告いただく場も設けている。 ・また、視覚障害者に対する歩行訓練の試行も先日行ったので、そちらのご報告もさせて頂きたいと考えている。 ・昨年7月に中間報告を公表し、以降3回目の開催となる。中間報告において継続して議論する予定とした事項について、取り組みの方向性を見出し、課題解決に向けた仕組み作りなどについて今回も含めて、しっかり検討を進めて行きたいと考えている。 ・改めて、委員の皆様におかれましては、忌憚のないご意見を頂くようお願いしたい。 【議事(1)長軸方向の安全な歩行経路を示す方法について】 (国土交通省) ・資料1に基づき説明。 (成蹊大学 大倉名誉教授) ・資料2に基づき説明。 ○前提の整理についての意見交換 (障害者団体) ・資料の通りで概ね良いと思う。 ・ただ、1点だけ加筆が必要かと思う。声かけサポートや見守りなど人的な介助が有効であるというのはその通りであるが、現実論としては無人駅が48%を占め、さらにそれが増えている。また、有人の駅でも改札に人がいない時間帯も増えている。そう考えると、改札を通過して視覚障害者を見つけて、その人にすぐ声をかけて見守りをするっていうのは、現実的には厳しい。 ・よって、人的サポートだけで、この問題を解決していこうとするのは、かなり難しいというようなことが現実としてあるかと思う。そういうことを触れて、ホームドアや人的サポートだけに頼らず、ホーム長軸方向の歩行動線をしっかり確保していくという結論に至るのではないかと思う。 (学識経験者) ・今の障害者団体の意見についてです。改札を通過する視覚障害者を見つけて、その人にすぐ声をかけて見守りをするっていうのは、現実的には厳しいというご意見でしたが、これを判断するのは鉄道事業者ではないかと思う。確かに無人駅の問題というのはあるかと思うが、その部分に関しては事業者の意見を踏まえた上で実現可能性があるのかということについて決めていただいた方がよい。 ・それ以外のことについても、やはり仮定ではなく、鉄道事業者にとっての実現可能性も考えた上で、記載することが重要かと思う。 (障害者団体) ・概ね方向性としては良いと思う。特に「ホームドアによらない対策としては声かけ・見守りが有効」という点については、例えば無人駅であったとしても、私達は駅係員につながる手立てをして欲しいということを言っているので、そのような観点でいくと、この内容で盛り込まれているのではないかと認識している。 ・これを進めていく上では、鉄道事業者がいかに進めていくかという観点が重要であり、その上でのまとめという形でこれらの前提を整理されるのはよいかと思う。 (学識経験者) ・無人駅が増えているということは確かだが、本件を考えるにあたっては、バリアフリー整備の対象になっている駅の中で考えるべきではないかと思う。 (支援団体) ・最後の「これらの対策とは別に」という記載が引っかかる。ホームドアが整備されるまでの間、単独で長軸方向移動する視覚障害者に対して、ということだが、歩行訓練の立場で言うと単独というのは独力を意味しないので、そのような点をご検討頂きたい。 (障害者団体) ・AIを用いた新技術について、内方線付き点状ブロックより線路側の危険な場所にいたときに、その人を発見してすぐに危険であることをスピーカー等で伝えることができるのかが気になる。本人に危険を知らせるというところについて、タイミングは心配な点である。 (国土交通省) ・転落する方向に歩いている視覚障害者を検知してから、如何に短時間で注意喚起できるかがたいへん重要である。とくに短軸方向に歩いている場合には尚更迅速に注意喚起しなければならない。 (国土交通省) ・人的な介助にあたり、新技術を用いて介助がよりやりやすくなるようなことができればいいなということも考えている。ただ、資料の前提の整理の部分に書いた通り、声かけサポート運動や接遇ガイドラインがまずあって、その上で更にAIカメラ等の新技術を活用するというのを考えた方が良いかと考えている。この部分は中間報告の内容から抜粋したが、その時と同じような考え方である。 (国土交通省) ・駅を利用する際、改札等より早い段階で白杖を検知することで、その後ずっと見守り続けるという仕組みもある。また、スピーカーの指向性については、転落危険性のある方に向けて音声が伝わるような形で開発するというのが望ましいと思う。 (学識経験者) ・資料には、ホームドアが整備されるまでの間、安全な歩行経路を示す方法について検討を行った、と書いてある。しかし、本来この委員会は、転落事故、特に転落死傷事故を新技術等を使ってどう減少させるかについて議論することが目的であったと思うので、本来の目的に戻して欲しい。 ・本日の資料では、「長軸移動をするための歩行経路を示すことが安全対策になる」という仮説が前提とされているが、「長軸を安全に移動できれば事故がなくなる」と考えるのは論理の飛躍があるのではないかと思う。 ・本会議の本来の目的である、「ホームドアが整備されるまでの間、転落事故、特に転落死傷事故を新技術でどのように減少させていくか、について検討をする」というものでなければならないと思う。 (国土交通省) ・お話の通り、第一に転落による事故をなくすということであり、その中で実態として長軸移動をしなければならないという点について検討を進めることによって、死傷に至るケースが減らせるものと理解しており、こうした考え方で進めていきたい。 (学識経験者) ・まず本来の目的を書いていただいた上で、そのための一つの方法として歩行経路を示す方法について今回は検討した、ということであればよいかと思う。 (障害者団体) ・この会議の目的は、基本的に視覚障害者のホーム転落をなくすことで、ホーム転落は年間約75件起きていて、そのうち2人ぐらいが死亡しているという現実がある。ホーム転落そのものが無くなれば、当然死亡事故はなくなるし、そもそもその死亡しなかった73件においても怪我をしているケースはいっぱいある。 ・そう考えると、そもそも転落を防ぐということがこの会議の最大のミッションだと思う。そこで、新技術を使う使わないはさておき、色々な策を考えて、事故を減らして行くと言うことが、この会議に求められているのだと思う。 ・中間報告に既に書いてあり、転落した方全体の61.4%が長軸方向に歩いており、そのうちの約半数がホーム中央の何もないエリアを斜めに歩いてしまって転落している。または内方線付き点状ブロック沿いを歩いている事例も約半数ある。このような結果から、やはり駅員がいなくても、周りに声をかけられなくても、長軸方向を一人で歩いていく時に最低限安全な歩行動線を確保することが一つの有効な転落防止策と考えられる、という流れでこの話が来ていると思う。 (国土交通省) ・転落による死傷をなくすということが一番の目的であるが、一方で現実的に長軸方向に移動しなければならない場面があるので、そこに新技術を導入してはどうかということについて丁寧にまとめていきたい。 (障害者団体) ・やはりホーム先端に近づいたときにいかに気づかせるかというのが非常に重要だと思う。ホーム端側を歩いていようとホーム中央を歩いていようと、逸れていけば転落するので、まずは転落しそうなところでどう気づかせるか、どう守るかというところから、検討されてきたかと私は認識している ・原則として長軸方向は歩かないほうが望ましいというのは、これが国交省のそもそもの姿勢だと思う。長軸方向を歩いていください、というわけでは今もない。であるならば、やはりやむを得ず長軸方向を歩かざるを得なくなった時に、勘違いなどをして転落しない、というような観点でこの検討が進んできたというようにまとめていくのが良いかと思う。 (国土交通省) ・検討の前提が明確にわかるような書きぶりで整理させていただきたい。 ○ホーム中央線状ブロック敷設案についての意見交換 (学識経験者) ・ホーム中央線状ブロック敷設案と内方線内側活用案というのが大きな2つの柱になっているが、前提のところで書かれていた通り、この2案以外に、これまで人的支援や歩行訓練を使って長軸方向の移動をサポートしましょう、という議論も行われてきた。 ・新技術で人的支援を受けやすくする方法については、これまでにも提案がありましたし、実現可能性が高い方法ではないかと個人的には思っている。ぜひ、2つの案だけでなく、人的支援と新技術を組み合わせる方法についても議論していただきたいと思う。 (国土交通省) ・介助者とのマッチングを支援する技術についても、駅ホームからの転落を防ぐための人的支援として整理できるものと考えている。 (学識経験者) ・ぜひお願いしたい。必要な時に支援に出会えないというような問題点がある。駅員が少ない駅等ではなかなか難しいところがあるので、それを新技術で何とか対応する方法や、遠隔の誘導が上手くいくかどうかは分からないが、そのような新技術と人的支援という組み合わせの検討もあって良いかなと思う。