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TOP > 下水道部からのお知らせ > 第60回都市計画中央審議会の開催について > 都市計画中央審議会下水道小委員会報告概要

都市計画中央審議会 下水道小委員会報告
「今後の下水道政策のあり方について」概要

1.下水道制度に関する検討の趣旨
○ 20世紀における都市化の進展や産業の発展は、利便性の高い快適な生活をもたらす一方で、水循環の変化による都市内河川の環境の悪化や都市型水害の頻発、大量の廃棄物や汚濁負荷物質、微量有害物質の排出による環境の悪化など、深刻な問題を惹起。

○ 21世紀を迎えてこれらの問題を解決するためには、都市の水循環系、物質循環系のなかで次第に大きな位置を占めるようになった下水道が、水循環・水環境の保全、安全な都市生活の確保、地球環境にも配慮した循環型社会の形成等の役割を十分に果たすことが必要。

○ 本委員会ではその第一歩として、新たな役割への対応に必要な下水道制度のあり方等について検討。
2.わが国の下水道制度の変遷と課題
○ 明治33年の下水道法の制定以来、平成12年で100周年の節目を迎えたが、わが国の下水道にとっての20世紀は、まさに後れている社会資本の整備の観点から懸命に事業を推進してきた世紀。その整備促進により、処理人口普及率は60%(平成11年度末) に達し、都市部の生活環境の改善や河川の水質改善などに一定の成果。一方で、地方部の整備の後れなどの課題が残されているところ。

○ 今日、下水道は都市化に伴う水循環の変容や近年の社会情勢の変化等に伴う新たな課題に直面しており、これらに的確に対応することが必要。
3.下水道制度のあり方について
 都市において水循環や物質循環が変化するなかで、新たに顕在化してきた都市内河川等における環境の悪化や廃棄物・有害物質の排出に起因する環境上の問題等に対して、下水道として的確な対応が求められており、このための制度的な枠組みを整備すべき。また、社会的なニーズに応えて下水道施設の有効な活用が必要。同時に、こうした課題に対応しつつ、今後の下水道の整備と管理に関してさらなる効率化と透明性の向上に努めるための取り組みを強化すべき。
 このような諸課題に対応するため、以下に示すように下水道制度等について見直しを図るべき。


 3−1.都市化の進展に伴う水系における諸課題解決のための措置

 都市の水循環の変化に伴う諸課題への対応のためには、流域全体として対応する流域管理の視点からの施策が重要。このため、健全な水循環形成の観点から、下水道整備の総合的な基本計画である流域別下水道整備総合計画(以下、「流総計画」という。)の再構築等を図るべき。また、頻発する都市水害への対応についても、下水道と河川のさらなる連携強化に努めるとともに、住民をはじめ多くの主体の参画・努力のもとで、都市の雨に都市全体で対応するための施策の推進が必要。さらに、事業場における事故などの緊急時の対応の強化により水系リスク管理の高度化に努めるべき。

(1)健全な水循環系の構築・良好な水環境の形成
<制度化・具体化すべき事項>
@ 流総計画について、以下の措置を講ずる。

1) 都道府県は、流量の不足等により良好な河川環境が確保されていない河川について、河川管理者との連携のもとに、放流水を供給する下水処理場、放流位置、水量等に関する事項を流総計画に定める。
2) 高度処理の目標を明確にして、その推進を図るため、流総計画に放流水質・水量に関する事項を定める。

A 下水道事業として実施が必要なノンポイント汚濁対策等を流総計画に位置づけて計画的に推進。
<検討を深めるべき事項>
○ 健全な水循環系の構築、良好な水環境の形成が21世紀の下水道の新たな役割であることを踏まえ、下水道法の目的の改正を検討。
(2)都市全体で対応する雨水対策の推進
<制度化・具体化すべき事項>
@ 下水道事業と河川事業が適切な安全度バランスとなるような計画づくり及び事業実施の推進。

A 都市施設、民間宅地、事業場等への雨水の流出抑制施設の設置の積極的推進。水質保全の観点から、調整池の有効利用など関係事業との連携の推進。

B 整備水準を超える降雨への対応として、浸水想定区域の周知等の情報提供、光ファイバー網を活用した水害時の情報伝達、排水ポンプの適切な運用ルールの作成等のソフト対策並びに下水道施設の耐水化、防災性の向上等の推進。
<検討を深めるべき事項>
○ 都市住民や民間事業者による雨水の流出抑制施設の設置等多様な主体の水害対策への参画が重要。このため、適正な土地利用や建築のあり方の検討、下水道計画、河川計画、流域対策を包含する総合的な計画の枠組みを検討。
(3)下水道における水系リスク管理の高度化
<制度化・具体化すべき事項>
○ 多様な化学物質の下水道への流入や下水道からの排出について、実態把握、情報提供、排出抑制の方策等の検討。
 3−2.現下の社会的課題への対応の強化

