都市計画
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都市計画運用指針(平成15年4月)
 
T.運用指針策定の趣旨
 
 
 現行の都市計画法は、昭和30年代後半からの高度成長の過程で、都市への急速な人口・諸機能の集中が進み、市街地の無秩序な外延化が全国共通の課題として深刻化していた社会経済状況を背景に、線引き制度、開発許可制度等の導入を骨格として昭和43年に制定されたものである。以来、基本的には都市計画制度の運用の面においても、こうした新たな枠組みに対応して、スプロールの防止を図る一方、計画的な新市街地の開発・誘導に重点が置かれるなど、集中する人口や諸機能を都市内でいかに適正に配置するかという考え方が反映された運用の積み重ねが行われてきたものといえよう。
 しかしながら、都市をめぐる社会経済状況は大きく変化してきている。人口については、少子高齢化の急速な進行により、都市への人口集中は全国的には沈静化してきており、一般的には都市の外へ向かった開発圧力も小さくなってきている。また、産業の立地については、交通・通信網の整備とモータリゼーションの進展等に伴い、立地上の制約条件がなくなってきている。さらに、質の高い住まい方、自然的環境や景観の保全・創出に対する国民的意識も高まってきている。
 こうした、いわば都市化の時代から安定・成熟した都市型社会への移行という状況に対応するために、今般、都市計画法の改正が行われたところであるが、都市計画制度は実際に使われてこそ有効に機能するものであることからすれば、今後の運用は、上に述べた今回の改正の背景である社会経済環境の変化に的確に対応して行われることが望まれる。そのためには、制度の企画・立案に責任を有する国として、今回の改正を含め、都市計画制度全般にわたっての考え方を参考として広く一般に示すことが、地方公共団体の制度の趣旨に則った的確な運用を支援していくうえでも効果的である。
 
 もとより都市計画制度の運用は、自治事務として各地方公共団体自らの責任と判断によって行われるべきものであるが、都市計画法は、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与するという目的を達成するために、各地方公共団体が適切に都市計画制度を活用することを求めているところである。本指針は、国として、今後、都市政策を進めていくうえで都市計画制度をどのように運用していくことが望ましいと考えているか、また、その具体の運用が、各制度の趣旨からして、どのような考え方の下でなされることを想定しているか等についての原則的な考え方を示し、これを各地方公共団体が必要な時期に必要な内容の都市計画を実際に決め得るよう、活用してもらいたいとの考えによるものである。
 また、本指針はこうした考え方の下に策定するものであることから、地域の実情等によっては、本指針で示した原則的な考え方によらない運用が必要となる場合もあり得るが、当該地域の実情等に即して合理的なものであれば、その運用が尊重されるべきである。
 
 なお、本指針は、上記の趣旨を全うすることにとどまらないものであり、都市整備に関して国が行う各種の施策支援についても、今後、上記の趣旨を踏まえ、この指針の考え方に沿って行われるべきものと考えている。
 
(注)本指針の策定の趣旨は、本章に示したとおりであり、地方自治法第245条の4の規定に基づき行う技術的な助言の性格を有するものである。したがって、都市計画法第18条第3項の規定に基づき都道府県が決定する都市計画について国土交通大臣が協議を受ける場合に、当該都市計画が同意をすべきものであるかどうか国土交通大臣が判断する視点を示しているものではない。
 
 
U.運用指針の構成
 
 
 Tに掲げた運用指針の策定の趣旨に照らし、本指針は以下の三部から構成している。  
 ○都市計画制度の運用にあたっての基本的考え方
 今後の都市のあり方を踏まえ、土地利用、都市施設等の都市計画制度をいかに活用していくことが望まれるか、制度の企画・立案に責任を有する国としての基本的な考え方を示すもの。
 
 ○都市計画制度、手続の運用のあり方
 適時適切に具体の都市計画制度、手続が運用されるよう、個々の都市計画の決定、変更等にあたって参考となる考え方、基準をわかりやすく示すもの。その意味で、地方公共団体の実際の判断に十分役立つよう、具体的な数値等を例示することにより、よりわかりやすい形で示すことに留意したところ。
 
 ○個別政策課題への対応
 社会経済状況の変化を踏まえ、都市の抱える諸課題を個別にとりあげ、都市計画的視点からする対応の基本的な考え方を明示すること等により、各地方公共団体が目指すべき都市像を実現するための取り組みを支援しようとするもの。(別途、順次本指針に追加される。)
 
 
 本指針においては、都市計画制度のうち、今後、地方公共団体の都市計画で活用されることが多いと想定されるもの及び国として積極的に活用される必要があると考えるものについて指針を示したところであり、今後、必要に応じて追加がなされて行くものである。
 また、今後、各地方整備局や地方公共団体に対するアンケート調査等により、都市計画の運用実態を把握のうえ、都市計画の運用上の課題を整理し、これを毎年社会資本整備審議会都市計画分科会に対して報告を行うこととし、必要に応じて、本指針の改訂を行うこととする。また、都市計画制度の改正があった場合には、適宜本指針の改訂を行うものである。
 
(注)本指針の語尾等の表現について 
本指針に記述されている各事項間には当該事項によるべきとする考え方に差異があることから、次のような考え方で記述している。
[1]〜べきである。〜べきでない。
 法令、制度の趣旨等から記述された事項による運用が強く要請されると国が考えているもの。
[2]〜ことが望ましい。〜ことは望ましくない。
 制度の趣旨等から、記述された事項による運用が想定されていると国が考えているもの。
[3]〜ことが(も)考えられる。
 記述された事項による運用を国が例示的に示したもの。

 
 
V.都市計画制度の運用にあたっての基本的考え方
 
 
V−1 都市計画の意義
 
 都市計画は都市内の限られた土地資源を有効に配分し、建築敷地、基盤施設用地、緑地・自然環境を適正に配置することにより、農林漁業との健全な調和を図りつつ、健康で文化的な都市生活及び機能的な都市活動を確保しようとするものである。
このためには、様々な利用が競合し、他の土地の利用との間でお互いに影響を及ぼしあうという性格を有する土地について、その合理的な利用が図られるよう一定の制限を課する必要があるが、都市計画はその根拠として適正な手続に裏打ちされた公共性のある計画として機能を果たすものである。
従って、都市計画は制限を通じて都市全体の土地の利用を総合的・一体的観点から適正に配分することを確保するための計画であり、土地利用、都市施設の整備及び市街地開発事業に関する計画を定めることを通じて都市のあり方を決定する性格をもつものといえる。
安定成熟した都市型社会にあっては、全ての都市がこれまでのような人口増を前提とした都市づくりを目指す状況ではなくなってきており、都市の状況に応じて既成市街地の再構築等により、都市構造の再編に取り組む必要があるが、その取り組みにおいては他の都市との競争という視点に立った個性的な都市づくりへの要請の高まりに応えていかなければならない。さらには、幅広く環境負荷の軽減、防災性の向上、バリアフリー化、良好な景観の保全・形成等、都市が抱える各種の課題にも対応していく必要性が高まってこよう。このため、各地方公共団体にあっては地域の実情を十分踏まえつつ、これまで以上に都市計画を積極的に活用することが求められる。
 
V−2 運用にあたっての基本的考え方
 
1.総合性、一体性の確保
 
 都市計画は農林漁業との健全な調和を図りつつ、健康で文化的な都市生活及び機能的な都市活動を確保するために定められるものであり、この目的の実現に向け、必要と考えられる事項の全てに配慮して、個々の都市計画が総体として定められるものでなければならない。また、定められる個々の都市計画の内容も、土地利用規制と都市施設の計画との連携等、一体のものとして効果を発揮しうるよう総合的に決められることが必要である。
 このように都市計画の総合性、一体性が確保されることにより、公的セクターを主とした公共施設等の基盤整備と、民間セクターを主とした建築活動が、バランスよく進むことで都市の健全な発展と秩序ある整備の実現を期そうとするものである。
 
 上記の意味で、都市計画は、総合性、一体性が確保されなければならないが、都市は固定的でなく、社会経済状況の変化の中で変化するものである以上、目指すべき都市像を実現するために、不断に変更も含めて新たな都市計画が決定されていくという動的な性格を有していなければ、その機能が十分に果たされるものではないと言えよう。そして、新たな都市計画の決定は、総体としての都市計画という観点から、その都度、総合性、一体性が確保されているか吟味されるべきものである。特に、今後の安定、成熟した都市型社会では、限られた都市空間について、いかに地域の実情にあわせてその利用の適正な配分を確保して行くかとの視点が重視されてくるものと考えられ、これまで以上に都市計画の総合性、一体性の確保に意を用いて行く必要がある。  
2.都市計画区域の指定
 
「一体の都市として総合的に整備、開発及び保全」すべき都市計画区域は、都市計画を策定する区域の単位となるものであり、その指定が適切に行われることが各都市計画制度の適切な運用の前提となるものである。その指定にあたっては、必ずしも行政区域単位でとらえるのではなく現実の市街地の広がりや住民の生活圏域なども考慮し、現在及び将来の都市活動に必要な土地や施設が、相当程度その中で充足できる範囲で設定すべきである。この際、一体の都市として整備、開発又は保全する必要のない土地は都市計画区域に含めるべきではないが、近年、商業施設やレジャー施設などの大規模施設等が郊外部の土地や山間部などに散発的に立地する事例も見受けられることから、これらに適切に対応できるような都市計画区域の指定に留意するべきである。
 
3.マスタープランの策定
 
 (マスタープランに要請される役割)
都市計画は、その目的の実現には時間を要するものであることから、本来的に長期的な見通しをもって定められる必要がある。
 また、個々の都市計画の決定にあたっては、その必然性、妥当性が説明される必要があるが、これが総体としての都市計画の一部を構成するものである以上、将来の目指すべき都市像との関係を踏まえ、総合性、一体性の観点から常に検証されなければならない。
 このため、都市計画法(昭和43年法律第100号。以下「法」という。)第6条の2の規定に基づく都市計画区域の整備、開発及び保全の方針(以下「都市計画区域マスタープラン」という。)、法第18条の2の規定に基づく市町村の都市計画の基本方針(以下「市町村マスタープラン」という。)においては、それぞれ住民に理解しやすい形であらかじめ長期的な視点に立った都市の将来像を明確にし、その実現に向けての大きな道筋を明らかにしておくことが、極めて重要であり、そうした機能の発揮こそマスタープラン(「都市計画区域マスタープラン」及び「市町村マスタープラン」をいう。以下同じ。)に求められているといえよう。
 マスタープランにおいて、どのような都市をどのような方針の下に実現しようとするのかを示すことにより、住民自らが都市の将来像について考え、都市づくりの方向性についての合意形成が促進されることを通じ、具体の都市計画が円滑に決定される効果も期待しうるものである。
 
(都市計画区域マスタープランと市町村マスタープランの関係)
 都市計画区域マスタープランは、一体の都市として整備、開発及び保全すべき区域として定められる都市計画区域全域を対象として、都道府県が一市町村を超える広域的見地から、区域区分をはじめとした都市計画の基本的な方針を定めるものである。
 一方、市町村マスタープランは、都市計画区域マスタープランに即し、都市計画区域内の各市町村の区域を対象として、住民に最も身近な地方公共団体である市町村が、より地域に密着した見地から、その創意工夫の下に、市町村の定める都市計画の方針を定めるものである。
 上記のような両マスタープランの趣旨からすると、都市計画区域マスタープランにおいては、広域的、根幹的な都市計画に関する事項を主として定め、市町村マスタープランにおいては、地域に密着した都市計画に関する事項を主として定めることが要請される。しかし、両マスタープランともに都市の将来像とその実現に向けての道筋を明らかにしようとするものであり、そのために必要であれば記載事項を策定主体の判断で追加することは認められるべきである。ただし、自らが決定権限を有していない事項を記載するにあたっては、決定権限を有する者との間で必要な調整が図られるべきであり、都道府県と市町村の間で意見聴取、案の申し出等を行うことを通じて調整が図られるべきである。
 
(都市計画区域マスタープランの対象期間)
 都市計画区域マスタープランは、その要請される役割からすれば、基本的には、長期的にみて安定が求められる。
 また、都市計画区域マスタープランに即して定められることとなる具体の都市計画は、それが総体として、都市施設整備、市街地開発事業とあわせて、民間セクターの建築活動に対する規制、誘導により目指すべき都市像を実現しようとするものであり、建築物の更新間隔等を勘案すれば、都市計画区域マスタープランにおいては、おおむね20年後の都市の姿を展望したうえで、都市計画の基本的方向は定められることが望ましい。
 但し、市街化区域のうち、おおむね10年以内に市街化を図るべき区域に関連する事項(市街化区域の規模等)については、その趣旨に鑑み、おおむね10年後の将来予測を行ったうえで定められることが望ましい。
 また、都市施設、市街地開発事業については、優先的におおむね10年以内に整備するものを整備の目標として示すことが望ましい。
 
(マスタープランの記載事項)
 上記のような考え方に立てば、マスタープランの対象期間は相当長期間となることから、マスタープランに詳細な計画内容を記述するには限界がある。また、従前の、線引きに伴う「整備、開発又は保全の方針」においては、個々の都市計画に関する記述の羅列となっているものが多く見られたが、上記のようなマスタープランに要請される役割からすると、マスタープランにおいては、どのような方針でどのような都市を作ろうとしているのかを地域毎の市街地像等で示すとともに、主要な土地利用、都市施設、市街地開発事業について将来のおおむねの配置、規模等を示し、住民が将来の大まかな都市像を頭に描きつつ、個々の都市計画が将来の都市全体の姿の中でどこに位置付けられ、どのような役割を果たしているかを理解できるようにすることが望ましい。
 
(マスタープランの見直し)
 前述のように、マスタープランは長期的に安定が求められるものであるが、これは、長期的な視点に立った都市の将来像を明確にし、その実現に向けての大きな道筋を明らかにしておくというマスタープランの持つべき基本的性格からくるものである。
 しかし、今後、一定の需要が前提となる大規模開発計画等が、都市の将来像を決定する性格を有しながら、かつての右肩上がりの時代のように計画内容や波及効果等の見通しが直ちには立たないことから、その方向性を決められず、マスタープランに記載することが困難である等、マスタープランの策定段階でその都市の将来像やその実現に向けた大きな道筋を決定するには限界がある場合が増加することが見込まれる。
 また、予定したプロジェクトの大幅な変更や予定していなかったプロジェクトの決定等マスタープラン策定段階には想定していなかったような状況が発生することも考慮する必要がある。
 従って、今後のマスタープランには、策定後の状況の変化を受けて適切な政策判断が可能となるような弾力性も必要となる場合が増加すると考えられる。こうした要請に応えるため、策定時点である程度見通しが可能な事項について記載をし、その後、ある程度明確な見通しが立った事項を追加する等記述内容に弾力性を持たせる、あるいは部分的改訂を機動的に行う等の対応を視野に入れてマスタープランの策定を行い、そのフォローアップを行うことが望ましい。
 
4.都市の将来像を実現するための適切な都市計画の選択
 
都市内の土地は、道路、公園等の公共施設、その整備を前提とする建築物等の敷地及び保全すべき緑地等に大別されるが、基本的には公共施設の整備は公的セクターがあたり、建築物等の建築は民間セクターがあたるとの官民の役割分担の下で、都市の将来像の実現に向けた都市の整備、開発及び保全を図るため、適切に具体の都市計画を選択していくことが必要である。
土地利用計画は、一定のひろがりのある市街地や地域について、それぞれのおおまかな将来像を示し、個別の建築活動の規制誘導を通じて、その実現を図ることを役割としているが、主として民間の建築行為、開発行為を前提とするところからその時々の経済状況の影響を受けるとともに、基本的に目的の実現には時間を要すること、きめ細かい対応でなく大枠での誘導にならざるを得ないこと、また、規制内容についても、住民の理解を得ることとの関係で限界があり、特に地区計画等詳細な土地利用計画の策定は、地道な努力の裏打ちが必要とされること等に特性があるといえる。
都市施設は、円滑な都市活動の確保と良好な都市環境の保持の役割に加え、都市の骨格を形成し、市街地を性格づけることに効果を持つが、一団地の住宅施設などの面的な施設以外は、それ自体で良好な市街地の形成が図られる性格のものではない。
 市街地開発事業は、まちづくりのきめ細かいところまで計画して実現することが可能で、積極的なまちづくりの手法としては最も有効であるが、全ての市街地に事業を展開することは事実上困難である。特に、都市の再構築に向け、既成市街地の再編整備を行う場合は、住民合意の形成、権利関係の調整などにより多くの時間と労力がかかり、重点的な取り組みが一層必要とされる。
 また、都市施設及び市街地開発事業は、都市計画決定のみでは都市の将来像の実現のための役割を果たすことはできず、着実に整備され、または施行されてはじめてその役割を果たしうるものである。
 
こうしたことを踏まえれば、目指す都市の将来像の実現は、単一の制度のみにより完成しうるものではないと考えるべきであり、各都市計画制度の特性を活かしつつ、総合的、一体的な都市計画の適用が考えられるべきである。例えば、良好な戸建て住宅地の形成は、土地区画整理事業により積極的に市街地を作り出す方策、地区計画により地区施設の計画と建築の規制を行い、民間の建築活動の展開とともに順次実現していく方策、道路、公園などの公共施設を先行整備したうえで低層住居専用地域が持つ規制メニューにより、建築物の形態規制を通じて市街地の更新を待つ方策などが考えられる。
それぞれの地域や地区で、いかなる都市計画により望ましいまちづくりを実現するかは、各都市計画制度の役割と特性を踏まえ、財政その他の資源、都市全体における相対的な優先順位等の観点から総合的・一体的に検討されるべきである。
 
5.適時適切な都市計画の見直し
 
 都市計画は、法第21条に変更に関する規定があるとおり、社会経済状況の変化に対応して変更が行われることが予定されている制度であり、基礎調査の結果や社会経済状況の変化を踏まえて、変更の必要性が吟味されるべきものである。
 しかし、一方で、都市計画施設の整備、市街地開発事業の実施、土地利用の規制・誘導を行って、目指すべき都市像を実現するためには、相当程度長期間を要することから、都市計画には一定の継続性、安定性も要請される。
 したがって、都市計画の変更を検討するにあたっては、その都市計画の性格を十分に踏まえる必要があり、例えば、根幹的都市施設等継続性、安定性の要請が強いと考えられるものについては、その変更はより慎重に行われるべきである。ただし、このような都市計画についても、都市計画決定当時の計画決定の必要性を判断した状況が大きく変化した場合等においては、変更の理由を明確にした上で変更することも考えられる。
 
6.情報開示の促進
 
具体の都市計画は、都市の将来像を実現するためのものであるが、その決定に住民の理解が得られ、その内容がルールとして受け入れられるためには、住民が、都市の将来像が望ましいものであること、その実現のために総合的、一体的に都市計画を進める必要があること、具体の都市計画の目的、内容等が適切であることについて理解することが必要である。このことは、都市計画決定手続の円滑化を図り、都市計画の内容を円滑に実現する上で重要である。
そのためには、都市計画における情報開示を促進し、住民が都市の将来像と具体の都市計画を常に確認、理解する機会を得ることを可能とすることが必要である。 このため、都市計画の図書として作成されている総括図、計画図、計画書について、可能な限り、常に住民が容易に閲覧・入手が可能な状態にしておくことが望ましい。この場合、地域の実情に応じて、都市計画情報の整備(デジタル化を含む。)、都市計画図書の管理の充実、都市計画情報センターの設置等の措置をとることが望ましい。
また、都市計画決定にあたり住民に示す都市計画の理由の記述については、当該都市計画の都市の将来像における位置づけについて説明することが望ましい。この場合、具体の都市計画が即地的に決定され、土地利用制限を課するものであることに鑑み、当該都市計画の必要性、位置、区域、規模等の妥当性についてできるだけわかりやすく説明するべきである。
 
 
V−3 土地利用について
 
1.区域区分制度の適切な運用
 
(区域区分の意義)
 市街化区域と市街化調整区域の区分(以下「区域区分」という。)は、無秩序な市街地の拡大による環境悪化の防止、計画的な公共施設整備による良好な市街地の形成、都市近郊の優良な農地との健全な調和等、地域の実情に即した都市計画を樹立していく上で根幹をなすものである。
 一方、区域区分は、これを前提として他の都市計画の内容が連動して決定されるものであることから、適正な権利制限という視点に立って、その必要性について厳密に検討すべきである。
 
(区域区分の考え方)
 区域区分の要否の判断及び区域区分を定めるにあたっての判断は、「無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図る」という目的を達成するため、以下の視点から行うことが望ましい。
 
(1)市街地の拡大の可能性
 人口及び産業の動向及びそれにより発生する新たな都市的土地利用の需要を適切に見通すとともに、市街地内の土地利用の現況を把握し、市街地の再編の必要性を加味したうえで、将来の都市的土地利用の需要と比較し、増加人口が現状の市街地で収容しきれないことが明らかである、あるいは産業が必要とする新たな土地が市街地内に確保できる見通しがないなど、周辺の土地を大量に都市的土地利用に転換せざるを得ない状況が生じる可能性が高いかどうかについて考慮すべきである。
 
 上記の視点から区域区分の要否の判断及び区域区分を定める場合の市街化区域の面積の算定を行うにあたっては、従来より、土地利用計画の目標年次(おおむね10年後)までの人口増加予測、市街地の人口密度の変化予測又は計画的な市街地の再編整備による人口の市街地内での移動、産業の見通しなどを根拠としてきた(いわゆる人口フレーム方式。)。
 最近では、人口増加が鈍化する一方で、郊外部の土地の都市的土地利用への転換は減少しない状況も生じているところであるが、住まい方の変化や地域の住宅事情の特殊性、地区・街区の再編整備による市街地内での人口移動の見込みなどをもとに、市街地拡大の必要性についての説明力を有する人口フレーム方式を、今後とも区域区分の要否の判断及び市街化区域の設定の基本とすることは、妥当である。
 
(2)良好な環境を有する市街地の形成
 市街地における公共施設整備の進捗状況などを勘案し、まとまりのある良好な市街地を形成するため、都市的土地利用の拡散を制限する必要があるか否か、必要ある場合には、土地区画整理事業等の事業の実施あるいは地域地区や地区計画による規制、誘導のみで足りるかを検討すべきである。
 
 都市の健全な発展を図るためには、まとまりのある良好な市街地を形成することが基本であり、市街地が一定のまとまりを持たない場合、道路、下水道等の地域住民の生活に直結する公共施設の整備が非効率になる。また、都市的土地利用と農地等が混在する場合、相互に居住環境や生産環境に悪影響を及ぼすおそれがあるとともに、農地等にあっては、宅地化を誘発し、結果として、都市計画上も評価しうる優良な農地の喪失につながるおそれがある。
 このため、区域区分は、市街地がどのように形成されるかの見通しに立って判断されるべきである。
 
 さらに、区域区分を行った都市計画区域において、市街化区域周辺部で、地域の実情により、農地等に介在する形での市街化が見込まれる場合には、市街化区域へ編入することが適当か、あるいは法第34条第8号の3に定める開発許可に係る条例によるべきかを適切に判断するべきである。
 
(3)緑地等自然的環境の整備又は保全への配慮
 市街地の縁辺部や外部に、緑地その他の自然資源が存する場合、この土地利用を保全していくことが、都市計画としても積極的に意義を見いだせるものであるかを考慮すべきである。
 
 都市計画区域内の農地や森林は、都市に残された貴重な緑の資源として保全すべきであり、都市的土地利用と農林業的土地利用を対立してとらえ、いたずらに農地や森林を蚕食していく姿勢は好ましくない。
 もとより、農地や森林については、農林業政策の観点から個別法令による土地利用規制がされており、都市計画区域内にこれらが存する場合には、都市計画とこれらの制度との調整に配慮し、優良な農地等との健全な調和を図るべきである。
 
 これらの考え方の下で、都市計画区域のうち、農林業上その他の土地利用規制等により市街化することが想定されない土地の区域以外の区域にある土地について、都市計画区域の人口及び産業の将来の見通し、市街地における建築物の密度構成の動向等を総合的に勘案して、都市的土地利用への転換の適否を明らかにする方法も考えられる。このような方法による調整が他法令による土地利用規制がなされていない土地の区域全体について可能であれば、単に人口増加を根拠としなくとも、市街化区域の設定等が可能となると考えられる。市街地拡大の速度が鈍化している都市計画区域において、このような方法を試行的に検討し、その積み重ねにより、農林漁業との調和を図りつつ、人口の将来の見通しに加え産業の動向や市街地整備の状況及び市街地内の低未利用地の賦存状況等も総合的に勘案した区域区分の決定方法が確立されるものと考えられる。
 
(区域区分の廃止について)
 人口や産業活動の著しい拡大が予測されず、市街地内に相当の低密度利用地が存在する場合などでは、区域区分の必要性が薄いと考えられるが、現に区域区分を行っている都市計画区域においてこれを廃止する場合には、再度の区域区分を行うことは事実上相当の困難を伴うものであることから、市街地が再び急速な拡大を示す要因がないかを慎重に検証するとともに、開発行為が従前の市街化調整区域に拡散する可能性、また、そのことがもたらす市街地形成への影響を慎重に見極めるべきである。そのうえで、区域区分を必要とする状況がなくなったと判断される場合には、速やかにこれを廃止すべきである。この場合、現に市街化されておらず、当分の間営農が継続することが確実と認められるなど、本来用途地域を指定し、市街地の将来像を示す必要性が乏しい土地の区域については、用途地域を併せて廃止することが望ましい。
 なお、区域区分を廃止する場合、従前市街化調整区域であった区域等のうち、他法令による土地利用規制がなされていない土地の区域について、良好な環境の形成または保持を図るため、積極的に用途地域、特定用途制限地域、地区計画等の指定を検討すべきである。
   
2.市街地における用途の適正な配置その他適切な土地利用の実現
 
 市街地における土地利用は、マスタープランにおいて、目指すべき市街地像を明らかにしたうえで、その実現のため、用途地域を基本としつつ、土地利用に関する各種制度を積極的に適用すべきである。
 しかし、現に指定されている用途地域の中には、単に現状の土地利用を追認し既存不適格を生じさせない程度の消極的な意味しか持たないものも見受けられ、最低限度の市街地環境を確保する効果はあるものの、適正な用途の配分を実現し、積極的に望ましい市街地像の実現を誘導しようとする用途地域の目的からみて、不十分な面もある。
 用途地域は、地域ごとのまちづくりの将来像にあった内容を定め、市街地の大まかな土地利用の方向を示すものであるが、今後、地域の実情に応じた土地利用を誘導し、望ましいまちづくりを実現するためには、地権者等の意見を反映しつつきめ細かなまちづくりを誘導する手法である地区計画等をより積極的に活用して、街区の状況に合わせてきめ細かく建築物に関する制限及び公共施設の整備の方針を定めることが望ましい。
 
 例えば、中心市街地における用途地域は、市街地の状況、公共施設の整備の状況に照らし、複数の用途の混在を許容し、かつ土地の高度利用※を促進することを目的として、用途地域の種類の他、容積率、建ぺい率などを選択するとともに、特別用途地区、高度利用地区、高度地区、あるいは再開発地区計画などで、建築物の制限に関する事項や地区施設の計画を付加して、用途地域の補完を行うことが望ましい。また、高度利用地区、再開発地区計画、特定街区等の容積率等の緩和に係る制度について、地域の特性に応じて柔軟な運用を図ることにより、土地の高度利用が促進されるよう措置することが望ましい。このほか、例えば、公共施設の整備とスーパー堤防の整備が併せて実施される地区等については、周辺環境を勘案して土地の高度利用を図ることが考えられる。
 一方、郊外の低層住宅地においては、現状の市街地の密度に大きな変化をもたらすことなく、防火性能の向上、日照、通風などの確保、近隣交通の錯綜の排除等による良好な市街地環境の確保を、個別建築物の更新の積み重ねにより実現できるよう、低層住宅系の用途地域で用意されている容積率、建ぺい率、高さの最高限度などのメニューを適切に選び取るとともに、地域の実情に応じた地区計画等の適用により、必要な建築物の規制の付加や地区施設の確保を行うことが望ましい。
 
  ※(「土地の高度利用」の定義)
 この運用指針において、「土地の高度利用」とは、道路などの公共施設の整備水準が一定以上の土地について、有効な空地の確保、一定以上の敷地規模の確保などにより良好な市街地環境を形成し、土地を効率的に利用することをいう。
 
3.市街地の外における都市的土地利用への対応
 
 価値観の多様化に伴い、居住、就労その他の国民生活に大きな変化が生じており、それが市街地の外の土地利用に大きな影響を及ぼしつつある。
 例えば、居住については、住宅の都心回帰がおこりつつある一方で、優良田園住宅の普及、マルチハビテーションの実現等、住宅の立地が従前に比べ多様化しつつある。 さらに、就労では、高度情報化の進展などを背景として、在宅勤務、SOHOの普及など、都心部での就労を必要としない勤労者が増える傾向にあり、住宅の立地の多様化にさらに拍車がかかってくるものと予想される。一方、流通・サービスの分野では、モータリゼーションの進展に伴い、大規模小売店舗が郊外部に進出し、中心市街地の疲弊の一因となっていることも事実である。
 新たな都市的土地利用のうち、優良田園住宅など新たな生活様式や非住居地における流通業務施設等都市活動として積極的に受け入れるべきものについては、周辺の土地利用との調和を図りつつ、一定水準の市街地形成を確保するため、例えば地区計画などを積極的に活用して、誘導・支援を図るべきである。
 一方、都市計画区域外、あるいは積極的に都市機能を維持・増進する計画意志のない非線引き都市計画区域の白地地域においては、例えば既存集落の環境や、将来における都市としての整備、開発及び保全に悪影響を及ぼす可能性のある大規模施設等の立地を避けるため、他の法令による土地利用の規制の状況を勘案しつつ、準都市計画区域や特定用途制限地域の指定などにより的確に対応すべきである。
 ただし、これらスポット的な土地利用の制限は、地域の環境を保全する観点、まちづくりの観点から十分な説明がなされるべきで、単に「望ましくない」だけの理由で説明されるべきではない。
 
 
V−4 都市施設、市街地開発事業について
 
1.都市施設を都市計画に定める基本的考え方
 
(都市施設を都市計画に定める意義)
 都市施設は円滑な都市活動を支え、都市生活者の利便性の向上、良好な都市環境を確保するうえで必要な施設であるが、都市施設を都市計画に定めることについては、以下のような意義がある。
 
[1]計画段階における整備に必要な区域の明確化
 都市施設の整備に必要な区域をあらかじめ都市計画において明確にすることにより、長期的視点から計画的な整備を展開することができ、円滑かつ着実な都市施設の整備を図ることができる。
[2]土地利用や各都市施設間の計画の調整
 都市内における土地利用や、各都市施設相互の計画の調整を図ることにより、総合的、一体的に都市の整備、開発を進めることができる。
[3]住民の合意形成の促進
 将来の都市において必要な施設の規模、配置を広く住民に明確に示すとともに、開かれた手続きにおいて地域社会の合意形成を図ることができる。
 
(都市計画に定める都市施設)  
 都市計画に都市施設を定めるにあたっては、上記の意義を踏まえ、次のように考えることが望ましい。
 
[1]道路等の交通施設、公園、下水道等については、従来より都市計画に位置づけ、その整備が図られているところであるが、引き続きこれらの施設については長期的視点から計画的な整備を行う必要があり、また計画調整や地域社会の合意形成を図るため積極的に都市計画に位置づけることが望ましい。
[2]ごみ焼却場、産業廃棄物処理施設等については、地域の環境に大きな影響を与える施設であるが、排出者の責任において処理されるものとの考えから民間施設が多い産業廃棄物処理施設をはじめとして、これまで都市計画決定が十分にされていなかった。しかし、近年廃棄物処理がひっ迫した状況にあること等に鑑み、今後、特に公益性の高い施設は、都市計画の手続において土地利用や他の都市施設との計画調整を図るとともに関係者間の合意形成を図るため、積極的に都市計画決定することが望ましい。
[3]上記以外の都市施設についても、都市計画に定める意義を踏まえ、必要に応じて都市計画に定めることが望ましい。
 
2.区域区分と都市施設の関係
 
 区域区分と都市施設の関係については、以下の考え方によることが望ましい。
 
(市街化区域)
 市街化区域においては、少なくとも道路、公園、下水道を定めるべきである。道路については自動車専用道路及び幹線街路(交通広場を含む。)、公園については運動公園、総合公園、地区公園、近隣公園及び街区公園、下水道については排水区域、処理場、ポンプ場及び主要な管渠を定めることとし、必要に応じその他の小規模なものを定めることが望ましい。
 
(市街化調整区域)
 市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域であるので、市街化を促進する都市施設については、これを定めるべきではない。ただし、地域間道路、市街化区域と他の市街化区域とを連絡する道路等や、公園、緑地等の公共空地、河川、処理施設等で市街化を促進するおそれがないと認められるものは定めることができる。また下水道についてはそれ自体では市街化を促進するおそれが少ないものであるので現に集落があり生活環境を保全する必要がある場合等については最小限の排水区域を定めることができる。
 
(非線引き都市計画区域における都市施設の整備)
 非線引き都市計画区域にあっては、用途地域が定められている地域においてはその目標とする市街地像の実現のために必要な都市施設を定めるべきであり、用途地域が定められていない地域においては当該地域の市街化の促進につながるような都市施設を都市計画に定めることは望ましくない。
 
3.市街地開発事業の都市計画の策定の基本的考え方
 
 土地区画整理事業等市街地開発事業については、市街化区域内及び区域区分が定められていない都市計画区域において用途地域が定められている地域について、計画的かつ良好な市街地を一体的に整備する必要があるときは、積極的に都市計画に定めることが望ましい。
 特に既成市街地においては都市の再生・再構築を図る観点から、土地の高度利用、中心市街地の活性化、密集市街地の改善を図る地区や大規模土地利用転換が見込まれる地区等について適切な市街地開発事業を都市計画に定めることが望ましい。
 一方、従前に比べて都市への人口や経済の集中による市街化の圧力は全国的には減少しており、今後、新市街地において市街地開発事業を都市計画に定めるにあたっては、都市の立地特性等からなお住宅地供給が必要とされているか、公共施設の整備が不十分なスプロール市街地が形成され環境改善が必要とされているか等について慎重に検討を行うことが望ましい。
 
 
V−5 自然的環境の整備又は保全について
 
1.都市における自然的環境の整備又は保全の意義
 
 都市における自然的環境は、植物とこれが存する空間と水系の複合機能により美しい景観を形成し、温室効果ガスの発生やヒートアイランド現象を緩和するとともに、大震火災等の災害時における避難地や避難路等を形成するなど防災性を向上させ、国民が身近に親しめる多様なレクリエーションや自然とのふれあいの場となり、野生生物の生息・生育環境を確保している。また、自然的環境によって実感される四季の変化は、我が国固有の文化形成に重要な役割を担っている。
 
 近年では、都市部における貴重な緑地※等の減少や都市住民の環境保全に対する意識の高まりに対応し、都市計画において緑地等の自然的環境を整備又は保全する必要性が高まっている。このため、すべての都市計画において自然的環境の整備(失われた自然的環境の復元を含む。)又は保全に配慮し、必要なものを公園等の都市施設又は緑地保全地区等の地域地区として決定していくことが重要である。
 
2.都市計画を定めるにあたっての基本的考え方
 
 緑地等の自然的環境に関する都市計画を定めるにあたっては、緑地の有する環境保全、レクリエーション、防災、景観形成等の諸機能を効果的に発揮するよう定めることが重要であり、現状の都市におけるこれら諸機能の評価を十分に踏まえつつ、都市の構造、市街化等の土地利用の動向、区域区分や道路等の他の都市計画との関係等を十分勘案したうえで、都市計画区域マスタープランに都市の緑の将来像を位置付け、これに即して個別の都市計画を定めるべきである。特に、住民に身近な都市計画をきめ細かく定めるため、市町村マスタープラン、都市緑地保全法(昭和48年法律第72号)第2条の2に基づく「緑地の保全及び緑化の推進に関する基本計画」(以下「緑の基本計画」という。)を活用するべきである。この場合、都市の美観風致を維持するための樹木の保存に関する法律(昭和37年法律第142号)に基づく保存樹又は保存樹林、市民緑地、緑地協定、屋上緑化、市民農園等、関連する制度との連携又は役割分担を踏まえて計画するべきである。
 
 また、近年の国民のレクリエーションに対するニーズの多様化・高度化、各世代にわたる自由時間の増大、高規格幹線道路網の整備等を背景にした非日常的かつ広域的なレクリエーションニーズに対応する公園等の公共空地、及び首都圏、近畿圏の近郊緑地保全区域のうち、地域の住民の健全な心身の保持及び増進又はこれらの地域における公害若しくは災害の防止の効果が著しい等の土地を指定する近郊緑地特別保全地区は、一の都市計画区域をこえる広域的な観点からその配置を計画するべきである。
 
 さらに、都市の周辺部において都市の背景となるような景観を構成し砂防等の防災上の機能も有する緑地、ヒートアイランド現象を緩和するよう海洋部や森林の冷気を市街地に導入する「風の道」となる緑地、あるいは都市における野生生物の生息、生育地となる緑地は、河川空間も含めた連続性を確保する必要がある。この場合、公園等の公共空地と緑地保全地区、風致地区等の地域地区とが連続し、あるいは一体となって、相互に効用を高め合うよう総合的に計画し、これに即した都市計画決定を進めることが重要である。
 
 加えて、歴史的建造物、遺跡等と一体となった重要な緑地、あるいは伝統的又は文化的に重要な意義を有する緑地は、緑地保全地区又は風致地区に指定することにより保全するとともに、必要に応じ歴史的文化的資産と一体となった緑地を公園等の公共空地として決定し、地域の歴史、文化にふれあう場としての整備を図るべきである。特に、我が国往時の政治、文化の中心たる古都において歴史的に意義のある建造物、遺跡等が周囲の自然的環境と一体となって古都における歴史的風土を形成している場合には、歴史的風土特別保存地区に併せ風致地区制度を活用し、適切な保全を図るべきである。
 
3.区域区分と自然的環境に関する都市計画との関係
 
(1)市街化区域
 
 市街化区域においては、長寿・高齢社会の到来と自由時間の増大の中で、都市住民の余暇活動や健康づくりのため等の日常的なレクリエーションニーズに対応する公園等の公共空地を決定し整備するとともに、市街地に残存し身近な環境の維持改善に資する緑地は緑地保全地区に指定して保全するべきである。特に、既に市街地を形成している区域のうち、中心市街地においては、働く人々や訪れる人々の安らぎや交流の場として、密集市街地においては、防災性、居住環境の向上のために、不足している公園等の公共空地を積極的に決定し整備するべきである。また、優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域においては、市街地開発事業や開発許可制度の適正な運用とともに、公園等の公共空地の決定と整備、緑地保全地区又は風致地区の指定による緑地の保全により、自然的環境が良好に維持された緑豊かな市街地を形成するべきである。
 
 特に、大震火災等の災害時の市街地における避難地・避難路・広域防災拠点や延焼防止帯になる公園等の公共空地、公害の防止、石油コンビナート等に係る災害の防止、廃棄物処理施設等の周辺の生活環境の改善等に資する緑地等の公共空地については、都市の安全性の向上のために積極的に決定し、整備するべきである。これらの公共空地は、平常時にも都市住民のレクリエーションニーズに対応した役割を発揮するものとすることが重要である。
 
 また、市街化区域において農林漁業と調和した良好な都市環境の形成に資する一団の農地等については、地域の実情に応じた都市計画決定権者の判断により、生産緑地地区に指定し適正な保全を図るべきである。
 
(2)市街化調整区域
 
 市街化調整区域には、災害の発生のおそれのある土地、優良な集団農地、優れた自然の風景を維持する等の土地の区域があるが、この土地の区域において特に良好な自然的景観を維持すべき土地については、関係法令に基づく諸制度との適正な連携又は役割分担に留意しつつ、風致地区制度を活用して風致の維持を図るべきである。また、風致又は景観が優れたもの、動植物の生息地又は生育地で当該地域の住民の健全な生活環境を確保するため必要なもの等、良好な都市環境の形成に寄与する枢要な緑地については、緑地保全地区制度を活用して適正な保全を図るべきである。更に、都市住民の自然とのふれあい等の利用を積極的に行う場合は、都市施設としての緑地等の公共空地を決定し、整備及び保全を行うべきである。
 
 公共空地については、加えて、一の市町村の区域の住民を対象とし多様なレクリエーションニーズに対応するための総合公園等を、市街化区域の整備、開発及び保全の状況を勘案し必要な場合には、市街化区域と連絡する道路等との連携を図りつつ決定し、整備することが望ましい。
 
(3)区域区分を定めない都市計画区域等
 
(非線引き都市計画区域への対応)
 非線引き都市計画区域のうち用途地域を定めていない地域においては、農林漁業との健全な調和を図りつつ、緑地保全地区又は風致地区の指定により、保全すべき土地を明確に位置付けるべきである。また、自然的環境の保全と活用に資する公園等の公共空地を都市施設として決定し、整備するべきである。
 
(都市計画区域外への対応)
 都市計画区域外においても、他法令による土地利用の規制の状況を勘案して、そのまま土地利用を整序することなく放置すれば、将来における都市としての整備、開発及び保全に支障が生じるおそれのある区域は、準都市計画区域の指定に併せ、農林漁業との健全な調和を図りつつ必要に応じて風致地区制度も活用して地域の環境を適正に保持することが望ましい。
 
※(「緑地」の定義)
 都市計画法に基づく「緑地」は、都市計画法第11条に規定される都市施設の種類として定義されているが、本運用指針における「緑地」は特に定めのない限り都市緑地保全法第2条の2第1項に規定する「緑地」(樹林地、草地、水辺地、岩石地若しくはその状況がこれらに類する土地が、単独で、若しくは一体となって、又はこれらに隣接している土地が、これらと一体となって、良好な自然的環境を形成しているものをいう。)として記載する。
   
V−6 開発許可制度について
 
1.開発許可制度の意義
 
 開発許可制度は、都市の周辺部における無秩序な市街化を防止するため、都市計画区域を計画的な市街化を促進すべき市街化区域と市街化を抑制すべき市街化調整区域に区域区分した目的を担保すること、都市計画区域内の開発行為について公共施設や排水設備等必要な施設の整備を義務付けるなど良質な宅地水準を確保すること、この二つの役割を果たす目的で創設されたものである。また、モータリゼーションの進展等により都市的な土地利用が全国的に展開している状況を踏まえ、一定の開発行為については都市計画区域の内外にかかわらず許可の対象とされたところであり、都市計画区域の内外を問わず適正な都市的土地利用の実現についてもその役割とされたところである。
 
2.市街化調整区域における開発許可の在り方
 
 市街化調整区域は、開発を抑制すべき区域であり、許可しうる開発行為は法第34条で限定されている。また、原則として用途地域の指定は行われず、都市施設の整備、市街地開発事業の実施も予定されない。しかしながら、こうした市街化調整区域の性格付けの中であっても、保全することが適当な区域など厳しく許可基準を運用することが求められる区域を除き、地域の実情によっては、計画的な市街化を図る上で支障がない開発行為、市街化を促進するおそれがなく市街化区域内において行うことが困難又は著しく不適当と認められる開発行為について、個別に許可を行う場合もある。
 これは、市街化調整区域全域を厳しく開発を抑制すべき区域として一律に位置付けるのではなく、優良な農地等、すぐれた自然環境を有する区域、災害の発生のおそれがある区域その他の保全することが適当な区域については法第34条を厳しく運用すべきであるが、都市計画区域マスタープラン等を踏まえ区域によっては、計画的で良好な開発行為、スプロールが生じるおそれがない開発行為、市街化調整区域内の既存コミュニティの維持や社会経済情勢の変化への対応といった事項を勘案し必要性が認められる開発行為等については許可を行うことも可能との考え方に基づくものである。
 したがって、市街化調整区域における開発許可の在り方については、市街化調整区域が用途地域の指定、都市施設の整備、市街地開発事業の実施が予定されないという基本的性格を踏まえたうえで、開発行為が行われても支障がない区域であるか、予定建築物の用途、目的、規模等が既存コミュニティの維持や社会経済情勢の変化への対応といった観点から必要性が認められるか、開発予定区域周辺の公共施設の整備状況、開発行為に係る公共施設等の整備予定などを勘案して適切な開発と認められるか、などについて総合的に勘案して許可を行うことが適当であり、法第34条の趣旨に照らしながら、画一的な運用ではなく条例や審査基準の制定等を通じて、地域の実情等に応じた運用を行うことが必要である。
 
3.良質な宅地水準の確保
 
 良質な宅地水準の確保は、具体的には法第33条の技術基準によって担保されるものであるが、既成市街地、新市街地、既存集落等開発区域の周辺の状況によっては、道路、公園、緑地等について求められる水準が必ずしも一律ではなく地域の実情によって異なる場合もあることから、技術基準の運用について画一的に行うのではなく、例えば都市計画法施行令(昭和44年政令第158号。以下「令」という。)で規定されている技術的細目のただし書等の運用や条例で技術的細目の強化又は緩和を行う場合には地域の実情をよく勘案して行うことが必要である。
 また、開発許可制度に基づき設置された公共施設等は良好な都市環境の確保の観点から設けられたものであり、適正な管理が行われなければその期待される機能が発揮されないことから、土地の帰属や管理協定の締結等その適正な管理についても十分配慮することが求められる。
 
4.審査基準の明確化等
 
 開発許可の審査は、地域の実情等を勘案してある程度柔軟性のある運用を行うことが必要であるが、その運用にあたっては開発申請者に必要以上の負担を求めることがないよう十分配慮すべきであり、そのためには審査基準の明確化を行い開発許可手続きの迅速化、簡素化に努めることが必要である。審査基準の明確化にあたっては、開発審査会の審査基準の明確化のみならず、技術基準の運用についての審査基準も明確にすべきであり、両方の審査基準をあらかじめ公表するなど開発許可制度の公平性、透明性を高めることが必要である。
 また、開発審査会については、法第34条第10号に基づく審査も含め、地域の実情に応じた弾力的な開発許可制度の運用のため積極的な役割を果たすことが期待されるところであり、そのために開発審査会の一層の充実を図ることが望ましい。
 
5.許可不要の開発行為について
 
 法第29条においては、公益上必要な建築物に係る開発行為や公的主体が行う開発行為等について、許可不要と位置付けられている。これらの開発行為は、市街化区域及び市街化調整区域を問わず公益上必要不可欠な施設であり、開発主体の性格に鑑み開発許可制度の趣旨に沿った適切な開発行為が期待されることから許可不要の取扱いとされているところである。
 したがって、特に地方公共団体にあっては、許可不要の取扱いとされた法律の趣旨を十分踏まえ、開発許可制度の目的が達成されるよう良質な開発行為を行うよう努めるべきである。
 
 
 
W.都市計画制度の運用のあり方
 
 
W−1 都市計画区域及びマスタープラン
 
W−1−1 都市計画区域
 
1.都市計画区域の指定に関する基本的な考え方
 
(1)都市計画区域は、市町村の行政区域にとらわれず、土地利用の状況及び見通し、地形等の自然的条件、通勤、通学等の日常生活圏、主要な交通施設の設置の状況、社会的、経済的な区域の一体性等から総合的に判断し、現在及び将来の都市活動に必要な土地や施設が相当程度その中で充足できる範囲を、実質上一体の都市として整備、開発及び保全する必要のある区域として指定するべきである。
   この際、一体の都市として整備、開発及び保全する必要のない土地は都市計画区域に含めるべきではないが、近年、商業施設やレジャー施設などの大規模施設あるいは廃棄物処理施設などが郊外部の土地や山間部などに散発的に立地する傾向があり、これらに適切に対応できるよう都市計画区域を指定することが望ましい。なお、この場合にあっても、あくまでも一体の都市として整備、開発及び保全する必要のある区域として指定するものであって、いたずらに都市計画区域の拡大を行うのではなく、地域の実情によっては、準都市計画区域の活用により対応することも考えられる。
 
(2)市町村が合併した場合の都市計画区域の指定は、広域的な視点から行政を行うことを目的とする合併の趣旨からも、当該合併後の市町村区域について、原則として一つの都市計画区域を指定し、一体の都市として総合的に整備、開発及び保全を行うことが望ましい。
   しかしながら、
[1] 合併前の各市町村の区域をめぐる社会的、経済的状況等地域的特性に相当な差異がある。
[2] 地理的条件等により一体の都市として整備することが困難であること
等により、一つの都市計画区域を指定することが困難である場合には実質的に一体の都市として整備することが適切な区域ごとに、複数の都市計画区域を指定することも考えられる。例えば、区域区分を行っている都市計画区域を有する市町村と、区域区分を行っていない都市計画区域を有する市町村が合併した場合、それぞれの都市計画区域をそのまま存続させることも考えられる。
 なお、複数の地理的に離れた区域であっても、実質的に一体の都市として整備、開発及び保全が行うことがふさわしいと認められる場合には、これらの区域を一つの都市計画区域として指定することも考えられる。
 
2.都市計画区域を指定する地域の選定
 
(1)令第2条第1号の「商工業その他の都市的業態」とは、国勢調査における産業分類のうち第2次産業及び第3次産業とすることが望ましい。
 
(2)同条第2号の「当該町村の発展の動向、人口及び産業の将来の見通し等」とは、当該町村における人口の自然的要因及び社会的要因による変化の見通し、工業、商業その他の主要産業の業況の変化とこれに伴う土地需要の見通し、道路、鉄道等の新設、改良の予定に加え、例えば、社会・経済に大きな影響を与える産業振興等に係る計画の策定や大規模プロジェクト等の実施などと解することが望ましい。
 
(3)同条第3号の「中心の市街地を形成している区域」とは、人口密度がヘクタール当たり40人を超える市街地の連担している区域及び当該区域に近接した集落を含めた区域とすることが望ましい。
 
(4)同条第4号の「その他の観光資源があることにより多数人が集中する」とは、例えばテーマパーク、海水浴場等のレクリエーション施設や史跡等の観光資源があることにより、観光客等多数人が集中する場合が考えられる。
 
 
W−1−2 マスタープラン
 
1.都市計画区域マスタープラン
 
(1)基本的考え方
 
 [1] 都市計画区域マスタープランは、当該都市の発展の動向、当該都市計画区域における人口、産業の現状及び将来の見通し等を勘案して、長期的視点に立った都市の将来像を明確にするとともにその実現に向けての大きな道筋を明らかにする、当該都市計画区域における都市計画の基本的な方向性を示すものとして定められるべきである。
 
 [2] 都市計画区域マスタープランにおいては、おおむね20年後の都市の姿を展望した上で都市計画の基本的方向が定められることが望ましい。
   但し、市街化区域のうち、おおむね10年以内に市街化を図るべき区域に関連する事項(市街化区域の規模等)については、おおむね10年後の将来予測を行ったうえで定められることが望ましい。
   また、都市施設、市街地開発事業については、優先的におおむね10年以内に整備するものを整備の目標として示すことが望ましい。
 
 [3] 都市計画区域マスタープランは、個々の都市計画に関する記述の羅列ではなく、どのような方針でどのような都市を作ろうとしているかを示すとともに、主要な土地利用、都市施設、市街地開発事業について、将来のおおむねの配置、規模等を示すことが望ましい。また、各地方公共団体の判断で、各種の社会的課題への都市計画としての対応についての考え方を、必要な関係部局等と調整を図ったうえで、都市計画の目標に記述することも考えられる。
   なお、都市計画区域マスタープランの内容については、図面等を用いてわかりやすく示すことが望ましい。この場合、地形図又はイメージ図を用いることも考えられる。
 
 [4] 都市計画区域マスタープランの策定後の状況の変化に対応するため、必要に応じて、策定時点である程度見通しが可能な事項について記載をし、その後、ある程度明確な見通しが立った事項を追加する等記述内容に弾力性を持たせる、あるいは部分的改訂を機動的に行う等の対応を視野に入れて、都市計画区域マスタープランの策定を行い、そのフォローアップを行うことが望ましい。
 
 [5] 都市計画区域マスタープランを定めるにあたっては、広域的観点を確保するため、必要に応じ、隣接・近接する他の都市計画区域や都市計画区域外の現況及び今後の見通しを勘案することが望ましい。この場合、例えば複数の都市計画区域で広域的なマスタープランを策定したうえで、これを踏まえて各都市計画区域マスタープランを策定することも考えられる。
 
 [6] 具体の都市計画は、都市計画区域マスタープランに即することが必要とされるが、このことは、具体の都市計画が都市計画区域マスタープランが示す都市の将来像、その実現に向けての大きな道筋との間で齟齬を来たすものであってはならないという趣旨であり、個別の都市計画についての記述が都市計画区域マスタープランに盛り込まれていなければならないということではない。
 
[7] 都市計画区域マスタープランを定めるにあたっては、当該マスタープランに盛り込む事項が当該都市計画区域の生活環境、自然的環境等に及ぼす影響について十分に配慮することが望ましい。
 
[8] 都市計画区域マスタープランを定めるにあたっては、法第13条第1項第1号の趣旨から道路法に規定する道路整備計画と十分な調和を図る必要があり、この観点から道路担当部局との間で協議を図った上で案を作成することが望ましい。
(2)都市計画の目標
 
 [1] 都市計画区域マスタープランの「都市計画の目標」としては、おおむね20年後の都市の姿を展望した上で少なくとも次に掲げる内容を定めることが望ましい。この場合、相当長期間にわたり普遍性を有する基本理念に基づき、おおむね20年後の地域毎の市街地像を記載することも考えられる。   
   a当該都市計画区域の都市づくりの基本理念     
   b地域毎の市街地像
    (例)中心市街地における高密度の商業地
       都心居住による職住近接型の市街地
       公共交通機関を軸としたまとまりのある市街地の形成
       郊外部における自然と調和した低層住宅地
       インターチェンジと一体となった工業団地
 
[2] [1]のほか、各地方公共団体の判断で、各種の社会的課題(環境負荷の軽減、都市の防災性の向上、都市のバリアフリー化、良好な景観の保全・形成等)への都市計画としての対応を、必要な関係部局等と調整を図ったうえで、都市計画の目標に記述することも考えられる。
 
[3] 必要に応じ、隣接・近接する他の都市計画区域や都市計画区域外の現況及び今後の見通しを踏まえ、当該都市計画区域の広域的位置づけ等について記述することが望ましい。
 
(3)区域区分の決定の有無及び区域区分を定める際の方針
   
 [1]区域区分の有無
 
 法第6条の2第2項第2号に基づき、区域区分の有無を定めるにあたっては、[1]市街地の拡大の可能性、[2]良好な環境を有する市街地の形成、[3]緑地等自然的環境の整備又は保全への配慮の視点から行うとともに、次に掲げるところによるべきである。  
 1) 法第6条の2第2項第2号に基づき、区域区分の有無を定めるにあたっては、少なくとも次の項目について調査・検討するべきである。
a都市計画区域の地形その他の地理的条件
b当該都市計画区域の人口の増減及び分布の変化並びに今後の見通し
c当該都市計画区域の工業、商業その他の産業の業況及び今後の土地需要の見通し
d当該都市計画区域内の土地利用の現状、密集市街地、災害のおそれのある区域、農地等が介在し公共施設整備とともに計画的な市街化を図るべき区域その他土地利用転換又は土地利用密度の変更を図るべき土地の区域の有無及び分布
e当該都市計画区域における都市基盤施設の整備の現状及び今後の見通し
f当該都市計画区域の社会活動及び経済活動に大きな影響を与える産業振興等に係る計画の策定又は大規模プロジェクト等の実施の有無
 2) 市町村の行政区域を基礎として都市計画区域の指定が行われている場合等において、区域区分の有無を判断する上で必要がある場合には、周辺の都市計画区域あるいは市町村の現状及び将来の見通しを勘案することが望ましい。
 3) 都市計画区域マスタープランには、区域区分の有無と併せてその判断の根拠もあわせて記載するべきである。
     
 [2]区域区分の方針
 法第6条の2第2項第2号に基づく区域区分の方針には、少なくとも次の項目について記載するべきである。
1) 目標年次に市街化区域及び市街化調整区域に配置されるべきおおむねの人口及び産業の規模
2) 目標年次の市街化区域のおおむねの規模及び現在市街化している区域との関係
  なお、2)の項目については、都市計画区域マスタープランが即地的な区域界を定めるものでなく、かつ、即地的な都市計画である区域区分は法第7条に基づき別に定めるものであることから、あくまでおおまかな市街化区域の広がりを示す表現にとどめ、その旨を住民が正しく理解できるような計画書及び図面への記載とすべきである。また、区域区分の都市計画の決定又は変更にあたっては、2)の項目で示された広がりが、そのまま市街化区域の範囲となるのではなく、個別の地区又は土地について、別途の調整が必要であることに留意すべきである。
 
 [3]市街化区域の規模
 
 1) 基本的考え方
 市街化区域は、市街地に配置すべき人口・産業を適切に収容しうる規模とするべきである。
 2) 市街化区域の規模の設定
a 市街化区域の規模の設定は、法第6条第1項に規定する都市計画に関する基礎調査(以下「都市計画基礎調査」という。)を踏まえた、おおむね10年後の人口及び産業の見通しに基づき、住宅用地、商業用地、工業用地、公共施設用地その他の用地の必要な面積を算出したうえで、その範囲内において行うことが望ましい。この際、市街化区域内において未利用、低利用となっている土地の区域については、望ましい市街地像を示すとともに、必要な規制誘導策を講じることにより、有効な利用を図るよう努め、低未利用地を多く残したまま市街化区域がいたずらに拡大することは厳に避けるべきである。
b 目標年次において、次に掲げるような都市的土地利用が行われないと想定される土地の区域が市街地に含まれることとなる場合には、これを市街化区域の規模から除外することが望ましい。
ア 生産緑地地区その他の将来にわたり都市的土地利用が想定されない土地の区域
イ 計画的な開発予定地等のうち、宅地化に相当の期間を要し、目標年次には都市的土地利用に転換されないと想定される土地の区域
c 市街化区域の密集市街地の整備、人口の空洞化が著しい中心市街地での住宅供給等に伴い、人口の再配置を行うことが適切な場合には、その結果生じる地区毎の人口の増加又は減少を適切に収容しうるよう市街化区域の規模を設定することが望ましい。
d 住宅用地の規模
ア 住宅用地として必要な市街地の規模の算定にあたっては、例えば、次に掲げる事項を検証することにより、地域の実情に即しつつ適正な将来人口密度を想定して行うことが望ましい。
@既存の住宅用地の配置及び人口密度の構成
A良好な居住環境を実現するための各住宅用地の人口密度の再構成の方針及びこれによって発生する収容可能人口の増減
B目標市街地人口と既存の住宅用地の収容可能人口との比較
C既存の住宅用地では目標市街地人口を収容できない場合、地形その他の地理的条件、交通、産業立地動向その他の社会経済的条件を勘案した、新規住宅用地開発可能地区の選定及び適正な将来人口密度を想定した場合の居住可能人口の算定
イ 住宅用地の人口密度については、土地の高度利用を図るべき区域にあっては、1haあたり100人以上、その他の区域にあっては1haあたり80人以上を目標とし、土地利用密度の低い地域であっても1haあたり60人以上とすることを基本とすることが望ましい。
ウ なお、地域の実情に応じ、住宅用地の将来人口密度について、次のように取り扱うことが考えられる。
@ 住宅用地全域の将来人口密度として、従前の将来人口密度の目標値に次のような状況の変化を反映させた値を用いること。
ア) 少子高齢化、単身世帯の増加等を背景として、当該住宅用地の世帯あたり人員の減少が顕著であり、これにより住宅用地全域の平均人口密度が従前より低下していること。
イ) 密集市街地の解消、良好な住宅市街地の新たな形成等を背景として、当該住宅用地の平均住宅敷地規模の拡大が顕著であり、これにより住宅用地全域の平均人口密度が従前より低下していること。
A 住宅用地全域の将来人口密度として、@の値に次のような地域特性を反映させた値を用いること。
ア) 敷地規模の大きな戸建て住宅の割合が高く、平均敷地規模が全国的な平均敷地規模と比較して著しく異なること。
イ) 敷地規模の小さな共同住宅の割合が高く、平均敷地規模が全国的な平均敷地規模と比較して著しく異なること。
B 例えば、独立して一体的な日常生活圏を構成している大規模な既存集落などの既存の市街化区域と同程度の市街化状況にあるが、それほどの人口増加は見込まれない区域において、別枠として特別の将来人口密度を想定すること。
C 市街地開発事業等の施行中又は施行予定の区域で当該事業の完成目標年次が区域区分の目標年次を超えるような長期事業地において、想定人口は目標年次までに定着する人口としつつ、目標年次以降に人口定着が見込まれる区域の面積を加算すること。
 なお、@からCまでの取扱いを行った場合であっても、住宅用地全域の将来人口密度は、都市計画法施行規則(昭和44年建設省令第49号。以下「規則」という。)に定める既成市街地の人口密度の基準である1haあたり40人を下回らないこととすべきである。
エ 既に市街化している区域において、地形その他の地理的条件や都市基盤施設の配置・形状等からみて現状より多くの住宅を建築することが困難であること等の理由から、イに示す人口密度の参考数値を適用しがたい場合には、現在の市街地の地区毎の人口密度を把握のうえ、市街地の具体的な整備の方向を示したうえで、これを踏まえた将来の地区毎の人口密度目標を設定するなどの方策も考えられる。ただし、この場合でも規則に定める既成市街地の基準である1haあたり40人を下回らないこととすべきである。  
e 商業用地、工業用地、流通業務用地その他の業務用地の規模
 工業用地(これに関連する流通業務用地を含む。)の規模の算定にあたっては、当該都市計画区域の工業立地動向を考慮し、将来の適正な工業配置を図るため今後予想される規模の工業生産及びこれに関連する流通業務が円滑に行われるよう配慮することが望ましい。
 また、必要に応じ、当該都市計画区域における将来の商業その他の業務活動の規模を勘案して、商業用地、流通業務用地その他の業務用地の規模を想定することが望ましい。
 
(4)主要な都市計画の決定の方針 
 
 [1]土地利用に関する主要な都市計画の決定の方針    
 
 都市計画区域マスタープランのうち土地利用に関する主要な都市計画の方針については、区域区分の有無に応じて、それぞれ少なくとも次に掲げる内容を定めることが望ましい。なお、法第6条の2第2項第3号の「土地利用」とは、「都市としての土地利用」であることに留意すべきである。
 
1)区域区分を行う都市計画区域の場合  
a主要用途の配置の方針
 当該都市計画区域の住居、商業、工業等の各機能に関する現状、課題及び将来の見通しを明らかにするとともに、各機能の増進や維持等を実現するための各用途の配置の概要を示すことが望ましい。
 b市街地における建築物の密度の構成に関する方針
 主要用途ごとに目指すべき市街地像を具体的に想定しながら、予定されるおおむねの利用容積率又は利用密度の強弱を示すことが想定され、特に、高密度の利用を指向する場合には、併せて実現すべき市街地像を建築物の形態、配列等を明らかにしながら示すことが望ましい。
 c市街地における住宅建設の方針
 既成市街地の定住人口確保、著しい人口増加が生じている都市計画区域における適正な住宅確保等の課題を明らかにしたうえで、当該課題に対応するための住宅建設の方策を示すことが望ましい。
 d市街地において特に配慮すべき問題等を有する市街地の土地利用の方針
ア 土地の高度利用に関する方針
 市街地の中で特に土地の高度利用を図るべき地区について、都市全体での当該地区の位置づけ、土地の高度利用を可能とする道路、鉄道等の条件の説明等と併せて、建築物の整備の方向性と良好な市街地空間の形成の観点から土地の高度利用の結果実現する市街地像を具体的に示すことが望ましい。
イ 用途転換、用途純化又は用途の複合化に関する方針
 用途転換、用途純化又は用途の複合化を行う背景、現状の課題等を明らかにしながら、望ましい市街地像と併せて用途転換、用途純化又は用途の複合化を行う地区を示すことが望ましい。
ウ 居住環境の改善又は維持に関する方針
 良好な居住環境を維持すべき地区、新たな住宅市街地形成に合わせて積極的に良好な居住環境の実現を図るべき地区、密集市街地などで市街地の改造又は建築更新の誘導などにより居住環境の向上を図るべき地区等について、各々の目指す市街地像を具体的に示すことが望ましい。
エ 市街化区域内の緑地又は都市の風致の維持に関する方針
 市街化区域内農地その他の市街化区域内の緑地の保全、都市の風致の維持の観点から建築等の制限等に関する方針を明らかにしたうえで、都市として守るべき緑地又は風致の存在を明らかにすることが望ましい。
e市街化調整区域の土地利用の方針
ア 優良な農地との健全な調和に関する方針
 都市的土地利用と農業的土地利用との健全な調和の観点から保存すべき農地を示すことが望ましい。
イ 災害防止の観点から必要な市街化の抑制に関する方針
 溢水、湛水、がけ崩れその他の災害の危険が高く、特に市街化を抑制すべき地区を示すことが望ましい。
ウ 自然環境形成の観点から必要な保全に関する方針
 自然環境を整備又は保全し、市街化を抑制すべき地区を示すことが望ましい。
エ 秩序ある都市的土地利用の実現に関する方針
 既存集落の生活環境の整備を行う地区、市街化区域の近接・隣接区域において建築活動の動向を踏まえて一定の市街化を容認する地区などを示すことが望ましい。
 
2)区域区分を行わない都市計画区域の場合
a主要用途の配置の方針
 当該都市計画区域の住居、商業、工業等の各機能に関する現状、課題及び将来の見通しを明らかにするとともに、各機能の増進や維持等を実現するための各用途の配置の概要を示すことが望ましい。
b土地利用の方針(必要に応じ以下の項目を選択)
ア 土地の高度利用に関する方針
 都市の中で特に土地の高度利用を図るべき地区について、都市全体での当該地区の位置づけ、土地の高度利用を可能とする道路、鉄道等の条件の説明等と併せて、建築物の整備の方向性と良好な市街地空間の形成の観点から土地の高度利用の結果実現する市街地像を具体的に示すことが望ましい。
イ 用途転換、用途純化又は用途の複合化に関する方針
 用途転換、用途純化又は用途の複合化を行う背景、現状の課題等を明らかにしながら、望ましい市街地像と併せて用途転換、用途純化又は用途の複合化を行う地区を示すことが望ましい。
ウ 居住環境の改善又は維持に関する方針
 良好な居住環境を維持すべき地区、新たな住宅市街地形成に合わせて積極的に良好な居住環境の実現を図るべき地区、密集市街地などで市街地の改造又は建築更新の誘導などにより居住環境の向上を図るべき地区等について、各々の目指す市街地像を具体的に示すことが望ましい。
エ 都市内の緑地又は都市の風致の維持に関する方針
 都市内の緑地の保全、都市の風致の維持の観点から建築等の制限等に関する方針を明らかにしたうえで、都市として守るべき緑地又は風致の存在を明らかにすることが望ましい。
オ 優良な農地との健全な調和に関する方針
 都市的土地利用と農業的土地利用との健全な調和の観点から保存すべき農地を示すことが望ましい。
カ 災害防止の観点から必要な市街化の抑制に関する方針
 溢水、湛水、がけ崩れその他の災害の危険が高く、特に市街化を抑制すべき地区を示すことが望ましい。
キ 自然環境形成の観点から必要な保全に関する方針
 自然環境を整備又は保全し、市街化を抑制すべき地区を示すことが望ましい。
ク 計画的な都市的土地利用の実現に関する方針
 既存集落の生活環境の整備を行う地区、優良な田園居住を実現する地区を示すことが望ましい。
 
[2]都市施設の整備に関する主要な都市計画の決定の方針
 
 都市計画区域マスタープランのうち、都市施設の整備に関する主要な都市計画の決定の方針については、少なくとも次に掲げる内容を定めることが望ましい。この場合、都市計画決定が行われなかったものも含め、既存の主要な都市施設の整備状況を踏まえて定めることが望ましい。
 
1)交通施設の都市計画の決定の方針
 a基本方針
ア 交通体系の整備の方針
 都市計画の目標で示された都市の将来像を実現するため、各交通機関相互の役割分担・連携の考え方等交通体系のあり方を示すことが望ましい。
イ 整備水準の目標
 おおむね20年後の実現を目指す交通体系の整備水準について、道路、駐車場等の各施設別に、例えば走行速度や幹線街路網密度(1km2当たりの幹線街路延長)等の具体的な指標を用いて、わかりやすく示すことが望ましい。
b主要な施設の配置の方針
ア 道路
 都市計画の目標及びa基本方針を踏まえ、広域的な交通の処理等の交通機能や市街地内の空間形成の機能等に配慮して、主要な道路のおおむねの配置を示すことが望ましい。
イ 鉄道
都市計画の目標及びa基本方針を踏まえ、他の交通機関との連携や都市機能の配置との関係、市街地開発の方向性に配慮して、主要な都市高速鉄道のおおむねの配置を示すことが望ましい。
ウ その他
大規模な駐車場や自動車ターミナル等、その他の主要な交通施設について、a基本方針を踏まえ、おおむねの配置を示すことが望ましい。
c主要な施設の整備目標
 b主要な施設の配置の方針において示した交通施設等について、優先的におおむね10年以内に整備することを予定する施設を示すことが望ましい。
 
