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下水道事業におけるコンピュータ西暦2000年問題
危機管理計画策定指針

1.危機管理計画の目的と策定の必要性
 コンピュータ西暦2000年問題(以下「2000年問題」という。)についての 基本的な考え方については、平成11年4月28日付下水道部長通達(以下「部長通達」という。) において示したとおりであり、危機管理計画については、

  1. 2000年問題を有するシステム及び機器について 全て修正等を行うことを目標としても、 見落としあるいは修正ミスが残る可能性は否定できないこと
  2. 2000年問題については、下水道事業等のみに限られたものではなく、 下水道を取り巻く様々な部門においても、同様の問題を抱えている可能性があり、 下水道事業がこれら外部の影響を受けることも想定する必要があること

等の理由から、コンピュータを使用する事業のみではなく、 全ての事業においてその策定が必要とされるものである。
 下水道については、水道等他の社会的インフラと同様、社会活動を支える基幹的施設であり、 その機能が停止することは、避けなくてはならない。 万一、下水の排除機能が停止すると、浸水や汚水の滞留等の問題が発生する可能性があり、 また、処理場の機能が停止すると、未処理下水の河川等への流出による下流への悪影響、 汚泥焼却炉からの未処理の排煙等の発生、処理場内の可燃物、危険物管理への支障等、 国民生活に多大なる影響が生じる可能性がある。
 2000年問題の特性及びこのような下水の排除機能 又は処理場の機能が停止した際の国民生活の影響の大きさに鑑みると、 万一問題が発生した際においても、いかに被害を最小限に食い止め、 下水処理場の機能を継続させることができるか十分な検討を行い事前に計画を策定したうえで、 万全の備えを講じることが必要である。
 下水道事業等においては従来より地震等の災害時等に備えた危機管理計画が 策定されてきたところであり、また、地方公共団体全体に対する危機管理計画の手引きについては、 自治省により、「地方公共団体のための危機管理計画策定の手引(以下「危機管理計画策定の手引」という。)」 が作成され、平成11年4月30日付けで都道府県、政令指定都市に通知がなされ、 すべての地方公共団体に配布することとされたところである。
 本指針は、「危機管理計画策定の手引」等を参考にして 個々の地方公共団体が危機管理計画を策定することを前提としたうえで、 その際、下水道管理者としてどのような点に留意すべきかについて示したものである。 したがって、各下水道管理者において危機管理計画を策定する際には、 既に策定された災害時等に備えた危機管理計画との整合性を図るとともに、 「危機管理計画策定の手引」等、地方公共団体全体の危機管理計画策定について示されたものを併せて参考とされたい。
2.危機管理計画策定の手順
  1. 危機管理計画策定前に行うべきこと

    1)調査対象のリスト化及び点検
    点検対象のリスト化を図り、2000年問題を有するシステム等を洗い出す。
    2)メーカー等への確認
    自ら問題の所在を確認できない場合は機器 又はプログラム作成メーカー等へ問い合わせをするとともに、 メーカー等の責任者及び担当者を把握しておくこと。
    3)影響の有無の把握
    全てのコンピュータシステム、マイコンチップ組込機器等について、 メーカー等への確認結果をもとに、万一2000年問題が発生した場合のコンピュータの停止、 誤動作の可能性及びその影響を想定すること。 その場合、最低限、処理場の機能の停止につながるもの、つながらないものに分類すること。
    4)プログラムの修正及び機器等の交換等
    2000年問題を有することが明らかとなり、 処理場の機能の停止につながるなど事業に与える影響が大きなものから プログラムの修正及び機器の交換を進めること。 なお、全作業は原則として1999年6月末までに完了のこと。
    5)模擬テストの実施
    コンピュータ制御されるシステム、機器等のうち問題が発生した場合に 処理場の機能の停止につながるものその他の重要なものについて、 問題が発生すると予想される日付等を実際に入力し、これまでの対応の結果を確認すること。 この際、コンピュータシステムをオフラインとする等実運転に支障のないようにすること。 模擬テストで問題が発生した場合には改めて問題の洗い出しに戻り必要な対応を行うこと。
     なお、開発を外注したシステム等については、 メーカーの模擬テストに可能な限り内容を理解できる職員が立ち会うこと。


