都市再生推進懇談会(京阪神地域)第2回会議概要  

日 時:9月17日(日)  午後0時30分〜午後2時
場 所:兵庫県公館第一会議室
出席者:委員の他、扇建設大臣、上野官房副長官

テーマ:「京阪神地域の基本認識と都市再生のための具体的方策

座長は秋山関西経済連合会会長。

1.建設大臣挨拶

 私は神戸生まれ神戸育ちで、今日神戸に来られることを楽しみにしていた。今回、森内閣で日本新生プランをつくっており、その柱のひとつに、都市基盤整備がある。我が国経済は緩やかな回復基調にあるが、数字ではなく現実に動かさなければならない。21世紀の国土づくり、都市づくりにどのように反映させていくかが大きな課題。京阪神地域は、京都は文化、大阪はものづくり、神戸は港を中心とした新しい発展の基盤というようにそれぞれ特色を有する。日本列島のなかで京阪神の持つ重みを再確認し、京阪神の成長の仕方、産業のあり方、あるいは発展の仕方をどうするべきかについて、皆さんの忌憚のない御意見を伺いたい。その上で政策として実現し、新しいものを発信していく起爆剤にしたい。今回で最後となるが、最終的に提言としてとりまとめていただきたい。
 阪神・淡路大震災から5年半たったが、まだまだ完全な復旧・復興に至っていない。貴重な経験を風化させてはならず、震災の警告を日本の国土づくりに役立てなければならない。また、国際都市、国際空港、国際港と、国際という看板を21世紀に持つために、今、何をしなければ間に合わないかという観点も大切ではないか。

2.ワーキンググループの報告

小林教授から、資料3について御報告。

3.意見交換

  ・ 秋山座長

今回は、都市再生に向けての基本的な認識と、そのための具体的な方策という二つのパートに分けて議論していただきたい。

〔京阪神地域の基本認識について〕

一国に匹敵する規模をもつ関西圏と東京圏は、張り合うのではなく、相乗効果を発揮することが日本全体にとっても大切であり、この点を強調すべき。
 都市圏や都市の性格は明確に示すべきだ。大学の存在や現在推進している研究機関の集積を関西圏の地域特性として活かし、国内外から人が集う圏域にするようなビジョンとすべき。エンタープライスゾーンもこの観点から位置づけ、京阪神地域の特性を生かしたゾーン政策を思い切ってとっていくようにすべき。

・ 関西空港は東京所在の空港とは違い株式会社で運営しているため、国際的にみて着陸料が非常に高い。国際競争力のある空港にするためにも、着陸料が安くなるような措置を講ずべき。
 大阪へオリンピックを招致できれば、青少年が世界の国や民族と直に触れたり、選手のがんばりを目の当たりにでき、21世紀の日本に大きな意義がある。
 都市の基盤整備は非常に大切で、スピードも要求されているが、ひとりでも反対したら進まないのが現状。土地収用制度その他、勇気を持って活用していただきたい。
 パリのシャンゼリゼ通りやニューヨークの5番街のように、御堂筋を都市基盤の成功例にしてはどうか。

・ 我が国のような中央集権的な体制では、政治・経済・文化の一極集中は当然であり、そこへすべてが集まっていくという認識は基本にないといけない。東京=日本とならないためにも、京阪神圏は一国並みの経済力を持つだけではなく、一国並みの権限を持つことが大事。多核ネットワーク型都市圏の形成による総合力の発揮という提案を具体的なシステムとして積み上げていくことが必要。

・ 多核的ネットワーク型都市は、委員で一致するところだろうが、京阪神地域がここまで地盤沈下したのは、分散の弊害があるからだ。学研都市は関西にたくさんあるが、世界有数の研究家が実際住みたいと思わせるような都市の集積はない。多核という意味は、広域的なまちづくりの発想の観点から、集中投資と優先順位をつけることであり、学術、文化、ITの分野でオンリーワンにする視点が大切だ。

・ 首都圏が東京、埼玉、千葉、神奈川で構成されるように、兵庫、大阪、京都は一つという前提で発想することが必要。道州制という話もあったが、都市開発にあたっては3つの地域の相互補完が重要だ。国際会議場や美術館は、各々配置しては無駄になる。この意味で、京阪神の総合的なグランドデザインを描くことが大切。

・ IT革命は、明治維新に匹敵するもので、関西の古いモデルが新しいモデルに変わっていくチャンスである。その効果としては、家庭が仕事場となり、通勤・交通問題の解消等が挙げられ、良質な住宅の供給が必要になる。社会的な影響としては、行動力、競争力、独自性が重要になり、これは創造性をもたらし、これまで画一的で創造性を失いがちであった日本の現状の壁を破ることが可能。このような事態に対して、政府は、IT革命の進展を自然に国民が受け入れられるよう、手助けすることと、不必要な規制をつくらないようすべき。一方で、日本の独自の文化やモラルをどう守っていくかが重要。