2)下水道及び河川の都市計画の決定の方針
 a基本方針
ア 下水道及び河川の整備の方針
都市計画の目標に示された都市の将来像を実現するための下水道及び河川の整備の方針については、都市の安全、環境、衛生、アメニティ等の向上の観点を踏まえた整備のあり方を示すことが望ましい。
イ 整備水準の目標
  おおむね20年後の実現を目指す下水道及び河川の整備水準について、河川、下水道等の各施設毎に、例えば、下水道については普及率、河川については治水の安全度の指標等、具体的な指標を用いて、わかりやすく示すことが望ましい。
b主要な施設の配置の方針
ア 下水道
 都市計画の目標及びa基本方針を踏まえ、主要な下水道の排水区域や処理場のおおむねの配置を示すことが望ましい。
イ 河川
都市計画の目標及びa基本方針を踏まえ、流域の土地利用等に配慮して、主要な河川のおおむねの配置を示すことが望ましい。
c主要な施設の整備目標
 b主要な施設の配置の方針において示した下水道及び河川等について、優先的におおむね10年以内に整備することを予定する施設を示すことが望ましい。
 
3)その他の都市施設の都市計画の決定の方針  
 上記のほか、必要に応じ、当該都市の活動にとって特に重要と考えられるごみ焼却場等の供給処理施設等について、その整備にあたってのa基本方針、b主要な施設の配置の方針及びc主要な施設の整備目標を上述の例に準じて示すことが望ましい。
 
[3]市街地開発事業に関する主要な都市計画の決定の方針
 
 都市計画区域マスタープランのうち、市街地開発事業に関する主要な都市計画の決定の方針については、少なくとも次に掲げる内容を定めることが望ましい。
 
1)主要な市街地開発事業の決定の方針
 都市計画の目標や土地利用に関する主要な都市計画の決定の方針等を踏まえ、木造密集市街地や大規模低未利用地など市街地整備上の主要な課題を抱えている地域について、各々の地域の実情に応じどのような市街地像を目指しどのような方策によって市街地整備を行うかの方針(おおむねの区域、市街地開発事業の種類等)を示すことが望ましい。
2)市街地整備の目標
 1)主要な市街地開発事業の決定の方針において示した市街地開発事業等について、おおむね10年以内に実施することを予定する市街地開発事業を示すことが望ましい。
 
[4]自然的環境の整備又は保全に関する都市計画の決定の方針
 
(本項目は、土地利用、都市施設の内容を横断的に含むため、法第6条の2第2項第3号に掲げる項目に該当するが、総合的、一体的に計画することが効果的であることから一括して記述することが望ましい。)
 
1)基本方針
 当該都市計画区域における自然的環境の特徴と現状、及びこれらを踏まえた整備又は保全の必要性について記述することが望ましい。また、計画水準は、例えば、都市計画制度により担保されている又は将来担保されうる緑地の確保目標面積、又は都市計画区域内住民一人当たりの都市施設としての公共空地の面積等の具体的な指標を用いてわかりやすく示すことが望ましい。計画の目標年次は都市の将来像を想定するおおむね20年後とすることが望ましい。
 
2)主要な緑地の配置の方針
 良好な自然的環境を構成する主要な緑地について、地域特性に応じ以下に示すような観点を用いて緑地の機能を系統別に評価し、緑地系統の大まかな配置の方針を示すことが望ましい。
ア 環境保全系統
 都市の骨格となる緑地であって、動植物の生息・生育地、都市気象の緩和等の環境への負荷の軽減等、主として存在機能に着目した緑地の系統
イ レクリエーション系統
 日常圏的、週末圏的なレクリエーション活動に対処し得るような、主として利用機能に着目した緑地の系統
ウ 防災系統
 災害の防止あるいは災害時における避難地・避難路等の計画、都市公害の緩和に対処し得るような緑地の系統
エ 景観構成系統
 市街地を取り込み市街地の背景となる緑地、都市を代表するような郷土的景観を形成する緑地、シンボルとなるような緑地等、特色あるまちづくりに資する都市景観を形成する要素となる緑地の系統
オ この他、例えば歴史的環境の保全、生態系の保全、地域に特有な地形の保全、地域の活性化等の観点も考えられる。
 
3) 実現のための具体の都市計画制度の方針
 配置された緑地について整備又は保全を実現するために選択する具体の都市計画制度を定めることが望ましい。
 
4) 主要な緑地の確保目標
 3)の「実現のための具体の都市計画制度の方針」に示されたもののうち、優先的におおむね10年以内に決定することを予定する緑地保全地区等の地域地区、及び整備することを予定する公園等の公共空地を示すことが望ましい。
 
 
2.市町村マスタープラン
 
(1)基本的考え方
 
 [1] 市町村マスタープランは、住民に最も近い立場にある市町村が、その創意工夫の下に住民の意見を反映し、まちづくりの具体性ある将来ビジョンを確立し、地区別のあるべき市街地像を示すとともに、地域別の整備課題に応じた整備方針、地域の都市生活、経済活動等を支える諸施設の計画等をきめ細かくかつ総合的に定め、市町村自らが定める都市計画の方針として定められることが望ましい。
 この際、土地利用、各種施設の整備の目標等に加え、生活像、産業構造、都市交通、自然的環境等に関する現況及び動向を勘案した将来ビジョンを明確化し、これを踏まえたものとすることが望ましい。
 
 [2] 市町村マスタープランは、当該市町村を含む都市計画区域マスタープラン、「市町村の建設に関する基本構想」である地方自治法(昭和22年法律第67号)第2条第4項に基づく市町村の基本構想及び国土利用計画法(昭和49年法律第92号)第4条に基づく市町村計画に即したものとすることが望ましい。
 
 [3] 市町村マスタープランは、個別施策、施設計画等に関する事項の羅列にとどまらず、その相互の関係等にも留意し、市町村の定める具体の都市計画についての体系的な指針となるように定めることが望ましい。
 
 [4] 市町村マスタープランには、例えば、次に掲げる項目を含めることが考えられる。
 ア 当該市町村のまちづくりの理念や都市計画の目標
 イ 全体構想(目指すべき都市像とその実現のための主要課題、課題に対応した整備方針等)
 ウ 地域別構想(あるべき市街地像等の地域像、実施されるべき施策)
   全体構想においては、用途地域等の地域地区、都市施設、市街地開発事業に関する都市計画の前提となる都市構造・都市空間及びこれと密接な関連を有する交通体系の整備の考え方や土地利用、施設整備等の方針とともに、都市内の自然的環境の保全その他の良好な都市環境の形成、都市景観形成等の指針を明らかにすることが望ましい。また、準都市計画区域について、指定の考え方や区域内における土地利用の整序の考え方を明らかにすることも考えられる。
   地域別構想の地域の設定は、地形等の自然的条件、土地利用の状況、幹線道路等の交通軸、日常生活上の交流の範囲、市街化区域と市街化調整区域の区域区分等を考慮し、都市計画区域内の各地域像を描き施策を位置づける上で適切なまとまりのある空間の範囲とすることが望ましい。
   地域別構想においては、全体構想に示された整備の方針等を受け、地域の特性に応じ誘導すべき建築物の用途・形態、地域の課題に応じ地域内に整備すべき諸施設、円滑な都市交通の確保、緑地空間の保全・創出、空地の確保、景観形成のため配慮すべき事項等の方針を明らかにすることが望ましい。なお、地域別構想は、はじめから必ずしも全ての地区について定め、又は定める内容を同水準とする必要はなく、当該地域の実情、住民の合意形成の熟度等に応じて、順次、段階的に作成することも考えられる。
 
 [5] 市町村マスタープランには、各市町村の判断で、各種の社会的課題(環境負荷の軽減、都市の防災性の向上、都市のバリアフリー化、良好な景観の保全・形成等)への都市計画としての対応についての考え方を、必要な関係部局と調整を図ったうえで、記述することも考えられる。
また、緑の基本計画、市街地整備基本計画、地下利用のガイドプラン等都市計画に関連した分野別の計画の内容のうち必要な事項をこれにも位置づけることが望ましい。
 
[6] 市町村マスタープランを定めるにあたっては、当該マスタープランに盛り込む事項が、当該区域の生活環境、自然的環境等に及ぼす影響について十分に配慮することが望ましい。
 
(2)配慮すべき事項
 
 [1]市町村は、都市計画区域マスタープランの策定段階において、法第15条の2第1項に基づく申し出を行うことにより、市町村マスタープランの内容を都市計画区域マスタープランに反映するよう努めることが望ましい。
 
 [2]市町村マスタープランの策定にあたって用いる将来の人口については、市町村マスタープランが即すべき市町村の建設に関する基本構想に示される将来の予測人口が、一般的には当該市町村における産業振興プロジェクト等の効果が十分に発揮されることを前提としたものである一方、都市計画区域マスタープランで用いられる将来の人口が、区域区分の判断の根拠として用いることから、一般的には現状の人口の動向に基づく抑制的なものであるため、両者の算出の方法及び結果が異なることがあり得る。都市計画の一体性の観点から、市町村マスタープランと都市計画区域マスタープランは、同一の予測人口を前提とすべきであり、両者に齟齬が生じる可能性がある場合には、都道府県と市町村との間で調整を図るべきである。ただし、市町村の建設に関する基本構想の対象期間、策定時期等との関係で、当分の間両者の予測人口を整合させることが困難な場合には、両者の調整が図られるまでの間の措置として、各々の予測人口の算出の前提及び算出方法等を明らかにしたうえで、例えば想定される場合毎の数値としてこれらを示すことも考えられる。
 
 [3]市街化調整区域を含む都市計画区域又は区域区分を行わない都市計画区域において市町村マスタープランを定めようとするとき又は変更するときは、農林漁業との健全な調和を図る観点から、農林水産担当部局と調整することが望ましい。
 
[4]市町村マスタープランを策定するにあたり、関係道路管理者に協議する等により広域的な幹線道路の計画・整備に支障とならないようにすることが望ましい。
 
(3)住民の意向反映、周知等
 
 [1]「公聴会の開催等住民の意見を反映させるために必要な措置」としては、例えば、地区別に関係住民に対しあらかじめ原案を示し、十分に説明しつつ意見を求め、これを積み上げて基本方針の案を作成し、公聴会・説明会の開催、広報誌やパンフレットの活用、アンケートの実施等を適宜行うことが望ましい。
 
 [2]定めた基本方針の「公表」の方法としては、市町村の庁舎(支所、出張所等を含む。)への図書の備付け及び閲覧、積極的な広報の実施、概要パンフレットの作成・配布等を適宜行うことが望ましい。
 
 [3]市町村の住民に基本方針の内容を視覚的に理解が容易なもので周知することが望ましく、このために、例えば、総括図に加え、地域別の整備構想に対応する図面を地域別に作成して、これに土地利用、施設、事業等の各構想について、おおむねの配置又は規模を極力図示すること、必要に応じて、土地利用、交通、緑、環境の保全等特定の分野について編集した図面を作成すること、これらについて適宜模型、イメージ図等によって補うこと等が望ましい。
 
 
W−2 都市計画の内容
 
W−2−1 土地利用
 
A.準都市計画区域(法第5条の2関連)
 
(1)準都市計画区域の指定に関する基本的な考え方
 
[1] 準都市計画区域は、積極的な整備又は開発を行う必要はないものの、一定の開発行為及び建築行為がある区域で、そのまま土地利用を整序することなく放置すれば、用途の混在や農地転用に対する無用な圧力による不適切な農地の浸食等が生じる蓋然性が高い場合にこれらの問題を避けるため、土地利用の整序のみを行う制度として創設されたものである。
 
[2] 準都市計画区域は、相当数の建築物の建築等によって、市街地環境上の問題等が発生する蓋然性の高い区域について指定することを想定したものであることから、このような問題が発生することが想定されない区域及び土地については、準都市計画区域として指定するべきではない。
 
[3] 法第5条の2第1項の「当該区域の自然的条件」には、当該区域の現状が水域であるか否かが当然に含まれ、現状において水域となっている区域が水域のままの状態で土地利用上の問題を惹起することがありえない以上、準都市計画区域に指定される区域には、法律上当然に水域は含まれないことに留意すべきである。
 
[4] 法第5条の2第1項の「その他の法令」には、少なくとも次に掲げるものが含まれることに留意すべきである。
1) 農地法(昭和27年法律第229号)
2) 森林法(昭和26年法律第249号)
3) 保安林整備臨時措置法(昭和29年法律第84号)
4) 自然公園法(昭和32年法律第161号)
5) 自然環境保全法(昭和47年法律第85号)
6) 港湾法(昭和25年法律第218号)
7) 海岸法(昭和31年法律第101号)
8) 公有水面埋立法(大正10年法律第57号)
9) 工場立地法(昭和34年法律第24号)
 
[5] 自然公園法又は自然環境保全法に基づく条例により土地利用規制が行われている区域においても、当該区域の土地利用規制の状況を勘案して、準都市計画区域を定めて土地利用の整序を行う必要があるか否かを判断すべきである。
 
[6] 法第5条の2第1項の「将来における都市としての整備、開発及び保全に支障が生じるおそれがあると認められる」とは、将来都市計画区域として指定することを予定しているものではなく、また、都市計画区域の指定の要件、手続きを緩和するものではないことから、都市計画区域の拡大につながるものではない。
 
[7] 港湾法第37条、第38条の2、第39条等の関係規定、海岸法第8条、第37条の5等の関係規定及び公有水面埋立法第29条等による土地利用に係る規制(以下「港湾・海岸・埋立地に係る土地利用規制」という。)が行われている地域については、準都市計画区域を定める必要がある状況は発生しないものと考えられる。
 
[8] 準都市計画区域内の区域に港湾・海岸・埋立地に係る土地利用規制を行う区域が設定された場合、当該区域について準都市計画区域を引き続き設定する必要がある状況は発生しないものと考えられる。
 
(2)準都市計画区域の形状等
 
[1] 次に掲げる土地の区域については、その他の法令による土地利用規制の内容に鑑みて、準都市計画区域には含めるべきではない。
1) 農業振興地域の整備に関する法律(昭和44年法律第58号)第8条第2項第1号に規定する農用地区域(以下「農用地区域」という。)
2) 森林法第25条若しくは第25条の2の規定により指定された保安林の区域、同法第30条若しくは第30条の2の規定により告示された保安林予定森林の区域、同法第41条の規定により指定された保安施設地区又は同法第44条において準用する同法第30条の規定により告示された保安施設地区に予定された地区及び保安林整備臨時措置法第2条第1項に規定する保安林整備計画において保安林の指定が計画された森林の区域(以下「保安林等」という。)
3) 自然公園法第17条第1項に規定する国立公園及び国定公園の特別地域
4) 自然環境保全法第14条第1項に規定する原生自然環境地域及び同法第25条第1項に規定する自然環境保全地域の特別地区
 
[2] [1]のほか、次に掲げるような土地の区域については、準都市計画区域に含めないことが望ましい。なお、この場合において、農地及び採草放牧地の区域で準都市計画区域に例外的に含まれうるものは、市街地の区域内又は市街化の傾向が著しい区域内にあるもののみであり、森林の区域で準都市計画区域に例外的に含まれうるものは、宅地に介在するもののみとするべきである。
1) 農地及び採草放牧地
2) 森林
3) 工場立地法による土地利用に係る規制が行われている土地の区域
 
[3] 準都市計画区域と農業振興地域の整備に関する法律第6条第1項の農業振興地域(以下「農業振興地域」という。)とが重複することも考えられ、準都市計画区域が指定されたことをもって当該区域に係る農業振興地域の変更は必要ない。また、準都市計画区域における用途地域の設定をもって、当該地域に係る農業振興地域を変更する必要はない。
 
(3)関係行政機関との調整等
 
[1] 準都市計画区域の指定にあたっては、国土利用計画法第8条の市町村計画との調和を図ることが望ましい。
 
[2] 準都市計画区域に関する都市計画を決定又は変更するときは、必要に応じて、例えば、次のように関係行政機関と事前に調整することが望ましい。
1) 準都市計画区域を指定する際に、当該区域内に農地等が含まれることとなる場合には、農林漁業との健全な調和を図り、また、農地転用許可事務と相互の事務処理の円滑化を図る観点から、市町村の都市計画担当部局と農地転用部局の間において十分調整を行うとともに、都道府県知事は、法第5条の2第2項により市町村から協議を求められた場合には、都市計画担当部局と農地転用担当部局の間において十分連絡調整を行うことが望ましい。また、当該区域内に4haを超える農地等が含まれる場合には、都道府県農地転用担当部局を通じて地方農政局農地転用担当部局(北海道にあっては農林水産省農村振興局、沖縄県にあっては沖縄総合事務局農林水産部。)との間において十分連絡調整が行われることが望ましい。
2) 準都市計画区域を指定する際に、やむを得ず森林が含まれることとなる場合には、農林漁業との健全な調和を図り、また、林地開発許可事務と相互の事務処理の円滑化を図る観点から、市町村の都市計画担当部局は、林務担当部局と十分調整を行うことが望ましい。また、法第5条の2第2項により、市町村から協議を求められた場合には、都道府県都市計画担当部局は、林務担当部局と十分調整を行うことが望ましい。さらに、当該区域内に、やむを得ず国有林野及び公有林野等官行造林地が含まれることとなる場合には、市町村の都市計画担当部局は、関係森林管理局と十分調整を行うことが望ましい。
3) 準都市計画区域を指定する際に、当該区域内における既存の土地改良施設等の維持管理、更新、改修等に支障が生じないよう、市町村の都市計画担当部局は土地改良事業等担当部局及び土地改良施設の管理者と十分調整を行うことが望ましい。
4) また、準都市計画区域の指定が農業農村整備事業等農林水産省所管事業の計画策定及び事業実施に影響を与えるものではないことに留意すべきである。
5) 港湾・海岸・埋立地に係る土地利用規制が行われている地域については、(1)[7]の通り準都市計画区域を定める必要のある状況は発生しないと考えられるが、仮に定める必要のあるような特段の事情により準都市計画区域を定めようとする場合には、都市計画行政と港湾行政の調和を図る観点から、関係港湾管理者又は海岸管理者と十分な調整を行うことが望ましい。
 
[3] 市町村が準都市計画区域について都市計画を決定する場合には、以下の事項に留意するべきである。
1) 法第13条第3項の「農林漁業の生産条件の整備」についての「配慮」には、既存の土地改良施設等の維持管理、更新、改修等に支障を生じさせないという観点からの配慮が含まれると解されること。
2) 法第19条第5項の規定に基づく市町村の都市計画の決定は、農業農村整備事業等農林水産省所管事業の計画策定及び事業実施に影響を与えるものではないこと。
 
 
B.区域区分(法第7条関連)
 
 1.市街化区域
 
 (1)基本的な考え方
 
[1] 市街化区域の設定は、都市計画区域マスタープランにおける区域区分の方針において、人口を最も重要な市街地規模の算定根拠としつつ、これに世帯数や産業活動の将来の見通しを加え、市街地として必要と見込まれる面積(以下単に「フレーム」という。)をそのまま即地的に割り付ける方式(いわゆる人口フレーム方式)を基本とすべきである。なお、都市計画区域のうち、農林業上その他の土地利用規制等により市街化することが想定されない土地の区域以外の区域にある土地について、都市計画区域の人口及び産業の将来の見通し、市街地における土地利用の現状及び将来の見通し等を総合的に勘案して、都市的土地利用への転換の適否を明らかにする方法が可能であれば、試行的に検討していくことも考えられる。
 
[2] 人口フレーム方式においても、市街化区域の設定または変更にあたり、全てのフレームを具体の土地に割り付けることなく、その一部を保留したうえで、市街化調整区域内の特定、又はいずれかの土地の市街地の状況が整った時点で市街化区域とする方法も考えられる。(いわゆる保留フレーム)
 
[3] 保留フレームの全部又は一部を具体の土地に割り付け、区域区分を変更する場合には、都市計画区域マスタープランを変更するべきでない。この場合においては、当該土地の区域に割り付けるフレームと当該フレームを割り付けた後の保留フレームを明らかにして区域区分の変更を行うべきである。
 
 (2)すでに市街地を形成している区域
 
 すでに市街地を形成している区域として市街化区域に編入する区域は、令第8条第1項第1号及び規則第8条に適合する必要があるが、この場合、国勢調査区又はおおむね20〜30haの土地の区域を標準の単位として区域を設定することが望ましい。
 
 (3)おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域
 
[1] 令第8条第1項第2号において、原則として市街化区域に含まないこととされている土地の区域は、次のような区域とすべきである。
1) 同号ロの「溢水、湛水、津波、高潮等による災害の発生のおそれのある土地の区域」には、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(平成12年法律第57号)第8条第1項に規定する土砂災害特別警戒区域が含まれるものであること。
2) 同号ハの「集団農地」とは、おおむね20ha以上の規模の一団の農用地を指すものであること。
3) 同号ニの「優れた自然の風景を維持するため保全すべき土地の区域」とは、自然公園法第17条第1項に規定する国立公園及び国定公園の特別地域並びに自然環境保全法第14条第1項に規定する原生自然環境地域及び同法第25条第1項に規定する自然環境保全地域の特別地区を指すものであること。
4) 同号ニの「都市の環境を保持するため保全すべき土地の区域」とは、歴史的風土特別保存地区、首都圏及び近畿圏の近郊緑地保全区域並びに文化財保護法(昭和25年法律第214号)第2条第1項第4号に規定する文化財が良好な状態で存する土地の区域で、当該土地の区域が大規模であり、かつ、自然の状況にある土地を指すものであること。
5) 同号ニの「水源を涵養し、土地の流出を防備するため保全すべき土地の区域」は、森林法に規定する保安林、保安施設地区、保安林予定森林及び保安林整備計画により保安林の指定が予定されている土地の区域(市街化区域に取り囲まれることとなる小規模のものを除く。)を指すものであること。
 
[2] [1]のほか、次に掲げるような土地の区域は市街化区域に含めないことが望ましい。
1) 計画的な市街化の見込みのない土地の区域であって、当該区域を市街化区域に編入しないことが市街化区域の一体的かつ計画的な整備に支障ないもの
2) 市街化区域内農地のうち将来にわたり保全することが適当な農地であって、生産緑地地区の指定を行わないもの
 
[3] おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域は、既成市街地の周辺部と新市街地との各々について、以下のように取り扱うこととすべきである。
1) 既成市街地の周辺部として市街化区域に編入する区域は、次に掲げる条件の全てを満たすことが望ましい。
a 既成市街地に連続していること。
b 現に相当程度宅地化している区域であること。
c おおむね10年で既成市街地になることが見込まれること。
a又はbの判断にあたっては、例えば、以下の条件を参考とすることも考えられる。
・相当数の街区を形成している区域で、鉄道駅・軌道の停車場、市役所・町役場などの施設の周囲で、日常生活圏の1単位である近隣住区の範囲である、おおむね500m(当該施設からおおむね500mの範囲の面積に占める当該区域内にある宅地の面積の割合が、おおむね既成市街地並みである40%を超える場合にあっては、その割合が40%となるまで範囲を広げることは可能(ただし徒歩圏域である1kmを超えないこと))以内の区域
2) 新市街地は、市街地の発展の動向、当該区域の地形、自然条件及び交通条件を配慮し、かつ、都市施設を効果的に配置し、整備することができるよう定めることが望ましい。
 また、次に掲げるような計画的な開発の見通しのある区域を主体として、いたずらに広く定めないことが望ましい。
a 土地区画整理事業が、事業認可、組合設立認可、施行認可が確実であること等により、当該事業の着手が確実である区域。
b 地方公共団体、都市基盤整備公団、地域振興整備公団、地方住宅供給公社等による住宅地等の開発事業の実施が、用地取得が確実であること、事業計画案があること等により、確実である区域。
c 民間開発事業者による計画開発事業が、用地取得が確実であること等により、その実施が確実であり、かつ開発計画の内容が関係公共団体と調整を了する等により、都市の健全な発展と宅地の実供給に資するものであると認められる区域。
d 幹線道路の沿道で基盤整備が行われており、計画的な市街化が確実と見込まれる区域
e その他都市施設の整備状況、周辺の土地利用の状況等から見て、地区計画を定める等により地区施設等の適正な整備が行われ、計画的な市街化が確実と見込まれる区域。
3) 公有水面埋立法による埋立地(農用地造成を目的とするものを除く。)で同法第27条の処分の制限の登記があったものについては、市街化調整区域の設定を行わないことが望ましい。
4) 既成市街地と連続しない新市街地(計画的開発の見通しのある住宅適地、工業適地等と一体の周辺既存集落等を含む。)は、1つの独立した市街地を形成するに十分な規模の区域とし、その規模はおおむね50ha以上であり、周辺における農業等の土地利用に支障のない区域とするべきである。
 ただし、次に掲げる土地の区域については、1つの住区を形成する最低限の規模である20ha以上を目途として飛地の市街化区域を設定することができる。
a インターチェンジ、新たに設置される鉄道の新駅又は大学等の公共公益施設と一体となって計画的に整備される住居、工業、研究業務、流通業務等の適地。
b 鉄道既存駅周辺、温泉その他の観光資源の周辺の既成市街地で計画的市街地整備が確実に行われる区域。
c 役場、旧役場周辺の既成市街地で計画的市街地整備が確実に行われる区域。
d 人口減少、産業停滞等により活性化が特に必要な地域で計画的市街地整備(既存集落を中心とするものを除く。)が確実に行われる区域。
e 効率的な工業生産、環境保全を図る必要がある場合の工場適地。
 
 2.市街化調整区域
 
市街化調整区域がその周囲を市街化区域に囲まれることとなる場合、当該市街化調整区域の規模は、将来、計画的な市街化を行うこととなった場合に支障のない面的広がりとして、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法(昭和50年法律第67号。以下「大都市法」という。)第2条第1項第1号に規定する地域(以下「大都市地域」という。)にあっては2ha以上、その他の地域にあってはおおむね5ha以上とするべきである。
ただし、大都市地域において5ha未満の市街化調整区域を設定する場合は、次に掲げる条件に該当するべきである。
[1]原則として、既に宅地である土地及び宅地化が見込まれる土地を含まないこと。
[2]農地にあっては、営農の継続が確実と認められること。
 
 3.区域区分の見直しの考え方
 
区域区分の変更は、都市計画基礎調査の結果を踏まえて見直すことが想定されており、その見直しにあたっては、単に大規模な宅地開発その他のまとまった市街地を機械的に市街化区域に編入するのでなく、市街化区域に接する土地の区域について、土地利用の動向や基盤施設の整備状況を子細に検討し、街区単位、土地単位等の小規模なものでも、市街化しているものは市街化区域に編入することが望ましい。また、市街化調整区域内の、市街化区域縁辺部、鉄道駅周辺や幹線道路沿道など土地利用の変化が著しい地区については、随時その動向を把握し、市街化の傾向が強まる兆しが見られた場合には農林漁業との健全な調和を図りつつ、速やかに保留フレームを活用する等の方策を用いて、市街化区域に編入することが望ましい。
一方、市街化区域内の土地であっても、現に市街化されておらず、当分の間営農が継続することが確実と認められるなど、本来市街化区域に含めないことが望ましい土地の区域については、市街化調整区域に編入することが望ましい。この場合、市街化調整区域に編入する土地の区域については、都市計画法令の他、他法令による土地利用規制等の扱いが大幅に変わることに配慮すべきである。
 
 4.関係行政機関との調整
 
区域区分の有無の判断又は区域区分の設定若しくは変更にあたっては、農林漁業との健全な調和を図る観点から農林担当部局と、土地取引等の規制及び監視の観点から国土利用計画法担当部局と、河川等の整備状況を踏まえた治水事業との調整の観点から治水担当部局との間で事前に調整することが望ましい。
なお、農林担当部局との間で区域区分の決定又は変更に関する調整を行う場合には、当該区域区分の決定又は変更に係る区域の規模及び根拠となる人口若しくは産業の規模を明らかにするとともに、これらの内容が都市計画区域マスタープランにおいて定めている区域区分の方針に即したものであることを明らかにして協議を行うことが望ましい。
 
 
C.都市再開発方針等(法第7条の2関連)
 
1.都市再開発方針
 
(1)都市再開発方針の策定基準
 
  [1] 都市再開発法第2条の3第1項第1号関連
1) 区域
 都市再開発法(昭和44年法律第38号。以下「再開発法」という。)第2条の3第1項第1号の「計画的な再開発が必要な市街地」とは、計画的な再開発を行うことにより都市全体の機能の回復、向上に貢献することとなる市街地で、既成市街地を中心とする市街地のうち、例えば、次に掲げるような区域が考えられる。
a 当該都市全体の健全な発展と秩序ある整備を図るうえで、望ましい土地利用の密度に比して現況の土地利用の密度が著しく低く、土地の高度利用を図るべき一体の市街地の区域
b 既に一定の密度の土地利用がなされているもののうち、都市構造の再編や防災上の観点から土地利用の転換や市街地の整備・改善を図る必要がある一体の市街地の区域
c 個性的、魅力的な都市空間の保全・修復・形成等を図ることを通じて、都市環境の向上を図るべき一体の市街地の区域
d その他特に都市の健全な発展と秩序ある整備を図るため再開発を行うべき区域を含む一体の市街地
2) 計画事項
a 再開発の目標については、都市構造の再編成、建築物の更新、都市環境の向上等に係る目標を定めることが望ましい。
b 土地の高度利用及び都市機能の更新に関する方針については、例えば、次に掲げるような事項について定めることが望ましい。
ア 適切な用途及び密度の確保、その他の適切な土地利用の実現に関する事項
イ 主要な都市施設の整備に関する事項
ウ 都市の環境、景観等の維持及び改善に関する事項
エ その他土地の高度利用及び都市機能の更新に関して特に必要な事項
 
  [2] 都市再開発法第2条の3第1項第2号関連
1) 地区の選定
 再開発法第2条の3第1項第2号の「特に一体的かつ総合的に市街地の再開発を促進すべき相当規模の地区」(以下「2号再開発促進地区」という。)の選定にあたっては、当該地区で行われることとなる面的整備事業や都市施設の整備等との整合に十分配慮し、総合的な整備が図られるようにするとともに、周辺地域と一体的となった市街地の形成に配慮して、公共施設等により区画される適正な街区群となるよう選定することが望ましく、地区の境界が関係権利者等に明示されるよう配慮することが望ましい。
2) 整備又は開発の計画の概要
 2号再開発促進地区の整備又は開発の計画の概要には、少なくとも次に掲げる事項について定めることが望ましい。
a 地区の再開発、整備等の主たる目標
b 用途、密度に関する基本的方針、その他の土地利用計画の概要
c 建築物の更新の方針(住宅用地又は住宅用地への土地利用転換が行われる地域の場合には、必要に応じ住宅供給と住宅用地の環境改善の方針)
d 都市施設及び地区施設の整備の方針
 さらに、必要に応じて、再開発の推進のため必要な公共及び民間の役割や条件整備等の措置、実施予定の面整備事業等の計画の概要及び決定又は変更予定の都市計画に関する事項、その他再開発の推進のために特記すべき事項について記述することが望ましい。
 
  [3] 都市再開発法第2条の3第2項関連
1) 策定すべき事項
 再開発法第2条の3第2項に規定される都市計画区域のうち、比較的小規模な都市においては、「計画的な再開発が必要な市街地」の大部分を再開発法第2条の3第2項の「特に一体的かつ総合的に市街地の再開発を促進すべき相当規模の地区」(以下「2項再開発促進地区」という。)とすることが適当な場合も想定されることから、必ずしも再開発法第2条の3第1項第1号に相当する方針の策定を前提とせず、2項再開発促進地区のみを定めることをもって足りるものとされたものである。この場合においても、再開発法第2条の3第1項第1号に規定する「計画的な再開発が必要な市街地に係る再開発の目標並びに土地の合理的かつ健全な高度利用及び都市機能の更新に関する方針」に相当する事項を検討したうえで、「特に一体的かつ総合的に市街地の再開発を促進すべき相当規模の地区及び当該地区の整備又は開発の計画の概要を明らかにした都市再開発の方針」を定めることが望ましい。
 なお、2項再開発促進地区については、都市計画決定権者の判断により、必要性が認められない場合には定めることを要しない。
2) 地区の選定及び整備又は開発の計画の概要
 2項再開発促進地区の選定については、2号再開発促進地区に準じて行うとともに、2項再開発促進地区の整備又は開発の計画の概要については、2号再開発促進地区に準ずる事項を定めることが望ましい。
 
(2)防災再開発促進地区との関係
 
 再開発促進地区(2号再開発促進地区及び2項再開発促進地区をいう。以下同じ。)のうち、密集市街地の土地の区域内の各街区について防災街区としての整備を図るために必要な場合には、当該地区を密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律(平成9年法律第49号。以下「密集法」という。)第3条に基づく防災再開発促進地区としても位置づけることが望ましい。
 この場合、「再開発促進地区」と「防災再開発促進地区」とは根拠となる規定が異なる計画事項であることに留意し、その定め方については「4.防災再開発の方針」によることが望ましい。
 
 2.住宅市街地の開発整備の方針
 
(1)住宅市街地の開発整備の方針の策定基準
 
[1] 大都市法第3条の6第1項第1号関連
1) 住宅市街地の開発整備の目標
 当該都市計画区域において実現すべき住宅市街地のあり方、住宅の建設及び更新、良好な居住環境の確保等に係る目標を定めることが望ましい。
2) 良好な住宅市街地の整備又は開発の方針
 良好な住宅市街地の整備又は開発の方針には、例えば、次に掲げる事項について定めることが望ましい。
a 住宅市街地の適切な配置及び密度の確保、その他の適切な土地利用の実現に関する事項
b 既成住宅市街地の更新・整備及び新住宅市街地の開発に関する事項
c 良好な居住環境の整備改善に関する事項
d その他良好な住宅市街地の整備又は開発に関して特に必要な事項
 
[2] 大都市法第3条の6第1項第2号関連
1) 重点地区の選定基準
 大都市法第3条の6第1項第2号イ又はイ及びロに掲げる地区(以下「重点地区」という。)は、住宅市街地の開発整備の目標、都市全体の整備構想を踏まえつつ、土地利用の状況、面的整備事業の実施可能性、公共施設の整備状況及び将来の見通し等を総合的に勘案して、大都市法第3条の3第2項第4号に規定する「住宅及び住宅地の供給を重点的に図るべき地域」において定めることが望ましい。
 なお、大都市法第3条の6第1項第2号イの「一体的かつ総合的に良好な住宅市街地を整備し、又は開発すべき市街化区域における相当規模の地区」とは、市街化区域内において、工場跡地等の低・未利用地、農地、低層住宅密集市街地などの既存住宅地等を含む一団の土地の区域であって、土地区画整理事業、市街地再開発事業、住宅街区整備事業等の面的整備事業の実施又は住宅地高度利用地区計画、再開発地区計画等の都市計画決定を行うこと等により、良好な住宅市街地として計画的に開発整備すべき相当規模の地区であり、同号ロの「市街化区域の市街化の状況等を勘案し、良好な住宅市街地として計画的に開発することが適当と認められる市街化調整区域における相当規模の地区」とは、当該都市計画区域の保留フレームのうち、計画的な市街地整備の実施の見通しがある程度立っているものとして、都市計画区域マスタープランにその位置を明らかにしうる市街化調整区域内の土地の区域であって、特に土地区画整理事業等により良好な住宅市街地として計画的に開発整備することが適当である相当規模の地区である。
 なお、重点地区には、防衛施設、森林法による保安林・保安施設地区は含めないことが望ましく、さらに、市街化調整区域における重点地区(大都市法第3条の6第1項第2号ロ)については、住宅地として利用することが不適当な地区、例えば、次に掲げる地区も含めないことが望ましい。
a 騒音、大気汚染等の交通公害が現に発生し、又は発生する恐れがある等、良好な住宅市街地とすることが環境上不適当なもの
b 以下の例のように、他の法令により住宅以外の土地利用に供されることとされている地区
ア 自然公園法による自然公園、自然環境保全法による自然環境保全地域及び鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律(大正7年法律第32号)による鳥獣保護区
イ 農用地区域
ウ 森林法による保安林予定林、保安施設地区予定地並びに保安林整備臨時措置法による保安林整備計画に基づく保安林指定計画地
2) 整備又は開発の計画の概要
 大都市法第3条の6第1項第2号の「整備又は開発の計画の概要」には、少なくとも次に掲げる事項について定めることが望ましい。
a 地区の整備又は開発の目標
b 用途、密度に関する基本的方針、その他の土地利用計画の概要
c 都市施設及び地区施設の整備の方針
 さらに、必要に応じて、良好な住宅市街地の整備又は開発の推進のため必要な公共及び民間の役割、開発整備の促進のための条件の整備等の措置や、実施予定の面的整備事業等の計画の概要及び決定又は変更予定の都市計画に関する事項、その他良好な住宅市街地の整備又は開発の推進のために特記すべき事項について定めることが望ましい。
 
 (2)関係行政機関との調整
 
1) 住宅市街地の開発整備の方針を決定又は変更する場合には、住宅・宅地担当部局や国土利用計画法に基づく監視区域の指定の円滑な運用を図る観点から国土利用計画法担当部局と調整することが望ましい。
2) 重点地区の指定にあたっては、農林部局等と調整するとともに、道路整備計画等との調整の観点から道路管理者と調整することが望ましい。
3) 臨港地区、港湾隣接地域、港湾施設が相当程度集積している港湾区域内の埋立地又は港湾施設用地について重点地区を指定しようとする場合には、良好な住宅市街地の整備と港湾の秩序ある整備及び適正な運営との整合を図る観点から関係港湾管理者と協議することが望ましい。
 
  3.拠点業務市街地の開発整備の方針
 
 (1)拠点業務市街地の開発整備の方針の策定基準
 
 拠点業務市街地の開発整備の方針としては、地方拠点都市地域の整備及び産業業務施設の再配置の促進に関する法律(平成4年法律第76号。以下「地方拠点法」という。)第6条の「基本計画」の達成に資するため、都市計画を総合的に推進し、もって良好な拠点業務市街地の計画的な開発整備の推進を図る観点から、少なくとも以下の事項について定めることが望ましい。
 
1) 拠点業務市街地の開発整備の目標
 当該都市計画区域において実現すべき拠点業務市街地のあり方、適切な土地利用、都市機能の集積に係る目標を定めることが望ましい。
2) 良好な拠点業務市街地の開発整備の方針
 例えば、次に掲げる事項について定めることが望ましい。
a 拠点業務市街地の適切な用途及び密度の確保、その他の適切な土地利用の実現に関する事項
b 主要な都市施設の整備に関する事項
c 拠点業務市街地の都市環境、景観等の維持・形成に関する事項
d その他良好な拠点業務市街地の整備又は開発に際して特に必要な事項
3) 整備又は開発の計画の概要      
 次のaからcの事項を定めるとともに、必要に応じてdからgの事項を定めることが望ましい。
a 地区の整備又は開発の目標
b 用途、密度に関する基本的方針、その他の土地利用計画の概要
c 都市施設及び地区施設の整備の方針
d 良好な拠点業務市街地の整備又は開発の推進のために必要な公共及び民間の役割、開発整備の促進のための条件の整備等の措置
e おおむね5年以内に実施が予定されている土地区画整理事業、市街地再開発事業のうち主要な事業の計画の概容
f おおむね5年以内に決定又は変更が予定されている用途地域、高度利用地区、特定街区等の地域地区、拠点整備促進区域、市街地再開発促進区域等の促進区域、都市施設、再開発地区計画等の都市計画に関する事項
g その他特記すべき事項
 
 4.防災再開発の方針
 
 (1)防災再開発促進地区の区域
 
 防災再開発促進地区の指定により、密集法第4条に基づく建替計画の認定、同法第13条に基づく延焼等危険建築物に対する除却の勧告、同法第31条に基づく都市基盤整備公団の業務の特例、同法第34条に基づく防災街区整備権利移転等促進計画の作成、同法第40条に基づく防災街区整備組合の設立及び公有地の拡大の推進に関する法律(昭和47年法律第66号)に係る特例等が適用されるので、地区の境界が関係権利者等に明示されるよう配慮することが望ましい。
 
 (2)防災再開発促進地区に係る整備又は開発の計画の概要
 
 整備又は開発の計画の概要には、少なくとも次に掲げる事項について定めることが望ましい。
a 地区の再開発、整備等の主たる目標
b 防災街区の整備に関する基本的方針その他の土地利用計画の概要
c 建築物の更新の方針(住宅地又は住宅地への土地利用転換が行われる地域の場合には、必要に応じ住宅供給と住宅地の環境改善の方針)
d 都市施設、地区防災施設及び地区施設の整備方針
 さらに、防災街区としての整備を図る観点から、再開発を推進するため、必要に応じ、公共及び民間の役割、条件の整備等の措置や、実施予定の公共施設整備事業、面的整備事業等の計画の概要及び決定又は変更予定の都市計画に関する事項、その他再開発の促進のために特記すべき事項について定めることが望ましい。
 
 (3)配慮すべき事項
 
[1] 関係行政機関との調整
1) 防災再開発の方針を定めるにあたっては、地域防災計画との調整を図る観点から地域防災計画担当部局と十分調整を図ることが望ましい。
2) 防災再開発促進地区の指定にあたっては、密集法第4条に基づく建替計画の認定や同法第13条に基づく延焼等危険建築物に対する除却勧告等、密集住宅市街地整備促進事業等による地区の整備と密接に関連することから住宅・建築担当部局と調整するとともに、必要に応じて、港湾管理者と調整することが望ましい。また、市町村が法第18条第1項の規定に基づく意見を作成する場合にあっては、当該地区における消防機関等による火災対策・災害対策との調整を図る観点から当該地区を管轄する消防長と十分調整を図ることが望ましい。
3) 臨港地区、港湾隣接地域、港湾施設が相当程度集積している港湾区域内の埋立地又は港湾施設用地について防災再開発促進地区を指定しようとする場合には、港湾の秩序ある整備と適正な運営との整合を図る観点から関係港湾管理者と協議することが望ましい。
 
[2] 他の制度の併用
 防災再開発促進地区の指定にあたっては、区域の防災機能の確保の観点から、必要に応じて、防火地域などをあわせて指定することが望ましい。
 
※ なお、都市再開発方針等及びこれらに関連する制度の運用に関して既存の通達で技術的助言とされているもののうち都市計画の運用に関する部分については、本指針に示されている内容に置き換えたうえで参考とすべきである。
 
 
D.地域地区(法第8条関連)
 
1.用途地域
 
(1)用途地域に関する都市計画の基本的な考え方
1) 用途地域は、単なる局地的・相隣的な土地利用の調整の観点にとどまらず、都市全体にわたる都市機能の配置及び密度構成の観点から検討し、積極的に望ましい市街地の形成を誘導するため、都市計画区域マスタープラン又は市町村マスタープランに示される地域ごとの市街地の将来像にあった内容とすべきである。
2) 用途地域は、必要に応じ、特別用途地区、高層住居誘導地区、高度地区、高度利用地区その他の地域地区を併せて定めることにより、これらの都市計画が一体として、適正かつ合理的な土地利用を実現する観点から見て各地域の特性にふさわしい土地利用計画となるよう配慮することが望ましい。
3) 用途地域は、必要に応じ、地区計画等を併せて定めることにより、これらの都市計画が一体として、地域の実情に応じ、詳細な土地利用の規制・誘導を実現するよう配慮することが望ましい。
4) 用途地域は、都市施設及び市街地開発事業の都市計画と十分に調整が図られたうえで、適正かつ合理的な土地利用の実現に資するよう定めることが望ましい。
5) 用途地域は、道路の整備状況、土地利用の動向、幹線道路と沿道の土地利用との調和、円滑な道路交通の確保等を勘案して定めることが望ましい。
 
(2)用途地域の指定見直し及び廃止に関する基本的な考え方
 
1) 用途地域は市街地における土地利用規制の根本をなしており、用途地域が指定された場合、区域区分がなされない都市計画区域でも、農業上の土地利用との調整が調った農地については、市街化の傾向が著しい区域内にある農地として、原則農地転用が可能となるなど、都市的土地利用の計画として、市街化区域に準ずる意味づけと効果を有する。
 したがって、農業振興地域など農業上の土地利用が図られるべき地域、保安林等の森林として保全すべき地域などにおいては、用途地域を指定するべきではない。
 一方、都市計画区域内で他の土地利用規制が解除される地区あるいは土地については、都市的土地利用が発生する可能性が高く、この場合には、都市における秩序ある土地利用を実現する観点から、他の規制が解除されると同時に用途地域、あるいは特定用途制限地域、地区計画等を指定し、必要な土地利用コントロールを行うことが望ましい。このため、他法令の規制担当部局と連携を密にして、他法令による土地利用規制の動向を適切に把握し、都市的土地利用の新たな発生に備えることが望ましい。
 なお、用途地域を指定した区域のうち農業上の土地利用との調整が調ったものに限り、宅地分譲が可能となることに留意すべきである。
2) 用途地域は、地域における住居の環境の保護又は業務の利便の増進を図るため、市街地の類型に応じた建築規制を行うものであることから、基本的に、あるべき市街地像に対応した安定的な枠組みとして定められるべきものであるが、土地利用の動向、公共施設の整備状況等の把握に努めるとともに、当該都市における都市計画上の課題に対応し、その健全な発展に資するよう、随時かつ的確な見直しが図られることが望ましい。例えば次に掲げる場合にあっては、用途地域の見直しを行うことを検討すべきである。
a 都市計画区域マスタープランあるいは市町村マスタープランなどの変更に応じて計画的な土地利用の誘導を図る場合
b 従来想定されていた市街地像において主たる用途とされている建築物以外の建築物が、相当程度かつ広範囲に立地する動向にあり、新たな市街地像に対応した用途地域に変更することが相当であり、かつ、都市全体の都市機能の配置及び密度構成に支障がないと認められる場合
c 道路等の基盤施設整備や土地区画整理事業等の面的整備事業等により、目指すべき市街地像に変更が生じ、新たな市街地像に対応した用途地域に変更することが相当な場合
d 高齢社会の進展等に対応して、徒歩圏等の一定の地域内において、病院、老人福祉センター等都市生活を支える様々なサービス機能を担う施設の整備又は機能更新を誘導するため、当該サービス機能を提供すべき地区について、建築できる用途の範囲や建築物の密度等の見直しを図ることが適切な場合
3) 法第13条第1項第7号において「市街化区域については、少なくとも用途地域を定めるものとし、市街化調整区域については、原則として用途地域を定めないもの」とされているが、市街化区域から市街化調整区域へ編入する土地の区域の用途地域のうち、無秩序な市街化が進むおそれがある場合で、用途地域の存置による実効ある土地利用規制が期待できる場合は、取り消さないことが望ましい場合もある。
 ただし、存置した用途地域については、都市的土地利用の可能性が失われるなど都市的土地利用の規制が必要なくなった時点で速やかに廃止することが望ましい。
 
(3)用途地域の区域等の設定に関する基本的考え方
 
1) 用途地域の種類ごとの区域及び用途地域の区域内の制限内容により区分される区域(以下「用途地域の区域等」という。)は、各用途地域の趣旨に応じた相当の規模を有し、かつ、隣接する用途地域の種類ごとの区域等の間において土地利用の極度な差異を生じないよう定めることが望ましい。
2) また、用途地域の区域等の境界は、原則として、道路、鉄道その他の施設、河川、海岸、がけその他の地形、地物等土地の範囲を明示するのに適当なものにより定めることが望ましい。
3) なお、幹線道路の沿道等に用途地域を路線的に定めるにあたっては、道路の境界等からの距離をもって定める場合は境界の特定に支障のないようにすることとし、地域の状況等に応じて、街区を単位とすることや地形、地物等を区域の境界とすることが適当な場合はこれによることが望ましい。
4) 市街地開発事業に関する都市計画が定められている区域、住宅地区改良事業等の市街地の面的整備事業を都市計画区域マスタープラン又は市町村マスタープランに適合して行う区域等において、当該市街地の将来像に適合する用途を定める場合には、比較的小規模な区域で用途地域を定めても支障はないものである。
 
(4)容積率、建ぺい率に関する参考値について
 
法第8条第3項に基づき、用途地域に関する都市計画として定める容積率、建ぺい率については、市街地における建築物の密度、高さ、敷地の状況、道路の整備状況、公園その他の有効なオープンスペースの状況等を勘案して、適切に定めることが必要であるが、あわせて、各用途地域についてそれぞれ次に掲げるところを参考として適切な数値を定めることが望ましい。
 
[1] 第一種低層住居専用地域及び第二種低層住居専用地域
1) 特に市街地の密度を低く想定する場合、例えば容積率を50%と、建ぺい率を30%と定める土地の区域としては、土地区画整理事業等の市街地開発事業、地区計画等により面的に公共施設を整備して新たに計画的市街化を図るべき地域で、その計画の具体化に備える必要がある地域や、優れた住居の環境の保護を図る低層住宅用地等が考えられる。
2) 特に市街地の密度を高く設定する場合、例えば容積率を150%又は200%と、建ぺい率を60%と定める土地の区域としては、良好な住居の環境を維持しつつ、低層住宅用地としての土地の有効利用を図る地域のうち必要な公共施設が整備された地域、一体的・計画的に整備される低層集合住宅用地等が考えられる。
3)  また、道路に面して有効な空地を確保することにより良好な環境の街区の形成を図る必要がある等の場合には外壁の後退距離の限度を定めることが望ましい。この場合において、市街地の状況に応じ、これらの制限が実態にそぐわない過度の権利制限とならないよう配慮することが望ましい。
 
[2] 第一種中高層住居専用地域及び第二種中高層住居専用地域
1) 特に市街地の密度を低く設定する場合、例えば容積率を100%と、建ぺい率を30%と定める土地の区域としては、優れた住居の環境の保護を図る中高層住宅地等が考えられる。
2)  特に市街地の密度を高く設定する場合、例えば容積率を300%と定める土地の区域としては、鉄道駅の徒歩圏、主要な道路の沿道等で土地の高度利用を図る地域のうち、必要な公共施設が整備された地域等が、容積率を400%以上と定める土地の区域としては、高層住宅地等として土地の高度利用を図る地域のうち、必要な公共施設が整備された地域等が、それぞれ考えられる。
 
[3] 商業地域
1) 特に市街地の密度を低く設定する場合、例えば容積率を200%あるいは300%と定める土地の区域としては、土地の高度利用を前提としない地域、地域の環境を保護するため土地の高度利用を図ることが不適当な地域等が考えられる。
2)a 特に市街地の密度を高く設定する場合、例えば容積率を700%以上と定める土地の区域としては、商業施設又は業務施設の集積を図る地域等特に土地の高度利用を図るべき地域で、必要な公共施設が整備された地域が、容積率を900%以上と定める土地の区域としては、そのなかでも特に高度な集積を図ることが必要な区域が、それぞれ考えられる。
b さらに、容積率を1100%以上と定める土地の区域としては、大都市の中心部等において特に高度な集積を図ることが必要な区域で、十分に公共施設が整備された区域が考えられる。
3) 特例容積率適用区域の指定については、次に掲げる事項に留意して行うことが望ましい。
a 特例容積率適用区域の指定にあたっては、当該地区が、都市全体の中で、特に土地の高度利用を図り、商業施設又は業務施設の集積を図るべき地区であることについて、都市計画区域マスタープラン、都市再開発方針又は市町村マスタープランなどにおいて位置づけることが望ましい。
b 特例容積率が指定されることにより、地区全体として用途地域で指定された容積率の限度に近い市街地が実現した場合でも、道路に著しい渋滞が生じないこと、供給処理施設の能力の超過が起こらないことなどを確認するため、例えば、区域の指定に先立ち、土地の高度利用がなされた場合の交通量予測と道路容量との整合性の検討を行うなどの配慮が必要と考えられる。
c 「未利用となっている建築物の容積の活用を促進する必要がある」とは、aに示すような土地の高度利用を図るべき地区において、例えば、伝統的な建造物や文化的環境の維持創出のため必要な施設が存する敷地、あるいは都市環境の向上のため低度利用となっている敷地等において、未利用な容積がある場合とすることが望ましい。
d 道路、線路敷、公園等の敷地は、一般的には建築物の建築が想定されていないことから、これらの敷地が特例容積率適用区域に含まれる場合においても、これらの敷地を特例敷地とすることは想定されていないことに留意すべきである。
 e 特例容積率の適用により、良好な街並みや都市景観の維持に支障が生じるおそれがある場合には、高度地区による建築物の高さの制限、地区計画による高さの制限・壁面の位置の制限などを行うことにより、必要な措置を講ずることが望ましい。
 
[4] 第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、準工業地域、工業地域、工業専用地域
1) 特に市街地の密度を低く設定する場合、例えば容積率を150%以下と定める土地の区域としては、土地の高度利用を前提としない地域、地域の環境を保全するため土地の高度利用を図ることが不適当な地域等が考えられる。
 また、特に市街地の密度を高く設定する場合、例えば容積率を建築基準法(昭和25年法律第201号)が定めるメニューの最高値を適用する場合は、特に土地の高度利用を図る地域で、必要な公共施設が整備された地域等が考えられる。
2) さらに、例えば建ぺい率を80%と定める土地の区域としては、広幅員の道路、公園等が周囲にあり、敷地内に空地を確保しなくても市街地環境上支障がない地域、密集市街地で道路、公園等の基盤整備を行いつつ、建物の更新を図る地域等が考えられ、建ぺい率を50%と定める土地の区域としては、特に市街地の密度を高く設定する場合等で、敷地内に広い空地を設けることが妥当な土地の区域が考えられる。
 
[5] 敷地規模の最低限度について
敷地の細分化による居住環境の悪化のおそれがある等の場合には建築物の敷地面積の最低限度を定めることが望ましい。この場合において、市街地の状況に応じ、これらの制限が実態にそぐわない過度の権利制限とならないよう配慮することが望ましい。
 
(5)用途地域の選定
 
[1] 第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域及び準住居地域の選定について
1) 住宅地の選定にあたっては、居住水準の向上の観点から、職住の近接、公共交通機関の活用の観点からの住宅地の密度と鉄道駅等からの距離との相関、良好な住居の環境の形成等に配慮し、適切な密度構成に従った住宅地の形成を図るとともに、当該都市に求められる住宅の集積及びこれに付随する近隣生活施設の立地に必要な規模を確保することが望ましい。
 また、都心部、都心周辺部等において、商業施設、生活利便施設等と住宅が立体的区分等により適切に併存し、都心居住のための必要な空間が確保されることについても配慮することが望ましい。
2) 住宅地を形成する地域については、住居の環境の悪化をもたらすおそれのある施設の混在を防止し、住居の専用性を高めることが必要な場合には、次に掲げる事項に留意して第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域又は第二種住居地域を定めることが望ましい。
a 法第9条第2項の「主として」とは、良好な住居の環境を有する低層住宅地の形成を図る地域において、例えば、主要な生活道路に面する地域等について、住民の日常生活圏にも配慮して、小規模な日用品販売店舗等の立地を許容することが考えられる。
b 同条第4項の「主として」とは、良好な住居の環境を有する中高層住宅地の形成を図る地域において、例えば、主要な生活道路に面する地域等について、住民の日常生活の利便から中高層住宅地内で中規模な店舗等の立地を許容することが考えられる。
c 同条第6項の「主として」とは、住居の環境を保護する住宅地において、例えば、住居と店舗、事務所等の併存を図ることが考えられる。
3) 第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域又は第二種中高層住居専用地域(以下「住居専用地域」という。)と、商業地域、工業地域又は工業専用地域とは、相互に接して定めないことが望ましい。
 ただし、都市施設である公園、緑地若しくは地区計画等により確保される緑地帯又は地形等が緩衝的な役割を果たす場合、地区計画等若しくは特別用途地区により、当該地域に必要な制限がなされる、又は商業地域等の区域に一定の用途の制限がなされる場合等にあって、当該地域の低層住宅又は中高層住宅に係る良好な住居の環境の保護に支障がないと認められるときは、住居専用地域を定めることにより相互に問題が発生することは少ないものである。
 
[2] 近隣商業地域及び商業地域の選定について
1) 商業地の選定にあたっては、経済圏及び生活圏の広がり及び構造、住宅地及び工業地との関係並びに道路、鉄道等の交通施設の配置及び規模の現況及び将来計画を勘案し、適切な密度構成に従った商業地の形成を図るとともに、当該都市に求められる商業施設等の集積を図るために必要な規模を確保することが望ましい。
 また、この場合、事務所等のために必要な空間についても、経済社会の国際化、情報化、産業構造の高度化等に対応して、適正な規模及び配置を確保するよう配慮することが望ましい。
2) 商業地を形成する地域については、交通ネットワークの形成との関係を考慮しつつ、都市における商業業務機能の適正な構成を図る観点から、次に掲げる事項に留意して商業地域又は近隣商業地域を定めることが望ましい。
a 法第9条第9項の「主として商業その他の業務の利便を増進するため定める地域」とは、例えば、都心若しくは副都心の商業地又は中小都市の中心商業地、地域の核として店舗、事務所、娯楽施設等の集積を図る主要な鉄道駅周辺又はニュータウンのセンター地区、郊外において大規模店舗等の立地を図る拠点的な地区等が考えられる。
b 法第9条第8項の「近隣の住宅地の住民に対する日用品の供給を行うことを主たる内容とする商業その他の業務の利便を増進するため定める地域」とは、例えば、商店街、鉄道駅周辺や郊外の小規模な商業地等近隣の住宅地の住民に対する日用品の供給を主たる内容とする店舗等の立地を図る地域や、隣接する住宅地との環境の調和を図る必要がある商業地等が考えられる。
 
[3] 準工業地域、工業地域及び工業専用地域の選定について
1) 工業地の選定にあたっては、工業生産活動の増進、公害の発生の防止等を勘案し、規模、業種等が適切に配置された工業地の形成を図るとともに、当該都市に、求められる工業生産活動に必要な規模を確保することが望ましい。
2) 工業地を形成する地域については、工業の利便の増進を図るため利便を害するおそれのある施設の混在を防止することが望ましいという観点から、次に掲げる事項に留意して工業専用地域、工業地域又は準工業地域を定めることが望ましい。
a 法第9条第12項の「工業の利便を増進するため定める地域」とは、例えば、住宅等の混在を排除し、またはこれを防止し、工業に特化した土地利用を図る地域や、新たに工業地として計画的に整備を図る地域等が考えられる。
b 法第9条第10項の「主として環境の悪化をもたらす恐れのない工業の利便を増進するため定める地域」とは、例えば、住宅等の混在を排除することが困難又は不適当と認められる工業地が考えられる。
c 法第9条第11項の「主として工業の利便を増進するため定める地域」とは、a及びbのいずれにもあたらないが工業の利便を図る地域が考えられる。
 
[4] 幹線道路の沿道等
1) 幹線道路(都市計画決定がなされているもので都市計画事業の認可がなされる等相当期間内に事業化が見込まれるものを含む。)の沿道については、通常の用途地域の選定の考え方に加えて、当該地域の都市構造上の位置、土地利用の現況及び動向、当該道路の有する機能及び整備状況等を勘案して用途地域の決定又は種類の変更をすることが望ましく、幹線道路の沿道にふさわしい業務の利便の増進を図る地域については、近隣商業地域、商業地域、準工業地域又は準住居地域のうちから適切な用途地域を定めることが望ましい。
 この場合、自動車交通量が多い幹線道路に面する地域で、道路交通騒音が、環境基準を超過している又は超過することが予想される地域については、近隣商業地域、商業地域又は準工業地域を、また、その他の自動車交通量が比較的少ない道路に面する地域のうち、用途の広範な混在等を防止しつつ、住居と併せて商業等の用に供する地域については準住居地域を、それぞれ定めることが望ましい。
 幹線道路の沿道で道路交通騒音が、環境基準を超過している又は超過することが予想される地域については、住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域(以下「住居地域」という。)へのその他の用途からの変更又は新たな住居地域の指定は行わないことが望ましい。
2) 幹線道路の沿道の住宅地、住宅と工場等が無秩序に混在している市街地等で、公害若しくは災害のおそれの著しい地域又は著しくなると予想される地域については、用途地域の選定にあたって、地域の実情に応じ、適切な土地利用の転換が図られるよう配慮することが望ましい。
 特に、幹線道路の沿道のうち住居地域が定められている地域で、街路事業、土地区画整理事業、市街地再開発事業等の都市計画事業の事業化が見込まれ、土地利用の動向等を踏まえ、非住居系の土地利用を図ることが適切な地域については、近隣商業地域、準工業地域等へ変更することが望ましい。
 また、新たに用途地域を指定する地域については、事業の状況、土地利用の動向等を踏まえ、非住居系の土地利用を図ることが適切な地域については、近隣商業地域、準工業地域等の指定を行うよう配慮することが望ましい。 
3) 幹線道路の沿道は、その後背地に比べて基盤施設の条件が良いことから、沿道にふさわしい土地利用、建築物を誘導するため、当該基盤施設の容量等を勘案したうえで、地域の実情に応じて後背地より高い容積率を指定することが望ましい。
 高い容積率の指定にあたっては、後背地の市街地環境に配慮するとともに、当該幹線道路と後背地を接続する区画道路の整備状況を勘案して、必要に応じ、地区計画の併用により当該幹線道路に接続する区画道路等の整備を行うことが望ましい。
 これにより、公共施設の整備とのバランスの取れた地域全体にわたる土地の有効利用に資することが望ましい。
4) 準住居地域を指定する場合は、環境保全に十分配慮することとし、幹線道路の沿道で道路交通騒音が、環境基準を超過している又は超過することが予想される地域については、道路交通騒音等に係る環境の保全を図るため、地域の実情に応じて地区計画等の手法により道路に面する部分に非住居系用途を誘導することなどに努めることが望ましい。
5) 鉄道沿線については、原則として、住居専用地域を定めないことが望ましい。
 ただし、都市施設である公園、緑地若しくは地区計画等により確保される緑地帯又は地形等が緩衝帯としての役割を果す場合、地区計画等若しくは特別用途地区により、当該地域に必要な制限がなされる場合等にあって、当該地域の低層住宅又は中高層住宅に係る良好な住居の環境の保護に支障がないと認められるときは、住居専用地域を定めることにより相互に問題が発生することは少ないものである。
6) 新幹線鉄道(工事実施計画の認可がなされているものを含む。以下同じ。)沿線又は公共用飛行場(一日当たりの離着陸回数が10回以下のもの及び離島にあるものを除く。以下同じ。)周辺については、原則として、住居地域の指定は行わないことが望ましい。
 また、用途地域を公共用飛行場周辺において定める場合には、騒音等の問題に十分配慮することが望ましい。
7) 都市施設のうち汚物処理場、ごみ焼却場その他の廃棄物処理施設及び熱供給施設が立地する地域について、用途地域を指定し、又は変更する場合には、工業系の用途地域とすることが望ましい。
 
[5] その他
 その他次に掲げるような特徴を有する市街地については、その地域内の建築物の用途及び規模、隣接する地域の用途地域等を勘案して適切な用途地域を定めるとともに、特別用途地区、高度地区、風致地区、地区計画等をあわせて指定することにより、望ましい市街地像の実現につとめることが望ましい。
1) 学校、図書館、その他の教育施設の立地を図る地域及びその周辺の地域のうち、特に教育環境の保護を図る地域については、住居専用地域、第一種住居地域または第二種住居地域を定めることが望ましい。
 なお、この場合、大学、高等専門学校、専修学校とこれら以外の学校との区分に応じ、これらの教育施設の立地する区域等において良好な教育環境の保護が図られるよう配慮することが望ましい。
2) 流通業務施設若しくは自動車修理工場等沿道サービス工場等又はこれらに関連する工場等の集約的な立地を図る地域については、準工業地域を定めることが望ましい。
3) 主として住居の用に供する地域で、繊維、木工等の家内工業を地場産業として保護し、または育成すべき地域については、第一種住居地域又は第二種住居地域を定めることが望ましい。
4) 研究開発施設、研修施設、情報交流施設等の集約的立地を図る地域については、第二種住居地域、準工業地域、工業地域又は工業専用地域を定めることが望ましい。
5) 避暑地、温泉地等にあって、主として別荘、保養所等の施設の用に供する地域については、住居専用地域を定めることが望ましい。
 
(6)関係行政機関との調整
 
 用途地域に関する都市計画を決定又は変更するときは、必要に応じて、例えば、次のように関係行政機関と事前に調整することが望ましい。
1) 幹線道路の沿道において、用途地域の決定又は種類の変更を行う場合、当該用途地域の決定又は変更により道路の整備・管理に支障がないよう担保する観点から、都道府県等の道路担当部局(当該道路が指定区間の国道である場合には、当該道路を管理する地方整備局)と調整すること。また、街路事業、土地区画整理事業、市街地再開発事業等の都市計画事業の認可がなされる等相当期間内に事業化が見込まれる地域である場合には、事業の円滑化に資する観点から都市計画道路の整備を担当する街路・区画整理・再開発担当部局と調整すること。さらに、幹線道路の沿道において、都市開発プロジェクト等の実施にあわせて用途地域の容積率を引き上げる場合であって、当該プロジェクト等の実施により交通混雑の度合いが高まることが予想されるときは、道路交通上の観点から、当該容積率引き上げに関し、道路担当部局と十分連絡調整を行うこと。
2) 新幹線鉄道沿線、公共用飛行場周辺又は幹線道路の沿道で、例外的に住居地域を定める場合には、騒音等の生活環境の保全上の支障を防止する観点から環境部局と調整すること。
3) 新幹線鉄道沿線又は公共用飛行場周辺について、例外的にその他の用途地域から住居地域へと変更する場合、新たに住居地域を指定する場合には、新たな騒音問題等を未然に防止する観点から地方運輸局の鉄道関係部局、又は、航空機騒音対策との調整の観点から空港担当部局と調整すること。
4) 第一種低層住居専用地域又は第二種低層住居専用地域で、土地区画整理事業が施行されている又は施行されようとしている地域内において、用途地域において建築物の敷地面積の最低限度を定める場合には、区画整理担当部局と調整すること。
5) 区域区分が定められていない都市計画区域において用途地域を指定し、又は変更する場合に、当該指定又は変更に係る区域に農地等が含まれるときには、農林漁業との健全な調和を図り、また、農地転用許可事務と相互の事務処理の円滑化を図る観点から、市町村の都市計画担当部局と農地転用部局の間において十分調整を行うとともに、都道府県知事は、法第19条第3項により市町村から協議を受けた場合には、都市計画担当部局と農地転用部局の間において十分連絡調整を行うことが望ましい。
 また、当該区域内に4haを超える農地等が含まれる場合には、都道府県農地転用担当部局を通じて地方農政局農地担当部局との間において十分連絡調整が行われることが望ましい。
 なお、この調整が行われない場合には、市街地化の傾向が著しい区域内の農地として、原則農地転用の許可が可能となるほか、宅地分譲も認められるという農地転用許可基準の特例の対象とならないことに留意するべきである。
6) 区域区分が定められていない都市計画区域において用途地域を廃止する場合には、用途地域の指定のない区域については特定行政庁が容積率等を定めることとされているので、事前に建築担当部局と連絡調整を行うことが望ましい。
7) 地域における土地利用の状況を勘案し、(1)6)e、fの区域の一部を含めて用途地域を定めることが適切であると判断される場合には、当該区域について定められている土地利用規制の状況を十分考慮するとともに、市町村は、あらかじめ、国立公園の特別地域、原生自然環境保全地域又は自然環境保全地域の特別地区の一部に用途地域を定める場合にあっては環境省自然環境局自然保護事務所と、国定公園の特別地域の一部に用途地域を定める場合にあっては都道府県の自然保護担当部局と調整を図ることが望ましい。
 
2.特別用途地区
 
(1)趣旨
 
 特別用途地区は、用途地域の指定の目的を基本とし、これを補完するため、特別の目的から特定の用途の利便の増進又は環境の保護等を図るため、建築基準法に基づき地区の特性や課題に応じて地方公共団体が定める条例で建築物の用途に係る規制の強化又は緩和を行うために定めるものである。
 このため、例えば、中高層階住居専用地区、商業専用地区、特別工業地区、文教地区、小売店舗地区、事務所地区、厚生地区、娯楽・レクリエーション地区、観光地区、特別業務地区、研究開発地区、中小小売店舗特別用途地区、宿場町環境保全特別用途地区などを定めることが考えられる。
 
(2)基本的な考え方
 
[1] 用途地域の補完
 特別用途地区の指定にあたっては、用途地域との関係を十分に考慮したうえで、当該地区の特性にふさわしい土地利用の増進、環境の保護等、実現を図るべき特別の目的を明確に設定して、適切な位置及び規模で定めることが望ましい。
 この場合、単一の建築物の建築を禁止することのみを目的とする等、望ましい市街地像の実現に積極的な目的を有しない特別用途地区の指定は好ましいとは考えられず、目的の設定は、目指すべき市街地像を実現するうえで適切なものとなるよう、都市計画の総合性、一体性の観点から創意工夫を活かして柔軟な運用が行われることが望ましい。
 