     (参考)注意すべき日付の例
    1999年 9月 9日  (この日付をデータの終了もしくは無限として扱っている場合)
    1999年12月31日  (1999年の最終日)
    2000年 1月 1日
    2000年 2月28日  (閏年(2月29日)の1日前)
    2000年 2月29日  (閏年)
    2000年 3月 1日  (閏年(2月29日)の1日後)
    2000年10月10日  (はじめて8桁となる日(8桁で日付管理をしている場合))
    2000年12月31日  (2000年の最終日、閏年の366日目)
    2001年 2月28日  (閏年(2月29日)の365日後)
  2. 危機管理計画の策定のために行うべきこと

    1)危機管理計画の検討及び計画実施体制の整備
    危機管理計画の検討及び実施については、かなりの作業量に及び、点検、 修正等の作業と同時並行で行う必要もあることから、U.1.に示した点検、 修正等の作業とは別の職員により構成される体制により行われるべきこと。 その他についてはV.参照のこと。
    2)外部からのリスクの洗い出し
    電力、水道、通信、自家発電施設の燃料、塩素剤、 凝集剤等外部からの製品及びサービスの供給そのものの2000年問題の有無、 対応状況について把握しリストを作成すること。
     また、下水道に接続された下水道の水質に大きな影響を与えるような大規模な工場、 事業場等における除害施設等についても、 これらにおいて2000年問題の発生の可能性があることを想定しておくこと。
    3)処理場の機能に支障が生じた場合の外部への影響
    当該事業の処理場の機能に支障が生じた場合の影響を把握するため、 再生水の供給停止、処理場の公共用水域への排水口の下流部における水道の取水口等社会的・ 経済的に影響が生じうる施設及び当該河川管理者等のリストを作成し、連絡体制を整備すること。
    4)危機発生リスクシナリオの想定
    2000年問題によりどのような問題が起こりうるかのリスクシナリオを想定し、 当該問題が具体的な業務に与える影響及びその範囲を明確にすること。
    5)危機への対応の目標の設定
    2000年問題による問題の発生に対応した目標を明確に具体的に定めること。
    6)危機発生前後の対応
    影響を考慮した復旧の優先順位付け、代替措置、連絡体制等につき定めるものとすること。
3.危機管理計画の検討及び計画実施体制の構築
 危機管理計画への対応の検討及び実施の体制の整備に当たっては、 担当部署及び責任体制を明確化すること。 この場合、責任者には、事業の実施に当たって十分な決定能力を持つものを当てるとともに、 明確な検討実施スケジュールをたてること。 なお、下水道事業における統一的な計画策定時期の目標を1999年9月末とする。
 なお、前掲したとおり、危機管理計画の検討及び実施については、U.1に示した点検、 修正等の作業とは別の職員により構成される体制により行われるべきこと。
 また、特に中小市町村については、 危機管理計画の実施につき必ずしも十分な体制を構築することが難しい場合もありうることから、 必要に応じ周辺市町村等との連携又は相互支援体制について整備を図ること。
4.リスクシナリオの想定
 2000年問題により起こりうるリスクシナリオは、 具体的に惹起しうる問題に着目すると下水道の場合概ね以下の3つに整理されると考えられる。
 1)雨水等の排除機能の停止(ポンプ施設の揚水機能等の停止)
 2)焼却炉の異常停止
(安全装置の不動作による爆発の危険性、 焼却炉の誘引ファンの停止等に伴う悪臭・ガスの発生等)
 3)水処理の停止
 これら3つのリスクシナリオについて、 発生した際の影響度、障害及び被害について想定を行うこと。
 この場合、リスクの内容及びそれぞれについての留意事項は次のとおり。

  リスクの内容 留 意 事 項
事業内部の
リスク発生の場合
コンピュータシステム等における2000年問題の発生の可能性
(2000年1月1日以外の危険日も考慮すること。)
影響の重要度についてランク分けを行うこと。
外部の
リスク発生の場合
・外部からの製品及びサービス(電力、通信等を含む。)における 2000年問題の発生の可能性

