第1回懇談会の概要

blue_maru.gif (326 バイト)日時、場所等

平成11年6月2日(水)14:00〜16:00
  霞ヶ関ビル35F東京會舘シルバースタールーム

blue_maru.gif (326 バイト)出席者(順不同)

伊藤委員長、蓑原委員(WG主査)、井尻委員、小野委員、 小林委員、高橋委員、
馬場委員、林委員、藤井委員(代理出席)、松葉委員、森野委員、
柴田委員(代理出席)、長谷部委員、角地委員、原田委員

委員名簿はこちら


blue_maru.gif (326 バイト)資料

資料1−1 「産業構造の転換に即した都市政策のあり方懇談会」の
       進め方について(案)
資料1−2 我が国における産業構造転換等の状況
資料1−3 都市政策ビジョン
資料1−4 都市再構築のシナリオ(概要)
資料1−5 日本経済再生への戦略(抜粋)
資料1−6 産業競争力会議について
資料1−7 工場跡地等の主な土地利用転換手法

 


blue_maru.gif (326 バイト)懇談の要旨

 懇談会の進め方や背景などに関する事務局からの説明に引き続き、産業構造の転換に対応した都市政策のあり方について、各委員から様々な問題提起や検討方向の提案がありました。その概要は次の通りです。(文責は事務局)
 なお、次回懇談会は7月中旬の予定です。

 戦後の経済システムが崩壊する中で、人(労働)、金(金融)、土地が硬直的になっている。
  第1には、バブルの精算の中で、バランスシート上では調整が進んでいるが、裏側の実態資産である設備・不動産をどのようにしてゆくか大きな問題である。しかも、個別の問題が大きく、バランスシートの問題に止まらない。
  第2には、産業構造の転換といっても、第3次産業や第2産業の中のハイテク企業は空間的な条件が大きく、国際空港の位置などもどこにあるかが重要。都市がどのような競争力を持っているかという観点からは、今の都市には問題があり、東京、大阪も好ましい状況にはないという意見がある。
  第3には、土地本位制の下では「持つ不動産」という観点が強かったが、「使う不動産」という方向にならないかという議論である。
こうした観点から都市と産業構造の関係について見直しをして行く必要があるし、その際には具体的な事例について考えることも必要になるのではないか。

 懇談会名称中の「即した」という文言は、どう解釈するのか。産業に都市の方が合わせるという趣旨か。むしろ、全体的には都市の方がリーダーシップをとっていくべきと考えるが。例えば、生活空間倍増計画をみると、今後100年分の投資が見込まれ、その場合には都市が産業に影響を与えるだろう。一方では、工場跡地をどのようにするかという部分がある。その両面のどちらを議論するのか。工場跡地のことだけでは、都市がますます求心力を失う面もあると考えるが。

(事務局) 懇談会の名称については、この会で御議論頂いて、何か良い名称があればその名称にいたしたい。この名称は、従来、産業と都市との関係の中で都市が先走っていなかったかという若干の反省の上に立っている。
  この懇談会では、工場跡地をどうするか喫緊の課題だけでなく、産業と都市との関係に関する中長期の課題についても御議論頂ければと考えている。

 「即した」では限定的な印象がある。妥協案として「産業構造の転換と都市」といった名称ではどうか。都市は産業政策に随分翻弄された面がある。むしろ都市がリーダーシップをとるべきではないか。都市政策は産業政策よりも巨視的、長期的に捉えるもの。

 今の意見に賛成。今後の都市の変化の要素として高齢化、人口減少がある。一方、モータリゼーションの進行もあり、これを結びつけると高齢者が車に乗れるのか、高齢者が使いにくい都市にならないかという問題が生ずる。従って、もっと都市の中、都心居住などに目を向ける必要があるが、これまでの議論は商業に偏っており、老人が活躍できる施設や機会が与えられていないことが問題。情報や国際競争も良いが、もっとヒューマンな働く場所が必要。
  また、説明資料には様々な事業手法が掲げられているが、問題は事業制度と言うより、公と私の関係や官の敷居が高いという問題や、官の中の部門間のタテワリの問題についても議論してはどうか。事業類型をさらに一つ増やせば良いという問題ではないと思う。

 「産業」にはどういう産業を対象にするかという議論からいけば、まさに先端産業を取り込むべきだと思う。また、臨海型の産業に限定せず、自動車と都市との関係を議論して欲しい。20世紀は自動車の時代であり個人の移動を自由にした。さらに情報がモバイルのように自動車にくっついて行く、ITSのようなメディアに新しい産業がある。

