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都市計画中央審議会基本政策部会 下水道小委員会報告
「今後の下水道政策のあり方について」
目次
1.はじめに 
2.わが国の下水道制度の変遷と課題
3.下水道制度のあり方について
 3−1.都市化の進展に伴う水系における諸課題解決のための措置
 (1)健全な水循環系の構築・良好な水環境の形成
 (2)都市全体で対応する雨水対策の推進
 (3)下水道における水系リスク管理の高度化
 3−2.現下の社会的課題への対応の強化
 (1)循環型社会構築に向けた下水汚泥の減量化・リサイクルの推進
 (2)管きょネットワークを活用した高度情報化
 3−3.下水道の整備と管理における効率性・透明性の確保
 (1)民間活力の導入等による経営の効率化
 (2)下水道の多様な役割の明確化のためのアカウンタビリティの向上
4.引き続き取り組むべき課題
1.はじめに
 水は、雨が地表から河川などにより海域へと流下し、あるいは地下水として地中を浸透し、さらに蒸発散により大気中を移動するなど、多様な経路をたどりながら循環している。そして水は、その循環の過程で良好な水環境の形成、多様な生態系の保全といった役割を担いつつ、水資源として我々の生活に計り知れない恩恵を与え続けてきた。しかし人間の活動が拡大するにつれて、水循環の経路には、上下水道、農業用水路など人工系の流路が加わるようになり、特に都市域を中心として水循環は過去からの姿を大きく変貌させるようになった。
 また、水と同様に、現代の人間の活動に不可欠な自然鉱物資源、化石燃料等の消費量も、人間の活動の拡大につれて増大しており、大量消費、大量廃棄型の物質フローを形成するようになった。
 20世紀における産業の発展や都市化の進展は、人々に利便性の高い快適な生活をもたらす一方で、多量の廃棄物や、汚濁負荷物質、微量有害物質等の排出による環境の悪化、深刻な都市水害など、生活の利便性の向上とうらはらの問題を招くこととなった。また、都市化に伴うこれらの問題の解決には多大なコストの負担を迫られることとなる。
 いま、都市住民一人一人が自らのライフスタイルの在り方も含めてこの問題を認識し、社会全体として健全な水循環系・良好な水環境の保全、循環型社会の構築へ向けて取り組むことが必要となっている。
 今日、下水道の普及に伴い、都市に流入し、又は消費される水の多くが下水道を経由して都市から流出するようになり、下水道は都市の水循環系、物質循環系のなかで次第に大きな役割を果たすようになってきた。
 水循環系の面からは、都市化の進展により、地下水涵養の阻害や都市型水害の頻発など水循環の変化による問題が生じているが、下水道はその普及に伴い、今後の都市の水循環系の再構築の面で主要な役割を果たしうる存在となっており、より積極的な取り組みへ向けての制度等の充実が望まれる。また、大量消費、大量廃棄型社会から、環境への負荷が少ない循環型社会への転換が強く求められるなかで、下水道は、下水処理水の再利用や、下水汚泥の再資源化、下水廃熱の回収等を通じて、都市の資源・エネルギー回収システムとしても機能しうる都市施設であり、今後はこのような機能を強化するための取り組みが期待されている。
 こうしたことから、 21世紀の下水道は、単なる汚水対策、雨水対策の範疇を越えて、流域単位での水循環・水環境の保全、安全な都市生活の確保、地球環境にも配慮した循環型社会の形成といった基本的役割を担うものでなければならない。本委員会では、これまでの下水道整備に関する施策を再評価しつつ、21世紀を迎えて下水道が取り組むべき課題を解決するための第一歩として、新たな下水道の役割やニーズへの対応を図るために必要な下水道制度の方向性等について検討を行った。
2.わが国の下水道制度の変遷と課題
■わが国の下水道制度の変遷