[2] 区域の境界について
 特別用途地区の区域の境界については、原則として、道路、鉄道その他の施設、河川、海岸、がけその他の地形、地物等土地の範囲を明示するのに適当なものにより定めることが望ましい。
 なお、幹線道路の沿道等に特別用途地区を路線的に定めるにあたっては、道路の境界等からの距離をもって定める場合は境界の特定に支障のないようにすることとし、地域の状況等に応じて、街区を単位とすることや地形、地物等を区域の境界とすることが適当な場合はこれによることが望ましい。
 
(3)配慮すべき事項
 
1) 用途地域と特別用途地区を適切に組み合わせることが重要であることから、特別用途地区の指定にあたっては、必要に応じ、用途地域の指定・変更について併せて検討が行われることが望ましい。
2) 関係行政機関との調整
 特別用途地区の指定にあたっては、新幹線鉄道との関係に配慮し、新たな騒音問題等を未然に防止する観点から地方運輸局の鉄道関係部局と、公共用飛行場との関係に配慮し、航空機騒音対策との調整の観点から空港担当部局と、幹線道路との関係に配慮し、道路の整備・管理に支障がないよう担保する観点から都道府県等の道路担当部局(当該道路が指定区間の国道である場合には、当該道路を管理する地方整備局)とそれぞれ調整することが望ましい。
 また、特別用途地区内の建築物の建築の制限等については、建築基準法第49条第1項の規定に基づく条例で定めることとされており、事前に建築担当部局と調整することが望ましい。
 
※ なお、特別用途地区及びこれに関連する制度の運用に関して既存の通達で技術的助言とされているもののうち都市計画の運用に関する部分については、本指針に示されている内容に置き換えたうえで参考とすべきである。
 
3.特定用途制限地域
 
(1)趣旨
 
 特定用途制限地域は、用途地域が定められていない土地の区域(市街化調整区域を除く。)内において、その良好な環境の形成等を行うために、例えば、多数人が集中することにより周辺の公共施設に著しく大きな負荷を発生させる建築物や、騒音、振動、煤煙等の発生により周辺の良好な居住環境に支障を生じさせる、あるいは良好な居住環境にそぐわないおそれのある建築物などの建築を制限する必要がある場合に定めることが考えられる。
 
(2)基本的な考え方
 
[1] 特定用途制限地域を定める区域
 特定用途制限地域を定める区域は、良好な環境の形成又は保持のために必要な範囲の区域とするべきである。
 そのため、例えば、他の法令等により土地利用規制が行われている以下の区域は、特定用途制限地域を定める必要がある状況が発生しないものと予測され、特定用途制限地域を指定するべきではない。
a 農用地区域
b 保安林等
c 農地法第5条第2項第1号ロに掲げる農地又は採草放牧地の区域
d 港湾・海岸・埋立地に係る土地利用規制が行われている区域
e 工場立地法に基づく土地利用規制が行われている区域
 また、特定用途制限地域内の区域に港湾・海岸・埋立地に係る土地利用規制を行う区域が設定された場合、当該区域について特定用途制限地域を引き続き設定する必要がある状況は発生しないものと考えられる。
 
[2] 制限すべき特定の建築物その他の工作物の用途
 特定用途制限地域において定める、制限すべき特定の建築物等の用途は、当該地域の特性に応じて合理的な土地利用が行われるため、良好な環境の形成又は保持に支障を及ぼさないよう、適切かつ必要最小限のものを定めるべきである。また、建築基準法第49条の2において、特定用途制限地域内における建築物の用途の制限は地方公共団体の条例で定めることとされていることを踏まえ、都市計画において定める制限すべき特定の建築物等の用途は、概要を定めるにとどめるべきである。
 なお、制限すべき特定の建築物等の用途の概要としては、例えば、以下のようなものが考えられる。
a 危険物の製造工場、貯蔵・処理の用に供する建築物
b 風俗営業施設
c 一定規模以上の大規模ショッピングセンター
 
(3)配慮すべき事項
 
1) 特定用途制限地域の区域を決定又は変更する場合には、農林水産担当部局等の関係行政機関と調整することが望ましい。
2) 港湾・海岸・埋立地に係る土地利用規制が行われている地域については、(2)[1]の通り特定用途制限地域を定める必要のある状況は発生しないと考えられるが、仮に定める必要のあるような特段の事情により特定用途制限地域を定めようとする場合には、都市計画行政と港湾行政の調和を図る観点から、関係港湾管理者又は海岸管理者と十分な調整を行うことが望ましい。
3) 特定用途制限地域において、制限すべき特定の建築物等の用途を定める場合には、土地改良施設、林道その他農林漁業関係の施設の維持管理、改修、更新、新設等に支障が生じないよう、農林漁業との調和を図ることが望ましい。
 また、自然環境の保全等の観点から必要とされる、例えば以下に示す施設については、特定用途制限地域において制限すべき特定の建築物等には含まないことが望ましい。
a 自然公園法に基づき指定された都道府県立自然公園の区域内にあって都道府県が定める当該公園の保護又は利用のための施設
b 自然環境保全法に基づき指定された都道府県自然環境保全地域の区域内において都道府県が定める当該地域における自然環境の保全のための施設
c 鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律に規定する鳥獣保護事業計画に基づき地方公共団体が即地的にその配置を定める施設
 さらに、制度の趣旨を踏まえ、健康で文化的な都市生活及び機能的な都市活動を確保するため公益上必要な建築物等についても、制限すべき特定の建築物等には含まないことが望ましい。公益上必要な建築物等としては、例えば、鉄道施設その他の運輸関係の施設、郵便事業の用に供する施設、第一種電気通信事業者がその事業に供する施設などが考えられる。
4) 特定用途制限地域内における建築物の建築の制限については、建築基準法第49条の2の規定に基づく条例で定めることとされているので、事前に建築担当部局と調整することが望ましい。
 
4.高層住居誘導地区
 
(1)趣旨
 
 高層住居誘導地区は、大都市地域の都心地域等で、居住機能の低下、人口の空洞化が進展し、職住の遠隔化による通勤時間の増大、公共公益施設の遊休化などの問題が発生していることに鑑み、住宅と非住宅の混在を前提とした用途地域において高層住宅の建設を誘導することにより、住宅と非住宅の適正な用途配分を回復し、都心における居住機能の確保、職住近接の都市構造の実現、良好な都市環境の形成を目的として定めるものである。
 また、地方都市においても適切な都市構造の実現の視点から中心市街地における住宅供給の促進を図るべきと考えられる場合には、本制度を積極的に活用しうるものである。
 このため、例えば次に掲げるような地区において、他法令による土地利用規制の状況を勘案しつつ、高層住居誘導地区を指定することが考えられる。
a 緑地等のオープンスペースによって囲まれていること等により独立性が高く、当該地区における高層住宅の供給が周辺に与える影響が少ないと考えられる地区
b 相当の公共施設の整備が行われている地区であるが、工場移転等により遊休化した土地が多く、近年、都心と近接しているなどの利便性から事務所、住宅等の土地利用に転換しつつある地区
c 公共施設が整っている都心に近い市街地であるが、敷地規模の状況等の要因から、適切な土地の高度利用が図られていない地区において、敷地の統合を促進しつつ、地域にふさわしい高層住宅の建設を誘導していく必要がある地区
 
(2)基本的な考え方
 
1) 高層住居誘導地区において定める容積率については、用途地域に関する都市計画において定められた数値から、建築基準法に基づき算出される数値までの範囲内で、当該高層住居誘導地区内の土地利用の現状及び動向、公共施設の整備状況等を勘案しつつ、地区内に高層住宅の供給を促進するという観点を踏まえ、適切に定めることが望ましい。
2) 高層住居誘導地区において定める建ぺい率の最高限度及び敷地規模の最低限度については、当該地区における高層住宅市街地として必要な環境水準を確保するという観点を踏まえ、必要に応じて適切に設定することが望ましい。
 なお、建ぺい率の最高限度については、地区内の公共施設整備の状況等を踏まえ、一般的制限を強化することにより、通風、採光等の市街地環境を確保する場合に指定することが望ましい。この場合、巡査派出所、公衆便所、公共用歩廊等の建築物について建ぺい率の不適用措置等の必要な措置を講じることが望ましい。
 また、敷地規模の最低限度については、敷地の細分化を防止するとともに、本制度に基づく容積率の適用を一定規模以上の敷地に限定することにより、狭小な敷地の統合の促進を図るために定めることが望ましい。
 
(3)配慮すべき事項
 
1) 高層住居誘導地区の指定にあたっては、高容積の住宅が建設されることによる市街地環境への影響を踏まえ、公共施設の整備状況、土地利用の動向等を総合的に勘案して、指定の妥当性について十分検討することが望ましい。その際、幹線道路の沿道等、著しい交通騒音により良好な住環境の確保が困難と考えられる地域には指定しないことが望ましい。
2) 高層住居誘導地区の指定により、地区内における日影規制が適用されないこととなること等を踏まえ、住民等利害関係者の意見に十分配慮することが望ましい。
3) 高層住居誘導地区内で、より適切な土地の高度利用を図るため必要がある場合には、地区施設や建築物の配置等に関する事項を定める地区計画の策定を検討することが望ましい。
4) 高層住居誘導地区と用途別容積型地区計画については、住宅用途に係る容積率割増の考え方が同様であることから、重複して、住宅に係る容積率割増の適用はできないことを留意すべきである。
5) 駐車場整備地区又は近隣商業地域において高層住居誘導地区を定める場合には、駐車場法(昭和32年法律第106号)に基づく駐車場附置義務条例の制定の必要性について検討することが望ましい。
 
※ なお、高層住居誘導地区及びこれに関連する制度の運用に関して既存の通達で技術的助言とされているもののうち都市計画の運用に関する部分については、本指針に示されている内容に置き換えたうえで参考とすべきである。
 
5.高度地区
 
(1)趣旨
 
 高度地区は、都市の合理的土地利用計画に基づき、将来の適正な人口密度、交通量その他都市機能に適応した土地の高度利用及び居住環境の整備を図ることを目的として定める地域地区である。
 このうち、建築物の高さの最低限度を定める高度地区(以下「最低限高度地区」という。)については、市街地中央部の商業用地や駅前広場周辺等の、特に土地の高度利用を図る必要がある地区について指定するのが望ましい。
 また、建築物の高さの最高限度を定める高度地区(以下「最高限高度地区」という。)については、
a 建築密度が過大になるおそれのある市街地で、商業地域内の交通その他の都市機能が低下するおそれのある区域
b 建築密度が過大になるおそれのある市街地で、住居地域内の適正な人口密度及び良好な居住環境を保全する必要のある区域
c 歴史的建造物の周囲、都市のシンボルとなる道路沿い等で景観、眺望に配慮し、建築物の高さを揃える必要がある区域
等の地区について指定するのが望ましい。
 なお、区域の性格により必要がある場合には、建築物の高さの最高限度及び最低限度を同時に定める高度地区を指定することが望ましい。
 
(2)基本的な考え方
 
1) 最低限高度地区を定める場合は、当該地区の実情及び目指すべき市街地像に応じ、適用を除外する建築物又は建築物の部分を定めることにより、この制度の弾力性ある運用を図ることが望ましい。
 この場合、例えば、次のような建築物又は建築物の部分において、適用を除外することが考えられる。
a 定められた最低限度の高さを有しない建築物で、一定の高さ以上の高さを有し、かつ、基礎及び主要構造部を定められた最低限度以上の高さに増築することを予定した構造としたもの。この場合、一定の高さは、定められた最低限度の高さに応じて適宜定めることが望ましい。
b 玄関、軒、ひさし、下屋、渡り廊下その他これらに類する建築物の部分
c 建築物の建築面積の一定割合以下に当たる建築物の部分
2) 最高限高度地区の指定にあたっては、隣地の日照等への考慮又は良好な街並みや都市景観の維持若しくは形成のため、例えば、隣地境界線からの距離に応じて建築物の高さの最高限度を斜線状又は立体的に定める方法も考えられる。
 
(3)配慮すべき事項
1) 最低限高度地区を指定する場合には、当該地区の開発動向及び道路、公園、上下水道、ガス供給施設等の都市施設の整備状況を考慮することが望ましい。
 また、防災、景観等の観点から、必要に応じ、防火地域、美観地区、風致地区、伝統的建造物群保存地区等の地域地区、あるいは地区計画等をあわせて、あるいは隣接させて指定することが望ましい。
 
※ なお、高度地区及びこれに関連する制度の運用に関して既存の通達で技術的助言とされているもののうち都市計画の運用に関する部分については、本指針に示されている内容に置き換えたうえで参考とすべきである。
 
6.高度利用地区
(1)趣旨
 
 高度利用地区は、建築物の敷地等の統合を促進し、小規模建築物の建築を抑制するとともに建築物の敷地内に有効な空地を確保することにより、用途地域内の土地の高度利用と都市機能の更新とを図ることを目指した地域地区である。
 このため、例えば次に掲げる区域において高度利用地区を指定することが考えられる。
a 枢要な商業用地、業務用地又は住宅用地として土地の高度利用を図るべき区域であって、現存する建築物の相当部分の容積率が都市計画で指定されている容積率より著しく低い区域
b 土地利用が細分化されていること、公共施設の整備が不十分なこと等により土地の利用状況が著しく不健全な地区であって、都市環境の改善上又は災害の防止上土地の高度利用を図るべき区域
c 都市基盤施設が高い水準で整備されており、かつ、高次の都市機能が集積しているものの、建築物の老朽化又は陳腐化が進行しつつある区域であって、建築物の建替えを通じて都市機能の更新を誘導する区域
d 大部分が第一種中高層住居専用地域及び第二種中高層住居専用地域内に存し、かつ、大部分が建築物その他の工作物の敷地として利用されていない区域で、その全部又は一部を中高層の住宅用地として整備する区域
e 高齢社会の進展等に対応して、高齢者をはじめとする不特定多数の者が円滑に利用できるような病院、老人福祉センター等の建築物を整備すべき区域であって、建築物の建替え等を通じた土地の高度利用により都市機能の更新・充実を誘導する区域
 
(2)基本的な考え方
 
[1] 高度利用地区の指定
 高度利用地区は以下に掲げる条件に該当する地区に指定することが望ましい。
a 区域の特性に応じ、土地の高度利用と都市機能の更新を図るべき区域であること。
b 当該区域の土地の高度利用を図るために必要な公共施設が整備されていること、又は当該公共施設に関する都市計画が定められていること。
 
[2] 地区の規模及び形状
 高度利用地区は、適正な街区群が形成される規模を有する地区について定めることが望ましい。ただし、市街地再開発事業等の実施にあたり特に必要がある場合には、適正な一街区が形成される規模の地区について定めることも考えられる。
 
[3] 容積率の最高限度等
 容積率の最高限度及び最低限度、建ぺい率の最高限度、建築物の建築面積の最低限度並びに壁面の位置の制限は、当該高度利用地区の土地利用の状況及び将来の動向等を勘案し、建築物の敷地等の統合を促進し、小規模建築物の建築を抑制するとともに建築物の敷地内に有効な空地を確保することができるよう以下を参考としつつ運用されることが望ましい。
1) 容積率の最高限度
a 容積率の最高限度は、当該地区の存する地域において用途地域に関する都市計画により定められた容積率の最高限度(「基準容積率」という。「W−2−1 D 6.高度利用地区」において同じ。)を基準にして、交通施設及び供給処理施設の容量や周辺地域に対する環境上の影響等を勘案して過大にならない範囲で、建ぺい率の制限の強化、壁面の位置の制限、広場等の設置等により、敷地内に有効な空地を確保した場合に、その程度に応じて、容積率の最高限度を割増して定めることが望ましい。また、屋上緑化や相当程度の高さ及び樹容を有する樹木の植栽等による環境への寄与の程度を評価し、容積率の最高限度を割増すことも考えられる。
容積率の最高限度の割増については地域の特性に応じて土地の高度利用が促進されるよう、柔軟な運用を図ることが望ましい。
 なお、高度利用地区の指定にあたって、都心部等で公共施設、公共交通機関が十分に整備されている場合において、特定の用途の建築物を誘導することにより、都市機能の更新を推進する必要が認められる場合には特定の用途の建築物について容積率を割増しつつ、敷地内空地の確保については、例えば、歩道状空地など道路に沿って連続した一定の空間が確保されることをもって足りるとすることも考えられる。
b 当該地区において特に誘導すべき用途・機能を有する建築物については、例えば、当該地区の土地利用及び公共施設の整備状況を勘案して、さらに容積率の最高限度を割増して定めることも考えられる。
c 敷地規模に応じて、それぞれ別に適切な容積率の最高限度を定めることも考えられる。
2) 容積率の最低限度
 容積率の最低限度は、当該区域内の土地の高度利用を促進するよう、基準容積率の数値の範囲内で適切な数値を定めることが望ましい。
3) 建ぺい率の最高限度
 建ぺい率の最高限度は、建築基準法に基づいて定められる数値の範囲内で適切に定めることが望ましい。
4) 建築物の建築面積の最低限度
 建築物の建築面積の最低限度は、当該区域における敷地規模の現状、容積率の最高限度等を総合的に勘案して、当該区域における市街地環境の悪化を招くことのないよう定めることが望ましい。 
5) 壁面の位置の制限
 壁面の位置の制限は、当該高度利用地区内の建築物の利用者等の通行の用に供する空地を確保する場合、植込み、芝生等を整備する空地を確保する場合等市街地の環境の向上に資する有効な空地を確保する場合において、敷地内に道路(都市計画においていて定められた計画道路を含む。)に接して空地を確保することができるよう当該道路の幅員、歩行者の通行量、建築物の配置、建ぺい率の最高限度等を勘案して適切に定めることが望ましい。
 なお、壁面の位置は、立体的に定めることもできるので、例えば、上階部分の壁面の位置より下階の歩行者部分の壁面の位置を道路境界線から後退して定めて道路に面して歩行者のための空間を確保することなどが考えられる。  
(3)配慮すべき事項
 
[1] 市街地再開発事業との関係
 法第12条第2項の規定により市街地再開発事業について都市計画に定めるべき施行区域については、再開発法第3条及び第3条の2に規定する条件の土地の区域でなければならないが、この条件の一つに高度利用地区内にあることが定められていることに留意するべきである。
 
※ なお、高度利用地区及びこれに関連する制度の運用に関して既存の通達で技術的助言とされているもののうち都市計画の運用に関する部分については、本指針に示されている内容に置き換えたうえで参考とすべきである。
 
7.特定街区
 
(1)趣旨
 
 特定街区は、良好な環境と健全な形態を有する建築物を建築し、併せて有効な空地を確保すること等により都市機能に適応した適正な街区を形成することにより、市街地の整備改善を図るために定める地域地区である。
 
(2)基本的な考え方
 
[1] 特定街区を指定する街区について
 特定街区は、街区として形が整い、かつ、地域の特性に応じて、オープンスペースとしての機能が期待できる広さの空地を確保しつつ、形態規制を加えてもなお、有効・高度利用を図ることが可能なだけの建築敷地が確保できるとの観点から、ある程度まとまった規模の街区について指定することが望ましい。ただし、一体的かつ計画的に整備を図る複数の街区について個々に特定街区の指定を行う場合、地区全体が相当規模を有し、かつ、計画の一体性が確保されるとともに、個々の街区が適切な規模の幅員の道路に囲まれているのであれば、比較的小規模の街区においても、指定の趣旨は生かされるものである。また、必要に応じて、複数の特定街区について、全体を一の街区とみなして容積率の指定を行うことも考えられる。
 さらに、特定街区は、一般的に、土地の高度利用を図ることとなるため、発生集中交通量の処理及び周辺市街地の環境悪化の防止の両方の観点から、一定以上の幅員の道路に囲まれた街区において定められることが望ましく、また、その街区内において、良好な環境の街区形成に必要な空地が確保されるとともに、予定される建築物の建築面積以外の部分は可能な限り有効空地として確保することが望ましい。
 
[2] 建築物等に関する標準
1) 特定街区は、建築基準法の建ぺい率、高さ等に関する一般的制限規定が適用されないため、都市計画において建築物の位置及び形態を決めるにあたっては、隣地及び周辺市街地との相隣関係に十分考慮し、かつ、都市環境を損なわないよう定めるべきである。
2) 街区内の建築物の容積率は、用途地域に関する都市計画により定められた容積率の最高限度(「基準容積率」という。「W−2−1 D 7.特定街区」において同じ。)にかかわらず、都市計画としての望ましい市街地像の実現の観点から、交通施設及び供給処理施設の容量や周辺地域に対する環境上の影響等を勘案して過大にならない範囲で指定されるべきである。その運用にあたっては、地域の特性に応じて土地の高度利用が促進されるよう柔軟な運用を図ることが望ましい。その際に次に掲げる事項を勘案することが望ましい。
a 有効空地の面積の街区面積に対する割合
b 当該地区における良好な市街地環境の形成を図るために講じる、次に掲げるような措置
ア 街区内の建築物を、地方公共団体が地域の特性を勘案して当該地区に誘導すべきと考える用途に供する場合
イ 屋上緑化や相当程度の高さ及び樹容を有する樹木を植栽した有効空地など市街地環境の向上に一定の役割を担う空間を確保する場合
ウ 地域整備のための広域的な公共・公益施設を整備する場合
エ 歴史的建造物の保全、修復を行う場合

ア 都市計画区域マスタープラン、住宅市街地の開発整備の方針又は市町村マスタープランにおいて、住宅の立地誘導を図るべき地区として位置づけられている区域等において、建築物の一定割合以上を住宅の用に供する場合、
イ 相当大規模な地区において土地の高度利用を図るための一定の内容を有する計画(道路等の基盤条件の改善に関する事項、敷地面積の最低限度等を定めた計画が想定される)が定められている場合、
ウ 水面、緑地等によって囲まれていること等により、特に独立性の高いと認められる相当規模以上の地区について、一体的かつ総合的な開発又は整備を図るための計画が定められている場合
などは、特に高い容積率の最高限度が定めうるものである。
3) 建築物の高さの最高限度及び壁面位置の制限は、当該建築物の形状、空地の状況、日影規制の状況及び周辺の建築物の状況等を勘案し、道路における採光、周囲への日影、落下物による危険性等を配慮して、適切に定めることが望ましい。
 
8.都市再生特別地区
 
(1)趣旨
 
都市再生特別地区は、都市の再生の拠点として、都市開発事業等を通じて緊急かつ重点的に市街地の整備を推進すべき地域である都市再生緊急整備地域において、国が定める当該都市再生緊急整備地域の整備に関する方針(以下「地域整備方針」という。)の方向に沿った都市開発事業等を迅速に実現するため、用途地域等による用途規制や容積率制限、斜線制限、日影規制等を適用除外とした上で、特定行政庁の許可等によらず建築確認のみで都市再生特別地区の内容を実現できる事前明示性の高い仕組みにより、都市の再生に貢献し、土地の合理的かつ健全な高度利用を図る特別の用途、容積、高さ、配列等の建築物の建築を誘導することを目指した地域地区である。
(2)基本的な考え方
 
都市再生特別地区は、都市再生緊急整備地域ごとに定められた地域整備方針の内容に沿った事業を実現するため、当該地域整備方針に即した都市再生特別地区に関する計画提案が民間事業者から行われた場合には、民間事業者の創意工夫に基づく計画提案を踏まえて、適切に定めることが望ましい。
また、都市再生特別地区では、地域整備方針で示された方向に沿って土地の合理的かつ健全な高度利用を図ることが求められることから、容積率及び高さの最高限度、壁面の位置の制限等について、高度利用地区、特定街区等の容積率の特例制度において行われているような 有効空地の確保や導入施設の内容等個別項目ごとに一定の条件を満たせば一定の容積率等の緩和を認めるといった積み上げ型の運用ではなく、都市の魅力や国際競争力を高める等、当該都市開発事業が持つ都市再生の効果等に着目した柔軟な考え方の下に定めることが望ましい。
なお、これらを定めるに当たっては、交通施設及び供給処理施設の容量や周辺地域に対する環境上の影響等を検討し、当該機能に著しく支障を来すことがないことを確認するべきである。
(3)配慮すべき事項
 
[1] 都市再生特別地区の都市計画に定める建築物その他の工作物の誘導すべき用途については、建築確認等の際に疑義が生じないよう明確に定めるべきである。
 
[2] 都市再生特別地区の指定に当たっては、周辺の既成市街地の都市環境やまちづくりとの調和に配慮することが望ましい。
 
[3] 都市再生特別地区の指定に当たっては、都市開発事業の実施に必要となる道路、公園、緑地等の公共施設についても併せて決定することが望ましい。また、誘導すべき用途を定めようとする場合には、局所的な高容積率の設定と併せて用途制限の緩和がなされることにより、道路に対する新たな交通負荷の発生等が想定されることから、近隣の環境や道路の整備・管理に著しい支障を来たすことのないよう道路管理者と調整することが望ましい。
 
[4] 地区計画などにより建築物等に関する制限が定められている区域において都市再生特別地区を定める場合は、必要に応じて、当該地区計画などの内容等の変更を併せて行うべきである。
(4)その他
 
 今後、都市再生特別地区の具体的な運用に係る検討結果等を踏まえ、必要に応じて、本項目の改訂を行うこととする。
9.美観地区
 
(1)趣旨
 
 美観地区は、建築物の配置、構造等が道路、公園等の公共施設等と調和と均斉のとれた建築美を保っている地区において、当該市街地の美観を維持するために定めるものである。
 このため、例えば、都市のシンボルとなる道路沿い、シンボリックな建造物等のの周辺などの街並みにより形成される景観を維持すべき地区において、美観地区を指定することが考えられる。
 
(2)基本的な考え方
 
1) 安定・成熟した都市型社会においては、従来にも増して、美しい街並みの保全・創出を図り、質の高い都市環境を確保することが重要な課題である。このような課題を踏まえ、市街地の美観の維持を図るために、必要な場合は美観地区等の制度を積極的に活用することが望ましい。
 なお、市街地の美観の維持を図るためには、美観地区のほか、高度地区、地区計画等を活用することも考えられることから、当該地区における市街地の美観の維持のためにどのような規制等が必要であるかについて検討のうえ、活用する制度を選択することが望ましい。
2) 美観地区内における市街地の美観の維持のため必要な建築物の敷地、構造又は建築設備に関する制限については、建築基準法第68条の規定に基づく条例で定めることとされているが、これは、建築確認を通じて当該条例に適合しない建築物の建築を防止することにより市街地の美観を維持することを意図しているものであることから、美観地区の指定を行う場合は、当該条例による制限の目的と具体的な内容について、事前に建築担当部局との連絡調整を行うべきである。
 
10.臨港地区
 
 臨港地区は、港湾を管理運営するため定める地域地区であるが、その対象地域については、港湾施設のほか、海事関係官公署、臨海工場等港湾を管理運営する上で必要な施設が立地する地域及び将来これらの施設のために供せられる地域として、分区条例等港湾法に基づき、必要な土地利用規制が課せられる地域である。
 こうした地域の性格を反映して、臨港地区においては、都市の一般市街地における土地利用規制と港湾機能の維持増進のための土地利用規制が重層的に適用される場合があり、港湾機能と都市機能の調和の観点から、両者の規制が十分調整される必要がある。
 このため、臨港地区内における土地利用規制及び構築物規制に関する制度の運用に関する指針は、港湾、建築及び都市の各々の制度を一体的に扱い、統一的なものとして示すことが効果的であることから、本指針とは別に定めることとする。
   
11.駐車場整備地区
 
(1)趣旨
 
 駐車場整備地区は、商業地域、近隣商業地域等で、自動車交通が著しく輻輳する地区において、道路の効用を保持し、円滑な道路交通を確保する必要があると認められる区域について、駐車施設の整備を促進すべき地区として都市計画に定めるものである。
 
(2)基本的な考え方
 
 駐車場整備地区内では、駐車場法第4条の規定により地方公共団体に対し駐車場整備計画を定めることが義務付けられるとともに、当該地区等では、同法第20条の規定により市町村は一定の建築物の新築又は増築に対して駐車施設の整備を義務付ける附置義務条例を制定することができる。
 したがって、公共と民間の役割分担により総合的、重点的に駐車対策を推進すべき地区について積極的に駐車場整備地区を定めることが望ましく、例えば都市機能が高度に集積している商業・業務地区等や、面的整備事業予定地区で将来拠点都市機能の集積が見込まれる地区等が考えられる。
   
12.風致地区
 
1.趣旨
 
 風致地区は、都市における風致を維持するために定められる地域地区である。「都市の風致」とは、都市において自然的な要素に富んだ土地における良好な自然的景観といえる。従って、本制度の対象となる地区は、良好な自然的景観を形成している土地の区域のうち、都市における土地利用計画上、都市環境の保全を図るため風致の維持が必要な区域について定めるものである。風致地区では、風致地区内における建築等の規制に係る条例の制定に関する基準を定める政令(昭和44年政令第317号)(以下「風致政令」という。)で定める基準に従い、地方公共団体の条例(以下「風致条例」という。)で、建築物の建築等に対する規制を行うことにより、風致の維持が図られるものである。
 
2.風致地区の決定・変更
 
(1)風致地区の計画の考え方
 
[1] 規模
 風致地区は、地区内における建築等の規制が適切に行うことができるよう相当規模の一団の土地の区域を対象とする必要がある。この場合、小規模に分散している緑地についてもきめ細かく保全するため、都道府県及び市町村が役割分担し、地域の実情に応じて風致地区制度を活用することが望ましい。
特に、都市内に残存する小規模で身近な緑地のもつ良好な自然的景観の維持に対する都市住民の要請が一層高まっていることから、10ha未満の風致地区については、地域の実情に応じ、よりきめ細やかに都市計画決定を行っていくことが望ましい。
 
[2] 指定の対象
 風致地区は、都市計画区域内(準都市計画区域を含む。)における次のいずれかに該当する土地について、都市における土地利用計画上、都市環境の保全を図るため風致の維持が必要な土地の区域を定めることが望ましい。
ア 樹林地若しくは樹木に富める土地(市街地を含む。)であって、良好な自然的景観を形成しているもの
イ 水辺地(水面を含む。)、農地その他市民意識からする郷土意識の高い土地であって、良好な自然的景観を形成しているもの
 
(2)今後の風致地区指定に関する留意点
 
[1] 市街化区域で優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域においては、市街地開発事業や開発許可制度の適正な運用とともに、風致地区制度を活用し、自然的環境が良好に維持された緑豊かな市街地を形成することが望ましい。
 
[2] 市街化調整区域においては、農地や自然的環境を保全する諸制度との連携の下に、特に良好な自然的景観を維持すべき区域等については、風致地区制度を活用して風致の維持を図ることが望ましい。
 
[3] 非線引き都市計画区域のうち白地地域においては、風致地区の指定により、保全すべき土地を明確に位置付けることが望ましい。また、都市計画区域外においても、他法令による土地利用の規制の状況を勘案して、そのまま土地利用を整序することなく放置すれば、将来における都市としての整備、開発及び保全に支障が生じるおそれのある区域は、準都市計画区域の指定に併せ、必要に応じて風致地区制度も活用して土地利用の整序を行い、地域の環境を適正に保持することが望ましい。
 
[4] 特に樹林地若しくは樹木に富める良好な市街地を風致地区に指定する場合は、都市の風致を良好に維持するため、住民又は土地所有者等が自ら維持すべき風致について考え、合意の下に規制が行われるよう配慮することが望ましい。
 
[5] 10ha以上の風致地区については都道府県が、10ha未満の風致地区については市町村が、それぞれ風致条例に基づき許可事務を行うことになるため、建築担当部局及び開発許可担当部局と十分な連携を図ることが望ましい。また、これらの地区が近接する場合には、風致地区内の土地所有者等に対し、行為許可等の手続について明確に周知をすることが望ましい。この場合、行為許可の申請窓口を市町村とすること、地方自治法の規定に基づき行為の許可の事務を市町村に委任すること等の措置により、許可事務の処理を一本化することも考えられる。
 
(3)風致地区指定にあたっての関係機関との調整
 
[1] 風致地区を都市計画として新たに決定し、又はその区域の拡張を行おうとするときは、当該決定又は拡張に係る土地の区域が市街化区域及び用途地域その他の地域地区に係る土地以外の土地の区域で、農地及び山林を含む等農林漁業に関する施策に関連があるものであるときは、都市計画担当部局と農林担当部局と十分調整を図るとともに、国有林野の管理経営に関する法律(昭和26年法律第246号)第2条に規定する国有林又は公有林等官行造林地が含まれるときは、あわせて所轄森林管理局と協議することが望ましい。
 
[2] 港湾区域又は臨港地区内に風致地区を都市計画決定しようとするときは、都市の風致の維持と、港湾の秩序ある整備と適正な運営との整合を図る観点から、当該港湾区域又は臨港地区に係る港湾管理者と協議することが望ましい。なお、風致地区内において港湾区域を設定し、又は変更しようとするときは、同様の観点から港湾管理者は都市計画担当部局に協議することとされている。
 
(4)関連する制度との関係
 
[1] 風致地区に指定された区域のうち、風致の実体となるような枢要な緑地については、風致地区制度による規制では保全することが困難な場合、併せて緑地保全地区を決定し適正な保全を図ることが望ましい。この場合、緑地保全地区と風致地区が重複する土地の区域における風致政令第3条第1項の許可の申請手続については、当該申請の緑地保全地区の規制による行為の許可の申請とを受付け窓口、申請書の様式等について一本化等をして手続の簡素化を図ることが望ましい。
 
[2] 風致地区における風致の維持を図る上で公園等の公共空地が重要な役割を果たすことに鑑み、風致地区内で宅地等が造成される場合に公園等を系統的に配置するほか、特に風致地区の良好な自然的景観を享受することのできる眺望の場、良好な自然的環境を活かした散策、休息、自然とのふれあいの場等、一定の利用が想定される場所について公園等を決定し整備することが望ましい。また、城址、史跡、庭園等を特殊公園として決定し整備するとき、歴史的景観を周辺の区域と一体的に維持する場合においては、必要な場合、その区域に公園と一体的な風致地区を定めることが望ましい。
 
[3] 伝統的建造物群保存地区、美観地区等、建築物の美観を保全する趣旨の地域地区について、周辺の自然的環境を一体として保全することにより、より良好な景観を維持することができる場合においては、周辺の区域又は一体的に風致地区を決定することが望ましい。
 
[4] 今回の都市計画法の改正により、地方公共団体が条例で開発許可の基準として建築物の敷地面積の最低限度に関する制限を定めることができることとされたので、風致の維持のため必要な場合は、地区計画制度の活用に加え開発許可制度との適切な連携の下に風致地区の区域における建築物の敷地面積の最低限度を定め良好な風致の維持を図ることが望ましい。
 
[5] 風致地区は緑の基本計画の対象となる制度である。また、都市緑地保全法第2条の2第2項第3号ハの「緑化の推進を重点的に図るべき地区」に必要に応じ風致地区に係る土地を定め、当該土地について緑地協定締結の指導、民有地緑化への助成等重点的な緑化等を図り、住民の理解と協力を得つつ風致の維持・増進を図ることが望ましい。
 
[6] 古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法(昭和41年法律第1号。以下「古都保存法」という。)第4条に規定する歴史的風土保存区域、首都圏近郊緑地保全法(昭和41年法律第101号)第3条に規定する近郊緑地保全区域、及び近畿圏の保全区域の整備に関する法律(昭和42年法律第103号)第5条に規定する近郊緑地保全区域は、歴史的風土の保存又は緑地の保全のためそれぞれ届出制の規制が行われているが、歴史的風土の保存又は緑地保全の実効性を高めるために必要な場合は、風致地区を一体として定めることが望ましい。
 
(5)風致地区の区域の見直し
 
[1] 近年、緑豊かな都市環境の形成に対する国民のニーズは高まっており、都市における風致の維持を図る風致地区制度の積極的な活用が必要となっている。一方、近年の経済社会の変化や都市化の進展の中で、緑地空間の減少等都市の風致が喪失しつつある例も見られる。このような土地について風致が一定程度維持されている又は回復されることが期待される住宅地については、風致地区制度と併せて、市民緑地制度、緑地協定制度、地区計画制度の活用により風致の維持・創出を図ることが望ましい。
 
[2] なお風致の維持・創出が困難であり、かつ都市構造の変化等に伴う都市全体の将来像の見直しにおいて、市街地の再開発等により土地の高度利用を図る必要が生じ、都市計画区域マスタープラン、市町村マスタープラン等によりその方針が定められたものについては、緑の基本計画等との整合を図りつつ、土地区画整理事業、市街地再開発事業、地区計画等計画的な市街地整備のための措置に併せ、風致地区の区域の必要な見直しを行うことが望ましい。
 
3.風致地区における風致の維持・創出に関する方針
 
(1)風致保全方針の趣旨
 
 各風致地区の社会的条件、特性等は多様であることから、風致地区内における建築等の許可の運用、風致を創出するための取組み等については、地域の実情に応じたきめ細かな対応を図ることが風致の維持・創出に必要となっている。そのため、個々の風致地区における風致の維持・創出に関する方針(以下「風致保全方針」という。)を策定し、地区内の土地所有者等の積極的な理解と協力を得るとともに、許可の運用にあたっての参考として活用することが望ましい。
 
(2)風致保全方針の内容
 
 風致保全方針は、風致地区ごとに定めるとともに、風致地区内における建築等の規制に関する条例に基づく公告等の方法により住民に周知することが望ましい。
 風致保全方針の内容は、次に掲げる事項等個々の風致地区における風致の維持・創出に必要な事項を定めることが望ましい。
[1] 当該風致地区において適用される規制の種類、許可基準及び必要に応じ段階規制に関する方針
[2] 当該風致地区において特に風致を維持すべき土地の状況及び区域、枢要な森林の指定の方針
[3] 当該風致地区内における風致を維持・創出するための施策の方針
 
(3)風致保全方針の留意点
 
[1] 風致保全方針については、当該風致地区の存する市町村の緑の基本計画等との整合を図るものとすることが望ましい。
 
[2] 既決定の風致地区についても、区域や規制の見直しを行う際等に風致保全方針の位置付けを図ることが望ましい。
 
[3] 今般の都市計画法の改正により、都市計画の案を縦覧する際に当該都市計画を決定しようとする理由を記載した書面を添えることとなったが、風致地区についても決定の趣旨を明示し合意形成を促進する観点から、決定の目的となる風致の内容等について具体的に記載することが望ましい。この場合、風致保全方針は、都市計画決定の理由書との整合を図るべきである。
 
4.風致地区における建築等の規制
 
(1)用語の定義
 
 建築物、建築など、都市計画法、建築基準法その他の法令において定義されている用語と同一の用語については、風致政令による定義と同義であると解して差し支えない。また、これらと異なった定義に基づいて運用する場合には、条例において具体的に定義を明らかにすることが望ましい。
 
(2)規制対象行為
 
 風致を適正に維持するため、必要があると認めるときは規制の対象となる行為を追加することができる。ただし、屋外広告物については屋外広告物法(昭和24年法律第189号)第4条第1項の規定により風致地区内における屋外広告物について必要な規制が行われているので、屋外広告物条例によることが望ましい。なお、工作物である屋外広告物については、屋外広告物条例の規制の対象となるほか、工作物である限度において、風致地区の規制の対象ともなる。
 
(3)許可を要しない行為
 
[1] 風致政令第3条第1項の「軽易な行為」を条例に定めるにあたっては、建築物にあっては床面積、宅地の造成等にあっては面積、木竹の伐採や土石の採取にあってはその方法が、都市の風致の維持に著しい支障を及ぼすおそれがないものとすることが望ましい。
 
[2] 風致政令第3条第1項の「その他の行為」を条例に定めるにあたっては、以下に掲げるものを含むことが望ましい。
ア 法令又はこれに基づく処分による義務の履行として行う行為
イ 建築物の存する敷地内で行う行為で、都市の風致の維持に著しい支障を及ぼすおそれがないもの
ウ 第一種電気通信事業、有線放送電話業務又は有線放送業務(共同聴取業務に限る。以下同じ。)の用に供する線路又は空中線系(その支持物を含む。以下同じ。)のうち、高さが15m以下であるものの新築(有線放送の用に供する線路又は空中線系に係るものに限る。)、改築、増築又は移転
エ 農林漁業を営むために行う行為。ただし、次の各号に掲げるものを除く。
@ 建築物の新築、改築、増築又は移転
A 用排水施設(幅員が2m以下の用排水路を除く。)又は幅員が2mをこえる農道若しくは林道の設置
B 宅地の造成又は土地の開墾
C 森林の択伐又は皆伐(林業を営むために行うものを除く。)
D 水面の埋立て又は干拓
 
[3] 林業を営むために行う森林の択伐又は皆伐を許可を要しない行為とする場合、林業を営む者の認定にあたっては、継続的に林業を営む者すなわち伐採後遅滞なく植林を行うことが確実である者に限ることが望ましい。なお、都道府県知事が風致地区に係る民有林について森林法第5条の規定により地域森林計画を樹立しようとするときは、都市の風致を維持するため必要な森林の施業について林務担当部局と都市計画担当部局との間において十分調整を図ることが望ましい。この場合、林野行政は民有林の施業について風致の維持に配慮しつつ行うこととされているので、併せて必要な資料の交換等に関する連絡調整の方法についても林務担当部局と協議をすることが望ましい。
 
(4)協議を要する行為
 国、地方公共団体の機関は行政主体であることに鑑み、許可に代えて協議としたものであるが、この協議を行うに当たっては、許可基準に準拠して行い風致との調和を図るものとすることが望ましい。この場合、次の事項に留意することが望ましい。
 
[1] 風致地区内における国有財産の管理(国有財産法(昭和23年法律第73号)第1条に規定する国有財産の管理をいう。)について、風致政令第3条第2項の規定に基づく条例の規定により国の機関から協議を受けたときは、当該国有財産の管理に支障を来たすこととならないよう十分の配慮を行った上、速やかに協議を了するものとする。
[2] 国有林野事業に係る行為及び緑資源公団の事業に係る行為について協議する場合には、地域施業計画又は実施計画の案を示して包括的に行えば足りるものとされている。なお、風致地区内における国有林野の管理については、風致の維持に配慮することとされている。
[3] 郵便局舎の新築、改築、増築又は移転に係る協議又は許可の申請については、郵便事業の公益性及び通信施設としての特殊性に鑑み十分配慮する。
[4] 地方住宅供給公社その他の公法人(その役員及び職員が公務員とみなされているものに限る。)で、資本金又はこれに相当する資産が全額国、都道府県又は指定都市の出資に係るものであるものについては、これを都道府県の機関とみなす規定を条例におくことができる。
[5] 風致政令第3条第2項の国の機関には、次に掲げる公団等を含むものとする。
ア 都市基盤整備公団
イ 緑資源公団
ウ 労働福祉事業団
エ 雇用・能力開発機構
オ 日本郵政公社
カ 水資源開発公団
キ 地域振興整備公団
ク 日本鉄道建設公団
ケ 環境事業団
コ 中小企業総合事業団
 
(5)通知を要する行為
 
[1] 風致政令第3条第3項各号に掲げる行為は、次に掲げる行為を含むものである。
ア 高速自動車国道若しくは道路法(昭和27年法律第180号)による自動車専用道路の新設、改築、維持、修繕若しくは災害復旧(これらの道路とこれらの道路以外の道路(道路運送法(昭和26年法律第183号)による一般自動車道を除く。)とを連絡する施設の新設及び改築を除く。)又は道路法による道路(高速自動車国道及び自動車専用道路を除く。)の改築(小規模の拡幅、舗装、勾配の緩和、線形の改良その他道路の現状に著しい変更を及ぼさないものに限る。)、維持、修繕若しくは災害復旧に係る行為
イ 道路運送法による一般自動車道及び専用自動車道(鉄道若しくは軌道の代替に係るもの又は一般乗合旅客自動車運送事業の用に供するものに限る。)の造設(これらの自動車道とこれらの自動車道以外の道路(高速自動車国道及び道路法による自動車専用道路を除く。)とを連絡する施設の造設を除く。)又は管理に係る行為
ウ 自動車ターミナル法(昭和34年法律第136号)によるバスターミナルの設置又は管理に係る行為
エ 河川法(昭和39年法律第167号)第3条第1項に規定する河川又は同法第100条第1項の規定により指定された河川の改良工事の施行又は管理に係る行為
オ 水資源開発公団法(昭和36年法律第218号)第18条第1項(同項第4号を除く。)に規定する業務に係る行為(エに掲げるものを除く。)
カ 砂防法(明治30年法律第29号)による砂防工事の施行又は砂防設備の管理(同法に規定する事項が準用されるものを含む。)に係る行為
キ 地すベり等防止法(昭和33年法律第30号)による地すベり防止工事の施行に係る行為
ク 急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(昭和44年法律第57号)による急傾斜地崩壊防止工事の施行に係る行為
ケ 森林法第41条に規定する保安施設事業の施行に係る行為
コ 国有林野内において行う国民の保健休養の用に供する施設の設置又は管理に係る行為
サ 森林法第5条の地域森林計画に定める林道の新設及び管理に係る行為
シ 土地改良法(昭和24年法律第195号)による土地改良事業の施行に係る行為(水面の埋立て及び干拓を除く。)
ス 地方公共団体又は農業等を営む者が組織する団体が行う農業構造、林業構造又は漁業構造の改善に関し必要な事業の施行に係る行為(水面の埋立て及び干拓を除く。)
セ 日本鉄道建設公団が行う鉄道施設の建設(駅、操車場、車庫その他これらに類するもの(以下「駅等」という。)の建設を除く。)又は管理に係る行為
ソ 鉄道事業法(昭和61年法律第92号)による鉄道事業者又は索道事業者が行うその鉄道事業又は索道事業で一般の需要に応ずるものの用に供する施設の建設(鉄道事業にあっては、駅等の建設を除く。)又は管理に係る行為
タ 軌道法(大正10年法律第76号)による軌道の敷設(駅等の建設を除く。)又は管理に係る行為
チ 海岸法による海岸保全施設に関する工事の施行又は海岸保全施設の管理に係る行為
ツ 航路標識法(昭和24年法律第99号)による航路標識の設置又は管理に係る行為
テ 港則法(昭和23年法律第174号)による信号所の設置又は管理に係る行為
ト 航空法(昭和27年法律第231号)による航空保安施設で公共の用に供するもの又は同法第96条に規定する指示に関する業務の用に供するレーダー又は通信設備の設置又は管理に係る行為
ナ 気象、海象、地象又は洪水その他これに類する現象の観測又は通報の用に供する設備の設置又は管理に係る行為
ニ 漁港法(昭和25年法律第137号)第3条第1号に掲げる基本施設又は同条第2号イ及びロに掲げる機能施設に関する工事の施行又は漁港施設の管理に係る行為
ヌ 港湾法第2条第5項第1号から第5号までに掲げる港湾施設(同条第6項の規定により同条第5項第1号から第5号までに掲げる港湾施設とみなされた施設を含む。)に関する工事の施行又は港湾施設の管理に係る行為
ネ 国又は地方公共団体が行う通信業務の用に供する線路又は空中線系及びこれらに係る電気通信設備を収容するための施設の設置又は管理に係る行為
ノ 電気通信事業法(昭和59年法律第86号)による第一種電気通信事業の用に供する線路又は空中線系及びこれらに係る電気通信設備を収容するための施設の設置又は管理に係る行為
ハ 有線放送電話に関する法律(昭和32年法律第152号)による有線放送電話業務の用に供する線路又は空中線系及びこれらに係る電気通信設備を収容するための施設の設置又は管理に係る行為
ヒ 放送法(昭和25年法律第132号)による放送事業の用に供する線路又は空中線系及びこれらに係る電気通信設備を収容するための施設の設置又は管理に係る行為
フ 電気事業法(昭和39年法律第170号)による電気事業の用に供する電気工作物の設置(発電の用に供する電気工作物の設置を除く。)又は管理に係る行為
ヘ ガス事業法(昭和29年法律第51号)によるガス工作物の設置(液化石油ガス以外の原料を主原料とするガスの製造の用に供するガス工作物(圧縮天然ガスに係るものは含まれない。)の設置を除く。)又は管理に係る行為
ホ 水道法(昭和32年法律第177号)による水道事業若しくは水道用水供給事業若しくは工業用水道事業法(昭和33年法律第84号)による工業用水道事業の用に供する施設又は下水道法(昭和33年法律第79号)による下水道の排水管若しくはこれを補完するため設けられるポンプ施設の設置又は管理に係る行為
マ 道路交通法(昭和35年法律第105号)による信号機の設置又は管理に係る行為
ミ 文化財保護法第27条第1項の規定により指定された重要文化財、同法第56条の10第1項の規定により指定された重要民俗資料、同法第57条第1項に規定する埋蔵文化財又は同法第69条第1項の規定により指定され、若しくは同法第70条第1項の規定により仮指定された史跡名勝天然記念物の保存に係る行為
ム 古都保存法第5条による歴史的風土保存計画に基づく事業の執行に係る行為
メ 首都圏近郊緑地保全法第4条による近郊緑地保全計画に基づく事業の執行に係る行為
モ 近畿圏の保全区域の整備に関する法律第4条による保全区域整備計画に基づく事業の執行に係る行為
ヤ 都市公園法(昭和31年法律第79号)による都市公園又は公園施設の設置又は管理に係る行為
ユ 自然公園法による公園事業又は都道府県立自然公園のこれに相当する事業の執行に係る行為
ヨ 鉱業法(昭和25年法律第289号)第3条第1項に規定する鉱物の掘採に係る行為
 なお、当該行為については鉱業法上鉱業権設定に際し風致を含む各種公益との調整が了していることに基づくものである。
 
[2] 東日本電信電話株式会社、西日本電信電話株式会社、株式会社ディーディーアイ、放送事業者、電気事業者又はガス事業者が風致政令第3条第3項に基づく条例に定める行為をする場合において、当該行為に係る設備の高さが15mをこえるものであるときは、当該設備と風致との調和を図るため、あらかじめ、これらの事業者は都道府県知事又は市町村長と連絡協議することとされているので運用に当たって留意することが望ましい。
 
(6)行為の許可の基準
 
[1] 建築物等の建築
ア 風致政令においては、建築物の許可基準について建ぺい率、高さ等の数値の上下限を示すに止めているが、これは、条例を定めるにあたって当該風致地区内における土地利用の現況及び将来の種向並びに植生、湖沼、地形等の自然的条件を考慮して、適当な数値を定めることができるよう配慮したものである。従って、建築物については、その建ぺい率、高さ及び外壁又はこれに代わる柱の面から敷地の境界線までの距離について、適当な数値を現在の風致地区の状況と当該地区の規制の目標を考慮して条例で定めることが望ましい。また、必要がある場合においては、風致地区における土地の状況に応じて地域を定めて規制の内容に段階を設けることによって実情に即した規制をすることが望ましい。
イ 許可基準を条例に定めるにあたっては、過重な負担とならないことが望ましい。
ウ 許可基準の適用にあたっては、農業振興地域の区域内における農業を営む行為については、当該区域内の土地は、農業を振興すべきことが国の施策として定められた地域であるので、これらの行為に関し許可申請があったときは、農業の振興に支障を及ぼすこととならないよう配慮するとともに、迅速に事務を処理することが望ましい。
エ 建築物にあっては、敷地が造成された宅地又は埋立て若しくは干拓が行われた土地であるときは、風致の維持に必要な植栽その他の措置を行うことを許可基準とすることが望ましい。この場合、建築物の敷地面積に対する植栽の面積の割合として適当な数値を定めることを含めて検討することが望ましい。
オ 斜面地において、建築物の建築が良好な自然的景観に大きな影響を与え風致の維持が困難となる場合には、建築物が接する地盤面の高低差を許可基準に追加する等、当該風致地区の状況に応じた措置を講ずることが望ましい。
 
[2] 建築物等の色彩の変更
 建築物その他の工作物と一体となった風致は当該建築物等の態様に影響されるため、風致政令においては、建築物等の位置、形態及び意匠に対する規制と併せて、建築行為を伴わない色彩の変更についても許可の対象としているので、風致を維持するために必要な範囲で地域の実情に応じた運用を行うことが望ましい。
 
[3] 宅地の造成等
ア 良好な風致を将来にわたり維持するため、宅地の造成等の際に木竹の伐採をできるだけ少なくするとともに、伐採した場合に風致の維持に必要な限度において植栽を行うことが必要であることから、風致政令において数値による許可の基準を定めているものである。
 木竹が保全され、又は適切な植栽が行われる土地の面積が、宅地の造成等に係る土地の面積に対する割合を数値基準としているが、木竹が保全され、又は適切な植栽が行われる土地の面積とは、樹木の樹冠により被覆された土地の面積を算定することが望ましい。また、この場合、これと一体となって良好な風致を形成していると認められる草本、地被、庭園内の池や庭石も含めることが考えられる。ただし、建築物の敷地にあっては、建築物と一体となった風致の維持を図る必要があることから、高木が保全又は植栽されることが望ましい。また、植栽基盤が永続的でないものを面積に含むことは望ましくない。
 許可の基準である割合については、10%以上から60%以下の範囲内で風致条例で定めるものであり、適当な数値を当該地区の現在の風致の状況と規制の目標を考慮して定めるべきである。この場合、10%の基準を用いるのは、当該区域の風致の維持の状況、及び周辺の市街化の状況に鑑み、相当の土地の形質の変更が行われてもやむを得ない場合に限ることが望ましい。一方、60%の基準を用いるのは、現状が森林である等風致が極めて良好な状態で維持されており、土地の形質の変更が行われても樹木等をできる限り保全するとともに豊富な植栽を施すことにより、質の高い風致の維持を図る必要がある場合に限ることが望ましい。
 許可基準を定めるに当たって必要がある場合においては、風致保全方針に考え方を示した上で、風致地区における土地の状況に応じて地域を定めて許可基準に段階を設けることによって、実情に即した規制をすることが望ましい。この場合、建築物等の規制の許可基準との整合を図るべきである。
イ 風致政令第4条第4号ハ(1)及び同号ニの規定によるのりの高さの規制については、狭小な土地や傾斜地等の地形的条件の悪い土地においても相当規模の造成等が行われ、その結果、大規模なのりを生ずることが想定されるため、1haを超えるものについては風致条例で定めるのりの高さを許可の基準として定め、1ha以下のものについてはその基準を超えるものについて適切な植栽等を行うことにより当該土地及びその周辺の土地の区域における風致と著しく不調和とならないことを定めているものである。
 許可の基準は、植栽を伴わなくても風致の維持に著しい支障を生じない目通りの高さである1.5m以上、のり面が周辺の高木と調和しうる5m以下の範囲としているので、風致の維持の状況、地形等の状況により適切に設定することが望ましい。
   ウ 風致政令第4条第4号ハ(2)の規定による森林の指定については、当該風致地区指定の要素となった枢要な森林について指定することが望ましい。この場合、緑地保全地区や都市計画緑地の指定など他の都市計画制度と一体として活用することが望ましい。この指定については、風致保全方針に位置付けるとともに、都道府県又は市町村の規則、公報による公告等広く一般に周知しうる方法により行うことが望ましい。
[4] 水面の埋立て又は干拓
 水面の埋立て又は干拓については、その自然的地形特性により、当該行為が著しく地貌に変化を与えることから、適切な植栽を行うこと等により、風致と著しく不調和にならない場合に許可をすることが望ましい。
 
[5] 木竹の伐採
 木竹の伐採については、次のいずれかに該当し、かつ、伐採の行われる土地及びその周辺の土地の区域における風致の維持に著しい支障を及ぼすおそれが少ない場合に許可をすることが望ましい。
ア 風致政令第3条第1項第1号及び第3号に掲げる行為をするために必要な最小限度の木竹の伐採
イ 森林の択伐
ウ 伐採後の成林が確実であると認められる森林の皆伐(風致政令第4条第4号ハ(2)の都道府県知事又は市町村長が指定した森林に係るものを除く。)で、伐採区域の面積が1ヘクタール以下のもの。
エ 森林である土地の区域外における木竹の伐採
 
[6] 土石の類の採取
 露天掘りによる採取は望ましくない。ただし、必要な埋めもどし若しくは植栽をすること等により風致の維持に著しい支障を及ぼすおそれが少ない場合はこの限りでない。
 
[7] 屋外における土石、廃棄物又は再生資源の堆積
 屋外において土石や古タイヤ等の廃棄物、再生資源の堆積が行われ、風致地区における自然的景観を阻害することが想定されることから、これらの行為を規制の対象としており、風致の維持に支障を及ぼすおそれが少ない場合に許可することが望ましい。なお、当該行為の規制は、建築物の敷地の内外を問わず対象となる。
 
[8] 風致政令第3条第1項の許可には、都市計画上必要な条件を附することができる。この場合において、この条件は、当該許可を受けた者に不当な義務を課するものであってはならない。
 
5.その他の事項
 
 
(1)風致の維持に関して意見を聞くこととするため、地方自治法第138条の4第3項の規定に基づき審議会を設けることができる。この場合において、その組織及び運営に関しては、法第78条及び令第43条の規定の例を参考として定めることが望ましい。
 
(2)大規模な宅地の造成その他風致の維持に著しい影響を及ぼす行為について許可をする場合には、行為を完了したときはその旨を都道府県知事又は市町村長に届け出ること及び当該行為が許可の内容に適合しているかどうかについて検査を受けるべきことを許可の条件とするなどの措置を講ずることにより風致の維持に支障を及ぼすことのないよう規制を行うことが望ましい。
 
(3)風致の維持のため他人の占有する土地に立入って当該土地にある物件又は当該土地において行われている工事の状況を検査するため、必要があるときは、その必要の限度において、当該土地に、自ら立ち入り、又はその命じた者若しくは委任した者に立ち入らせることができる旨の規定を条件におくことが望ましい。この場合において、証明書等の携帯等法第82条の規定の例を参考として規定することが望ましい。
 
13.緑地保全地区
 
1.趣旨
 
 緑地保全地区は、都市の無秩序な拡大の防止に資する緑地、都市の歴史的・文化的価値を有する緑地、生態系に配慮したまちづくりのための動植物の生息、生育地となる緑地等の保全を図ることを目的とする地域地区である。
 また、首都圏近郊緑地保全法第5条に規定する近郊緑地特別保全地区は、近郊緑地保全区域のうち、首都及びその周辺の住民の健全な心身の保持及び増進又はこれらの地域における公害若しくは災害の防止の効果が著しく、かつ、特に良好な自然の環境を有する土地について指定する緑地保全地区である。近畿圏の保全区域の整備に関する法律第6条に規定する近郊緑地特別保全地区は、近郊緑地保全区域のうち、地形、交通施設の整備の状況、周辺の土地の開発の状況に照らして無秩序な市街地化のおそれが特に大である、かつ、既成都市区域及びその近郊の地域の住民の健全な心身の保持及び増進又はこれらの地域における公害若しくは災害の防止の効果が特に著しい土地について指定する緑地保全地区である。
 緑地保全地区では、建築物の建築等の行為は現状凍結的に制限され、行為の許可を受けることができないために通常生ずべき損失を受けた者に対する損失補償、及び許可を受けることができないため、その土地の利用に著しい支障を来す場合に対する土地の買入れが行われる。
 
2.緑地保全地区の決定
 
(1)緑地保全地区の計画の考え方
 
[1] 緑地保全地区の対象となる緑地
 緑地保全地区は、都市計画区域内において、樹林地、草地、水辺地、岩石地若しくはその状況がこれらに類する土地が、単独で若しくは一体となって、又はこれらと隣接している土地が、これらと一体となって、良好な自然的環境を形成しているもので市街地及びその周辺地域に存するものについて指定するものとし、その認定については次による。
ア 「樹林地」とは、当該土地の大部分について樹木が生育している一団の土地であり、樹林には竹林も含まれるものである。
イ 「草地」とは、当該土地の大部分が草で被われている土地であり、ゴルフ場のような人工草地も含まれる。なお、農地は含まれない。
ウ 「水辺地」とは、池沼、河川、海、湖等の水面を含むそれらの周辺地域である。
エ 「岩石地」とは、当該土地の大部分が岩石で被われている土地又は岩石が風化して角礫を多く含んだ状態の土地をいい、具体的には、海浜の岩礁地、溶岩台地等をいう。
オ 「その状況がこれらに類する土地」とは、樹林地、草地、水辺地、岩石地には該当しないが、その景観、立地状況等がこれらに類似しているものであり、具体的には、樹林地に類するものとして屋敷林、庭園、街道の並木等、水辺地に類するものとして湿地帯等、岩石地に類するものとして砂丘地等をいう。
カ 「これらに隣接している土地」は、樹林地、草地、水辺地、岩石地等の土地と一体となって良好な自然的環境を形成している土地の範囲をいい、それぞれの地域の土地の状況等を勘案してその範囲が決定される。なお、この隣接地には、緑地に介在する農地も含まれ得る。
 
[2] 緑地保全地区の対象となる土地の区域の要件
ア 都市緑地保全法第3条第1項第1号の要件は、
@ 遮断地帯としては、既成市街地若しくは市街化区域の周辺又は連担のおそれが強い二つの市街地の中間部に存在するようなもので、原則として徒歩による日常生活圏を分離するに足りる程度の規模及び形態を有するものである。
A 緩衝地帯としては、一定の間隔をもって配置することが望ましい異種の土地利用又は施設の中間的な位置に存在するようなもので、騒音、振動、大気汚染等の公害等の種類及び程度に応じて緩衝地帯としての機能を果たす適切な規模及び形態を有するものである。
B 避難地帯としては、住民が火急の場合に容易に到達し得る位置に存在するものであり、避難対象区域の人口等に応じて、避難者の収容、救助等の活動が安全かつ円滑に行れ得るような規模及び形態を有するものである。
イ 都市緑地保全法第3条第1項第2号の要件は、
@ 建造物、遺跡等と一体となった緑地としては、社寺境内地、古墳、史跡等と一体となって良好な自然的環境を形成している土地で都市のシンボルゾーンを保存しようとするものである。
A 伝承若しくは風俗慣習と結びついた緑地としては、伝説、おとぎ話、詩歌等に名高い山、森、海辺等又は住民の年中行事と結びついた良好な自然的環境を形成している土地で都市のシンボルゾーンを保存しようとするものである。
ウ 都市緑地保全法第3条第1項第3号イの要件は、住民が接触する頻度が高い緑地又は住民が日常望見するような位置にある緑地であって、その植生、地形等から感受される風致又は景観が優れており、住民の健全な心身の保持及び増進のために確保すべき良好な自然的環境を有するものである。
エ 都市緑地保全法第3条第1項第3号ロの要件は、動植物の生息地又は生育地としての特性を持つ緑地を適正に保全することを目的とするものであり、日常、住民が自然観察等を通じて親しんでいること等から住民の健全な心身の保持及び増進のために確保すべき良好な自然的環境を有する緑地である。このため、藪、湿地、ため池等必ずしも風致又は景観が優れていない緑地についても、必要に応じて当該緑地保全地区を決定することが望ましい。
 
(2)緑地保全地区の計画にあたっての留意点
 
[1] 緑地保全地区の決定にあたっては、あらかじめ、緑地保全地区担当部局と自然保護担当部局は十分協議の上、自然環境保全基本方針(昭和48年10月26日閣議決定)に基づいて適切な調整を行うものとし、自然公園と重複して指定することは望ましくない。例外的に自然公園と重複して緑地保全地区を設定しようとするときは、あらかじめ、自然風景地の保護の観点から緑地保全地区担当部局と自然保護部局で協議することが望ましい。
 
[2] 緑地保全地区の決定にあたっては、あらかじめ緑地保全地区担当部局と農林水産部局は十分連絡調整を行うことが望ましい。緑地保全地区を保安林内に指定しようとするときは、あらかじめ、保安林指定権者に協議することとし、森林法第25条第1項第10号及び第11号に規定する公衆の保健のために指定される保安林及び名所又は旧跡の風致の保存のために指定される保安林については、重複して決定することは望ましくない。国有林野又は公有林野等官行造林地内に緑地保全地区を決定し、又は同意しようとする場合には、都道府県の都市計画担当部局はあらかじめ所管森林管理局長の同意を受けることが望ましい。
 
[3] 緑地保全地区は原則として港湾区域、臨港地区、港湾隣接地域及び港湾法第56条の港湾内に定めることはないが、定める場合は、都市における緑地の適正な保全と、港湾の秩序ある整備と適正な運営との整合を図る観点から、あらかじめ、港湾管理者と協議することが望ましい。
[4] 動植物の生息地又は生育地として保全する必要がある緑地保全地区等については、
ア 都市緑地保全法第3条第1項第3号ロの緑地保全地区(以下「生息生育地型緑地保全地区」という。)を決定するにあたっては、動植物の生息地又は生育地として十分に保全されるに足る範囲の緑地を確保することが望ましい。
イ 生息生育地型緑地保全地区は、動植物の生息地又は生育地として保全する必要がある緑地の保全を目的とするものであり、動植物の保護を直接目的とするものではない。従って、生息生育地型緑地保全地区において、動植物の保護を直接の目的としてその生息地又は生育地を保全する必要がある場合に、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律に基づく鳥獣保護区及び絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(平成4年法律第75号)に基づく生息地等保護区を重複して設定又は指定することを妨げるものではない。鳥獣保護区又は生息地等保護区に生息生育地型緑地保全地区を決定し、又は同意しようとする場合には、都道府県の都市計画担当部局は都道府県の自然保護担当部局(鳥獣保護区又は生息地等保護区が環境大臣の設定するものである場合においては、都道府県の自然保護担当部局を通じて環境省自然保護局自然保護事務所)と動植物の生息地又は生育地保全の観点から協議調整することが望ましい。なお、生息生育地型緑地保全地区を、魚つき保安林において、当該魚の生息地として保全する必要があるものとして重複して決定することは望ましくない。
ウ 生息生育地型緑地保全地区を決定する際には、適正な事業活動を制限し、又は適正な産業立地を阻害しないよう配慮することが望ましい。
[5] その他
ア 日本原子力研究所、核燃料サイクル開発機構及び宇宙開発事業団の敷地は緑地保全地区として定めることは望ましくない。
イ 緑地保全地区の決定に当たり、警察署、交通管制センター、機動隊、警ら交通隊、その他これらに準ずるものの庁舎又は学校教養施設の敷地が含まれることは望ましくない。
ウ 緑地保全地区内に防衛施設が含まれることは望ましくない。
エ 河川区域に生息生育地型緑地保全地区を決定し、又は同意しようとする場合には、河川環境管理基本計画との整合を図る観点から、都道府県の都市計画担当部局は河川管理者と連絡調整することが望ましい。
 
(3)関連する制度との関係
 
[1] 緑の基本計画
ア 住民に身近な緑地の保全を市町村が積極的に推進することを支援するため、近郊緑地特別保全地区を除き、緑地保全地区に関する都市計画のうち、面積10ha未満のものについては、すべて市町村が決定することとされている。このような緑地保全地区は、緑の基本計画に基づいて決定することが望ましい。
イ 「緑地の保全及び緑化の推進のための施策に関する事項」は、目標を実現するための都市公園の整備や緑地保全地区の決定等の施策、公共公益施設や民有地の緑化の方針、市民農園等の整備に関する施策の展開方策について定める趣旨である。この場合、必要に応じ、特に重点的に保全又は整備すべき主要な緑地保全地区の決定について定めることが望ましい。
ウ 「緑地保全地区内の緑地の保全に関する事項」は、緑地保全地区についてその保全に関する事項等を基本計画において特に定めるものである。
@ 「緑地の保全に関連して必要とされる施設の整備に関する事項」は、緑地保全地区の決定が行われている又は決定が行われることが予定されている市町村が都道府県知事との協議を経た上で必要に応じて定めるものであり、緑地保全地区の緑地の特性に応じ当該緑地を保全するため必要となる土砂崩壊防止施設、散策路、休憩所等の施設を定めるものである。
 本事項は緑地保全地区における行為の制限の適用除外となることから、施設の種類、規模、位置、整備主体等個別の施設整備について都道府県知事がその適合を判断するのに必要な内容を定めることが望ましい。
A 都市緑地保全法第8条の規定による「土地の買入れ及び買い入れた土地の管理に関する事項」は、緑地保全地区ごとに同法第8条に基づく当該緑地保全地区内の土地の買入れについて、緑地の特性に応じて都道府県と市町村の役割分担を定めるとともに、買い入れた土地の管理の方針を定めるものである。
 具体的には、例えば、屋敷林等の住民に身近な小規模な緑地については市町村が、大規模な河川沿いの連続した崖線の斜面緑地等複数の市町村にまたがる大規模な緑地については都道府県が、というように、緑地の特性に応じて土地の買入れを行う者を定めることが望ましい。
 買い入れた士地については、例えば、a.樹木の整枝、枯損木処理に重点を置くこと、b.住民の自然とのふれあいの場として公開すること等買い入れた土地の管理の方針を併せて定めることが望ましい。
B 「その他緑地保全地区内の緑地の保全に関し必要な事項」は、緑地保全地区内の土地の買取りで都市緑地保全法第8条に基づかない任意のものの実施方針等について必要に応じて定めるものである。
 具体的には、同法第8条の規定に基づき買い入れるべき旨の申出がない場合においても、a.都市緑化基金の活用等により土地の買入れを行うこと、b.地権者等と土地の利用について契約を結び住民の利用に供すること等について必要に応じて記載することが望ましい。
[2] 他の都市計画との関係
ア 市街化調整区域等において自然的環境を保全するべき相当規模の区域については、当該区域の自然的環境を保全する上で特に枢要な区域を絞り込み緑地保全地区を決定して現状凍結的な保全を図ることが望ましい。その場合、周囲の土地利用との関係において枢要な区域が蚕食されるおそれのある場合には周囲に風致地区を組合せて決定することが望ましい。
 動植物の生息地又は生育地として保全するものについて、緑地保全地区を指定し適正な保全を図りつつ、併せて自然生態の観察等の利用に供することが必要な場合は、その区域を公園、緑地等の公共空地として一体的に決定し整備することが望ましい。
イ 緑地保全地区内における行為の規制に関する都市緑地保全法第5条の規定は、行為の規制に関する都市計画法、屋外広告物法、建築基準法、文化財保護法、森林法、自然公園法、宅地造成等規制法(昭和36年法律第191号)その他の法律の規定の適用を妨げるものではないので、緑地保全地区内における緑地の保全、損失の補償等との関連上、それらの総合的な運用を図ることが望ましい。
ウ 緑地保全地区と風致地区が重複する土地の区域における都市緑地保全法第5条第1項の許可の申請手続については、当該申請の風致地区の規制による行為の許可の申請とを受付け窓口、申請書の様式等についてできる限り一本化等をして手続の簡素化を図ることが望ましい。
 
