21世紀を目前に迎え、我が国の経済・社会活動を支える基盤である都市を成熟した都市型社会に適合したものに再編していく必要がありますが、我が国の市街地は多くの面で都市住民が満足できる水準に達しておらず、再開発により防災、居住環境、交通、景観等の機能の充実・改善を図り、都市の再構築を強力に進めていく必要があります。
また、虫食い地等低・未利用地の整形・集約化を進め、これを再開発事業用地や公共施設用地として有効活用することが重要です。
さらに、現下の経済状況の中で、都市の再開発は民間投資を誘発する効果も大きく、内需主導の景気回復を図る上でも大きな役割が期待されています。
このため、国、地方公共団体と並んで、民間事業者等が一体となって都市の再開発に積極的に取り組んでいけるよう、以下のような措置を講じることとしました。
第1 再開発のための資金調達の円滑化等
1 民間主導の市街地再開発組合・保留床管理法人等への貸付制度の創設・拡充
市街地再開発事業や土地区画整理事業に対し、都市開発資金からの貸付制度を創設・拡充しました(一部を除き、国と地方公共団体からの併せ貸しとなります)。
(1) 事業施行者への貸付制度
・市街地再開発事業
個人施行者や市街地再開発組合(事業準備段階で設立されたものを含みます。)が施行する市街地再開発事業の事業費の一定割合を無利子で貸し付ける制度を創設しました。
・土地区画整理事業
これまであった個人施行者と土地区画整理組合に対する無利子貸付制度の対象を、事業準備段階で設立された土地区画整理組合にも拡充するとともに、償還期間等の延長を行いました。
また、業務代行者に対する用地先行買収に要する資金の財投金利での貸付制度についても、償還期間等の延長を行いました。
(2) 保留床管理法人・保留地管理法人への無利子貸付制度
再開発ビルの保留床や土地区画整理事業の保留地の賃貸収入により事業費の回収が図れるよう、保留床管理法人・保留地管理法人(*)への無利子貸付制度を創設しました。
(*)保留床管理法人・保留地管理法人とは、施行者から保留床や保留地を取得して管理や運営を行う、施行者や地方公共団体が中心となって出資や設立をする法人のことをいいます。
なお、これらの貸付制度の貸付条件は次のとおりです。
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2 地方公共団体からの併せ貸しの特例
1で創設・拡充された貸付制度(土地区画整理事業の業務代行者に対するものを除きます。)について、現下の地方公共団体の財政状況に配慮し、平成11年度においては、地方公共団体の併せ貸しを要しないこととしました。
3 住宅・都市整備公団及び地域振興整備公団への無利子貸付制度の創設
住宅・都市整備公団や地域振興整備公団が行う市街地再開発事業、土地区画整理事業、賃貸住宅建設事業等に対する無利子貸付制度を創設しました。
4 民間都市開発推進機構への貸付金の償還方法の多様化
民間都市開発推進機構の参加業務において資産担保証券等の取得ができることとなったことに伴い、不動産の証券化を活用した民間都市開発事業を支援するため、民間都市開発推進機構は、国に対して、これまでの均等償還に加え、一括償還ができることとしました。
5 民間都市開発推進機構への貸付制度の拡充
沿道における民間都市開発事業の促進を図るため、民間都市開発推進機構による道路事業の見込地を取得する制度を創設するとともに、道路事業の見込地や沿道環境対策に資する民間都市開発事業の見込地の取得について、道路整備特別会計からの無利子貸付けができることとしました。
第2 低・未利用地の有効活用方策の充実
1 事業用地適正化計画の認定制度の創設
虫食い地等の低・未利用地を集約化し、土地の流動化の促進を図るため、土地を整形・集約化し、民間都市開発事業用地( 500u以上)とするための計画について、建設大臣が認定を行い、これに対して税制の特別措置や民間都市開発推進機構の業務による支援措置を講じる制度を創設しました。
なお、この制度による税制の特別措置は以下のとおりです。
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2 民間都市開発推進機構の土地取得業務の期限の延長
土地市場の低迷が続く中、低・未利用地における民間都市開発事業を推進するため、民間都市開発推進機構の土地取得業務の取得期限を3年間延長しました。
第3 再開発手法の改善・充実等
1 市街地再開発組合や土地区画整理組合の設立時期の早期化
事業計画決定前の事業準備段階で市街地再開発組合や土地区画整理組合を設立できることとしました。
2 市街地再開発組合の設立認可等の手続きの透明化
市街地再開発組合の設立認可等の手続きや認可基準を整備し、その基準に適合する場合には、都道府県知事は認可しなければならないこととしました。
3 特定建築者制度の拡充
市街地再開発事業において、施行者との適切な役割分担のもと、民間事業者の資力やノウハウを活用した事業の推進ができるよう、特定建築者制度を拡充し、保留床部分を取得する民間事業者が全ての建築物の整備を行えるようにしました。
4 転出者に対する補償金等に係る利息相当額の算出方法の見直し
近時の経済情勢等を踏まえ、市街地再開発事業において転出者に対して支払われる補償金に係る利率を、定率(6%)から物価変動に対応した率に見直すこととしました。
5 組合の解散に関する規定の整備
市街地再開発組合の設立時期の早期化(上記1)等を踏まえ、組合の解散に関する規定を整備しました。
6 土地区画整理事業及び市街地再開発事業の一体的施行制度の創設
土地区画整理事業の換地処分を待たずに市街地再開発事業を施行することを促進するため、両事業を一体的に行う法制度を創設しました。
7 土地区画整理士技術検定に関する指定検定機関制度の創設
土地区画整理事業の専門的技術者の養成確保を図るため、建設大臣が、その指定する者に土地区画整理士技術検定の実施に関する事務を行わせる制度を創設しました。