 わが国の近代下水道は、雨水による浸水問題や停滞した汚水による伝染病の発生を防ぐことを目的として明治初期にスタートした。しかし、伝染病の流行が続くなかで衛生環境整備として上水道が優先されたこともあり、事業に着手した都市は限られていた。以後も、下水道は、他の都市施設に後れて整備が進められる傾向が続くこととなった。明治33年には「土地の清潔を保持する」ことを目的とした下水道法が制定され、事業は市町村公営、新設には主務大臣の認可を要することとされた。その後、昭和初期に入ると失業対策として整備が進められたが、第2次世界大戦により事業は中断を余儀なくされることとなった。
 昭和33年には「都市の健全な発達と公衆衛生の向上に寄与する」ことを目的とする新下水道法が制定され、都市内の浸水防除、都市における汚水の排除による生活環境の改善を柱として下水道の整備が本格化したが、高度経済成長期における都市への人口集中に必ずしも十分に対応することはできず、その後、下水道整備の後れや工場排水規制の欠如による公共用水域の深刻な水質汚濁を招くこととなった。こうした中で開かれた昭和45年のいわゆる公害国会において下水道法の改正が行われ、新たに、「公共用水域の水質の保全」が目的に加えられるとともに流域別下水道整備総合計画及び流域下水道に関する規定が新設され、概ね現在の下水道の制度的枠組みが確立された。
 こうして、現在の下水道は、生活環境の改善、浸水の防除及び公共用水域の水質保全を目的として、昭和38年から現在まで8次にわたる下水道整備五(七)箇年計画に基づき整備が進められ、処理人口普及率も60%(平成11年度末)に達するまでに至った。明治33年の下水道法の制定以来、平成12年で100周年の節目を迎えたが、わが国の下水道にとっての20世紀は、まさに後れている社会資本の整備の観点から懸命に事業を推進してきた世紀であるということができる。
 このような取り組みの結果、都市部を中心に、伝染病の防除等による公衆衛生の向上、低湿地の排水性の向上等による市街化の促進、トイレの水洗化等による生活環境の改善といった面で、これまでの下水道事業は相当の成果を上げてきたと評価されよう。また、高度成長期に顕在化した深刻な水質汚濁に対しても、水質規制の導入とあわせて下水道等による生活排水や事業場排水の処理を推進したことにより、河川における水質環境基準の達成率が8割を越えるなど公共用水域の水質改善にも貢献してきた。 一方で、下水道の普及は中小市町村で特に後れているなど地域的な格差が著しく、地方部における生活環境改善の遅れが課題として残されている。また、高普及率の都市にあっても、市街化に伴う雨水被害の増大への対応や、閉鎖性水域等での水質改善がなお十分でない。

■今日の下水道が直面する課題

 このように、これまでの下水道整備は一定の成果をあげてきたものの、今日の下水道は、地方部の生活環境改善の遅れや、湖沼等の水質改善の遅れなど依然として残された課題とともに、都市化の進展や都市活動の高度化等による新たな課題に直面している状況にある。
 わが国の下水道整備は、従前より中小市町村に後れがみられたことから、これまでにも国庫補助対象範囲の拡充や、過疎地域における都道府県代行制度の創設等の措置を講じ、中小市町村の整備促進が図られてきており、これによって中小市町村においても急速に下水道整備が進展してきた。しかし、依然として地域格差には大きなものがある。例えば処理人口普及率(平成11年度末)は、人口100万人以上の都市が98%に達しているのに対して、人口5万人未満の市町村では未だ24%に止まっており、下水道事業に未着手の約1000市町村のほぼ全てが人口5万人未満となっている。中小市町村における下水道の普及拡大はわが国の下水道事業の最重点課題となっている。
 一方、都市化に伴う水循環系の変容等に起因して、また最近の社会情勢に対応して、これまでの枠組みの下では十分な対応を講ずることが困難な以下の課題に下水道は直面するようになっている。まず、都市化による水循環系の変化に起因する課題が挙げられる。
 人々の生活に水が不可欠である限り、人々が集まって生活し、市街地を形成し、都市へと発展する過程は、少なからず流域の水循環系に影響を及ぼすこととなる。現在、こうした水循環系への影響が、平常時における都市内河川の流量の減少とそれに伴う水環境の悪化、閉鎖性水域における集水域からの過剰な汚濁負荷の流入による水質悪化、都市型水害の深刻化などの問題として顕在化している。
 近年、都市化の進展に伴う雨水の地下浸透量の減少等による平常時の河川流量の減少や、それに起因して水質汚濁や生物の生息環境の消滅等の河川環境の悪化が問題となっており、水循環・水環境の保全のためには、汚濁負荷の削減という水質の観点のみならず、水量の観点、さらに生態系保全の観点も加えた取り組みが求められている。
 また、湖沼、内湾などの閉鎖性水域における水質改善の遅れも未解決のまま残されており、水質環境基準の達成率も依然低い状態である。こうした水域では、高度処理の推進、合流式下水道の改善、雨天時に市街地から流出するノンポイント汚濁負荷の削減が求められている。
 さらに、急速な都市化、土地利用の変化に伴う雨水流出量の増加に下水道や河川の雨水対策が追いつかず、特に既成市街地等において安全度が低下し、地下街における被害が起きるなど浸水被害を受けやすい都市構造となっている。本年9月の東海水害でも、都市機能が麻痺する甚大な被害が生じるなど、深刻な浸水被害が頻発している。都市に降った雨に対して都市全体で対応し、浸水安全度を向上させるための取り組みが早急に進められるべきである。
 一方、下水道に流入する各種の環境ホルモン物質・微量化学物質等による水系リスクへの対策についても、その実態把握や排出抑制のあり方を検討すべき状況にある。
 同様に重要な観点として、大量生産・消費・廃棄社会からの脱却へ向けて、循環型社会の構築は社会的な要請であり、下水道の分野においても汚泥の減量化・再利用を早急に推進するための取り組みが求められている。
 近年の社会情勢は大きな変革が進んでおり、バブル経済の崩壊、グローバル化の進行、少子・高齢化社会への移行、高度情報化の進展、新たな官民のパートナーシップの形成など、社会全体の構造改革が求められている状況にある。あわせて、地方分権の推進や行政への住民参加などの取り組みが進められつつある。こうした情勢の変化に下水道としても対応すべく、管きょ空間を活用した情報ネットワーク構築の支援や、膨大な施設ストックの適切な管理のための民間事業者の活用、より透明性の高い事業制度の確立等の推進が望まれる。
 以上のような下水道を取りまく社会情勢の変化を踏まえつつ、下水道に関連する諸課題に的確に対応するため、以下に掲げるように下水道制度等について見直しを図るべきである。
3.下水道制度のあり方について

