第6回懇談会の概要

blue_maru.gif (326 バイト)日時、場所等

平成12年2月1日(火)10:00〜11:50
霞ヶ関ビル35F 霞ヶ関東京會舘シルバースタールーム

blue_maru.gif (326 バイト)出席者(順不同)

伊藤委員長、蓑原委員(WG主査)、、井上委員、小野委員、高橋委員、
馬場委員、林委員、藤井委員、松葉委員、森地委員、森野委員、
角地委員、川本委員     (委員名簿はこちら


blue_maru.gif (326 バイト)資料

資料6−1 産業構造の転換に対応した都市政策のあり方懇談会」
       報告骨子(案)
資料6−2 遊休地の暫定利用について
資料6−3 「都市再生推進懇談会(東京圏)」の開催について


blue_maru.gif (326 バイト)懇談の要旨

 事務局からの資料説明に引き続き、フリーディスカッションが行われました。その概要は次の通りです。(文責は事務局)

 なお、ここをクリックすると画面が分割され、上段に懇談の要旨、下段に関連資料が表示されます。
 また、ここをクリックすれば、通常の画面に戻ります。

 

● 産業構造に関しては、第1に、製造業とサービス業の区分はあまり意味が無くなっており、製造業のサービス業化がみられる。例えば自動車の場合、本体の製造で200万円、その後の車検、修理等のサービスに100万円の付加価値がある。今の製造業はむしろ積極的に川下のサービスの部門に進出しようとしている。
  第2に、IT産業
(情報通信技術産業)と言うことが言われているが、具体には通信ネットワークの提供というサービスと、パソコン等のハードの製造と、ソフト開発やコンテンツ制作との3つに分かれ、さらにはITを利用する産業がある。そこに製造業・サービス業の区別はない。
  第3に、過剰資産のリストラによる遊休地について資料6−1に記述があるが、アンケート調査に現れない潜在的な遊休地はもっとあり、増えているのではないかと思う。政策上の視点としては、資料6−1に産業政策と都市政策は混同すべきでないと言いながら、P12においては暫定利用について、これには大変共感を覚えるが、都市計画上の課題として積極的な施策を打ち出している。都市政策も産業政策と一体となって前に出る姿勢が望まれる。特に資料6−2の「暫定利用の都市計画的意義」に記載されていることは、産業構造転換の政策的受け皿としての重要な視点が適確に盛り込まれている。

● 基本的に賛成であり、表現だけの指摘になるが、資料6−1のU.2.(2)Eで「厳しい土地利用」というのはあたらないのではないか。(3)Bの表現と矛盾し、あまり適切な表現ではない。暫定利用の事例を見ると規制をくぐり抜けた好ましくない施設も見られる。
  それから、V.2.(4)Bの暫定利用の事例に、防災上の施設も載せて欲しい。暫定利用の記述の前に、そもそも、防災施設や代替地として機能しうることをきちんと書いて欲しい。
  また、資料6−2の暫定利用の資料では、暫定利用の土地所有の仕組みや意義について書いてあるが、暫定利用の都市計画法上の位置付け、すなわち暫定都市計画を位置付けることができないか。それにより、税制などインセンティブも公共性を持つことになる。
  また商業施設などを作って利用するとなると既成市街地の衰退している面もあり、都市全般についてどういう所、規模、種類で立地させるかの判断が、マスタープランかプロジェクトごとのオーソライズかは別として必要ではないか。

 第1に、人口100万人以上ぐらいの大都市で防災施設として使える遊休地がどれくらい必要か、誰も計算していない。また、今は空いている埋立地も、金利がかかって保有コストが増大していくため、100年に1回の災害に対応するシステムになっていないし、防災計画を立てる側からも、土地利用がどう変わるか分からないものを計画に入れるのは難しい。従って、どのくらいの空地が必要なのか算定し、それをどのように担保するかを財政的にも制度的にも組み込んで、都市計画や防災計画につないでいく必要がある。ゆえに、資料6−2には防災の話が入っているが、資料6−1にも防災についてもう少し具体に作業して踏み込むべきである。
  第2に、物流関係についてであるが、船による輸送がある臨海部には港湾法のルールがあり、一方、陸上の輸送については幹線道路沿いにバラバラと立地しており、互いに計画的な立地になっていないため、街なかをトラックが走るという事態になっている。これは、海外にはない事態である。こうした物流についての問題も記述すべきではないか。物流以外にも、地価負担力はないが都心に近く立地すべき機能は多く、臨海部の利用についてはこの点も考えるべきである。
  第3に、休耕田や市街化区域内農地の問題のように、実際に土地を持っている人がどういう行動をするかという点に、もう少し配慮が必要。例えば、全部は売りたくない、高く売れるまで様子を見るという行動に対して、部分的に出てくる土地を交換によりまとめて開発する手法も考えられるのではないか。