〔京阪神地域の具体的方策について〕

都市再生の際には「文化」をキーワードとすべきで、劇場、コンサートホール、美術館、博物館がポイントになる。これら文化的な建築物には諸々の法規制がかかっているが、容積率等、法令上の特例を検討して欲しい。
 再開発組合や土地区画整理組合の同意は法律で3分の2で良いとされているが、実際は100%同意を要するような運用がされている。これでは都市再生ができない。平成10年7月の通達通りの実行をお願いしたい。

・ 日本の国内総生産の約半分は3大都市圏その他政令都市で生み出され、しかもこれからの時代はITなど都市型産業を延ばす必要がある。ところが、都市は居住、環境、渋滞等で問題があり、都市に対する投資の低迷が見られる。一人あたりの事業費で道路整備を見ると、大阪は全国平均の0.4倍だ。こういう中で都市整備をすすめるためには、本来は地方への税源委譲を実現するのが理想だが、すぐに達成されないのであれば都市再生包括交付金の検討が必要。これは、交付金という形で一部税源委譲を果たし、都市部に対しまちづくりに分野を限定し、効率的、重点的に都市政策を行うというもの。この問題は、建設省だけに限らず、財源、福祉、文化の問題とも密接に関連するので関係省庁で検討する窓口が必要ではないかというふうに考えている。
 関西空港については国際的なハブ機能という観点から、施設整備について国の責任と負担であることを認識すべき。
 また、国の直轄事業に係る地方負担のうち、維持管理費について見直しすべき。

・ 都市の活性化という面で、どうすれば活力が出てくるかを考えると、今までのように単にお金をつぎ込むということではなく、人にスポットを当てる必要がある。文化で言えば、ウィーンで音楽家を育てるため、税を減免してまちづくりをすすめたように、ファッション関係者やUSJにあわせ映画関係者等明確に人を対象にして、税の減免や、補助金なりをやって活性化させていくべきではないか。
また、ガソリン税は、現在道路整備に相当使われていると思うが、エネルギー政策、環境分野とかに使っていくような政策があってもいいのではないか。

・ 東京に追いつくという発想ではなく、京阪神の持っている歴史、文化、自然、風土、そして京阪神のアイディンティティを主張できるような都市圏づくりが必要。その上で、東京圏と連携して世界に対する役割を果たすべきだ。また、京阪神は平地が少なく、瀬戸内海地域に西日本の経済文化交流圏をつくっていくための指導的な役割を果たす必要がある。
 人にスポットを当てるべきというのはまさにその通りで、人と国土づくりという観点から京阪神の役割を考えていくべき。産業の振興の面では、IT、ソフトウェア産業、福祉、バイオに加え、兵庫、神戸での健康産業に視点を当てるべき。「関西知識回廊」や人づくりの面では、学術、技術に加え、芸術の振興を強調したい。
 都市景観、アメニティの豊かさは、これからの都市づくりで大切。高齢化社会の面では、バリアフリーに限らず、モビリティ環境の向上を目指し、ノーマライゼーションの社会をつくっていくべき。

・ これからの高齢化社会では、地域コミュニティが重要で、まちづくりへの住民参加が必要。小さい子供のときから、IT教育と同時に権利の調整の問題を含めたまちづくり教育を進めるべき。インターネットを活用したまちづくりへの参画、教育も検討してはどうか。

〔今後の進め方について〕

  ・ 山本都市局長

 資料3をベースに、本日の議論を踏まえて、関経連の秋山会長のもとで提言のとりまとめをお願いしたい。

  ・ 秋山座長

 提言のとりまとめにあたっては、吉川委員に提言の起草をお願いしたい。

 

・ 日本新生プランは森内閣の目玉であり、都市基盤整備もそのひとつだ。補正予算の編成もあり、本日の御議論の内容は総理にお伝えしたい。
 活力や魅力をこの地域にどうやって生み出すかという問題では、公的な面だけでは難しく、良いアイディアをしっかりとこの地域に根づかせることが大事だ。私も、森内閣として、一生懸命がんばらせていただきたい。

・ 地域の特性を発揮するためには、地域の皆さんから声が出るべきものであり、ぜひ皆さんから声を出していただきたい。真の公共事業とは、その地域で真に必要なものを、国がお力添えするというものでなければならない。日本の中での近畿圏のグランドデザインをぜひつくっていただきたい。
 共事業に関しては、臨時国会で法案を提出したい。また、土地収用法の改正も国土づくりのために是非やらなければならない。本日の皆様のご意見は、秋山さん、吉川先生に大変ご努力いただき、京阪神でなければないというような提言を出していただきたい。


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