3−1.都市化の進展に伴う水系における諸課題解決のための措置

 近年、都市の水循環は大きく変化している。都市化の進展やそれによる土地利用の変化に伴い、雨水の地下浸透量が減少する一方で、土地の保水・遊水能力は低下し降雨時の流出の増大を招いている。この結果、河川への地下水の流出や湧水の減少に伴う都市内河川の平常時流量の減少による水環境の悪化、豪雨時の浸水被害の増大といった問題が発生している。また、水質面でも閉鎖性水域の水質改善の遅れや、化学物質などによる水系リスクの増大、多様な生態系の喪失など、流域における新たな問題も発生している。これらの課題に対しては流域全体として対応する流域管理の考え方が重要であるが、特に都市化された流域の水管理において下水道が果たすべき役割は大きい。

 (1)健全な水循環系の構築・良好な水環境の形成

 都市化の進展により、田畑が減少して地表面がコンクリートやアスファルト等に被覆されることにより雨水が浸透しないエリアの面積が増加する。そのため、雨水の地下浸透量が減少して湧水等が減少することから、都市内河川の平常時の自然流量は減少する傾向にある。こうした都市内河川の流量の減少とともに河川や水路の覆蓋化も進み、都市内では、人々に潤いとやすらぎをもたらす水辺が減少することとなった。 一方で、下水道の普及に伴い下水処理水は年々増加しており、全国の生活用水量の3/4に相当するまでに至っている。このように、都市内の水資源として大きなポテンシャルを有するようになった下水処理水については、河川流量の維持等による水環境の保全の観点からも有効活用が図られるべきであり、下水道の新たな役割として積極的に取り組むべき課題である。
 また、水質保全の面からみると、全国の処理人口普及率は60%に達したものの、特に湖沼や内湾等の閉鎖性水域では依然として水質環境基準の達成率が低く、富栄養化により赤潮やアオコなどの水質障害が発生する状況にある。こうした水域の水質環境基準達成のためには、原因となる汚濁物質の一層の削減が必要であり、富栄養化の原因物質である窒素やリンを除去する高度処理の実施や、また、大都市の多くが採用してきた合流式下水道において雨天時に下水が未処理のまま河川等に放流されてしまう越流水の問題については、一部貯留や処理、施設の分流化等の改善対策が必要である。さらに、宅地や道路、農地などの面源から発生するいわゆるノンポイント汚濁の全体に占める割合が高い場合には、これらを除去するための対策が必要となる。
 これまで、下水道の整備は、総合的な基本計画である流域別下水道整備総合計画(以下、「流総計画」という。)に基づいて推進されてきた。同計画は、下水道整備を推進し水質環境基準を達成するための広域的な計画として、公共用水域の水質改善に成果を上げてきたが、今後、これらの新たな課題にも対応しうるように、計画の体系を再構築する必要がある。
<制度化・具体化すべき事項>
@ 流総計画について、以下の措置を講ずべきである。
1) 都道府県は、流量が不足していること等により良好な河川環境が確保されていない河川について、河川管理者との連携のもとに、広域的な観点に立って、放流水を供給する下水処理場、放流位置、放流水量など水循環に関する事項を流総計画に定めることとする。
2) 都道府県は、水質環境基準の着実な達成へ向けて、高度処理の目標を明確にしてその推進を図るため、流総計画に放流水質及び水量に関する事項を定めることとする。
A 水質環境基準の達成のために、下水道の面整備や、貯留・分流化等の合流改善対策、高度処理を推進するとともに、ノンポイント汚濁対策等をあわせて実施する必要がある流域にあっては、下水道事業として実施することが必要な市街地のノンポイント汚濁対策等を流総計画に位置づけて計画的に推進すべきである。 
<検討を深めるべき事項>
 ○ 健全な水循環系の構築、良好な水環境の形成が21世紀の下水道の新たな役割であることを踏まえ、下水道法の目的の改正を検討すべきである。