 資料6−1で渋谷ビット・バレー(Bit Valley)のような産業について言及されているが、彼らは「人と違ったことをやるのがカッコいい」と思っているので、いかにもビット・バレーというような所には入りたがらない。ここに書いてあるように、都市計画等での直接的な誘導は難しいと思う。しかし、一面で良い所で仕事をしたいという意欲もあり、そうした空間的ニーズを持っている。「誘導する」というのと「健全に育成する」というのは違うので、新しく生まれたものが育ち、競争力をつけて行くように、例えばイベントが自由にできるよう規制を緩めるといった対応が都市政策でもできないか。「健全な育成を図る」といった記述で政策的配慮に少しは触れて欲しい。

 渋谷周辺に形成されつつあるデジタルコンテンツの制作やコンピュータ利用の情報サービスなどのベンチャー企業が集積する地域に対する呼称。名前の由来は、アメリカのシリコン・バレーになぞらえ、渋(bitter)谷(valley)の「渋」を電子情報単位のビット(bit)に置き換えたものと言われている。

 大変良く整理されているが、全体的に「なべて」という印象があり、もっと自治体の役割を明記した方が良い。臨海部は確かにつながっているが、一方で千葉と神奈川では違いがあり、文化の固有性もある。従って、自治体への言及があっても良い。
  また、土地利用転換に当たって、いまさら住民運動はしたくはないが、情報開示していくことは必要で、できれば住民から祝福された転換となることが望ましい。そういう意味で、例えば暫定利用している間に、将来の利用について住民の声を聞くといったアカウンタビリティの確保が必要ではないか。

 馬場委員の話にもあったように、新規産業に関してもう少し書き込みが必要。ビット・バレーについての言及があったが、これにはかつてのフラワーチルドレン的なオヤジが関わっている。そのような50代ぐらいの人は、他人と違うものを好む傾向があり、魅力ある空間を求めている。特に目黒川に沿った地域や、大川端、晴海、豊洲といった水辺や自然に近いところに立地したいと思っている起業家が多いことを認識すべき。
  また、暫定利用に関して、実際に立地しているものを見ると、瞬間的な消費や気まぐれなニーズに対応したものが多く、暫定利用に限らずこうした集客産業について言及してはどうか。
  住宅に関しても、例えば大川端のリバーシティでは、自分の娘を手なづけるために買ってやりたいというような従来では考えられない動機による需要があり、こうした潜在的需要に対応した住宅供給のあり方も重要ではないか。
  暫定利用についての自治体の役割としては、警察との関係が重要。今のところ、警察は公道は管理するがそれ以外には踏み込まない。暫定利用する際の土地所有者の管理責任を軽減するため、警察のような公的な機関がバッファーとして介入することも良いのではないか。

 産業構造の転換に対応して都市政策の対応をお願いしたい。第1に、遊休地の買上機関の設置について記述できないか。第2に、都市開発のモデルを示したり、ケーススタディができるコンサル機構があれば有り難い。

 暫定利用も需要であるが、本格利用が起こるところもあり、そうした場合にインフラへの投資をバックアップするというトーンが弱いのではないか。

 資料6−1で、新規産業に関して土地需要という点であまり多くを期待できないという形になっており、なんとなく対象外になっているようで不安。P6ではDである程度カバーされているが、IT革命に対する言及が弱いのではないか。新産業の育成についてハード面は難しいかもしれないが、ソフト面での対応が何かできないか。また、ベンチャー産業が居を構えるような場所が整備できないか。

 この懇談会でどういうことを議論すべきか、そろそろ焦点を合わせる時期に来ている。産業、防災、流通など都市計画の総合化に向けた様々な論点はあるものの、これらは経済戦略会議でも議論され、都市再生推進懇談会でも議論されるであろうから、この懇談会では、大規模な遊休地について実効性のある方策を見定められないかという点に絞ってはどうか。
  特に、暫定利用を取り上げたのは、これまでの都市計画には時間のファクターがなく、完成した姿しか示されていないという問題点に対応するものであり、都市が成長しながら、進化する過程に対応するものである。