3.緑地保全地区における行為の規制
 
(1)許可の基準
 
 緑地保全地区は、良好な都市環境を確保するために必要な緑地について指定されるものであり、強度の行為の規制がなされる反面、損失の補償、土地の買入れ等が行われ得る地域であるので、当該地域内における行為の規制は、緑地を良好な状態で保全するよう、以下の許可基準により行うことが望ましい。
 
第一 許可基準
一 建築物の新築
イ 仮設の建築物については、次に掲げる要件を充たすものであること。
(一)当該建築物の構造が、容易に移転し、又は除却することができるものであること。
(二)当該建築物の規模及び形態が、当該新築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における緑地の状況と著しく不調和でないこと。
ロ 地下に設ける建築物については、当該建築物の位置及び規模が、当該新築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における緑地の保全に支障を及ぼすおそれが少ないこと。
ハ 公衆便所については、規模、形態及び意匠が、当該新築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における緑地の状況と著しく不調和でないこと。
ニ その他の建築物(以下ニにおいて「普通建築物」という。)については、次に掲げる要件を充たすものであること。
(一)当該新築が、次のいずれかの土地において行われること。
(@)緑地保全地区の指定の日前において普通建築物の敷地であった土地
(A)緑地保全地区の指定の際現に新築の工事中の普通建築物の敷地であった土地
(二)当該新築が、次のいずれかに該当すること。
(@)現に存する普通建築物の建替えのために行われること。
(A)緑地保全地区の指定の日の前日から起算して前六月以内に除却した普通建築物の建替えのために行われること。
(三)当該新築後における普通建築物の高さ及び床面積の合計が、それぞれ(二)の普通建築物の高さ及び第二に定める制限床面積をこえないこと。
(四)当該新築後の普通建築物の形態及び意匠が、新築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における緑地の状況と著しく不調和でないこと。
二 建築物の改築については、次に掲げる要件を充たすものであること。
イ 当該改築後の建築物の高さが、改築前の建築物の高さをこえないこと。
ロ 当該改築後の建築物の形態及び意匠が、改築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における緑地の状況と著しく不調和でないこと。
三 建築物の増築
イ 仮設の建築物については、次に掲げる要件を充たすものであること。
(一)当該増築部分の構造が、容易に移転し、又は除却することができるものであること。
(二)当該増築後の建築物の規模及び形態が、増築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における緑地の状況と著しく不調和でないこと。
ロ 地下に設ける建築物については、当該増築後の建築物の位置及び規模が、増築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における緑地の保全に支障を及ぼすおそれが少ないこと。
ハ 公衆便所については、当該増築後の規模、形態及び意匠が、増築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における緑地の状況と著しく不調和でないこと。
ニ 宗教法人法(昭和26年法律第126号)に規定する境内建物である建築物又は旧宗教法人令(昭和20年勅令第719号)の規定による宗教法人のこれに相当する建築物(都市緑地保全法第3条第1項の緑地で、同項第2号に該当する土地の区域について定められた緑地保全地区内の建築物に限る。)については、当該増築後の建築物の規模、形態及び意匠が、増築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における緑地の状況と著しく不調和でないこと。
ホ その他の建築物(以下ホにおいて「普通建築物」という。)については、次に掲げる要件を充たすものであること。
(一)当該増築が、次のいずれかの土地において行われること。
(@)緑地保全地区の指定の日以前において普通建築物の敷地であった土地
(A)緑地保全地区の指定の際現に新築の工事中の普通建築物の敷地であった土地
(二)当該増築部分の高さ及び当該増築後における普通建築物床面積の合計が、それぞれ増築前の普通建築物の高さ及び第二に定める制限床面積をこえないこと。
(三)当該増築後の建築物の形態及び意匠が、増築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における緑地における緑地の状況と著しく不調和でないこと。
四 工作物(建築物以外の工作物をいう。以下同じ。)の新築
イ 地下に設ける工作物については、当該工作物の位置及び規模が、当該新築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における緑地の保全に支障を及ぼすおそれが少ないこと。
ロ 宗教法人法に規定する境内建物である工作物又は旧宗教法人令の規定による宗教法人のこれに相当する工作物(都市緑地保全法第3条第1項の緑地で、同項第2号に該当する土地の区域について定められた緑地保全地区内の工作物に限る。)については、当該工作物の規模、形態及び意匠が、当該新築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における緑地の状況と著しく不調和でないこと。
ハ その他の工作物については、当該工作物の高さが、5m以下であり、かつ、その規模、形態及び意匠が、当該新築の行われる土地及び意匠が、当該新築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における緑地の状況と著しく不調和でないこと。
五 工作物の改築については、次に掲げる要件を充たすものであること。
イ 当該改築後の工作物の高さが、改築前の工作物の高さをこえないこと。
ロ 当該改築後の工作物に形態及び意匠が、改築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における緑地の状況と著しく不調和でないこと。
六 工作物の増築
イ 地下に設ける工作物については、当該増築後の工作物の位置及び規模が、増築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における緑地の保全に支障を及ぼすおそれが少ないこと。
ロ 宗教法人法に規定する境内建物である工作物又は旧宗教法人令の規定による宗教法人のこれに相当する工作物(都市緑地保全法第3条第1項の緑地で同項第2号に該当する土地の区域について定められた緑地保全地区内の工作物に限る。)については、当該増築後の工作物の規模、形態及び意匠が、増築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における緑地の状況と著しく不調和でないこと。
ハ その他の工作物については、当該増築部分の高さが5m以下であり、かつ、増築後の工作物の形態及び意匠が、増築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における緑地の状況と著しく不調和でないこと。
七 宅地の造成、土地の開墾、土石の採取、鉱物の掘採その他の土地の形質の変更
イ 土石の採取又は鉱物の掘採については、当該採取又は掘採の方法が、露天掘りでなく、かつ、当該採取又は掘採を行う土地及びその周辺の土地の区域における緑地の保全に支障を及ぼすおそれが少ないこと。
ロ その他の土地の形質の変更については、当該土地の形質の変更が、次のいずれかに該当し、かつ、当該変更後の地貌が当該変更を行う土地及びその周辺の土地の区域における緑地の状況と著しく不調和とならないこと。
(一)前各号に掲げる建築物その他の工作物の新築、改築又は増築を行うために必要な最小限度の規模の土地の形質の変更
(二)農地又は採草放牧地に接する土地の開墾
(三)建築物の存する敷地内で行う土地の形質の変更
八 木竹の伐採については、当該木竹の伐採が、次のいずれかに該当し、かつ、伐採の行われる土地及びその周辺の土地の区域における緑地の状況を損なうおそれが少ないこと。
イ 森林の択伐
ロ 伐採後の成林が確実であると認められる森林の皆伐で、伐採区域の面積が1ha以下のもの
ハ 前号に掲げる土地の形質の変更のために必要な最小限度の木竹の伐採で、森林である土地の区域において行うもの
ニ 森林である土地の区域外における木竹の伐採
九 水面の埋立て又は干拓については、当該水面の埋立て又は干拓後の地貌が埋立て又は干拓を行う土地及びその周辺の土地の区域における緑地の状況と著しく不調和とならないこと。
十 屋外における土石、廃棄物又は再生資源の堆積については、当該堆積後の 土石、廃棄物又は再生資源が、堆積の行われる土地及び周辺の土地の区域に おける緑地の状況と著しく不調和とならないこと。
十一 その他
イ 次に掲げる行為については、一から九の規定にかかわらず、当該行為の行われる土地及びその周辺の土地の区域における緑地の状況を著しくそこなわないこと。
(一)災害の防止のために必要やむを得ない行為
(二)法令に基づく行政庁の勧告に応じて行う行為
ロ 港湾施設及び漁港施設については、都市緑地保全法施行令(昭和50年政令第3号)第2条第17号及び第18号に掲げる施設以外の施設に関する工事の施行又は施設の管理に係る事項に伴って必要となる行為についても、その公益性を尊重し、原則として、許可すること。
ハ 地方鉄道及び軌道の駅、操車場、車庫その他これらに類するものの建設については、その公益性にかんがみ、緑地保全上の配慮をしたうえで、都市緑地保全法第5条第1項の規定を運用すること。
ニ 許可申請が、鉱業権者、租鉱権者、熱供給事業者からあった場合には、できる限り操業に支障を及ぼさないように考慮すること。
ホ 鉱害復旧に係る行為は許可すること。
 
第二 制限床面積の意義等
一 第一-一ニ(三)及び同-三ホ(二)において「制限床面積」とは、当該普通建築物の敷地における次に掲げる床面積の合計をいう。この場合において、「普通建築物」とは、第一-一ニ(三)の場合においては第一-一ニの普通建築物を、同三ホ(二)の場合においては同三ホの普通建築物をいう。
イ 緑地保全地区の指定の際現に存した普通建築物の床面積
ロ 緑地保全地区の指定の際現に新築、改築又は増築の工事中の普通建築物の床面積
ハ 緑地保全地区の指定の日の前日から起算して前六月以内に建替えのために除却した普通建築物の全部又は一部で、その指定の際まだ建替えのための新築又は改築の工事に着手していないものの床面積
ニ 緑地保全地区の指定前に災害により滅失した普通建築物の全部又は一部で、その指定の際まだ復旧のための新築又は増築の工事に着手していないものの床面積
ホ 次に掲げる普通建築物が、いずれも住宅(住宅と事務所、店舗その他これらに類する用途を兼ねるものを含む。)又は住宅部分を有するものであるときは、90u
(一)緑地保全地区の指定の際に存した普通建築物、その指定前に最後に存した普通建築物又はその指定の際現に新築、改築若しくは増築の工事中の普通建築物
(二)当該新築に係る第一-一ニ(二)の普通建築物又は当該増築前の普通建築物
(三)当該新築又は増築後の普通建築物
二 この基準における「床面積」には、建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第1条第2号に規定する地階の床面積は、算入しないものとする。
(2)その他
 
[1] 都市緑地保全法第5条第1項ただし書の「すでに着手していた行為」には、次のものが含まれる。
ア 鉱業法第63条(同法第87条において準用する場合を含む。)の規定により、経済産業局長に届出をし、又はその認可を受けている施業案に基づいて現に鉱物の堀採に着手している鉱業権者又は租鉱権者が当該施業案に基づいて行う行為
イ 砂利採取法(昭和43年法律第74号)第16条の規定により認可されている採取計画に基づきすでに採取を行っている者が当該計画に基づき行う採取行為
 
[2] 都市緑地保全法による行為の制限は、緑地の現状維持をねらいとしたものであるので、同法第5条第3項により条件を附する場合においても、現状以上の緑地の確保を求めることは望ましくない。
 
[3] 鉄道事業者又は軌道経営者が都市緑地保全法第5条第4項の規定により都道府県知事に通知すべき範囲は、鉄道事業者にあっては、工事施行の認可、工事計画の変更の認可又は鉄道施設の変更の認可に際し、鉄道事業法施行規則(昭和62年運輸省令第6号)の規定により地方運輸局長に提出される申請書に記載される事項、軌道経営者にあっては、工事施行の認可又は工事方法書の記載事項の変更の認可に際し、軌道法施行令(昭和28年政令第258号)及び軌道法施行規則(大正12年内務・鉄道省令)の規定により都道府県知事に提出される申請書に記載される事項とすることが望ましい。
 
[4] 都市緑地保全法施行令第2条第1号、第2号、第3号及び第4号に係る施設の新設並びに同条各号のその他の施設のうち大規模なものの新設について、都市緑地保全法第5条第4項による通知があった場合には、遅滞なく、緑地保全地区担当部局は自然保護部局に協議するとともに、自然環境保全の見地からの意見を十分尊重して同条第7項の措置をとることが望ましい。
 
[5] 屋外における土石、廃棄物又は再生資源の堆積に関しては、都市緑地保全法第5条の許可を行う前に、当該許可申請の事実について、当該許可に係る緑地保全地区を管轄する都道府県警察に対し通知することが望ましい。
 
[6] 都市緑地保全法施行令第2条第27号に規定する「有線テレビジョン放送施設」には、電気通信基盤充実臨時措置法(平成3年法律第27号)第2条第5項に規定する「高度有線テレビジョン放送施設」である「建物」は含まれない。
 
  [7] 「屋外における土石、廃棄物又は再生資源の堆積」には、建設副産物を加工   し、新たな製品(建築資材等)として市場に流通しているものの堆積は含まれ   ない。
 
4.緑地保全地区における損失の補償
 
 緑地保全地区は、緑地の保全を図る目的から都市緑地保全法第3条第1項各号に掲げる要件に該当する良好な自然的環境を形成している地域が指定されるものであり、かつ、その規制の内容も緑地を良好な状態で保全しようとする趣旨から現状変更行為を実質的に相当程度制限するものであるので、行為の許可を受けることができないために損失を受けた者に対しては、その損失を補償する必要がある場合のあることを考慮し、損失補償の制度が設けられた。よって都道府県は、同法第7条の規定に従い、当該損失を受けた者に対して通常生ずべき損失を補償しなければならない。ただし、次の場合には同法第7条の規定による損失補償は行われない。
 
(1)都市緑地保全法第5条第1項の許可の申請に係る行為について、風致地区との重複等他の法律(当該許可等を受けることができないため損失を受けた者に対して、その損失を補償すべきことを定めているものを除く。)の規定により許可を必要とされている場合において、許可その他の処分の申請が却下されたとき、又は却下されるべき場合に該当するとき。
(2)都市緑地保全法第5条第1項の許可の申請に係る行為が、補償金目あての行為である等社会通念上緑地保全地区を指定した趣旨に著しく反すると認められるとき。
 (1)の趣旨に鑑み、同法第7条の規定による損失補償の請求があった場合において、他の法律等の許可その他の処分の申請をしていないときは、当該申請が却下されることが明らかな場合を除き、(1)の却下されるべき場合に該当するか否かについて関係機関と調整することが望ましい。
 
5.緑地保全地区における土地の買入れ等
 
(1)買入れが認められる場合
 
 緑地保全地区内の土地については、次の要件のすべてに該当する場合に、その買入れが認められる。
[1] 緑地の保全上必要があると認められるもの
 この場合において「保全上必要があると認められる」とは、行為の規制のみでは管理の万全を期し難く、地方公共団体が取得していなければ保全できないと認められる場合である。
[2] 都市緑地保全法第5条第1項の許可を受けることができない場合
 これは、当該土地の所有者が、当該許可を受けることができない場合をいうものであり、たとえば、当該土地の借地権者等が当該許可を受けることができなかった場合は、これに該当しない。
[3] 当該土地の利用に著しい支障を来すこととなる場合
 この場合も、当該土地の所有者が、当該土地の利用に著しい支障をこうむる場合をいうものである。また、「土地の利用に著しい支障を来すこととなる」かどうかの判断にあたっては、当該土地の社会的な利用価値(土地柄)からみて、利用が限定されており、通常は、誰でも申請行為と類似の利用をするであろうと思われるような場合を客観的に判断することが望ましい。
[4] 土地の所有者が、当該土地を都道府県において買い入れるべき旨の申出を行った場合
 
(2)価額の評価
 
 土地を買い入れる場合において、その価額は、地価公示価格又は不動産鑑定士等の鑑定価格等を考慮して算定された適正な価額によることが望ましい。
 
(3)損失の補償と土地の買入れ
 
 都市緑地保全法第8条の買入れの規定は、(1)の[1]から明らかなように、土地所有者の権利救済のみを目的としたものではなく、同法第7条の補償の規定とは別個の趣旨の規定であるから両規定は同一の土地について別途に適用されるものである。
 
(4)管理台帳の作成等
 
 都市緑地保全法第8条の規定により買い入れた土地については、管理のために必要な台帳を作成するとともに、同法の目的に照らし、緑地保全の趣旨に沿うよう管理することが望ましい。
 なお、管理にあたっては、緑地保全地区担当部局と林務担当部局は十分協議協力して行うことが望ましい。
 
(5)農地等を買い入れる場合
 
 都道府県又は市町村が緑地保全地区内の農地等を買い入れる場合には、農地法の規定に基づき買入れを行うものである。
 
(6)税務手続
 
 都市緑地保全法第8条第1項又は第3項の規定による土地の買入れに係る土地等を譲渡した個人又は法人が、所得税又は法人税の課税上、特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合の 2,000万円控除の特例の適用を受けようとする場合には、租税特別措置法(昭和32年法律第26号。以下「措置法」という。)第34条第4項及び第65条の3第3項の規定に基づき、租税特別措置法施行規則(昭和32年大蔵省令第15号。以下「措置規則」という。)第17条第1項第3号ロ又は第22条の4第1項第3号ロに規定する書類を確定申告書等(法人税の確定申告書及び中間申告書を含む。)に添付する必要があることとされていることから、地方公共団体は、当該地方公共団体の長の「土地等を都市緑地保全法第8条第1項又は第3項の規定により買い取った旨を証する書類」(別添様式第1)を当該買入れに係る土地等を譲渡した個人又は法人に交付することが望ましい。
 地方公共団体は、土地の買入れを行った場合には、1月から3月まで、4月から6月まで、7月から9月まで及び10月から12月までの各期間に支払うべき当該買入れに係る対価についての所得税法(昭和40年法律第33号)第225条第1項第9号の規定による調書を、当該各期間に属する最終月の翌月末日までに、当該買入れを行った営業所、事業所その他の事業場の所在地の所轄税務署長に提出しなければならない。
 
(7)市町村が買い入れる場合
 
 緑地保全地区に関する都市計画の決定、土地の買入れ、買い入れた土地の管理については、緑地保全地区制度の円滑な運用を図るため、各都道府県及び関係市町村においてその役割分担等についてあらかじめ十分検討することが望ましい。
 また、緑地保全地区の行為の許可については、事務の円滑な実施に支障がない場合には、都道府県と市町村の協議により、地方自治法による権限の委任を行うことが望ましい。
 市町村が土地の買入れを行う場合は、以下の事項に留意することが望ましい。
  [1] 市町村が緑の基本計画に都市緑地保全法第2条の2第2項第3号ロ(2)の事項を定める場合にあっては、地域の実情に応じた土地の買入れが行われるよう、同法第8条の規定に基づく土地の買入れに係る都道府県と市町村の役割分担及び同法第9条に基づく買い入れた士地の管理の方針等について、都道府県と市町村は事前に十分協議した上で定める。
  [2] 土地の買入れの申出があった場合は、市町村については、買入れを希望する市町村に限り相手方として定めることができるものであり、買入れを希望する市町村が存しないときは、都道府県が当該土地を買い入れる。
  [3] 一の土地の買入れの申出に対して都道府県、市町村の両者が買入れを希望する場合には、当該買入れの対象となる土地の位置、規模、買入れ後の管理のあり方等を勘案して当該土地の買入れの相手方として定める。
 
(8)管理等
 
 都道府県又は市町村が買い入れた土地については、都道府県又は市町村において管理のために必要な台帳を作成するとともに、都市緑地保全法第9条の規定に基づき適正に管理することが望ましい。
 
(9)緑地管理機構が買い入れる場合
 
 緑地管理機構が緑地保全地区内の土地を買い入れる場合の運用指針は別途定める。
 
14.生産緑地地区
 
1.趣旨
 
(1)良好な都市環境の形成に資する農地等の保全
 
 生産緑地地区は、市街化区域内において緑地機能及び多目的保留地機能の優れた農地等を計画的に保全し、もって良好な都市環境の形成に資することを目的として指定するものである。生産緑地地区では、農地等として維持するため建築物の建築等の行為が規制され、指定後30年経過後又は主たる従事者の死亡等の場合に農地所有者が市町村長に対し買取りを申し出ることができる。
 
(2)「都市における農地等の適正な保全」の趣旨
 
 生産緑地法(昭和49年法律第68号)第2条の2の「都市における農地等の適正な保全」とは、周辺の公園、緑地等の整備状況にかんがみ、農地等の持つ緑地機能を都市計画上積極的に評価し、優れた緑地機能を有する市街化区域農地等を計画的に保全しようとする旨の都市計画の基本的な考え方に従って、生産緑地地区の指定、農地等としての管理のための援助、生産緑地の買取り、買い取った後の公園、緑地等としての整備等の同法の運用を行うべきことを意味するものである。
 また、生産緑地は、営農行為等により初めて緑地としての機能を発揮する農地等の性格から農地所有者等の営農等の継続を前提としているので、農林漁業に従事している者の意向を十分に尊重することが望ましい。
 
2.生産緑地地区の決定・変更
 
(1)生産緑地地区の計画の考え方
 
 都市計画において、保全するものとして区分する市街化区域農地等については、生産緑地地区の指定を行うほか、市街化調整区域への編入を行うことが望ましい。なお、生産緑地地区の都市計画の決定については以下によることが望ましい。
[1] 生産緑地地区の指定は、当該都市計画区域における土地利用の方針、公園、緑地その他の公共空地の整備の現況及び将来の見通し等各都市の実情を勘案して、都市における農地等の適正な保全を図ることにより農林漁業と調和した良好な都市環境の形成に資するよう行われるべきものである。
[2] 生産緑地地区の具体的な指定基準の適用については、次によることが望ましい。
ア 生産緑地地区の対象となる生産緑地法第2条第1号の「農地等」とは、現に農業の用に供されている農地若しくは採草放牧地、現に林業の用に供されている森林又は現に漁業の用に供されている池沼をいい、これらに隣接し、かつ、これらと一体となって農林漁業の用に供されている農業用道路、農業用水路及び同法第8条において許容される施設の立地する土地を含むものである。また、何らかの理由により一時的に耕作されていない状態のいわゆる休耕地であっても、容易に耕作の用に供することができるようなものであれば、「農地等」に含まれる。
 ただし、現況農地等であっても、農地法第4条第1項第5号又は同法第5条第1項第3号の規定による届出が行われているものは、生産緑地法第8条において許容される施設に転用される場合を除き、生産緑地地区の指定を行うことは望ましくない。
 なお、「5畝」以上あると認められる農地等については、他の要件を満たせば、農業経営、農地所有の実態等を勘案して、生産緑地地区に指定されるよう配慮することが望ましい。
イ 生産緑地法第3条第1項の「一団のものの区域」とは、物理的に一体的な地形的まとまりを有している農地等の区域をいう。
 ただし、道路、水路等(農業用道路、農業用水路等を除く。以下同じ。)等が介在している場合であっても、それらが小規模なもので、かつ、これらの道路、水路等及び農地等が物理的に一体性を有していると認められるものであれば、一団の農地等として取り扱うことが可能である。この場合、介在する道路、水路等は生産緑地地区の面積には含まれない。なお、小規模として取り扱う道路、水路等の幅員規模としては、6m程度が上限であるが、各都市計画区域の実情に応じ、適宜判断することが望ましい。
ウ 生産緑地法第3条第1項第1号の「農林漁業と調和した都市環境の保全」とは、市街化区域農地の持つ緑地機能の高まりに応え、農地等を農地等として計画的に保全し活用していくことが合理的な土地利用の確立にも資することから、同号の「良好な生活環境の確保」の例示として追加したものであり、その積極的・計画的な保全を図るよう生産緑地地区の指定を行うことが望ましい。
エ 生産緑地法第3条第1項第1号の「公共施設等の敷地の用に供する土地として適しているもの」とは、公共施設等の敷地とすることができる土地を広く意味するものであり、公共施設等の予定地としてあらかじめ保全する必要がある土地のみに限定する趣旨ではない。
オ 生産緑地法第3条第3項の「主要な都市施設」には、鉄道等の交通施設が含まれる。
[3] 三大都市圏の特定市の市街化区域農地等に係る固定資産税等の課税の適正化と併せた生産緑地地区の指定作業については、平成4年末に完了したところであるが、平成4年の時点では措置法第70条の4第2項第3号に規定する特定市街化区域農地等(以下「特定市街化区域農地等」という。)となっておらず生産緑地地区の指定について農地所有者等の意向把握をしていない場合及び他の制度に基づき指定の要請ができる場合については、例えば、以下に示すように例外的に、農地所有者等の意向把握に基づく生産緑地地区の指定を今後も行うことが考えられる。
ア 土地区画整理事業等の実施に伴う市街化区域への編入により新たに市街化区域農地等となった場合(この場合、市街化区域編入時に限る。)
イ 三大都市圏の町村が市となったために新たに特定市街化区域農地等となった場合(特定市街化区域農地等となった時に限る。この場合、特定市となる町村においては、市街化区域農地等の現況の把握、農地所有者等の関係権利者の把握、改正された生産緑地地区制度の周知措置、農地所有者等の意向把握等の手続を行い、特定市となった年の12月末までにできるだけ速やかに生産緑地地区の指定を行う必要がある。)
ウ 大都市法第10条に規定する特定土地区画整理事業及び同法第2条に規定する住宅街区整備事業の実施により集合農地区に換地される農地等について同法第106条に基づく生産緑地地区に関する都市計画についての要請が行われた場合
エ 農住組合法(昭和55年法律第86号)第9条に規定する交換分合計画において定められた一団の営農地等の区域に属する農地等について同法第88条に基づく生産緑地地区に関する都市計画についての要請が行われた場合
 なお、このほか、地域の実情を踏まえた都市計画決定権者の判断により生産緑地地区の指定を行うことができるものである。
 
(2)生産緑地地区の計画にあたっての留意点
 
[1] 次に掲げる土地の区域を生産緑地地区に指定することは、他の土地利用との調整を図る上で望ましくない。
ア 高度利用地区、特定街区、遊休土地転換利用促進地区等を活用して、土地の有効・高度利用を図る方策を講じようとしている地区。ただし、当該地区指定の目的の達成のための土地利用転換を図るうえで、都市計画上必要と認められる場合には、この限りではない。
イ 森林法第25条第1項の規定により指定された保安林、同法第41条の規定により指定された保安施設地区、同法第29条に規定する保安林予定森林及び保安林整備臨時措置法第2条第1項に規定する保安林整備計画において保安林の指定が計画されている森林
ウ 鉱業法第63条(同法第87条において準用する場合を含む。)に基づいて施業案の届出をし、又は認可を受ける等鉱業開発計画が具体化し、それに基づき地表における土地の形質の変更等が行われることが確実な区域
エ 砂利採取法第16条又は採石法(昭和25年法律第291号)第33条に基づいて認可を受けた採取計画に係る区域
オ 臨時石炭鉱害復旧法(昭和27年法律第295号)による復旧工事の施行が予定されている区域
カ 地方税法(昭和25年法律第226号)附則第29条の5第1項に規定する宅地化のための計画策定がなされたことにつき市町村長の確認を受けた土地
 
[2] 生産緑地地区に関する都市計画を定めようとするときは、市町村の都市計画担当部局は、あらかじめ、農林水産担当部局、自然環境を保全する観点から環境保全担当部局及び農業委員会と緊密な連絡調整を行うとともに、港湾隣接地域及び臨港地区並びにこの周辺地域において生産緑地地区を定めようとするときは、生産緑地の適正な保全と、港湾の秩序ある整備と適正な運営との整合を図る観点から、あらかじめ、港湾管理者に協議することが望ましい。
[3] 生産緑地地区に関する都市計画の同意をするにあたっては、都道府県の都市計画担当部局は、あらかじめ、農林水産担当部局及び自然環境を保全する観点から環境保全担当部局と緊密な連絡調整を行うことが望ましい。
 
[4] 生産緑地地区に関する都市計画の決定、変更又は廃止(一団性の認定を含む。)に際しての農地等の認定については、農業委員会の意見を聴くことが望ましい。
 
[5] 生産緑地地区に関する都市計画の案について農地等の所有者等の関係権利者の同意を要するのは、生産緑地地区においては相当期間にわたって農業経営等の継続が期待されており、その主観的条件を担保する必要があることによるものであるので、書面により同意を得ることが望ましい。
 なお、生産緑地地区に関する都市計画の案に対する同意を得るに際し、農林水産担当部局、農業委員会及び農業協同組合の協力を求めることが望ましい。
 
[6] 生産緑地地区に関する都市計画を定めようとするときは、あらかじめ、重要文化財の所在する土地、史跡名勝天然記念物に指定された土地等の文化財所在地の範囲等の関係につき十分調整することが望ましい。
 
(3)関連する制度との関係
 
[1] 他の都市計画との関係
ア 土地区画整理事業との重複
@ 土地区画整理事業の施行区域又は施行地区においては、都市計画決定権者の判断により、生産緑地地区の指定が可能である。また、生産緑地地区の指定は、土地区画整理事業の施行を妨げるものではなく、生産緑地地区を含めた土地の区域について土地区画整理事業に関する都市計画決定を行うこと又は土地区画整理事業を施行することは可能である。
A 土地区画整理事業の仮換地指定又は換地処分により生産緑地地区内の土地について位置、区域又は面積に変更を生じる場合には、これに併せて生産緑地地区の指定変更を行うべきである。
B 土地区画整理事業が施行された土地の区域等においても、生産緑地地区の指定が可能である。
C 土地区画整理事業において道路、公園等の公共施設等を整備する場合には、当該公共施設等の整備に係る行為は、生産緑地法第8条第4項に規定する「公共施設等の設置又は管理に係る行為」に該当するものであり、あらかじめ市町村長に通知すれば足りる。
D 相続税等の納税猶予を受けている農地等を含む区域について、土地区画整理事業による換地処分が行われた場合には、換地処分があった日から一月以内に租税特別措置法施行令(昭和32年政令第43号)第40条の6又は第40条の7の規定により納税地の税務署長の承認を受ければ、引続き納税猶予が継続される。
 また、土地区画整理事業により換地処分が行われた土地等については、譲渡所得については措置法第33条の3又は第65条により、譲渡がなかったものとみなされる。
E 市町村は、農住組合が行う土地区画整理事業の円滑な実施に十分配慮するとともに、農住組合の行う土地区画整理事業による一団の営農地等の全部又は一部の区域について、農地所有者等から生産緑地地区の指定の要望があり、当該区域が生産緑地地区の要件を満たす場合には、都市計画において速やかに生産緑地地区の指定を行うよう配慮することが望ましい。
イ 都市計画施設との重複指定
 道路、公園等の都市計画施設の区域内においては、当該施設の整備に支障を及ぼさない範囲内で、都市計画決定権者の判断により、生産緑地地区の指定が可能である。なお、原則として、当該区域内において生産緑地地区に指定されていた農地等は、当該都市計画施設についての都市計画法第59条の認可又は承認が行われた後に生産緑地地区から除外するよう都市計画の変更を行うものである。
ウ 生産緑地地区に関する都市計画の決定は、直ちに既存の市街化区域を拡大する理由とはならないものである。
 
[2] 緑の基本計画との関係
ア 緑の基本計画における施策は、都市における樹林地、草地、水辺地、岩石地若しくはその状況がこれらに類する土地が単独で、若しくは一体となって良好な自然環境を形成している緑地を対象とするものであり、生産緑地地区も対象となるものである。
イ 「緑地の保全及び緑化の推進のための施策に関する事項」では、特に三大都市圏の特定市について、生産緑地地区に係る買取りの方針や市民農園としての整備等生産緑地の保全・活用方針を定めることが望ましい。
 
[3] 市民農園との関係
ア 市街化区域内農地に係る市民農園は、農地の有する緑地機能を活かしつつ都市住民のレクリエーション需要に対応するものであるため、生産緑地地区制度とその目的等の一部を異にするものであるが、良好な都市環境の形成を図るという点で目的が一致していること、生産緑地を農地として管理していく上で市民農園は有用な手法であること等から、生産緑地地区の指定を積極的に行うことが望ましい。
イ 市民農園について生産緑地地区の指定を行う場合には、当該市民農園の運営方式(市民農園整備促進法(平成2年法律第44号)第2条第2項第1号イ及びロのいわゆる「特定農地貸付け方式」及び「農園利用方式」をいう。)に従い、生産緑地法第3条第2項の規定により農地についての所有権、対抗要件を備えた地上権若しくは賃借権又は登記した永小作権等を有する者等の同意を得るものとする。
 
[4] その他留意すべき事項
 空港周辺地区においては、農地等が航空機騒音による障害の防止と周囲の環境の保全に寄与することに鑑み、生産緑地地区制度の活用を図ることが望ましい。
 
(4)生産緑地地区に関する都市計画の変更
 
[1] 生産緑地地区に関する都市計画の変更は、都市計画上の要請に基づき必要が生じた場合に限定されるものである。また、営農等を停止した場合であっても、直ちに生産緑地地区に関する都市計画の変更を行うものではない。
 
[2] ただし、生産緑地地区内の農地等の全部又は一部が公共施設等の敷地の用に供された場合には、当該部分を生産緑地地区から除外するための都市計画の変更を行うものである。この場合、残存する部分について都市計画の変更を行うのは、残存する農地等のみでは生産緑地地区としての要件を欠くに至るときに限定される。なお、この「公共施設等」には、都市計画法第11条第1項第8号に掲げる一団地の住宅施設が含まれる。
 
[3] 交換分合等による土地の集合化により新たに一団の農地等が生じ、当該一団の農地等が生産緑地として評価できる場合については、都市計画決定権者の判断により生産緑地地区に関する都市計画の変更が可能である。
[4] 都市計画施設を都市計画法第59条の認可又は承認によらず当該施設の管理者等がその管理法に基づき整備する場合は、当該施設の区域決定の公示等が行われることによって同条の認可又は承認が行われた場合とみなし、当該土地を生産緑地地区から除外するよう都市計画の変更を行うものである。
 
(5)旧法からの経過措置
 
 平成3年の改正前の生産緑地法(以下「旧生産緑地法」という。)に基づく第一種生産緑地地区及び第二種生産緑地地区(以下「旧生産緑地地区」という。)は、原則として廃止されている。現行法に基づく生産緑地地区に指定する場合は、土地所有者の同意を改めて確認すれば足り、指定要件の確認は必要ない。
 なお、同意が得られない場合、旧生産緑地地区については都市計画法上は生産緑地法の一部を改正する法律(平成3年法律第39号)附則第4条に基づき、改正された生産緑地法に基づく生産緑地地区とみなされている。ただし、以下のような取扱いとなるので留意することが望ましい。
ア 生産緑地地区内の行為の制限については、改正された生産緑地法の規定による。すなわち、「農林漁業に従事する者の休憩施設」及び「その他政令で定める施設」の設置等に係る行為についても許可対象行為となる。
イ 買取りの申出ができない期間については、旧生産緑地法と同じ取扱いとなること。すなわち、旧生産緑地法に基づく第一種生産緑地地区については10年、第二種生産緑地地区については5年となる。
ウ 旧生産緑地法に基づく第二種生産緑地地区について、買取りの申出後行為の制限が解除されるまでの期間については、旧生産緑地法と同じ取扱いとなる。すなわち、その期間は「1月」となる。
エ 旧生産緑地法に基づく第二種生産緑地地区については、当該第二種生産緑地地区に関する都市計画に定められた当該都市計画が失効すべき日は、引き続き有効である。
 
3.生産緑地地区内における行為の制限
 
(1)生産緑地地区は、環境機能と多目的保留地機能とを併せ有する市街化区域農地等について指定されるものであり、生産緑地は、公共施設等の敷地に供される場合を除き、農地等として保全することが義務付けられる地域であるので、当該地域内における行為については、農林漁業を営むために必要な一定の行為で生活環境の悪化をもたらすおそれがないと認められるものに限り、許可をすることができるものであり、その認定については次による。
[1] 生産緑地法第8条第2項の「生活環境の悪化をもたらすおそれがない」とは、悪臭等の発生源となるおそれがないことをいうものであり、その発生するおそれがある施設であっても防止のための必要な措置が採られているものであれば生活環境の悪化をもたらすおそれがないと認められる。
[2] 生産緑地法第8条第2項第1号の「生産又は集荷の用に供する施設」とは、ビニールハウス、温室、畜舎、育種苗施設、搾乳施設等農林漁業の生産の用に供される施設又は集乳施設、集果施設等農林漁業による生産物を集荷する施設をいう。
[3] 生産緑地法第8条第2項第2号の「生産資材の貯蔵又は保管の用に供する施設」とは、サイロ、種苗貯蔵施設、農機具等の収納施設等の農林漁業の生産のための資材の貯蔵又は保管の用に供する施設をいう。
[4] 生産緑地法第8条第2項第3号の「処理又は貯蔵に必要な共同利用施設」とは、選果場、ライスセンター(米麦乾燥場)等農林漁業による生産物の処理又は貯蔵のため共同で利用される施設をいう。
[5] 生産緑地法第8条第2項第4号の「農林漁業に従事する者の休憩施設」とは、休憩所、あづまや等農作業の準備を行い、作業の合間に休憩を取るために必要な施設をいうものであり、専ら市民農園利用者が利用する休憩施設を含む。
[6] 生産緑地法第8条第2項第5号の「政令で定める施設」に係る生産緑地法施行令(昭和49年政令第285号)第4条の「主として都市の住民の利用に供される農地で、相当数の者を対象として定型的な条件で、レクリエーションその他の営利以外の目的で継続して行われる農作業の用に供されるもの」とは、いわゆる市民農園を指すものである。また、同法施行令第4条第1号の「農作業の講習の用に供する施設」とは、講習室、植物展示室、資料閲覧室、教材園等市民農園の利用者に対し適正な農地の利用を確保するため必要な講習を施すために必要な施設をいうものであり、同法施行令第4条第2号の「管理事務所その他の管理施設」とは、具体的には市民農園の管理事務所、管理人詰所、管理用具置場、ごみ処理場等をいう。
[7] 市民農園を開設する者が生産緑地法第8条第2項第4号又は第5号に掲げる施設について同条第1項の許可を受ける場合に、当該施設に附帯する施設として専ら市民農園利用者が利用する駐車場の整備を行うことができる。
[8] なお、前記[5]、[6]及び[7]にいう市民農園とは、市民農園整備促進法第7条による開設の認定を受けたものに限定されるものではない。
 
(2)市町村長に対して生産緑地法第8条第1項の許可の申請があった場合には、市町村の都市計画担当部局は農業委員会に通知することが望ましい。なお、農業委員会は生産緑地地区内において農地法第4条に基づく届出があった場合には、市町村の都市計画担当部局に通知するものとされている。
 
(3)市町村長が生産緑地法第8条第7項の規定により助言又は勧告をしようとするときは、あらかじめ、市町村の都市計画担当部局は、環境保全担当部局に協議することが望ましい。
 
(4)生産緑地法第8条に規定されているように、生産緑地地区内における公共施設等の設置又は管理に係る行為については、市町村長の許可を要しないこととされているが、地区計画等による地区施設及び開発許可等による施設で市町村に帰属又は管理されることが確実なものについても、公共施設等として取扱う。
 
4.農地等の管理に関する措置
 
(1)市町村長に対する助言等の求め
 
 生産緑地地区においては、生産緑地について所有権等を有する者は当該生産緑地を農地等として管理しなければならないという能動的な責務が生じるが、農林漁業が継続され、農地等が適正に管理されるために行政側が当該所有者等を支援する必要があることから、生産緑地について使用又は収益をする権利を有する者は、市町村長に対し、当該生産緑地を農地等として管理するため必要な助言、土地の交換のあっせん、市民農園の開園に関する情報の提供等の援助を求めることができるものであり、その積極的対応を図ることが望ましい。
 
(2)農業委員会等の協力
 
 市町村長は、生産緑地(農地又は採草放牧地に限る。)について使用又は収益をする権利を有する者からの求めに応じて当該生産緑地を農地等として管理するため必要な助言、土地の交換のあっせんその他の援助を行う場合及び農業に従事することを希望する者が生産緑地を取得できるようにあっせんを行う場合には、農業委員会に協力を求めることが望ましい。なお、農業協同組合についても同様の観点から積極的に協力を求めることが望ましい。
 
(3)生産緑地の利活用によるまちづくりの推進
 
[1] 生産緑地法の趣旨に鑑み、生産緑地として指定された農地については緑地としての機能が維持されるよう、農地所有者等の意向を踏まえつつ適正に保全するとともに、都市住民との交流の場としての活用を積極的に推進することが望ましい。
 
[2] 地区特性に即して、農地所有者等の意向を踏まえつつ、生産緑地地区の集約等を土地区画整理事業等により実施することが可能であるため、必要に応じ活用することが望ましい。
 
5.生産緑地の買取り
 
(1)生産緑地法第10条の生産緑地の買取りの申出
 
 生産緑地地区に関する都市計画は、生産緑地の所有者等の同意を得て定められるものであるが、同意の段階において一般的に予測可能な期間を経過した場合又は明らかな事情変更があった場合には、その後の農林漁業の継続が困難になることが一般的に予想され、しかも生産緑地地区における行為制限のため、市場における譲渡性に欠けることに鑑み、生産緑地の所有者が市町村長に対し、時価で当該生産緑地を買い取るべき旨を申し出ることができるものとして権利救済を図ったものである。この趣旨に鑑み、生産緑地法第10条の買取りの申し出があった場合には次によるものとする。
[1] 「農林漁業の主たる従事者」とは、その者が従事できなくなったため、当該生産緑地における農林漁業経営が客観的に不可能となるような場合における当該者をいう。なお、生産緑地法施行規則(昭和49年建設省令第11号)第2条により、主たる従事者が65歳未満の場合はその従事日数の8割以上、65歳以上の場合はその従事日数の7割以上従事している者も含まれる。
 また、「主たる従事者」の認定にあたっては、同法施行規則別記様式で定めたように当該生産緑地の所在地を管轄する農業委員会の証明書を添附させるとともに、その者が従事できなくなったため、当該生産緑地における農林漁業経営が客観的に不可能となるかどうかを適正に判断することが望ましい。
[2] 「農林漁業に従事することを不可能にさせる故障」については、生産緑地法施行規則第4条では「両手の手指若しくは両足の足指の全部若しくは一部の喪失又はその機能の著しい障害」及び「1年以上の期間を要する入院その他の事由により農林漁業に従事することができなくなる故障として市町村長が認定したもの」が規定されているが、「その他の事由」としては、主たる従事者が養護老人ホーム(老人福祉法(昭和38年法律第133号)第20条の4)や特別養護老人ホーム(同法第20条の5)に入所する場合や著しい高齢となり運動能力が著しく低下した場合等も含まれる。
 なお、その認定にあたっては、医師の診断書、院長の証明書等により農林漁業の継続が事実上不可能であるかどうかを適正に判断することが望ましい。
[3] 生産緑地地区に指定された農地等の一部の所有者から買取りの申出がなされ、公共施設等の敷地の用に供された場合には、当該部分を生産緑地地区から除外するための都市計画の変更を行うとともに、残存する農地等のみでは生産緑地地区の指定要件を欠くに至る場合には、当該農地等を生産緑地地区から除外するような都市計画の変更を行うものとする。なお、当該生産緑地地区の存続が良好な都市環境の形成に必要であると判断される場合には、当該生産緑地地区の継続が図られるよう、買取りの申出のあった生産緑地において農林漁業に従事することを希望する他の者がこれを取得できるようあっせんに努めることが望ましい。
[4] 生産緑地法第11条第2項の「土地利用の状況」とは、公共公益施設の利用も含む広義の土地利用についての現在及び将来の状況をいう。
 
(2)生産緑地法第15条の生産緑地の買取り希望の申出
 
 生産緑地法第15条の生産緑地の買取り希望の申出は、同法第10条の買取り申出ができない場合であっても、疾病等により農林漁業に従事することが困難である等の特別の事情があるときは、買取り希望を申し出ることができることとし、権利者の一層の保護を図るとともに、公有地の拡大の推進にも資することとしたものである。この趣旨に即し、市町村長は、当該買取り希望の申出がやむを得ないものであると認めるときには、当該生産緑地を自ら買い取り、又は地方公共団体若しくは当該生産緑地において農林漁業に従事することを希望する者がこれを取得できるようあっせんに努めることが望ましい。
 
(3)生産緑地の買取り
 
[1] 公共施設等を設置しようとする者が生産緑地地区内の土地を公共施設等の用に供するため、当該生産緑地の取得を地方公共団体等に申し出た場合には、当該地方公共団体等は、支障がない限りその申出を受け入れることが望ましい。
 また、市民農園を開設する等農地として利用する目的で生産緑地の買取りを行う場合にあっては、農業委員会に事前に通知し、十分な調整を図るとともに、当該農地の管理については農業委員会と十分調整することが望ましい。この場合、農業協同組合にも協力を求めることが望ましい。
 
[2] 生産緑地法第11条第1項の「時価」とは、不動産鑑定士、官公署等の公正な鑑定評価を経た近傍類地の正常な取引価額や公示価格を考慮して算定した相当な価額によるものとすることが望ましい。
 
[3] 買い取られた土地については、生産緑地法の趣旨に鑑み、公園、緑地その他の公共空地の敷地として用いることを優先すべきであるが、この場合、公共事業の実施等により営農を継続することが困難となった土地等の代替地として用いることも考えられる。
 なお、買い取られた土地を公共事業の代替地として用いる場合は、公園、緑地その他の公共空地の整備のための代替地として用いることを優先することとし、この場合、生産緑地地区に関する都市計画について必要な変更を行うとともに、当該土地の利用にあたっては、土地区画整理事業の実施、地区計画等の活用等により、計画的な市街地の形成に配慮することが望ましい。ただし、公共事業の代替地として供し得る土地は、当該土地の周辺に存する生産緑地の緑地環境に悪影響を及ぼさないものであることが重要である。
 
6.その他の事項
 
 平成3年度の税制改正等によって、市街化区域農地等について、以下のとおり課税の適正化等が図られており、生産緑地地区制度の運用にあたっては、このことに十分留意することが望ましい。
 
(1)相続税及び贈与税
 
 租税特別措置法の一部を改正する法律(平成3年法律第16号)により、平成4年1月1日から、特定市街化区域農地等については、相続税及び贈与税の納税猶予の特例の適用対象から除くこととされているが、生産緑地地区内にある農地又は採草放牧地については、措置法第70条の4第2項第4号に規定する都市営農農地等(以下「都市営農農地等」という。)として、相続税及び贈与税の納税猶予の特例の適用対象とされる。
 なお、都市営農農地等を有する農業相続人については、同法第70条の6第5項により、相続税の納税猶予期限は、その死亡の日までとされている。
 
(2)所得税
 
 生産緑地法第11条第1項、第12条第2項又は第15条第2項の規定に基づき、生産緑地地区内の土地が地方公共団体等に買い取られる場合には、譲渡所得の課税についてその譲渡益から 1,500万円の特別控除が認められている。
 
(3)不動産取得税
 
 特定市街化区域農地等につき、都市営農農地等として、贈与税の納税猶予の対象となっている生産緑地地区内にある農地又は採草放牧地については、不動産取得税の徴収猶予の特例の適用対象とされる。
 
(4)固定資産税及び都市計画税
 
 地方税法及び国有財産等所在市町村交付金法の一部を改正する法律(平成3年法律第7号)により、固定資産税及び都市計画税についての長期営農継続農地制度は、平成3年限りで廃止され、平成4年度より三大都市圏の特定市の区域内に存する市街化区域内農地については、生産緑地地区内の農地等(田又は畑という。)を除き、原則として宅地並み課税となっている。
 
(5)地価税
 
 地価税については、地価税法(平成3年法律第69号)第6条第5項により、特定市街化区域農地等は課税対象とされ、生産緑地地区内にある農地又は採草放牧地は非課税とされている。なお、現在地価税の課税は凍結されている。
 
(6)市街化区域農地等に係る贈与税及び相続税の納税猶予の特例適用に関する証明事務等の取扱いについて
 
[1] 証明事務について
 措置法第70条の4又は第70条の6の規定による三大都市圏の特定市の市街化区域農地等に係る贈与税及び相続税の納税猶予の制度の適用に関し、市長が証明を行うことを必要とする事項は、次のとおりである。
 なお、証明に係る申請にあたっては、農地等の地目、面積及びその所在地番を記載させることが望ましい。
1) 農地等についての贈与税の納税猶予に係るもの
ア 措置法第70条の4第1項の規定による農地又は採草放牧地(以下 1) において「農地等」という。)が特定市街化区域農地等でない旨の証明(措置規則第23条の7第4項)。
 すなわち、これは、都市営農農地等であること又は市街化調整区域内にあることを証明するものである。この場合、都市営農農地等のうちに、生産緑地法の一部を改正する法律附則第4条第2項の規定により生産緑地地区に関する都市計画とみなされる第二種生産緑地地区に関する都市計画により生産緑地地区となっている農地又は採草放牧地がある場合には、その第二種生産緑地地区に関する都市計画の決定又は変更の日及び都市計画の失効の日を記載しなければならない(措置規則第23条の7第3項第6号括弧書)ので、留意することが望ましい。なお、証明を行う場合の様式は、原則として別添様式第2「納税猶予の特例適用の農地等該当証明書」による。(別添様式第2)
イ 措置法第70条の4第14項又は第15項の規定による税務署長の承認を受けた場合において、譲渡等の対価の全部又は一部をもって取得した特定市に所在する農地又は採草放牧地が特定市街化区域農地等でない旨の証明(措置規則第23条の7第20項又は第21項)。
 証明の内容は、アと同じである。なお、証明を行う場合の様式は、原則として別添様式第2「納税猶予の特例適用の農地等該当証明書」による。
ウ 措置法第70条の4第4項に規定する告示があった日又は事由が生じた日から1年を経過する日までに措置法第70条の4第15項に規定する税務署長の承認に係る特定市街化区域農地等に係る農地等の全部又は一部が都市営農農地等に該当することとなった旨の証明(措置規則第23条の7第22項)。
 この場合は、それぞれの農地等について、特定市街化区域農地等に該当することとなった日及び都市営農農地等に該当することとなった日の日付並びに都市計画の決定若しくは変更又は失効の内容について証明するものとする。証明を行う場合の様式は、原則として別添様式第3「特定市街化区域農地等に係る農地又は採草放牧地の都市営農農地等該当証明書」による。(別添様式第3)
2) 農地等についての相続税の納税猶予に係るもの
ア 措置法第70条の6第1項の規定による農地又は採草放牧地(以下 2) において「農地等」という。)が特定市街化区域農地等でない旨の証明(措置規則第23条の8第3項第7号括弧書)。
 証明の内容及び様式については、1)のアと同じである。
イ 措置法第70条の6第19項又は第20項の規定による税務署長の承認を受けた場合において、譲渡等の対価の全部又は一部をもって取得した特定市に所在する農地又は採草放牧地が特定市街化区域農地等でない旨の証明(措置規則第23条の8第16項又は第17項)。
 証明の内容及び様式については、1)のイと同じである。
ウ 措置法第70条の6第8項に規定する告示があった日又は事由の生じた日から1年を経過する日までに措置法第70条の6第20項に規定する税務署長の承認に係る特定市街化区域農地等に係る農地等の全部又は一部が都市営農農地等に該当することとなった旨の証明(措置規則第23条の8第18項)。
 証明の内容及び様式については、1)のウと同じである。
エ 租税特別措置法の一部を改正する法律(平成9年法律第22号)による改正前の租税特別措置法の一部を改正する法律(平成3年法律第16号。以下この項及び次項において「平成3年一部改正法」という。)附則第19条第6項に規定する税務署長の承認を受けた同条第5項の規定によりなお効力を有するものとされる平成3年一部改正法による改正前の租税特別措置法第70条の6第1項の規定の適用を受ける同項に規定する特例農地等が、平成9年4月1日において、特定市街化区域農地等に該当する旨の証明。(租税特別措置法施行規則の一部を改正する省令(平成3年大蔵省令第17号)附則第9条第2項第1号ハ)
 この場合、平成9年4月1日において、市街化区域内に所在し、かつ、都市営農農地等に該当しない旨を証明すること。証明を行う場合の様式は、原則として1)のアの様式による。
オ 平成3年一部改正法附則第19条第6項に規定する税務署長の承認を受けた同条第5項の規定によりなお効力を有するものとされる平成3年一部改正法による改正前の租税特別措置法第70条の6第1項の規定の適用を受ける同項に規定する特例農地等が、平成3年1月1日において、特定市街化区域農地等に該当する旨の証明。
 この場合、平成3年1月1日において、市街化区域内に所在し、かつ、都市営農農地等に該当しない旨を証明すること。証明を行う場合の様式は、原則として1)のアの様式による。
 
[2] 通知事務について
 措置法第70条の4又は第70条の6の規定による贈与税又は相続税の納税猶予制度の適用を受けた三大都市圏の特定市の農地等について、都道府県知事又は市長が国税庁長官又は税務署長に対して通知を行うことが必要とされている事項は、次のとおりである。
 なお、通知は、納税猶予の特例の適用を受けている者の農地等について、下記の事項が生じた場合のみ、別添様式第4に基づき行う。納税猶予の適用を受けている者については、特例の適用があり次第、国税当局から別途通知があるので、別添様式第5及び第6に従った基本簿書を整備し、保管しておくことが望ましい。(別記様式第4、5、6)
1) 農地等についての贈与税の納税猶予に係るもの
 措置法第70条の4第1項の規定の適用を受ける農地等について、同条第26項に規定する買取りの申出等に関し、法令の規定に基づき、あっせん、届出の受理その他の行為をしたことにより、買取りの申出等があったことを知った場合には、その事実が生じた旨及び措置規則第23条の7第24項各号に掲げる事実(措置規則第23条の7第24項)。
2) 農地等についての相続税の納税猶予に係るもの
 措置法第70条の6第1項の規定の適用を受ける農地等について、同条第32項において準用する同法第70条の4第26項に規定する買取りの申出等に関し、法令の規定に基づき、あっせん、届出の受理その他の行為をしたことにより、買取りの申出等があったことを知った場合には、その事実が生じた旨及び措置規則第23条の8第20項において準用する措置規則第23条の7第24項各号に掲げる事実(措置規則第23条の8第20項)。
 
15.歴史的風土特別保存地区等
 
1.趣旨
 
 歴史的風土特別保存地区(以下「特別保存地区」という。)は、我が国往時の政治、文化の中心等として歴史上重要な地位を有する市町村を対象に、古都保存法に基づき指定された古都における歴史的風土保存区域内において、歴史的風土を保存するため当該歴史的風土保存区域の枢要な部分を構成している地域で、古都保存法第5条に規定する歴史的風土保存計画に定める基準に基づき指定される地域地区である。
 また、明日香村については歴史的風土がその区域の全部にわたって良好に維持されていることから、特に歴史的風土特別保存地区の特例として明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境の整備等に関する特別措置法(昭和55年法律第60号)(以下「明日香法」という。)第2条に規定する明日香村歴史的風土保存計画に定める基準に基づき、第一種歴史的風土保存地区(以下「第一種保存地区」という。)及び第二種歴史的風土保存地区(以下「第二種保存地区」という。)に区分されている。第一種保存地区は、歴史的風土を保存するため枢要な部分で、現状の変更を厳に抑制し、その状態において歴史的風土の維持保存を図るべき地域である。第二種保存地区は、第一種保存地区の周囲にあってこれと一体となって歴史的風土を形成している地域、随所に所在する重要な歴史的文化的遺産がその周囲の環境と一体をなして歴史的風土を形成している地域等で第一種保存地区を除く明日香村の区域について、住民生活の安定及び農林業等産業の振興に著しい支障を与えない範囲において、著しい現状の変更を抑制し、歴史的風土の維持保存を図るべき地区である。
 
2.歴史的風土特別保存地区
 
(1)行為の規制
 
[1] 特別保存地区内における行為の規制に関する古都保存法第8条の規定は、行為の規制に関する都市計画法、屋外広告物法、建築基準法、文化財保護法、森林法、自然公園法、宅地造成等規制法、その他の法律の規定の適用を妨げるものではないので、特別保存地区内における歴史的風土の保存、損失の補償等との関連上、それらの総合的な運用を図ることが望ましい。特に特別保存地区は、歴史的風土の効果的な保存に資するため風致地区と一体として活用することが望ましい。
 
[2] 特別保存地区と風致地区が重複する土地の区域における古都保存法第8条第1項の行為の許可の申請の手続については、可能な場合には当該申請と風致地区の規制による行為の許可の申請とをその受付けの窓口、申請書の様式等について一本化等をして手続の簡素化を図ることが望ましい。
[3] 古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法施行令(昭和41年政令第384号。以下「古都保存法施行令」という。)第6条第1号ニ(5)の「公衆便所」には、地方公共団体が国の補助金を得て建設する休憩所(便所、化粧洗面所並びにこれらに付帯する施設及び設備を有する建築物であって、主として外国人観光旅客の利用に供するためのもの)が含まれる。
 
(2)損失の補償
 
 特別保存地区は、古都における歴史的風土の保存を図る目的から比較的特殊な地域が選定されるものであり、かつ、その規制の内容も土地の現状をできるだけ維持保存しようという趣旨から現状変更行為を実質的に相当程度制限するものであるので、行為の許可を受けることができないために損失を受けた者に対しては、その損失を補償する必要がある場合のあることを考慮し、損失補償の制度が設けられている。よって府県は古都保存法第9条の規定に従い当該損失を受けた者に対して通常生ずべき損失を補償しなければならない。ただし、次の二つの場合には、古都保存法第9条の規定による損失補償は行われない。
[1] 古都保存法第8条第1項の許可の申請に係る行為について、例えば当該特別保存地区が風致地区と重複している場合に当該申請行為と同一の行為が風致地区による規制によって不許可となったとき等、他の法律の規定により許可を必要とされている場合において当該法律の規定により不許可の処分がなされたとき。
[2] 古都保存法第8条第1項の許可の申請に係る行為が、例えば補償目当てのものである等、社会通念上古都における歴史的風土の保存上中核となるものとして特別保存地区を指定した趣旨に著しく反すると認められるとき。
 
(3)土地の買入れ
 
 特別保存地区内の土地については、行為の規制のみでは管理の万全を期し難く、地方公共団体が取得していなければ保存できないと認められる場合があり得るので、このような保存上特に必要な場合の買入れを可能とすることとしている。このため、地方公共団体はその買い入れにあたっては、歴史的風土保存計画との関係を慎重に検討し、買い入れなければ保存に支障を来すかどうかを判断することが望ましい。
 
3.第一種歴史的風土保存地区及び第二種歴史的風土保存地区
 
(1)行為の規制にあたっての留意事項
 
[1] 第一種保存地区及び第二種保存地区における行為の規制を行うにあたっては、集落等の保全修景計画、生産活動等にあたっての土地利用に関する指針、建築物等の新築等にあたっての意匠、形態等に関する指針等を作成すること等により、歴史的風土の維持保存が、これらの計画及び指針に沿って、住民の理解と協力を十分に得ながら行われるよう配慮することが望ましい。
 
[2] 第一種保存地区及び第二種保存地区内における行為の規制に関する古都保存法第8条の規定は、行為の規制に関する都市計画法、屋外広告物法、建築基準法、文化財保護法、森林法、自然公園法、宅地造成等規制法、その他の法律の規定の適用を妨げるものではないので、第一種保存地区及び第二種保存地区内における歴史的風土の保存、損失の補償等との関連上、それらの総合的な運用を図ることが望ましい。特に第一種保存地区及び第二種保存地区は、歴史的風土の効果的な保存に資するため風致地区と一体として活用することが望ましい。
[3] 第一種保存地区及び第二種保存地区と風致地区が重複する土地の区域における古都保存法第8条第1項の行為の許可の申請の手続については、可能な場合には当該申請と風致地区の規制による行為の許可の申請とをその受付けの窓口、申請書の様式等について一本化等をして手続の簡素化を図ることが望ましい。また、このほか、森林法、文化財保護法等の他の法律に基づき届出等が必要とされている行為についても、歴史的風土担当部局は関係部局との調整を図り、簡素化、迅速化のための措置を講ずることが望ましい。
 
(2)行為の許可
 
 第一種保存地区及び第二種保存地区内における建築物その他の工作物の新築、改築又は増築等の行為の許可にあたっては、明日香村における歴史的風土の特性等に鑑み、建築物等の意匠、形態等が、当該行為の行われる土地及びその周辺の土地の区域における歴史的風土と著しく不調和とならないよう、特に次の事項に留意して行うことが望ましい。
 
[1] 建築物の新築、改築又は増築
ア 普通建築物の新築、改築又は増築
 普通建築物(古都保存法施行令第6条第1号ホ又は同条第3号ホに規定する普通建築物をいい、床面積の合計が20u以下のものを除くものとする。以下同じ。)の新築、改築又は増築については、当該建築物の形態及び意匠が、当該新築、改築又は増築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における歴史的風土と著しく不調和でないこととされているほか、同法施行令第6条第1号ホ(5)、同条第2号ロ及び同条第3号ホ(4)により屋根及び外壁に関する基準が定められているが、これらの点については次のとおり取り扱うことが望ましい。
@ 屋根は、切妻、入母屋、寄棟、方形、差掛け等の勾配屋根(片流れ屋根、招き屋根及び極端な緩勾配又は急勾配のもの等を除く。)であることとし、瓦ぶき屋根にあっては、黒色の日本瓦(できる限りいぶし瓦であることが望ましい。)ぶきのものとすることが望ましい。
A 外壁は真壁であることが望ましい。しっくい壁にあっては白色又は黒色のしっくい壁とすることが望ましい。なお、「その他これらに類似する外観を有する材料で仕上げられているもの」には、土物壁、荒壁及びしっくい壁に類似する外観を有する白色又は黒色のモルタル壁は含まれるが、鉄板壁、ベニヤ板壁等は含まれない。また、「仕上げられている」ものとは、建築物の外壁の大部分がそれらの材料を使用しており、外観が全体として調和のとれた状態を有しているものをいい、建築物全体の意匠、形態をそこなわない範囲において部分的に他の材料を使用することをも一切認めないものではない。
B へいは、土べい、板べい、石べい(石がきを含む。)又は土べいに類似する外観を有する白色若しくは黒色のモルタルべい等とすることが望ましい。
C ひさしは、できる限り屋根の材料に準ずる材料でふかれたものであることが望ましい。
D 柱、扉、雨戸、格子戸、窓格子、窓枠、雨樋、戸袋等の外まわりの部分は、屋根及び外壁と調和する形態及び意匠のものとし、できる限り木材、銅板、その他これらに類似する外観を有する材料を使用しているものであることが望ましい。なお、「これらに類似する外観を有する材料」には、褐色、黒褐色又は黒色の鉄板・アルミニウム板・硬質塩化ビニル板等が含まれる。
イ その他の建築物の新築、改築又は増築
 その他の建築物(アの普通建築物以外の建築物をいい、仮設の建築物、地下に設ける建築物及び温室を除くものとする。)の新築、改築又は増築については、当該建築物の形態及び意匠が、当該新築、改築又は増築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における歴史的風土と著しく不調和でないこととされているが、その形態及び意匠についてはできる限りアの普通建築物についての形態及び意匠に関する規制に準じて取り扱うことが望ましい。
 なお、この場合、農業、林業若しくは漁業の用に供するために必要な物置、作業小屋等、又は床面積の合計が20u以下の建築物の屋根については、黒褐色又は黒色の化粧石綿セメント板・アスファルトシングル等を認めることも考えられる。
ウ 温室(ガラス又は硬質プラスチック板を使用した温室)の新築、改築又は増築については、その形態が歴史的風土と著しく不調和であることから許可しないことが望ましい。ただし、第二種保存地区における温室の新築、改築又は増築で、その高さが5mを超えず、かつ主要な遺跡、展望地等から望見されない位置に建築されるもので、農林業経営上必要やむを得ないと認められるものについては、特に慎重な検討を行ったうえで、許可しうるものとすることが望ましい。
 
[2] 工作物の新築、改築又は増築
 工作物(建築物以外の工作物をいい、仮設の工作物、地下に設ける工作物及びビニルハウスその他これに類するものを除く。以下同じ。)の新築、改築又は増築については、当該工作物が擁壁又は擁壁を有するものである場合にあっては、当該擁壁が自然石を使用した石積み(野面石積み、玉石積み、雑石積み、割石積み、間知石積み等)又はこれに類似する外観を有するものであることが望ましい。
 なお、道路、公園等から容易に望見される場所には、できる限りさく、カーポート等の工作物を設置しないよう住民の協力を求めることが望ましい。
 
[3] ビニルハウスその他これに類するものの新築、改築又は増築
 ビニルハウスその他これに類するものの新築、改築又は増築については、被覆材が軟質プラスチックフィルムであるものにあっては、無色の透明若しくは半透明又は黒色の軟質プラスチックフィルム、被覆材が寒冷紗であるものにあっては、白色、緑色又は黒色の寒冷紗とすることが望ましい。なお、寒冷紗とは遮光網を含むものである。
 
[4] 土地の形質の変更
 土地の形質の変更については、次に掲げる基準に該当するものであることが望ましい。
ア 擁壁の設置を伴う土地の形質の変更にあっては、当該擁壁が[2]の工作物の新築、改築又は増築についての形態及び意匠の基準に該当するものであることが望ましい。
イ のりを生じる土地の形質の変更にあっては、畦畔法面等の小規模なものを除き、当該法面について植栽その他の歴史的風土の維持保存上必要な措置が行われることが望ましい。
 
[5] 木竹の伐採
 木竹の伐採については、次に掲げる基準に該当するものであることが望ましい。
ア 林業を営むために行うものについては許可を要しないこととされている第二種保存地区内における森林の択伐については、択伐率が10分の3(前回の択伐の終わった日を含む伐採年度から伐採をしようとする年度までの年度数に当該森林の年成長率を乗じて算出された率が10分の3未満である場合には、その率)以内で単木的又は小群状に伐採を行うものに限るものとし、それ以外のものは皆伐として取り扱うことが望ましい。
イ 森林の皆伐又は森林である土地の区域において行う土地の形質の変更のための木竹の伐採については、当該森林が著名な地形・地物等を構成するもの又は主要な遺跡、展望地等からの景観を構成する重要な要素となるものであるときは、歴史的風土をそこなうことのないよう特に慎重に配慮することが望ましい。
 なお、森林法第5条の規定により、知事が第一種保存地区又は第二種保存地区に係る民有林について地域森林計画を決定又は変更しようとするときは、歴史的風土の維持保存のために必要な森林の施業方法等について十分配慮したものとなるよう林務担当部局と歴史的風土担当部局との間において十分調整を図ることが望ましい。
 
[6] 建築物の色彩の変更
 建築物の色彩の変更については、次の基準に該当するものであることが望ましい。
ア 屋根の色彩の変更については、当該変更が黒色の日本瓦、わら、檜皮、銅板、木板その他これらに類似する外観を有する材料の使用による色彩の変更であるか、又はこれらの材料に類似する色彩を有する塗料等による色彩の変更であることが望ましい。また、わらぶき屋根等の保護を目的として既存の屋根を鉄板ぶき等の屋根で被覆することによる色彩の変更については、当該鉄板等が黒褐色、黒色等歴史的風土と調和する色彩であることが望ましい。
イ 外観又はへい(屋根の部分を除く。)の色彩の変更については、当該変更が白色又は黒色のしっくい、木板その他これらに類似する外観を有する材料の使用による色彩の変更であるか、又はこれらの材料に類似する色彩を有する塗料等による色彩の変更であることが望ましい。
 
(3)その他の事項
 
[1] 許可不要行為
 古都保存法第8条第1項により、通常の管理行為その他の行為で政令で定めるものについては、許可を要しないものとされているが、これらの行為は、一定の農業、林業又は漁業を営むために行う行為等日常的な行為で歴史的風土の維持保存に支障を及ぼすおそれの少ないもの又は都市計画事業の施行として行う行為、歴史的風土保存計画に基づく施設の整備のために行う行為等歴史的風土の維持保存のために行われるもの若しくは歴史的風土の維持保存に配慮して行われることが確実なものであることにより許可不要とされているものであり、歴史的風土の維持保存のための配慮を要しないという趣旨ではないので、これらの許可不要行為についても、歴史的風土と著しく不調和となることのないよう、建築物その他の工作物の意匠、形態等について配慮を求めることが望ましい。
 
[2] 奈良県知事の指定する建築物等
 建築物その他の工作物で、その用途によってやむを得ないと認めて奈良県知事が指定するものについては、その指定する高さを超えないときは、10mを超えて新築、改築又は増築をすることができるものとされているが、この規定の趣旨は明日香村の区域内において必要不可欠なものであり、かつその用途によって真にやむを得ないと認められる建築物その他の工作物に限って、奈良県知事が当該建築物等を指定できるものとし、当該指定の行われた建築物等について、奈良県知事の指定する高さが10mを超える建築物等を建築することができるものとしたものであり、その指定にあたっては慎重に行うことが望ましい。
 