ぜひ今後の議論の中に入れていただきたい。 (国土交通省) ・「その他の案」という資料で、中央線状ブロック敷設案や内方線内側活用案だけでなく、その他の案も検討すべきと論点として記載させていただいている。この内容を膨らませて考えてみたいと思う。特に、新技術で白杖を持った方が改札を通過されたというカメラからの情報を速やかに駅係員に通知するシステム等も、新技術として提案されており、そういった視点も含めて次回以降の議論の中で、事務局としても整理してみたいと考えている。 (学識経験者) ・今の説明を聞いて安心したが、やはり「その他の案」でまとめるのではなく、実現可能性としてかなり高い方法ではないかと個人的には思っているので、人的支援や駅に特化した歩行訓練も同等に取りあげていただくことがよいかと思う。 (障害者団体) ・人的サポートでこの問題が解決されるのであれば、非常に理想的だと思う。ガイドラインにも、駅員は声かけや見守りを行う、声かけをして誘導を断られたとしても乗車まで見守っていくということが書いてある。 ・新技術という観点では、例えば駅員が有人改札で清算業務をしている際に、視覚障害者の通過に気付けないような場合に、新技術で改札を通過した人を検知して、駅員に知らせるという技術が今開発されているが、この技術でホーム転落をなくすということを実際に最後まで成し遂げるには、人員の確保ということが必要になってくると思う。視覚障害者が通過したことの合図があっても、駆けつけられる人員がいなければ、ただ、合図が機械的に送られるだけとなってしまう。改札にちゃんと人がいるとか、その合図を聞いて駆けつける人がいるとか、そのような体制が組めているのかどうかが重要であり、それぞれの鉄道事業者がそのような人員を確保するかどうかに全てかかってくると思うので、新技術だけで完結しない。 ・人件費を増やして、そういうことができるかどうかというのは、やはり鉄道事業者が現実的にできるかどうかであり、それはどこかで示していただきたいと思う。 ・ホームの中央誘導ブロック敷設案について、賛否両論を示しているが、最後は早く実証実験をして、多くの視覚障害者の意見を聞くことに尽きるかと思う。 ・中央に誘導ブロックがある駅とない駅が混在すると混乱するのではないかということについて、どのような設備でも全国の駅に1日でつけることは困難だと思う。既にホームドアは全国9.8%設置されているが、90.2%に設置されていない。ある島式ホームでは右側のホームにはついているが、左側はついていない。これは危険である。 ・内方線も同様で、1万人以上の駅には設置されたが、まだまだ内方線が設置されていない駅もある。警告ブロックもそうで、先日の新聞報道によると、全国2割の駅には警告ブロックが着いていない。 ・そのようなことを考えると、どのような設備であっても、やはり計画を立てて予算をつけて順次設置していくものであり、設置状況については視覚障害者にアナウンスをして、きちんとそれぞれのメンタルマップに描いてもらって、そこを歩いてもらう、そういうプロセスが必要ではないかと思う。 (国土交通省) ・国土交通省としては、この場で様々な新技術や、それらの組み合わせや使用条件などを整理して、議論が進められれば良いと思うが、現地での適用については事業者の判断による部分もある。 (学識経験者) ・中央線状ブロックと新技術の組み合わせについて、上手い組み合わせが取れれば非常によいかと思うが、警告ブロックが忘れられているような気がする。やはり警告ブロックは転落防止のために役立つわけで、三重のセーフティネットが使えると理解したほうが良いと思う。 ・スマホを使う新技術について、視覚障害者の方に何かデバイスを持ってもらうというのは、以前、歩きながら二重課題で振動刺激の弁別をしたという実験を紹介したが、まさにこの二重課題にあたる。この場合、特にオリエンテーションの維持がかなり厳しい状況になると、スマホからの情報を捉える余裕がないという可能性があるので、これについては慎重に扱った方が良いと思う。 (国土交通省) ・スマホを使う新技術については、ホームドアが設置されているホーム上において利用でいるという制約があることは、これまでもたびたび指摘されており、今後の開発や実際の活用にあたっての留意点であると理解している。 (学識経験者) ・今の学識経験者の意見に私も賛同する。スマホを用いて音声案内による誘導を行う技術については、ホームドアがある駅で導入されている技術である。二重課題で注意が分散されるという問題が生じるため、ホームドアが設置されている駅に限定されていると考えられる。 ・そのため、他の技術と同様に掲載されるのは問題があると思うので、非常に慎重に取り扱っていただきたい。 (障害者団体) ・スマホの新技術について、国交省としては、売店等を迂回するときに方向性を失うんじゃないかと言う懸念があるので、対策として出されたと思う。そのような懸念を払拭するためには、このような対策を提示しておくことは大事なのかもしれない。 ・基本的に、以前から申し上げている通り、ある程度の歩行能力のある人は売店等の壁面を使って迂回することができると私は思う。スマホアプリはそのような懸念に対しての策ということであれば出してもいいと思うが、実際には、売店に着いたらスマホを出してアプリを起動してから迂回するということは、ほとんどの視覚障害者はしないのではないかと思う。 ・ホーム中央の誘導ブロック、スマホアプリ、ホーム端に行った時の警告の中でどれが一番大事かというと、当然ながらホーム中央の誘導ブロックを設置するのが第一で、その次としてみればホーム端に寄って行った時に警告を鳴らす機能の導入、そして最後に、売店を迂回するためのスマホアプリという順で、重要度が違うと感じた。 (支援団体) ・まず、人的サポートがなぜできないか、充実させるためにはどのような課題がありどうすれば転落防止のために求められた援助を求められた方にできるのか、というところの課題の洗い直しと、鉄道事業者側で、AIの活用も含め、どのような体制であれば人的支援が可能になるのか、ということを今後検討して行く必要があるのではないかと考えている。 ・中央の誘導ブロックについて、敷設の過渡期には敷設されている駅とされていない駅があるということだが、最終的に敷設できない駅、あるいは敷設できない箇所がある。大倉委員が示されたように、最低でも80cmの間隔が必要だということもある。 ・以前、迂回することで定位をなくすという事以外にも、懸念するところがあったと思うが、今回の大倉委員の実証実験においても、その辺りの不安要素は解消されないのではないかと思う。 ・中央の誘導ブロックを敷設することが転落防止につながるのか、安全性が確保できるのかというのは、まだ懸念するところがある。人的支援は、有効性があるのではないかということで、もう少しその辺りの検討が必要ではないかと感じる。 ・スマホのアプリで誘導するというところは、他の委員と同意見で、ホーム上は音や白状の察知等、様々な情報を同時に入手しながら歩かないといけないというところがあるので、プラスアルファの情報が増えるというところは非常にリスクが高くなるのではないかと懸念する。 (障害者団体) ・スマホを使っての誘導で注意力が散漫するのは、当然のことだと思う。 ・白状には先端の形状の違い等、様々な種類があり、それによって警告ブロックか誘導ブロックかの判別が非常にわかりやすいものと分かりにくいものがある。そういう意味でも、例えば警告ブロックと誘導ブロックが判別できるような新技術はないか。 (国土交通省) ・事務局としては、白杖そのものを工夫した技術開発はあったが、その中で明確に、例えば警告ブロックと誘導ブロックを明確に判別するといった目的で開発されたものは把握していない。白杖そのものの技術開発により、たとえば白杖が重くなることで普段と動き方が変わり、それが何らかのリスクや負担につながることも指摘されていたやに記憶している。 (障害者団体) ・ホームドアの設置について、この調子で行くと、もちろん全駅に設置されることを夢見ているわけではないが、5年、10年では半分もいくかどうかというような感じだと思う。技術に期待はするが、併せて、白杖を正しく使うと言うことを大前提としなければならないと考えている。 (障害者団体) ・スマホアプリの使用については慎重な取り扱いが必要だということは、その通りだと思う。この技術は使える可能性がある、というようなところにつながる可能性があるが、利便性向上に繋がるとは思うものの、転落防止に繋がるとはとても思えない。ここは慎重に扱うということであれば、それなりの掲載の仕方、あるいは掲載しないという方向を考えてほしい。 ・もう一点、中央を歩く場合でも、内方線側を歩く場合でも、視覚障害者以外の利用客のことを考える必要がある。道路や建物においては、視覚障害者以外の人で点字ブロックが非常に邪魔もの扱いされている事情がある。この限られたスペースの中に突起物を置いた場合に、車椅子、杖歩行している人、ベビーカー使用の人、こういった人たちへの影響がないのかというのを合わせて考えた方が良い。 (学識経験者) ・ホームの売店等を迂回するというのは中央ブロックをたどっていく場合の話である。一方、ブロックが敷設されている駅とされていない駅が混在する場合に問題になるのは、中央ブロックを見つけることだと思う。事務局の提案には、中央ブロックをたどる場合の話は書かれているが、混在に関連する問題が書かれていないように思うので、その部分について補足していただきたい。大倉委員の実験でも、あの少数の被験者の中でさえ、中央ブロックと縁端ブロックを間違うという勘違いが実際に起こっている。この問題は絶対軽視できないと思う。 ・内方線付き点状ブロックを開発する際には、全国の駅に一律に導入できるように、点状ブロック内側のエリアを活用する形にデザインした。つまり、混在を招かないようになっている。確かに全国に敷設されるまでには20年近くかかっており、その過程では内方線がある駅と無い駅が混在する状況はあった。しかし、内方線が無い場合でも、点状ブロックによる警告という最低限の機能は存在しており、内方線が未設置であるために安全を損ねるということはない。だから、中央ブロックの混在で起こる問題を、内方線付きブロックの導入に時間がかかったという話と一緒にするのは適当ではない。 (障害者団体) ・内方線が多くの駅に設置できるというのは、警告ブロックの内側に設置できるということだけであって、ここを歩行ルートとできるという見通しで設置されていたわけではない。事故のあった青山一丁目駅は警告ブロックの上に柱があり、以前示した蕨駅も同様。 ・当然ながら、内方線の内側に柱がある駅もたくさんあり、内方線は警告ブロックが設置されてその内側に付けられるというだけであって、そこが歩行ルートとして確保できるという話とはまた違うと思う。 ・中央ブロックがある駅とない駅について、ない駅であれば階段を下りたところで、アルファベットのTのような字になっている。ある程度まっすぐ進んで、左右の最寄りのドアに繋がっている。そこから先なければ中央ブロックはない。そのため、今までと同じで、ある人は真ん中をそのまま突っ切っていくし、ある人は本来頼るべきではない警告ブロック沿いを歩いて行くということだと思う。Tが伸びていった場合は、そこをまっすぐ歩けるようになるということだと思う。 ・設置できない部分があるのではないかということについて、それは島式ホームの先端の方の狭い部分だと思う。大崎駅や目白駅がそうだが、本当に狭いところがあるのは知っている。以前の会議でも申し上げたが、阪急電鉄が取り組んだように、必ずしも利用客が多い駅ではないが、かなりホームが狭い駅というのは誰にとっても危ないということで、ホームドアの設置を優先する、これはやはり貴重な発想だと思う。 ・それから、大倉委員の発表にあったように、ある程度狭いところは中央ブロックを手前で止めてしまって、それ以上先は行かせない。そのことをきちんと脳内マップに描いてもらって、そしてどうしても降車駅で端まで行かなければいけなければ、降車駅で移動する。そのような安全な歩行ルートを作ればいいのであって、ごく一部のホーム先端の部分が設置できないからといって、多くの部分の安全な歩行ルートさえも設置をやめようと言うのは本末転倒かと思う。 (学識経験者) ・資料にホーム端に近づく視覚障害者を検知し、注意喚起する新技術について記載していただいているが、この新技術はホーム中央線状ブロック敷設案でも内方線内側活用案でも有効な方法ではないかと思う。どの程度効果があるかは試してみないとわからないところはあるが、どちらの案にとっても効果が期待されるような新技術ではないかと思っている。 ・どちらの案も長軸方向を移動していて何らかの原因でホーム縁端に行ってしまうことはあり得ると思うので、そういった時に直接的に事故を防止できるのは、こういった新技術ではないかと思う。こういった直接的に転落を防止することができる新技術については、ぜひ今回の実証実験の中で組み合わせでの効果を検討して頂けるといいのではないかと思う。 ・効果を検証する際に、色々な提案が今出ているが、実現可能性の観点というのは極めて重要だと思う。コストや設置期間、それから最も重要なホームドアの設置に影響しないかどうかを検証すると良いかと思う。 ・事務局提案であった実証実験について、実証実験の内容は1つしか書いていないが、1つの実証実験だけではなく、フェアにいくつかの実証実験を実施していただく必要があると思う。また、実証実験を実施する際には、どこかの仮想の空間でやるのではなく、可能であれば長軸移動で事故があった駅で実施していただく必要があると思う。そのような駅で長軸移動する際に、色々な方法の組み合わせで、問題が解決できるかどうかという検証をしていく必要性があるのかと思うので、ご検討いただきたい。 (国土交通省) ・ご意見の通り、事務局としては、内方線内側活用案にしても、あるいは中央線状ブロック敷設案にしても、プラスアルファで新技術が必要だということである。 ・何より転落防止が目的であるため、ホーム端に近づく視覚障害者を検知し、注意喚起する技術と組み合わせることが有効であると考えている。 (国土交通省) ・中央線状ブロックが敷設されている駅、されてない駅が混在する場合について、アナウンスにより周知すれば問題ない、もしくは混乱が生じるということで論点を示させていただいた。仮に新技術でサポートができて、順次中央線状ブロックを導入するにしても、駅によって時間差が出るのは間違いなく、そういう意味では設置されている駅、されてない駅の混在というのは避けられないというのは仰る通りである。 ・敷設されている・されてないというアナウンスを、乗車する時のパターンであれば、改札からホームまでの間にお知らせできるタイミングがあると思うが、降車時にどのように適切かつ瞬時にお伝えできるかというところが論点かと思っており、事務局内でも議論したところである。そのような点も、提案の中に盛り込んでいきたいと考えている。 ・スマホアプリの件については、ご指摘の通りである。書いているつもりではあったが、元々の開発目標、目的がそもそも異なっているため、現在の開発状況ではこれが転落防止に直ちに使えるという認識は事務局にもない。このような技術が今提案されているので、このような技術を応用して、応用編で何かできないか、といったレベルである。今後載せていくかどうかも含め、仮に載せるにしても、そのような前提であることは、しっかりと整理して資料の中での取り扱いに注意していきたいと思っている。 ○内方線内側活用案についての意見交換 (障害者団体) ・先ほどの国土交通省の発言について、降車駅の件があったが、事故が起こっている72.9%は慣れた駅である。ほぼ全盲者は、初めて利用する駅では駅の構造が分かっていない限り、歩くのが非常に難しい。私もそうだが、初めての駅や慣れていない駅では基本的に駅員に誘導を依頼する。またはガイドヘルパーを最初から同行してもらう。絶対ないかというと、若干はあるかもしれないが、基本的に知らない駅で、降りて歩いていくというより、知っている駅、ちゃんとメンタルマップを描いてる駅を独り歩きするのが基本かと思う。 ・内方線内側活用案については、実証実験をきちんとやって、どちらがいいかは視覚障害者の多くに出してもらえばいいと思う。 ・あらかじめ考えられる懸念として4つほど挙げられる。まず1点目は、今の事務局案だと視覚障害者歩行エリアをただ黄色く1m位を塗っただけということだと思うが、前回、塗っただけではなく内方線と反対側にもまあ内方線のような一本線を設置して左右の領域がきちんと分かるようにすべきだという意見があったかと思う。全盲者はそもそも黄色く塗ってあるかどうかも分からないし、どこが自分の歩く範囲でどこまで杖を振っていいかもはっきりしない。内方線を頼って行くというのは、危険な領域に近づいて頼っているということなのでどうかと思う。そもそも、黄色く塗っただけという案については、この会議メンバーの中でさえ、誰も当事者は賛成してない。 ・2点目として、ラッシュアワーだけ下がるということだが、本当に一般客がラッシュアワーにちゃんと下がってくれるか。今はラッシュだから下がろう、今はラッシュじゃないからここまで行っていい、という区別が定着するのか。私は非常に難しいのではないかと思う。 ・3点目として、ラッシュアワーの時間の定義がはっきりしない。