 資料の中の「ビルト・インする仕組み」について、具体的な動きとしては、千代田区のSOHOの動きがある。先ほどの説明で第3次産業のその他の産業が伸びているというが、こうした産業は既成市街地中で小さな単位でビルト・インされている。その仕組みを都市政策の中で工場跡地と併せて議論をする必要がある。また、東京が海外から来た人にとって優れたところかどうか検討する必要があろう。ドイツでも80年代後半に遊休地の転換が議論されたがそのとき遊休地をサスティナブルな(持続可能な)開発の拠点・種地とするため、できるだけ自然を残していくべきということになった。都市が深呼吸できる機能が必要である。

 これまでは経済優先、製造業優先の下での土地利用で、都市の中で土地が足りない、通勤も延びて行く面があったが、今、その土地が開放される可能性が出てきて、都市づくりそのものが変わって行く可能性が出てきた。実際出てくる土地がどの程度のものなのか、見定める必要がある。

 これまでは都市計画とは公共施設を作ることと考え、決めてしまえば市場も経済も自由に動くものと思い、市場も民主政体も省られず、都市とは何かという根本的な議論もなかった。右肩上がりの経済の下ではそれでも良かったが、今の段階では都市全体を考えなければならなくなった。
 東京、福岡などで多くの工場跡地が出てくるが、その利用のあり方はさきほど指摘があったように、都市をどうつくるかという根本問題であり、それは都市についての市民のイメージの発現に他ならない。それが今混乱状態にあり、それをどうやってイメージをはっきりさせて行くか。土地の流動化が始まるときに、それなしに都市計画でコントロールできるものには限界があり、都市政策の対応として議論すべきである。懇談会の名前は「対応した」ぐらいでいいのではないか。

 「都市」が主導して行くのは大変良い。ただし、都市については「なべて」という議論は難しい。良いモデルがあれば、あとは自ずから伝わって行く。都市再構築のシナリオも総論的になってしまった面があるが、モデルスタディをやってはどうか。一つには先端産業について提案できないか。即地的な例としては秋葉原駅前の市場の跡地がある。ここを日本のSOHOや先端技術のショーケースにするとか。二つ目の例としては、地方都市の旧市街地について具体的に議論すべきではないか。
 もう一つは、日本の都市計画行政には、調整する人はいても、スーパーバイザ−(都市計画責任者)に該当する職責の人がいないことが問題である。市民からも信頼され、責任を持って首長から負託される立場の人。今の役所にそういう職責の人がいない。そうしたプロフェッション(職能)についての議論も必要ではないか。

 まさに一般論を議論しても意味がない。SOHOの場合、住宅とオフィスの中間形態であり、例えば、都市計画上どういう扱いにするか、住宅金融公庫融資を受けられるか、税制上の取扱いといった課題がある。

 コンピューターを使ったビジネスの場合、例えばゲーム産業の立地の形態をトーキョー・ゲーム・クラスターと呼んでいるが、情報通信技術があるからと言って必ずしも都心から遠い場所に立地することはなく、個別の地域が持っているアドバンテージ(有利さ)に着目して立地する。ゲーム開発者は、雑草のように隙間を見つけて、そこに文化をつくっている。ただし、東京は、ニューヨーク、サンフランシスコに比べるとまだその知的社会インフラの整備が必要だが、計画ではつくれない、しかし何らかの再整理は必要である。

 産業構造の在り方についてこれまでのような見方では駄目なのだろう。繊維が落ち込んでいるというが、逆にファッション・アパレルは伸びている。

 懇談会のテーマとして考えられるのは、一つには工場跡地を流動化させるためにはどうするのかということ。もう一つには、今お話しのあったSOHOのように、都市文化がある中での新たな産業の振興ということがある。それぞれ全く違う話でどちらも重要だが、どちらに重心をかけるのか。

 この会議で取り上げるのが適当かどうか解らないが2つ問題提起する。
 一つは、バブルの反省をどのように考えるのか、土地本位制をこれからも続けるのか、という問題がある。現在土地に偏している担保の評価を上物に移せないか、即ち、良い建物は高く評価するシステムにすることが必要。通産省の委員会で、銀行の人も実はそうしたいと言っていたが、評価する手法がないというのが問題のようだ。そういうことも議論するのかどうか。
 もう一つ、地方都市に関しては、10万人以下の都市は特殊な地場産業でもない限り、産業政策の中では存立し続けることが難しい。都市とは何かという違う価値観に立つしかないが、むしろそうした場合には徹底的に美しい街を作るしかチャンスはないのではないかと思う。

 大都市と地方は全然違う。大都市では土地が空いたからどう使うかが議論となるが、地方はそもそも集積がなく、どうすれば集積するかが問題。過去に産業転換をした例としては産炭地域があるが、これを見るとモノカルチャー的産業では転換するときに駄目で、地場産業的であれば一部が駄目になっても次の産業へと生きて行く感じだ。