 大量消費・大量廃棄型社会から環境への負荷が少ない循環型社会への転換が、現下の社会的要請となっており、全産業廃棄物の発生量の約17%を占める下水汚泥についても減量化・リサイクルのための仕組みを構築すべき。
 また、IT革命の推進のための光ファイバーネットワークの構築に際しては下水道の管きょ空間の活用が有効であり、その円滑化へ向けた取り組みが必要。

(1)循環型社会構築に向けた下水汚泥の減量化・リサイクルの推進
<制度化・具体化すべき事項>
○ 下水汚泥の減量化を計画的に推進し、汚泥処理の広域化・集約化を促進するため以下の措置を講ずる。

1) 国は、下水汚泥の減量化の目標等、その適正な処理に関する基本方針を策定。
2) 都道府県は、国の基本方針に即して、関係市町村の意見を聴取しつつ、下水汚泥の減量化に関する計画を策定。下水道管理者は当該計画に即して事業計画を策定。
<検討を深めるべき事項>
○ 都市の物質循環の観点から、下水道による都市全体の代謝システムの効率化と環境負荷の低減を図るための方策について検討。
(2)管きょネットワークを活用した高度情報化
<制度化・具体化すべき事項>
@ 国は、第一種電気通信事業者等による下水道管きょ空間の活用の円滑化のため、使用可能な管きょの情報の公開、許可基準や手続き等のあり方、複数の民間事業者が競合した場合の使用のあり方等に関するガイドラインを提示。

A 下水道管理者は、下水道管理用光ファイバー整備に関する基本計画を策定し、施設管理の高度化とともに第一種電気通信事業者等の管きょ空間利用の円滑化を図る。
3−3.下水道の整備と管理における効率性・透明性の確保

 下水道施設のストックが次第に膨大なものとなる中で、その維持管理の効率化・合理化が重要。特に地方公共団体の厳しい財政状況に鑑みても、下水道の維持管理コスト縮減への取り組みが必要。
 また、下水道事業に関して住民等の関係者の理解を深めるため、事業の各段階において必要な情報を公開するとともに意見聴取等の手続きの充実が必要。

(1)民間活力の導入等による経営の効率化
<制度化・具体化すべき事項>
○ 性能発注方式の円滑な導入のため、以下の措置を講ずる。

1) 国は、民間事業者の総合能力を的確に評価する発注方法の導入のあり方、下水道管理者と受託者との責任分担のあり方等について、ガイドラインを提示。
2) 専門的技術者による支援体制の整備、人材データバンク整備等の支援方策の推進
<検討を深めるべき事項>
○ 業務範囲がより広範な民間委託等、民間活力の活用のあり方について、委託者の監視のあり方、受託者の業務の執行の適正さの担保を図る枠組み等を含めて検討。
(2)下水道の多様な役割の明確化のためのアカウンタビリティの向上
<制度化・具体化すべき事項>
@ 下水道事業のアカウンタビリティの向上を図るため、以下の措置を講ずる。

1) 事業計画に放流水量及び水質に関する事項を定めるなど、内容を充実。また、事業計画案について住民等から意見を聴取。
2) 流総計画又は事業計画を策定又は変更した場合には、その内容を公表。

A 下水道事業の各段階(計画、建設・改築、維持管理)において、下水道の役割、 事業の内容及び必要性、要する費用、使用料の根拠等、下水道事業に係る情報をわかりやすく公表。
4.引き続き取り組むべき課題
 本報告では、下水道法をはじめとする制度面を中心に、新たな役割やニーズへの対応を図るための課題について見直しの方向を提示。しかしこうした課題解決のためには、さらに以下の事項について、引き続き検討を深めることが必要。
○ 流域を一単位とする流域管理の視点から施策を推進するため、関連施策との連携や、流域の関係者一体の取り組み等を総合的かつ計画的に推進するための方策。

○ 今後見込まれる維持管理費の増大に伴う費用負担のあり方や、改築更新需要の増大等に伴う財源調達のあり方。

○ 各課題の本質的な解決に向けて、関連する技術の確立のため、国、地方公共団体、関連研究機関、民間等が適切な役割分担のもとに調査研究を推進。

○ 国際社会におけるわが国の役割として、開発途上国の排水処理の遅れによる環境悪化や、世界各地の淡水資源の枯渇等の課題への取り組み。

○ 水循環系の健全化や環境保全等に関連する広範な施策について、関係省庁・機関との間でのより総合的な取り組みのあり方。

○ 整備が後れている中小市町村の普及拡大へ向けて、下水道財政のあり方、建設・維持管理に係るコスト縮減などについて、長期的な整備目標のあり方と合わせて、事業推進のための課題として引き続き検討。
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