郊外と都心では異なるかもしれないし、ラッシュアワーでなくても誰かが立っていた時にはぶつかるということが起こる。視覚障害者にとってこの定義がわかりにくいのではないか。 ・4点目として、ラッシュアワーじゃない時に人にぶつかることも想定されるが、そのような起こると、内方線付き点状ブロックの内側に人が立ってることもやっぱりある、と認識され、それほど事態が改善されないのではないかと懸念される。 (国土交通省) ・内方線の反対側にもガイドになるようなものがあれば、という話は、ペイント以外の必要なものとして実証的に実験し問題点をクリアにしていく必要がある。 ・時間帯を区切ることについて、場所によって時間帯が違うということはあるとしても、たとえば普段から内方線付き点状ブロックの背後の部分を視覚障害者が優先的に歩けるようにするということを啓蒙的に取り組む事が重要かと思う。そうすれば、いずれそのエリアを優先的に使うことができるのではないか。駅の混み具合もあるが、実際に実証実験に協力していただける事業者を探して、やっていく必要があると考えており、今いただいたようなお話は留意点として受け止め、実証実験に繋げるような形で進めさせて頂きたい。 (国土交通省) ・ラッシュ時間帯とそれ以外で分ける発想を今回提案したのは、乗車待ち列や荷物の支障で視覚障害者歩行エリアの確保が難しいのではないかと言う論点を踏まえてのこと。ラッシュ時間帯は、そもそも通常の利用者も多くおり、駅員がホームに出ているような状況が一般的ではないかという発想が前提である。その時間帯は利用者や駅員の支援というものを基本とすることで、内方線内側のエリアを必ずしも確保しなくても支援で対応できるというような時間帯ではないかと考えている。ラッシュ以外の時間帯で歩行エリアを導入できれば、解決できるのではないかという発想である。 ・これもあくまでも提案であり、皆様のご意見を伺って、そもそも現実的でないということであれば、提案内容を再検討するということになろうかと思う。 ・また、資料ではペイントをして終わり、という状況になっているが、逆に言うと、それで済めば一番楽だということ。それでは足りないと言うような、ブロック的な発想が必要ではないかという話であれば、一つの留意点として、今後の議論につなげていくということも考えている。 (学識経験者) ・ラッシュ時かどうかで分けるというのは、実現可能性の観点からすると、なかなか難しいと思う。そもそもこのように移動するのが良いかという問題もあるが、新技術をどのように組み合わせるかの方がより重要だと思っている。 ・私が毎日利用している駅では、内方線内側活用案で図示されているエリアを通路としている。その駅はホームドアが付いているので安全ではあるが、その通路を挟んで乗車待ちエリアがある構造になっている。そのような通路を視覚障害のある人が利用できるか気になっているが、事業者にヒアリングをして実現可能性等について考えた上で、様々な実証をやるのも良いかと思う。 ・内方線の内側を使うか、中央を使うかというよりも、新技術をどう組み合わせるかということの方が、直接的な転落防止に役立つのではないかと考えている。 ○その他の案についての意見交換 (学識経験者) ・最初に申し上げた通り、人的支援や歩行訓練に関しては、その他と一括りにするのではなく、独立した項目として挙げていただくようにお願いしたい。 【議事(2)歩行訓練の試行実施について】 (国土交通省) ・資料に基づき説明。 (学識経験者) ・当日見学したが、参加された訓練士の方から実際の車両で訓練を行うことが有効だとの声があった。実際の歩行訓練は、停車時間等の制約もあり終着や始発駅で繰り返し行うが、そのような駅ではホームドアの設置が進んでおり、実際の車両での訓練ということが難しくなっているとのことである。鉄道事業者にも協力いただいて、ホームドア未設置駅での訓練を実施できるようにしていただければと思う。 ・見学に来ていた他の鉄道事業者の方にとっても、視覚障害者の歩行方法を理解するいい機会になると思うので、今回は車内でスライド法の歩行訓練を行ったということだが、ホーム上で白杖を使ってどのように移動しているかなどを見てもらう機会があればいいと思う。 (障害者団体) ・このような歩行訓練の回数を増やしていくため、アクションプランやロードマップのようなものを作って推進していくべきではないか。