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            8th November 2000

                                  2000年11月8日

JAPAN URBAN POLICY日本の都市政策

OECD対日都市政策勧告)

Mr. Bernard Hugonnier
 ウゴニエ OECD地域開発部長


 OECD加盟各国は都市を巡る様々な問題に直面しており、日本も例外ではない。


 OECDは国際協力機関として、加盟国の地域開発政策について、欧米先進国を中心とした加盟国の経験など豊富なデータを用いつつ、国際的視点から国別審査を行っているところである。


 今回、日本に対して都市政策審査を行い、2000年11月6日、OECD理事会の承認を得て、本勧告を公表するものである。

 1999年11月から12月にかけて、OECDは都市問題専門家を中心とした調査団を日本に派遣し、神戸市・松江市・東京都の3都市において「OECD都市政策セミナー1999−都市の魅力の再構築−」を実施した。このセミナーの調査結果に基づき、OECD地域開発政策委員会の検討を経て、日本の都市政策に対する勧告を取りまとめた。

 OECDが日本の都市政策全般に対して勧告を行うのは、1986年の「OECD対日都市レビュー」以来である。

   

<勧告の要旨>

 生活の質や都市デザインの質の向上、サスティナビリティの改善等は都市の魅力に不可欠であり、都市の魅力は都市の競争力維持にとって重要である。

 日本は不十分な規制や都市景観の乱雑さ、狭小な土地区画など様々な都市問題を抱えている。また、現在の地価下落のほか、日本は高齢化が急速に進行し、人口減少とそれに伴う経済力の減退等が予測されている。

 OECDは、これら日本の現状分析と将来の施策の方向性を検討し、以下8項目にわたる勧告を日本に対して提示した。

   


@ Revitalisation of Urban Centre and Managing Urban Growth in Suburbs to achieve sustainable cities
  
サスティナブル・シティ実現に向けた都市中心部の再活性化と郊外部の成長のマネジメント


    
・コンパクトで機能的なまちづくり                   
    ・改正した都市計画制度を最大限活用すべき  

 人口減少予測を考慮すれば、都市の拡張は非効率的である。環境保全や高齢者の生活の質向上の両方の見地からも、都市成長のマネジメントにより、コンパクトで機能的なまちづくりを行うのが望ましい。

 また、都市成長のマネジメントのためには、準都市計画区域制度など2000年に改正された都市計画制度のスキームを最大限活用すべきであり、また、基本的に地方公共団体の判断に委ねることとなった線引き制度については多くの都市で採用されるべきである。

   


A Achieving appropriate land use patterns in urban areas          
  都市に見合った土地利用パターンの実現


    ・小さな土地の所有者に有利な現行施策は修正されるべき       
    ・土地の集約化を促進する誘導策等を導入すべき
    ・低未利用地を公的主体によって再開発すべき   
    ・地域社会・地方自治体との緊密な協力によるより望ましい都市開発事業を促進すべき

 日本における狭小な土地区画は、魅力のない都市景観の大きな原因であり、都市における効率的かつ高密度の土地利用の大きな障害である。小さな土地の所有者に有利な現行施策は修正されるべきである。加えて、土地の集約化を促進する新しい土地利用システムや誘導策を導入すべきである。

 産業構造の転換により発生した従来型産業の工場跡地といった低未利用地を公的主体が取得して整備するのが効果的である。また、地域社会や地方自治体との緊密な協力を行い、より望ましい都市開発事業を促進すべきである。


B Restructuring regulations                         
  規制の再構築


    ・都市デザインの質は都市の魅力ひいては都市の競争力維持に必要不可欠
    ・適切な規制は強化すべき

 都市の魅力は競争力を生む主要な要素であり、都市デザインの質は都市の魅力保持に必要不可欠である。多くのOECD加盟国は厳しい規制を通じて都市の魅力を培った歴史を有している。OECD加盟国の多くと比べて日本は十分な規制を有しておらず、規制緩和が都市の競争力を損なう恐れがあり注意しなければならない。