 (2)都市全体で対応する雨水対策の推進

 都市化の進展により、都市域の浸透・保水・遊水能力が低下し、雨水流出が増大している。また、都市における資産・人口・経済活動の集中によって災害ポテンシャルも増加しており、下水道整備や河川改修等が進められているにもかかわらず、依然として都市において深刻な浸水被害が頻発する状況にある。さらに、地下空間などの浸水に脆弱な場所における被害も顕在化している。
 加えて、平成11年6月の福岡水害、本年9月の東海水害等により、都市の雨に対する弱点が改めて露呈する結果となり、次のような課題が明らかになった。
 まず、河川や下水道で想定している規模をはるかに超える降雨が最近増加しており、この結果、都市部の河川で計画高水位を超えて堤防が破堤したり、ポンプ施設等が浸水によって機能を停止するなどの事態が生じた。また、従来から浸水しやすいとされていた地域にも市街化の波が押し寄せ、一方で住民の水害に対する危機意識が希薄となっているため、水害発生時の対応が迅速に行われていない事例など、降雨状況や浸水状況等の住民への情報伝達の迅速化、避難・誘導の徹底等の課題も明らかになった。
 また、排水先の河川と下水道の適切な安全度バランスが計画上、事業実施上十分ではない事例や、ポンプ施設の運用ルール及び情報伝達に関する問題点も明らかとなった。
 これまで、都市における水害対策としては、下水道事業や河川事業において、雨水を貯留・浸透させて流出を抑制する対策も含めた施設整備が行われてきたが、今後は両事業の一層の緊密な連携を図りつつ浸水対策を講ずる必要がある。また、計画規模を上回る降雨への対応として、このような降雨に起因する水害が起きた場合を想定した諸対策を計画段階から考慮すべきである。さらに、住民にも水害発生の危険性を十分に周知するなど、多くの主体の参画・努力のもと、都市の雨に都市全体で対応することにより、水害の軽減に努める必要がある。
<制度化・具体化すべき事項>
@ 外水と内水の双方の影響等を勘案の上、下水道事業と河川事業が適切な安全度バランスとなるような計画づくり・事業実施を推進すべきである。
A 都市の雨に都市全体で対応するという観点から、都市施設とともに、民間宅地や事業場等における雨水の貯留・浸透施設(雨水流出抑制施設)の設置を積極的に推進すべきである。
 なお、ノンポイント汚濁負荷及び合流式下水道の雨天時越流水負荷の削減や健全な水循環系の構築といった環境保全の面からも、雨水流出抑制施設の活用が有効であり、調整池の有効利用など関連事業との連携を推進すべきである。
B 整備水準を超える降雨への対応策として、地下空間など水害に脆弱なエリアの存在に留意しつつ、浸水想定区域の周知など普段からの都市水害に関する情報提供、下水道施設管理用光ファイバー網等を活用した水害時における情報の伝達・共有の円滑化、排水ポンプの適切な運用のためのルールづくりとその内容の周知及び理解形成等のソフト対策を充実させるべきである。また、浸水時にもその機能を確保できるよう下水道施設の耐水化、防災性の向上等を促進すべきである。
<検討を深めるべき事項>
○ 都市の雨に都市全体で対応するためには、都市施設に加え都市の住民や民間事業者が流出抑制施設を設置するなど、都市における多様な主体が水害対策に参画することが重要である。そのため、都市における雨水対策の観点から適正な土地利用や建築のあり方の検討を深めるとともに、下水道計画と河川計画、流域対策を包含する総合的な計画の枠組みについて検討すべきである。