歩行訓練士がそもそも少ないことやエリアによる偏りがあること等、課題を解消しなければ全国展開も困難ではないか。 ・また、鉄道事業者に協力してらうということでは、歩行訓練士会と鉄道事業者が連携して、歩行訓練をうけやすくしてもらうことや、駅員に研修を受けてもらい駅員による訓練をできるようにすること、そこまでいかなくても、最低限視覚障害者に駅の構造を説明するときにどのような情報が求めらているかを理解してもらうということも考えられる。 (学識経験者) ・着実に積み重ねていくしかないと思いますので、どこでも歩行訓練が受けられる体制を、省庁間の連携も含めて作り上げていただきたい。 ・様々な盲学校に行くことがあるが、ある盲学校では最寄り駅で体験会を毎年行っていると聞いている。一方、盲学校から要望してはいるが鉄道事業者の協力が得られない例も聞く。盲学校や福祉施設の最寄り駅で体験ができるような体制作り等も含めて、アクションプランを作成して着実に進めて行くのは良いと思う。 ・歩行訓練士の数という面では、十分な収入がないため、仕事として成立していない面があると思うので、今回のような体験会を行う際には、仕事として位置付けられるようにすべき。 (支援団体) ・盲導犬訓練では、駅ホームでの訓練と同時に、当該視覚障害者が実際に使うルートで改札から乗車までの訓練というものも実際の歩行訓練では行っている。 ・白杖訓練の充実のためには、歩行訓練士の収入の観点からというところでは厚労省と連携して充実させていくことも必要ではないか。 (支援団体) ・この度の歩行訓練は、2時間、列車を留めてホームを使わせてもらうということで大変な準備が必要だったと思うので、もう少し簡易にできる方法も検討していきたい。 ・車内ではなくホーム上でスライド法の訓練を行った方が良いとのことだが、前回関西で行った際にホーム上で行ったところ、長軸歩行を推進しているような切り取られ方をされたということもあり、今回は車内で行ったもの。 ・歩行訓練士の数については以前の検討会でも報告させていただいたが、どのように確保していくかということは皆様のお力を借りて検討していきたい。 (国土交通省) ・歩行訓練を普及させていくための段階的な取り組みについて検討を進めたい。 (国土交通省) ・歩行訓練の試行実施は、皆様から概ね好評だったということで安心している。今後これを継続的に、より簡易に実施できるように、また鉄道事業者には過度な負担にならないような仕組みを考えていきたい。 【その他】 ○駅ホームにおける音響案内装置の整備状況に関する調査結果について (国土交通省) ・資料(プレス)に基づき説明。 (障害者団体) ・日視連からの要望書にもあるが、特に無人駅において総合的な対策を求める声が地方から出ている。一部の地方では、ホーム中央に誘導ブロック敷設することや、音響案内装置を設置することもこの総合的な対策に含まれると考えていると聞いている。音響案内装置が設置されていない駅においても、ぜひきちんと設置をしていただきたいと思う。 ・装置の向きについて、ガイドラインでは線路と平行にスピーカーの向きを向けるとなっているが、基本的に視覚障害者の誘導は、ホーム中央の線路と平行にまっすぐ誘導していくことだと思う。これはホーム中央に誘導ブロックがあれば、その誘導ブロックに沿って鳥の鳴き声を目指してくれば、まっすぐ階段にぶつかるという合理性のある話だと思う。内方線の内側を活用することを考えると、降車した時に鳥の鳴き声が1時の方向から聞こえたとして、そのまま警告ブロック沿いを歩いてきた時に、必ずそれは2時3時というように斜めにずれていってしまう。そうなると、線路と平行にスピーカーの音を鳴らすという指向性とも矛盾してくるということなので、鳥の鳴き声を最大限有効に機能させるためにも、また、歩行訓練を最大限意味あるものにするためにも、やはりホーム中央での歩行経路が必要。 (学識経験者) ・なぜ誤って短軸方向にスピーカーを向けたのか。 (国土交通省) ・内方線付き点状ブロックの敷設により転落を防ぎ、誘導ブロック上を移動することが基本的な整備であり、音響案内装置はその補足的な整備となっている。今回短軸方向に向いていた音響案内装置について、一例として、当初は然るべき方向に設計されていたものの、駅の改修工事の際に一時的に向きを変えて設置し、そのままとなってしまっていた、ということが現場で起きていたということがある。 ―以上―