○次世代の都市生活のあるべき姿とそれを実現するための提案

 

1. 互いに支え合うまちの暮らし

◎ 次世代の都市においては、ノーマライゼーションの考え方が実現されている必要があり、高齢者も障害者もまちなかでふつうに生活することができるよう、ユニバーサルデザインに配慮した施設が整備されるとともに、保育園、ケア付き住宅、郵便局、商店などが街の中の一番便利なところに立地することが必要。

 

 日本においては、介護の必要な高齢者や障害を持っている人などハンディを負い施設で暮らす人の数が年々増加している。しかし、社会保障の先進国と言われる北欧では、そうした人の数が逆に年々減少している。

 

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ある店の入り口。階段が多い。
左側に見えるスロープを登っても、店の裏側に出て、店の中には入ることができない。
 このような状況が生じているのは日本では都市から離れた病院や施設に高齢者や障害者を隔離する傾向が続いているのに対し、北欧では地域の中で高齢者や障害者がふつうの暮らしができるよう社会が支援しているからである。

 

 例えば、デンマークにおいては、ユニバーサルデザインに配慮した施設が都市に整備されるとともに、良好な国民生活の基盤を作っているのが都市計画・都市政策であるとの観点から、一番便利なところに保育園、ケア付き住宅、郵便局、商店などが立地している。また、立派な施設ばかりを作るのではなく、暮らす場所は本人が決め、本人が住み慣れた既存の家をバリアフリーに改修するといった取り組みへの政策転換が行われた。こうした取り組みの結果、高齢者や障害者、車椅子に乗ったり、乳母車を押す人を含む誰もがふつうの生活を送ることができるようになった。

 

デンマークには日本でいういわゆる「寝たきり老人」は存在しない。たとえ半身不随で自らベッドから起き上がることができずおむつをしていたとしても、自宅に住みエレガントな服を着て介護をしてもらいながらデイサービスセンターに通うなど、残された能力をできるだけ使いながらふつうの生活を送っている。また、施設においてもグループホームの活用などにより少人数でゆったりとした日常的な暮らしが確保されている。

 

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バリアフリー化された歩道
次世代の都市生活は、年齢や心身の状態にかかわらず、人は誰でも「ふつうの生活」を送る「権利」があり、社会にはそれを支える「責任」がある、というノーマライゼーションの考え方が実現されたものであることが必要であり、まちづくりもノーマライゼーションの考え方を基本に置いて進められなければならない。

 

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●ノーマライゼーションとは?

 

 デンマークのバンク・ミケルセンが精神薄弱者の処遇に関して唱え、北欧から世界へ広まった障害者福祉の最も重要な理念。障害者を特別視するのではなく、一般社会の中でふつうの生活が送れるような条件を整えるべきであり、共に生きる社会こそノーマルであるという考え。

  この理念は、「障害者の権利宣言」の底流をなし、「国際障害者年行動計画」と「障害者に関する世界行動計画」(1982)にも反映されている。<本文に戻る

 

●バリアフリーからユニバーサルデザインへ

 

 バリアフリーとは、社会生活における様々な障害(バリア)を取り除いた(フリー)、高齢者や障害者にも使いやすいような環境づくりの意味である。このバリアフリーの概念を受け継ぐ形でユニバーサルデザインという概念が生まれている。 これは、バリアフリーのように、いわば社会に障害があるものを正常に戻すデザインではなく、障害がはじめからない、誰にとってもよいデザインへと発想を転換している。

 つまり、高齢者や障害者に限らず、子供や妊婦といった人々も含めた誰にでも使いやすく、楽しみやすいものに設計していくという意味で用いられている。<本文に戻る