 (3)下水道における水系リスク管理の高度化

 下水道法では、下水道の排水区域内の土地の所有者等に対して下水道に接続する排水設備の設置が義務づけられており、下水道は排水区域内に存在するさまざまな事業場等から排出される下水を受け入れている。
 これらの事業場等で事故が発生し、異常な水質の下水が下水道に排除された場合でも、現行制度では、当該事業者に下水道管理者への通知義務がないため、下水道管理者は事故の発生すら把握することができず、適切な対応を講ずることが出来ないことが多い。このため、これらの事業場等において事故が発生した場合に事業者等及び下水道管理者が適切かつ迅速な対策を実施するように、措置を講ずる必要がある。
 また、流域下水道システムでは、終末処理場と幹線管きょを都道府県(流域下水道管理者)が管理し、枝線管きょを市町村(流域関連公共下水道管理者)が管理しており、下水道へ排出する事業場等への指導監督は市町村に一任されている。
 流域下水道管理者は、悪質な下水が流入した場合には流域関連公共下水道管理者に対して原因調査などの措置を求めることができるが、緊急時には迅速な対応ができず被害が拡大した事例もある。このため、事業場等から悪質下水が流域下水道システムに流入し、処理場において下水の処理を適正に行うことができなくなる等の緊急時においては、流域下水道管理者が流域関連公共下水道管理者に代わって自ら迅速に必要な措置を講じられるようにすることが必要である。
 さらに、事業活動のみならず日常生活においても、多種多様な化学物質が使用され、下水として下水道に流入しており、現状では規制対象になっていない物質であっても、下水道の機能に損傷を与えたり、環境中に排出されて人の健康や生態系に悪影響を及ぼすおそれが懸念されている。この問題についてはすでに「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(以下「PRTR法」という)に基づく措置が行われつつある。しかし、下水道に流入し様々な影響を及ぼす可能性のある化学物質等については、その影響や下水道内での挙動が解明されていない物質が大部分であり、下水中に含まれる物質の測定方法すら確立していない場合もあるなど、化学物質の下水道への流入や下水道からの排出の実態把握、排出抑制の方策等の検討が不十分な状況にある。
<制度化・具体化すべき事項>
@ 下水道に接続する事業場等における事故時の措置として、以下の措置を講ずべきである。
1) 事業場等において事故が発生し、そこから有害物質や油等が下水道に流出し、これにより下水道の施設の機能を妨げ、又は生活環境に係る被害を生じるおそれがあるときなどには、事業者等は直ちに応急措置を講ずるとともに、下水道管理者にその状況を届け出ることとする。
2) 下水道管理者は、事業者等に対し応急措置を講ずべきことを命じることができるものとする。
A 流域下水道において、悪質下水の流入により処理場の機能障害等の緊急事態が発生した場合に、迅速・的確な対応を可能とするため、流域下水道管理者(都道府県)が、緊急かつ必要な場合において、流域関連公共下水道管理者(市町村)に代わり自ら排水設備等への立ち入り検査、応急措置命令、改善命令、報告の徴収等の権限を行使できるよう措置を講ずべきである。
<検討を深めるべき事項>
○ 国と地方公共団体は協力して、水質汚濁防止法、PRTR法等の関連法規による措 置の充実の可能性も考慮しつつ、多様な化学物質等の下水道への流入や下水道からの排出について、実態把握、情報提供、排出抑制の方策等についてさらに検討すべきである。
3−2.現下の社会的課題への対応の強化
 下水道を取りまく社会情勢は時々刻々と変化しつつある。下水道に関連する主要な情勢の変化に対しては、下水道としても迅速かつ的確に対応できるよう、必要な制度的見直しが図られるべきである。
 こうしたなかで、現在、循環型社会の構築へ向けた取り組みが強く求められている。これまで、都市活動においては、多くのエネルギーや資源を消費する一方で、多くの汚濁負荷物質や廃棄物を排出してきた。こうした反省から、循環型社会の構築が要請されており、関連する法制度面の整備も進められている。下水道は処理水や汚泥の再利用、これらの持つエネルギーの利用などを通じて、循環型社会の構築に貢献しうるシステムであることから、こうした取り組み強化のための方策を検討する必要がある。
 また、IT革命の推進へ向けて国としての取り組みが進められているなかで、高度情報通信社会の構築へ向けて高度な情報通信インフラを総体的に整備していくことが必要であるとされている。特にその中心となる光ファイバーネットワークの構築に際しては下水道の管きょ空間の活用が有効であり、その活用の円滑化を図るために必要な措置を講ずるべきである。

