都市再生推進懇談会(東京圏)第3回会議概要

日 時:8月31日(木)午後5時15分〜午後6時15分
場 所:総理官邸大食堂
出席者:委員の他、森内閣総理大臣、中川官房長官、安部官房副長官、上野官房副長官、古川官房副長官

 新しく建設大臣に任命された扇千景でございます。お手元の資料に今までの概要を取りまとめており、よりスピーディにご意見をいただき、よりスピーディにまとめたい。今日は限られた時間内で有効な御意見をいただき、本日3回目を最後にまとめに入るのでよろしくお願いしたい。

 現内閣の最重要課題は日本の新生であり、21世紀を目前に控えた今日、次なる時代への改革のプログラムとなる日本新生プランを政策の基本に据え、具体的な政策展開を図ることによって、さまざまな課題を克服していくべきと考えている。
 中でも都市新生は日本新生を実現するための重要な柱であると位置づけている。東京圏の都市再生についての本懇談会は、本年1月の小渕前総理の指示に基づき設置されたものであるが、本日をもって最終回となるため貴重な会議であり、ぜひとも忌憚のないご意見を賜りたい。
 東京圏は名実ともに我が国第一の都市圏であるが、都市機能という観点から見た場合、多くの課題を抱えている。例えば環状道路の整備が十分でなく、東京に入る幹線道路が東京の手前で大渋滞を起こしている実態、都市住民の毎朝の日課となっている過酷な通勤電車の実態など、現実の都市の姿は深刻である。
 これらを克服することは非常に困難な課題であるが、知恵を結集してこれらを解決し、だれもが豊かに暮らしていける状況を整えていく必要があることを痛感しており、提言の中にぜひ皆様方の積極的なご意見を盛り込んでいただきたい。私も、心豊かに暮らせる日本の実現のため、そのかぎを握る都市新生に全力で取り組む所存である。

・難しいのは、各省、各局にまたがるプロジェクトであり、総理の下、各省、各局にまたがるテーマを率先して考えてもらいたい。  また、もう少しブレイクダウンすることが必要であり、役割分担、権限はどこなのかをはっきりさせないと、具体化しないのではないか。

・ここに書いてあることはおおむねどの先生方もご指摘いただいた非常にいい内容だと思うが、グランドデザインを描く場合には、同時にタイムスケジュールというものが大切である。いつまでにどうするんだというものがない。資料中に一ヶ所、5年スパン程度のアクションプランを作成とあるが、ほかのところにもきちんと期限をつけたほうがいい。

・首都を構成している東京、神奈川、千葉、埼玉、そして横浜、川崎、千葉という政令指定都市を代表してお話しする。第一に、地方分権が進められる一方で、財源が確保されていないこと。直轄事業の地方負担制度は矛盾している。高速国道整備への地方負担も同じだ。直轄事業への地方負担は、事業の事前協議がなく、維持管理への負担もさせられている。さらに事務費の算定が不透明だ。地方自治体が国のウラ負担をすることがア・プリオリになっているが、論理性に欠ける。道路特定財源について、東京圏は、ガソリンの売り上げに対して、配分が少ない。地方分権の名を借りた、地方負担の増はあってはならない。
 第二に、前回も話したが、東京圏メガロポリスの整備を進めるために、七都県市と国で構成する常設の協議機関の設置や、新しい制度の構築にぜひ取り組んでもらいたい。
 第三に、軽油とディーゼル車対策。軽油はガソリン税と税体系が違って、蔵出し税でなく消費税となっており、そのため手の込んだ脱税が可能となっている。大気汚染の主たる原因は、ディーゼル車の排ガスから出る粉塵だ。東京で、肺ガンで死ぬ人の16%は自動車排ガスが原因だ。ぜひ税法を改めてもらいたい。都市の環境を再生していくことが不可欠。ハードウェアも大事だけれど、それだけでは大都市の環境問題は解決しない。

・国際都市としての観点から東京の再生を考える場合、常にグローバルな視点で、他の都市と比較する必要がある。
 また環境整備や通信ネットワークの構築には、コスト感覚をぜひ反映させるべきだ。利用者、住民から見て、費用対効果の高い効率的な再生のやり方と、通信費等のインフラコストを下げるということを目標にすべきだ。
 東京の再生をこれからいろいろ実行する段階で、外に積極的に発信、説明をしていただきたい。東京は高い、住みにくい、空港が遠い、英語が使えない等、いろいろな面で不便だというイメージがあるが、これを払拭する必要がある。

