![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
下水道懇談会報告について |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
下水道の処理人口普及率は平成8年度末で55%に達し, 今や生活用水のほぼ3分の2に相当する水量が下水道システムを経由して
公共用水域に還元されています。今後,下水道整備がますます進展することにより,
良好な水環境を維持・回復していくうえで下水道の重要性は一段と高まっていくものと考えられます。このことは,下水道が,単なる排水の処理だけではなく,水循環という大局的な観点から考え,社会へ貢献してゆかねばならない役割を与えられつつあるということです。 また,うるおいや安らぎを求める国民の要求は近年とみに高まっており, 水や緑に関連した環境の整備も強く求められています。 このような最近の下水道をめぐる様々な課題に対して検討を行い, 適切な施策の方向を示すため,平成8年12月,調査審議機関として(社)日本下水道協会に 「下水道懇談会」が設置されました。 同懇談会では,最初の審議事項として「水循環における下水道はいかにあるべきか」 を取り上げ,計9回の審議を重ね,平成10年3月に報告がなされました。 ■審議事項 水循環における下水道はいかにあるべきか ■検討事項
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
■報告の概要報告(平成10年3月20日) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第1章 わが国は、古来、農耕、とりわけ稲作中心の農耕を主体に発展し、水との緊密な関係を形作ってきた。
しかしながら、都市化の進展に伴い、河川等の水質汚濁や水量の減少、水辺空間の悪化など水環境の悪化が進行した。
その結果、水辺のレクリエーション活動が衰退したり、 水に関する文化や風物詩も姿を消すなど人と水との関係は次第に疎遠になっている。
(1)水循環、水環境とは何か(概念整理) 環境問題への関心が高まり、その一分野として水循環、 水環境の維持・形成への取り組みの必要が各方面で論じられている。 しかし、そもそも「水循環」、「水環境」とは何か、それらの言葉を修飾する「良好な」 とはどういうことかについて、一般的な共通認識として定まったものが見当たらない。 なかんずく、水循環、水環境の用語が相互に混同して用いられることがある。 そこで、水循環を議論するにあたっての共通的基盤形成のため、本答申では以下のように概念整理を行った。 また、これを図示すると図−1のようになる。さらに、併せて「水資源」についても、 本答申で使われている意味を明確にするため定義付けを行った。 1)水循環とは、水がある経路に沿ってめぐりめぐってもとに返り、それを繰り返すことである。 その経路としては、河川、湖沼、海域等地表上の自然水域のみならず、 地下水の通り道である地下空間や水蒸気の通り道である大気中に加え、水道、 下水道等生活・産業に起因する人工系の流路も含まれる。 なお、下水処理水の循環の形態としては、下水処理水を一旦河川、 湖沼等の水域に戻してから取水・利用する開放型循環と河川等を介さないで直接用水の原水として利用する 閉鎖型循環とがある。 2)水循環は、海洋(地表)⇔大気という大規模(マクロスケール) 循環、河川⇔用排水という流域を単位とした中規模(メソスケール)循環、 人間の身の回りの生活や産業活動の中での水の動きという小規模(ミクロスケール)循環に分類できる。 水循環の総体は、これら様々な水循環が有機的に結合するネットワークである。 3)水環境とは、水域の水量及び水質、水辺空間、生態系に加え、景観、文化の要素を包含する概念である。 4)水環境の持つ多面的な恵沢が生かされるためには良好な水循環が必要である。 ![]() 図−1 (2)良好とはどういうことか。 「良好」という言葉には必ず客体が存在し、価値判断や是非判断を伴う。人間にとって、
ヤマメ、アユ、コイ、イトミミズにとって良好な水循環・水環境はそれぞれ異なるものと考えられる。
そして、人間以外の生物はその水循環・水環境に適合した種がそこで繁殖することとなる。
日本には原始の自然環境はほぼ皆無であり、 一般に自然環境と考えられているものもなにがしかの人間活動の影響を受け、
特に都市においては大きな影響を受けていると考えられる。そして、 それぞれの条件に適合した生態系が形成されている。 「良好」の内容を考えるとき、単にその内容のみならず様々な観点から留意 すべき事項を考える必要がある。 それらについて特に重要なものは以下のとおりである。但し、それらの具体的な内容は、時代、 河川の上流・中流・下流といった地域に適合したものでなければならないことに注意しなければならない。 @人間にとっての安全性・快適性(飲用その他の水利用、治水、潤い・安らぎ・美観) (3)水資源とは何か 水資源の用語についても、混乱を避けるため、以下のように規定して使用することとする。 @河川開発の対象となる水のみならず、地下水、海水、 河川に流入する以前の雨水及び下水処理水も含めた日本の国土・領海の空間に存在する水のうち、
利用の対象となるものであり、 という条件を満たすものを「水資源」と言うこととし、そのうち河川水等の公共用水域の淡水及び地下水を 「狭義の水資源」と言うこととする。 水は人類共有の基礎的資源である。そして、 水資源は水循環の過程を通じて土地利用と根幹的なところで係わりを持つ。つまり、 例えば市街地では大量の水が使用・排出され、降雨が少ししか地下浸透せずに短時間で河川等に流出する傾向があり、 特に密集市街地ではこれらの傾向が著しい。森林・緑地ではこの逆となる。水田地帯では灌漑期に大量の水を使用し、 地下浸透もみられる。それゆえ、水資源の保全のためには良好な水循環の維持・形成に配慮した土地利用が求められる。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第2章 水管理の考え方は、気候、風土、歴史、文化等を写す鏡とも言える。 欧米諸国においては流域全体を一体かつ一元的に管理する考え方が定着しているが、