 規制の強化は安全性、環境の質、都市活動の効率性の向上と関係しており、都市計画や建築の分野における適切な規制は日本においてむしろ強化すべきである。

 


C Expanding investment for cities                     
  都市への投資拡大


    ・21世紀最初の10年間に一層の投資を戦略的に行うべき     
    ・既存の都市中心部や低未利用地へ重点的に投資すべき     
    ・インカムゲインを見込んだ投資を促進すべき

 日本の様々な都市問題には、投資効率の観点から都市への投資拡大によって取り組むべき。人口高齢化による経済力の減退を考えれば、21世紀最初の10年間に、より一層の投資を行うことが重要であり、戦略的に行うべきである。

 人口集中の沈静化や人口減少を見越せば、郊外部よりむしろ既存の都市中心部や低未利用地へ重点的に投資すべきである。

 また、地価上昇によるキャピタルゲインを見込んだ現行の事業は見直し、他の多くのOECD加盟国に見られるインカムゲインを見込んだ投資を促進すべきであり、関連施策の見直しが必要である。既成市街地での公共施設整備が不可欠。地価の上昇に伴い得られるキャピタルゲインを前提としない面的事業のあり方について検討が必要である。

 


D Securing financial measures for improvement        
  整備財源の確保


   
以下の3つの方策が考えられる。
    ・都市地域への投資拡大
    ・都市開発促進のための目的税などの導入
    ・プロジェクト・ファイナンスの手法による民間資金の導入

 都市への投資拡大のための実現可能な方向を以下3つ挙げる。

 ・財源の配分を見直し、都市地域への投資拡大へシフト

 ・開発費用を増加させることなく、都市開発促進のための目的税などを導入し、財政収入を確保

 ・プロジェクト・ファイナンスの手法・官民パートナーシップによる民間資金の活用


E Reconciling private rights and the public interest            
  個人の権利と公共の利益との調和


    ・都市開発事業によってもたらされる公共の利益の実現のために私権が制限されるのは許容されるべき

 日本では、私権が保護されすぎており、事業が遅延しがちである。公共の利益の実現のためには私権が制限されるのは許容されるべきである。全ての関係者が十分な議論を尽くし、責任ある当局による多数決を行うなど民主的プロセスを経た場合には、私権の適切な制限は正当化されるべきである。 

 


F Re-evaluating the Role of National Government              
  国の役割の再評価


    ・都市開発の基本的枠組や関連施策のガイドラインを国は提示すべき  
    ・地方公共団体等への支援など国は重要な役割を担うべき
    ・小さな市町村の合併を進めるべき
 

 都市部における社会・経済活動は地方公共団体の行政区画を越えて行われている。特に大都市部における都市政策の広域的アプローチが不可欠であり、都市開発の基本的枠組や関連する施策のガイドラインを国は提示すべきである。

 加えて、地方公共団体や民間部門に対する支援を行い、広域的な地域計画策定や調整などで国は主導権を発揮し、より重要な役割を担うべきである。特に大都市部では積極的な役割を果たすべきである。関連して、小さな市町村の合併も進めるべきである。

   


G Taking a comprehensive approach    
  総合的アプローチ


    ・都市政策には、あらゆる経済的・社会的情勢を反映させるための総合的枠組みが必要
    ・省庁再編後の新しい組織(国土交通省)は重要な役割を果たすべき 
 

 都市政策には、単なる都市施設の建設等だけではなく、全ての経済的・社会的情勢を反映させるための総合的枠組みが必要であるが、日本ではこれが不十分である。国・地方レベルでの都市・地域開発を直接担当する部局は主導性を強めるべき。関連して、国土交通省の設置を歓迎し、省の新しい組織は総合的政策の展開あるいは地方の広域的調整において重要な役割を果たすべきである。