資料4

都市再生推進懇談会(京阪神地域)第1回会議概要

日 時:5月20日(土) 午後4時〜5時50分

場 所:(社)クラブ関西
 
出席者:委員の他、森内閣総理大臣、中山建設大臣、松谷官房副長官

テーマ:「京阪神地域の都市再生に向けて取り組むべき課題と施策」
 
座長は秋山関西経済連合会会長。


1.委員によるプレゼンテーション

 (1)津田委員(関西経済同友会代表幹事)

京阪神地域の活性化には次の3点のポイント

@ A…アメニティー。その街に住みたいと思わせるまちづくり。
 公共投資を大都市に重点的に配分。また、効率的な予算使用のための予算単年度主義の見直し。具体的には、渋滞解消(小さい投資で大きな経済効果)、関空2期工事(公共投資により国際競争条件の整備を)等。また、かつて大阪の住宅行政は大衆向けであったが、様々な階層により構成されるよう住民バランスを回復する必要。そのための居住地区の候補地はベイエリア。

A B…ビジネス。 働く場の提供。
 大都市の活性化には、コア産業が必要。確実に成果が上がる産業は、観光。観光集客都市となれば、産業は興る。
B C…カルチュアー。文化が盛んであること。
 観光集客都市にするためにも、オリンピックを招致し、大阪を世界に知らしめていく必要がある。オリンピックの情報発信力は大きい。 

 (2)熊谷委員(大阪大学名誉教授)

@ 情報化社会になると、オリジナルであるものほど真の価値を有する。これからの時代こそ、バーチャルよりリアリティーが大切。これを怠ると真の情報発信源になり得ない。「本物」がないと、情報の価値がない。

A 京阪神には、「東京一極集中」に無縁な世界がある。それが「学術」と「文化」。すべての分野において世界の先端足り得なくても、この2点において、京阪神には真の情報発信源足りうる「本物」を有し、それを育てる環境がある。我が国における学術と文化のセンターを目指すべき。観光に加え、学会により集客が可能。

B 21世紀は遊び心が新技術・新産業を育てる。そのためにも、京阪神は魅力を高める必要。美しいまち、美しい国土を創造するべき。関西全体を「ガーデンアイランド」に。


2.意見交換

・関東圏と関西圏では、よく似た形で発展してきた(港は、横浜、神戸、空港は、成田、関空、学術では、つくば学園都市、関西学研都市)が、これからは、地域の特色を活かしたまちづくりを進めるべきだ。そのために各都市を結ぶ高速道路の整備が重要。また、木造住宅は一般には劣悪と言われるが、京都の町家は立派に使える住宅。これをまちづくりに活かしていく。SOHOや芸術家のアトリエ、和風迎賓館の建築など、今残る町並みを有効に活用したい。

・京都、大阪、兵庫という個性ある都市が切磋琢磨して圏域全体の発展を導く。このため、広域連携のための自動車専用道路の整備促進が課題。関空については、周辺ハブ空港の建設が進む中、利用促進を図ることが重要。高度経済成長時に、基盤が追いつかないまま市街地が急速に発達し、居住水準、防災上の問題、交通渋滞、商店街の活力の低下、工場跡地の存在など多くの課題を残した、インナーエリアの再生が課題。活気、魅力がなくなっているため、郊外にファミリー層が流出している。このため、都市基盤整備公団の参画、民間の行うまちづくりへの支援等が必要。さらに、都市再生包括交付金制度を創設し、地方の自主性を活かした取り組みを進める必要。インナーエリアの再生なくして大都市の再生はありえない。

・人口が都市に集中するなかで、都市住民は自然回帰の流れにあり、若い人が郊外に出て、中心部に高齢者が残った。この高齢化の進んだ都心部が震災により破壊された。
 少子高齢化社会が到来し、ゆとりある暮らしや、老後の安心した暮らしが課題。このため、ベッドタウンを高齢者が生きがいをもって住めるように再整備。老後の生活スタイルに対応した多自然型居住を行う地域と、都市との機能分担を図る必要また、欧州が日本をパートナーとしたがっており、複数の空港を有する関西圏がアジア太平洋地域と欧米との接点となって学術・文化等のポートとしての機能を果たすべき(新アジアポート構想)