 10万人以下の都市でも備中高梁や尾道、愛媛の内子など観光や過去の蓄積などで生き残る都市はあるが、この会では大都市に焦点をあてるべき。

 産業構造の転換の中では、大企業が分社化やアウトソーシング(外部委託)などでフレキシブル・スペシャライゼーション(柔軟な特化)をしてゆく場合と、イタリアに見られるように、「ヨーマン・インダストリー」とも言える家業的な産業が新しい形の産業へと発展して行く部分、これを「個業」と呼んでいるが、その振興の議論がないと地方都市は扱えない。これが出来ないならば大都市をやったほうが良い。

 要するに、いかに国土の有効な使い方をするかということ。これは歴史的に変化しておりかつては加工貿易立国として工場用地として優先的に使っていた時代もあったが、相対的高賃金のもとで工場用地が要らなくなりつつある。そうした土地をどう使って行くか。例えば工業専用地域から準工業へ一部でも変更できれば可能性が広がる。この懇談会では時代の要請に適った国土の使い方を示せればと思っている。その中で法律の柔軟な仕組みを議論したい。産業構造の方向の部分より、早く具体論に入って、ケーススタディも含め有効利用に向けてどういう知恵があるかを議論したい。

 土地の利用転換前の利用ははっきりしているが、その後どういう転換をするかは誰もはっきりとは示せない。ほとんどの土地は使いようがない。使いみちがはっきりしている土地は、臨港地区をはずすなど方法ははっきりしている。使いみちがない土地は、従来の都市計画にあったような、こうあるべきという「べき」論では扱えない。むしろ、「べき論」ではない柔軟な都市計画、あるいはもっと柔軟に「わかってきたら決めよう」くらいで良いのではないか。

 80年代後半の拡大路線、民活型開発路線を経て、日本の産業は戦後三度目の構造変革期を迎えている。今の民間企業の取組は、株の持ち合い解消や外国人持株比率の拡大等株主構成の変化の影響もあり、「業種」というより個別企業の生き残り戦略としての取組みが多い。その中で、リストラの一環として、従来期待できなかった都心の社有地などの土地が放出されてきている。これをどう有効に使うか、大都市では新しい産業(情報・通信、福祉など)による活用も期待できる。一方、地方都市におけるテーマパークの失敗とその後のまちおこしの問題も、それはそれで大変大きな問題であり、大都市と一緒に議論するのは無理ではないか。この他に先ほど指摘があった建物評価の問題は、手法の問題であり、これはまた別物である。

 これまでの都市政策のあり方について真摯に反省しなければならないところもある。しかし、なべて一般の「べき論」は無理にしても、世の中の動きに合わせた新しい「べき論」は可能なのではないか。
 建物の評価に関しては、不動産証券化と都市開発の研究会で別途議論をしており、現在最終報告に向けて議論をしている。
 地方都市については、中心市街地については基本計画を市町村ごとに作っているところであり、実践してゆくしかない。

 今後遊休地的に出てくる土地をどのように管理して行くかという問題は、都市計画の問題なのかどうかを今後議論して、例えば、緑地、運動場にするとか、これも都市計画なんだと考える。さらには農地の減反の問題も含めて、都市的土地利用でない部分の土地管理の問題を併せて議論してゆく必要がある。

 確かに工場跡地に限定して具体のプロジェクトを議論すれば、なにがしかの成果は期待できる。しかし、単に遊休地が空いたからプロジェクトをやりましょうではなく、一方で長期的視点、バブルへの反省、社会の仕組のあり方論は重要。
 さらに、産業構造と都市構造を良く議論する必要がある。例えば、今の既成市街地を作りかえるより、お台場を開発した方が良いという意見もあるが、それで「都市」はいいのか。やはり今の都市の中の産業のあり方、都市のあり方、今後の社会のあり方を考えると、都市の「べき論」は重要である。その議論を突き詰めると産業とは何かという問題に戻って行く。たとえば、「東京ゴミ箱」論と言う議論もあって、東京はただ就業の場を提供しつづけ、就業者は周辺に住んで様々な環境などの負荷をばら撒いているのかという議論にもなる。シリコンバレーでなぜ育ったかを考えると実はそこにいるのが楽しいからという面があることを考えてみる必要がある。
 一方でアグロマレーション(集中化)という議論もあってサンフランシスコでは、ダウンタウンのように肩を寄せ合っているようなところだからこそ産業が立地するという面もある。産業を考えるときには、都市の文化を大事にしなければならない。
 さらに、右肩上がりの経済の下では、新しく作る発想しかなかったが、今後の社会ではリシャッフル(組替え)の発想も必要である。これまであるものをどう使うかが重要。リシャッフルしないと人もモノも動かない。
 そうした街のあり方についても議論が必要。


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