 資料6−1は、目の前にある問題としての遊休地に関するラフな指針としてはよくできているが、それ以外の将来の都市の方向性については物足りないというのが各委員の意見だったように思う。
  確かに、サービス業と製造業を分けるのは如何かという点や、物流を考えると国際化は重要なファクターになっていることとか、サービス業の中でも金融は魅力が無ければ立地しないということ、あるいは空港が整備されていないとGE社のウェルチ会長がプライベート・ジェットで羽田に着陸できず、仙台の着陸を求められたりするという問題とか、防災についてもどのくらいのことができるのかといった色々なレベルの問題がある。
  このような都市と産業との関係にどこまで踏み込むかという点については、問題の広がりを見せながらも、如何に現実的な提案ができるかが重要ではないか。なお、住民参加やアカウンタビリティの問題は大切なので、これは書いた方がいい。

 私の意見は、防災や物流に関して政策化するのに、どれくらいのレベルで取り組むかということである。骨子の中でこうした問題をあえて避ける必要はなく、コメントを入れるだけである。この問題をさらに議論するかどうかについては先ほどの意見に同感。ただ、こうした問題は色々な機会で言及することが必要。

 暫定利用は、臨海部以外はほとんど準工地域にある。暫定利用を行っていく上で、都市計画上の課題があったのか。

(事務局) 参考資料にもあるとおり、実際に行われている暫定利用の用途のうちのかなりの部分が、工業専用地域には立地できない。また、臨港地区の場合も分区条例により用途が制限されている。遊休地実態調査に回答をくれた企業から後で聞いた話だが、工業港区にある工場跡地を露天の駐車場に転用しようとしたら、加工を伴わない施設は立地できないとして港湾管理者の理解がなかなか得られなかったという例もあるようだ。

 資料6−2の暫定利用の概念規定は、このような形で暫定利用していこうということか、それとも現実の姿なのか。

(事務局) ご指摘の概念規定は、暫定利用が期間限定なので、土地利用制限についてもっと緩やかにしても良いのではないかという提案を示したものである。

 都市計画に時間の概念を入れるということは、私も同じことを別途やっていて、「つなぎの時間」という点から議論をスタートしようと言っている。
  先ほど新しい集客産業ということを言ったが、最近はアミューズメントやファッション、ライフスタイル提案などのショールーム的な店舗が多い。これは、ITが発達しても、消費者にとっては商品を手にとって見れるということが大事であり、供給側にとっても、どんな消費者が関心を示しているかを見れるという点で重要である。埼玉のスーパードキドキは商品を手にとって見るという機能が大きい。パレットタウンはトヨタのショールームが入っており、広告宣伝費が入っていることが大きい。ビーナスフォートは、日本進出は始めての企業が暫定利用を使って進出してきた面がある。
  このように暫定利用は産業進出を増やす効果もある。東京臨海副都心駅のすぐ側に松下の大きなビルが作られているが、ここはデジタル家電付き住宅が実体験できる機能を備えている。有明北の西側では、ゴルフの打ち放し練習場は都市公団が買い取って、暫定利用についての提案を公募している。こうしたところで成立するのは、アミューズメントやショールームのようなものとなろう。
  いずれにしてもこの報告では色気がなく、もっとファッションやアミューズメントの要素を取り込むと良い。

 これまでの都市計画では、産業政策、防災計画などの配慮はほとんどされていない。工場跡地問題についての自治体の窓口も、商工労働部局、つまり産業行政がやっており、結果として京浜臨海部一層、二層というふうに法律上の位置付けもなく処理している。そして都市計画などの規制の現場でぶつかっている現状があり、結果的に民間サイドには不満が蓄積している。
  そういう意味では、工場跡地等の問題についての自治体に対する統合的な指針を出すことは、自治体の都市計画が総合的なまちづくり取組むきっかけとして、一歩前進できるのではないか。現状では、どこが窓口で対応するかについても甚だ怪しい状況にある。こうした問題に一体的・計画的に対応することを自治体が自ら考え、法律的裏付けをもって行動することが重要。

 パレットタウン横浜ベイサイドマリーナは、私も当事者を知っているが、自治体の港湾局の事務屋さんが力技でまとめ上げたという側面が大きい。後付けでもいいから、こうした事例を都市計画の関係者が理解できるようにすることには意味がある。