[3] 主要な遺跡、展望地等からの景観
 甘橿丘、飛鳥川等の主要な遺跡、展望地等からの景観は、明日香村における歴史的風土を形成し、及び特色づける重要な要素となっており、これらの遺跡、展望地等から望見される地域内における行為の許可にあたっては、特に歴史的風土と著しく不調和となることのないよう留意することが望ましい。なお、眺望の背景をなす稜線については、道路、建築物等により分断されることのないよう留意することが望ましい。
 
[4] 関係部局との連絡調整
ア 文化財保護法第57条の2第1項及び同法第99条第1項第6号に基づく文化財保護法施行令(昭和50年政令第267号)第5条第2項により、土木工事その他埋蔵文化財の調査以外の目的で、周知の埋蔵文化財包蔵地を発掘しようとする場合には、発掘しようとする者は、事前に都道府県(指定都市の区域内では指定都市)に届け出なければならないものとされているが、明日香村においては、遺跡等の埋蔵文化財が村の全域にわたって広く分布し、歴史的風土を形成し、及び特色づける重要な要素となっているため、第一種保存地区及び第二種保存地区内における行為の許可を行うにあたっては、文化財保護法による届出への教育委員会からの指示の内容をふまえる等、埋蔵文化財の保護のための措置に努めることが望ましい。
イ 農林業の維持振興と歴史的風土の保存との調和を図るため、規制の運用にあたって歴史的風土担当部局と農林業担当部局とが十分連絡調整を行うことが望ましい。
 
 
E.促進区域(法第10条の2第1項関連)
 
 1.市街地再開発促進区域
 
(1)趣旨
 
 市街地再開発促進区域は、市街地再開発事業の施行区域の条件に該当する土地の区域で、民間の再開発への機運が盛り上ってはいるが直ちに事業に着手するには至らない地域について、再開発に対する助成・指導及び建築行為等の規制を行いおおむね5年以内に第一種市街地再開発事業、開発行為、都市計画適合建築物の建設等に着手することを期待することにより、区域内における再開発を促進することを目的としている。
 
(2)基本的な考え方
 
[1] 単位整備区
1) 再開発法第7条第2項の単位整備区は、都市計画上当該地区にふさわしい容積、建築面積、高さ、配列及び用途構成を備えた土地の高度利用に資する形態の建築物の建築しうる位置及び形状を備えているとともに、当該建築物を主として土地所有者等の創意工夫により自主的に建築することができる大きさの区域とすることが望ましい。
2) 単位整備区の位置及び配列は、適正な配置及び規模の道路、公園その他の公共施設を備えた良好な都市環境のものとなるよう定めることが望ましい。
3) 単位整備区内の建築敷地の造成と併せて一体として造成すべき公共施設の用に供する土地も区域に含めることが望ましい。
4) 単位整備区内にある公共施設の敷地の割合が、容積率、当該公共施設の機能等を勘案して、各単位整備区の間に著しい不均衡が生じないように定めることが望ましい。
 
(3)配慮すべき事項
 
1) 市街地再開発促進区域は、権利者の第一種市街地再開発事業の施行等についての能力及び事業化への機運が十分あると判断される土地の区域について定めることが望ましい。
2) 市街地再開発促進区域に関する都市計画を定める際には、説明会の開催等により関係権利者の意向を十分把握し、その意向を反映するよう努めるとともに、都市計画の目的を達成するための積極的な協力体制が確保されるようにすることが望ましい。
 
 2.土地区画整理促進区域
 
(1)趣旨
 
 土地区画整理促進区域は、大都市地域において住宅、宅地の大量供給を早急に図る必要がある場合において、市街化区域内に残されている農地その他の土地を必要な公共施設、公益施設の整った良好な住宅地として開発することを促進することを目的としている。
 
(2)基本的な考え方
 
[1] 指定区域
1) 土地区画整理促進区域は、当該区域内の土地の所有者等の土地区画整理事業の施行等の機運が十分であると判断される土地の区域について定めることが望ましい。
2) 大都市法第2条第1項に規定される大都市地域内の市街化区域内の土地は、特別の場合を除き、大都市法第5条第1項第2号の条件に該当するものと解するべきである。
3) 大都市法第5条第1項第5号ロに規定する区域内に土地区画整理促進区域を定める場合には、周辺の土地利用の状況を勘案し、工場、幹線道路等からの騒音等により、当該区域の居住環境が阻害されることのないよう配慮することが望ましい。
 
[2] 住宅市街地としての開発の方針
 大都市法第5条第2項の「住宅市街地としての開発の方針」には、次に掲げる事項を定めることが望ましい。
a 住宅地の整備に関する事項
b 公共施設の整備に関する事項
 
[3] その他
a 土地区画整理促進区域に関する都市計画を定める場合においては、併せて、少なくとも、当該区域に必要な主要な道路に関する都市計画を定めることが望ましい。
b 土地区画整理促進区域の都市計画の決定にあたって、必要に応じ、あらかじめ関係権利者に示すための計画試案として、市町村において公共施設の配置設計、概略の資金計画等を作成することが望ましい。
c 土地区画整理促進区域において施行される特定土地区画整理事業については、共同住宅区、義務教育施設用地又は公営住宅等の用地という特別の措置が適用されていることから、既に施行中の土地区画整理事業についても、必要があると認められる場合には、当該事業の施行区域について土地区画整理促進区域を定めることも考えられる。
 
(3)配慮すべき事項
 
 大都市法第7条第2項第1号イの「当該土地区画整理促進区域の他の部分についての土地区画整理事業の施行を困難にしないもの」としては、例えば、土地区画整理促進区域の残余の面積が0.5ha未満ではないもの、開発困難な不整形の土地が残らないもの、がけ地等の一体として開発しなければ以後開発できない場所を残さないもの、都市計画決定された公共施設や既存集落をことさらに避けているものではないもの等不都合の生ずることがないと認められるものが考えられる。
 
 3.住宅街区整備促進区域
 
(1)趣旨
 
 住宅街区整備促進区域は、大都市地域において住宅・宅地の大量供給を図るため、市街化区域内に残されている農地その他の土地を中高層住宅を中心とする住宅の建設まで行うことにより良好な住宅地として開発し、整備することを促進することを目的としている。
 
(2)基本的な考え方
 
[1] 指定区域
1) 住宅街区整備促進区域は、当該区域内の土地の所有者等の住宅街区整備事業の施行等についての能力及び事業化への機運が十分であると判断される土地の区域について定めることが望ましい。
2) 良好な住宅市街地として確保することが可能な地域については、小規模なものであってもきめ細かく住宅街区整備促進区域を定めることが望ましい。
3) 土地区画整理事業が実施された土地の区域についても、住宅街区整備促進区域を指定することができる。
[2] 住宅街区としての整備の方針
 大都市法第24条第2項の「住宅街区としての整備の方針」には、次のような事項を定めることが望ましい。
a 住宅計画の目標に関する事項
b 公共施設の整備に関する事項
 なお、aには、建築物は高度利用地区に関する都市計画に適合しなければならない旨又はそれに代わる内容を記載することが望ましい。
[3] その他
 住宅街区整備促進区域に関する都市計画を定める場合においては、併せて、少なくとも、当該区域に必要な主要な道路に関する都市計画を定めることが望ましい。
 
 4.拠点業務市街地整備土地区画整理促進区域
 
(1)趣旨
 
 拠点業務市街地整備土地区画整理促進区域(以下「拠点整備促進区域」という。)は、地方拠点法第19条第1項第1号にいう拠点業務市街地としての整備又は開発を早急かつ確実に行うために、土地の所有者又は借地権者(以下「土地の所有者等」という。)による土地区画整理事業の施行を促すとともに、一定期間経過後は市町村等公的主体による施行を義務づけることとなっている区域である。
 
(2)基本的な考え方
 
[1] 指定区域
 拠点整備促進区域は、上記の趣旨に鑑み、地方拠点法第19条第1項各号に照らし適当な区域であることのほか、当該区域内の土地の所有者等の土地区画整理事業の施行の気運が十分であると判断される土地の区域について定めることが望ましい。
 
[2] 拠点業務市街地としての開発整備の方針
 拠点整備促進区域に関する都市計画においては、地方拠点法第19条第2項により「拠点業務市街地としての開発整備の方針」を定めることとされているが、同方針には、次に掲げる事項を記載することが望ましい。
a 業務地の整備に関する事項
b 公共施設の整備に関する事項
 なお、この「拠点業務市街地としての開発整備の方針」は、地方拠点法第30条の規定によるものとして法第7条の2第1項第4号にいう「拠点業務市街地の開発整備の方針」を受けて市町村が定めるものであり、より具体的に定めるものである。
 
[3] 公共施設に関する都市計画の決定
 地方拠点法第19条第4項においては、拠点整備促進区域に関する都市計画と併せて、当該区域が良好な拠点業務市街地として整備され、又は開発されるために必要な公共施設に関する都市計画を定めなければならないこととなっているが、少なくとも当該区域に必要な主要な道路に関する都市計画を定めることが望ましい。
 
(3)配慮すべき事項
 
1) 臨港地区、港湾隣接地域、港湾施設が相当程度集積し、若しくは集積することが予定されている港湾区域内の埋立地(未竣功のものを含む。)又は港湾施設用地(以下「臨港地区等」という。)において拠点整備促進区域を定め、又は変更しようとする場合には、これらの地域又は施設を管理する港湾管理者と協議する必要があると考えられる。またこの場合、拠点整備促進区域に関する都市計画は、港湾計画に反しないものとする必要があると考えられる。
2) 防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律(昭和49年法律第101号)第2条第2項に規定する防衛施設が存する地区については、原則として拠点整備促進区域を定めないことが望ましい。
 
※ なお、促進区域及びこれらに関連する制度の運用に関して既存の通達で技術的助言とされているもののうち都市計画の運用に関する部分については、本指針に示されている内容に置き換えたうえで参考とすべきである。
 
 
F.遊休土地転換利用促進地区(法第10条の3関連)
 
(1)趣旨
 
 遊休土地転換利用促進地区は、都市内の土地を住宅、商業、工業等の様々な用途に有効活用することにより都市機能の増進に重要な機会が提供されるが、相当規模の土地が、相当期間にわたり低・未利用の状態のまま存在し続けることは、周辺地域の計画的な土地利用の増進を図るうえで著しく支障となるものであることに鑑み、市街化区域内の低・未利用の状態にある土地について、効果的に土地利用転換を図り、有効かつ適切な利用に供されることを促進し、周辺地域と一体となった良好な市街地形成と都市機能の増進を図ることを目的として定めるものである。
 
(2)基本的な考え方
 
[1] 遊休土地転換利用促進地区の指定
1) 指定の判断基準
 法第10条の3第1項の遊休土地転換利用促進地区(以下「促進地区」という。)は、低・未利用地である土地で、当該土地の用途、周辺の土地利用の状況、用途地域、容積率の指定状況を勘案して、当該土地の区域及び周辺地域の計画的な土地利用の増進を図るうえで著しく支障となっており、かつ、当該土地の有効・適切な利用を促進することが都市機能の増進に寄与するものについて指定することが望ましい。
 この場合、未利用とは、何らの用途にも供されていない状態をいうものであるが、本格的な建築物等が存する土地であっても、廃屋と認められるような建築物等のみしか存しておらず、利用もされていない等、通常、その土地の利用にあたっては当該建築物等を取り壊すこととなるものについても、未利用と判断できるものである。
 また、低利用とは、対象土地の利用の程度が、周辺地域における同一の用途又はこれに類する用途に供されている土地の利用程度と比較して著しく劣っている状態をいうものである。
 なお、指定の判断基準としては、例えば、別表1のように取り扱うことが考えられるが、これは低・未利用である土地を促進地区に指定する場合の標準的なものであり、都市の規模、土地利用の状況、公共施設の整備水準等地域の実情により必要であれば、別の基準によるべきである。
2) 促進地区に含めない地区
 促進地区には、原則として、以下の区域を含めないことが望ましい。
a 自然公園法による国立公園、国定公園、都道府県立自然公園及び自然環境保全法による自然環境保全地域、都道府県自然環境保全地域及び鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律による鳥獣保護区
b 森林法による保安林、保安林予定森林、保安施設地区及び保安施設地区予定地及び保安林整備臨時措置法による保安林整備計画に基づく保安林指定計画地並びに森林法第5条第1項による地域森林計画対象民有林の区域にある森林等の森林としての機能を発揮している土地
c 都市緑地保全法による緑地保全地区内の土地及びこれに類する土地
d 公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律(昭和42年法律第110号)第9条第2項に基づき、特定飛行場の設置者に買い入れられ、適正に管理されている第二種区域内の土地、特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法(昭和53年法律第26号)第8条及び第9条第2項に基づき特定空港の設置者により買い入れられ、適正に管理されている航空機騒音障害防止特別地区内の土地並びに鉄道による騒音の影響を軽減するための緩衝地帯として適正に管理されている土地
e 公共公益的な利用に供されている土地
f 火薬類取締法(昭和25年法律第149号)、高圧ガス保安法(昭和26年法律第204号)、電気事業法(昭和39年法律第170号)、ガス事業法(昭和29年法律第51号)、熱供給事業法(昭和47年法律第88号)、液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律(昭和42年法律第149号)、鉱山保安法(昭和24年法律第70号)、石油コンビナート等災害防止法(昭和50年法律第84号)又は石油パイプライン事業法(昭和47年法律第105号)等の法令の規定等により土地利用について一定の制約が課せられている土地
3) 指定の変更
 促進地区に指定された土地が、全体として、有効利用されたと認められる場合には、本制度に関する都市計画の目的が達成されたものとして、遅滞なく、当該促進地区に関する都市計画を変更すべきである。また、促進地区内の一部の土地のみが有効利用された場合であっても、その有効利用された土地及び残存する土地の規模、土地利用状況等を十分に勘案し、目的が達成されたと認められるときには、促進地区に関する都市計画を変更することも考えられる。
 
[2] 遊休土地転換利用促進地区内における土地の所有者等の責務等
1) 土地の所有者等の責務
法第58条の4第1項に基づき、土地の所有者等が果たすべき責務としては、例えば、次に掲げるようなものが考えられる。
a 自ら有効かつ適切な利用を実現すること。
b 有効かつ適切な利用を図ると考えられる第三者に対し、権利を処分し、又は使用収益権を設定すること。
c 既存の使用収益権の内容を有効かつ適切な利用の実現に資するよう変更すること。
2) 市町村の指導及び助言
法第58条の4第2項に基づき、市町村が土地の所有者等に対して行う指導及び助言としては、例えば、次に掲げるようなものが考えられる。
a 一般的な都市づくりに関する知識(都市計画・建築規制、土地税制、借地・借家に関する法律、土地取引規制等の概要の教示)
b 当該市町村及びその区域の周辺地域の整備、発展の方向(当該市町村の総合計画、公的な開発プロジェクト又は施設の整備計画の提供等)
c その土地に関する有効かつ適切な利用方法(その土地に係る都市計画・建築規制の内容、建築可能な建築物の内容、市町村が最も有効かつ適切と判断する利用方法の提案等)
d その土地に関する権利の処分に関する事項(住宅の建設、公園・広場等の公共施設又は学校等の公益的施設の整備を行うための用地として、その土地の取得を希望している公的主体の紹介等)
なお、臨港地区、港湾隣接地域、港湾施設が相当程度集積し、若しくは集積することが予定されている港湾区域内の埋立地又は港湾施設用地における促進地区内の土地の所有者等に対し、当該土地の有効かつ適正な利用の促進に関する事項について指導及び助言を行う場合には、臨港地区等の土地利用の整合性の確保及び適正な管理運営の観点から港湾管理者と連絡調整をとり、相互に協力して当該指導及び助言を行うことが望ましい。
 
[3] 遊休土地転換利用促進地区に関する地方公共団体の責務
法第58条の5に基づき、地方公共団体が講ずべき必要な措置としては、例えば、次に掲げるようなものが考えられる。
1) 良好な住環境が形成されている地域にあっては、その環境の保護に支障となる建築物の建築を抑制するため、地区計画を定め、建築物の用途を詳細に制限すること。
2) 都市の中心市街地等土地の高度利用が強く要請されている地域にあっては、再開発地区計画や地区計画を活用することにより、容積率や高さの最低限度を定め、一定規模又は高さ以上の建築物を誘導すること。
3) 促進地区内又は促進地区外の公共施設が未整備であることが土地の高度利用を図る上で支障となっている場合には、都市計画施設の整備、土地区画整理事業の施行、再開発地区計画の活用を行うこと。
 
[4] 遊休土地である旨の通知
1) 法第58条の6第1項第3号及び第4号に該当するか否かの判断は、(2)[1]1)に準じて行うことが望ましい。
  なお、遊休土地である旨の通知は、現に日常の居住の用に供されている場合には行わないものであることに留意すべきである。
2) 地上権者又は賃借権者について、その土地の所有者が遊休土地である旨の通知の相手方となる限り、当該地上権等の設定の時期、その面積等の如何を問わず、全て遊休土地である旨の通知を行うべきである。
  なお、所有者に通知した結果、地上権等が設定されていることが判明した場合には、その時点で別途その地上権者等に通知することが望ましい。
3) 遊休土地である旨の通知を行うにあたっては、国土利用計画法担当部局に対し、当該土地が国土利用計画法第14条第1項の許可又は同法第23条第1項の規定による届出に係る土地か否かについて及び当該土地が同法第14条第1項の許可又は同法第23条第1項の規定による届出に係る土地である場合には、同法第28条の規定による通知を行うかどうかについてあらかじめ確認するべきであり、国土利用計画法第28条の規定による通知を行うことが判明した場合、遊休土地である旨の通知は行うべきではない。
 
[5] 遊休土地に係る計画の届出
1) 法第58条の7の規定による遊休土地の利用又は処分に関する届出については、法第58条の6に基づく通知があった時点においてほぼ確定しているものであれば足り、必ずしも詳細な設計等がなくてもよいものである。また、所定の書式等を具備している限り、その補正を命じ、または不受理とすべきものではなく、必要に応じ、別途その詳細な計画内容等を聴取すること等によるものとすることが望ましい。
2) 計画の内容が、当該土地の有効かつ適切な利用を促進する上で支障がないと認められる場合には、その旨を届出を行った者に対して通知することが望ましい。
3) 計画の届出については、比較的短期の届出期間が設けられていることから、郵送で届け出られた場合には、郵送に要した日数は、算入しないものである。
 
[6] 遊休土地に係る勧告等
1) 法第58条の8第1項に基づく勧告は、具体の事実に即して、例えば、計画のうちの修正すべき事項、利用のための開発に着手すべきおおよその時期等を、届出者の土地利用の可能性を過度に制約しない限りにおいて明示し、勧告するべきである。
2) 届出のあった計画において、土地の利用又は処分が長期間にわたり未着手となる予定のものについては、特別の事情がない限り、計画の変更を勧告するべきである。
 
[7] 遊休土地買い取りの協議
1) 法第58条の9の規定により、地方公共団体等のうちから遊休土地の買取りの協議を行うものを定めようとするときは、あらかじめ当該土地の所在する区域を管轄する財務局長又は財務事務所長に対して、当該土地についての国の取得希望の有無を照会し、国がその取得を希望する場合には国の取得に配慮することが望ましい。
2) 法第58条の9の規定により、臨港地区、港湾隣接地域、港湾施設が相当程度集積し、若しくは集積することが予定されている港湾区域内の埋立地又は港湾施設用地における促進地区内の土地について買取りの協議を行う者を定める場合には、港湾管理者の取得に配慮することが望ましく、また、買取りの目的が港湾計画に違背しないようにするべきである。
このため、臨港地区等の土地利用の整合性の確保及び適正な管理運営の観点から、法第58条の8の規定による勧告の段階より、港湾管理者と適宜必要な連絡調整を行うことが望ましい。
 
別表1  低・未利用である土地を促進地区に指定する場合の判断基準の例
○未利用
容積率(%)
50
60
80
100
150
200
300
400
500
600〜
未利用の土地 既成市街地等
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
上記以外
×
×
×
×
 
○低利用
(商業系)
容積率(%)
200
300
400
500
600
700
800
900
1000
区分
近商 近商 近商 商業 商業 商業 商業 商業 商業 商業
青空駐車場
×
×
×
×
×
資材置場
×
×
×
×
×
屋外運動施設
×
×
×
×
×
屋外展示場
×
×
×
×
×
建築物等と一体となって存する空地

(工業系)
容積率(%)
200
300
400
区分
準工
工業
工専
準工
工業
工専
準工
工業
工専
青空駐車場
資材置場
屋外運動施設
屋外展示場
建築物等と一体となって存する空地
 
(住居系)
容積率(%)
〜100
150
200
300
400
区分
低層
中高層
低層
中高層
低層
中高層
住居
中高層
住居
住居
青空駐車場
資材置き場
屋外運動施設
屋外展示場
建築物等と一体となって
存する空地

(注)
 1.(1)別表1においては、その土地における主要な用途と、その土地における都市計画で定められた容積率により判断を行うものとし、次のように判断する。
「×」は、すべて促進地区に該当する。
「▲」は、整備水準、使用頻度、管理状態を周辺地域の同一の用途に供されている土地と比較し、おおむね下位1/2に位置するものは、促進地区に該当する。
「△」は、整備水準、使用頻度、管理状態を周辺地域の同一の用途に供されている土地と比較し、おおむね下位1/4に位置するものは、促進地区に該当する。
「○」は、原則として促進地区に該当しない。
(2)「▲」又は「△」は、周辺地域の同一の用途に供されている土地のうち面積がおおむね5,000u以上のもの(ただし、対象土地に複数の用途が存している場合であって、一つの用途の面積が5,000u以下のものについては、周辺地域の同規模程度以上のもの。)と比較を行うこととし、周辺地域とは、対象土地の存する用途地域内にあって、都市計画で定められた容積率、建ぺい率等が同一である地域を原則に、おおむね25haを区域の標準として判断する。
(3)「既成市街地等」とは、規則第8条の各号に該当する土地の区域及び土地区画整理事業等により必要な公共施設の整備が行われた区域をいうものとする。
(4)「低層」とは第一種低層住居専用地域及び第二種低層住居専用地域、「中高層」とは第一種中高層住居専用地域及び第二種中高層住居専用地域、「住居」とは第一種住居地域、第二種住居地域及び準住居地域、「近商」とは近隣商業地域、「商業」とは商業地域、「準工」とは準工業地域、「工業」とは工業地域、「工専」とは工業専用地域をいうものとする。
 2.(1)別表1の用途区分のうち、「青空駐車場」、「資材置場」、「屋外運動施設」、「屋外展示場」は、建築物等が存しない土地利用の形態を想定しているものであり、これらの用途に供されている土地に建築物等が存する場合には、当該建築物等が仮設であるもの又は、当該建築物等の容積率若しくは生産施設面積率が都市計画法等で定められた基準の1/10以下であるものについてのみ、当該建築物等に係る土地の部分以外の土地の部分(空地系の土地利用に係る部分)の整備水準、使用頻度、管理状態を同一の用途に供されている土地の空地系の土地利用に係る部分の整備水準、使用頻度、管理状態と比較のうえ、上記1により判断する。この場合の別表1の運用にあたっては、「×」を「▲」として取り扱う。
(2)「建築物等と一体となって存する空地」については、当該建築物等が仮設であるもの又は、当該建築物等の容積率若しくは生産施設面積率が都市計画法等で定められた基準の1/10以下であるものについてのみ、別表1の用途区分のうち、当該土地の空地系の土地利用に係る部分の整備水準、使用頻度、管理状態を同一の用途に供されている士地の空地系の土地利用に係る部分の整備水準、使用頻度、管理状態と比較のうえ、上記1により判断する。
 3.(1)整備水準、使用頻度、管理状態の比較にあたっては、別表2の判断項目を参考として、整備水準、管理状態はそれぞれ優劣の区分を行い、使用頻度については全体の平均値を基準として優劣の区分を行い、その結果に基づきそれぞれの土地について順位付けを行って、上記1の判断を行う。
 ただし、おおむねすべての判断項目について、優れていると認められるものについては、この限りではない。
(2)別表2の判断項目について、地域の実情により別の項目を追加して比較することがより適当である場合には、適宜追加して差し支えない。

 
別表2  整備水準等の判断項目
区分
整備水準
使用頻度
管理状態
青空駐車場 舗装・未舗装
屋根の有無
駐車スペースの区画
柵等による範囲の特定
平均使用率
ピーク時駐車場
月極駐車場の契約率
管理人の有無
施設の保守管理状況 
資材置場 整地の程度
屋根の有無
柵等による範囲の特定
資材の平均保管量
保管資材の回転率 
管理人の有無
資材の保管状況
施設の保守管理状況
屋外運動施設 整地の程度
クラブハウスの有無
柵等による範囲の特定
月当たり平均使用時  管理人の有無
グランドの手入れ状況
施設の保守管理状況
屋外展示場 舗装・未舗装
屋根の有無
柵等による範囲の特定
展示数
販売数 
管理人の有無
施設の保守管理状況 
建築物等と一体となって存する空地 庭等の整備の程度
柵等による範囲の特定
  庭等の手入れ状況 

(3)配慮すべき事項
 
[1] 関係行政機関との調整
促進地区を定める場合には、必要に応じて、都市施設整備担当部局及び市街地開発事業部局と調整することが望ましい。また、促進地区に関する都市計画を臨港地区等において定め又は変更しようとする場合には臨港地区等の土地利用の整合性の確保及び適正な管理運営の観点から関係港湾管理者と、国有地を含めて促進地区に関する都市計画を定めようとする場合には国有地の管理者とそれぞれ協議することが望ましい。この場合、港湾管理者が臨港地区等における促進地区に関する都市計画の策定について市町村に申し出た場合には、市町村はこれを十分尊重することが望ましい。
促進地区を定めた場合には、国土利用計画法に基づく遊休土地制度の円滑な運用を図る観点から、国土利用計画法担当部局に速やかに連絡を行うことが望ましい。
 
 
G.地区計画(法第12条の5関係)
 
1.地区計画に関する都市計画を定めるにあたっての基本的な考え方
 
(1)基本的な考え方について
 
[1] 地区計画は、主として当該地区内の住民等にとっての良好な市街地環境の形成又は保持のための地区施設及び建築物の整備並びに土地利用に関する一体的かつ総合的な計画であることにかんがみ、地区計画の策定にあたっては、当該地区の都市全体における位置づけ、当該地区において行われる社会・経済活動の現状及び将来の見通しを踏まえ、都市計画区域マスタープラン又は市町村マスタープランにおいて示される当該地区の望ましい市街地像を実現するため、居住、就労、教育、文化、医療、買物、レクリエーション等を含めた都市活動全般にわたる総合的なまちづくりのための計画の一環として定めることが望ましい。
この際、当該地区における地域的連帯感、地域社会の形成状況等からみた当該地区の特性に十分配慮することが望ましい。
 
[2] 地区計画は、街区単位できめ細かな市街地像を実現していく制度であり、用途地域による都市全体での用途の配分や、土地区画整理事業による基盤の整備等とあわせて、都市計画が目指す望ましい市街地像の実現のため、積極的に活用されるべきである。
[3] 地区の特性にふさわしい良好な都市環境の維持・形成を図る必要がある場合には、用途地域が定められていない土地の区域にあっても、詳細な土地利用計画制度である地区計画制度の活用が図られるべきである。この場合において、市街化調整区域内において地区計画を定める場合にあっても、市街化を抑制すべき区域であるという市街化調整区域の性格を変えない範囲とすべきである。
 
[4] 地区計画は、街区単位での土地利用計画を念頭に作成されるものであり、他法令、例えば農業振興地域の整備に関する法律、森林法等に基づく規制により、都市的土地利用が制限されていることが明らかな土地については、地区計画を策定する積極的な意味はない。一方、これらの規制が解除された、あるいは解除される予定がある場合には、都市的土地利用への土地利用転換が無秩序に発生する可能性が高く、あらかじめ調整を図ったうえで、他の法令による規制が解除されると同時に、用途地域、特定用途制限地域などの地域地区、あるいは地区計画を指定し、都市的土地利用をコントロールすることにより、秩序ある土地利用の実現を図ることが望ましい。このため、他法令の規制担当部局と連携を密にして、他法令による土地利用に関する規制の動向を適切に把握し、都市的土地利用の新たな発生に備えることが望ましい。
 
[5] 市街化調整区域における地区計画については、広域的な運用の統一性を確保し、区域区分の主旨を踏まえ、市街化調整区域における秩序ある土地利用の形成を図る観点から、あらかじめ都道府県が同意にあたっての判断指針等を作成し、市町村の参考に供することで、円滑な制度運用が図られるものである。
 
(2)住民又は利害関係人からの申し出について
 
地区計画は、その内容からも住民や、区域内の土地に権利を有する者及びその代理人(民間事業者を含む。)が主体的に関与して定めることが望ましく、このような地域住民の参加を促す観点からは、法第21条の2の提案制度や、法第16条第3項に定められた申し出制度など住民参加の手続きは十分に活用されることが望ましい。このため、法第16条第3項の条例の制定について、前向きに検討することが望ましい。
法第16条第3項に定められた申し出制度は、地区計画等に関する都市計画の決定、その変更について、例えば申し出に必要な関係者等の同意率(全員同意か、過半の賛成か、一人でも可能かなど)、対象となる地区(全ての地区で可能か、一定の条件がある地区のみかなど)、新規・変更の別(新規の決定を対象とするか、変更を対象とするかなど)について、市町村の判断で条例に定めることが可能であることとされている。また、地区計画等の内容についての申し出も、その範囲等を条例で定めることが可能とされている。
この規定に基づき申し出が行われた場合には、条例に定めた手続きに則って行われた申し出であり、市町村は相当の理由がない限り、その内容に配慮せざるを得ないものである。
この制度の有効な活用の例としては、建築協定が結ばれて相当期間が経過し、協定の内容が定着している地区や建築協定の有効期間が了しようとしており、引き続き良好な市街地環境の確保を図ることが求められる地区において、協定の主体である住民が、協定の内容のうち適当なものについて地区計画に定めることを申し出する場合などが考えられる。
 
(3)他の都市計画等との併用について
 
地区計画制度は、必要に応じて、次のような既存の都市計画と併せて実施することが考えられる。
[1] 地区計画を活用することにより、街区単位できめ細かな市街地像の実現が可能であることを踏まえ、都市計画区域マスタープラン、あるいは市町村マスタープランにおいては、地区計画の活用を念頭におきつつ、地域別のあるべき市街地像を具体的に示すことが望ましい。
[2] 一方、地区計画には、街区を超えた広域の土地利用を調整・実現する観点はなく、用途地域が指定されている市街地においては、都市全体での用途の適正な配分、望ましい都市構造の実現等を図る観点から、用途地域その他の地域地区、都市施設及び市街地開発事業とあわせて計画されるべきである。
一方、用途地域の指定されていない地域においては、そもそも都市全体からみた積極的な用途の配分の観点がなく、当該街区の環境の保全等の観点から地区計画が都市計画の規制・誘導の唯一の手段となることも考えられる。
[3] 地区計画の区域内において、地区計画に定めることのできない事項又は地区計画に定める必要がない事項若しくは内容について、居住環境のより高度な維持・増進等を図るため、住民による自主的な規制が行われることが適当である場合には、必要に応じ、建築協定制度又は緑地協定制度を活用することが望ましい。
[4] 市街化調整区域における計画開発地で、将来市街化区域への編入が想定される区域において地区計画を定める場合に、必要に応じ、都市施設の都市計画決定を行うことが望ましい。
[5] 地区計画の区域内において、公共施設の整備を図りつつ、土地の高度利用と都市機能の増進を図る場合には、必要に応じ、再開発等促進区の活用を図ることが望ましい。
[6] 地区計画のうち、いわゆる誘導容積型、容積適正配分型、高度利用型、用途別容積型、街並み誘導型を活用又は併用することにより、地区それぞれの固有の状況や課題に応じて容積率等の建築規制を強化又は緩和することが可能であり、これにより望ましい市街地像を誘導することができるので、後述の各制度の指針を参考としつつ、これら制度の積極的活用を図ることが望ましい。
 
(4)地区計画制度活用の例について
 
[1] 地区計画制度活用の例としては、次に掲げるようなものが考えられる。
1) 相当規模の宅地開発事業、土地区画整理事業等によって基盤整備が行われる、若しくは行われた土地の区域又は基盤整備と併せて分譲住宅等の建設が行われた土地の区域について、建築物等の用途の制限、建築物の敷地面積の最低限度、壁面の位置の制限等を定め、事業の効果を維持・増進させる必要がある場合
2) 土地区画整理事業、市街地再開発事業等の面的整備のための事業が行われる土地の区域の周辺の地域について、地区施設の配置及び規模等を定め、事業区域と併せた一体的かつ良好な市街地を形成するよう誘導する必要がある場合
3) 土地区画整理事業等によって形成された比較的大規模な宅地について、将来の道路の配置及び規模等を定める必要がある場合
4) 土地区画整理事業、市街地再開発事業等の面的整備のための事業が予定されている地域その他相当規模の建築物の建替え等が行われることが予想される地域について、当面、当該区域の整備、開発及び保全に関する方針を定め、当該区域の整備の目標等を明確化することにより事業の施行又は建築物の整備等についての住民の合意形成を図り、又は当該地区における事業の実施等についての指針とする必要がある場合
5) 居住環境が不良な住宅市街地で、建築物の建替えが相当程度行われるものについて、地区施設の配置及び規模、建築物の敷地面積の最低限度等を定め、居住環境の改善を図り、良好な住宅市街地を形成するよう誘導する必要がある場合
6) 専ら不良な木造共同住宅が密集している既成市街地内の土地の区域で、建築物の建替えが相当程度行われるものについて、地区施設の配置及び規模、建築物の建築面積の最低限度、壁面の位置の制限等を定め、共同建替え等による土地の高度利用と居住環境の向上を図る必要がある場合
7) 商店街で建築物の建替えが相当程度行われるものについて、建築物等の用途の制限、建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合の最低限度、建築物の建築面積の最低限度、建築物等の高さの最低限度、建築物等の形態又は意匠の制限等を定め、当該地区の土地の高度利用を促進するとともに、機能的で魅力ある商店街を形成するよう誘導する必要がある場合
8) 幹線的な街路の整備が行われる地域について、地区施設の配置及び規模、建築物等の用途の制限等を定めることにより、当該道路の整備と併せて、その沿道地域の特性にふさわしい良好な街区の形成を誘導する必要がある場合
9) 避難路、公共空地等の公共施設の整備と不良住宅の建替え等の事業が併せて行われる密集市街地において、地区施設の配置及び規模、壁面の位置の制限等を定め、これらの事業と併せた総合的な居住環境の整備改善が図られるよう誘導する必要がある場合
10) 中小工場と、その就業者のための共同住宅等が混在している地域で建築物の建替え等が相当程度行われるものについて、建築物等の用途の制限等を定め、職住近接を保ちながら工業の利便の維持・増進と居住環境の向上を図る必要がある場合
11) 現に市街化しつつあり、又は市街化することが確実と見込まれる土地の区域について、地区施設の配置及び規模、建築物の敷地面積の最低限度等を定め、不良な街区の形成を防止する必要がある場合
12) 現に良好な住宅市街地が形成されている地域について、建築物等の用途の制限、建築物の建築面積の敷地面積に対する割合の最高限度、建築物の敷地面積の最低限度、壁面の位置の制限、建築物等の高さの最高限度、かき又はさくの構造の制限等を定め、将来における建築物の建替え、敷地の細分化等による環境の悪化を防止する必要がある場合
13) 当該地域の歴史及び風土に根ざした特色のある街並みを形成している地区について、壁面の位置の制限、建築物等の高さの最高限度、建築物等の形態又は意匠の制限等を定め、当該地区の特性に応じた特色ある景観を保全する必要がある場合
14) 健全な住宅用地等において、いけがきの設置を促進するため、かき又はさくの構造の制限を定め、コンクリートブロックべい等の建設を抑制し、良好な居住環境を形成し又は保持する必要がある場合
15) 建築協定により良好な市街地環境の形成又は維持が図られていた地区において、建築協定の有効期間が了するにあたり、引き続き良好な市街地環境の維持を図る必要がある場合
 16) 市街化調整区域において周辺にある程度の公共施設等が整備されており、良好な居住環境を確保することが可能な地区で、ゆとりある緑豊かな郊外型住宅用地として整備を行う場合
 17) 市街化調整区域において既存集落とその周辺や沿道地域で既に住宅が点在しているような地区において、良好な環境の確保を図るため、住宅や居住者のための利便施設等の建設を認めていく場合
 18) 市街化調整区域内の住居系の計画開発地において、周辺の景観、営農条件等との調和を図りつつ、市街化調整区域におけるゆとりある居住環境の形成、必要な公共・公益施設の整備等を行う場合
 19) 市街化調整区域における幹線道路の沿道等の流通業務、観光・レクリエーション等を主体とする開発が行われる地区等の非住居系の計画開発地で、必要な公共公益施設の整備を行いつつ、周辺の環境・景観と調和する良好な開発を誘導する場合
 20) 市街化調整区域内の既存住宅団地等において、市街化調整区域におけるゆとりある良好な都市環境の維持・増進を図る場合
 
(5)関係行政機関との調整
 
[1] 市町村の都市計画担当部局は、地区計画を定める場合には、中小小売・サービス業等の商業振興施策等との整合性を図る観点から商工部局と調整することが望ましく、港湾の秩序ある整備及び適切な運営との整合を図る観点から港湾管理者と協議するとともに、農林水産担当部局、農林水産関連企業担当部局その他関連部局と調整することが望ましい。また、都道府県の都市計画担当部局は、法第19条第3項に基づく同意を行う場合に、当該地域の良好な自然環境を保全する観点及び騒音等の環境保全上の支障を防止する観点から環境部局、中小小売・サービス業等の商業振興施策等との整合性を図る観点から商工部局と調整するとともに、農林水産担当部局、農林水産関連企業担当部局その他関連部局と調整することが望ましい。
なお、地区計画の区域内に国有林野及び公有林野等官行造林地が含まれる場合には、市町村の都市計画担当部局は関係森林管理局と調整することが望ましい。
 
[2] 公団、公社等の公的主体の施行する宅地開発事業、住宅建設事業等が行われる土地の区域について地区計画を定めようとするときは、事業計画と地区計画との齟齬をきたさないようにするため、これらの事業主体と調整することが望ましい。
 
[3] 市町村が市街化調整区域における地区計画を策定する場合には、都市計画担当部局はあらかじめ道路担当部局と調整することが望ましく、都道府県知事が、市街化調整区域における地区計画について同意を行う場合には、都市計画担当部局は道路担当部局及び、土地利用基本計画との調整の観点から土地対策担当部局と調整することが望ましい。
 
[4] 用途地域の定められていない土地の区域における地区計画を定める場合農林水産部局又は農林水産関連企業担当部局との間で行う調整は次によることが望ましい。
1) 地区計画を定める場合に、市町村の都市計画担当部局が当該市町村の農林水産担当部局との間で調整を行うときには、地区計画の区域の設定を含む地区計画の策定に当たり、法第12条の5第1項第2号の要件に該当すると見込むに足りる資料を添えて行うこと。
2) 都道府県知事が地区計画について同意を行う場合に、都市計画担当部局が農林水産担当部局との間で調整を行うときには、法第12条の5第1項第2号の要件に該当すると見込むに足りる資料を添えて行うこと。
1) 農林漁業及び農林水産物の処理、貯蔵若しくは加工の事業の円滑な実施に配慮し、これらの事業の継続に支障をきたさないようにするとともに、その事業を営む者の意見を十分聴くこと。
[5] 市街化調整区域並びに市街化区域及び市街化調整区域に関する区域区分を定めない都市計画区域内の用途地域が定められていない地域で地区計画を定める場合において、地区計画を決定しようとする土地の区域内に4haを超える農用地(農林水産大臣の転用許可権限の対象となるようなまとまったもの)が含まれるときは、都道府県知事があらかじめ地方農政局長(北海道にあっては農林水産省農村振興局長とし、沖縄県にあっては沖縄総合事務局農林水産部長とする。)と法第12条の5第1項第2号の要件に適合すると見込むに足りる資料を添えて調整することが望ましい。
 
[6] 用途地域が定められていない土地の区域について、地区計画を定めようとする土地の区域が公共用飛行場周辺である場合においては、市町村は、事前に都道府県の空港部局に連絡することが望ましい。
 
(6)その他
 
[1] 用途地域の定められていない土地の区域における地区計画は、当該地区計画に即した地区の整備又は保全が周辺の土地の農業上の利用に支障を及ぼすおそれがないよう定めることが望ましい。
[2] 用途地域の定められていない土地の区域における地区計画は、当該地区計画の区域における環境の保全に十分配慮するとともに、営農条件及び農村の生活環境の向上のための計画及び事業に悪影響を及ぼさないよう十分配慮することが望ましい。
 
[3] 高圧ガス保安法、火薬類取締法、石油コンビナート等災害防止法、液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律又は鉱山保安法の規制を受ける建築物等が存する場合にあっては、これらの法律による規制との整合性を保つようにするべきである。
[4] 学校その他公益上必要な施設及びガソリンスタンド、LPGスタンド、軽油スタンド等のようにその配置、形状等が特殊なものについて、その建築等に支障をきたさないようにすることが望ましい。
 
[5] 地区計画の区域内に学校その他の文教施設が存し、又は存することが確実な場合においては、その立地環境の維持向上についても勘案して定めることが望ましい。
 
[6] 工業用水道事業法、電気事業法、ガス事業法、石油パイプライン事業法及び熱供給事業法による事業については、その事業の円滑な実施に支障を及ぼさないようにすることが望ましい。
 
[7] 地区計画区域内に商店街整備計画、共同店舗等整備計画等中小小売・サービス業振興のための諸施策その他中小企業の振興のための諸施策が講じられ、又は講じられようとしている場合はこれら諸施策との整合性を保つことが望ましい。
 
2.地区計画の対象となる区域
 
(1)地区計画の区域の形状、規模等について
 
[1] 地区計画の区域の境界、法第12条の5第9項の規定に基づき地区計画の区域の一部について地区整備計画を定めない場合における地区整備計画の区域の境界及び地区整備計画において区域を区分して建築物等に関する事項を定める場合における区分の境界は、原則として道路その他の施設、河川その他の地形、地物等土地の範囲を明示するのに適当なものにより定めることが望ましく、これにより難い場合には、土地所有の状況、土地利用の現状及び将来の見通し、用途地域の指定状況、地区計画において定めることとなる道路等の施設の配置等を勘案して、敷地境界線等によりできる限り整形となるように定めることが望ましい。
 
[2] 地区計画の区域の面積については、特段の制約はないものの、地区計画が、一体として区域の特性にふさわしい態様を備えた良好な環境の各街区の整備等を行うための計画であることから、その区域については、例えば一ないし二の建築敷地のみを対象として設定することは適切でなく、街区形成に足る一定の広がりを持った土地の区域とすることが望ましい。
 
[3] 用途地域の定められていない土地の区域における地区計画の区域は、地区にふさわしい良好な市街地環境の形成を図るとともに、周辺の景観、営農条件等との調和を図るうえで、適切な規模及び形状を有するものとなるように定めることが望ましい。
 
(2)地区計画の対象区域について
 
[1] 法第12条の5第1項第2号イにおける「住宅市街地の開発その他建築物若しくはその敷地の整備に関する事業が行われる、又は行われた土地の区域」とは、次に掲げるところによることが望ましい。
1) 「住宅市街地の開発その他建築物若しくはその敷地の整備に関する事業」とは、次に掲げるものが考えられる。
a 法第34条第10号イに該当するものとして開発許可を受けた行為。
b 開発許可申請を行えば直ちに法第34条第10号イに該当するものとして開発許可を受けることが確実であることから当該事業が「行われる」段階にあるものとして、都道府県知事が認めた事業
c 法第29条第3号から第6号若しくは第9号に掲げる事業、法第43条柱書中法第29条第3号に規定する建築物の建築等に関する事業又は同条第1号、第2号若しくは第5号に掲げる事業(街区の整備に係る事業以外の事業にあっては、原則としてa、b又はcに該当する他の事業と一体的に行われ街区を形成するものに限る。)
d 住宅市街地の一体的開発で街区を単位とする事業。この場合、住宅と一体的に整備される居住者のための利便施設等を含むことは差し支えない。
2) 「事業が行われる土地の区域」について地区計画が策定された後、当該事業が行われないことが明らかとなった場合には、当該地区計画は定めることを要しないものとして速やかに都市計画の変更手続を行うことが望ましい。
 
[2] 法第12条の5第1項第2号ロの「土地の区域」としては、例えば、次に掲げるものが考えられる。
1) 家屋等の建築物が無秩序に集合又は点在している一団の土地の区域で、区域内の道路の配置又は幅員の状況、建築物の立地動向からみて、不良な街区の環境が形成されるおそれがあるもの。
2) 幹線道路沿道に面する一宅地の区域で、建築物の立地の動向、既存宅地の存在状況、周辺の土地利用の状況からみて、建築物の用途又は形態等が無秩序となるおそれがあり、不良な街区の環境の形成を防止する措置を講ずる必要があると認められるもの。
3) 上記以外の土地の区域であって、当該区域内における道路等の公共施設の整備状況、建築物の立地動向から見て、建築物の建築又はその敷地の造成が行われることが十分に予想される条件を備えている上、建築物の用途又は形態等が無秩序となるおそれがあり、特に不良な街区の環境の形成を防止する措置を講ずる必要があると認められるもの。
また、この場合の地区計画の区域は、不良な街区の環境の形成を防止する観点から必要不可欠な範囲とし、いたずらに規模を広くとることのないように配慮することが望ましい。なお、区域区分を行う都市計画区域において、地区計画を市街化区域に隣接する区域に定めようとする場合は、当該区域を市街化区域に編入することの妥当性についても検討することが望ましい。
 
[3] 法第12条の5第1項第2号ハにおける「健全な住宅市街地における良好な居住環境その他優れた街区の環境が形成されている土地の区域」については、次に掲げるところによることが望ましい。
1) 当該区域は、住宅の連たんする街区により構成され、良好な居住環境を既に有している都市的な市街地であって、主として農林漁業者以外の者が居住する住宅市街地の土地の区域であり、集落地域整備法(昭和62年法律第63号。以下「集落法」という。)に規定する「集落地域」に加え、農山漁村の既存集落は含まれないものであること。
また、区域区分を行う都市計画区域においては、区域区分が行われる前から既に健全な住宅市街地として存在していた土地の区域に限られるものであること。
 
[4] 地区計画を策定しようとする区域内の土地について、他の法令による土地利用に関する規定又は土地利用の規制がある場合には、それらの規定又は規制との整合性を取る観点から、以下の点によることが望ましい。
1) 防衛施設(駐屯地、訓練場、演習場その他これらに類する施設)が存する地区については、地区計画を定めないこと。
2) 工場立地法第6条第1項に規定する特定工場が立地している地区については、原則として地区計画の区域に含めないことが望ましいが、当該地区を地区計画の区域に含める場合にあっては、同法第4条第1項の工場立地に関する準則との調和を保つよう十分配慮すること。
3) 臨港地区及び港湾隣接地域については、港湾法第2条第5項の港湾施設以外の施設が密集している区域についてのみ地区計画の区域に含めることは差し支えないが、この場合においては、次の点に留意して地区計画を定めること。
a 港湾計画に違背しないものとすること。
b 港湾施設用地(港湾施設以外の施設が密集している区域にあってそれらの施設と密接不可分な道路用地を除く。)は、原則として、当該地区計画の区域に含めないこと。
4) 用途地域が定められていない土地の区域における地区計画の区域には、次の区域又は土地が含まれるべきでない。
a 農用地区域。
b 農村地域工業等導入促進法(昭和46年法律第112号)に規定する工業等導入地区。
c 流通業務市街地の整備に関する法律(昭和41年法律第110号)の規定により流通業務団地の都市計画の定められている土地の区域。
d 集落法第3条に規定する集落地域。(ただし、同法第4条に規定する集落地域整備基本方針が定められた場合にあっては、同条第2項第1号に規定する基本的事項の内容に該当する集落地域に限る。)なお、集落地域においては、集落地区計画制度により営農条件と調和のとれた良好な居住環境の確保と適正な土地利用を図るよう努めることが望ましい。
e 農地法による農地転用が許可されないと見込まれる農用地。
また、当該区域には、原則として農用地を含めないこととし、例外的に含まれる場合であっても、その農用地は、市街地の区域内又は市街地化の傾向が著しい区域内にある農地であること。
5) 用途地域が定められていない区域における地区計画の区域には、原則として保安林等を含めるべきでなく、含める場合であっても、保安林等の指定の目的に反する制限は定めないことが望ましい。
  また、用途地域が定められていない区域における地区計画の対象とする森林は、街区に介在する森林に限られるものとすることが望ましい。
6) 用途地域が定められていない区域における地区計画の区域と自然環境保全法の指定地域及び自然公園法の特別地域とは、極力重複させないようにすることが望ましい。
7) このほか、用途地域が定められていない区域における地区計画は、一定の道路整備がなされた又はなされることが確実な土地の区域を対象とすることが望ましい。
8) 優良田園住宅の建設の促進に関する法律(平成10年法律第41号)第3条に規定する優良田園住宅の建設の促進に関する基本方針において、市街化調整区域内の土地について同条第2項第1号の優良田園住宅の建設が基本的に適当と認められるおおよその土地の区域に関する事項が定められる場合には、必要に応じ、周辺環境と調和した良好な居住環境を確保するため、地区計画制度を活用することが望ましい。
 
3.地区計画の都市計画において決定すべき事項
 
(1)地区計画の目標等
 
[1] 地区計画の目標及び当該区域の整備、開発及び保全に関する方針(以下「地区計画の目標等」という。)は、当該地区整備等の総合的な指針として定められ、さらに、地区整備計画がこの地区計画の目標等に沿って定められるものであるので、当該区域の整備等をどのように行い、どのような形態の市街地を形成しようとするかなどについて、関係権利者、住民等が容易に理解できるように定めることが望ましい。
 
[2] 市街化調整区域において定められる地区計画の目標等においては、市街化調整区域の性格を踏まえ、自然環境の保全、ゆとりある良好な市街地環境の維持・形成、周辺の景観、営農条件等との調和、地域の活性化等について、地区の特性から必要な事項を、当該地区計画の目標等として明らかにすることが望ましい。
 
(2)地区整備計画
 
 地区整備計画は、当該地区計画の方針に即して、地区の特性にふさわしい良好な都市環境の維持・形成を図るため、地区施設の配置及び規模、建築物等に関する事項並びに土地の利用に関する事項について必要な事項を適切に定めるべきものである。
 
[1] 地区整備計画に定める地区施設に関する事項
地区施設の配置及び規模を定めるにあたっては、次によることが望ましい。
1) 道路の配置及び規模を定める際には、街区の規模及び形状、地区計画の区域内の建築物の建築その他の土地利用の現状及び将来の見通し等を考慮し、地区計画の区域及びその周辺において都市計画に定められている道路及びその他の道路を含めた道路網と一体となって、防災、安全、衛生等に関する機能が十分確保されるよう配慮することが望ましい。
2) 公園、緑地、広場その他の公共空地の配置及び規模は、地区計画の区域の規模及び形状、当該区域内に予定されている建築物の用途、将来の人口等を勘案し、当該区域及びその周辺において都市計画に定められている公共空地及びその他の公園等と併せて生活環境の維持・向上が図られるよう定めること。
なお、建築基準法上、地区計画で道路の配置及び規模が定められている場合には、道路の位置の指定は、当該道路の配置に即して行われることとされていることから、歩行者専用道路、緑道等でそれに即して道路の位置の指定が行われると地区計画の目的を達成する上で支障が生じると考えられるものについては、公共空地として定めることが望ましい。
3) 地区施設の配置及び規模が定められると、これに即して道路の位置の指定又は開発許可が行われることに留意すべきこと。
4) 地区施設には都市計画施設を含まないものとされているので、地区施設として定められている道路、公園等を都市施設として都市計画に定めようとするときは、併せて地区計画に関する都市計画を変更する必要があること。
 
[2] 地区整備計画に定める建築物等に関する事項
 建築物等に関する事項を定めるにあたっては、次によることが望ましい。
1) 一の地区計画の区域内において、当該区域内における適正かつ合理的な土地利用の実現を図る観点から必要がある場合には、一の計画事項を区域の一部について定め、又は区域を区分してそれぞれ異なる内容を定めることも考えられる。
2) 面積、高さ等の算定方法については、特段の定めをしない限り建築基準法の算定方法に関する一般的な原則によることとなるが、地区計画に当該算定方法を明記したうえで、それと異なった算定方法を用いることも考えられる。
3) 建築物等の用途の制限は、当該区域の用途構成の適正化、各街区ごとの住居の環境の保持、商業その他の業務の利便の増進等により良好な環境の街区が形成され、又は保持されるよう定めること。この場合において、「一階を店舗又は事務所とする。」、「三階以上を住宅とする。」等立体的に用途の制限を定め、あるいは建築基準法第68条の2第5項の規定に基づき、同法第48条第1項から第12項までの規定による制限を緩和することも可能である。
4) 容積率の最高限度、建ぺい率の最高限度及び建築物等の高さの最高限度は、当該区域の土地利用の適正な増進にも配慮しつつ、良好な環境の各街区が形成され、又は保持されるように定めること。
5) 建築物の敷地面積の最低限度は、建築物の敷地が細分化されることにより、又は建築物が密集することにより、住宅等の敷地内に必要とされる空地の確保又は建築物の安全、防火若しくは衛生の目的を達成することが困難となる区域について、当該区域の良好な住居等の環境を維持・増進することを主旨としていることを踏まえ、当該地区内の建築物及び敷地の状況等を勘案し、過度の権利制限とならない範囲で定めること。
6) 壁面の位置の制限は、道路に面して又は他の建築物との間に有効な空地が確保されること、又は区域内における建築物の位置を整えることにより、良好な環境の各街区が形成され、又は保持されるように定めること。なお、壁面の位置の制限は地盤面からの高さにより異なる内容とする等、立体的に定めることも可能である。
7) 壁面後退区域における工作物の設置の制限は、建築基準法第2条第2号に定める建築物(建築物に附属する門、塀を除く。)以外の工作物に関して高さの最高限度若しくは最低限度、位置、用途、形態若しくは意匠又は構造が当該地区の特性にふさわしいものとなるよう定めることが望ましい。なお、壁面の位置の制限を立体的に定めた場合における壁面の位置の制限として定められた限度の線は、地盤面において定められた壁面の位置の制限の限度の線となる。
8) 建築物等の高さの最低限度、容積率の最低限度及び建築物の建築面積の最低限度は、商業その他の業務又は住居の用に供する中高層の建築物を集合して一体的に整備すべき区域その他の土地の高度利用を図るべき区域について、当該区域の土地の高度利用を促進するように定めること。
9) 建築物等の形態又は意匠の制限は、建築物等の屋根・外壁その他戸外から望見される部分の形状、材料、色彩等について、建築物等が当該地区の特性にふさわしい形態又は意匠を備えたものとなるように定めること。
10) かき又はさくの構造の制限は、かき又はさくの高さ、材料、形状、色彩等について、かき又はさくの構造が、当該地区の特性にふさわしいものとなるように定めること。
 
[3] 地区整備計画に定める土地の利用に関する事項
1) 現に存する樹林地、草地等で良好な居住環境の確保に必要なものの保全を図るための制限に関する事項には、必要に応じて、以下の内容を定めることが望ましい。
樹林地、草地のほか、水辺地、湿地帯、街道の並木、樹林やいけがきの存する土地等(これらに隣接している土地でこれらの土地と一体となって良好な環境を形成しているものを含む。)で良好な居住環境を確保するため必要なものについて樹木等の全部又は特定の樹種・樹高等を限っての伐採の制限、池沼の埋立等土地の形質の変更の制限等を定めること。この場合において、例えば、当該地区計画の区域の全部又は一部が、現に樹木が多数植栽されている住宅地等であるときは、当該住宅地等の全部又は一部について、一体的に保全を図るための制限を行う区域として定めることも考えられる。
2) 用途地域の定められていない土地の区域における地区計画に係る地区整備計画の土地の利用に関する計画には、計画内容として農用地に関する事項、令第7条の6に規定する事項以外の森林に関する事項を定めるべきでない。
また、森林法第5条の地域森林計画対象民有林並びに国有林野及び公有林野等官行造林地について、令第7条の6に規定する事項を定めるべきではない。
 
(3)再開発等促進区
 
[1]趣旨
 再開発等促進区を定める地区計画は、まとまった低・未利用地等相当程度の土地の区域における土地利用の転換を円滑に推進するため、都市基盤整備と建築物等との一体的な整備に関する計画に基づき、事業の熟度に応じて市街地のきめ細かな整備を段階的に進めることにより、都市の良好な資産の形成に資するプロジェクトや良好な中高層の住宅市街地の開発整備を誘導することにより、都市環境の整備・改善及び良好な地域社会の形成に寄与しつつ、土地の高度利用と都市機能の増進を図ることを目的としている。
 このため、例えば、次に掲げる場合において再開発等促進区を指定することが考えられる。
1) 工場、倉庫、鉄道操車場又は港湾施設の跡地等の相当規模の低・未利用地について、必要な公共施設の整備を行いつつ一体的に再開発することにより土地の高度利用を図る場合
2) 埋め立て地等において必要な公共施設の整備を行いつつ一体的に建築物を整備し、土地の高度利用を図る場合
3) 住居専用地域内の農地、低・未利用地等における住宅市街地への一体的な土地利用転換を図る場合
4) 老朽化した住宅団地の建替えを行う場合
5) 木造住宅が密集している市街地の再開発等の場合
 
[2] 基本的な考え方
1) 区域の規模及び形状
a 再開発等促進区の区域は、土地利用転換の動向の顕著な土地の区域及びその周辺の地域の状況を考慮し、都市機能の更新や住宅市街地の開発整備を一体的かつ総合的に行うべき土地の区域として適切なものとなるように定めることが望ましい。
b 再開発等促進区における地区整備計画の区域は、これを段階的に定める場合にあっても、その各々が1以上の建築物を含む街区又はこれに準ずる区域で、一団の市街地環境の形成を行う単位として適切なものとなるように定めることが望ましい。
c 農村地域工業等導入促進法に基づく工業等導入地区、工場立地法第2条第1項の規定に基づく工場適地並びに現に工場が立地し、又は立地することが確実なおおむね1ha以上の一団の土地の区域で今後相当期間にわたって工場として利用されることが見込まれるものについては、これらを再開発等促進区の区域に含めるべきでない。
d 再開発等促進区の区域内に、国有林野及び公有林野等官行造林地区は含めるべきではない。
e 防衛施設である飛行場周辺の住居専用地域などで、土地の高度利用を図ることが不適切な地区については、再開発等促進区の区域に含めるべきではない。
2) 再開発等促進区の土地利用に関する基本方針
a 法第12条の5第4項第1号の再開発等促進区の土地利用に関する基本方針(以下「再開発等促進区の方針」という。)に基づき再開発等促進区内の地区整備計画が定められるとともに、法第21条の2の規定に基づき再開発等促進区内の地区整備計画に係る計画提案が行われる際には、当該提案が再開発等促進区の方針を踏まえて行われることとなるので、誘導すべき市街地の態様等について関係権利者、住民等が容易に理解できるように定めることが望ましい。
b 法第12条の5第5項の「特別の事情があるとき」とは、再開発等促進区の区域が広い範囲にわたり、土地の所有者その他の利害関係を有する者の意見調整に時間を要する等の場合である。このため、当該事情が解消した場合には、同条第4項第2号の道路、公園その他の政令で定める施設(「2号施設」という。「W−2−1 G 3.(3)再開発等促進区」において同じ。)の配置及び規模又は再開発地区整備計画を定めることが望ましい。この場合において、再開発等促進区内の地区整備計画を定める前に当該再開発等促進区の区域に必要な2号施設を適切な配置及び規模で定めることが望ましいが、幹線道路に接している土地の区域など土地利用転換にあたって必要な公共施設が整備されている区域に限って地区整備計画を定める場合にはこの限りでない。
c 特定行政庁が建築基準法第68条の3第6項の規定により読み替えられた同法第48条第1項から第12項までのただし書に規定する許可を行おうとする場合には、再開発等促進区の方針に定める内容がその前提となるので、再開発等促進区の方針においては、土地利用転換の方向及び市街地の環境形成上の目的が明示されるように記述することが望ましい。
d 住居専用地域内の住宅市街地において必要とされる商業等の都市機能については、再開発等促進区の方針において位置づけることが望ましい。ただし、住宅市街地の性格を大きく変えたり、周辺の住宅に係る環境の保護に支障を生ずるおそれのあるものを位置づけることは望ましくない。
e 新たな土地利用への転換に伴い整備が必要となる都市計画施設については、必要に応じ、再開発等促進区と同時に決定することが望ましい。
3) 2号施設及び地区施設
a 道路
@ 土地利用の転換にあたって基本となる道路については、2号施設として定めることとし、区画街路等専ら、地区の居住者等の利用に供される道路は地区施設として定めるべきである。なお、都市の主要な骨格をなす道路等については、都市計画施設として定めるように努めることが望ましい。
A 道路の幅員は、2号施設については原則として12m以上(歩行者の通行を前提としないものや、区域の規模、再開発等促進区の方針等を勘案して支障のない場合には原則として8m以上)、地区施設については原則として6m以上とすることが望ましい。
b 公園、緑地、広場その他の公共空地
@ 土地利用の転換にあたって基本となる公園、緑地、広場その他の公共空地については2号施設として定めることとし、それ以外の、主として地区内の居住者等の利用に供される小規模な公園、緑地、広場その他の公共空地は原則として地区施設として定めるべきである。なお、都市における避難地、レクリエーション、交流の場等としての機能をもつ基幹公園、広場等については、公園、広場等の都市計画施設として定めることが望ましい。
A 再開発等促進区で道路の配置及び規模が定められている場合には、建築基準法第68条の6の規定に基づく道路の位置の指定は、当該道路の配置に即して行うこととされているが、歩行者用通路、緑道、駐車場の車路等でそれに即して道路の位置の指定が行われると地区計画の目的を達成するうえで支障が生ずると判断するものについては、再開発等促進区においては公共空地として定めておくことが望ましい。
c 2号施設には都市計画施設を含まないこととされているので、2号施設として定められている道路又は公園、緑地、広場その他の公共空地を都市施設として都市計画に定めようとするときは、併せて再開発等促進区に関する都市計画を変更するべきである。
  4) 再開発等促進区内の地区整備計画に定める建築物等に関する事項
a 基本的事項
建築基準法第68条の2に基づく市町村の条例は、建築規制にふさわしい内容のみ定め得ることとされており、都市計画の決定内容がそのまま条例化されるとは限らないことに留意するべきである。
b 建築物等の用途の制限
@ 建築物等の用途の制限は、地区計画の目標を達成するため必要な都市機能が適切に配置されることにより、良好な居住環境の確保、商業その他の業務の利便の増進等に貢献するように定めることが望ましい。
A 複数の用途の複合した市街地の形成を図る必要がある場合には、諸機能がそれぞれ適切に更新されるとともに、各機能の効率的な連携が確保されつつ適切な用途構成が形成されるようにきめ細かく定めることが望ましい。
c 容積率の最高限度又は最低限度
@ 容積率の最高限度は、用途地域に関する都市計画に定められている容積率に関わりなく制限の緩和についても定めることができる。制限の緩和に当たっては、地域の特性に応じて土地の高度利用が促進されるよう、柔軟な運用を図ることが望ましい。
A 容積率の最高限度は、以下により、都市環境に著しく支障をきたさず、かつ、優良なプロジェクトが誘導されるように適切に定めることが望ましい。
ア 区域の広域的な交通網を踏まえた都市構造上の位置関係を勘案すること。
イ 整備する2号施設の配置及び規模、周辺地域も含めた交通施設及び供給処理施設の容量、周辺地域に対する環境上の影響等の検討及び当該プロジェクトの良好な地域社会の形成に対する寄与の程度等について総合的な評価を行い、これらの結果を踏まえること。
なお、イの評価を行うにあたっては、屋上緑化や相当程度の高さ及び樹容を有する樹木の植栽等による環境への寄与の程度を加味することも考えられる。
B 地区整備計画においては、街区ごとに異なる容積率の最高限度を定める等、詳細な指定ができるので、当該区域における市街地空間の計画にあたって局所的に高い容積率の設定を必要とする場合、区域内の歴史的建造物等の保全を図る場合等において活用することが望ましい。この場合、局所的な公共施設に対する負荷の発生等によって、近隣の環境に著しい支障を来すことのないように定めることが望ましい。
C 土地利用転換にあたって特定の用途を誘導することが適切な場合には、必要に応じ、用途別に容積率の最高限度を定める等の方法を活用することが望ましい。
特に、大都市地域等住宅の確保が強く要請されている地域においては、再開発を通じて良好な都市型住宅の供給が積極的に行われるべきことを踏まえ、相当戸数の住宅の供給を図るプロジェクトについては、容積率の最高限度はこれに配慮して定めることが望ましい。
D 容積率の最低限度は、土地の高度利用を促進するため、高密度の利用を図るべき区域について定めることが望ましい。この場合において、容積率の最低限度の数値は、用途地域に関する都市計画により定められた容積率の最高限度(以下「指定容積率」という。)の数値の範囲内で適正な値を定めることが望ましい。
d 建ぺい率の最高限度
@ 建ぺい率の最高限度は、敷地内に空地を適切に確保することにより、良好な環境を備えた各街区が形成されるように定めることが望ましい。
A 建ぺい率の最高限度を定める場合において、建築基準法第68条の3第2項の規定により、用途地域に関する都市計画に定められている建ぺい率に関わりなく、60%を上限として、制限の緩和についても定めることができることに留意することが望ましい。
B 周辺地域の環境との調和を図るため、住居専用地域内の再開発等促進区の区域内の建築物についてはその形態等に十分な配慮がなされる必要があることから、例えば、当該再開発等促進区の区域と周辺市街地の境界部分等において、隣接する土地の形状及び利用状況等に応じて建築物の高さを抑えつつ当該再開発等促進区内の地区整備計画で定めた容積率制限に従って土地の高度利用を図る必要のある場合等に限って、建ぺい率の最高限度について制限の緩和を定めることが望ましい。この場合において、住宅市街地に必要とされる適切な規模の空地を敷地内に確保することにより、良好な環境を備えた各街区が形成されるように定めることが望ましい。
e 建築物等の高さの最高限度
@ 建築物等の高さの最高限度は、近隣に対する日照等の環境を保持すること又は区域内における建築物のスカイラインを整えることにより、良好な市街地空間が形成されるように定めることが望ましい。
A 建築物等の高さの最高限度を定める場合において、第一種低層住居専用地域又は第二種低層住居専用地域における絶対高さ制限についてこれを緩和するときには、建築基準法第68条の3第3項で定める20mの限度の範囲内で、必要に応じ、街区を単位として高さ制限の数値を区分してきめ細かく定める等、周辺の住宅市街地の良好な環境との調和を図り、これに支障を与えることなく、当該区域の特性にふさわしいものとなるように定めることが望ましい。
f その他の建築物等に関する制限
@ 建築物の敷地面積の最低限度は、敷地の細分化を防止し、又は共同化を促進することにより、土地の高度利用を図るべき区域について定めることが望ましい。この場合において、建築物の敷地面積の最低限度の数値は、当該区域における敷地規模の現況及び誘導すべき容積率の程度等を勘案して、適切なものとなるように定めることが望ましい。
A 建築物の建築面積の最低限度は、狭小な建築物の建築を防止し、又は相当規模の建築物の建築を促進することにより、土地の高度利用を促進すべき区域について定めることが望ましい。この場合、良好な環境を備えた街区の形成を図るため、建築物の敷地面積の最低限度を併せて定めるように努めることが望ましい。
B 壁面の位置の制限は、特に、土地の高度利用を図る際に、建築物の周囲の道路における歩行者交通の処理を適切に補完する必要がある場合には、これを積極的に活用することが望ましい。
g 土地の利用に関する制限
@ 地区整備計画には、農用地(生産緑地の対象となっている農用地を除く。)及び保安林又は保安施設地区の保全に関する事項を定めるべきでない。
5) 工業専用地域等の工場跡地の円滑な土地利用転換について
工業専用地域等の工場跡地等で、土地利用転換は見込まれるものの、プロジェクトが個別的かつ具体的に確定していない場合にあって、用途地域の変更に先行してより幅広い用途の建築を可能とし、段階的かつ円滑な土地利用転換を実現する必要がある場合には、2)〜4)の運用の一部を次のように替えて行うことも考えられる。
a 2)cの「再開発等促進区の方針においては、土地利用転換の方向及び市街地の環境形成上の目的」については、個別の確定的なプロジェクトを前提とするものではないことから、大まかな方向を示すことで足りるものと考えられる。
b 3)の「2号施設及び地区施設」については、土地利用転換により新たに形成される市街地における建築物の用途及び空間の構成等が明確になっていないことから、あらかじめ必ずしも定めることを要しないと考えられる。ただし、大きな発生集中交通を生じる建築物であることが明確になった場合には、これらの交通を処理するため、再開発等促進区又は地区整備計画においてあらかじめ又は変更することにより2号施設若しくは地区施設を定め、又は敷地内に有効な通路等を設けた建築計画とする必要があると考えられる。
c 4)bの「建築物等の用途の制限」においては、@及びAに関わらず、土地利用に関する基本方針において幅広い用途を許容し、想定しうる用途の範囲等を定めるものとすることが考えられる。
d 4)cの「容積率」においては将来の土地利用が未確定であることから、用途地域に関する都市計画に定められている制限を超えた内容を定めないことが望ましい。なお、具体的な建築計画と2号施設等とが一体として定められる場合や、住宅等特定の用途を誘導する場合等個別の建築計画を踏まえ、従来型の再開発等促進区内の地区整備計画等を定めることが可能な場合にあっては、用途地域に関する都市計画に定められた制限の緩和を行いうると考えられる。
e 4)dの「建ぺい率の最高限度」、4)eの「建築物等の高さの最高限度」及び4)f「その他の建築物等に関する制限」は、個別の確定的なプロジェクトを前提とするものではないことから、あらかじめ定める必要がないと考えられる。
f 従来型の再開発等促進区内の地区整備計画等が定められる場合以外の場合には、建築基準法第68条の3の規定に基づく、容積率の最高限度、道路斜線制限、隣地斜線制限、北側斜線制限等の緩和の特例は、原則として適用されないことに留意すべきである。
g 建築基準法第68条の3の規定に基づく、用途制限の緩和の特例は、再開発等促進区の方針及び地区整備計画の建築物等の用途の制限が幅広い用途を許容していることを前提とし、この特例の適切な活用を図ることが望ましい。
 
