3. 子どもたちを育む環境づくり
◎ 次世代の都市生活を担う子どもたちを産み育てるにふさわしい環境づくりを進めるため、子どもの成長に応じた住宅政策、円滑な住み替えに対する支援、借家の持ち家との格差是正や質の向上を図るとともに、子どもたちが自由に遊べる地域環境を整備することが必要。 |
少子化の主要な原因は晩婚化と非婚化であるが、結婚した夫婦が希望する子どもの数を実現しない傾向にあることも指摘できる。その理由としては、経済的な問題と並び、狭くて家賃が高いという「住環境」の問題が挙げられる。
子どもを持つか否かの選択は個人に委ねられるもので、国や自治体が過度に介入すべきでないが、仮に、子どもを産み育てたいと考えている人がそれに躊躇する原因が個人生活の基盤である住宅にあるのであれば、その原因を取り除いていくことも必要である。
狭くて家賃が高い住宅に住んでいる結果、多くの家庭で子どもが母親もしくは両親と同室で就寝している状況が見られ、子どもや夫婦のプライバシーが保てないという問題も生じてきている。また、床が薄いため騒音で母親がノイローゼ状態になる、父親が寝ている土曜日の午前中は隣接した公園で遊ぶのを自治会で禁止しているので子どもを外に出せない、子どもがいるため民間賃貸住宅に入居できない場合があるなど様々な問題が起こっている。
子育て層を対象にしたこれまでの住宅施策としては、地方自治体による住宅供給や家賃補助、民間住宅を活用した特定優良賃貸住宅供給促進事業などがあるが、対象となる層が限定されているばかりでなく、住宅単体が対象となっているので
住宅の周辺環境を含め、子育て世代にふさわしい住宅の質を問う段階には至っていない。
次世代の都市生活を担うのは、子どもたちである。子どもを産み育てたい人がそれにふさわしい住宅に住み、子育てができるように、制度やまちづくりの一層の充実が求められる。
横浜市で平成10年(1998年)に実施した「すこやかな子どもを育てる住宅および地域環境に関するアンケート」調査結果によると、子育て世代が望む住宅や地域環境を整備するに当たっては以下のような課題がある。 ・全般的に、子育て世代は、日当たり、風通し、駐車・駐輪スペースの確保を第一の力点に置くが、子どもが小さいうちは一人でも安全に遊べるよう、大きな道路に面さないこと、子どもが学齢期にさしかかると個室や収納スペースの確保などに第2の力点を置くようになる。したがって、末子の年齢によって細やかな対応が必要である。 住み替えを希望するのは末子が小学校に上がる6歳であることから、住み替えが円滑にできる支援が必要である。特に子どもによる入居差別のないようにしなければならない。 ・ 民間賃貸住宅に住んでいる者は、世帯主の年齢も若く、子どもが小さく、伸び伸びと遊ばなければならない時期に狭いところに住んでいる場合が多い。したがって、持ち家との格差是正、低層住宅やタウンハウ スの充実等、民間賃貸住宅の質の向上は大きな課題である。 ・子どもを育てやすい社会をつくるためには住宅だけでは解決できず、住宅に付随したポケットパークや子どもが遊べる共有コーナーなどのような子どもが自由に遊べる小さな共有空間の整備なども必要である。 |