・下水道に接続された大規模事業等の除害施設等における 2000年問題の発生の可能性
影響の重要度
(処理場の機能の停止に至るか否か、
 一時的なものか長期的なものか等)
についてランク分けを行うこと。
5.危機発生時の対応の目標
 通常災害は事故等発生箇所の予想が事前には困難であるが、 2000年問題による問題の発生箇所は事前にある程度予想できるものである。 このため、問題発生の可能性について十分に整理し、万一2000年問題による障害が発生した際、 迅速な対応により処理場の機能の停止を避けることを目標とすること。
6.危機発生前後の対応
  1. 危機発生前の対応 事前の準備について

    1)復旧に至るまでの代替措置等の確認
     万一の障害発生に備え、当該施設が停止した場合、 処理場の機能停止に至る可能性のある施設等について手動運転を行うことが可能かどうかを確認し、 必要な場合には施設、設備機器等を手動運転が可能なように修正し、 人員配置等も考慮しつつ手動運転のための訓練、 手動運転マニュアルの作成等も行うこと。
     また、外部からの製品及びサービスの提供が2000年問題により停止した場合を想定し、 自家発電施設の燃料、冷却水、塩素剤等の確保について事前に、 安全な入手の手段の確保等必要な対策を図ること。
     このほか、危険日において、業務連絡及び設備機器等の遠隔操作に関連して、 通信の途絶、回線混雑による不通等の場合も想定し、 緊急時の連絡体制及び通信手段の確保並びに手動運転にあたっての 施設間の連携方法についても検討を行っておくこと。
     なお、停電対策マニュアル等既存の危機管理計画等がある場合には、 これらを十分参照したうえで対応策を検討すべきものであること。

    2)関係機関を含む復旧体制、連絡網及び連絡手順
     障害発生時の復旧体制、連絡網及び連絡手順 (以下「復旧体制等」という。)をリスト化し、整備しておくこと。
     これら復旧体制等は、メーカー等 (処理施設の維持管理について民間の維持管理業者に委託している場合は、 これら民間の維持管理業者を含む。)との連絡体制 等も含めたうえでその整備を図るものとすること。 なお、この際、メーカー等と事前に協議を行い、調整を図っておくこと。
     また、U.2.3)に示すとおり、河川管理者、水道事業者、 再生水事業者等処理場の機能に支障が生じた場合の 外部の影響先との連絡体制についても整備を図ること。
     なお、これら復旧体制等については、 実質的な判断が行える者を中心に連絡網等の整備をすべきものであること。

    3)影響を考慮した復旧の優先順位付け
     2000年問題が発生した場合の機器等の修正に係る優先順位についても あらかじめ検討の上、計画を策定しておくこと。
     なお、以上の内容につき、危機発生前後の対応マニュアルとして文書化し、 Zに示すとおり、職員に対するマニュアル内容の周知徹底、 これに従った実地訓練等を行うものとする。
  2. 危険日直前の対応 危険日直前からの施設の運転について
     万一の障害発生に備え、Y.1.で示した体制のもと、 主要施設に人員を配置し越年監視の実施等を行う。
  3. 危機発生以後の対応 事業の継続及び復旧策
     危機発生後、事前に定めた復旧の優先順位に従い、 代替措置を講じること等により早急に機能の復旧を図ること。
     危険日移行直後から障害が生じない場合でも、 コンピュータシステム等の計算及び処理結果について優先度の高いものから逐次調査し、 正常動作が行われているか確認を行うこと。 問題が発見された場合は速やかに優先度の高いものから修正等の作業に入ること。
7.危機管理計画策定後の対応
  1. 危機管理計画に基づいた実地訓練の実施
     危機管理計画の作成後は、計画の実効性を高めるため、 2000年問題発生を想定した実地訓練を実施することが重要であることから、 遅くとも、危機管理計画策定後、1999年12月の初旬までに実地訓練を実施のこと。
  2. 危機管理計画の見直し
     上記1の実地訓練等の結果を踏まえ、 1999年12月までに適宜危機管理計画の見直しを行うことが必要である。 実地訓練等により浮かびあがった問題点については、 再度対策を検討の上、計画を修正することで危機管理計画の実効性を高めること。
  3. 教育の必要性
     教育は危機管理計画等を使って、職員に危機管理計画の目的や概要、自分の役割を認識してもらう活動であり、 説明会を開いたり、電子媒体で周知を行うべきこと。
     これらを行うことにより、問題発生の際に危機管理計画が確実に機能するよう努めること。
(参 考)
  1.危機管理計画例
  2.チェックシート
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