[3]配慮すべき事項
1) 再開発等促進区に関する都市計画を定めるにあたっては、以下によりその対象となる区域及びその周辺において定められている他の都市計画と併せて当該区域における土地の高度利用と都市機能の増進が図られるように定めることが望ましい。なお、「土地の合理的かつ健全な高度利用」及び「都市機能の増進」には、良好な生活環境の保全が含まれるものである。
a 再開発等促進区を定めようとするときは、2号施設の整備の必要性と地区内の既存建築物への配慮などから、用途地域に関する都市計画は、変更しないことが望ましい。ただし、プロジェクトが完成し、又は概成した時点においては、当該再開発等促進区の区域において形成された良好な市街地環境の保全に配慮しつつ、当該区域についてその土地利用にふさわしい用途地域に関する都市計画に変更することも考えられる。また、[2]5)の場合においては、用途地域が変更されることを前提に、建築基準法第48条のただし書き許可が行われることとなるので、地区内の用途変更が一定程度進んだ段階で用途地域を変更することが望ましい。
b 再開発等促進区の区域における土地利用転換に伴い、都市施設等に関する都市計画の見直しが必要となるときは、これを併せて行うことが望ましい。なお、土地利用転換による交通上の影響が広範に生ずると認められる場合においては、土地利用転換が適切になされるとともに効率的な都市活動が確保されるよう、都市交通に関する広域的な検討を行い、適宜都市計画道路の見直しを行うことが望ましい。
2) 再開発等促進区において、高度地区の高さの最高限度に関する緩和を行うことはできないので、必要に応じ、両方の都市計画の調整を図るべきである。
3) 再開発等促進区の区域においても、その地下にトンネル構造の道路(道路法上の道路で、当該道路の区域を空間又は地下について上下の範囲を定めたものに限る。)が都市計画決定されている場合には、その地上部分の建築物の建築を法第53条の許可対象としても差し支えない。
4) 住居専用地域において再開発等促進区を決定するにあたっては、当該区域内の駐車場の需要及び供給も勘案することが望ましい。
5) 建築基準法の特例制度等の活用
 建築基準法第86条第1項に規定する一団地認定制度を活用することも考えられる。特に、一団地認定制度と同法第68条の3第1項から第3項までに規定する容積率制限、建ぺい率制限又は絶対高さ制限の緩和の認定は併用することができることとされ、一団地内に2以上の構えをなす建築物を総合的設計により建築する場合において、特定行政庁が支障がないと認めるものについては、一団地単位で容積率制限、建ぺい率制限又は絶対高さ制限を緩和する認定を行うことが可能であるので、必要に応じ適切な活用を図ることが考えられる。
 なお、総合設計制度、壁面線の指定の制度についても、再開発等促進区の趣旨に適合する場合においては併せて活用することが考えられる。
6) 他の法令等との調整
再開発等促進区を定めるにあたっては、他の法令の規定等との調整の観点から、以下によることが望ましい。
a 工業再配置計画、産炭地域振興基本計画、高度技術に立脚した工業開発に関する計画及び特定事業の集積の促進に関する計画に十分配慮すること。
b 再開発等促進区の区域内の商工業者の経済力、店舗等の新設及び改造計画に配慮するとともに、必要に応じ、この観点から建築物等の制限の内容について検討する必要があること。
c 都道府県は、再開発等促進区に関する事項に同意するにあたっては、水道法に基づく広域的水道整備計画、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「廃棄物処理法」という。)に基づく一般廃棄物処理計画及び産業廃棄物処理計画並びに医療法(昭和23年法律第205号)に基づく医療計画の達成に支障がないように配慮することが望ましい。
d 再開発等促進区を定める場合又は法第58条の2第3項の規定による勧告を行う場合には、史跡名勝天然記念物、伝統的建造物群、埋蔵文化財等の文化財の保護に配慮する必要があること。
7) 関係行政機関との調整
a 再開発等促進区を定める地区計画の運用にあたっては、当該地区計画に関する都市計画の内容に照らして特定行政庁が認定等を行うことにより用途地域による建築物の制限を緩和する特例措置が設けられているので、都市計画担当部局と建築担当部局は事前に調整を図ることが望ましい。
b 再開発等促進区を定める地区計画を定めるにあたって、当該区域内に保安林又は保安施設地区が含まれるときは、都道府県の都市計画担当部局はその権限者と協議を行い、調整を了したうえで、都道府県は法第19条第1項の同意を行うことが望ましい。
c 臨港地区、港湾隣接地域、港湾施設が相当程度集積している港湾区域内の埋立地又は港湾施設用地において再開発等促進区を定める地区計画を定め、又は変更しようとするときは、港湾の秩序ある整備と適正な運営との整合をはかる観点から、関係港湾管理者と協議することが望ましい。
また、再開発等促進区を定める地区計画に定める内容は、港湾計画に違背しないものとするべきであるとともに、港湾法第39条の規定に基づく分区が定められている場合には、再開発等促進区内の地区整備計画に建築物等の用途の制限を定めないことが望ましい。
なお、港湾管理者が、臨港地区、港湾隣接地域、港湾施設が相当程度集積している港湾区域内の埋立地又は港湾施設用地の地域における再開発等促進区を定める地区計画の策定について市町村に申し出た場合には、市町村はこれを十分に尊重することが望ましい。
d 再開発等促進区を定めるにあたっては、必要な都市基盤施設の整備が必要なことから、都市基盤施設整備担当部局及び市街地開発事業担当部局と事前に調整を図ることが望ましい。
また、再開発等促進区に2号施設の配置及び規模を定めようとするときは、あらかじめ、当該2号施設を管理することとなる道路管理者と調整を図ることが望ましい。なお、再開発地区計画に係る2号施設を当初の都市計画決定の段階で決定しない場合には、当該都市計画決定にあたって、都市計画担当部局は、その内容をあらかじめ道路担当部局に通知することが望ましい。
e 特に良好な住宅市街地の開発整備を必要とする区域については、住宅政策担当部局及び関係機関と緊密な連絡調整を行うとともに、当該区域において公的賃貸住宅の積極的供給、優良な民間賃貸住宅への助成等総合的な住宅施策が講じられるよう努めることが望ましい。
 
4.誘導容積型地区計画(法第12条の6)
 
(1)趣旨
 
法第12条の6の規定(以下単に「誘導容積型地区計画」という。)は、土地の有効利用が必要とされているにもかかわらず、公共施設が未整備のため、土地の有効利用が十分に図られていない地区が広範に存し、一方で市街地が外延的に拡大するという都市構造上の問題に対応するため、公共施設を伴った土地の有効利用を誘導することを目的としている。
本制度の適用の例としては、以下のような場合が考えられる。
1) 老朽化した木造共同住宅が密集している地域等居住環境が不良な住宅市街地において、公共施設を整備しつつ、建築物の建替え等を誘導し、適正かつ合理的な土地利用の促進、居住環境の向上等を図る必要がある場合
2) 計画的宅地化を図るべき市街化区域内農地の存する地域、新たに市街地として開発整備を図るべき地域等において、公共施設を整備しつつ、良好な市街地の形成を図る必要がある場合
3) 未整備な幹線道路の沿道の地域において、幹線道路及び地区の公共施設を整備しつつ、一体的に土地の有効利用を図る必要がある場合
 
(2)基本的な考え方
 
[1] 区域の形状、規模について
地区整備計画の区域は、公共施設の整備と土地の有効利用を一体的に行うべき土地の区域として、適切な広がり及び形状を有するものとなるように定めるべきである。
 
[2] 容積率の最高限度
 指定容積率の変更と併せて誘導容積型地区計画を適用する場合には、変更前の指定容積率にも配慮して暫定容積率を定めることが望ましい。
 地区整備計画の区域内の用途地域の指定状況、土地利用の現況及び動向、公共施設の整備状況等によって必要がある場合は、当該区域を区分して目標容積率若しくは暫定容積率を定め、又は当該区域の一部について目標容積率及び暫定容積率を定めることも考えられる。
 
[3] 地区施設の配置及び規模
1) 誘導容積型地区計画を建築規制として適用するためには、建築基準法第68条の4において、地区施設の配置及び規模を必ず定めることとされており、この場合、当該地区の実情に応じて、少なくとも主として地区内の居住者等の利用に供されることが想定される道路、公園その他の施設であって、地区内の土地の有効利用に必要となるものを、地区施設として定めることが望ましい。
2) 地区施設としての道路は、当該地区の土地の有効利用に必要な配置及び規模を有するように定めることが望ましい。
なお、誘導容積型地区計画は、建築基準法第52条第2項の規定による前面道路の幅員による容積率制限に係る特例ではないことから、本制度の趣旨が適切に生かされるよう地区施設としての道路の幅員設定には十分配慮する必要がある。
3) 誘導容積型地区計画の適用が考えられるが、必要な地区施設の配置及び規模を定めることが当面できない場合には、まず、地区整備計画において、暫定容積率に相当する容積率の最高限度を定め、地区施設の配置及び規模を定めることが可能となった段階で、地区整備計画を変更し、誘導容積型地区計画を適用することも考えられる。
 
(3)配慮すべき事項
 
[1] 地区整備計画の区域内において適正な配置及び規模の公共施設が整備された場合には、都市計画担当部局は建築担当部局と協議のうえ、都市計画を適切に見直すことが望ましい。なお、当該区域のうち、公共施設の整備と一体的に土地の有効利用を行う単位として適切な一団の土地について適正な配置及び規模の公共施設の整備が行われた場合には、必要に応じて、当該一団の土地について見直すことが望ましい。
 
[2] 特定行政庁の認定は、誘導容積型地区計画の趣旨を実現する上で重要な役割を果すものであり、また、地区施設の整備状況等を適切に見定める必要があることから、地区計画の策定及び特定行政庁の認定の運用に関し、都市計画担当部局と特定行政庁との間で調整を図ることが望ましい。
 
[3] 他の地区計画に関する制度との併用について
1) 法第12条の7(容積適正配分型地区計画)との併用について
地区の特性から区域を区分して建築物の容積を適正に配分する必要があるが、適正な配置及び規模の公共施設がないためその整備を併せて行う必要がある場合には、誘導容積型地区計画及び容積適正配分型地区計画を併せて適用し、目標容積率について、容積の適正配分を行い、建築基準法第68条の4及び同法第68条の5を適用することが望ましい。なお、暫定容積率については、公共施設が未整備である状況に対応して定められるものであることから、容積の配分の対象とはならないものである。
2) 法第12条の9(用途別容積型地区計画)との併用について
地区の特性から、住宅の用途に供する建築物に係る容積率の制限の特例を設ける必要があるが、適正な配置及び規模の公共施設がないためその整備を併せて行う等の必要がある場合には、誘導容積型地区計画及び用途別容積型地区計画を併用し、目標容積率を用途別に定め、建築基準法第68条の4及び同法第68条の5の3を適用することが望ましい。なお、暫定容積率については、公共施設が未整備である状況に対応して定められるものであることから、用途別に容積を定める対象とならないものである。
3) 法第12条の10(街並み誘導型地区計画)との併用について
地区の特性から、建築物の形態を一体的に誘導するとともに、その交通状況等からみてその交通を処理する一部の主要な道路について拡幅が必要な場合に地区施設を定めるときには、建築物の形態を一体的に誘導する必要のある区域に街並み誘導型地区計画を定めるとともに、当該道路沿道について誘導容積型地区計画を併用し、建築基準法第68条の4及び同法第68条の5の4第1項を適用することが望ましい。この場合において、目標容積率については、法第12条の5第3項第2号に基づき定められる容積率の最高限度と同一の値として定めるとともに、暫定容積率は、前面道路幅員による容積率の値以下であって、指定容積率の変更と併せて行う場合には、変更前の指定容積率にも配慮して定めることが望ましい。
 
5.容積の適正配分型地区計画(法第12条の7)
 
(1)趣旨
 
 法第12条の7の規定(以下単に「容積の適正配分型地区計画」という。)は、適正な配置及び規模の公共施設を備えた土地の区域において、それぞれの地区の特性に応じて、容積率規制の詳細化を図り、良好な市街地環境の形成及び合理的な土地利用を図ることを目的としている。
 本制度の適用の例としては、以下のような場合が考えられる。
1) 誘導容積型地区計画を適用して公共施設を整備しつつ土地の有効利用を図るうえで、都市計画に定められている道路等主要な道路に面する区域に高い容積率を定めることにより、当該区域において合理的な土地利用を促進するとともに当該主要な道路と接続する道路の整備を促進する等、容積の適正配分によって公共施設の整備を促進することが必要な場合
2) 土地利用上一体性のある区域において、住宅供給の促進、文化施設その他の公益上必要と認められる施設の整備その他都市機能の増進等のため指定容積率を超えて土地の高度利用を図るべき区域及び樹林地、オープンスペース等の保全又は形成、伝統的建造物の保存、良好な景観・街並みの保全又は形成等のため低い容積率を適用すべき区域がある場合
 
(2)基本的な考え方
 
[1] 区域の形状、規模について
容積の適正配分を行う地区整備計画の区域及び地区整備計画の区域を区分して異なる容積率の最高限度の定められた区域は、それぞれ、良好な都市環境の形成や都市機能の増進を図るために区域の特性に応じて建築物の容積を配分する区域として、適切な形状及び規模を有する区域とするべきである。
 
[2] 容積率の最高限度
 都市計画法第12条の5第5項後段の規定の適用については、地区整備計画の区域内における道路等建築物の建築が想定されない土地の区域の面積は、地区整備計画の区域の面積及び容積の適正配分に係る各区域の面積から、それぞれ除外して行うべきである。
 
[3] その他の建築物等に関する事項
 容積率の最高限度を指定容積率を超えて定める区域においてその最高限度を建築規制として適用するためには、建築基準法第68条の3第2項において、容積率の最低限度、建築物の敷地面積の最低限度、壁面の位置の制限を必ず定めることとされており、この場合、以下のように定めることが望ましい。
1) 容積率の最低限度については、当該区域内の土地の高度利用の促進を図るために、指定容積率の数値の範囲内で適切な数値を定める。
2) 建築物の敷地面積の最低限度については、小規模な敷地において高密度に利用されることによって市街地環境の悪化を招くことを防止するため、当該区域における敷地規模の現状、敷地の共同化の実現可能性、容積率の最高限度等を総合的に勘案して、当該区域における良好な市街地環境が維持・形成されるよう定める。
2) 壁面の位置の制限(道路に面する壁面の位置を制限するものを含むものに限る。)については、市街地環境の悪化を防止するために、敷地内に道路に接して適切な規模の空地を確保することが有効であることから、当該区域における道路等公共施設の整備状況、容積率の最高限度等を総合的に勘案して、良好な市街地環境の各街区が形成され、又は保持されるよう適切に定める。
 
[4] 地区施設の配置及び規模
 容積適正配分型地区計画は、建築基準法第52条第1項第1号、第2号、第3号又は第4号に対する特例であり、前面道路の幅員による容積率制限に係る特例ではないことから、本制度の趣旨が適切に生かされるよう地区施設としての道路の幅員設定については十分配慮するべきである。
 
(3)配慮すべき事項
 
[1] 関係行政機関との調整
1) 容積の適正配分を行う場合は、(2)[3]の建築制限を条例に定めるとともに、指定容積率以下の容積率の最高限度を条例に定めることとなることから、事前に建築担当部局と調整を図ることが望ましい。
3) 指定容積率を上回る局所的な高容積率の設定により、道路に対する交通負荷の発生等によって近隣の環境に著しい支障を来すことのないよう、都道府県等の道路担当部局(当該道路が指定区間の国道である場合には、当該道路を管理する地方整備局)と所要の調整を図ることが望ましい。
 
[2] 他の地区計画に関する制度との併用について
1) 法第12条の10(街並み誘導型地区計画)との併用について
a 地区の特性から、建築物の形態を一体的に誘導し、併せて区域を区分して容積を適正に配分する必要がある場合には、街並み誘導型地区計画と容積適正配分型地区計画を併用し、建築基準法第68条の5及び同法第68条の5の4第1項を適用することが望ましい。
b 街並み誘導型地区計画と容積適正配分型地区計画とを併用する場合には、市街地の環境を悪化させることのないよう、建築物の高さの最高限度、壁面の位置の制限など建築形態の適切な制限等により良好な市街地環境の形成を適切に誘導する内容となるよう定めることが望ましい。
 
6.高度利用型地区計画(法第12条の8)
 
(1)趣旨
 
法第12条の8の規定(以下単に「高度利用型地区計画」という。)は、適正な配置及び規模の公共施設を備えた土地の区域において、建築物の敷地等の統合を促進し、小規模建築物の建築を抑制するとともに建築物の敷地内に有効な空地を確保することにより、用途地域内の土地の高度利用と都市機能の更新とを図ることを目的としている。
本制度の適用の例としては、以下のような場合が考えられる。
1) 枢要な商業用地、業務用地又は住宅用地として土地の高度利用を図るべき区域であって、現存する建築物の相当部分の容積率が都市計画で指定されている容積率より著しく低い区域
2) 土地利用が細分化されていること等により土地の利用状況が著しく不健全な地区であって、都市環境の改善上又は災害の防止上土地の高度利用を図るべき区域
3) 都市基盤施設が高い水準で整備されており、かつ、高次の都市機能が集積しているものの、建築物の老朽化又は陳腐化が進行しつつある区域であって、建築物の建替えを通じて都市機能の更新を誘導する区域
4) 大部分が第一種中高層住居専用地域及び第二種中高層住居専用地域内に存し、かつ、大部分が建築物その他の工作物の敷地として利用されていない区域で、その全部又は一部を中高層の住宅用地として整備する区域
5) 高齢社会の進展等に対応して、高齢者をはじめとする不特定多数の者が円滑に利用できるような病院、老人福祉センター等の建築物を整備すべき区域であって、建築物の建替え等を通じた土地の高度利用により都市機能の更新・充実を誘導する区域
 
(2)基本的な考え方
 
[1] 区域の規模及び形状
高度利用型地区計画の区域は、土地の高度利用と都市機能の更新を図るべき土地の区域として、適切な広がり及び形状を有するものとなるように定めるべきである。
 
[2] 容積率の最高限度
 容積率の最高限度は、指定容積率を基準にして、交通施設及び供給処理施設の容量や周辺地域に対する環境上の影響等を勘案して過大にならない範囲で、建ぺい率の制限の強化、壁面の位置の制限、広場等の設置等により、敷地内に有効な空地を確保した場合に、その程度に応じて、容積率の最高限度を割増して定めることが考えられる。また、住宅の確保や、屋上緑化や相当程度の高さ及び樹容を有する樹木の植栽等による環境への寄与の程度を評価し、容積率の最高限度を割増すことも考えられる。
 なお、高度利用型地区計画の適用にあたって、地区の特性から、区域を区分して建築物の容積率を適正に配分する必要がある場合には、容積の適正配分の考え方により配分した容積率の最高限度を基準にして、上記の考え方等により容積率の最高限度を割増すことが考えられる。また、都心部等で公共施設、公共交通機関が十分に整備されている場合において、特定の用途の建築物を誘導することにより、都市機能の更新を推進する必要が認められる場合には特定の用途の建築物について容積率を割増しつつ、敷地内空地の確保については、例えば、歩道状空地など道路に沿って連続した一定の空間が確保されることをもって足りるとすることも考えられる。
 
[3] その他の建築物等に関する事項
 [2]の容積率の最高限度を建築規制として適用するためには、建築基準法第68条の5の2において、容積率の最低限度、建ぺい率の最高限度、建築物の建築面積の最低限度、壁面の位置の制限(市街地の環境の向上を図るため必要な場合に限る。)を必ず定めることとされており、この場合、以下のように定めることが望ましい。
1) 容積率の最低限度は、当該区域内の土地の高度利用を促進するよう、指定容積率の数値の範囲内で適切な数値を定めることが望ましい。
2) 建ぺい率の最高限度は、建築基準法に基づいて定められる数値の範囲内で適切に定めることが望ましい。
3) 建築物の建築面積の最低限度は、当該区域における敷地規模の現状、容積率の最高限度等を総合的に勘案して、当該区域における市街地環境の悪化を招くことのないよう定めることが望ましい。 
4) 壁面の位置の制限は、当該高度利用型地区計画の区域内の建築物の利用者等の通行の用に供する空地を確保する場合、植込み、芝生等を整備する空地を確保する場合等市街地の環境の向上に資する有効な空地を確保する場合において、敷地内に道路(都市計画においていて定められた計画道路を含む。)に接して空地を確保することができるよう当該道路の幅員、歩行者の通行量、建築物の配置、建ぺい率の最高限度等を勘案して適切に定めることが望ましい。
 なお、壁面の位置は、立体的に定めることもできるので、例えば、上階部分の壁面の位置より下階の歩行者部分の壁面の位置を道路境界線から後退して定めて道路に面して歩行者のための空間を確保することなどが考えられる。
 
[4] 地区施設の配置及び規模
 高度利用型型地区計画は、建築基準法第52条第1項各号に対する特例であり、前面道路の幅員による容積率制限に係る特例ではないことから、本制度の趣旨が適切に生かされるよう地区施設としての道路の幅員設定については十分配慮するべきである。
 
(3)配慮すべき事項
 
[1] 高度利用型地区計画においては、地区整備計画の内容として定められたもののうち、容積率の最低限度等について条例で定めることが条件とされており、また、道路斜線制限を緩和する場合には特定行政庁の許可が必要とされていることから、事前に建築担当部局と調整を図ることが望ましい。
 
[2]他の地区計画に関する制度との併用について
1) 法第12条の10(街並み誘導型地区計画)との併用について
a 地区の特性から、建築物の形態を一体的に誘導し、併せて合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図る必要がある場合には、街並み誘導型地区計画と高度利用型地区計画を併用し、建築基準法第68条の5の2及び同法第68条の5の4第1項を適用することが望ましい。
b 街並み誘導型地区計画と高度利用型地区計画とを併用する場合には、市街地の環境を悪化させることのないよう、建築物の高さの最高限度、壁面の位置の制限など建築形態の適切な制限等により良好な市街地環境の形成を適切に誘導する内容となるよう定めることが望ましい。
 
7.用途別容積型地区計画(法第12条の9)
 
(1)趣旨
 
 法第12条の9の規定(以下、単に「用途別容積型地区計画」という。)は、地区の特性に応じた合理的な土地利用の促進を図るため、住居と住居以外の用途とを適正に配分することが特に必要である場合に、住宅・非住宅の別による容積率を合理化し、住宅を含む建築物に係る容積率の最高限度を緩和することにより、住宅立地を誘導し、適正な用途配分を実現することを目的としている。
本制度の適用の例としては、以下のような場合が考えられる。
1) 都心部又はその周辺部において、住宅と商業、業務等の用途が併存している市街地であって、住宅や人口が著しく減少している、又は著しく減少することが確実であると見込まれる区域において、地域のコミュニティの安定化、市街地環境の確保、道路等公共施設への負荷の平準化、公共公益施設の有効活用等の観点からみて、当該区域における土地利用を商業・業務等の用途に特化させず、住宅の立地誘導を図る必要がある場合。
2) 住宅、商業及び工業の用途が併存する地域で、建築物等の建替え等に合わせて、用途の適正配分及び都市機能の維持増進の観点から住宅の立地誘導を図る必要がある場合。
3) 相当規模の宅地開発事業、土地区画整理事業等によって基盤整備が行われる、又は行われた土地の区域について、住宅の確保と併せて土地の高度利用を図る必要がある場合。
4) 専ら不良な木造共同住宅等が密集している住宅市街地で、居住環境の向上とともに、良質な住宅の供給を促進するため、土地の高度利用を図る必要がある場合。
 
(2)基本的な考え方
 
[1] 区域の形状、規模について
用途別容積型地区計画の区域は、良好な複合市街地の整備、開発を一体的に行うべき土地の区域として適切なものとなるように定めるべきである。
 
[2] 建築物の用途の制限
 建築物の用途の制限を行う場合には、住居と住居以外の用途の適正な配分により良好な居住環境を有した複合市街地が形成され又は保持されるよう定めることが望ましい。
 この場合、一定以上の階については住宅用途のみに限定する等の立体的な用途の制限を定めるとともに、併せて居住環境の確保のため必要な用途の制限を定めることも考えられる。
[3] 容積率の最高限度
1) 容積率の最高限度は、建築基準法第68条の5の3により、全部を住宅の用途のみに供する建築物に係る容積率の最高限度を指定容積率の1.5倍以下に定めるとともに、全部を住宅以外の用途のみに供する建築物の容積率の最高限度を指定容積率以下に定め、併せて住宅の用途に供する部分と住宅以外の用途に供する部分を含む建築物に係る容積率の最高限度についての算定方式を定めるべきである。
2) 全部を住宅の用途のみに供する建築物に係る容積率の最高限度については、本制度による容積率制限の緩和措置に伴い建築物の規模が増大することにかんがみ、周辺における土地利用の動向、公共施設の整備状況、市街地環境への影響、住宅立地誘導の必要性等を総合的に勘案して、適切な数値を定めることが望ましい。この際、住宅と非住宅の用途とを適正に配分した場合に見込まれる交通等の負荷が当該地区の都市施設により処理できる範囲となるよう適切な数値を定めることが望ましい。
4) 住宅の用途に供する部分と住宅以外の用途に供する部分を含む建築物に係る容積率の最高限度の算定方式については、本制度の趣旨にかんがみ、原則として住宅の用途に供する部分の容積率が増大するにつれて、建築物全体の容積率の最高限度が増大するとともに、住宅以外の用途に供する部分の容積率が減少するよう定めることとし、かつ、関係権利者、住民等が容易に理解できる内容となるよう定めることが望ましい。
[4] その他の建築物等に関する事項
 [3]の容積率の最高限度を建築規制として適用するためには、建築基準法第68条の5の3において、容積率の最低限度、建築物の敷地面積の最低限度、壁面の位置の制限を必ず定めることとされており、この場合、以下のように定めることが望ましい。
1) 容積率の最低限度は、当該区域内の土地の高度利用を促進するよう、指定容積率の数値の範囲内で適切な数値を定める。
2) 建築物の敷地面積の最低限度は、住宅の用途に供する建築物に係る容積率制限の緩和措置が区域内の敷地の細分化につながり建築物の規模の増大とあいまって市街地環境の悪化を招くことのないよう、当該区域における敷地規模の現状、住宅を含む建築物に係る容積率の最高限度等を総合的に勘案して、当該区域における良好な住居等の環境を維持増進するよう定める。
5) 建築物に係る壁面の位置の制限(道路に面する壁面の位置の制限を含むものに限る。)は、住宅の用途に供する建築物に係る容積率の最高限度の緩和に伴う建築物の規模の増大が市街地環境の悪化を招くことがないよう敷地内に道路に接して適切な規模の空地を確保することが必要であることから、当該区域における建築物の配置の現状と動向、道路等公共施設の整備状況、住宅を含む建築物に係る容積率の最高限度等を総合的に勘案して、良好な居住環境の各街区が形成され、又は保持されるよう適切に定める。
[5] 地区施設の配置及び規模
1) 用途別容積型地区計画の区域内における地区施設としての道路は、その幅員の下限は6mとすることが望ましいが、壁面の位置の制限等により道路に接して適切な規模の空地が確保される場合はこれを下回ることも考えられる。
2) 用途別容積型地区計画における住宅の用途に供する建築物に係る容積率制限の特例は、建築基準法第52条第1項第2号又は第3号に対する特例であり、前面道路の幅員による容積率制限に係る特例ではないことから、本制度の趣旨が適切に生かされるよう区域及び地区施設の道路の幅員設定には十分配慮するべきである。
また、壁面線の指定を積極的に行うことにより、同法第52条第10項の規定に基づく許可制度の適切な活用を図ることが望ましい。
 
(3)配慮すべき事項
 
[1] 地区整備計画の区域は、特に合理的な土地利用の促進を必要とし、かつ建築物の規模の増大が良好な市街地環境に支障を来すおそれがない街区について、一団の複合市街地の環境の形成を行う単位として適切なものとなるよう定めることとし、公共施設の整備が遅れており、又はこれら整備に関する事業が行われる見込みがない区域、あるいはすでに良好な市街地環境が形成されている区域等への適用は慎重に行うことが望ましい。
 
[2] 用途別容積型地区計画の区域内において、用途別容積型地区計画に定めることのできない事項又は用途別容積型地区計画に定める必要のない事項若しくは内容について、市街地環境のより高度な維持・増進、住宅部分の転用防止等を図るため、土地所有者等による自主的な規制が行われることが適当である場合には、必要に応じ、建築協定制度又は緑地協定制度を積極的に活用することが望ましい。
 
[3] 一団地の認定制度の活用
用途別容積型地区計画の区域内においては、良好な住宅市街地環境の形成を図るため、建築基準法第86条に規定する一団地の認定制度を積極的に活用することが望ましい。なお、用途別容積型地区計画の区域内において一団地の認定を行う場合には、特定行政庁が支障がないと認めるものについては、一団地単位でその全部又は一部を住宅の用途に供する建築物に係る容積率制度の特例を適用することが可能であるので、必要に応じ適切な活用を図ることが望ましい。
 
[4] 他の地区計画に関する制度との併用
1) 法第12条の10(街並み誘導型地区計画)との併用について
a 地区の特性から、建築物の形態を一体的に誘導し、併せて住宅の用途に供する建築物に係る容積率の制限の特例を設ける必要がある場合には、街並み誘導型地区計画と用途別容積型地区計画を併用し、建築基準法第68条の5の3及び同法第68条の5の4第1項を適用することが望ましい。この場合において、容積率の最高限度については、(2)[3]中「指定容積率」とあるのは「街並み誘導型地区計画において定められる容積率の最高限度」と読み替えること。
b 街並み誘導型地区計画と用途別容積型地区計画とを併用する場合には、市街地の環境を悪化させることのないよう、建築物の高さの最高限度、壁面の位置の制限など建築形態の適切な制限、用途の適正配分等により良好な市街地環境の形成を適切に誘導する内容となるよう努めること。
 
[5] 関係行政機関との調整
1) 用途別容積型地区計画においては、(2)?の建築制限について条例により建築基準法上の制限とし、建築確認の対象とすることを条件とした区域内に存する建築物に対してのみ、用途地域による容積率制限を緩和する特例措置が適用されることとなるので、事前に建築担当部局と調整を図ることが望ましい。
2) 都道府県知事が、用途別容積型地区計画について同意しようとする場合において、当該計画の区域に係る良好な環境の保全・形成の観点から必要があると認められるときは、都市計画担当部局は環境部局と連携調整を図ることが望ましい。
3) 当該区域が特に住宅の確保を必要とする区域であることにかんがみ、当該区域において総合的な住宅施策が講じられるように、住宅政策担当部局及び関係機関と緊密な連絡調整を行うことが望ましい。
 
8.街並み誘導型地区計画(法第12条の10)
 
(1)趣旨
 
 法第12条の10の規定(以下、単に「街並み誘導型地区計画」という。)は、地区の特性に応じた建築物の高さ、配列及び形態並びに工作物の設置の制限等必要な規制を定め、建築物の形態に関する制限の緩和を行うことにより、個別の建築活動を通じて統一的な街並みを誘導しつつ、地区内に適切な幅員の道路を確保することにより、土地の合理的かつ健全な有効利用の推進及び良好な環境の形成を図ることを目的としている。
 本制度の適用の例としては、以下のような場合が考えられる。
1) 都心部又はその周辺部において、建築の更新が停滞している地域等で、地域コミュニティの安定化、市街地環境の確保、公共公益施設の有効利用等の観点からみて、必要な建築物の用途制限を定め、土地の合理的かつ健全な有効利用を進め住宅の確保及び供給促進を図る必要がある場合
2) 木造共同住宅等が密集している住宅市街地で、居住環境の向上を図るとともに、良質な住宅の供給を促進するため、土地の合理的かつ健全な有効利用を図る必要がある場合
3) 商店街で建築物の建替えが相当程度行われる地域において、土地の有効利用を促進するとともに、機能的で魅力ある商店街を形成するよう誘導する必要がある場合
4) 住工混在の既成市街地において、地場産業等の工業の利便の維持・増進と居住環境の向上を併せて図る必要がある場合
5) 相当の土地利用転換が行われる地域において、街区単位で背割線に沿って中庭的な空間を確保しつつ、良好な一団の住宅市街地整備を行う必要がある場合
 
(2)基本的な考え方
 
[1] 壁面の位置の制限
1) 壁面の位置の制限(道路に面する壁面の位置の制限を含むものに限る。以下この項で同じ。)は、これが建築物の高さの最高限度と相まって斜線制限の緩和の条件となることにかんがみ、道路に面して、若しくは他の建築物との間に有効な空地を確保し、又は区域内の建築物の位置を整えることにより、良好な環境を備えた各街区が形成されるよう適切に定めることが望ましい。
2) 壁面の位置の制限のうち、道路に面するものについては必ず定めるものとし、それ以外の壁面の位置の制限についても、良好な環境を備えた各街区を形成するため必要と認められるときは、これを定めるよう努めることが望ましい。ただし、壁面を隣地境界線と接して設けることによって街並みを誘導する場合には、この趣旨を当該地区計画の整備、開発及び保全に関する方針に定めたうえで、隣地境界線に面する壁面の位置の制限を定めないことも考えられる。
3) 道路の新設、敷地の分割等敷地境界線の変更が生じた場合には、速やかに壁面の位置の制限について所要の変更を行うことが望ましい。
4) 壁面の位置の制限は、例えば、地盤面からの高さにより異なる内容とする等、立体的に定めることも考えられる。
 
[2] 建築物の高さの最高限度
 街並み誘導型地区計画の区域内における建築物の高さの最高限度は、これが壁面の位置の制限と相まって斜線制限の緩和の条件となることにかんがみ、通風、採光等の市街地環境を確保しつつ、区域内における建築物のスカイラインを整えることによって良好な市街地空間が形成されるように定めることが望ましい。
 
[3] 工作物の設置の制限
1) 壁面後退区域における、工作物の設置の制限(当該区域において連続的に有効な空地を確保するため必要なものに限る。「W−2−1 G 8.街並み誘導型地区計画」において同じ。)は、壁面の位置の制限により建築物が後退した区域について工作物の設置を適切に規制することが、道路との一体的な空間や隣地との一体的な空間を確保し、市街地の環境を確保するため重要であることにかんがみ、当該区域における壁面の位置の制限及び建築物の高さの最高限度等を総合的に勘案して当該区域における良好な環境を維持増進するよう定めることが望ましい。この場合において、連続的に有効な空地を確保するため必要な工作物の設置の制限とは、隣地に面する壁面後退区域で他の壁面後退区域と一体となって連続的な空地が確保できる区域及び道路に面する壁面後退区域において行われる制限である。
 
[4] その他の建築物等に関する事項
前面道路幅員による容積率制限の緩和を行うためには、建築基準法第68条の5の4第1項において、容積率の最高限度、建築物の敷地面積の最低限度を必ず定めることとされており、以下のように定めることが望ましい。
1) 容積率の最高限度は、これが前面道路幅員による容積率制限の緩和の条件となることにかんがみ、当該地区整備計画の区域の土地利用の適正な増進が図られ、かつ、壁面の位置の制限により確保される空地等を勘案して良好な環境の街区が形成されるように定めるとともに、壁面の位置の制限、建ぺい率及び建築物の高さの最高限度で規定される建築可能な空間との均衡を失しないように定める。この場合において、高度利用地区、高度利用型地区計画、用途別容積型地区計画又は容積適正配分型地区計画との併用を行う場合を除き、容積率の最高限度は、用途地域に関する都市計画において定められている容積率以下とすべきである。
また、地区整備計画の区域内の用途地域の指定状況、道路幅員の状況、土地利用の現況等にかんがみ必要がある場合には、当該区域を区分してそれぞれ異なった容積率の最高限度を定めることも考えられる。
なお、土地利用の現況及び将来の見通し等にかんがみ、壁面の位置の制限、建ぺい率及び建築物の高さの最高限度で規定される建築可能な空間により実質的に建築物の容積率の最高限度が同時に規定され、容積率の最高限度を定める必要性が乏しいと認められる場合には、この趣旨を当該地区計画の整備、開発及び保全に関する方針において明示したうえで、容積率の最高限度を用途地域に関する都市計画において定められている容積率と同じ数値で定めることも考えられる。
2) 建築物の敷地面積の最低限度は、敷地の細分化により市街地環境の悪化を招くことを防止するために、当該区域における敷地規模の現状、建築物に係る容積率の最高限度等を総合的に勘案して、当該区域における良好な環境を維持増進するよう定める。
 
[5] 地区施設の配置及び規模
街並み誘導型地区計画に係る地区整備計画の決定にあたっては、周辺における土地利用の動向、公共施設の整備状況等を勘案し、道路に対する交通負荷の発生によって近隣の環境に支障をきたさないよう十分配慮することが望ましい。
 
(3)配慮すべき事項
 
[1] 街並み誘導型地区計画において、高度地区の高さの最高限度に関する緩和を行うことはできないので、必要に応じ、両方の都市計画の調整を図るべきである。
 
[2] 建築基準法第56条の2の規定に基づく日影規制については、街並み誘導型地区計画における容積率の最高限度、建築物の高さの最高限度等当該地区の市街地像に応じた市街地環境を確保する観点から、必要に応じて日影条例の適用対象区域や規制値について見直しを行うことが望ましい。
 
[3] 本制度においては、地区整備計画の内容として定められたもののうち、建築物の高さの最高限度等について条例で定めること等が条件とされており、また、前面道路幅員による容積率制限及び斜線制限を緩和する場合には特定行政庁の認定が必要とされていることから、都市計画担当部局と建築担当部局が一層の連携を図るよう努めることが望ましい。
 
9.法第12条の5第7項関連
 
(1)配慮すべき事項
 
[1] 法第12条の5第7項において「特別の事情があるとき」とは、地区計画の区域が広い範囲にわたり、土地の所有者その他利害関係を有する者の意見調整に時間を要する等の場合であり、当該事情が解消した場合には、地区整備計画を定めることが望ましい。
[2] 地区整備計画の要請に必要な書類の作成については、例えば次の要領によることが考えられる。
1) 地区整備計画要請書は、要請に係る土地の区域内に土地の所有権又は建物の所有を目的とする地上権若しくは賃借権を有する者の住所、氏名及び押印並びに法第12条の5第9項の規定に基づき地区計画に関する都市計画に地区整備計画を定めるべきことを要請する旨を記載し、同項の協定の写しを添付して、都市計画の決定権者である地方公共団体の長あてに作成すること。この場合、要請する者が法人である場合においては、氏名は、その法人の名称及び代表者の氏名を記載すること。
2) 要請に係る土地の位置及び区域を表示した図面は、縮尺がおおむね3,000分の1程度以上の図面に区域の境界が明確に判断できるように表示したものとすること。
 
※ なお、地区計画及びこれに関連する制度の運用に関して既存の通達で技術的助言とされているもののうち都市計画の運用に関する部分については、本指針に示されている内容に置き換えたうえで参考とすべきである。
 
H.防災街区整備地区計画等(法第12条の4関係)
 
1.防災街区整備地区計画
(密集法第32条関連)
 
(1)趣旨
 
防災街区整備地区計画は、密集市街地の区域内において、火事又は地震が発生した場合において延焼防止上及び避難上確保されるべき機能の確保と土地の合理的かつ健全な利用を図ることを目的として創設されたものである。
 
(2)基本的な考え方
 
[1] 区域の規模及び形状
1) 防災街区整備地区計画の区域は、土地利用及び公共施設の現状及び将来の見通し等を勘案して、土地利用の一体性が確保されるような適正な規模で定めることが望ましい。
2) 防災街区整備地区計画の区域の設定にあたっては、地域的連帯感の保持等に配慮しつつ、地権者間の公平性を確保するため、地権者間の利害調整を図ることに努めることが望ましい。
3) 防衛施設(飛行場、演習易、訓練場、射撃場、駐屯地、通信・電波施設、燃料施設、弾薬庫、研究所その他これらに類する施設)は、防災街区整備地区計画の区域に含まないものとすることが望ましい。
4) 工場立地法第6条第1項に規定する特定工場が立地している地区には、防災街区整備地区計画を原則として定めないこととし、防災街区整備地区計画の区域に含まれる場合には、同計画が同法第4条第1項に規定する工場立地に関する準則と調和が保たれるよう、十分配慮することが望ましい。
 
[2] 防災街区整備地区計画の区域の整備に関する方針
1) 密集法第32条第2項第1号の防災街区整備地区計画の目標その他当該区域の整備に関する方針(以下「防災街区整備地区計画の区域の方針」という。)は、当該区域の整備に関する総合的な指針であり、これに基づいて、地区防災施設の区域や防災街区整備地区整備計画が定められ、法第21条の2の規定に基づき地区防災施設の区域や防災街区整備地区整備計画の提案行われる際には、当該方針を踏まえて行われることとなるので、関係権利者、住民等が容易に理解できるように定めることが望ましい。
2) 密集法第32条第6項の「特別の事情があるとき」とは、防災街区整備地区計画の区域のうち一定以上の範囲にわたり、土地の所有者その他利害関係を有する者の意見調整に時間を要する一方で、防災街区整備地区計画の方針をとりあえず定めておきたい場合等であり、当該事情が解消した場合には、速やかに地区防災施設の区域及び防災街区整備地区整備計画を定めることが望ましい。
 
[3] 地区施設及び地区防災施設(特定地区防災施設を含む。)
1) 道路
a 当該区域の特定防災機能の確保にあたって基本となる道路については、地区防災施設として定めることとし、そのうち、建築物等と一体となって整備する必要があるものについては、特定地区防災施設として、当該建築物等に係る特定建築物地区整備計画と併せて定めるべきである。また、当該区域の特定防災機能の確保に直接関係しない区画街路等については原則として地区施設として定めるべきである。なお、都市の主要な骨格をなす道路等については、幹線街路の都市計画を定めることが望ましい。
b 道路の配置及び規模又は区域を定める際には、防災街区整備地区計画の区域及びその周辺において都市計画に定められている道路等を含めた道路網と一体となって、区域内の特定防災機能の向上及び延焼により生ずる被害の軽減と良好な都市環境の形成に資するよう配慮することが望ましい。
c 地区施設又は地区防災施設たる道路の幅員は、原則として6m以上とすることが望ましい。なお、特別の事情によりやむを得ないと認められる場合は、地域の実情に応じて4m以上とすることが望ましい。
2) 公園、緑地、広場その他の公共空地
a 当該区域の特定防災機能の確保にあたって基本となる公園、緑地、広場その他の公共空地については、地区防災施設として定めることとし、そのうち、建築物等と一体となって整備する必要があるものについては、特定地区防災施設として、当該建築物等に係る特定建築物地区整備計画と併せて定めるべきである。また、それ以外の、主として地区内の居住者等の利用に供される小規模な公園、緑地、広場その他の公共空地は、原則として地区施設として定めるべきである。なお、都市における避難地、レクリエーション、交流の場としての機能を持つ基幹公園、広場等については、公園、広場等の都市計画を定めることが望ましい。
b 公園、緑地、広場その他の公共空地の配置及び規模又は区域については、防災街区整備地区計画の区域及びその周辺において都市計画に定められている公園、緑地、広場その他の公共空地等と併せて一体的なオープンスペース系統が適切に確保され、区域内の特定防災機能の向上及び延焼により生ずる被害の軽減と良好な都市環境の形成に資するよう、必要な位置に適切な規模で配置することが望ましい。
c 防災街区整備地区計画で道路の配置及び規模又は区域が定められている場合には、建築基準法第68条の6の規定に基づく道路の位置の指定は、当該道路の配置又はその区域に即して行うこととされているが、歩行者用通路、緑道、駐車場の車路等でそれに即して道路の位置の指定が行われると防災街区整備地区計画の目標を達成する上で支障が生ずると判断するものについては、防災街区整備地区計画においては公共空地として定めることが望ましい。
3) 地区防災施設及び地区施設には都市計画施設を含まないこととされているので、地区防災施設又は地区施設として定められている道路又は公園、緑地、広場その他の公共空地を都市計画施設として都市計画に定めようとするときは、併せて防災街区整備地区計画に関する都市計画を変更するべきである。
 
[4] 特定建築物地区整備計画
1) 特定建築物地区整備計画は、建築物等が特定地区防災施設と一体となって防災街区整備地区計画の区域における特定防災機能を確保するとともに、適切な構造、高さ、配列等を備えた建築物等が整備されることにより当該区域内の土地が合理的かつ健全な利用形態となるように定めることが望ましい。
2) 特定建築物地区整備計画の内容として定める計画事項のうち、特定防災機能の確保に直接に関連するものについては、次の基準により定めることが望ましい。なお、その他の計画事項については、「3.地区計画の都市計画において決定すべき事項(2)[2]」中「地区計画」とあるのを「防災街区整備地区計画」と読み替えて参考とすることが望ましい。
a 建築物の構造に関する防火上必要な制限
特定建築物地区整備計画の区域内に存する建築物については、特定地区防災施設と一体となって当該区域の特定防災機能を確保するため、
ア 耐火建築物又は準耐火建築物であること
イ 特定地区防災施設に接する建築物については、高さ5m未満の範囲が空隙のない壁を設ける等防火上有効な構造であること
とする制限を規定するなど、防火上有効な構造となるように定めることが望ましい。
b 間口率の最低限度
特定地区防災施設の延焼防止機能、一次避難路・避難地としての機能を確保するため、建築物の後背地で発生した火災による輻射熱を有効に遮断できるように特定地区防災施設に面する建築物の間口率の最低限度を定めるものとし、原則として10分の7以上に定めることが望ましい。
c 建築物等の高さの最低限度
特定地区防災施設の延焼防止機能、一次避難路・避難地としての機能を確保するため、建築物の後背地で発生した火災による輻射熱を有効に遮断できるように特定地区防災施設に面する建築物の各部分の特定地区防災施設からの高さの最低限度を定めるものとし、原則として5m以上に定めること望ましい。
d 壁面後退区域における工作物の設置の制限
壁面後退区域を空地として確保し、当該区域の防災機能の向上に資するため、壁面後退区域における建築物以外の工作物の設置について必要な制限を定めることが望ましい。具体的には、例えば、かき、さく、看板、自動販売機等について、位置の指定、設置の禁止などの制限を定めることが考えられる。
 
[5] 防災街区整備地区整備計画
1) 防災街区整備地区整備計画における建築物等に関する事項は、防災街区整備地区計画の区域の特性にふさわしい用途、容積、高さ、配列等を備えた建築物等が整備されることにより当該区域内の土地が合理的かつ健全な利用形態となるとともに、火事又は地震が発生した場合の当該区域における延焼により生ずる被害の軽減に資するように定めることが望ましい。
2) 防災街区整備地区整備計画の内容として定める計画事項のうち、建築物の構造に関する防火上必要な制限については、建築物相互間における延焼を一定程度遅延させ、避難行動に着手するまでの時間を確保するため、
a屋根が不燃材料で造られ、又はふかれたものであること
b木造建築物の場合は、その外壁及び軒裏で延焼のおそれのある部分が防火構造であること
とする制限を規定するなど、防火上有効な構造となるように定めることが望ましい。
3) 防災街区整備地区整備計画に定める事項のうち土地の利用に関する事項には、計画内容として農用地(生産緑地の対象となっている農用地を除く。)及び保安林又は保安施設地区の保全に関する事項は定めないことが望ましい。
4) 上記以外の計画事項については、その他の計画事項については、「3.地区計画の都市計画において決定すべき事項(2)[2]」中「地区計画」とあるのを「防災街区整備地区計画」と読み替えて参考とすることが望ましい。
 
[6] 誘導容積等
 防災街区整備地区計画においては、いわゆる誘導容積型、用途別容積型、街並み誘導型の制度を活用し、あるいは、これらの二以上の制度を併用することで望ましい市街地像を誘導できる場合があるので、「W−2−1 G.地区計画」に記述された各制度の指針を参考としつつ、必要に応じ、これらの制度の積極的活用を図ることが望ましい。
 
(3)配慮すべき事項
 
[1] 他の法令等との調整
防災街区整備地区計画を定めるにあたっては、他の法令の規定等との調整の観点から、以下によることが望ましい。
1) 市町村が防災街区整備地区計画を定める場合又は密集法第33条第3項の規定による勧告等を行う場合には、重要文化財、登録有形文化財、史跡名勝天然記念物、伝統的建造物群、埋蔵文化財等の文化財の保護に配慮すること。
2) 都市計画担当部局は、中小小売・サービス業等の商業振興施策等との整合性を図る観点から商工部局と調整を行い、防災街区整備地区計画の区域内の商工業者の経済力、店舗、工場等の新設・改造計画に配慮するとともに、当該区域内に商店街整備計画、共同店舗等整備計画等中小小売・サービス業振興のための諸施策その他の中小企業の振興のための諸施策が講じられ、又は講じられようとしている場合には、これらの諸施策との整合性を保つこと。
3) 電気事業法、ガス事業法及び熱供給事業法による事業については、その円滑な実施及び保安の確保に支障を及ぼすことのないように十分配慮すること。
4) ガソリンスタンド、LPGスタンド及び軽油スタンドは、その事業場の配置、形状等が特殊であることにかんがみ、その新設、改築又は増築に支障をきたさないようにすること。
 
[2] 関係行政機関等との調整
1) 防災街区整備地区計画に関する都市計画を定めるに当たり、都道府県及び市町村の都市計画担当部局は、密集法第4条に基づく建替計画の認定や同法第13条に基づく延焼等危険建築物に対する除却勧告等、密集住宅市街地整備促進事業等による地区の整備と密接に関連することから住宅・建築担当部局と、地域防災計画との調整を図る観点から地域防災計画担当部局とそれぞれ十分調整することが望ましい。
2) 市街化区域及び市街化調整区域に関する都市計画が定められていない都市計画区域内の用途地域が定められている地域並びに市街化調整区域内における用途地域が定められている地域において、防災街区整備地区計画を定めようとする場合に、当該防災街区整備地区計画の区域内に農用地が含まれるときは、法第19条第3項の規定に基づき都道府県知事が防災街区整備地区計画に関する都市計画の同意を行うに当たり、都市計画担当部局は、あらかじめ農林水産担当部局と、法第12条の4第2項及び密集法第32条第2項名号に定める事項の内容を示した資料を添えて協議を行うことが望ましい。
この場合において、当該農用地が4haを超えるもの(農林水産大臣の転用許可権限の対象となり得るようなまとまったもの)であるときは、都道府県知事は、あらかじめ地方農政局長(北海道にあっては農林水産省農村振興局長、沖縄県にあっては沖縄総合事務局農林水産部長)と、法第12条の4第2項及び密集法第32条第2項各号に定める事項の内容を示した資料を添えて協議を行うことが望ましい。
3) 防災街区整備地区計画の区域内に森林(森林法による保安林、保安林予定森林、保安施設地区及び保安施設地区予定地並びに保安林整備臨時措置法による保安林整備計画に基づく保安林指定計画地並びに森林法第5条第1項による地域森林計画対象民有林をいう。)、農林水産業用施設又は農林水産関連企業用施設が含まれる場合には、あらかじめ、市町村及び都道府県において、都市計画担当部局は、農林水産担当部局又は農林水産関連企業担当部局と十分調整することが望ましい。
4) 臨港地区、港湾隣接地域、港湾施設が相当程度集積している港湾区域内の埋立地又は港湾施設用地において、防災街区整備地区計画を定めようとするときは、港湾の秩序ある整備と適正な運営との整合を図る観点から、事前に関係港湾管理者と十分協議を行うことが望ましい。
5) 防災街区整備地区計画を定めるにあたっては、当該地区における消防機関等による火災対策・災害対策との調整を図る観点から当該地域を管轄する消防長と十分調整を図ることが望ましい。
 
※ なお、防災街区整備地区計画及びこれに関連する制度の運用に関して既存の通達で技術的助言とされているもののうち都市計画の運用に関する部分については、本指針に示されている内容に置き換えたうえで参考とすべきである。
 
2.沿道地区計画
 
(幹線道路の沿道の整備に関する法律(昭和55年法律第34号)(以下「沿道法」という。)第9条第1項関連)
 
(1)趣旨
 
自動車交通量の増大、車両の大型化の進展等に伴い、特に都市部の幹線道路の沿道において深刻化している道路交通騒音問題に対処する必要があることから、沿道地区計画は、沿道整備道路に接続する土地の区域で、道路交通騒音による障害の防止と沿道の適正かつ合理的な土地利用の促進を図るため、沿道の整備を計画的に誘導、規制することにより幹線道路の沿道にふさわしい土地利用を実現することを目的としているものである。
 
(2)基本的な考え方
 
[1] 区域の規模及び形状
1) 沿道地区計画の区域は、土地利用及び公共施設の現状及び将来の見通し等を勘案して、土地利用の一体性が確保されるよう適正な規模で定めることが望ましい。この場合において、その奥行きは、沿道整備道路の道路交通騒音による環境影響に配慮しつつ、合理的な範囲とすることが望ましい。
2) 沿道整備道路に接続する地域であっても、工場立地法第6条第1項に規定する特定工場が立地している地区、石油パイプライン事業用施設、駅舎等の鉄道・軌道施設、自動車ターミナル施設、道路運送法による一般自動車道、一般乗合旅客自動車運送事業等の用に供する旅設等が相当範囲にわたって存する区域等その背後地に道路交通騒音により生ずる障害が発生しないと認められる地区については、原則として沿道地区計画の区域に含めるべきでない。
 
[2] 沿道の整備に関する方針
1) 沿道の整備に関する方針は、当該地区の整備に関する総合的な指針として定められ、さらに、沿道地区整備計画が定められ、また、法第21条の2の規定に基づき沿道地区整備計画や沿道再開発等促進区の提案行われる際には、当該方針を踏まえて行われることとなるので、当該区域の整備をどのように行い、どのような形態の市街地を形成しようとするかなどについて、関係権利者、住民等が容易に理解できるように定めることが望ましい。
2) 沿道法第9条第8項の「特別の事情があるとき」とは、沿道地区計画の区域が広い範囲にわたり、土地の所有者その他利害関係を有する者の意見調整に時間を要する等の場合であり、当該事情が解消した場合には、沿道地区整備計画を定めることが望ましい。
 
[3] 沿道地区整備計画
1) 間口率の最低限度
沿道整備道路の構造、当該区域における土地利用の現状及び将来の見通し、道路交通騒音の状況、敷地の規模、形成、方位等を総合的に勘案して、背後地の住居等に対して遮音上有効であるように定めるものとし、原則として7/10以上に定めることが望ましい。
2) 建築物の高さの最低限度
沿道整備道路の構造、当該区域における土地利用の現状及び将来の見通し、経済力、都市施設の整備状況、背後地の住居等に対する遮音効果等を総合的に勘案して定めることが望ましい。
この場合において、沿道整備道路に接する敷地については、沿道整備道路に面して建築物の各部分の高さが沿道整備道路の路面の中心から5m以上となるように定めることが望ましい。
3) 建築物の構造に関する遮音上必要な制限
間口率の最低限度及び建築物の高さの最低限度を定める場合において、背後地の住居等に対して遮音上有効な構造となるように定めることが望ましい。
4) 建築物の構造に関する防音上必要な制限
沿道整備道路の構造、道路交通騒音の状況等を勘案し、住宅、学校、病院その他の静穏を必要とする建築物について、開口部等が防音上有害な空隙が生じないものとする等防音上有効な構造となるように定めることが望ましい。この場合において、例えば、窓及び出入口に設けられる戸は、ガラスの厚さ(当該戸が二重以上になっている場合には、それぞれのガラスの厚さの合計)が 0.5p以上であるがガラス入りの金属性のもの又はこれと防音上同等以上の効果のあるものとして定めることが考えられる。
5) 建築物の用途の制限
商業その他幹線道路の沿道としての区域の特性にふさわしい業務の利便に貢献し、かつ、道路交通騒音より生ずる騒音による障害の防止が図られるよう配慮することが望ましい。
6) 沿道地区施設の配置及び規模
沿道整備道路の構造、当該区域及びその周辺の地域における土地利用の現状及び将来の見通し、道路交通騒音の状況、敷地の規模、形状等を総合的に勘案して、適切な配置及び規模で定めることが望ましい。
 
[4] 沿道再開発等促進区
 沿道再開発等促進区は、沿道整備道路沿いの相当程度の低・未利用地等において、必要な公共施設の整備を行いつつ一体的に再開発することにより、道路交通騒音による障害の防止に寄与しつつ、土地の高度利用と都市機能の増進を図ること等を目的としている。
このため、沿道再開発等促進区に関する都市計画を定めるにあたっては、沿道法第9条第4項1号の土地利用に関する基本方針において、沿道整備道路の構造や周辺市街地の状況、道路交通騒音の状況等を踏まえた市街地整備の方針を示すとともに、これに基づき沿道再開発等促進区内の沿道地区整備計画を適切に定めることが望ましい。なお、この場合において、「W−2−1 G.地区計画 3.(3)再開発等促進区」中「再開発等促進区」とあるのを「沿道再開発等促進区」と読み替えて参考とすることが望ましい。
 
[5] 容積の適正配分
1) 区域の規模及び形状
a 容積の適正配分を行う沿道地区整備計画の区域及び沿道地区整備計画の区域を区分して異なる容積率の最高限度が定められた区域(以下「容積の適正配分に係る各区域」という。)は、それぞれ、沿道における良好な都市環境の形成や都市機能の増進を図るために区域の特性に応じて建築物の容積を配分する区域として、適切な形状及び規模を有する区域となるよう定めることが望ましい。
b 沿道法第9条の3の「適正な配置及び規模の公共施設を備えた土地の区域」とは、例えば、道路についてみれば、当該地区の規模及び形状、その区域内の建築物の建築その他の土地利用の計画等を考慮し、当該地区の道路網がその周辺の道路と一体的に、かつ、適正な規模で形成されている区域をいうと考えられる。
2) 沿道の整備に関する方針
沿道の整備に関する方針を定めるにあたっては、沿道地区計画の目標として、当該沿道地区計画において目標とする市街地像並びにその実現を図るための容積の適正配分による合理的な土地利用及び道路交通騒音により生ずる障害の防止の必要性について明らかにするとともに、沿道地区整備計画の区域及び容積の適正配分に係る各区域の土地利用の方針及び建築物等の整備にあたっての規制・誘導の方針を明示することが望ましい。
3) 沿道地区整備計画
a 壁面の位置の制限
壁面の位置の制限(道路に面する壁面の位置の制限を含むものに限る。)は、容積率の最高限度を指定容積率を超えて定める区域において、市街地環境の悪化を防止するために、敷地内に道路に接して適切な規模の空地を確保することが有効であることから定めることとされるものであり、当該区域における道路等公共施設の整備状況、容積率の最高限度等を総合的に勘案して、良好な市街地環境の各街区が形成され、又は保持されるよう適切に定めることが望ましい。
b 容積率の最高限度
ア 容積の適正配分に係る各区域の容積率の最高限度の数値については、当該沿道地区計画の目標に即し、沿道における良好な都市環境の形成、都市機能の増進等に寄与するように適切に定めることが望ましい。
イ 沿道法第9条の3後段の規定の適用については、沿道地区整備計画の区域内における道路等建築物の建築が想定されていない土地の区域の面積は、沿道地区整備計画の区域の面積及び容積の適正配分に係る各区域の面積から、それぞれ除外するべきである。
c 容積率の最低限度
容積率の最低限度については、容積率の最高限度を指定容積率を超えて定める区域において、当該区域内の土地の高度利用の促進を図るために定めることとされているものであり、指定容積率の数値の範囲内で適切な数値を定めることが望ましい。
d 建築物の敷地面積の最低限度
建築物の敷地面積の最低限度は、容積率の最高限度を指定容積率を超えて定める区域において、小規模な敷地において高密度に利用されることによって市街地環境の悪化を招くことを防止するために定めることとされているものであり、当該区域における敷地規模の現状、敷地の共同化の実現可能性、容積率の最高限度等を総合的に勘案して、当該区域における良好な市街地環境が維持・形成されるよう定めることが望ましい。
e 容積の適正配分に係る容積率制限の特例は、建築基準法第52条第1項第1号、第2号、第3号又は第4号に対する特例であり、前面道路の幅員による容積率の制限に係る特例ではないことから、本制度の趣旨が適切に生かされるよう沿道地区施設としての道路の幅員設定については十分配慮することが望ましい。
 
[6] 誘導容積等
 沿道地区計画においては、「[5] 容積の適正配分」に加えて、いわゆる誘導容積型、容積適正配分型、高度利用型、用途別容積型、街並み誘導型の制度を活用し、あるいは、これらの二以上の制度を併用することで望ましい市街地像を誘導できる場合があるので、「W−2−1 G.地区計画」に記述された各制度の指針を参考としつつ、必要に応じ、これらの制度の積極的活用を図ることが望ましい。
 
[7] その他
 沿道地区計画については、法第21条の2の規定に基づく提案制度も視野に入れつつ、先行して沿道地区計画の方針を策定するとともに、土地所有者等の創意工夫によるまちづくり活動を支援する方式を適切に活用して、沿道地区計画制度が一層広く推進されるよう努めることが望ましい。また、沿道地区計画の方針のみが定められた地区においては、沿道地区整備計画の策定に向け、当該地区の士地所有者等の合意形成が円滑かつ的確になされるよう、適切な指導に努めることが望ましい。
 
(3)配慮すべき事項
 
1) 一の沿道地区計画の区域内において、道路交通騒音により生ずる障害の防止を図る観点から、又は当該区域内における適正かつ合理的な土地利用の促進を図る観点から必要がある場合には、一の計画事項を区域の一部について定め、又は区域を区分してそれぞれ異なる計画内容とすることが考えられる。
2) 当該区域において、工場立地法第4条第1項の工場立地に関する準則又は高圧ガス保安法、火薬類取締法、石油コンビナート等災害防止法、液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律若しくは鉱山保安法の規制を受ける建築物等が存する場合にあっては、これらの準則等との整合性を保つことが望ましい。
3) 学校その他の公益上必要な施設及びガソリンスタンド、LPGスタンド、軽油スタンド等のようにその配置、形状等が特殊なものについては、その新築、改築又は増築に支障をきたさないようにすることが望ましい。
4) 沿道商工業者の経済力、店舗等の新設、改造計画に配慮するとともに、当該区域において商店街整備計画、共同店舗等整備計画等中小小売、サービス業振興のための諸施策が講じられ、又は講じられようとしている場合には、これらの諸施策との整合性を保つことが望ましい。
5) 市街化区域以外の区域における沿道地区計画の策定にあたっては、農業の振興に支障を及ぼさないよう配慮することが望ましい。
6) 関係行政機関等との調整
市町村の都市計画担当部局は、計画策定にあたっては、あらかじめ、当該地域の良好な自然環境を保全する観点及び騒音等の環境保全上の支障を防止する観点から環境部局、中小小売・サービス業等の商業振興施策等との整合性を図る観点から商工部局とそれぞれ調整するとともに、農林水産関連企業担当部局、当該区域が港湾区域、臨港地区又は港湾隣接地域に係る場合には、港湾の秩序ある整備と適正な運営との整合を図る観点から関係港湾管理者と事前に十分協議を行うこととし、また、都道府県の都市計画担当部局は、同意にあたっては、あらかじめ、当該地域の良好な自然環境を保全する観点及び騒音等の環境保全上の支障を防止する観点から環境部局、中小小売・サービス業等の商業振興施策等との整合性を図る観点から商工部局と調整するとともに、農林水産関連企業担当部局と協議することとし、市街化調整区域又は区域区分に関する都市計画が定められていない都市計画区域内の用途地域が定められていない地域において策定する場合には農林担当部局と意見調整を行うことが望ましい。
 
※ なお、沿道地区計画については、沿道法に規定する他の制度と一体的に運用することが必要であることから、その運用にあたっては、本指針のほか、沿道法の運用に関して別に定める技術的助言を参考とすべきである。
 
3.集落地区計画
(集落法第5条第1項関連)
 
(1)趣旨
 
集落地区計画は、市街化調整区域及び区域区分を行わない都市計画区域と農業振興地域が重複する地域において、主として集落地域内の居住者にとっての営農条件と調和のとれた良好な居住環境の確保と適正な土地利用を図ることを目的としている。
 
