6.都市計画の決定システムの合理化等
(1)都市計画決定の際の理由書の縦覧
都市計画の透明性を向上させるため、都市計画図書を縦覧するだけではなく、都市計画を定める理由(必要性)を記載した書面の縦覧をすることも必要である。これにより、都市計画決定権者としての説明責任が果たされ、住民との合意形成も一層円滑に進むことが期待される。
(2)都市計画に係る基準の充実
都市計画の透明性向上の観点から、地方公共団体が都市計画決定を行う際の法令に基づく基準(法第13条)について、地方公共団体の自主性を阻害しない範囲で充実を図る必要がある。当該基準においては、個々の都市計画ごとに制度運用上必要不可欠な基本的考え方を示すだけでなく、高齢社会に対応したまちづくりのあり方、中心市街地の活性化等その時々に全国共通に存在する社会的課題と当該課題への都市計画手法による対応などについての国としての考え方についても、地方公共団体の参考となるよう、積極的に提供することが望ましい。
(3)都市計画の案の作成に係る都道府県と市町村の役割分担の明確化
現在、都道府県の定める都市計画については、通達において、原則として市町村がその原案を作成することとされている。しかし、地方分権一括法によって、都市計画決定事務が都道府県、市町村それぞれの自治事務となることを踏まえ、都道府県の都市計画について、より的確に地域の実情を反映しつつ、円滑な決定が可能となるよう、案の作成に係る都道府県、市町村の役割分担を法令上明確化することが必要である。
具体的には、都道府県は、都市計画の案を作成しようとする場合には、関係市町村に対し必要な資料の提供を求めることができることとし、一方、市町村は、都道府県に対し、当該都道府県の決定に係る都市計画の案を申し出ることができることとすることが適当である。
(4)都市計画決定手続と条例との関係の明確化
都市計画決定手続と条例の関係については、既に平成10年1月の本審議会第一次答申において、
・「都市計画が国民の財産権に対する制約を課すことから、その決定手続については、権利保護のための共通の枠組みを全国を通じて設ける必要」があり、「住民参加や審議会審査の手続」は「条例によって簡素化することは認められない。」
・「一方、現行法においても、都市計画決定権者の判断により必要に応じて公聴会の開催等住民の意見反映措置を行うことができる」とされており、「手続をより具体化したり加重的に行うことについて条例を制定することはあり得るものである。」
との考え方を示したところであるが、都市計画の透明性の向上の観点から、都市計画制度体系の見直しに併せ、この考え方を法律上明確にすることが適切である。具体的には、都市計画手続について、都道府県又は市町村が、法律の規定に違反しない限りにおいて、条例で、必要な規定を定めることができる旨を明記すべきである。
(5)地区計画等の案に係る条例に基づく地権者等からの申出(V3(3)再掲)
地区計画等の案の作成手続に係る市町村の条例(法第16条第2項)には、地権者等の利害関係者から市町村に対し、地区計画等の案を作成すべき旨の申し出の要件、時期等を規定できることとし、市町村が、地権者等の意見を早い段階から吸い上げて、より地域の実情を的確に反映した地区計画等の決定を可能とすることが必要である。
(6)都市計画の執行体制の充実と専門家の有効な活用のための仕組みの構築
都市計画における市町村の役割の拡大に伴い、組織の充実、専門職員の確保など、都市計画に係る執行体制の充実を図る必要がある。また、執行体制が必ずしも十分でない市町村でも、適切に都市計画に係る事務を遂行できるよう、都道府県と市町村の協力体制の構築、国からの必要な情報提供に加え、都市計画の専門家の知識や経験を有効に活用するための仕組みの構築が必要である。
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