都市計画中央審議会基本政策部会
計 画 制 度 小 委 員 会
「今後の都市政策はいかにあるべきか」第二次答申(概要)
〔経済社会の変化を踏まえた新たな都市計画制度のあり方について〕
T.都市計画制度の見直しの背景 |
○現行都市計画法の制定後30年を経過し、少子高齢化、モータリゼーションの進展等、都市をめぐる社会経済環境は大きく変化。
〜「安定・成熟した都市型社会」の到来〜
○地方公共団体が主体となって、地域特性に応じた都市の整備と環境の保全に取り組み得るよう、都市計画制度を見直し、再構成する必要。
U.現行都市計画制度の課題 |
1.目指すべき都市像の明確化
2.都市計画の根幹をなす線引き制度及びそれを支える開発許可制度の都市型社会に対応した見直し
3.既成市街地の土地の有効高度利用
4.自然的環境や景観の保全・創出など質の高い都市環境の確保
5.都市計画区域外における開発行為及び建築行為の増加への対応
6.都市計画決定における透明性及び地域の実情に応じた柔軟性の確保
V.具体的に講ずべき施策 |
1.都市計画のマスタープランの充実
(1)「整備、開発又は保全の方針」の拡充
○線引き都市計画区域のみに定められていた都市計画マスタープラン(整備、開発又は保全の方針)を拡充し、全ての都市計画区域で策定。
(2)市町村マスタープランの策定促進
○「市町村の都市計画に関する基本的方針」(市町村マスタープラン)は、都市計画マスタープランに即して市町村が定めるものとして、基本的な枠組みを維持。
2.線引き制度及び開発許可制度の地域の実情に応じた柔軟性の確保
(1)都道府県の判断による線引き制度の適用
○都市計画区域を市街化区域及び市街化調整区域に区分(線引き)するか否かを、地域の実情に応じ都道府県が判断。
(2)市街化調整区域内における開発許可の立地基準の合理化
○市街化調整区域において、以下の開発行為を可能に。
@市街化区域に隣接・近接し、相当数の建築物が連たんした地域における一定用途の開発行為
A周辺における市街化を促進するおそれがなく、かつ、市街化区域内において行うことが困難又は著しく不適当な開発行為としてあらかじめ区域、目的又は予定建築物等の用途が定められたもの
○線引き時点で既に宅地であった土地における建築行為についても、@と同様に取り扱う。
(3)開発許可の技術基準への地域性の反映
○条例による基準の上乗せ又は緩和を可能に。
○条例による最低敷地規模基準の追加を可能に。
3.既成市街地再整備のための新たな制度の導入
(1)都市施設の立体的整備
○道路等の都市施設について、当該施設を整備する立体的な範囲(空間又は地下)を都市計画決定できることとし、決定された施設の区域内の建築制限を緩和。
(2)複数建築物の容積率に係る特例の創設
○商業地域内で、基盤施設が十分に整備されている等一定の要件を満たし、区域全体の土地の高度利用を図る必要性が高い区域を都市計画で定め、建築基準法と連動して、市街地環境の維持向上を図りつつ、未利用容積を他の敷地で有効活用することを可能に。
(3)地区計画制度の改善
○用途地域の全域で地区計画の策定を許容する等策定対象地域を拡大。
○市町村の条例で、地権者等からの地区計画等の案の申し出を可能に。
4.自然的環境や景観など都市環境の保全のための制度の充実
(1)風致地区による地域の実情に応じたきめ細かな規制
○小規模な風致地区について、都市計画の決定権限及び条例の制定権限を都道府県から市町村に委譲。
(2)非線引き都市計画区域のうち用途地域が定められていない区域における特定の用途の建築物の規制の導入
○地域の実情に応じ、良好な環境の形成又は保持の観点から望ましくない用途の建築を制限できる「特定用途制限地域」(仮称)を創設。
(3)用途地域が定められていない区域における容積率、建ぺい率規制の見直し
○容積率400%、建ぺい率70%を原則とする仕組みを見直し、それぞれ50%、30%までの範囲で、土地利用の状況に応じて指定。
(4)廃棄物の処理施設や処分場の積極的な都市計画決定
○公益性の高い廃棄物処理施設を積極的に都市計画決定。産業廃棄物処理施設の決定主体を都道府県に変更。
(5)自然的環境や景観など都市環境の保全のための総合的取組
○緑地等の保全に関する諸制度の活用等、関係施策を総合的に運用。
5.都市計画区域外における開発行為及び建築行為に対する規制の創設
(1)準都市計画区域制度(仮称)の創設
○既存集落周辺や、幹線道路の沿道等、交通渋滞、用途混在等の問題が発生している区域を、市町村が「準都市計画区域」(仮称)に指定し、用途地域、風致地区等の地域地区及び地区計画を定められる仕組みを創設。同区域内では、開発許可及び建築基準法の集団規定を適用。
(2)都市計画区域及び準都市計画区域外における開発許可制度の適用
○都市計画区域及び準都市計画区域外の一定規模以上の開発行為について、新たに開発許可制度を適用。
6.都市計画の決定システムの合理化等
(1)都市計画決定の際の理由書の縦覧
○都市計画の透明性を向上させるため、都市計画図書を縦覧する際に、都市計画を定める理由(必要性)を記載した書面を併せて縦覧。
(2)都市計画に係る基準の充実
○地方公共団体の自主性を阻害しない範囲で基準を充実。中心市街地の活性化等全国共通の課題への対応についても、国の考え方を提供。
(3)都市計画の案の作成に係る都道府県と市町村の役割分担の明確化
○都道府県の都市計画の案の作成について、関係市町村に対して必要な資料の提供を求めること、市町村から案の申し出ができることを規定。
(4)都市計画決定手続と条例との関係の明確化
○法律の規定に違反しない限り、条例で、必要な規定を定めることができる旨を明記。
(5)地区計画等の案に係る条例に基づく地権者等からの申出(再掲)
(6)都市計画の執行体制の充実と専門家の有効な活用のための仕組みの構築
○都市計画の執行体制の充実、都道府県と市町村の協力体制の構築、国からの情報提供及び都市計画の専門家の有効活用の仕組みが必要。
W.引き続き取り組むべき課題 |
(1)国土計画、地方計画と都市計画との連携のあり方
(2)土地区画整理事業等の面的な整備事業と都市計画制度とを、より効果的に連動させるための方策のあり方
(3)地区計画制度をより汎用性の高いものとするための制度改善
(4)都市計画及び都市計画事業の円滑な実施を図るための財源措置や税制の充実等
X.おわりに |
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