(2)基本的な考え方
 
[1] 区域の規模及び形状
1) 集落地区計画の区域は、その地域の自然的経済的社会的条件、営農条件との調和、土地利用の動向等を勘案しながら、良好な居住環境の整備、無秩序な建築活動の防止、特色のある家並みの維持・保全等当該集落地区計画の策定の目的に応じて、かつ、当該集落地区計画において定められる内容をも考慮して、当該区域の整備及び保全を一体として行うべき土地の区域として適切なものとなるよう定めることが望ましい。
2) 集落地区整備計画の区域は、これを段階的に定める場合にあっても、その各々が1以上の建築物を含む街区又はこれに準ずる区域で、一団の市街地環境の形成を行う単位として適切なものとなるように定めることが望ましい。
3) 集落地区計画の区域には、原則として、現に家屋が連たんする地区でまとまりのある一団の土地の区域、新規宅地の区域がある場合は当該区域及び必要に応じこれらに介在する樹林地等で密接な関連がある区域を含めるものである。
  なお、これらの地区以外の地区についても、必要に応じて、位置、規模、地権者の意向等を勘案して、これらの地区と併せて集落地区計画を定めることができるものである。
  また、上記の考え方により、一の集落地域において、複数の集落地区計画を定めることも考えられる。
4) 3)の「現に家屋が連たんする地区でまとまりのある一団の土地の区域」とは、次に掲げるア及びイの土地の区域で、当該区域内の人口密度がおおむね20人/ha以うえで、住居をおおむね20戸以上含む区域(ただし、集落法第8条に基づく農用地の保全等に関する協定が締結される営農意欲が高いおおむね1ha以上の一団の農地で、計画的な集落形成に支障をきたさないものを穴抜きすることを妨げない。)である。
a 建築物の敷地その他これに類するものの間の距離がおおむね20m以内で家屋が連たんしている土地の区域
b aの土地の区域に接続する区域で、おおむね3ha以下の整形の土地の区域ごとに算定した場合における建築物の敷地その他これに類するものの敷地の面積の合計が当該区域の面積の4分の1以上で家屋が連たんしている土地の区域
5) 3)の「新規宅地の区域」とは、次に掲げるア及びイの区域である。
a 優先的かつ計画的に宅地化を進めるべき土地の区域
4)、5)b若しくは6)の区域によって又はこれらの区域と地形・地物若しくは公共施設(整備されるものを含む。)によって周長のおおむね4分の3以上を囲まれ、既成集落の土地の区域等と一体的かつ効率的に宅地化を進めることが望ましいと認められるおおむね1ha未満の農地等
b 計画的に宅地化を進めるまとまりのある一団の土地の区域
農業等と調整を図りながら位置を選定し、土地区画整理事業等を通じて計画的に宅地化を進めるまとまりのある一団の土地の区域
6) 3)の「介在する樹林地等」とは、4)、5)の区域と一体的に存し、又は4)、5)の区域に隣接し、保全等を図る必要がある樹林地等の土地の区域が考えられる。
7) 3)の「これらの地区以外の地区」とは、4)以外の既存宅地等で、例えば5)の区域に接続することとなる家屋が連たんする土地の区域、比較的まとまりのあるいわゆる飛び住宅地、非住居系宅地等が考えられる。
8)集落地区計画を定める新規宅地の区域は、おおむね10年を見通し、集落の自然的社会的経済的諸条件、土地利用の動向等を踏まえて、集落内居住世帯に関連した世帯分離等のために必要な宅地面積、集落の振興のために必要な教養、文化、レクリエーション等に係る生活利便施設、集落定住型住宅等の立地に必要な宅地面積等を的確に把握し、周辺の市街化区域の計画的な市街化を図る上で支障がないよう留意するとともに、営農条件との調和、公共施設の整備状況・整備計画とのバランス、既存の地域的連帯感の保持等にも配慮しつつ、これらの観点に沿って基本方針に定められた当該集落地域に係る新規宅地の面積の最高限度を上回らない面積とし、いたずらに広く定めることがないようにするべきである。
9) 新規宅地の面積の最高限度は、既成集落の土地の区域内に存する農地等の宅地化の動向を考慮しつつ、次のa及びbにしたがって設定することが望ましい。
a 次に掲げる必要な宅地面積等を勘案して設定すること。
ア 集落地域内の居住世帯に関連した世帯分類、人口の自然増及び居住水準の改善のための新・増改築に必要な宅地面積
イ 集落地域の振興のために想定した人口の社会増を受け入れる定住型住宅等の立地に必要な宅地面積
ウ 集落地域の振興に必要な買物、医療、教育、文化、レクリエーション等にかかる生活利便施設等を必要とする場合の計画宅地面積
エ 集落地域の振興に資する無公害工場、サービス施設等を必要とする場合の計画宅地面積
b 次に掲げる事項等に留意して設定するとともに、原則としておおむね既成集落の土地の区域の面積の範囲内で設定すること。
ア 集落地域の既存の公益的施設、公共施設等の有効活用の見地等から、これらの施設の整備状況(整備予定を含む。)とバランスが保たれるものであること。
イ 既存の地域社会を保持しうる新規人口に見合う範囲内であること。
ウ 市街化区域における市街化の状況等から見て、当該都市計画区域における計画的な市街化を図るうえで支障がないものであること。
10) 集落地区整備計画の対象とする森林は、集落及び農用地に介在する森林に限られるものとするべきである。
11) 集落地区計画の区域と集落地区整備計画の区域は、地域住民の合意が得られない等特別の事情がある場合を除き、基本的には同一の区域とすべきである。
12) 集落地区計画の区域の設定にあたっては、地域的連帯感の保持に配慮しつつ、地権者間の公平性を確保するため、地権者間の利害調整を図ることに努めることが望ましい。
13) その他の集落地区計画の区域を定めるにあたっては、次の諸点に留意するべきである。
a 自然環境保全法の指定地域及び自然公園法の特別地域とは、極力重複させないようにすること等環境の保全に留意すること。
b 集落地区計画の区域には次の土地を含めないこと。
ア農用地区域
イ集落法第8条第2項第1号に定める協定の対象となる農用地の区域
c 農村地域工業等導入促進法に基づく工業等導入地区及び工業団地は含めないこと。また、これ以外の工場用地にあっては、既に工場が立地している用地、工場の立地が決まっている用地又は地域に密着した工場の受け皿としての用地等があって、2ha未満(集落地区計画を定める土地の区域が、農村地域工業等導入促進法第2条の農村地域以外の地域で、かつ、当該区域が属する市町村において当該区域以外の市街化調整区域に工業団地が存しない場合においては、5ha未満)の用地のみ含まれるものとすること。
d 国有林野及び公有林野等官行造林地区を含めないこと。
e 原則として漁港区域を含めないこと。
f 原則として保安林等を含めないこととし、含める場合にあっても、保安林等の指定の目的に反する制限は定めないこと。
g 工場立地法第6条第1項に規定する特定工場が立地している地区には、集落地区計画を原則として定めないこと、仮に同地域で策定する場合は、工場立地法第4条第1項に規定する工場立地に関する準則と調和が保たれるよう十分に配慮すること。
h 原則として防衛施設(駐屯地、訓練場、演習場その他これに類する施設)が存する地区を含めないこととすること。
  なお、やむを得ず防衛施設の一部が集落地区計画の区域に含まれる場合でも防衛施設の機能に支障を及ぼすことのないようにするものとすること。
i 原則として新たに宅地化を図るべき土地の区域として集落地区計画を定める土地の区域には、溢水、湛水等による災害発生のおそれのある土地の区域及び水源を涵養し、土砂の流出を防備する等のため保全すべき土地の区域を含めないこと。やむを得ず含める場合には、集落地区計画の整備及び保全の方針に、溢水、湛水等による災害発生の防止、水源を涵養し、土砂の流出を防備する等のための保全の措置等について定めること。
 
[2] 集落地区計画の目標その他当該区域の整備及び保全に関する方針
1) 集落法第5条第3項の当該集落地区計画の目標その他当該区域の整備及び保全に関する方針(以下「集落地区計画の方針」という。)に基づき集落地区整備計画が定められるので、誘導すべき集落の態様等について関係権利者、住民等が容易に理解できるように定めることが望ましい。
3) 集落法第5条第6項の「特別の事情があるとき」とは、集落地区計画の区域のうち一定以上の範囲にわたり、土地の所有者その他の利害関係を有する者の意見調整に時間を要する一方で、集落地区計画の方針をとりあえず定めておきたい場合等であり、当該事情が解消した場合には、速やかに集落地区整備計画を定めることが望ましい。
[3] 集落地区整備計画
1) 基本的事項
a 建築物等に関する制限は、一の計画事項を区域の一部について定め、又は街区ごとに定める等区域を区分してそれぞれ異なる計画内容を定めることも考えられる。
b 建築基準法第68条の2に基づく市町村の条例は、建築規制にふさわしい内容のみを定めうることとされており、都市計画の決定内容がそのまま条例化されるとは限らないことに留意するべきである。
2) 集落地区施設
a 集落地区施設には、農用地を農用地として位置付けるべきではない。
b 道路の配置及び規模を定める際には、街区の規模及び形状、集落地区計画の区域内の建築物の建築その他の土地利用の現状及び現道の線形を尊重しつつ、将来の見通し等を考慮し、集落地区計画の区域及びその周辺において都市計画に定められている、又は区域の指定がなされている道路その他の道路と併せて一体的な道路網と一体となって、防災、安全、衛生等に関する機能が十分確保されているよう配慮するものとし、その幅員は、原則として6m以上とするよう努めることが望ましい。なお、特別の事情によりやむを得ないと認められる場合は、地域の実情に応じ4m以上とすることができるものである。
c 公園、緑地、広場その他の公共空地の配置及び規模は、集落地区計画の区域の規模及び形状、当該区域に予定されている建築物等の用途、将来の集落地域の人口等を勘案し、当該区域及びその周辺において都市計画に定められている公共空地及びその他の公園等と併せて居住環境の維持・向上が図れるよう定めることが望ましい。
なお、現に家屋が連たんする地区でまとまりのある一団の土地の区域内に存する農地については、宅地化を進めるにあたって、良好な居住環境の整備のために有効活用を図るため、必要に応じ公共空地として位置付け整備することが望ましい。
また、建築基準法上、集落地区計画で道路の配置及び規模が定められている場合には、道路の位置の指定は、当該道路の配置に即して行われることとされているが、歩行者専用道路、緑道等でそれに即して道路の位置の指定が行われると集落地区計画の目的を達成するうえで支障が生ずると判断されるものについては、集落地区計画においては公共空地として定めておくことが望ましい。
d 集落地区施設の配置及び規模が定められると、これに即して道路の位置の指定又は開発許可が行われることとなるので、このことにふさわしい内容のものとなるよう配慮するべきである。
e 集落地区施設には都市計画施設を含まないものとされているので、集落地区として定められている道路、公園等を都市施設として都市計画に定めようとするときは、併せて集落地区計画に関する都市計画を変更するべきである。
3) 建築物等の用途の制限
建築物等の用途の制限は、集落地区計画の区域の用途構成の適性化、良好な居住環境の保持、小売業、環境を害するおそれのない工場その他集落の維持・振興に必要な業務の利便の増進等により、集落にふさわしい環境が形成され、又は保持されるように、必要に応じ区域を、住居系、工業系、商業系に類型区分して定めることが望ましい。この場合においては、必要に応じ、階数又は高さにより立体的に用途の制限を定める方法、規模別に用途の制限をきめ細かく定める方法を活用することが望ましい。なお、建築物等が工場である場合の建築物等の用途の制限については、建築基準法別表第二(と)項に掲げる業態の表現によることが望ましい。
4) その他の建築物等に関する制限
a 面積、高さ等の算定方法については、建築基準法の算定方法に関する一般的な原則によることとなるが、集落地区計画に当該算定方法を明記したうえで、それと異なった算定方法を用いることも考えられる。
b 建ぺい率の最高限度は、集落地区計画の区域の特性に応じて敷地内の空地の確保、安全、防火若しくは衛生の目的を達成し、良好な居住環境が維持又は形成されるよう定めることが望ましい。
c 建築物等の高さの最高限度は、集落地区計画の区域の特性に応じて良好な集落景観の保全、形成を図るほか、良好な日照、眺望の確保及び土地の高密度な利用の抑制のために定めることが望ましい。
d 建築物の敷地面積の最低限度は、集落の特性を受け継ぐ上で重要な制限であり、建築物の敷地が細分化されること又は建てづまりが進むことを防止し、住宅等の敷地内に必要とされる空地の確保又は建築物の安全、防火若しくは衛生の目的を達成し、集落地区計画の区域の良好な住環境を維持・増進するように定めることが望ましい。この場合において、現に家屋が連たんするまとまりのある一団の土地の区域等には平均的な規模の敷地を二分割できない数値、新規住宅の区域には規制集落の土地の区域に存する敷地の規模に調和しうる数値を地域の特性に応じて定めることが望ましい。
e 壁面の位置の制限は、道路に面して、若しくは他の建築物との間に有効な空地を確保し、又は区域内における建築物の位置を整えることにより、良好な環境の集落が形成され、又は保持されるように定めることとし、必要に応じて集落地区施設、新規整備道路等と一体的に効果的に定めることが望ましい。なお、例えば、壁面の位置の制限は地盤面からの高さにより異なる内容とする等、立体的に定めることも考えられる。
f 建築物等の形態又は意匠の制限は、建築物の外壁その他戸外から望見される部分の形状、材料、色彩等について、建築物等が当該集落の特性にふさわしい形態又は意匠を備えたものとなるように定めることが望ましい。なお、建築物以外のものであっても、例えば美観を損なう広告物・看板類を排除する内容の制限を定めることも考えられる。
g 垣又はさくの構造の制限は、垣又はさくの高さ、材料、形状、色彩等について、垣又はさくの構造が、当該集落の特性にふさわしいものとなるように定めることが望ましい。
5) 土地の利用に関する事項
a 集落地区整備計画のうち、土地の利用に関する事項は、専ら良好な居住環境の確保を図る観点から定めるものであり、これ以外に農用地に関する事項及び森林の整備、保全に関する事項を定めるべきではない。
b 森林法第5条の地域森林計画対象民有林については、集落法第5条第4項第3号の土地の利用に関する事項を定めるべきではない。
c 現に存する樹林地、草地のほか、水辺地、湿地帯、街道の並木、樹林や生け垣の存する土地等(これらに隣接している土地と一体となって良好な環境を形成しているものを含む。)で良好な居住環境を確保するため必要なものについて樹林等を限っての伐採の制限、池沼の埋立等土地の形質の変更の制限等を定めることが望ましい。この場合において、当該集落地区計画の区域の全部又は一部について、一体的に保全を図るための制限を行う区域として定めることも考えられる。
 
(3)配慮すべき事項
 
[1] 建築協定制度及び緑地協定制度の活用について
 集落地区計画の区域内において、集落地区計画に定めることのできない事項又は集落地区計画に定める必要がない事項若しくは内容について、居住環境のより高度な維持・増進等を図るため、住民による自主的な規制が行われることが適当である場合には、必要に応じ建築協定制度又は緑地協定制度を積極的に活用することが望ましい。
 
[2] 他の法令等との調整
1) 集落地区計画の区域及びその周辺における水質汚濁の防止その他の環境の保全の配慮することが望ましい。
2) 当該集落地区計画の区域における学校施設整備の必要性に十分留意するとともに、その立地環境の維持向上についてもこれを勘案することが望ましい。
3) 集落地区計画の区域内の商工業者の経済力、店舗等の新設・改造計画に配慮し、また、かかる観点から必要に応じ建築物等の制限の内容について検討するとともに、当該区域内に商店街整備計画、共同店舗等整備計画等中小小売・サービス業振興のための諸施策及び地場産業等地域中小企業の振興のための諸施策が講じられ、又は講じられようとしている場合は、これらの諸施策との整合性を保つことが望ましい。
4) ガソリンスタンド、LPGスタンド及び軽油スタンドは、その事業場の配置、形状等が特殊であることにかんがみ、これらの事業場の新設、改築、又は、増築に支障をきたさないように対処することが望ましい。
5) 工業用水道事業法、電気事業法、ガス事業法、石油パイプライン事業法、及び熱供給事業法による実施に支障を及ぼすことのないようにすることが望ましい。
6) 高圧ガス保安法、火薬類取締法、石油コンビナート等災害防止法、液化石油ガス保安の確保及び取引の適性化に関する法律(昭和42年法律第149号)、消防法(昭和23年法律第186号)及び鉱山保安法の規制を尊重し、これらの規制との整合性を保つようにすることが望ましい。
7) 都道府県の都市計画担当部局は、集落地区計画の策定又は変更の同意にあたっては、水道法に基づく広域的水道整備計画、廃棄物処理法に基づく一般廃棄物処理計画及び産業廃棄物処理計画並びに医療法に基づく医療計画の達成に支障がないよう配慮することが望ましい。
8) 集落地区計画には、し尿浄化槽、電気通信(放送及び有線放送を含む。)に関する事項が含まれないものとすること。
[3] 関係行政機関との調整
1) 市町村が集落地区計画に関する都市計画を決定しようとする場合には、その内容について都道府県の同意を得なければならないほか、都道府県知事が定めた基本方針に基づいたものとなっていること及び都市計画の一体性という観点より他の都市計画との調和がとられていることが必要があることから、あらかじめ市町村と都道府県との間で緊密な連絡調整を行い、都市計画の一体性等を確保することが望ましい。
2) 市町村の都市計画担当部局は、集落地区計画の策定又は変更にあたっては、あらかじめ中小小売・サービス業等の商業振興施策等との整合性を図る観点から商工部局と調整するとともに、治水担当部局、道路担当部局、農林水産担当部局、農林水産関連企業担当部局その他関連部局と協議することが望ましい。また、集落地区計画において、道路交通の管理に影響を及ぼすおそれのある道路を定めるにあたっては、あらかじめ、道路交通の管理に当たる関係都道府県公安委員会と協議することが望ましい。
3) 都道府県の都市計画担当部局は、集落地区計画の策定又は変更の同意にあたっては、あらかじめ、当該地域の良好な自然環境を保全する観点及び騒音等の環境保全上の支障を防止する観点から環境部局、中小小売・サービス業等の商業振興施策等との整合性を図る観点から商工部局とそれぞれ調整するとともに、農林水産担当部局、農林水産関連企業担当部局その他関連部局と協議することが望ましい。
4) 集落地区計画の区域内に4haを超える農用地(農林水産大臣の転用許可権限の対象となりうるようなまとまったもの)が含まれる場合には、当該計画の都道府県知事の同意にあたって、都道府県知事はあらかじめ地方農政局長(北海道にあっては農林水産省農村振興局長、沖縄県にあっては沖縄県総合事務局農林水産部長)と協議することが望ましい。
  なお、都道府県知事が地方農政局長等と協議を行うにあたっては、集落法第5条第1項の要件に適合すると見込むに足りる資料を添えて行うことが望ましい。この場合、協議資料は、集落地区計画の同意に際して必要なものの範囲内で行うことが望ましい。
 
※ なお、集落地区計画及びこれに関連する制度の運用に関して既存の通達で技術的助言とされているもののうち都市計画の運用に関する部分については、本指針に示されている内容に置き換えたうえで参考とすべきである。
 
W−2−2 都市施設
 
T)都市施設全般にわたる事項
 
1.都市施設に関する都市計画の基本的考え方
 
(1)都市施設に関する都市計画の基本的考え方
 都市施設については、円滑な都市活動を支え、都市生活者の利便性の向上を図り、良好な都市環境を確保するため整備することが必要な施設を、土地利用や他の都市施設等の計画と総合性、一体性を確保するように定めることが望ましい。
 ただし、都市施設のうち身近な施設については、根幹的な施設の決定の後に周辺の市街地の状況等に応じて順次都市計画を定める方が合理的な場合も考えられる。
 
(2)マスタープランに基づく都市施設の都市計画
 都市施設の都市計画については、都市計画区域マスタープラン及び市町村マスタープランに即し、各都市施設の需要の見通しの検討を行い、長期的な整備水準を検討したうえで、必要な規模の施設を定めることが望ましい。
 
(3)都市施設の計画の目標年次
 都市施設の計画の目標年次については、都市計画区域マスタープランとの整合を図る上からもおおむね20年後を目標として長期的な整備水準を検討し、都市施設の都市計画を定めることが望ましい。
 
(4)国の計画への適合
 都市施設の計画は、国土計画又は地方計画に関する法律に基づく計画及び道路、河川、鉄道、港湾、空港等の施設に関する国の計画に適合すべきである。
 
(5)都市施設の都市計画の効果と理由の明確化
 都市施設の都市計画は、その整備を行うことを前提として定めるものであり、将来の都市施設整備の円滑な施行を確保するため建築制限等を行うとともに、事業化にあたっては施行者に必要な権限が付与されることになる。このため、都市計画決定の際の理由書においてはこの点にも留意し、その必要性及び区域、規模、構造等の妥当性について、わかりやすい記述を行うべきである。
 
2.都市施設に関する都市計画の見直しの考え方
 
 都市施設の計画については、都市計画基礎調査の結果等を踏まえ、地域整備の方向性の見直しとあわせて、その必要性や配置、規模等の検証を行い、必要に応じて都市計画の変更を行うべきである。
 この場合、目指すべき都市像を実現するために都市計画決定された都市施設については、その整備に相当程度長期間を要するものであり、その実現に向け一定の継続性が要請されるものであることから、変更は慎重に行われるべきものである。また、都市内においては個々の都市施設がそれぞれ個別に機能を果たすものではなく、各施設が相互に組み合わさって総体として機能が発揮されるものであることから、見直しにあたっては、そのような総合性、一体性の観点から施設の配置、規模等についての検討を行うことが必要である。
 都市の将来像を実現するために都市計画決定されたが、その後長期にわたり事業が行われていない施設の問題については、その計画の変更は慎重に行われるべきものではあるが、これまでの運用においては一度都市計画決定した施設の都市計画の変更についてあまりにも慎重すぎたきらいもある。長期的にみれば都市の将来像も変わりうるものであり必要に応じ変更の検討を行うことが望ましい。
 この場合、都市施設の都市計画は都市の将来の見通しの下、長期的視点からその必要性が位置づけられているものであり、単に長期にわたって事業に着手していないという理由のみで変更することは適切ではない。都市施設の配置の変更や規模の縮小、廃止は、個別の箇所や区間のみを対象とした検討を行うのではなく、都市の将来像を踏まえ、都市全体あるいは影響する地域全体としての施設の配置や規模等の検討を行い、その必要性の変更理由を明らかにした上で行われるべきである。
 
3.環境・景観への配慮
 
(1)基本的考え方
 都市計画は、その理念に良好な都市環境の維持改善を内包しており、身近な生活環境はもとより地球規模の環境問題まで、これを念頭において計画の策定にあたることが望ましい。個々の都市計画においても、その都市施設が本来目的としている環境改善への貢献にできるだけ配慮するとともに、当該計画によって環境に影響を与える可能性がある場合には以下に掲げる事項等について十分に配慮し、環境面以外の要因もあわせて考慮することにより、的確で合理的な判断のもとで計画することが望ましい。また、計画にあたっては、農林漁業との健全な調和に配慮することが望ましい。
 
(2)周辺生活環境への配慮
 たとえば広域的な交通を分担する幹線道路や広範なサービスエリアを持つ供給処理施設等の都市施設を新たに計画する場合においては、計画それ自体は都市環境の改善につながるものであっても、その施設の建設や供用に際して、周辺の市街地に対しては必ずしもよい影響だけを与えるわけではない。この場合、当該施設が周辺生活環境に与える影響を十分に考慮して計画することが望ましい。
 
(3)自然的・歴史的環境等の保全、景観への配慮
 良好な自然的環境や重要な歴史的環境、地域にとって重要な景観等が存する場合は、これをできるだけ保全するように計画することが望ましい。
 
4.都市施設の立体都市計画
 
(1)立体都市計画の意義
 法第11条第3項において都市施設を整備する立体的な範囲等を定めることができるとされているところであるが(以下「立体都市計画」という。)、これは道路、河川その他の都市施設について、当該都市施設を整備する立体的な範囲(空間及び地下)を都市計画上明確にし、都市計画施設の区域内であっても建築行為が当該施設の整備に著しい支障が及ばないことが明らかであると考えられる場合は建築制限を適用除外又は建築を許可することを事前に明示することにより、建築の自由度を高め適正かつ合理的な土地利用の促進を図るものである。
 
(2)立体的な範囲を定めることが想定される場合
 法第11条第3項の「適正かつ合理的な土地利用を図るため必要があるとき」とは、具体的には、都市施設を建築物と同一の土地の区域内に立体的に整備することで複合的な土地利用を行うことによって、当該都市施設が果たすべき必要な機能を確保しつつ、また周囲の環境を害することなく、土地の有効・高度利用、都市機能の有機的な連携、魅力的な都市空間の創出等のニーズに応えることが可能となるときである。
 この際、都市内におけるオープンスペースの必要性や、施設の複合的な土地利用を行う場合の将来の管理の問題等についても十分検討したうえで、立体的な範囲を定めるべきである。
 
(3)立体都市計画の取扱い
[1] 立体的な範囲の定め方
 法第11条第3項の「都市施設を整備する立体的な範囲」は、当該都市計画施設の区域内における建築物の建築行為が都市施設の整備に支障とならないよう、あらかじめ必要な空間を担保するものという観点から、当該都市計画施設が占有することとなる空間を定めることが望ましく、都市計画施設の整備にあたって一時的に必要となる仮設構造物等に必要な空間をこれに加えて定める必要はない。なお、当該都市計画施設の維持管理に支障を生じないよう、都市施設を整備する立体的な範囲に維持管理に必要な範囲を含めて定めることが望ましい。
 また、都市計画施設が建築物と一体的に整備される場合においては、法第53条に基づく建築の許可がなされる際に、当該建築物が「都市施設を整備する立体的な範囲」を定める都市施設を支持するものとして、適切な構造を有していることが確認されるものであることから、当該都市計画施設を支持する建築物の構造部分について、これを「都市施設を整備する立体的な範囲」に含めて定める必要はない。
 
[2] 既存の道路区域内での取扱い
 立体都市計画を定める必要があるときは、将来整備する都市計画施設の区域内において、あらかじめ法第53条に規定する建築制限を除外する必要のあるとき等であり、建築が通常行われることが想定されない既存の道路区域内で「都市施設を整備する立体的な範囲」を都市計画に定めることは想定していない。
 
[3] 離隔距離の最小限度の定め方
 法第11条第3項の「離隔距離の最小限度」については、当該都市計画施設の整備のための工事、維持管理等に必要な範囲、及び、載荷重との関係で定まる当該都市計画施設からの離隔距離のうち、いずれか大きい方として定めることが望ましい。
 
[4] 載荷重の最大限度の定め方
 法第11条第3項の「載荷重の最大限度」については、当該都市計画施設の区域外の建築物等による載荷重その他の荷重を考慮したうえで、離隔距離との関係で定まる当該都市計画施設に許容される載荷重の最大限度として定めることが望ましい。
 
(4)建築許可の取扱い
 法第54条第1項第2号の「当該都市計画施設を整備する上で支障を及ぼすおそれがないと認められる場合」とは、当該建築物が少なくとも以下の要件を満たすものである場合である。
ア 「都市施設を整備する立体的な範囲」を空間として担保することが可能な建築物であること。
イ 「都市施設を整備する立体的な範囲」における都市施設を整備するための工事等の実施を著しく妨げるものではないこと。
ウ 「都市施設を整備する立体的な範囲」において整備される都市施設の構造に影響を及ぼし、その機能を損なうおそれがないものであること。
 なお、立体的な範囲が道路である都市施設を整備するものとして空間について定められているときには、安全上、防火上及び衛生上支障がないものとして政令に定める場合に限られており、この許可にあたっては、あらかじめ十分建築担当部局及び道路を管理することとなる者と調整を行うことが望ましい。
 
5.都市施設を都市計画決定する際の配慮事項
 
(1)環境影響評価
 大規模な都市施設を都市計画に定める場合には、環境影響評価法(平成9年法律第81号)において、都市計画決定権者が都市計画の手続きの中で環境影響評価を実施することが定められており、その結果を都市計画に適切に反映させることが必要である。
 この際、都市計画の手続きと環境影響評価の手続きが同時併行して行われることとなるので、例えば以下のような点について調整を十分行うことが望ましい。
[1] 方法書手続きの段階における都市計画の内容の情報提供
[2] 準備書の説明会における都市計画の案の説明
[3] 評価書の都道府県都市計画審議会への付議において、環境影響評価についての専門委員・臨時委員の参加、小委員会の設置等による公正・中立な判断の確保
[4] 市町村意見の聴取期間の一致
 
(2)地下空間における都市計画の取扱い
 都市の中心市街地等の地区においては、大深度地下空間を含め地下利用の増大に伴う地下空間の輻輳等の状況を踏まえ、地下空間の効率的かつ適切な利用を図るため、道路の地下空間をはじめ都市の地下空間の利用についての方針として地下利用ガイドプランをとりまとめ、これに基づき計画的に地下利用を進めていくことが必要である。
 このため、これらの地区における地下利用ガイドプランのうち必要な事項を市町村マスタープランに定めるとともに、地下に都市施設を定める際には、この市町村マスタープランにおける地下空間の利用についての方針を踏まえて配置や構造等の計画を定めることが望ましい。
 
U)施設別の事項
 
A.交通施設
 
A−1.交通施設全般
 
1.交通体系の基本的考え方
 
 交通施設の都市計画にあたっては、利用者の利便性、効率的な交通処理、良好な都市環境の保全及び地球環境問題等の観点から都市全体として公共交通、自動車、自転車、徒歩等の各交通機関が適切に役割分担をした交通体系が確立されるよう各交通施設を総合的、一体的に定めるべきである。
 この場合、交通施設が都市の将来像の骨格を形成するものであることから、都市計画区域マスタープランにおいて交通体系の観点も含めた都市計画の目標(例えば都心居住による職住近接型の市街地の形成、公共交通機関を軸としたまとまりのある市街地の形成など)を設定するとともに、これを実現するため、土地利用のあり方と一体的に交通体系の整備のあり方を検討することが望ましい。
 また、特に交通の輻輳が著しく、かつ空間的制約の大きい既成市街地等においては、目標とするサービス水準と必要となる施設量について十分吟味するとともに、必要に応じ、例えば公共交通利用促進策等の交通施設計画と密接に関連する交通需要の調整の考え方や、整備される交通施設の将来における使い方を考慮した上で交通施設を定めることが望ましい。
 
2.都市圏の交通施設に関する都市計画の考え方
 
 交通施設の都市計画にあたっては、おおむね20年後を目標とし、大都市、地方都市を問わず、通勤通学等日常交通活動の広がりの観点から一体的な圏域を形成している都市圏を対象に、交通実態の把握・分析、目指すべき都市構造や土地利用を踏まえた将来交通需要の予測を行ったうえで、都市の骨格を形成する交通施設等の必要性及び規模に関し総合的な検討(これらを総称して以下「都市交通調査」という。)を行うことが望ましい。
 都市交通調査を行うにあたっては、以下の点に留意することが望ましい。
 なお、対象とする交通施設の都市計画が都市圏の交通全体に大きな影響を及ぼさないことが明らかな場合は、既存のデータ等を時点補正する等、簡略化して実施することが考えられる。
 
[1] 検討の対象範囲
  根幹的な交通施設は、複数の地方公共団体にまたがり交通や土地利用に影響を及ぼす場合が多い。このため、必要に応じて当該都市計画区域と、これに隣接、近接する区域を含めた一体の圏域を形成する都市圏を対象に検討を行うことが望ましい。
[2] 交通実態の分析
  都市計画の目標を実現するための交通体系の整備の方針や根幹的な交通施設の検討を行うにあたっては、交通機関分担等の交通の特性や都市構造、土地利用等を反映した分析や予測が必要である。このため、交通主体である人の動きに着目し、交通目的や利用交通手段、移動の起終点の位置など多面的な実態把握をすることが望ましい(パーソントリップ調査)。
  ただし、自動車利用率が卓越している小規模な都市圏においては、例えば自動車の動きに着目し、自動車交通の移動の起終点や目的等を実態把握する自動車起終点調査等の比較的簡易な調査で足りる場合も考えられる。
  また、現状の交通実態に対する利用者の認識や将来の都市交通に対する市民の意向意識の動向把握も必要となる場合があることから、上記実態把握とあわせて市民意識を把握することも有効と考えられる。
 
[3] 交通施設の計画の検討
  交通施設の計画を検討するにあたっては、目指すべき都市構造や土地利用を踏まえつつ、交通機関別に将来交通需要予測を行ったうえで、効率的な交通処理の観点や利用者の利便性の観点及び良好な都市環境の保全の観点等から総合的に評価・検討することが望ましい。
 
3.都市計画区域マスタープラン、市町村マスタープランへの位置付け
 
 交通施設は、都市の骨格を形成し、都市構造に大きく影響するものであることから、都市計画の目標を実現するための交通体系の整備の方針及び主要な交通施設の配置の方針等を都市計画区域マスタープランに定めたうえで、これを踏まえて各交通施設の都市計画を定めるべきである。
 一方、市町村マスタープランにおいては、都市計画区域マスタープランに即し、地域に密着した観点から、都市交通調査において検討された内容のうち必要な事項や地区の課題に対応した事項を定めることが望ましい。
 
4.地区の交通施設に関する都市計画の考え方
 
[1] 各地区の状況によっては、良好な居住環境の保全、中心市街地の活性化、都心部等における交通の輻輳・集中の解消などその地区特有の都市交通上の課題に対応する必要がある場合が考えられる。その場合、上記2.の都市交通調査等を踏まえ、例えば、地区内の立地施設の特性を考慮した交通需要の把握等の追加調査を行うなど、当該地区におけるきめ細かな調査・検討を行うことが望ましい。
  このような特定の課題に対応する必要のある地区の調査においては、地区内交通の安全性や利便性、快適性の確保、広域的道路との整合性、バスや鉄道等の公共交通の利用促進等に配慮しつつ、補助幹線街路、区画街路、歩行者専用道、自転車専用道、自動車駐車場、自転車駐車場等の交通施設の必要性、配置、規模等について検討を行い、必要なものを都市計画に定めることが望ましい。
 
[2] 大規模な都市開発や大幅な容積率の緩和等の実施により、新たに相当規模の交通量の発生及び集中が想定される場合については、開発地区及びその周辺地区において開発等に伴う発生集中交通量を予測・評価し、必要に応じて当該開発等の計画内容の見直しや、地区周辺の道路、鉄道等の都市計画の変更等について総合的に検討することが望ましい。
 
 A−2.道路
 
1.都市における道路の機能と道路種別
 
(1)道路の機能
 都市における道路は、以下のような多様な機能を有している。
[1] 都市における円滑な移動を確保するための交通機能
[2] 都市環境、都市防災等の面で良好な都市空間を形成し、供給処理施設等の収容空間を確保するための空間機能
[3] 都市構造を形成し、街区を構成するための市街地形成機能
 
(2)道路の種別
 道路の都市計画を定めるにあたっては、主として交通機能に着目して次のような道路種別を設定し、これらを適切に組み合わせて、道路の機能が十分発揮できるようにする必要がある。
[1] 自動車専用道路
 都市高速道路、都市間高速道路、一般自動車道等専ら自動車の交通の用に供する道路
[2] 幹線街路
 都市内におけるまとまった交通を受け持つとともに、都市の骨格を形成する道路
[3] 区画街路
 地区における宅地の利用に供するための道路
[4] 特殊街路
 ア 専ら歩行者、自転車又は自転車及び歩行者のそれぞれの交通の用に供する  道路
 イ 専ら都市モノレール等の交通の用に供する道路
 ウ 主として路面電車の交通の用に供する道路
 
2.道路の都市計画の考え方
 
(1)都市交通調査に基づく適切な計画の検討
 道路の都市計画を定めるにあたっては、目指すべき都市像を実現するため、放射道路や環状道路の配置など、道路の様々な機能が十分発揮できるような配置を検討するとともに、計画交通量に基づく車線数の検討や、歩行者、自転車のための空間、路面電車やバス停等の公共交通のための空間の検討など、道路のもつ様々な機能が各道路の担うべき役割に応じて適切に確保されるよう構造等を検討することが望ましい。
 これらの検討は、都市交通調査に基いて行うことが望ましい。
 
(2)都市における道路の配置等の考え方
 都市における道路の都市計画を定めるにあたっては、広域的な道路網との整合はもとより、土地利用や他の都市施設との十分な連携のもとに、自動車専用道路、幹線街路、区画街路及び特殊街路を適切に組み合わせることにより都市計画道路網を形成するとともに、都市の骨格となるよう配置することが望ましい。
 また、地形、地質等の自然条件、市街地の形態や現況の土地利用、あるいは保全すべき自然環境、歴史的環境等の社会的条件を踏まえて、以下の考え方により都市計画を定めることが望ましい。
 
[1] 自動車専用道路
 自動車専用道路は、都市間高速道路を国の計画に適合しつつ国土レベルの広域的な自動車交通を処理するように適切に定めるとともに、大都市等においては、都市高速道路を、幹線街路と連携して広域的な交通や都市内の交通を適切に処理することができるよう配置することが望ましい。
 他の道路との接続は、専用の出入路において広域的な自動車交通を適切に分担するよう接続する道路及び接続位置を定めることが望ましい。この場合、できる限り交通機能として規格の高い幹線街路と接続すべきであり、区画街路とは接続しないこととすべきである。
 また、他の都市計画道路とは立体交差とすべきである。
 
[2] 幹線街路
 幹線街路は、特に多様な機能を有していることから、次のとおりさらに区分して計画することが望ましく、これらの役割分担した道路が適切に組み合わされるよう配置することにより円滑な交通処理、良好な市街地環境の形成、災害時の防災性の向上等が図られるようにすることが望ましい。
・主要幹線街路
 主要幹線街路は、都市の拠点間を連絡し、自動車専用道路と連携し都市に出入りする交通及び都市内の枢要な地域間相互の交通を集約して処理できるよう適切に配置することが望ましい。また、主要幹線街路は、特に高い走行機能と交通処理機能を有し、都市構造に対応したネットワークを形成するよう計画することが望ましい。
・都市幹線街路
 都市幹線街路は、都市内の各地区又は主要な施設相互間の交通を集約して処理することができるよう適切に配置することが望ましい。特に市街地内においては、主要幹線街路、都市幹線街路で囲まれた区域内から通過交通を排除し良好な環境を保全するよう適切に配置されることが望ましい。
・補助幹線街路
 補助幹線街路は、主要幹線街路又は都市幹線街路で囲まれた区域内において、当該区域の発生又は集中する交通を集約し適正に処理することができるよう、また区域内において良好な都市環境を実現するため区域内を通過する自動車交通の進入を誘導しないよう配置することが望ましい。
 幹線街路は、自動車専用道路とも区画街路とも接続することができるが、自動車専用道路とはできる限り交通機能として規格の高い幹線街路と接続することが望ましく、また、区画街路と接続する場合には区画街路を極力集約して接続することが望ましい。
 また、走行機能と交通処理機能を重視する幹線街路については、交差点において右折車線等を考慮した幅員とすべきであり、その他の幹線街路についても極力右折車線等を考慮した幅員とすることが望ましい。特に走行機能と交通処理機能を重視する幹線街路が他の幹線街路と交差するものについては、原則として立体交差とするべきである。
 
[3] 区画街路
 区画街路は、適切な規模、形状の街区を形成するとともに、幹線街路等で囲まれた区域内に発生又は集中する交通を円滑に集散するよう、また区域内を通過する自動車交通の進入を誘導しないよう配置することが望ましい。
 
[4] 特殊街路
・歩行者専用道等
 特殊街路アに相当する歩行者専用道、自転車専用道、自転車歩行者専用道については、以下の考え方により計画を行うことが望ましい。
 歩行者専用道については、住宅地や商業地等における平面的な歩行者専用道、駅周辺部における立体的な歩行者専用道(ペデストリアンデッキ、地下道等)等が考えられ、歩行者の交通の動線と整合を図るとともに、車道との交差をなるべく避け、あるいは立体交差を行い、他の道路の歩道や区画街路、公共交通と連携して歩行者交通のネットワークを形成するよう配置することが望ましい。
 自転車専用道等については、通勤、通学、買い物、業務等日常の自転車交通の用に供する道路、レクリエーションのためのサイクリングコース等が考えられ、それぞれ自転車交通の主要な動線と整合を図るとともに、他の道路や公共交通と連携して自転車交通のネットワークを形成するよう配置を行うことが望ましい。
 歩行者専用道等においては、快適な通行の用に供し、良好な都市環境、都市景観の形成を図るため、緑化、溜りの空間に配慮して計画を定めることが望ましい。
・都市モノレール専用道等
 特殊街路イに相当する都市モノレール専用道等については、鉄道等他の交通機関との接続を確保し都市交通の利便性を増進するとともに、他の都市計画道路と一体となって適切に都市交通を分担し、都市内の主要な地区又は施設を効率的に連絡するよう配置することが望ましい。
 都市モノレール専用道等については運行に必要な基本的施設(本線部、支線部、乗降部等)を一体的に定めることが望ましい。
 なお、計画にあたっては、他の交通機関との連携を図るため必要となる駅前広場等の交通結節施設を計画し、また、今後の高齢化等に配慮し、バリアフリーのために必要となる施設に配慮した区域、構造となるように計画を行うことが望ましい。
・路面電車道
 特殊街路ウに相当する路面電車道については、鉄道等他の交通機関との接続を確保し都市交通の利便性を増進するとともに、他の都市計画道路と一体となって適切に都市交通を分担し、都市内の主要な地区又は施設を効率的に連絡するよう配置することが望ましい。
 路面電車道については運行に必要な基本的施設(本線部、支線部、乗降部等)を一体的に定めることが望ましい。
 
(3)空間機能に配慮した道路の計画
 
 道路の計画にあたっては、例えば以下のように空間機能に配慮することが望ましい。
 
[1] 道路における良好な都市空間の形成 
 都市内道路は、都市内において連続した公共空間を提供し、良好な都市環境を確保する上で重要な役割を担っており、特に歩道や植樹帯は公園、緑地等とあいまって都市内の貴重な緑と憩いの空間を提供している。このため、幹線街路の計画にあたっては、地域の状況に応じ歩道、植樹帯等の空間を積極的に確保するよう計画することが望ましい。区画街路や特殊街路(歩行者専用道等)についても都市内の歩行者ネットワーク等を構成する場合については緑化や溜りのための空間を確保していくことが望ましい。
 
[2] 防災機能からの道路の配置
 都市内道路は災害時の避難路や延焼遮断の防災のための空間としての機能を勘案して配置することが望ましい。避難路は、平成8年建設省告示第1029号に従い、広域避難地またはこれに準ずる安全な場所へ通ずる幅員15m以上の道路又は幅員10m以上の緑道とし、避難路の沿道は、建築物の不燃化等を図ることが望ましい。また、避難地となる公園等と一体的に計画することが望ましい。
 
[3] 都市のシンボルとなる道路の計画
 都心部や文化施設の集積地区等で都市の顔となり景観形成の軸となる道路については、十分なアメニティ空間が確保された広幅員道路として計画することが望ましい。このような都市のシンボルとなる道路については、必要な交通機能を担う車道幅員を確保したうえで、全体幅員の過半を車道以外の幅員とすることが望ましく、また、沿道の建築物と一体となり都市の顔としてふさわしい景観形成を図ることが望ましい。
 
(4)交通広場の計画
 
 鉄道駅等交通結節点においては、複数の交通機関間の乗り継ぎが円滑に行えるよう、必要に応じ駅前広場等の交通広場を設けるものとし、周辺幹線街路と一体となって交通を処理するものについては道路の一部として都市計画に定めることが望ましい。
 
[1] 交通広場の位置
 交通広場の位置については、交通安全、円滑な交通処理の観点から、周辺街路との接続のあり方、また都市の玄関口としての景観形成の観点から、周辺建築物や街並みとの調和等に十分配慮しながら、適正な位置を選定することが望ましい。
 
[2] 交通広場の規模、構造等
 交通広場の規模は、交通機能の確保のための交通空間と、公共的なオープンスペースとして良好な環境形成のための環境空間が、それぞれ適正に確保されるよう定めるべきである。 
 交通空間については、交通広場が、人、自転車、バス、タクシー、自家用車等の車両や歩行者が集中する交通結節点であることから、交通動線の単純化と円滑な処理が行われるように配慮しつつ、バス乗降場、タクシー乗降場、自家用車乗降場、タクシー駐車場、自転車駐車場、歩道及び車道等をそれぞれ必要な規模で配置することが望ましい。この際、交通広場内への通過交通や、荷捌きのための交通流入を避けるよう配慮すべきであり、交通広場に面する建築物へのアクセスは原則として交通広場とは別に確保されるべきである。
 環境空間は、当該広場の都市における景観形成上の位置づけ等を勘案しながら、歩行者の溜り、緑化や修景施設のために必要な規模を確保するとともに、周辺の建築物と一体となって都市の玄関口にふさわしいシンボルとしての景観が形成されるよう、その規模を定めることが望ましい。
 なお、今後の高齢化の進展等に配慮し、バリアフリーのために必要となる幅員や施設に配慮した規模、構造となるよう計画を定めることが望ましい。
 
[3] 交通広場の立体利用
 周辺の土地利用が高度に行われており、平面的に区域の確保が難しい場合、あるいは歩行者と車両との交錯をなくしたサービス水準の高い歩行者交通ネットワークの形成を図ることが望ましい場合等においては交通広場を立体的に整備することも考えられる。特に、歩行者空間を立体的に計画する場合には、駅や周辺建築物等との動線を勘案することが望ましい。
 
(5)道路構造令の適用
 
 都市施設として都市計画に定める道路のうち道路法上の道路として新設又は改築されるものについては、その計画事項である幅員、線形等が道路構造令(昭和45年政令第320号)に適合している必要がある。
 また、既に決定されている都市計画道路のうち、整備着手時点における道路構造令の規定に従って整備されているものについては、現行の道路構造令を遡及して適用する必要はないが、今後、新設又は改築を行うものについては、都市計画決定されている幅員が現行の道路構造令の一般規定を適用した場合に十分であるかを検証したうえで、必要に応じ都市計画を変更すべきである。
 この場合、沿道に堅固な建築物が立地している等により、道路構造令の一般規定を適用することが事業費の高騰等社会経済上多大な影響を及ぼすものと判断される場合には、関連する都市計画道路の変更等を行い、当該道路の機能の一部を代替させることにより、道路構造令の一般規定に適合させて整備することが望ましい。しかしながら、この方法により道路構造令の一般規定に適合できない場合であって、上記のように道路構造令の一般規定をそのまま適用することが社会経済上多大な影響を及ぼすものと判断される場合には、住民の合意形成や技術、費用の面等特別の理由によりやむを得ない場合に限り、既決定の都市計画道路について道路構造令中の各例外規定を適用する余地もあると考えられる。
 
(6)土地利用に応じた道路の配置
 
 道路の都市計画にあたっては、市街地の土地利用形態に整合した配置とする必要がある。
 住宅系市街地においては、主要幹線街路、都市幹線街路で囲まれた区域内において、通過交通を排除し良好な環境を保全するよう、これらの幹線街路を配置することが望ましい。
 都市郊外の住宅系の新市街地においては、1kuを標準とする近隣住区を囲むように主要幹線街路、都市幹線街路を配置することとし、これらに囲まれた区域から通過交通を排除し良好な住宅地としての環境を保全するようにすることが望ましい。これらに囲まれた区域内においては補助幹線街路を適切に配置することが望ましい。住宅系の既成市街地おいては、現状の市街地形態を勘案し、新市街地における配置の考え方を踏まえつつ、主要幹線街路、都市幹線街路で囲まれた区域内において、通過交通を排除し良好な環境を保全するようにすることが望ましい。
 また、住宅系市街地において大量の交通、重交通を処理する幹線街路を新たに計画する場合は、複数の代替案の比較検討を行う等、市街地の環境について細心の注意を払う必要がある。この場合、沿道の土地利用転換の誘導や建築物の一体整備あるいは環境施設帯の設置等、それぞれの地域の特性に応じ道路空間とし調和した沿道の都市空間が形成されるよう、都市計画を定めることが必要と考えられる。
 商業系市街地については、商業業務施設の集積状況に応じて住宅系の新市街地よりも高い密度で幹線街路を配置し、円滑な都市活動を確保することが望ましい。この場合、商業系市街地内に不要な通過交通が入らないよう必要に応じて商業系市街地周辺に環状道路を配置し、周辺に駐車場等を一体的に定めることも考えられる。
 工業系市街地については、工場の敷地規模等により大きく変動するので一概に示すことは困難であるが、一般的には住宅系の新市街地よりも低い密度で幹線街路を配置し、大型車交通を円滑に処理することが望ましい。
 市街化調整区域等については、地域間の道路、市街化区域と他の市街化区域を連絡する道路等を定めることとし、これらの道路が農地に配置される場合にあっては、農地の形状に配慮した計画とすることが望ましい。
 
(7)地域に身近な道路の計画
 
[1] 主要幹線街路及び都市幹線街路は根幹的施設であり、都市全体として必要なものを一体的に定めることが望ましいが、補助幹線街路は地域に身近な施設であり、その取扱いは以下のように考えることが望ましい。なお、区画街路について都市計画に定めて整備する必要のあるものについても、同様に取扱うことが望ましい。
1) 新市街地においては、原則として根幹的な道路と地域に身近な道路を一体的に決定し整備することが望ましい。
2) 一方、既成市街地における地域に身近な道路については、根幹的な道路を定めた後、市街地の状況等を踏まえ事業の展開に合わせて順次定めていくことも考えられる。
3) 特に市街地開発事業を行う場合には、市街地開発事業が面的な広がりを持った地域において宅地等と道路を一体的に整備するものであることに鑑み、市街地開発事業の都市計画と同時に根幹的な道路から地域に身近な道路まで必要なものを一体的に定めることが望ましい。
 
[2] 地区計画等における地区施設等は、主として当該地区内の住民等にとって良好な市街地環境の形成又は保持のため定めるものであり、公共が積極的に整備を行う必要性から定める都市施設とは性格が異なるものであるが、地区施設等の道路の計画にあたっては、都市施設として計画される道路と一体となって機能するよう定めることが必要である。
 
(8)道路に関する都市計画の見直し
 
 道路の都市計画については、都市計画基礎調査や都市交通調査の結果等を踏まえ、また、地域整備の方向性の見直しとあわせて、その必要性や配置、構造等の検証を行い、必要がある場合には都市計画の変更を行うべきである。この場合、地域整備のあり方とあわせて、地域全体における都市計画道路の配置、構造等についての検討を行うべきであり、また、過去に整備された道路の再整備についても、必要に応じ検討を行うことが望ましい。また、都市計画道路の変更を行う場合には、その変更理由を明確にした上で行うべきである。
 長期にわたり未整備の路線については、長期的視点からその必要性が従来位置づけられてきたものであり、単に長期未着手であるとの理由だけで路線や区間毎に見直しを行うことは望ましくなく、都市全体あるいは関連する都市計画道路全体の配置等を検討する中で見直されるべきである。これらの見直しを行う場合には、都市計画道路が整備されないために通過交通が生活道路に入り込んだり、歩行者と自動車が分離されないまま危険な状態であるなど対応すべき課題を明確にした上で検討を行う必要がある。
 都市計画道路の廃止や幅員の縮小は、例えば都市の将来像の変更に伴い想定していた市街地の拡大が見直されるなどにより当該道路の必要性がなくなった場合や、都市計画道路の適切な代替路線を別途計画する場合等が考えられるが、変更を行う場合にはその変更理由を明らかにした上で行うべきである。また、代替路線を計画する場合は、新たな建築制限が課される関係者を含めた地域社会の合意形成の必要性も念頭において検討を行うことが必要であると考えられる。
 
3.道路の都市計画の取扱い
 
 道路に関する都市計画に定める事項のうち、車線の数、構造、名称については、それぞれ以下によることが望ましい。
 
(1)構造
 
 道路に関する都市計画において定める構造のうち車線の数、嵩上式、掘割式、地下式及び地表式の別並びに幅員等については、以下に示すところによる。
[1] 車線の数
 「車線」とは、道路構造令第2条第5号に規定する車線をいい、「車線の数」とは、同令第5条の規定に基づき定められる車線の数をいう。また、車線の数を定めるにあたって、一の路線において車線の数の異なる区間がある場合は、当該路線の延長の二分の一以上の区間を占める車線の数を採用する。
 なお、同令第3条第2項に規定する第三種第五級および第四種第四級の道路、歩行者専用道、都市モノレール専用道、路面電車道その他の車線がない道路については、車線の数を定めない。
[2] 嵩上式、掘割式、地下式及び地表式の別
ア 嵩上式の区間とは道路面が地表面よりおおむね5m以上高い区間が350m以上連続している区間をいう。
イ 掘割式の区間とは道路面が地表面よりおおむね5m以上低い区間が350m以上連続している区間で地下式の区間以外のものをいう。
ウ 地下式の区間とは道路が350m以上連続して地下にある区間をいう。
エ 地表式の区間とは、嵩上式、掘割式、地下式の区間以外の区間をいう。
[3] 幅員
 幅員とは、車道、歩道、中央帯等の幅員の総和である道路の幅員をいう。
 ただし、特殊街路(都市モノレール専用道)にあっては、都市モノレールの運行に必要な空間として、都市モノレールの建築限界の外端から外端までをいう。
 
(2)名称
 
 道路に関する都市計画において定める名称は番号及び路線名とし、番号の付し方は以下の凡例に示すところによる。
 
凡例 番号の付し方
   ○・○・○○
  区分 規模 一連番号
 
[1] 区分
区分一 自動車専用道路
区分三 幹線街路
区分七 区画街路
区分八 特殊街路アに相当する歩行者専用道、自転車専用道又は自転車歩行者専用道
区分九 特殊街路イに相当する都市モノレール専用道等
区分十 特殊街路ウに相当する路面電車道
 
[2] 規模
 規模として付する番号は、幅員により次のとおりとする。
規模     幅員の範囲
一 幅員40m以上のもの
二 幅員30m以上40m未満のもの
三 幅員22m以上30m未満のもの
四 幅員16m以上22m未満のもの
五 幅員12m以上16m未満のもの
六 幅員 8m以上12m未満のもの
七 幅員 8m未満のもの  
 
[3] 一連番号
 当該都市計画区域毎に、区分毎の一連番号を付する。
 
(3)都市計画区域外に定める場合の取扱い
 
 一の都市計画区域を超える広域的な道路については、都市の健全な発展と秩序ある整備を図るため、一体のものとして都市計画に位置付けることが適当と判断される区間がある場合には、その区間が都市計画区域外にわたる場合であってもこれを都市計画に定めることが望ましい。
 
(4)法面を有する道路の区域の定め方
 
 法面を有する道路については、都市計画の当初決定の段階において、法面の管理方法が特定できない等道路の区域を明確にすることが困難な場合には、本線部の幅員分の区域のみを決定し、後に道路の区域が明確になった段階で、法面の区域を追加する方法で都市計画を定めることも考えられる。
 
 A−3.都市高速鉄道
 
1.都市高速鉄道の都市計画の考え方
 
(1)都市高速鉄道の都市計画の考え方
 
 都市高速鉄道は都市における活動に重要な役割を果たす公共交通機関である。都市高速鉄道の計画にあたっては、都市の将来像や交通体系の整備の方針を踏まえ、各交通機関の機関分担のあり方や各機関の需要を検討し、配置、規模等の都市計画を定めるべきである。
 都市高速鉄道の計画の策定にあたっては、地域毎の利用者の需要を踏まえ、都市の主要な拠点間の連絡や他の交通機関との接続を考慮して配置するとともに、地形や市街地の状況、交差する道路の関係等を踏まえ、鉄道の形式は嵩上式、堀割式又は地下式の構造となるように計画を行うことが望ましい。
 
(2)都市高速鉄道と関係する都市計画
 
 都市高速鉄道の計画にあたっては、鉄道の駅が市街地の形成に大きな影響を与えるため、駅周辺の交通結節機能のあり方や将来の駅周辺の土地利用のあり方、について十分検討を行い、関連する駅周辺の土地利用、道路や駅前広場等の関連施設、市街地開発事業等を一体として都市計画に定めることが望ましい。また、鉄道が市街地における新たな分断要素となる可能性があるため、計画する区間全般にわたり鉄道と交差する道路を同時に定めることが望ましい。
 なお、計画にあたっては今後の高齢化等に配慮し、バリアフリーのために必要となる幅員や施設に配慮した区域、構造となるよう計画を行うことが望ましい。
 
(3)連続立体交差事業に係る鉄道に関する都市計画
 
 連続立体交差事業は、鉄道による市街地の分断を解消すること等により市街地形成に大きな影響を及ぼすものであり、当該事業に係る鉄道は都市高速鉄道として都市計画に定めるべきである。この場合、都市高速鉄道の都市計画の決定と併せて、交差する幹線街路について、交差形式や幅員の見直し、必要な路線の追加を行うとともに、関連側道の決定、駅周辺における駅前広場を中心とする道路、自動車駐車場、自転車駐車場、その他必要な都市施設の決定と土地利用の見直しを行うことが望ましい。
 また、特に駅周辺において、相当規模の鉄道跡地が発生し、この鉄道跡地を活用して都市の重要な機能を担う拠点の形成を行うことが可能となる場合も多いので、その場合には、都市基盤施設と宅地等の一体的な整備を図るため、市街地開発事業を都市高速鉄道の都市計画決定と同時に定めることが望ましい。
 
2.都市高速鉄道の都市計画の取扱い
 
(1)構造
 
 都市高速鉄道に関する都市計画に定める事項のうち、嵩上式、掘割式、地下式又は地表式の別については、次によることが望ましい。
[1] 嵩上式の区間とは、線路の施工基面が地表面よりおおむね5m以上である区間が350m以上連続している区間をいう。
[2] 掘割式の区間とは、線路の施工基面が地表面よりおおむね5m以下である区間が350m以上連続している区間で地下式の区間以外のものをいう。
[3] 地下式の区間とは線路構造物の大部分が地下にある区間が350m以上連続している区間をいう。
[4] 地表式の区間とは、線路の施工基面がおおむね地表面にある区間で、[1]、[2]及び[3]以外の区間をいう。
 
(2)都市計画に定める区間、区域
 
 都市高速鉄道の機能は駅間の輸送を担うことであるため、都市施設の完結性を考慮して計画決定を行う観点から、都市計画で定める区間は、原則駅間とすべきである。
 また、都市計画に定める駅間の区間において存する都市高速鉄道の機能を発揮するために必要な鉄道施設(駅、車庫、操車場等)の区域についても一体的に都市計画に定めることが望ましい。ただし、駅の出入口等周辺の都市開発や建築物の整備の動向等にあわせて計画を行う方が合理的な施設については段階的に都市計画を定めることも考えられる。
 
(3)都市モノレール等に関する都市計画の取扱い
 
 都市モノレール、新交通システム等については、都市高速鉄道として決定することとし、都市モノレール等のインフラストラクチュア部分が道路として整備される場合には、運行に必要な基本的施設(本線部、支線部、乗降施設)の全てを一体的に「特殊街路」(都市モノレール専用道等)として都市計画決定を行うべきである。
 また、軌道法3条の規定による特許の手続き及び都市計画法第18条の規定による都市計画決定の手続きは、それぞれ当該都市モノレール等の具体的な位置等を勘案して行う手続き又は区域を定める手続きであるため、特許及び都市計画決定は、同一時期に行うことが望ましい。
 
A−4.自動車駐車場・自転車駐車場
 
1.自動車駐車場の都市計画の考え方
 
(1)駐車場整備の基本的考え方
 
 駐車場は、道路が自動車の走行空間であるのに対して、目的地における自動車交通の受け皿としての施設であり、道路と一体となって円滑な自動車交通を支える重要な都市施設である。したがって、次のような自動車交通が著しく輻輳している地区などにおいては道路の効用を保持し、円滑な道路交通を確保するため、駐車場の整備を積極的に推進することが望ましい。
[1] 商業・業務地区等で都市機能が集積し、自動車交通が輻輳している地区
[2] パークアンドライド等の交通結節機能を強化すべき鉄道駅等の周辺地区
[3] 面的整備事業予定地区等で、将来拠点的都市機能の集積が見込まれる地区
[4] 集合住宅が多く立地しているか、又は立地が進行している住宅地区
[5] フリンジパーキング(都心へ流入する自動車を都心の外部で受けることにより、歩行者、自転車及び公共交通機関を優先する都心空間の形成に資する駐車場)を設置すべき中心市街地外縁地区
 駐車場には、公共的な駐車場、附置義務駐車場など、その種類、運営主体等が多種多様であることから、その整備にあたっては、個々の都市や地区の駐車需要に対応して、それぞれの駐車施設が適切な役割分担と連携を保ちながら、全体として効率的にその機能が発揮されるようにする必要がある。
 この点に関する基本的な考え方を必要に応じて市町村マスタープランに位置づけることが望ましい。
 
(2)自動車駐車場の計画
 
 公共及び民間により総合的な駐車対策を行う必要があり、駐車場法第3条の要件を満たす地区については、駐車場整備地区として積極的に都市計画で位置付けることが望ましく、当該地区内における公共的な自動車駐車場は都市計画に定めることが望ましい。
 また、当該地区外においても公共が主体となって整備する駐車場については、都市計画に定めることが望ましい。
 
2.自動車駐車場に関する都市計画の取扱い
 
 駐車場の都市計画決定については以下により取り扱うことが望ましい。
[1] 路外の自動車駐車場については法第11条第1項1号の「駐車場」として都市計画決定すること。ただし、道路に接して設けられる道路管理者の設置する自動車駐車場で、地上一層の構造を有し、道路と一体の機能を有するものについては、法第11条第1項1号の「道路」に含めて都市計画決定できるものとすること。
[2] 道路上に設ける自動車駐車場については、道路管理者の設置するものであって、永続的なものであり、地上一層の構造を有し、道路と一体の機能を有するものについては「道路」に含めて都市計画決定を行うこと。
[3] 道路の地下に設ける自動車駐車場については、「駐車場」として都市計画決定を行うこと。ただし、道路管理者の設置するものについては、「道路」に含めて都市計画決定を行うこと。
 
3.自転車駐車場の都市計画の考え方
 
 自転車交通は、買い物等の近距離移動や通勤通学時等における公共交通の端末交通手段として重要である一方、鉄道駅等公共交通と自転車交通の結節点や量販店等の周辺における多数の放置自転車は、歩行者等の安全かつ快適な通行を阻害する等の問題を引き起こしている。
 自転車交通の機能を十分発揮させながらこのような問題の解決を図るためには、駅や量販店等の周辺に利用しやすくかつ十分な規模の自転車駐車場を整備する必要があり、自転車駐車場を都市計画に積極的に定め整備を進めることが望ましい。
 自転車駐車場の計画においては、周辺の市街地の状況、自転車の動線、改札口までの距離、公共交通利用促進等を勘案し、位置及び収容台数を定めることが望ましい。また駅周辺においては、高架橋の下や地下鉄駅上部の空間に計画する等、立体的かつ有効に空間を利用するよう計画することが望ましい。
 
4.自転車駐車場に関する都市計画の取扱い
 
 自転車駐車場を都市計画に定める場合においては、法第11条第1項1号の「駐車場」として都市計画決定を行うことが望ましい。ただし、自転車駐車場で道路と一体としての機能を有すると認められるものについては、法第11条第1項1号の「道路」に含めて都市計画決定することも考えられる。
 
A−5.自動車ターミナル
 
1.自動車ターミナルの都市計画の考え方
 
 自動車ターミナルには、バスターミナルとトラックターミナルがあり、バスターミナルは、都市間の路線バス、都市内バス、観光バスの発着及び他の交通機関との乗り換えの場としての機能を、トラックターミナルは、トラックの発着を集約し、交通の円滑化と輸送効率を高める機能を有している。 
 バスターミナルの計画にあたっては、他の交通機関との連携を考慮し配置することとし、将来のバスの交通需要を踏まえ、その規模を定めることが望ましい。
 トラックターミナルの計画にあたっては、道路、鉄道等他の交通施設や流通業務市街地との整合性を考慮し配置することとし、将来の物流の見通しに基づきその規模を定めることが望ましい。
 
2.自動車ターミナルの都市計画の取扱い
 
[1] 都市計画に定める自動車ターミナル
 都市計画区域内において、一定規模以上の自動車ターミナル(おおむね500u以上をその目安とする)を建設しようとするときは、自動車交通の集中等、都市交通体系にとって特に重要な影響を及ぼす施設となるものと考えられることから、これを都市施設として積極的に都市計画に定めることが望ましい。
 
[2] 自動車ターミナルと道路との関係
 自動車ターミナルの都市計画決定にあたっては、周辺の都市計画道路について当該自動車ターミナルに発着する自動車交通に対応するよう検討し、必要に応じ道路計画や自動車ターミナルの構造の見直しを行う等、都市計画上相互に整合がとれた計画とすることが望ましい。
 
 A−6.その他交通施設
 
1.その他交通施設について
 
 都市計画に定める都市施設の種類については、法第11条及び令第5条において定められているが、その他交通施設として、空港、軌道(都市高速鉄道に該当するものを除き、路面電車は含まれる。)、通路(道路に該当するものを除く。)、交通広場(道路、広場に該当するものを除く。)が考えられるので、必要に応じ都市計画に定めることが望ましい。
 
2.通路
 
(1)通路の都市計画の考え方
 
 通路は、公共的な通行の用に供する施設であって道路とすることが適切ではないものについて都市計画に定めるものである。
 通路の計画にあたっては、他の道路における歩道等と連携し歩行者のネットワークを形成するよう配置することとし、歩行者の交通量や歩行者の溜まりの空間を考慮し、その規模を定めることが望ましい。また快適な通行の用に供し、良好な都市環境、都市景観の形成を図るため緑化や憩いの空間に配慮して計画を定めることが望ましい。
 特に、建築物との複合的な空間となる場合においては、立体都市計画制度を活用することが望ましい。
 
3.交通広場
 
(1)交通広場の都市計画の考え方
 
 交通広場については、道路の一部を構成する交通広場については法第11条第1項第1号における「道路」に含めて都市計画決定することとするが、歩行者空間を中心とするもの等それ以外の交通広場については、その他の交通施設の「交通広場」として都市計画を行うことが望ましい。
 交通広場の計画にあたっては、他の道路における歩道等と連携し歩行者のネットワークを形成するよう配置することとし、歩行者の交通量や歩行者の溜りの空間を考慮し、その規模を定めることが望ましい。また、快適な通行の用に供し、良好な都市環境の形成を図るための緑化や憩いの空間、良好な都市景観をそなえたシンボルとしての空間、さらに地域の活性化の核となるイベント等の空間にも配慮して計画を定めることが望ましい。
特に、建築物との複合的な空間となる場合においては、立体都市計画制度を活用することが望ましい。
 
 
B.公園、緑地等の公共空地
 
1.公共空地の都市計画の考え方
 
(1)公園
 
 公園とは、主として自然的環境の中で、休息、鑑賞、散歩、遊戯、運動等のレクリエーション及び大震火災等の災害時の避難等の用に供することを目的とする公共空地である。
 
[1] 種別及び名称
ア 種別
 公園に関する都市計画において定める種別は、規則第7条第5号に規定するとおり、街区公園、近隣公園、地区公園、総合公園、運動公園、広域公園及び特殊公園とされているが、その区別は次に示すとおりである。なお、都市の人口規模等の関係上、地区公園と総合公園又は運動公園の機能等を併せ有する公園を計画しようとする場合は、当該公園の主たる機能により区分することが望ましい。また、主として動植物の生息地又は生育地である樹林地等の保護を目的とする都市公園となるべきものについては、複合的な機能を併せ有する場合は当該公園の主たる機能により区分することが望ましい。この場合は、緑地として決定することも含めて検討することが望ましい。
 @ 街区公園
主として街区内に居住する者の利用に供することを目的とする公園
 A 近隣公園
主として近隣に居住する者の利用に供することを目的とする公園
 B 地区公園
主として徒歩圏域内に居住する者の利用に供することを目的とする公園
 C 総合公園
 主として一の市町村の区域内に居住する者の休息、観賞、散歩、遊戯、運動等総合的な利用に供することを目的とする公園
 D 運動公園
主として運動の用に供することを目的とする公園
 E 広域公園
 一の市町村の区域を超える広域の区域を対象とし、休息、観賞、散歩、遊戯、運動等総合的な利用に供することを目的とする公園
 F 特殊公園
 ア)主として風致の享受の用に供することを目的とする公園
 イ)動物公園、植物公園、歴史公園その他特殊な利用を目的とする公園
イ 名称
    公園に関する都市計画において定める名称は、番号及び公園名とし、番号の付し方は以下の凡例に示すところによることが望ましい。
凡例 番号の付し方
 ○ ・ ○ ・ ○○
 区分 規模 一連番号
 @ 区分
    区分として付する番号は、種別により次のとおりとする。
    区分2  街区公園
    区分3  近隣公園
    区分4  地区公園
    区分5  総合公園
    区分6  運動公園
    区分7  特殊公園 ア)に該当するもの
    区分8  特殊公園 イ)に該当するもの
    区分9  広域公園
 A 規模
    規模として付する番号は、面積により次のとおりとする。
     規模  面積の範囲
      2  面積1ha未満のもの
      3  面積1ha以上4ha未満のもの
      4  面積4ha以上10ha未満のもの
      5  面積10ha以上50ha未満のもの
      6  面積50ha以上300ha未満のもの
      7  面積300ha以上のもの
 B 一連番号
    当該都市計画区域ごとに、区分ごとの一連番号を付する。
 
[2] 規模
 公園の機能に応じた規模の適正化を図るため、次の@からEまでの公園の種別に応じてそれぞれ@からEまでに掲げる規模を基準として計画することが望ましい。
   @ 街区公園 0.25haを標準とする。
   A 近隣公園 2haを標準とする。
   B 地区公園 4haを標準とする。
   C 総合公園 おおむね10ha以上とする。
   D 運動公園 おおむね15ha以上とする。
   E 広域公園 おおむね50ha以上とする。
[3] 配置
 公園の配置は、環境保全、レクリエーション、防災、景観形成等の観点からする緑地(この場合はV−5章末に定義する「緑地」である。)の系統的な配置の一環として定めることが望ましい。計画にあたっては、自然地の分布、土地利用、交通系統等の現況及び計画を勘案して、以下に掲げる種別毎の方針を基準とすることが望ましい。
   @ 街区公園 誘致距離250mを標準とする。
   A 近隣公園 誘致距離500mを標準とする。
   B 地区公園 誘致距離1kmを標準とする。
   C 総合公園 原則として、一の市町村の区域を対象として、住民が容易に利用できる位置に配置する。
   D 運動公園 原則として、一の市町村の区域を対象として、住民が容易に利用できる位置に配置する。
   E 広域公園 一の市町村の区域を超える広域の圏域を対象として、交通の利便の良い土地に配置する。
   F 特殊公園 
    ア)風致公園 樹林地、湖沼海浜等の良好な自然的環境を形成する土地を選定して配置する。
    イ)動物公園、植物公園、歴史公園
           動物公園、植物公園にあっては、気象、地形、植生等の自然的条件が当該公園の立地に適した土地を選定して配置する。歴史公園にあっては、遺跡、庭園、建築物等の文化的遺産の存する土地若しくはその復元、展示等に適した土地又は歴史的意義を有する土地を選択して配置する。
 
(2)緑地
 
 緑地とは、主として自然的環境を有し、環境の保全、公害の緩和、災害の防止、景観の向上、及び緑道の用に供することを目的とする公共空地である。
 
[1] 規模
 緑地の規模は、次の事項を考慮して計画することが望ましい。
ア 主として都市景観の向上に資する緑地は、位置、目的、内容及び周辺の土地利用等の現況及び計画を総合的に勘案して適切な規模を定める。
イ 現に存する樹林地等の保全を目的とする緑地は、その規模、特性等を総合的に勘案して適切な規模を定める。
ウ 主として緩衝の用に供する緑地は、公害の緩和、災害の防止等の目的に応じ周辺の土地利用、交通状況、都市施設の配置等を総合的に勘案して必要な規模を定める。
エ 主として遮断の用に供する緑地は、隣接する市街地の規模、性格及び市街地化の動向等を総合的に勘案して適切な規模を定める。
オ 河川の区域を対象とする緑地は、河川の位置、規模、形状、隣接する土地の状況及びレクリエーション需要等を総合的に勘案して適切な規模を定める。
カ 緑道については、快適安全な通行、散策、休養等に資する園路及び十分な植栽による修景、パーゴラ等の施設が確保できる幅員及び延長を定める。
 