 (1)循環型社会構築に向けた下水汚泥の減量化・リサイクルの推進

 社会経済活動の高度化によって廃棄物の排出量が増大する一方で、廃棄物の最終処分場の新規立地は一層困難になっており、全国の最終処分場の容量は逼迫した状況にある。こうしたなかで、循環型社会形成推進基本法や個別リサイクル法が制定され、循環型社会の構築や廃棄物の処理・処分の適正化は国家的な課題としてその取り組みが進められようとしている。
 現在、下水汚泥は全産業廃棄物の発生量の約17%を占めており、下水道の普及に伴いその発生量は年々増加している。平成11年9月のダイオキシン対策関係閣僚会議では、産業廃棄物の最終処分量を平成22年度には平成8年度の2分の1に削減することが決定されているが、下水汚泥については、中間処理による減量化を進め、さらに再生利用を推進することにより、最終処分量を現状程度の水準に抑制することが前提とされている。
 一方で、わが国の下水汚泥を受け入れている最終処分場については、その半数が数年以内には受け入れができなくなると見込まれており、また、処分場までの輸送距離が100kmを超える下水処理場が全体の約2割に上るなど、汚泥処分は次第に困難となっている。
 さらに、今後は下水道の普及の重点が整備の後れている中小市町村に移行し、ますます小規模な下水処理場から分散して下水汚泥が発生する見込みであり、効率的な汚泥処理が大きな課題となっている。
 下水汚泥は人々の日常生活から発生する下水の処理過程で発生するもので性状が均質であり、都道府県、市町村などの公的主体が管理する施設から恒常的に発生するものである。従って、複数の下水道管理者が広域的な調整に基づいて、計画的に下水汚泥処理の広域化・集約化を進めることが、効率的な減量化・有効利用を行う上で必要である。
<制度化・具体化すべき事項>
○ 下水汚泥の減量化を計画的に推進するとともに、汚泥処理に関する事業の広域化・集約化を促進するために、以下の措置を講ずべきである。
1) 国は、下水汚泥の最終処分場の見通しや下水汚泥処理の経済性等を勘案して、下水汚泥の減量化の目標その他下水汚泥の適正な処理に関する基本方針を定めることとする。
2) 都道府県は、上記の基本方針に即して、関係市町村の意見を聴取した上で、下 水汚泥の減量化・有効利用に関する計画を策定することとする。下水道管理者は当該計画に即して事業計画を定めることとする。
<検討を深めるべき事項>
 ○ 下水道は、汚水の収集を通じて都市の物質循環に大きな役割を担っていることを踏まえ、下水道による都市全体の代謝システムの効率化と環境負荷の低減を図るための方策について検討すべきである。 
 (2)管きょネットワークを活用した高度情報化
 高度情報通信社会の形成に資するため、平成8年に下水道法が改正され、下水道の管理上著しい支障を及ぼすおそれのない範囲で、下水道管理者は、国、地方公共団体、第一種電気通信事業者等が下水道施設に光ファイバー等の電線などを設置することを認めることができることとされたところである。
 その後、高度情報化への社会的要請はさらに高まりを見せており、現在、IT革命といわれる潮流のなかで、高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(いわゆる「IT基本法」)が成立し、高速な情報通信を可能とするファイバー・トゥ・ザ・ホーム(FTTH)の実現等、情報通信インフラの構築が国家的にも重要な課題となっている。下水道管きょ空間は、オフィスビルや各家庭と直結して都市内を網目状にカバーする空間であり、光ファイバーの敷設スペースとしての活用により情報通信インフラ構築に貢献することが可能である。
 また、下水道管理者自身も、ポンプ場や下水処理場等の遠隔監視・制御、降雨情報、浸水情報等の伝達、事業場・家庭等の排水水質、水量把握など、管理の高度化、効率化を目的として、下水道管理用光ファイバーの整備を進めている。
 このように下水道管きょ空間の活用が次第に進められつつあるが、下水道管きょは活用できる空間が限定されており、特に末端管きょでは管径が150〜200mm程度であり、複数の光ファイバーケーブルの敷設は困難な状況にある。また、敷設される設備は、管きょの清掃など日常の維持管理に支障のない材質、構造であることが求められる。
 こうした制約を考慮し、下水道事業の公共性・公益性にも配慮しつつ、限定された管きょ空間を効率的に活用することにより、下水道管理の高度化や民間の電気通信事業者による情報通信インフラ構築の支援を図る必要がある。
<制度化・具体化すべき事項>
@ 国は、第一種電気通信事業者等による下水道管きょ空間の活用の円滑化を早急に図るため、下水道管理者による光ファイバー等が敷設可能な管きょに関する情報の公開、管きょ空間の使用の許可基準や許可手続きのあり方、複数の民間事業者が競合して管きょ空間の使用を希望した場合の利用方法のあり方等に関する標準的なルールをガイドラインとして示すべきである。
A 活用できるスペースが限定されている下水道管きょ空間を計画的かつ効率的に活用するため、下水道管理者は、下水道管理用光ファイバーの整備等に関する基本計画を策定し、管理用光ファイバーの整備による管理の高度化を進めるとともに、下水道管理に支障がない範囲で第一種電気通信事業者等による下水道管きょ空間の活用の円滑化が図られるよう努めるべきである。