わが国においては関係分野が極めて多岐に及んでおり、総合的な水管理の取り組みの必要性が指摘されている。
また、水循環に関し、流域における都市化の影響は大きく、 流域の水管理と都市における水管理の調和が必要となっている。 (1)良好な水循環を回復するために必要な流域の水管理の基本的な考え方 1)流域全体を把えての水管理を考えることが必要であり、必要に応じて複数の流域にまたがる大流域、 あるいは支川ごとの小流域を単位とした水管理を考えることも重要である。 2)水量だけ、水質だけを重視するというのではなく、 水量、水質、利水・排水の方法を総合的に検討することが大切である。 3)土地利用は流域の水循環に大きな影響を与える。 流出雨水の水量・水質及び地下浸透並びに発生する水需要及び水使用後の排水の水量・水質は土地利用との関係が深い。 水循環のフローのコントロールのみならず土地利用に関する施策も併せて講じることが重要である。 4)水量、水質及び生態系を育み親水機能を果たす場をセットで考えることが必要である。 5)本来的には人間の活動を水量・水質の両面からの環境容量、つまり水量、水質、 空間の観点から良好な水循環が維持される限度を考慮しつつ、 土地利用対策及び環境容量の拡大策に相互に取り組んでいくことを目指すべきである。 その際、水質評価項目の選定にあたっては、可能な限り人の健康や生態系を反映できるものを含めることが重要である。 6)地球温暖化防止の観点から、エネルギー消費等による温暖化ガスの発生を抑制するため、 水循環に関わる施設の材料製造、建設、維持管理から廃棄までを見通したライフ・サイクル・ アセスメントの実施が必要である。 7)そのために関係行政が連携し、一体的に取り組むことが重要である。さらには、 流域を単位として水に関する問題の調整と解決を一元的に行うフランスの流域委員会のような制度を 創設していくことも検討すべきである。 (2)適正な水管理の要件 1)河川・水路等及び用排水システムに関する実態の把握(「水センサス」の実施) 2)供給の把握 3)需要の把握 4)用排水システムの最適配置 5)汚濁負荷の排出抑制 6)排水処理困難物質及び新たなタイプの有害物質の発生・排出抑制 7)水に関係する生態系の保全と多様性確保に資する河川、海岸等の形状の確保や、
表流水及び地下水の水域連続性の確保等 (3)適正な水管理の課題 1)水質保全費用の負担の適正配分 2)水利使用の合理化 3)河川、湖沼海域或いは山林、原野、湿地、干潟などにおける自然の浄化能力の適正な評価及び保全・回復 4)利害調整ルールを含め計画プロセスへの住民参加方法の確立 5)行政手続の透明性確保 6)他水系からの導水による生態系への影響の検討 (4)実現のための施策の提言 水循環・水環境に関係する行政は河川、用水、排水、都市計画、環境、公衆 衛生、農林漁業、産業立地、 舟運等極めて多方面にわたる。したがって、下水道行政だけでは良好な水循環の維持・形成はもとより困難であり、 施策内容に応じて関係行政が適切に連携・調整し、総合的、一体的な施策として実施することが必要である。 1)水循環マスタープランの策定及び流域別下水道整備総合計画の充実 2)用排水システムによる水循環のコントロール 3)取水地点及び排水地点の見直し並びに排水規制の見直し 4)水量面及び水質面からの需要の抑制等のための各種施策 5)ノンポイント汚濁負荷の排出抑制対策 6)狭義の水資源の維持・拡大 7)良好な水循環・水環境の維持・回復に必要な技術開発の推進 8)良好な水循環の維持・回復と地球環境保全の調和 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第3章 良好な水循環を維持・回復するために、下水道はいかにあるべきか。 下水道はこれまでも良好な水循環を維持・回復するうえで重要な役割を担ってきたが、下水道の普及拡大による処理水量の増大、高度処理の促進により、水量管理、水質管理の両面における重要性が益々増大することが見込まれる。下水道は下水を集めるシステムであるがゆえに、河川等の流量を減少させる反面、水量、水質の適切なコントロールによって良好な水循環に貢献する様々な施策を積極的に展開できるポテンシャルを有する。 (1)背景及び基本的考え方 現在、全国で年間約171億m3の水が生活用水として使用され、この約2/3に相当する約107億m3が全国の下水処理場で処理されている。この量は今後下水道の普及拡大に伴い下水処理水の量はますます増加していくことが見込まれる。また、下水道は、都市に降る雨水を河川等へ排水する機能もあり、良好な水循環の維持・回復のため、その雨水に含まれる都市面源からの汚濁負荷の除去や雨水の貯留・浸透・利用にも取り組んでいくことが必要である。このように今後の水循環の中で下水道の果たす役割は質・量ともにますます増大してくるので、積極的に取り組んでいくことが求められる。 (2)下水道の果たすべき役割 1)公共用水域の水質保全 2)下水処理水の有効利用 3)地球温暖化防止 (3)具体的な施策の提言 1)下水センサスの実施 2)下水処理水の総合的リスク管理 3)都市面源負荷量の削減 4)雨水等の貯留・利用及び地下涵養 5)費用負担の明確化 6)季節別に設定する下水道使用料体系の導入 7)下水道の機能についての技術的知見の蓄積及び技術開発の推進 8)下水道の適切な理解に向けて 9)国際協力 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
![]() ■第1章 ■第2章 ■第3章 |
![]() |
![]() |