都市再生推進懇談会(東京圏)第1回議事概要
1.日時 平成12年2月2日(水) 16:30〜18:00
2.場所 内閣総理大臣官邸大食堂
3.出席者
石原慎太郎、伊藤滋、伊藤元重、江口克彦、岡崎洋、翁百合、尾島俊雄、坂本春生、田中順一郎、月尾嘉男、土屋義彦、鶴田卓彦、中村英夫、グレン・S・フクシマ、古川昌彦、沼田武、森稔 (出井伸之委員は所用のため欠席)
(オブザーバー委員) 高橋清、高秀秀信、牧野徹、松井旭
(政府)
小渕内閣総理大臣、中山建設大臣、額賀内閣官房副長官、松谷内閣官房副長官
4.議事の概要
(1)中山建設大臣より開催が宣言された。
(2)小渕内閣総理大臣から
という趣旨の御挨拶があった。
(3)都市局長から懇談会の進め方について、
(4)委員から概略以下のような発言があった。
・都市環境は外国と比べ貧弱であり、都市再生には都市の骨格を大胆に改造すべき。このため、@環状道路の整備など交通基盤の整備、A居住機能を高め、高齢者にも優しい歩いて暮らせる街づくりを進めるため土地の有効・高度利用が重要。これらの都市基盤整備に当たっては、公共の福祉の観点から私権の制限はやむを得ず、迅速かつ柔軟な整備が必要。さらに木造密集地域等を対象に官民の投資を集中し、また、廃棄物処理の推進に向けて臨海部のモデルプロジェクトを立ち上げるべき。
・東京圏は、関東圏の行政機能を担うこととなるさいたま新都心をはじめ、国際空港が成田、横浜がコンテナヤード機能を持つなど、7都県市全体で首都機能を担っている。東京の交通渋滞解消には、外環等の環状道路整備が重要。これは、無用の流入交通を減らし、環境を改善し市民の健康を守ることでもある。
・東京は外国と比べ安全性や交通の利便性がある一方で、物価が高いこと、住環境が劣ること、国際空港へのアクセスが悪いこと、英語が通用しないこと、外国人コミュニティー向け基盤整備がないこと、などの問題点がある。
・時代の変化によって都市構造は変化する。IT革命が浸透し、電子商取引、医療、教育、など幅広くITが導入される中、都市はこれに対応する公共部門のインフラ整備、通信コストの引き下げが必要。箱よりは中身であるが、当面は世界一の情報都市を目指すべき。
・パリやロンドンの持つ印象のように都市の感性を重視すべき。観光客の少なさは都市の魅力のなさの現れである。また、都市機能を考えるには都市計画だけでなく都市サービスの観点から考えることが必要。観光客に対する施設の表示のような都市コミュニケーションを大切にすべき。さらにIT革命で土地の重要性は低下しており、この視点から都市計画のあり方の見直しが必要。
・情報社会に適応した都市づくりが必要。経済成長の中で職住分離型の都市が発展してきたが、1000万人が東京都心と家を往復する資源浪費型の環境を現出。留学生を引きつけ、産業、情報、資金を集めるために、今後は世界的に魅力ある都市にすべき。観光産業も留学生の数も日本は低い水準。魅力という意味では都市における文化が重要で、文化の蓄積が経済を創造している。
・さいたま新都心に新たに10省庁18機関が集まり、5月に街開きをする。埼玉県では南北の地域格差があり、本庄を核とした拠点都市を造ることとしている。新都心を核として職住遊学の拠点としたい。高速道路へのアクセス改善のため1時間道路圏構想を打ち出している。
・東京圏の問題の一つは安全性である。阪神大震災で経験したように震災が大都市に与える影響は計り知れない。また、風格のある都市づくりが必要で美しい誇りの持てる都市を実現すべき。快適で安全な街にリニューアルすることが重要。
・安全で快適な美しいまちづくりを東京圏の都市再生のテーマとするべきだ。様々な都市機能を国際水準まで引き上げる。方策として、@空港や3環状を含めた道路などの交通インフラ整備が重要。その開発整備に要する期間も短縮すべき。A財源の問題もある。都市への公共投資の配分見直しが必要。B防災面からは、現行耐震基準を満たさない建物の立て替え促進策が必要。C土地の集約化、街路整備。
・千葉県は昭和58年に千葉新産業三角構想を打ち出し、成田は交際物流機能、幕張は国際業務機能、上総は研究開発機能と、首都機能の受け皿として発展してきている。平成9年には東京アクアラインが開通。これにより圏央道は、川崎縦貫道路の整備を経て東名高速道路につながる。これで東京をバイパスし、東日本と西日本を結ぶ道路ネットワークが形成される。
・東京は京都にくらべて若者が多いが、これは便利、きれい、立派、物価も実質的には安いという東京の魅力によるもの。東京はだめだ、から出発すると良いものまで壊してしまう。東京は情報が豊富で魅力あるまちだ。しかし問題点として、交通、環境、安全が挙げられる。特に道路のインフラ整備には重点的な投資を行うべきだ。
・少子高齢化を考えた都市づくりが必要。女性の社会参加が進み、都市政策としてもこうした問題に取り組むべき。例えば鉄道の複々線化を図り通勤時間を短縮する。保育所の設置などは、福祉政策だけでなく都市政策として取り上げること。また都市の魅力を高めるにはロンドンシティーの再生のように税制見直し、通信コスト低減等の規制緩和など戦略的取り組みが重要。さらに金融的手法を活用し、民間マネーを取り込んだ総合的で横断的な施策が求められる。
・京浜臨海部は、大企業のリストラ等で大きな転換期にある。従来の製造業一本槍の発展から脱却する必要がある。臨海部は工業専用地域だが、今後人がゆとりを持って暮らせるまちづくりを進めたい。その際、貨物鉄道の旅客線化など従来のインフラ整備を生かす必要がある。一方この地域は、エネルギー基地などもあり、地震の際には広域的な被害が生じるおそれがあるので防災対策が大切である。
・都市のゆとりある生活の実現には、都市構造をかえる必要。具体的には、職住環境に配慮した土地の複合高度利用によるコンパクトなまちづくりが必要。さらに従来に比べ、空、空間をよりうまく利用した都市政策が求められる。情報ネットワークの整った3次元の都市構造を構築すべき。職住近接の超高層都市につくりかえるべきである。
・大深度地下の法案が提出されるが、大深度を活用し臨海部と都心・副都心を大深度地下のライフラインで結ぶことが重要。このライフラインは防災、ごみ、エネルギー、水系のインフラストラクチュアー幹線として非常時のみならず日常においても利用し、首都機能の新たな骨格とすべき。
・道路のネットワーク化及び都心部では民間主導の再開発が重要。江東・中央・港・品川区に国際都市をつくり、幕張とMM21とを結ぶ。また、大宮-池袋-渋谷に若者、ベンチャー企業が集まるサブカルテャーの存在が必要で、これを考えるのは区の役割。河川緑地をネットワークとして使って緑・緑地を増やすなど、都市環境の向上のために思いきったことが必要。
(事務局 建設省都市局都市政策課)