3−3.下水道の整備と管理における効率性・透明性の確保 

 わが国の下水道整備の進捗に伴い、例えば管きょの総延長も30万kmを越えるなど、その施設のストックは膨大なものとなっていることから、今後はその維持管理の効率化・合理化に取り組むことが重要である。特に地方公共団体の厳しい財政状況に鑑みても、下水道の維持管理コストの縮減は重要な課題である。
 また、現在、公共事業についてその効率性や計画立案の透明性に対する厳しい意見等もみられるなかで、下水道事業についても、実施に際しては事業の必要性、事業内容とその効果、整備や管理に要する費用など関連する情報を公開し、事業に関するアカウンタビリティ(説明責任)を向上させることにより、住民等の関係者の理解を求めることが肝要である。
 (1)民間活力の導入等による経営の効率化
 下水道整備が進み、管理すべき施設ストックが増大するにつれて、その維持管理費は着実に増加しており、今後、普及率が向上するにつれて維持管理費はさらに増加していくと予想される。今後は、下水道の供用開始都市の大半を中小市町村が占めることとなるが、こうした都市では、一般に財政面、組織面の基盤が弱いケースが多いうえに、下水道の経常的な維持管理コストも全市町村の平均と比較すると2倍近くに達している。こうした状況のなかで、維持管理の質を確保しつつそのコストを縮減し、効率的に維持管理を行うことは、地方公共団体の厳しい財政状況に鑑みても、現下の緊急課題の一つである。
 現在、維持管理コストの主要部分を占める処理場の維持管理は、概ね9割近くの部分が民間に委託されているが、わが国では決められた人員の配置等を求めるなど、あらかじめ定められた仕様に基づき民間への委託がなされている傾向がある。この場合、仕様の遵守を求められる結果、経費削減のインセンティブが民間に働かなかったり、委託者・受託者間の責任分担があいまいであることから民間からの業務改善に関する提案の結果が採用されにくかったり、採用されてもその効果が民間に還元されなかったりするケースも多く、業務の効率化が進みにくい傾向がある。
 こうした課題に対応し、業務委託を効率化するためには、民間事業者に対して施設管理に一定の性能(パフォーマンス)の確保を条件として課しつつ、運転方法等の詳細については民間に任せるいわゆる性能発注を行うことが有効な方策のひとつであると考えられる。
 民間委託の具体的な方式については、基本的には委託者である地方公共団体と受託者である民間事業者との間の契約により決定されるべきものである。しかしながら、両当事者においてこのような民間委託方式に関するノウハウの蓄積が少ない現在の状況のもとでは、こうした方式の円滑な導入のために必要な措置を講じ、地方公共団体が維持管理コストを縮減し、効率的に維持管理を行う観点から、地方公共団体が採りうる選択肢の幅を広げるべきである。また、この際、広範囲の業務を複数年度にわたり委託することがより効率的であるが、この場合、契約締結の際の競争性を担保し、委託期間中に委託者が委託業務の遂行について監視を行う必要があり、このため委託者を支援する措置を併せて講ずる必要がある。

 

<制度化・具体化すべき事項>
 ○ 性能発注方式の円滑な導入のため、以下の措置を講ずべきである。
  1) 国は、民間事業者の技術力を含めた総合能力を的確に評価する発注方法の導入のあり方、既存施設の機能に関する情報の提供方法、委託者による受託者の適切な監 視・評価の方法、両当事者間の明確な責任分担のあり方等について具体的な方向性、委託をする際の留意事項等を内容とするガイドラインを示す。
  2) 委託者のための専門的技術者による支援体制の整備、人材提供のデータバンクの 整備等の支援方策を推進する。
<検討を深めるべき事項>
○ 業務範囲がより広範な民間委託等、民間活力の活用のあり方について更に検討すべきである。なお、この場合、委託者の監視のあり方、受託者の業務の執行の適正さの担保を図る枠組み等について検討がなされることが必要である。