[2] 配置
 緑地の配置は、次の事項を考慮して計画することが望ましい。
ア 主として都市景観の向上に資する緑地は、市街地内の道路、鉄軌道の沿線、公共公益施設、歴史的建造物等の周辺並びに景観構成上必要とされる丘陵地、傾斜地等顕著な土地を選定して配置する。
イ 現に存する樹林地等の保全を目的とする緑地は、良好な自然的環境を形成する樹林地、水域及び水辺地、草地、湿原、岩石地、貴重な動植物の自生地、生息地、飛来地、分布地及び文化的遺産の分布地等の土地に配置する。
ウ 主として緩衝の用に供する緑地は、工業地、幹線道路、鉄軌道、空港、供給処理施設等と住宅地、商業地等が隣接する地域において、公害の緩和、災害の防止等の目的に応じた緩衝地帯として有効に機能しうるよう配置する。
エ 主として遮断の用に供する緑地は、市街地の周辺及び市街地間において市街地の拡大若しくは連担の防止に資するよう、遮断地帯として配置する。
オ 河川の区域を対象とする緑地は、都市における緑地(この場合はV−5章末に定義する「緑地」である。)の系統的な配置の一環となる河川、又は良好な自然的環境を有する河川、及びレクリエーション利用が可能な河川等を選定して配置する。この場合、堤外地と一体となって緑地としての機能を果たすことが有効な堤内地については、区域に含める。
カ 緑道については公園、広場、駅及び学校、商業地及び避難地等を相互に連絡し、又は河川、水路及び道路等に沿った快適安全な通行・散策路等として、併せて災害時における避難誘導路として有効に機能しうるよう配置する。
 
(3)広場
 
 広場とは、主として歩行者等の休息、鑑賞、交流等の用に供することを目的とする公共空地である。
 
[1] 規模
 広場は、広場を設置する目的、利用者の行動、周辺の土地利用等を勘案し、適切な規模とすることが望ましい。
[2] 配置
 広場は、次の項目の一に該当するような場所に配置することが望ましい。
ア 周辺の建築物の用途が、おおむね商業施設、業務施設、文教厚生施設、官公庁施設である地区
イ 観光資源等が存在し、多数人が集中する地区
ウ 交通の結節点あるいは多数人が利用する都市施設の近傍又は歩行者の多い道路の沿道
エ 都市の象徴又は記念の目的に供する場所あるいは都市景観の向上に著しい効果が認められる場所
 
(4)墓園
 
 墓園とは、自然的環境を有する静寂な土地に設置する、主として墓地の設置の用に供することを目的とする公共空地である。
[1] 規模
 墓園の規模は、墓園が緑地(この場合はV−5章末に定義する「緑地」である。)の系統的な配置の一環として計画されることに鑑み、十分な樹林地等の面積が確保される相当の面積を定めることが望ましい。
 
[2] 配置
 墓園の配置は、次の事項を考慮して計画することが望ましい。
ア 市街地に近接せず、かつ、将来の発展を予想し市街化の見込みのない位置であって、交通の利便の良い土地に配置する。
イ 主要な道路、鉄道及び軌道が区域内を通過又は接しない。ただし、やむを得ず通過又は接する場合は樹林による遮蔽等により墓園との空間を分断させる。
ウ 都市計画区域内に適地のない場合は区域外に選定する。この場合、必要に応じて、関係市町村との共同施設とする。
エ 環境保全系統の一環となるよう配置し、既存樹林等による風致は維持するとともに、必要に応じて防災系統の一環となるよう配置する。
 
(5)その他の事項
 
 法第11条第1項第2号の「その他の公共空地」の例は運動場である。
 
2.公共空地の都市計画の変更
 
 公共空地の都市計画は、経済社会情勢の変化に応じた都市の将来像の見直しに対応して都市計画区域全体の緑地(この場合はV−5章末に定義する「緑地」である。)の配置計画を見直した結果として、都市計画を変更した方が公園等の公共空地の適正な配置のためにより有効となる場合、あるいは適正かつ合理的な土地利用を確保する目的で関連する都市計画との整合を図る必要がある場合に、都市に必要な公園等の公共空地の機能を確保しつつ、変更することが望ましい。このことは、単にその整備が長期にわたり着手されないことのみの理由で都市計画を変更することには相当しない。
 なお、我が国の公園等の公共空地の整備水準が欧米諸国に比較しても低位であり依然として不足している状況にあるとともに、公園等の機能を有しない施設等により侵食されやすい性格を有する。このため、公園等の公共空地は長期的な視点で必要な水準を確保するべく都市計画決定されている趣旨から高い継続性、安定性が要請されていることに鑑み、区域の一部の変更であってもその見直しの必要性は慎重に検討することが望ましい。
 
3.区域区分その他の関連する制度との関係
 
(1)区域区分との関係
 
 法第13条第1項第11号において、市街化区域においては少なくとも道路、公園及び下水道を定めることとされているが、公園については街区公園、近隣公園、地区公園、総合公園及び運動公園を定めることが望ましい。
 市街化調整区域においては、一の市町村の区域の住民を対象とし多様なレクリエーションニーズに対応するための総合公園等を、市街化区域の整備、開発及び保全の状況を勘案し、市街化調整区域に配置する方が必要な区域の確保に有効な場合、又は公園等として活用する自然的環境が市街化調整区域に存在する等の場合は、市街化区域と連絡する道路等との連携を図りつつ決定し整備することが望ましい。
 なお、広域公園は一の市町村を超える広域的な観点から区域区分の別にかかわらず必要な位置に計画するものである。
 
(2)関連する制度との関係
 
[1] 河川等との関係
 都市における主要な河川、海岸及び湖岸は、水と緑が一体となった都市における自然的環境の軸となるとともに、河川の持つ連続性、遮断性は公園や不燃化建築物と組合せることにより広域的な防災帯ともなるものである。このため、河川、河畔、海岸、湖岸等を必要に応じ公園又は緑地として決定することが望ましい。この場合、公園等の事業と河川又は防水、防砂、防潮の施設の事業が一体に実施される場合には、その都市計画決定は同時に行うことが望ましい。
[2] 道路との関係
 公園等は利用者の利便性を確保するため適切な幅員を有する道路と接続することが望ましい。
 また、防災系統の一環なる公園等は、災害時に救援・復旧活動等の拠点としての役割を果たすためには、緊急動線や避難路と連絡されていなければならない。このため、幹線道路等に容易に接続する位置に配置することが望ましい。また、河川と同様に広幅員の道路も連続性、遮断性を有することに鑑み、必要に応じ公園、緑道及び不燃化建築物と組合せることにより広域的な防災帯とすることが望ましい。
 広場については、市街地における人々の休息、交流等の場として機能することに鑑み、主要な動線である歩行者の多い道路、通路等に接していることが望ましい。
 
[3] 供給処理施設との関係
 汚物処理場等については、周辺の環境改善のために、これらの施設の周囲や上部に一体となって緩衝効果を発揮する緑地を決定するほか、最終処分場については、良好な自然的環境の回復のために必要なものについては緑地等として決定し、処分が終了した後に整備することが望ましい。
 
[4] 風致地区との関係
 風致地区内では、公園等は風致の維持のために重要な役割を果たす都市施設であることに鑑み積極的に決定することが望ましい。この場合、特に風致地区の良好な自然的景観を享受することのできる眺望の場、良好な自然的環境を活かした散策、休息、自然とのふれあいの場等一定の利用が想定されるところは公園等として決定し、必要な整備を行うことが望ましい。
[5] 緑地保全地区との関係
 動植物の生息地又は生育地として保全するものについて、緑地保全地区を指定し適正な保全を図りつつ、併せて自然生態の観察等の利用に供するために必要な場合は、その区域を公園、緑地等の公共空地として一体的に決定し整備することが望ましい。
 
[6] 緑の基本計画との関係
 公園等は緑の基本計画の対象となる都市施設である。また、都市緑地保全法第2条の2第2項第3号ハの「緑化の推進を重点的に図るべき地区」においては緑化施策を重点的に推進するために公園等を即地的に定め、積極的に決定、整備することが望ましい。
 
[7] 事業予定地の指定を受けた公園、緑地又は墓園の課税評価
 地方税法附則第19条の2において市街化区域内の農地であって公園、緑地又は墓園に関する都市計画の決定及び法第55条第1項の指定を受けたものについては、なお従前のとおり農地としての評価で固定資産税及び都市計画税を課税することとしている。
 本措置は、市街化区域内における農業者対策の一環としての意味を有するものであるとともに、緑地としての機能を有する農地を公園、緑地又は墓園として整備するまでの間、計画的に保存することにより、都市内における緑地(この場合はV−5章末に定義する「緑地」である。)の確保に資することを目的としている。
 本措置の趣旨に基づき市街化区域内における農地について公園、緑地又は墓園に関する都市計画の決定及び法第55条第1項の指定を行うにあたっては、次の事項に留意することが望ましい。
ア 本措置の実施にあたって具体的な運用方針を定める場合には、都市計画担当部局と農林担当部局との間において十分調整を図る。
イ 本措置の趣旨に鑑み、市街地開発事業の実施が予定されている区域内においては本措置を講じない。
ウ 法第55条第1項の指定にあたっては、当該農地について公園、緑地又は墓園の事業の実施が見込まれるまでの相当期間は農地としての使用を継続する旨を農業を営む者について確認する等の措置を講ずる。
 
4.民間事業者に係る公園等の整備の方針
 
(1)特許事業の一般事項
 
 法第59条第4項の規定により、国の機関、都道府県及び市町村以外の者は、都道府県知事の認可を受けて都市計画事業を施行することができることとされているが、都道府県知事は、認可に際しては事業の公益性、申請者の資力信用等について慎重かつ公正に審査し、必要に応じ法第79条の規定により都市計画上必要な条件を附することにより、当該事業の円滑かつ適正な執行を確保することが望ましい。
 なお、条件として附する事項としては、例えば次に掲げるものが考えられる。
[1] 詳細設計の認可
[2] 事業執行に対する指導監督
[3] 竣工認可
[4] 事業完了後の施設の管理に関する指導監督
 
(2)公園等に係る都市計画事業の認可にあたっての基本事項
 
[1] 公園等の整備については、地方公共団体が第一義的な責任を有するものであることに鑑み、認可は当該都市計画区域マスタープラン等を勘案して、民間事業者において整備することが適当なもののみを対象とし、地方公共団体の整備すべき公園等との適正な役割分担を図ることが望ましい。
 
[2] 公園等は、都市環境の整備改善に資するとともに、都市住民のレクリエーション活動の場、災害時における避難地等として有効に機能させる必要があることに鑑み、民間事業者により設置される施設の種類、規模、配置等が当該公園等の全区域に係る計画に照らして適正に計画されたものであることが望ましい。
 
[3] 土地等の取得状況等からみて、事業の円滑かつ適正な実施が確実であることが望ましい。
 
(3)公園等の設置
 
民間事業者に係る公園等の設置については次によることが望ましい。
[1] 事業区域内において、公園等の種類及び種別に応じ、必要な緑化面積を確保する。緑化面積を定めるにあたっては、公園等の種類及び種別に応じ、緑の政策大綱(平成6年7月28日建設省決定)V2(1)?に定める都市公園の種別に応じた緑化面積を参考にする。
[2] 事業区域内に設置する施設は、当該公園等の機能、位置、規模、環境等を総合的に勘案して、当該公園等の機能を全うする上で必要な範囲内のものとする。
[3] 公園等のうち避難地としての機能が必要とされるものについては、非常時における避難、応急、復旧等の活動に資するよう有効な空地を確保する等の措置を講じる。
[4] 公園等に設置する建築物等の面積、位置は、当該公園等が公共空地としての諸機能を発揮するために支障を及ぼさないものとする。
 
(4)公園等の管理及び運営
 
 民間事業者の設置する公園等の管理及び運営については、次の点に留意することが望ましい。
[1] 公園等は不特定多数の者の利用に供されるものとする。
[2] 公園等の利用について料金を徴収する場合においては、その料金は一般の利用に供する観点から適正なものとする。
[3] 事業終了後における施設計画の変更、管理及び運営について適正を期するため、必要に応じて条件を附する。
   
C 供給処理施設
 
C−1.下水道
 
1.下水道の都市計画の考え方
 
(1)下水道の都市計画の基本的な考え方
 下水道については、生活環境の改善、水質の保全、浸水の防除等都市活動を支える上で必要不可欠な施設であり、積極的に都市計画に定めるべきである。この場合、市街化区域においては少なくともこれを定めるものとし、市街化調整区域においては下水道それ自体では市街化を促進するおそれが少ないものと考えられるので、現に集落があり生活環境を保全する必要がある場合等については最小限の排水区域を定めることができると考えられる。
 
(2)管渠、排水区域、処理場、ポンプ場の決定の考え方
 下水道に関する都市計画は、土地の自然的条件、土地利用の動向、河川等の水路の整備状況並びにそれらの将来の見通し等を総合的に勘案し、機能的な都市活動の確保及び良好な都市環境を形成及び保持するよう排水区域、処理場、ポンプ場及び主要な管渠を一体的かつ総合的に定める。
 
[1]管渠
 下水道の都市計画における管渠については、道路その他の公共施設の整備状況を勘案して、排水区域からの下水を確実かつ効率的に集め、排水するよう配置すること。
 
[2]排水区域
 下水道の都市計画における排水区域については、土地の自然的条件及び土地利用の動向を勘案し、下水を排除すべき地域として一体的な区域となるよう定めること。
[3]処理場
 下水道の都市計画における処理場については、排水区域から排除される下水量に対して必要な処理能力等を有し、放流先及び周辺の土地利用の状況を勘案し、周辺環境との調和が図られるよう定めること。また、施設の敷地は、増設等に必要な土地を含めて定めておくことが望ましい。
[4]ポンプ場
 下水道の都市計画におけるポンプ場については、下水の流下の確保が図られるよう、周辺環境に配慮して定めること。
 
2.下水道の都市計画の取扱い 
 
 下水道の管渠については、主要なものを定めることとし、以下の要件に該当するものを定めることが望ましい。
ア 一定の面積以上の排水区域を担う管渠(一定の面積については、地域の状況によるが、目安として1,000ha程度が考えられる。)
イ 処理水を放流するための主たる管渠
 
 下水道の排水区域は、公共下水道については、おおむねの区域として総括図に表示することとし、流域下水道については接続される公共下水道名を計画書に表示することとする。また、ポンプ場については、マンホール形式等簡易なものを除いたものを定めることとする。
 
C−2.汚物処理場、ごみ焼却場、その他の廃棄物処理施設
 
1.廃棄物処理施設の都市計画の考え方
 
 [1] 廃棄物処理施設については、都市計画決定することによりその手続の中で、他の都市計画との計画調整や関係者間の合意形成が図られ、より円滑に整備することが可能となる。
   したがって、当該都市計画区域において計画的に整備するものとして、廃棄物処理法第5条の3に規定する都道府県廃棄物処理計画(以下「廃棄物処理計画」という。)又は都市計画区域マスタープランに位置付けられた施設をはじめ、恒久的かつ広域的な処理を行うものについては、都市計画決定することが望ましい。また、最終処分場についても、その跡地利用を適切に勘案することにより将来の都市づくりを見通したものとなることから、恒久的な性格を有するものとして、都市計画決定の対象とすることが考えられる。
   廃棄物処理施設を都市計画決定するに当たっては、当初から都市計画決定の手続と廃棄物処理法の許可手続の連携を図る等都市計画担当部局は廃棄物処理担当部局と緊密に連携して廃棄物処理計画との整合を図りながら円滑かつ効率的な事務処理が行われるよう配意することが望ましい。
 
 [2] 特に、産業廃棄物処理施設は、近年その立地が問題となることが多く、その計画的立地の役割を都市計画に期待されている産業廃棄物処理施設のほとんどは、規模が大きく、他の市町村からの産業廃棄物も併せて処理している。また、平成12年の改正後の廃棄物処理法においては、産業廃棄物処理施設の適正な処理を確保するために都道府県の責務が明確化されているところであり、産業廃棄物処理施設に関する都市計画の決定に当たっても、その趣旨が十分反映されるべきである。
 
2.廃棄物処理施設の計画にあたっての留意事項
 
 廃棄物処理施設の設置に当たり、都市計画の観点として少なくとも以下の項目に留意することが望ましい。
 
(1)基本的考え方
 廃棄物処理施設には法第11条第1項第3号の汚物処理場、ごみ焼却場、その他の処理施設が該当するため、適当な種類を選択して決定することが望ましい。
 処理区域の広がり、人口の分布、設置する施設の特性、及び関連する施設との連携を総合的に勘案することが望ましい。
(2)配置
 各施設の配置は、市街地の広がり、廃棄物等の輸送の効率性等を勘案したうえで、なるべく集約して配置することが望ましい。
(3)区域
 施設の敷地は、搬出入や緑化等に必要な土地に加え、増築、改築、移設に必要な土地をあらかじめ確保しておくことが望ましい。
(4)位置
[1] 主な搬出入のための道路が整備されているか、整備されることが確実であることが望ましい。
[2] 市街化区域及び用途地域が指定されている区域においては、工業系の用途地域に設置することが望ましい。
[3] 災害の発生するおそれの高い区域に設置することは望ましくない。
[4] 敷地の周囲は、緑地の保全又は整備を行い、修景及び敷地外との遮断を図ることが望ましい。また、最終処分場は、必要に応じ緑地等を決定し、処分終了後に整備すること等により自然的環境の回復を図ることが望ましい。
[5] ごみ焼却場等については、必要に応じ地域における熱供給源として活用することが望ましい。この場合は、関連する地域冷暖房施設等についても一体的に定めることが望ましい。
 
C−3.その他の供給施設 
 
1.その他の供給施設について
 
 法第11条第3項のその他の供給施設としては、地域冷暖房施設や、下水処理水の保有熱、ごみ焼却場の廃熱等の未利用エネルギーを回収し、都市のエネルギーとして活用する施設が考えられるので、必要に応じ都市計画に定めることが望ましい。
 
2.地域冷暖房施設
 
 地域冷暖房施設の都市計画決定にあたっては、効率的な熱供給、良好な都市環境の形成等の観点から、土地利用及び熱需要の見込み、気象特性、未利用エネルギーの活用の可能性等を勘案して供給区域を設定したうえで、供給区域内の土地利用、道路等の他の都市施設、熱配送の効率性等を配慮して管路、熱発生施設等の配置、規模等を定めることが望ましい。
 特に、市街地開発事業を行う場合には、必要に応じ当該区域への効率的な熱供給をするための地域冷暖房施設の必要性等について検討を行うことが望ましい。
 なお、ごみ焼却場等熱供給源として活用する施設がある場合には、これらの関連する施設についても一体的に定めることが望ましい。
 
 
D.河川及び防水、防砂、防潮の施設
 
1.河川の都市計画の考え方
 
(1)河川の機能
 河川は、治水上の機能に加え、特に都市部においては以下のような機能を有しており、健全で潤いのある都市の育成を推進する上で重要な役割を果たすものである。
[1]様々な動植物が生息する水と緑の空間として、都市住民に潤いと安らぎをもたらすオープンスペース機能
[2]沿川地域と一体となってうるおいのある美しい都市景観を形成する機能
[3]人の集まる魅力ある水辺空間やイベント等の開催場所として、地域活性化の場を提供する機能
[3]震災時における避難地、避難路、舟運による緊急輸送路、延焼遮断帯、消火用水の供給源等の防災機能
 
(2)河川の都市計画の基本的考え方
 河川はその整備により市街地の安全性を向上させるほか、上記のように多様な機能を有する施設であり、周辺の土地利用や都市施設と機能上密接に関連するため、積極的に都市計画に定めるものとし、特に市街化区域内においては道路、公園、下水道と同様都市計画決定すべきである。
 また、河川の都市計画決定にあたっては、周辺の土地利用の現況及び将来の見通しを勘案し、道路、公園等の他の都市施設と調和がとれ都市環境の向上に寄与するよう定めることが望ましい。
 
(3)河川と他の都市計画との連携
 河川の諸機能を活用した健全で潤いのある都市環境の形成を図るため、河川を都市計画決定する際には、河川へアクセスするための道路・通路の必要性、公園・緑地や商業・業務機能との連携、良好な景観形成のための沿川建築物の用途や高さに関する規制・誘導等、河川と一体となった地域整備のあり方について検討を行い、必要に応じて関連する道路、公園等の都市施設や市街地開発事業、地域地区等土地利用に関する都市計画をあわせて決定することが望ましい。
 
2.河川等の都市計画の取扱いについて
 
(1)構造
 河川及び運河に関する都市計画において定める構造は、堤防式又は堀込式の別及び単断面式又は複断面式の別とされているが、掘込式の区間とは、計画高水位が河川の隣接地(堤内地)の表面よりもおおむね下にある区間とし、複断面式の区間とは、流水路が低水路と高水敷に分かれている区間とする。
 
(2)都市計画の定め方
 河川の都市計画にあたっては、以下のように取り扱うことが望ましい。
 [1] 基本方針
1) 都市計画区域界に起終点をとり、原則として都市計画区域ごとに都市計画決定する。都市計画区域界が河川の区域のなかに縦断的に決められている場合は、原則として河川を縦断的に分割して、都市計画決定することはせず、いずれかの都市計画区域における都市計画施設として都市計画決定する。
2) 同一都市計画区域内の本川、支川は個々の河川として都市計画決定する。支川を都市計画決定する場合には、原則として本川についても同時に決定する。ただし、河川改修の状況に対応して支川のみを先行的に都市計画決定することも考えられる。
3) 河川の都市計画にあたっては都市計画区域及び区域区分、都市施設等の他の都市計画との関連性について十分に配慮する。特に、市街地開発事業や道路、公園等の都市施設の事業と河川の事業が一体に実施される場合には、その都市計画決定は、原則として同時に行うものとする。
4) 河川の改修計画が決まっていない場合は、市街化区域内であっても都市計画決定する必要はない。計画が決まり次第速やかに都市計画決定するものとする。
 [2] 遊水池及びダムの取扱い
 遊水池については河川として都市計画決定する。また、ダムについては貯水池を含めて河川として都市計画決定する。
(3)高規格堤防の取扱い
  高規格堤防の整備は、特に都市部においては、沿川の市街地に大きな影響を与える事業であり、市街地整備との一体的な推進による良好な市街地形成を図る必要がある。このため、河川管理者と共同で高規格堤防等の整備と沿川における市街地整備の一体的な推進についての基本構想を策定し、これに基づき良好な市街地形成のための計画を検討することが望ましい。また、検討された内容のうち必要な事項を市町村マスタープランに位置づけるとともに、必要に応じ市街地開発事業、地区計画等を都市計画に定めることが望ましい。
高規格堤防については、河川の低水路、河川敷等を含め、法第11条第1項第4号の河川として都市計画に定めることが望ましい。但し、高規格堤防の整備は段階的に行っていくこととなるため、当分の間、必ずしもこれにとらわれず、市街地開発事業と一体的に都市計画決定を行う場合において、高規格堤防のうち通常の利用に供する土地の区域を含んで河川として都市計画決定するなど、弾力的な取扱いを行うことが望ましい。
  高規格堤防のうち通常の利用に供することができる土地の区域を含んで河川として都市計画決定する場合には、高規格堤防のうち通常の利用に供することができる土地の区域を表示する図面を、法第17条第1項(法第21条第2項において準用する場合を含む。)の規定に基づき都市計画の案を公衆の縦覧に供する場合又は法第20条第2項(法第21条第2項において準用する場合を含む。)の規定に基づき法第14条第1項に規定する図書又はその写しを公衆の縦覧に供する場合において添付することが望ましい。
  
3.防水、防砂、防潮の施設の取扱い
 
 防水、防砂、防潮の施設(以下「防災施設」という。)の都市計画にあたっては、以下のように取り扱うことが望ましい。
(1)共通事項
[1] 防災施設が、複数の都市計画区域にまたがる場合のうち、都市計画上、一体として扱う必要がある場合には、いずれかの都市計画区域における都市施設として都市計画決定できるものとする。
[2] 防災施設の都市計画にあたっては、都市計画区域及び区域区分、都市施設等の他の都市計画との関連性について十分に配慮する。特に、市街地開発事業や道路、公園等の都市施設の事業と防災施設の事業が一体に実施させる場合には、その都市計画決定は、原則として同時に行うものとする。
(2)調節池の取扱い
 調節池については、法第11条第1項第11号の政令で定める施設の「防水の施設」として都市計画決定する。なお、調節池から流出する河川について、改修計画がある場合にはその部分を河川として都市計画決定する。
(3)砂防設備の取扱い
 砂防設備については、法第11条第1項第11号の政令で定める施設の「防砂の施設」として都市計画決定する。
(4)地すべり防止施設及び急傾斜地崩壊防止施設の取扱い
 地すべり防止施設及び急傾斜地崩壊防止施設については、法第11条第1項第11号の政令で定める施設の「防砂の施設」として都市計画決定する。
(5)海岸保全施設の取扱い
 海岸保全施設のうち、防潮の機能を有するものについては、法第11条第1項第11号の政令で定める施設の「防潮の施設」として都市計画決定する。
 
 
E.教育文化施設、社会福祉施設
 
1.教育文化施設、社会福祉施設の都市計画の考え方
 都市の将来像を実現するうえで、教育文化、社会福祉の各サービスの拠点となる教育文化施設、社会福祉施設の整備は極めて重要である。住居系の地域においては義務教育施設を定めることとされているが、これ以外の教育文化施設、社会福祉施設についても、道路等他の都市施設、土地利用等との計画調整や地域社会の合意形成等の観点から必要に応じ都市計画に定めることが望ましい。
 
 
F.一団地の住宅施設
 
1.一団地の住宅施設の都市計画の考え方
 
(1)一団地の住宅施設の計画の基本的な考え方
 一団地の住宅施設は、都市の総合的な土地利用計画に基づき、良好な居住環境を有する住宅及びその居住者の生活の利便の増進のため必要な施設を一団の土地に集団的に建設することにより、都市における適切な居住機能の確保及び都市機能の増進を図ることを目的とするものである。
 一団地の住宅施設の計画にあたっては、都市計画区域マスタープランに定める土地利用の方針等の土地利用計画及び周辺の市街地の状況等を勘案し、良好な住宅市街地が形成されるよう、適切な区域及び規模の計画とすることが望ましい。
 なお、一体的に確保する必要のある公共施設、公益的施設の用に供する土地の区域を団地に含めることも考えられる。
(2)一団地の住宅施設の見直しについて
 既に一団地の住宅施設の都市計画が指定されている区域において、建築物の老朽化等により建替えの必要が生じているなど、特に社会・経済状況の変化により現状の規制内容が必ずしも実態に合わなくなった場合にあっては、当該地区の土地利用計画上の位置づけ及び周辺の市街地の状況等を勘案し、住民等利害関係者の意向にも配慮しながら、地区計画の活用等により引き続き良好な居住環境を確保したうえで、一団地の住宅施設に関する都市計画を廃止することが望ましい。
 
2.一団地の住宅施設の都市計画の取扱い
 
 一団地の住宅施設の都市計画については以下により取り扱うことが望ましい。
 
(1)住宅
 住宅は、当該地区の土地利用計画上の位置づけ及び周辺の市街地の状況等を勘案しつつ、適切な戸数及び住宅形式とすることが望ましい。
 また、隣接する市街地との調和に配慮しつつ、単調な配列を避け、地形に順応し、かつ、道路、公園、広場等の配置とも総合的に勘案するとともに、日照、採光、通風、プライバシー及び視界等の確保並びに美観等に配慮し、良好な居住環境が確保されるように配置することが望ましい。
 
(2)建築制限
 容積率及び建ぺい率の制限については、用途地域その他の地域地区又は地区計画等並びに隣接する市街地の状況等を勘案して適切に定めることが望ましい。
(3)公共施設及び公益的施設
 [1]道路及び通路
 団地内の道路については、団地の規模及び形状、住宅等の配置並びに周辺の状況等を勘案して、日常生活の利便、通行の安全、災害の防止、環境の保全に支障が生じないような規模及び構造で適正に配置することが望ましい。
 道路の都市計画が定められている場合には、これらと整合を図り、一体として歩行者及び車両それぞれの安全かつ円滑な道路交通が形成されるよう計画することが望ましく、住区内の道路は、できる限り通過交通の用に供され難いように計画することが望ましい。
 敷地内の通路については、住宅の居住性を損なわずに、各棟から道路に適切に連絡するように配置することが望ましい。
 [2]公園、緑地等
 団地内の公園、緑地及び広場については、休息、観賞、散歩、遊戯、運動等の利用目的が十分に確保されるように計画することが望ましい。
 公園、緑地及び広場の都市計画が定められている場合には、これと整合を図り、適切な役割分担を図りつつ、地区内の公共空地の系統的な配置に資するように計画することが望ましい。
 緑地は、水辺地、河川沿い、幹線道路沿い、鉄道沿線等に計画するとともに、なるべく公園、緑地を系統的に連絡する遊歩道を計画することが望ましい。
 [3]上下水道
 上水道は、計画人口、市街地の規模等から想定される需要量を十分に供給できるものとすることが望ましい。
 下水道は、計画人口、市街地の規模等から想定される汚水量及び地形、降水量等から想定される雨水流出量を支障なく処理できるものとすることが望ましい。
 [4]公益的施設
 教育文化施設、社会福祉施設、集会所その他の公益的施設は、住区構成を基本として、それぞれの機能に応じ、居住者の有効な利用が確保されるように配置することが望ましい。
 [5]駐車施設
 団地には、共同住宅の居住者の保有する自動車の保管等のために必要な駐車施設を設けることが望ましく、居住者の自動車の保有状況及び住宅の建築形態等を考慮して適正な規模及び配置とすることが望ましい。
 [6]その他の付帯施設
 自転車置き場、ごみ置き場等は、必要に応じ、居住者の利便、衛生及び良好な居住環境の確保に支障が生じないように設置することが望ましい。
 
3.配慮すべき事項
 
(1)関係行政機関との調整
 一団地の住宅施設の都市計画を定めるにあたっては、必要に応じて、都市施設整備担当部局及び市街地開発事業担当部局と調整を図ることが望ましい。
 
※ なお、一団地の住宅施設及びこれに関連する制度の運用に関して既存の通達で技術的助言とされているもののうち都市計画の運用に関する部分については、本指針に示されている内容に置き換えた上で参考とすべきである。
 
 
G.一団地の官公庁施設
 
1.一団地の官公庁施設の都市計画の考え方
 
 一団地の官公庁施設は、国家機関又は地方公共団体の建築物(以下「官公庁建築物」という。)をそれぞれの機能に応じて都市の一定地区に集中配置するよう計画的に建築し、かつ、これらに付帯する諸施設の建設を行い、公衆の利便と公務の能率増進を図り、あわせて土地の高度利用を図ること目的とするものである。
 
2.一団地の官公庁施設の都市計画の取扱い
 
 一団地の官公庁施設の都市計画については以下により取り扱うことが望ましい。
(1)位置
 団地の位置は、市民の利便性、公務執行にふさわしい環境の確保、既存の官公庁建築物との調整、街路、公園等の都市計画施設との調整に配慮し、できるだけ国有地又は公有地を選ぶことが望ましい。
(2)官公庁建築物
 官公庁建築物については、既存の官公庁建築物を機能別に検討し、一団地に集中すべき官公庁建築物を選ぶことが望ましい。
 建築物の規模は、施設の機能、執務人員数等を勘案して、適切な規模とすることが望ましい。
 また、地域の実情に応じ敷地面積を必要最小限とし、高密度な利用を図ることが望ましい。
(3)付帯施設
 必要に応じて、適切な規模の通路、広場、駐車場等の付帯施設を設けることが望ましい。
 
H. 流通業務団地
 
1.流通業務団地の都市計画の考え方
 
 流通業務市街地は、「流通業務施設の整備に関する基本方針」(流通業務市街地の整備に関する法律第3条の2)に基づき定められる地域地区である「流通業務地区」及び都市施設である「流通業務団地」により構成される。
 流通業務地区は、当該都市における流通機能の向上及び道路交通の円滑化を図るため、流通業務市街地として整備すべき地域について、都市計画に定めるものであり、地区内では、流通業務に関連する施設以外の設置が規制される。
 この流通業務地区内で、その中核として特に一体的・計画的に整備すべき区域として、流通業務団地に係る都市計画が定められる。
 なお、既に流通業務団地の都市計画が指定されている区域において、近年の物流に係る業態の多様化、展示場等流通業務を支援する施設のニーズの発生等の状況の変化に対応しつつ、物流効率化に向けて、流通業務市街地の整備及び円滑な機能更新を計画的に促進するため必要がある場合については、流通業務団地に関する都市計画の変更を機動的に行うことが望ましい。
 
2.流通業務団地の都市計画の取扱い
 
 流通業務団地の都市計画については以下により取り扱うべきである。
(1)位置
 流通業務団地を定めうる区域としては、流通業務地区内であることに加えて、2つの要件を満たすことが必要である(流通業務市街地の整備に関する法律第7条第1項)。
[1] 流通業務団地は、流通業務地区の中核として機能を果たすべく決定されるのものであるため、流通業務地区外の幹線道路、鉄道等の交通施設の利用が容易であることや、良好な流通業務団地として一体的に整備される自然的条件を備えていること、当該区域内の土地の大部分が建築物の敷地として利用されていないことを条件としている。
[2] 流通業務団地が流通業務地区の中核としての機能を果たすため、トラックターミナル、鉄道の貨物駅又は卸売市場といった大量の物資の集配・保管のための中核的な施設を中心として、その他の関連施設が一体として立地することが必要であり、これらの施設の敷地が、これらの施設における貨物の集散量及びこれらの施設の配置に応じた適正な規模のものであることを条件としている。ここで、その他の関連施設とは、トラックターミナル、鉄道の貨物駅又は卸売市場と密接な関連を有している物資の保管、荷さばき、集配等の用に供する倉庫、上屋、卸売業の店舗等が含まれる。
 
(2)構造等
 
 流通業務団地に関する都市計画は、下記に従って定める必要がある(流通業務市街地の整備に関する法律第8条)。
[1]道路、自動車駐車場その他の施設に関する都市計画が定められている場合には、 これら既存の都市計画の内容に適合すべきこと。
[2]流通業務施設の敷地、公共施設については、流通業務地区の中核として一体的に構成されることを目的として、流通業務施設が適正に配置され、かつ、各流通業務施設を連絡する適正な配置及び規模の道路その他主要な公共施設を備えるよう、流通業務団地の都市計画を定めるべきこと。
 
 
W−2−3 市街地開発事業
 
1.市街地開発事業の都市計画の考え方
 
(1)市街地開発事業の都市計画の基本的考え方
 市街地開発事業については、公共施設の整備状況や土地利用状況を踏まえ、計画的かつ良好な市街地を一体的に整備する必要があるときには、用途地域等の土地利用や道路、公園等の都市施設に関する都市計画との総合性、一体性を確保しつつ、積極的に都市計画に定めることが望ましい。
 市街地開発事業の都市計画決定にあたっては、都市計画区域マスタープラン及び都市再開発方針等(法第7条の2第1項に規定する都市再開発方針等をいう。)に即する必要があること、加えて、市町村が定める市街地開発事業の都市計画については市町村マスタープランに即する必要があることに留意が必要である。
 また、市町村毎に市街地整備のプログラム(市街地整備基本計画)をあらかじめ定めておくことが望ましい。
 
(2)施行区域
 市街地開発事業の都市計画の決定に先立ち、予定地区周辺を含めた区域についての市街地整備の現況と課題、市街地整備の目標等を踏まえ、市街地開発事業の種類、施行区域の設定等について十分検討することが必要である。
 具体的な施行区域の設定にあたっては、法第13条第1項第12号において「一体的に開発し、又は整備する必要がある土地の区域について定める」とされていることを踏まえ定めることが基本となるが、特に既成市街地においては関係権利者や建築物が多いことから、事業の施行を考慮して適切な区域とすることが望ましい。また、段階的又は同時併行的に整備を想定している複数の地区を一体の区域として都市計画に定めることも考えられる。
 施行区域の地区界等については、新市街地においては地形・地物を地区界とするとともに、地区内の土地利用計画や道路計画等に配慮し適切な規模と形状により設定することが望ましい。一方、既成市街地においては、新市街地と同様の考え方をとることは事業の円滑な実施等の観点から現実には困難な場合も想定され、区域の形状、地区界の設定については整形かどうかに必ずしもこだわらず、筆界等をもって地区界とするなど弾力的な対応をとることも考えられる。
 
(3)公共施設の配置及び宅地の整備に関する事項等
 土地区画整理事業における公共施設の配置及び宅地の整備に関する事項、市街地再開発事業における公共施設の配置及び規模並びに建築物及び建築敷地の整備に関する計画等については、市街地を面的に整備するという市街地開発事業の特徴に鑑み、公共施設や宅地、建築物等それぞれの整備を個別に検討するのではなく、まちのデザイン等良好な都市空間・都市景観の創出を含め、目指すべき市街地像について総合的な検討を行った上で定めることが望ましい。
 
(4)環境への配慮
 市街地開発事業は良好な都市環境の創出を目的の一つとしており、その都市計画決定にあたっては、都市施設の場合と同様、当該事業の市街地環境改善への貢献にできるだけ配慮するとともに、当該事業によって環境に影響を与える可能性がある場合には周辺生活環境や自然的・歴史的環境等について十分に配慮し、環境面以外の要因もあわせて考慮することにより、的確で合理的な判断のもとで計画することが望ましい。
 
(5)市街地開発事業の都市計画の効果と理由の明確化
 市街地開発事業の都市計画は、事業を行うことを前提として定めるものであり、将来の市街地開発事業の円滑な施行を確保するため建築制限等を行うとともに、事業化にあたっては施行者に必要な権限が付与されることとなる。このため、都市計画決定の際の理由書においてはこの点にも留意し、その必要性及び施行区域等の妥当性について、わかりやすい記述を行うべきである。
 
2.他の都市計画との関係等
 
(1)用途地域等との整合性の確保
 市街地開発事業は公共施設と宅地、建築物等を面的に整備するものであり、目指すべき土地利用を計画的に実現することが可能な事業である。したがって、市街地開発事業の計画決定にあたっては、目指すべき市街地像について十分検討を行い、必要がある場合には、市街地開発事業の計画決定とあわせて、用途地域等の土地利用に関する計画も適切に決定又は変更することが望ましい。ただし、土地利用に関する計画が、公共施設の配置等事業計画の内容に左右される場合等には、例えば土地区画整理事業の事業計画の決定段階又は仮換地の指定段階等、事業の展開にあわせ用途地域の変更を行うことも考えられる。
 また、新市街地等において市街地開発事業を都市計画に定めるに当たり、将来の土地利用計画及び公共施設の計画が明らかでない場合にあっては、市街地開発事業の事業計画等の具体化に備え、当面第一種低層住居専用地域等を定めておくことも考えられる。
 
(2)拠点開発等における施行区域外の都市施設の適切な見直し
 都市構造に大きな影響を与える拠点開発や、跡地等を活用した大規模土地利用転換を伴う場合等、施行区域における都市活動が大幅に増大する市街地開発事業の都市計画にあたっては、施行区域外も含めて、既に都市計画に定められている都市施設によって当該地区の発生集中交通量や下水等が適切に処理できるものとなっているかについて、都道府県等の道路担当部局(当該道路が指定区間の国道である場合には、当該道路を管理する地方整備局)等関係機関と所要の調整を図りつつ十分検討を行う必要がある。そのうえで、当該地区と区域外の道路とを接続する幹線街路や公園等必要な根幹的都市施設を、市街地開発事業の都市計画と併せて一体的に変更し、又は決定することが望ましい。
 
(3)連続立体交差事業と一体的な市街地開発事業の推進
 連続立体交差事業に係る都市高速鉄道の都市計画決定に際しては、鉄道の立体化と併せて駅前広場や関連する街路網を含めた周辺の市街地整備を一体的に進めることが都市整備上極めて有効であるので、関連する土地区画整理事業、市街地再開発事業等の都市計画を都市高速鉄道等の都市計画決定と同時に決定することが望ましい。
 
(4)地域に身近な施設の取扱い
 市街地開発事業を都市計画に定める場合には、事業地区周辺を含め、都市幹線街路等の根幹的施設を施行区域と一体的に定める必要がある。補助幹線街路等の地域に身近な施設についても、地域の状況を踏まえつつ、必要なものを同時に定めることが望ましいが、都市幹線街路等の根幹的施設とは別に事業の展開にあわせて検討されることが合理的である場合も考えられる。例えば、市街地開発事業の進め方として、大街区の整備と大街区内の整備を段階的に行う場合等においては、身近な施設等の計画も段階的に行うことが考えられる。
 
(5)地区計画等の活用
 市街地開発事業の事業展開に応じて、適切な宅地の利用により目指すべき市街地の形成や良好な都市環境の保全が図られるよう、関係権利者間の合意形成を図りつつ、適切な時期に地区計画等を併せて都市計画に定めることが望ましい。
 
(6)事業完了後の市街地開発事業の都市計画の扱い及び法第53条の制限の取扱い
 事業完了後の市街地開発事業の都市計画については、実際の運用では廃止を行わない場合が多い。
 事業完了後に都市計画が廃止されない場合の法第53条の規定による建築の許可については、市街地開発事業に関する都市計画は事業の施行を目的とするものであり事業の完成によってその目的を達成するものであることから、事業完成後においてまで建築行為の制限を行うことを要しないものであり、事業完了後においては法第53条の制限は及ばないと解される。
 
(7)環境影響評価
 土地区画整理事業、新住宅市街地開発事業、工業団地造成事業及び新都市基盤整備事業については、大規模な事業を都市計画に定める場合には、環境影響評価法において、都市計画決定権者が都市計画の手続きの中で環境影響評価を実施することが定められており、その結果を都市計画に適切に反映させることが必要である。
 この際、都市計画の手続きと環境影響評価の手続きが同時併行して行われることとなるので、例えば以下のような点について調整を十分行うことが望ましい。
 [1] 方法書手続きの段階における都市計画の内容の情報提供
 [2] 準備書の説明会における都市計画の案の説明
 [3] 評価書の都道府県都市計画審議会への付議において、環境影響評価についての専門委員・臨時委員の参加、小委員会の設置等による公正・中立な判断の確保
 [4] 市町村意見の聴取期間の一致
 
(8)被災復興時における対応
 土地区画整理事業、市街地再開発事業は、地震・火災等による大規模な都市災害からの復興を図る上で有効な手段であるが、被災時という特殊事情を踏まえ、被災者の生活再建に十分配慮しつつ、平常時とは異なる機動的な対応が求められる。
 被災後速やかに行うべきこととして、防災性の向上に配慮した被災地域全体に係る復興に向けた都市整備の方針を早急に示し、この方針に基づき計画的な再建に着手することが重要である。また、被害が面的に大きな地区については、復興の妨げとなる無秩序な建築を制限することが重要であり、その方策としては建築基準法第84条に基づく建築規制や被災市街地復興推進地域(被災市街地復興特別措置法(平成7年法律第14号)第5条)の都市計画の活用が有効である。
 土地区画整理事業等の都市計画については、早期に都市計画決定する必要がある一方で住民の一部が現地から避難している状況も想定されるため、都市計画決定にあたって柔軟な対応をとることが望ましく、例えば第一段階では市街地開発事業の区域と骨格的な都市施設等の大枠の都市計画を定め、その後住民等とまちづくり案を作成して第二段階として身近な補助幹線街路や街区公園等の都市計画を定める方法等が考えられる。
 
3.市街地開発事業の都市計画の見直し
 
 都市計画決定されてから長期にわたり事業が行われていない市街地開発事業の計画見直しの問題については、都市施設の場合と同様に、当該地区における市街化の動向等からみて一体的に整備すべきとまで判断されない区域が含まれる場合には当該区域を除外する等の見直しもあり得るものであるが、これまでの運用において、市街地開発事業の都市計画の見直しについてあまりにも慎重すぎたきらいもある。
 この場合、単に長期にわたって事業に着手していないという理由のみで市街地開発事業の都市計画を廃止することは適切ではなく、次の観点からの検討が必要と考えられる。
[1] 当該地区が重要な都市機能を担うなど都市全体の中で重要な役割を果たす必要がある場合、あるいは当該地区が広域根幹施設や交通結節点等の重要な都市施設の計画を含んでいる場合であって、市街地開発事業による一体的な市街地整備が都市計画上重要であると判断される場合には市街地開発事業の廃止を行うことは適切でなく、地方公共団体が主体的にその地区の事業化に向けた検討を行うべきである。
[2] [1]に該当しない、地区の整備が主としてその地区の住民の生活環境の改善を目的とするものについては、
 1) 公共施設が未整備である地区については、当該市街地開発事業の必要性について、公共施設の整備や都市機能の更新の必要性の度合いに加え、地区の関係権利者の意向も考慮して、当該地区の一体的な整備の必要性について十分な検討を行った上で判断することが必要である。この結果、廃止、縮小を行う場合にあっては、地区外の道路に接続して地区内及びその周辺地域の生活の軸となる区画道路を整備することなど、当該地区の生活環境をどのように改善するかについて地区住民とともに検討し、合意形成を図った上で都市計画を変更することが望ましい。
 2) 市街地開発事業の都市計画決定が行われてからの時間経過の中で、開発行為等により基盤整備がなされ、市街地開発事業による基盤整備の目的がおおむね達成されていると認められる地区については、廃止、縮小もあり得ると考えられる。
 
X.都市計画決定手続等
 
1.都市計画決定手続に係る基本的考え方
 
 近年、行政一般に対して、行政手続の透明化や情報公開、説明責任の遂行が求められており、都市計画のように国民の権利義務に直接影響を与えることとなる行政手続については、特にその要請が高まっている。
 また、環境問題や少子・高齢化問題に対する関心が高まる中で、住民自らが暮らす街のあり方についてもこれまで以上に関心が高まっており、都市計画に対して住民自らが主体的に参画しようとする動きが広がっているところである。
 このため、今後の都市計画決定手続においては、以上のような状況を十分踏まえ、都市計画に対する住民の合意形成を円滑化し、都市計画の確実な実現を図る観点から、これまで以上に都市計画決定手続における住民参加の機会の拡大、都市計画に係る情報公開及び理由の開示等に意を用いていくべきである
 
2.個別の都市計画決定手続等について
 
(公聴会・説明会の開催等)
 
  法第16条第1項では、都市計画の案を作成しようとする場合において、必要があると認めるときは、公聴会・説明会の開催等住民の意見を反映させるために必要な措置を講じることとされている。これは、都市計画の案が作成された後の手続としての法第17条の縦覧及び意見書の提出とは別に、都市計画の案の作成の段階でも住民の意見をできるだけ反映させようという趣旨である。特に、法第16条第1項において公聴会の開催を例示しているのは、住民の意見を反映させるための措置として、住民の公開の場での意見陳述の機会を確保するべきという趣旨であることに留意する必要がある。
  この点、説明会は、都道府県又は市町村が作成した都市計画の原案について住民に説明する場と考えられ、公聴会は、都道府県又は市町村が作成した都市計画の原案について住民が公開の下で意見陳述を行う場と考えられる。
   都市計画への住民参加の要請がますます強まる中で、都市計画決定手続における住民参加の機会を更に拡大していく観点から、今後は、都市計画の名称の変更その他特に必要がないと認められる場合を除き、公聴会を開催するべきである。ただし、説明会の開催日時及び開催場所が事前に十分周知され、かつ、都市計画の原案の内容と内容についての具体的な説明が事前に広報等により行われ、住民がこれを十分に把握し得る場合であって、住民の意見陳述の機会が十分確保されているときは、その説明会を公聴会に代わるものとして運用することも考えられるが、この場合においても、住民がその内容を十分把握した上で、公開の場での意見陳述を行うための場となるよう十分留意するべきである。
  なお、市町村マスタープランについては法第18条の2により、公聴会・説明会の開催等住民の意見を反映させるための措置を講ずるものとされている。
  住民の意見を反映させるための措置としては、公聴会・説明会の開催に加えてまちづくりの方向、内容等に関するアンケートの実施、まちづくり協議会を中心としたワークショップの開催、まちづくり協議会による案の提案等各種方策を、地域の実情に応じて実施することが望ましい。
  公聴会・説明会の開催等については、住民の意見を十分汲み取ることができるようにすることが求められるものであり、作成しようとする都市計画の原案や関連する情報について具体的に提示するとともに、公聴会・説明会の開催日時、開催場所、事前の広報等に配慮するべきである。また、意見陳述を希望する者には物理的・時間的に対応が可能な範囲でできるだけ意見陳述を認めるとともに、公聴会の開催が形式に流されることなく真に住民の意見を反映させる場として機能させる観点から、運営に特段の支障を及ぼさない限り、例えば、公述人において希望がある場合には、都市計画の案を作成する都道府県又は市町村の担当者と、あるいは、公述人相互間において質疑・議論を行うこと等も考えられる。さらに、住民からの意見については、それがどのように都市計画の案に反映されたか等について都市計画審議会に報告することが望ましい。
  公聴会・説明会の開催等の方法については、都道府県又は市町村においてその事情に応じ決定することとなるが、その際、上記について十分留意するとともに、できるだけ必要な事項をあらかじめ定め、公表しておくことが望ましい。
 
(地区計画等の案の作成等)
 
 住民に最も身近な都市計画である地区計画等については、区域内の詳細な土地利用、施設等に関する計画であり、土地の所有者等に具体的な制限・負担が課せられる場合があることから、土地の所有者等の利害関係者から意見を求めて作成することに加え、市町村の条例で、住民又は利害関係人から地区計画等の決定若しくは変更又は地区計画等の案となるべき事項を申し出る方法についても定めることができることとされている。
 申し出の方法を条例で定めることができることとされているのは、地区計画等の作成が市町村の自治事務であることから、申し出の方法についても市町村の判断によることとしたものであり、法第16条第3項が地区計画等の作成における住民参加を実効性あるものとすることを目的として規定されていることに鑑みれば、市町村においては、申し出の方法を条例に定め、積極的に住民参加を促すことが望ましい。
 
(都市計画の案の理由書)
 
 法第17条第1項では、都市計画の案の公衆への縦覧の際に、都市計画を決定しようとする理由を記載した書面を添付することとされているが、これは都市計画決定権者としての説明責任を明確にするとともに、都市計画について住民との合意形成の円滑化を図ることとしたものである。
 したがって、理由書において、住民が都市計画が決定され、又は変更される理由を十分に理解できるようにすることが必要であり、当該都市計画の都市の将来像における位置づけについて説明することが望ましい。また、用途地域や都市施設等の具体の配置の理由等について、これらの都市計画が即地的に決定され、土地利用制限を課するものであることに鑑み、当該都市計画の必要性、位置、区域、規模等の妥当性についてできるだけわかりやすく説明するべきである。
 
(都市計画決定手続の条例による付加)
 
 都市計画手続に係る事務は、自治事務であることから、地方公共団体の判断において条例で手続を付加することは当然可能であるが、都市計画法上の手続は、国民の財産権が一方的に侵害されないよう担保するための最低限の手続であることから、条例によって手続を簡素化することは許されないと解すべきである。法第17条の2は、上記の趣旨を確認し、明確化したものであることに留意すべきであり、都市計画について住民の合意形成を図り、都市計画を着実に実施するため、当該条例の制定について積極的に検討されることが望ましい。
 条例の内容としては、市町村マスタープランや都市計画について、公聴会、説明会を必ず開催するものとすること、都市計画の案の縦覧期間を法定の2週間よりも長い期間とすること、まちづくり協議会による提案等の住民の意見を反映しながらまちづくりを行う方法を定めること等が考えられる。
 
(都道府県都市計画審議会及び市町村都市計画審議会の調査審議等について)
 
 都道府県都市計画審議会及び市町村都市計画審議会は、都市計画法その他法令でその権限に属せられた事項の調査審議のほか、都道府県知事又は市町村長の諮問に応じ都市計画に関する事項の調査審議等を行うこととされており、地方における都市計画に関し各種の提言を行うことが法令上期待されている。
 また、都市計画に関する事項については、住民の意見とともに、公正かつ専門的な第三者の意見を踏まえて立案していくことが、都市計画に対する住民の合意形成を円滑化するとともに、都市計画の着実な実施を図る観点から重要となってきている。
 このため、今後、都市計画に関する案の作成の前段階その他都市計画決定手続以外の場面においても、都道府県都市計画審議会及び市町村都市計画審議会から意見を求めていくことが望ましい。意見を求める事項としては、例えば、以下のようなものが考えられる。
 
・ 都市計画区域マスタープラン又は市町村マスタープランの案の作成
・ 都市計画の決定手続に関する事項に係る条例の案の作成
・ 基礎調査の解析結果等都市計画に関する情報提供のあり方     等
 
都道府県都市計画審議会及び市町村都市計画審議会については、年間の開催数があらかじめ定められたり、また、案件が事前登録されるなど、計画的に案件が付議されている場合も多いが、都市計画の提案制度の導入も踏まえ、都市計画の案の審議が円滑に行われるよう、必要に応じて、都道府県都市計画審議会及び市町村都市計画審議会の開催間隔の短縮化や開催予定の事前公表、手続の短縮化を図ることが望ましい。
 
(都市計画に関する知識の普及及び情報の提供)
 
 都市計画が円滑かつ的確に決定され、その内容が実現されるには、決定された都市計画を住民自らがまちづくりのルールとして受入れ、これを積極的に遵守していく姿勢が根底になければならない。
 その意味で、身近なまちづくりについて住民自らが主体的に参画しようとする動きが広がっている中、これまで以上に都市計画への住民参加を、実効性のあるものとすることが求められているといえる。
また、都市計画の提案制度の積極的かつ適切な活用を図る観点からも、住民が自らの居住する地域について定められている用途地域等の都市計画の内容について知ることや、都市計画制度について日常の生活環境を支える重要な制度インフラとして関心を深めることが重要である。
 このため、地方公共団体にあっても、地域住民に対して、都市計画制度についての理解を深めると同時に、まちづくりに参画しやすい環境の整備に資するよう、都市計画に関する知識の普及及び情報の提供に努めることが肝要であり、このための方策として、地域の実情に応じて例えば以下のような取り組みを行うべきである。
 
・都市計画制度に関する講習会、ワークショップ等の開催
・まちづくり協議会等への支援
・都市計画に関するパンフレット等の作成 
・都市計画に関するホームページの作成、インターネットの活用     等
 
 特に、上記のホームページの作成、インターネットの活用については、近年、インターネット利用者が急激に増加しており、今後、従来の「市政だより」等の手法に代わって住民が都市計画にアクセスする有効な方法になると考えられることから、例えば、住民にわかりやすい都市計画制度についての基本的な解説、既に定められている都市計画に関する情報提供(図面を含む。)、公聴会・説明会の開催日時の通知、都市計画案の縦覧の期間、場所等都市計画決定手続についての情報提供、現在定めようとしている都市計画の案の内容についての情報提供(図面を含む。)、意見募集等に活用することが考えられる。
 
(都市計画に関する人材育成及び専門家の活用)
 
  住民の主体的な参画によるまちづくりを進めるためには、都市計画に関する知識の普及及び情報の提供に努めるとともに、まちづくり活動への支援、住民からの意見の聴取、ワークショップの開催といったきめ細かいフィードバック作業を積み重ねて、合意形成を図っていくことが重要である。
  このため、地方公共団体においては、都市計画に関する幅広い知識、経験を有する人材の育成を図り、執行体制の充実を図ることが望ましい。
  また、地方公共団体における執行体制が必ずしも十分でない場合には、都市計画の専門家を活用することも有効であり、例えば、豊富な知識や経験が必要とされるマスタープランの案の作成、地区計画の案の作成等を行うに当たっては、地方公共団体が有するまちづくりの基本的な方向を十分理解している専門家から具体的な提案を受けて都市計画の案を作成することが望ましい。
 
3.都市計画の提案制度
 
(都市計画の提案制度の基本的考え方)
 
 近年、まちづくりへの関心が高まる中で、都市計画への関心も高まり、住民やまちづくりNPO等が主体となったまちづくりに対する多くの取組が見受けられるようになった。法第21条の2から第21条の5までに規定する都市計画の提案制度は、住民等が行政の提案に対して単に受身で意見を言うだけではなく、より主体的かつ積極的に都市計画に関わっていくことを期待し、また可能とするための制度として創設されたものである。これは、都市計画制度の沿革の中で、まちづくりのきっかけを誰がつくるのかというイニシアティブを行政のみならず住民等もとることが可能となったという点で画期的な変革と位置付けられる。
 提案制度は、これを契機として、まちづくりや都市計画に対する住民の関心を高め、主体的かつ積極的な住民参加が促されるものであり、この制度の普及や積極的な活用を図ることを手段として、まちづくりへの住民参加のあり方自体をより実質的なものへと高めていくことが期待されている。例えば、住民に最も身近な都市計画である地区計画制度と提案制度をあわせて活用することにより、身近な生活環境に対する住民の意向を地区計画の提案という形で行政に示すことも可能となるなど、こうした取組によって、まちづくり全体の有様についてより広範に住民の合意形成が図られることも期待されるものである。
 制度の運用に当たっては、このような制度の趣旨を十分踏まえ、住民等の都市計画に対する能動的な参加を促進するための取組を行うとともに、住民等からの発意を積極的に受け止めていく姿勢が望まれるものである。
 
(都市計画の提案制度の運用に当たり留意すべき事項について)
 
(1)提案の要件等
 都市計画の素案の内容は、法第13条その他の法令の規定に基づく都市計画に関する基準に適合するものであることとされているが(法第21条の2第3項第1号)、ここでいう「その他の法令に基づく都市計画に関する基準」には、法第6条の2第3項(都市計画区域マスタープラン)、第7条の2第2項(都市再開発方針等)等のほか、再開発法第3条(第一種市街地再開発事業の施行区域の要件)等の法以外の法令に定めるものも含まれるものである。
 提案を行う際に添付する都市計画の素案としては、都市計画の種類、名称、位置及び区域(市街地開発事業に関するものにあっては、施行区域)その他の都市計画決定権者が都市計画の案を作成するために必要な事項が具体的に記載され、かつ、その土地の区域が明確に示された平面図等が作成されることが必要であるが、一方、都市計画の素案は、都市計画の案を作成するに際して必要な程度に具体的に記載されていれば足りるものであることから、必要以上に詳細な記載を求めるべきでないことに留意すべきである。なお、都市計画決定権者が提案を踏まえて都市計画の決定又は変更をするか否かについて判断するに際し必要がある場合は、提案を行った者に対し、資料の提出その他必要な協力を要請することは妨げられないものである。
 都市計画の提案は、原則として0.5ヘクタール以上の一団の土地の区域について行うことができることとされている(令第15条の2)。このように、提案制度は、基本的には、一団の土地の区域におけるまちづくりの提案を想定している制度であり、当該区域内におけるまちづくりに必要な土地利用、都市施設の整備及び市街地開発事業に関する計画のそれぞれを提案することが可能である。
 都市計画決定権者は、特に必要があると認められるときは、条例で、区域又は提案に係る都市計画の種類を限り、0.1ヘクタール以上0.5ヘクタール未満の範囲内で、提案に係る規模を別に定めることができることとされているが(令第15条の2)、これは、地域によっては0.5ヘクタール以下の小規模な土地の区域を対象とした都市計画事業や地域地区等もあり得ることから、これらの現況や将来の見通し等を勘案して、特に必要があると認めるときには、当該区域に係る提案について規模要件を引き下げることができることとしているものである。令第15条の2に定める条例については、このような趣旨を踏まえて定めるべきである。
 提案に当たっては、提案に係る都市計画の素案の対象となる土地の区域内の土地所有者等の3分の2以上の同意を得たことを証する書類を添えることとされているが(規則第13条の3第2号)、これについては、都市計画決定権者が当該提案が土地所有者等の3分の2以上の同意を得たものであると判断できるもので足り、当該書類としてどのようなものを求めるかについては、都市計画決定権者の判断に委ねられているものである。
 
(2)提案に係る都市計画の決定又は変更の手続
 提案に係る都市計画の決定又は変更をするか否かの判断基準は、通常の都市計画の決定又は変更をする場合の基準と異なるものではない。このため、提案に係る都市計画の決定又は変更に係る画一的な判断基準を設ける等硬直的な運用をするべきではない。
 都市計画の提案をしようとする者は、都市計画に関する十分な知識や情報を有しない場合もあることから、あらかじめ都市計画の提案制度に関する相談窓口を設けることも考えられる。
 公聴会・説明会の開催等については、住民の意見を十分汲み取ることができるようにすることが求められるものであり、作成しようとする都市計画の案や関連する情報について具体的に提示することが求められるものであることから、提案を踏まえて都市計画の案を作成しようとするにあたって、公聴会・説明会の開催等をする場合には、提案に係る都市計画の素案を、作成しようとする都市計画の案に関連する情報として提示することも考えられる。
 提案が行われた場合には、提案に係る事務の処理に要する期間について、都市再生法(提案がなされてから6月以内)とは異なり具体的な期間を限るものではないが、都市計画決定権者は、当該事務の処理を遅滞なく行うこととされていること(法第21条の3)を踏まえ、適切に当該事務の処理を行うべきである。
 提案に係る都市計画の素案の内容の一部を変更して都市計画の決定又は変更を行おうとする場合及び提案を踏まえた都市計画の決定又は変更を行わない場合には、都市計画決定権者は、都市計画審議会に提案に係る都市計画の素案を提出することとされているが(法第21条の4、第21条の5第2項)、これは、都市計画審議会の意見を聴くことで都市計画決定権者の判断が適正になされるようにするためのものであり、また、提案に係る都市計画の素案の一部を変更して都市計画の決定又は変更を行おうとする場合には、都市計画審議会における適切な審議を図るためのものでもある。そのため、都市計画決定権者は、提案に係る素案の提出と併せて、都市計画審議会に対して、提案を踏まえた都市計画の決定又は変更を行わない理由や提案に係る都市計画の素案の内容の一部を変更して都市計画の決定又は変更を行おうとする理由を十分に説明するべきであり、また、必要に応じて、提案を行った者が都市計画審議会において意見を述べる機会を設けることが望ましい。
 都市計画決定権者は、提案を踏まえた都市計画の決定又は変更をする必要がないと判断したときは、遅滞なく、その旨及びその理由を、当該提案をした者に通知しなければならないこととされているが(法第21条の5第1項)、理由については、提案をした者がその内容を十分に理解できるものとするべきである。
 法においては、法第21条の2第3項に規定する要件に該当しないことを理由に、提案を踏まえた都市計画の決定又は変更をする必要がないと判断したときには、提案をした者に対してその旨の通知等の手続を行うことを要しないものであるが、都市計画においても行政手続の透明化や情報公開、説明責任の履行が求められることにかんがみると、このような場合についても、提案を踏まえた都市計画の決定又は変更をする必要がないと判断した旨とともに、どの要件に該当しないのか及び該当しないと判断した理由を提案を行った者に通知することが望ましい。
 
4.都市再生特別措置法に規定する都市計画の提案制度
(都市再生特別措置法に規定する都市計画の提案制度の基本的考え方)
 都市再生特別措置法(平成14年法律第22号。以下「都市再生法」という。)第5章第2節に規定する都市計画の提案制度は、都市再生の拠点として緊急かつ重点的に市街地の整備を推進すべき地域として政令で指定される都市再生緊急整備地域において、民間からの都市計画の発意を積極的に受け止めることとすることにより、民間による都市開発を積極的に誘導し、都市の再生を強力に推進することを目的として創設されたものである。
 制度の運用に当たっては、このような趣旨を十分踏まえ、民間からの発意を積極的に受け止めていく姿勢が望まれるものである。
(都市計画の提案制度の運用に当たり留意すべき事項について)
(1)提案の要件等
 都市計画の素案の内容は、法第13条その他の法令の規定に基づく都市計画に関する基準に適合するものであることとされているが(都市再生法第37条第2項第1号)、ここでいう「その他の法令に基づく都市計画に関する基準」には、法第6条の2第3項(都市計画区域マスタープラン)、第7条の2第2項(都市再開発方針等)等のほか、再開発法第3条(第一種市街地再開発事業の施行区域の要件)等の法以外の法令に定めるものも含まれるものである。また、都市再生緊急整備地域の地域整備方針(都市再生法第15条)は、法第13条第1項に規定する国の定める地方計画に該当するものであり、都市再生法第37条第2項第1号に規定する都市計画に関する基準に該当するものである。
 なお、都市計画の素案の内容が都市計画に関する基準に適合するものであることが提案の要件とされているが、例えば、現在定められている都市再開発方針等に明確に適合しない都市計画の提案があった場合であっても、都市計画決定権者の判断により、都市再開発方針等の見直しと併せて、当該都市計画の提案を踏まえた都市計画の決定又は変更を行うことが可能であることに留意すべきである。
 提案に係る都市計画の素案に係る事業が環境影響評価法(平成9年法律第81号)第2条第4項に規定する対象事業に該当するものであるときは、当該事業について同法に基づく環境影響評価を実施していることが提案の要件とされているが(都市再生法第37条第2項第3号)、提案どおりに都市計画の決定又は変更が行われなかった場合には、改めて環境影響評価を実施しなければならない場合も想定されることから、対象事業に係る提案を行おうとする者は、当該提案に係る事業の環境影響評価の実施に先立って、当該提案に係る都市計画の素案の内容について、都市計画決定権者と事前の調整を行うことが望ましい旨を周知することが考えられる。
 提案を行う際に添付する都市計画の素案としては、都市計画の種類、名称、位置及び区域(市街地再開発事業及び土地区画整理事業に関するものにあっては、施行区域)その他の都市計画決定権者が都市計画の案を作成するために必要な事項が具体的に記載され、かつ、その土地の区域が明確に示された平面図等が作成されることが必要であるが、都市計画決定権者は、提案が行われた日から6月以内に当該提案を踏まえた都市計画の決定又は変更に係る処理を行うこととされていることから(都市再生法第41条第1項)、提案の処理に係る事務の円滑化に資するよう、提案を行おうとする者は、都市計画の素案として法第14条の規定に基づいた総括図、計画図及び計画書を作成することが望ましい旨周知することが考えられる。なお、都市計画決定権者が提案を踏まえて都市計画の決定又は変更をするか否かについて判断するに際し必要がある場合は、提案を行った者に対し、資料の提出その他必要な協力を要請することは妨げられないものである。
 都市計画を定めてその内容を実現するためには、提案に係る土地の区域の土地所有者等の同意のみならず、都市再生事業が行われる土地の区域及びその周辺の住民や利害関係人の理解が必要とされることから、提案を行おうとする者は、提案に先立ち、土地所有者等の同意を得る過程等において、都市再生事業が行われる土地の区域及びその周辺の住民や利害関係人に対して当該提案及び提案に係る都市再生事業の内容を十分に説明し、理解を得るように努めるよう周知することが望ましい。
(2)提案に係る都市計画の決定又は変更の手続
 提案に係る都市計画の決定又は変更については、通常の都市計画の決定又は変更と同様に、公聴会・説明会の開催、都市計画の案の公告・縦覧、意見書の提出及び都市計画審議会への付議といった手続を経るものであり、公聴会・説明会の開催は基本的に省略されるべきではないことは言うまでもないが、提案に先立って、提案を行おうとする者と関係住民及び利害関係人との間で、提案及び都市再生事業の内容について意見交換が行われ、当該提案に関係住民及び利害関係人の意見が十分反映されていると認められるときには、公聴会・説明会の開催を省略することも考えられる。
 都市計画審議会については、年間の開催数があらかじめ定められ、また、案件が事前登録され、計画的に案件が付議されている場合も多いが、都市再生法に規定する都市計画の提案制度においては、都市計画決定権者は、提案が行われた日から6月以内に当該提案を踏まえた都市計画の決定又は変更に係る処理を行うものとされていることから、必要に応じて、案件の登録や都市計画審議会の開催の弾力化を行うこと等により、提案に係る手続の迅速化を図ることが望ましい。
 提案を踏まえた都市計画の決定又は変更を行わない場合及び提案に係る都市計画の素案の内容の一部を変更して都市計画の決定又は変更を行おうとする場合には、都市計画決定権者は、都市計画審議会に提案に係る都市計画の素案を提出することとされているが(都市再生法第39条、第40条第2項)、これと併せて、都市計画審議会に対して、提案を踏まえた都市計画の決定又は変更を行わない理由や提案に係る都市計画の素案の内容の一部を変更して都市計画の決定又は変更を行おうとする理由を十分に説明するべきであり、また、必要に応じて、提案を行った者が都市計画審議会において意見を述べる機会を設けることが望ましい。
 都市再生法においては、都市再生法第37条に規定する要件に該当しないことを理由に、提案を踏まえた都市計画の決定又は変更をする必要がないと判断したときには、提案をした者に対してその旨の通知等の手続を行うことを要しないものであるが、都市計画行政においても行政手続の透明化や情報公開、説明責任の履行が求められることにかんがみると、このような場合についても、提案を踏まえた都市計画の決定又は変更をする必要がないと判断した旨とともに、どの要件に該当しないのか及び該当しないと判断した理由を提案を行った者に通知することが望ましい。

国土交通省 都市地域整備局 都市計画課