 暫定利用のように都市計画と現実のアジャストは理解できるが、先ほど本格的利用について指摘があったように、都市政策をどうして行くか、都市計画そのものをどうしていくかも重要であり、暫定利用から本格的利用につなぐ仕組みへの言及を一項目はすべき。暫定利用でも、一度作られたらなかなか変えられない面もある。

 暫定利用の土地利用の非限定性に関して、具体に報告書中にどのように取り込んでいくのかはっきりしない。現行の土地利用規制に限定されないということを暫定利用の概念規定に書くだけで足りるのか。こうするために制度上どうするのかということをきちっと記述すべき。

 今の問題は、個人的には単に期間を限定するだけの理由で土地利用の規制を緩めることは難しいと思う。工業地域、工業専用地域は人が日常的に生活するには環境が厳しい地域として、計画的に整備されたところが多い。アミューズメントといっても、例えば人が子供達を連れて長時間そこでいることは許されるのか。また、工業をやっている人間にとっても利便性を抑さえてしまう側面がある。都市計画は都市活動の種類を規定しているものであり、こういう取扱いができるところが全くないとは言わないが、5年、10年の暫定利用だからといって簡単に限定するとは言えない。
  逆に、住宅地でも、5年間だからといって用途の規制を緩和するわけにはいかない。

 現行の用途地域制は、土地利用規制という側面のほかに、土地利用計画という側面もあるが、実際には土地利用の方向が定まっている地域と、定まっていない準工業地域のような地域がある。そうした中で今問題となっているのは、現実に起きている土地利用の変動に対応し得ないところで、土地利用が変わりつつあるからといって、工業専用地域等を直ちに準工業地域に変更できるかというと、それは問題がある。
  そうした用途地域の変更について判断をする前に、個別にみて何ら支障のないプロジェクトについては、弾力的な利用を認めても良いのではないかというのが暫定利用の考え方である。
  また、建築基準法では用途地域について但し書きがあり、個別のアクティビティについて可否を判断し得るという制度的な保障があるにもかかわらず、現実にはあまり機能していない。都市は動く生き物であるから、地域指定を変えるか但し書きで対応するかという判断を迫られることがあるが、土地利用の実態が動きつつあって、周辺との関係では支障がないときには、用途地域を変えるよりは、暫定利用という位置づけで個別に対応することのほうが現実的な場合があるのではないか。

 問題意識は理解できた。その場合でも、都市計画というのは計画の意思が明らかになるということから、暫定だから認めると言うのではなく、具体のアクティビティに着目し、計画に照らして判断することになろう。

 そういう意味では、資料6−2の暫定利用の都市計画的意義を都市計画上認めるかどうかの問題となる。これまでこういうことをあまり議論していない。
  かつて生産緑地でも、公園になるかどうかわからない土地を都市計画で認めるのまずいという議論があり、かなり厳格に運用したので宅地並課税にうまく対応できなかったが、その後実態に合わせて緩く運用することにしたので、対応ができるようになったという例もある。

 この報告骨子案と暫定利用の資料との関係はどうなるのか。一緒になるのか、それとも、資料6−2の部分は別立てになるのか。

(事務局) 資料6−2の内容は報告書に盛り込む方向である。今回は、議論をしながら考えあぐねたところもあり、暫定利用についてどういう方法や問題点があるのかを別立てで整理した。
  なお、暫定利用については十分整理できていないところもあり、臨海部で大きな施設を暫定利用という位置づけで整備したとき、それが都市構造全体に大きなインパクトを与え、既成市街地の土地利用を変えてしまうおそれがある。それも暫定利用という枠組みで整理して良いかという問題について、十分消化しきれていない。将来の都市構造を見据えた議論をしないといけないと考えている。

 一つには時間の変化にどう対応して行くかという問題があるが、もう一つは本当に総合的な判断をしているのかという問題がある。大規模商業店舗は土地利用に大きな影響を及ぼすのだが、これをどう評価するか、あるいは公共施設計画をどう変えていくかということを、都市計画は実態上判断していない。したがって、時間のファクターを入れながら、トータルで判断することが必要である。

 貿易摩擦でも時間のファクターを入れた議論があって、確かになかなか悩ましい問題。

(事務局) 本懇談会はあと1回、3月か、場合によっては4月に最終回を開きたい。それまでには、これまでの議論を踏まえて報告書案という形で取りまとめをし、できれば事前に報告書案をお送りし、当日の議論に臨む形にいたしたい。また、報告書案を作る際に必要に応じて個別にご意見をお伺いすることもあるので、その節はよろしくお願いしたい。


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