(2)下水道の多様な役割の明確化のためのアカウンタビリティの向上

 下水道は、汚水の収集・処理、浸水の防除など、生活環境を保全・改善し、安全な暮らしを確保するなど住民の生活に密接に関わる基盤施設であるが、ともすれば下水道施設自体が住民から見えにくい施設であることなどから、下水道事業の意義やメリットが理解されにくい傾向がある。その一方で、下水道施設の整備や管理には多額の費用を要することから、下水道管理者は、事業の推進や管理運営に当たっては、利用者である住民や事業者に対して事業の目的や内容、下水道による効用、費用負担等について十分な理解と協力が得られるように努めることが不可欠である。これまでも、排水区域の設定等についての意見聴取や供用後の接続、受益者負担金・使用料の徴収などの機会をとらえた関係者への説明等を通じ、一定のアカウンタビリティの向上が図られてきたところであるが、昨今の情報公開の進展といった社会情勢等を踏まえると、一層の関係者の理解及び認識の共通化のもとで事業を進めることが必要である。
 特に、近年、下水道が果たしうる役割は、下水処理水による健全な水循環系の構築、下水汚泥の有効利用など多様化しており、こうした新しい役割に対応した事業を推進する際には、循環型社会の形成に貢献する事業であることなどについて、住民等の関係者の理解を十分に得ることが望まれる。
 国においては、公共事業についてアカウンタビリティ向上施策の一環として、新規事業採択時評価、再評価及び事後評価の導入等の取り組みが進められており、下水道事業についても事業評価の対象とされているところである。下水道法では、地方公共団体が下水道事業を実施する場合に、下水排除区域の公示等、ある程度の情報公開を行うこととなっているが、今後は事業の全体像を広く公表し、適時適切に意見を求めるという方向に制度を見直す必要がある。
<制度化・具体化すべき事項>
@ 下水道事業の目的や施設整備の具体的な姿をわかりやすく住民等に示し、アカウンタビリティの向上を図るため、以下の措置を講ずべきである。
1) 事業計画には、放流水の放流の位置ごとの水量及び水質に関する事項を定めるなど、内容の充実を図る。また、事業計画を定める場合は、その趣旨、目的等を明らかにした上で、当該事業計画案について住民等からの意見聴取を行うこととする。
2) 流総計画又は事業計画を定めた場合には、その計画内容を遅滞なく公表することとする。また、計画を変更した場合も同様とする。
 なお、下水道整備に関する総合的な基本計画である流総計画を定める際には、計画案についてのパブリックコメントを実施することが望ましい。
A 下水道管理者は、下水道事業の各段階(計画、建設・改築、維持管理)において、事業の内容及び必要性、事業に要する費用、使用料の根拠等、下水道事業に係る情報をより積極的に分かりやすく公表するよう努めるべきである。特に、下水道に関する計画又はその案を公表する場合には、その内容が理解されるよう分かり易い表現に配慮すべきである。
 なお、国及び地方公共団体は協力して、下水道に関する計画又はその案を分かりやすく公表するための、ガイドラインを示すべきである。
4.引き続き取り組むべき課題
 本報告では、下水道法をはじめとする制度面を中心に、新たな役割やニーズへの対応を図るために解決すべき7つの課題について見直しの方向を提示した。しかしながら、これらの各課題を解決するためには、これまで示してきた事項に加えて、以下に示すような検討事項があり、これらについて引き続き検討を深めていくことが必要である。
 まず、健全な水循環系、良好な水環境の実現のためには、流域を一単位としてとらえる流域管理の視点からの施策が実現されるべきである。本報告ではその取り組みの一環として流総計画の再構築について提案したところであるが、今後は引き続き関連施策との連携を図りつつ、流域の利害関係者が一体となった取り組みを推進するための具体的な方策について検討を深め、国としてこれを総合的かつ計画的に推進するための諸制度の確立を目指すべきである。
 また、今後見込まれる維持管理費の増大に伴う費用負担のあり方や、改築更新需要の増大に伴う財源調達のあり方等については、今後の下水道事業全体における費用負担のあり方の一環として検討を深めることが求められる。さらに、高度処理をはじめ下水処理水の河川等への供給やノンポイント汚濁対策等の積極的な実施が求められるなかで、これらの事業のなかには必ずしも原因者を特定できない性格のものが含まれていることを踏まえ、今後はその費用負担について、関係者の合意が十分に得られるような考え方を確立する必要がある。
 今回検討した各課題については、関連する技術的事項の検討や技術開発を進めることも重要である。具体的な例としては、効率的なノンポイント汚濁負荷の削減技術、水系リスク物質の削減及びモニタリングの技術、下水道管きょ内への効率的なケーブル敷設技術等があげられる。これらの技術の確立は、各課題の本質的な解決にとって必要不可欠なものであり、国、地方公共団体、関連研究機関、民間等が適切な役割分担のもとに関連する技術について調査研究を進めることが必要である。
 また国際社会を見渡すと、発展途上国における排水処理の遅れによる生活環境の悪化や水質汚濁の進行、さらに地球全体としても淡水資源の枯渇の懸念等、各国の協調した取り組みが求められる課題が存在している。わが国は多くの資源や食糧を輸入に頼っており、これらの生産・加工の過程で国外の水資源が消費されるという側面もあり、国際社会におけるわが国の責任の重大さに鑑み、こうした課題に対しても積極的な取り組みを行う必要がある。
 さらに、水や廃棄物等に関連する施策は、関係省庁や関係機関も多岐にわたっていることから、総合的な施策の取り組みが必要である。
 これまでにも、関係部局と連携して汚水処理施設の整備区域等に係る総合的な構想を定める「都道府県構想」の策定や、下水道と他の汚水処理施設の共同利用施設の整備を図る「汚水処理施設共同整備事業(MICS)」の実施など、関係行政分野との連携が進められてきた。しかし、従来の制度や組織の枠を超えた取り組みという面では未だ十分とは言いがたい。水循環系に関しては関係6省庁による「健全な水循環系構築に向けて」中間取りまとめが行われるなど、省庁横断的な取り組みはようやく緒についたところである。今後は、下水道が水循環系の健全化や環境保全等に果たす役割がさらに拡大することに伴い、これと関連する施策も、例えば気候変動・異常気象など地球環境問題への対応も含めさらに広範となることから、関係する省庁や機関との間で、より総合的な取り組みについても検討を深める必要がある。
 なお、今回、本報告において提案した各種の施策を進める際には、下水道の事業主体である地方公共団体の自主性の尊重に留意すべきである。
 また、下水道整備が後れている中小市町村の普及拡大へ向けては、下水道財政のあり方、技術的支援の方策、建設・維持管理に係るコスト縮減など、解決すべき重要な課題が残されている。今後、これらについては、下水道に関する中長期的な整備目標のあり方などと合わせて、事業推進のための課題として引き続き検討されるべきである。
 本報告において提示した下水道制度等の見直しの方向性は、21世紀へ向けた下水道の課題を解決するための第一歩であると考えるが、これとあわせて上記の検討課題の解決が図られることにより、21世紀における良好な生活環境の保全、健全な水循環系の構築、良好な水環境の保全、持続可能な都市の発展等が実現されることを願うものである。
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