・関西知識回廊の構想を提唱する。21世紀は大交流の時代であり、創造性、コミュニィティ、文化がキーである。関西では、関西学研都市や国際文化公園都市、バイオセンター、播磨科学公園都市があり、情報・公園都市としての取り組みがなされている。創造性を生む出すには、フェース・ツウ・フェースによる知識交流が必要。このため、第二名神自動車道等を整備し、強力な知識回廊の形成が重要。海外との知識交流のため、関空第2期、関西大環状道路、アジアポートなど着実に推進すること。
 関西には、自然が多く東京にはない魅力のある空間がある。これらを生かした環境創造型のまちづくりやゼロエミッションという循環型のまちづくりが必要。
 これらの推進には、太田知事ご提案の都市再生包括交付金制度の枠組が必要である。 

・相続における税制のために、土地が細分化されたり、貴重な文化遺産が失われている。文化遺産を寄付する場合には税制控除を認め、大切な文化遺産を残すべき。
 また、市民のストレスを癒す場を設けるべき。東京の明治神宮は人間の肺の役割を有している。Eメールやインターネットが普及したのだから、家庭でも働けるように日本の企業は労働条件に係る制度を柔軟にするべきである。 

・各都市の都市資源を活用したまちづくりを行うべき。
 京都は、学術・芸術・宗教都市として特化する。小学校跡地を活用し分散型の研究機関のネットワークを整備すれば、施設整備も不要になる。定年退職した研究者の専門的知識を活用し競わせていけばよい。大阪は、医療・医薬品・バイオ産業の育成、神戸は、高度で良好な住宅都市としてのまちづくりを進め、それぞれの都市の特徴を生かすべき。 

・ヒューマンなコンパクト都市づくりが必要。また介護などに関するキメ細かなシステムと一緒になってはじめて都市に住める。保育、介護施策も都市づくりの一環として行い、少子・高齢化社会を見据えた生活圏を目指すべき。 

・3つの再構築を進めるべき。ベンチャー企業、新産業を軸にする「産業の再構築」、集客や企業投資を促す「都市の再構築」、まちづくりにおける国と地方との役割分担を見直す「税財源システムの再構築」が必要。 

・かつて広域行政が唱えられたが、相変わらず多くの自治体が存在している。京阪神地域は自治体が多すぎるという問題を抱えている。介護保険にしてもそれぞれ独自にやっているという問題だ。これらの受け皿として解決するには、東京都のような広域的行政を円滑に行える道州制、都制を敷くことを考えてはどうか。国土交通省になれば、京阪神地域には約1兆7千億程度の予算が配分される。大阪湾を一つにまとめることが必要である。中央省庁の改革で政府は1府12省になるが、地方自治体も大きくまとまるべきだ。
 そのためにも、大阪は町並みをきれいにしなければならない。大阪は、これまで南北の軸の形成を図ってきたが東西も必要だ。西のユニバーサルスタジオに対して東西の軸が必要。京橋を始め、京橋地区の再開発をすすめたい。
 サミットは今回沖縄で開催されるが、次に順番がまわってくるのは2007年だ。オリンピックが2008年に開催されるのと併せてサミットもオリンピックも大阪で開催して、世界に京阪神地域をアピールすべきである。 

・関西は豊富な自然や貴重な文化遺産などが残り、こうした特性を活かしたまちづくりが大切だ。関西では早くから私鉄が整備された。このネットワークをどう活かしていくのか。東京は遊びの街を次々と作ってきた。今はお台場に全国の若者が行きたがり、修学旅行も来る。しかし関西圏にも甲子園、花園、宝塚、と若者のあこがれる場所があり、これらをうまく活用すること。特に、若者にとって魅力あるまちづくりが重要である。 


 今後の進め方 

 第2回会議は7月〜8月に開催を予定し、京阪神地域の都市再生に向けての提言の基本的考え方を義論する予定。
 また、ワーキンググループを設置し、具体的方策、提言のとりまとめを行うことが了承された。



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