・国際的な都市間競争を勝ち抜くため、インパクトのある施策が必要。都市の再生につながるプロジェクトをいかに実現させていくかが重要で、ガット・ウルグアイラウンドの際の対応に準じて、10年間で、例えば12兆の枠で都市の重点投資を行うことは、政府の姿勢を示す上で大変大きなインパクトがある。問題は、どこに戦略的かつ重点的に投資するかで、提言の中ではできるだけ明確にすべき。
 第2回目でも提言したが、東京圏の都市新生プロジェクトとして、第1には、環境にやさしい東京圏の物流効率化プロジェクト。都市の快適化と快適な都市環境を実現するため、物流の効率化、円滑化を推進することが重要。環境の観点から、鉄道貨物にかかるインフラを国家的な基幹インフラと位置づけ、国の予算の積極的な投入を図るべき。
 第2は、廃棄物処理問題に対応する循環型都市形成に向けた新自然産業創成プロジェクト。廃棄物リサイクル等の新資源産業の創設、ゼロエミッション指向の循環都市型の形成、最終廃棄物処分場の確保が必要。
 第3に、防災上の問題が指摘されている木造密集住宅地に関連して、危機意識をもって取り組むべき。
 これら事業、プロジェクトは、土地収用法の見直しなど公共用地の確保にかかわる手続の迅速化に向けた制度面の整備がぜひとも必要。
 臨海部における大規模な未利用地、工場が閉鎖した後の土地の利用の仕方では、現在は土地利用規制があるので、暫定利用の拡大と、あわせて固定資産税、都市計画税、不動産取得税などの土地保有流通にかかわる税負担も検討すべき。

・IT戦略会議では、具体的に特別な予算枠を組むなどしているが、都市再生のほうは、かなり漠然。誰が、いつまでに、幾らでやるのかを明確にすべき。これが難しい場合、少なくともどういう手順で今後明確にしていくか、仕組みををつくるなりして、具体化していくことが重要。
 第2点はこの基本的な認識の中に歴史的認識がないのは、100年に1度の再生ではやや格調を欠く。東京の、国際的な位置、歴史的に今どの状況にあるか、ぜひ基本的な認識の中に入れるべき。

・残念ながらまだこの段階では、具体的なイメージが出てこない。大切なポイントは具体化についての総理のリーダーシップだ。土地収用法の見直しが実現すれば大変なブレークスルーであろうし、国際空港の問題、幹線道路、環状道路もスピードもってできるかどうかが大切。ぜひリーダーシップを発揮していただきたい。
 次に、長期的な継続の意思は必要で、例えば協議機関を常設するのは、一つの仕組みだ。

・美しく風格のある都市づくりをやる場合、建物の高さ制限を行う、地域にこれこれこのようなものをつくるというときに、個人の既得権ともろに抵触する。それを納得させるためにも、将来像と、それへ向けてのタイムスパンを明確にすることが重要。これがあれば、個人はある程度の既得権も我慢し、都市の美観を創っていくこととなる。

・森総理のできることはこの中から選ぶことだ。この中でどういう優先順位をつけるのかだ。思い切って扇さんと一緒に優先順位をつけ、我々がサポートするというのが正しい姿。IT戦略会議では5年間で超高速ネットワークを引いて、アメリカを上回ろうという具体的な目的を立てた。1カ月2,000円ぐらいにしてつなぎっぱなしにすべきだ。  不便を解消するというキャッチアップの思想から、何か世界でやっていないことをするなど、便利創出型の発想に変えるべき。
 例えば、都市はセンサーとアクチュエーターから成り立つ。道路、建物に全部センサー(情報、交通標識、どこが混んでいるか分かるようなものなど)が入り、町中に広がると、アクチュエーター(様々な情報を受け都市内を動く主体、人・車)はどこが混んでいるか等様々なことが分かり(人ナビ)、非常にユニークな町ができる。

・私は超高層派だが、日本のまちは美しくない。戸建てなら戸建て、集合住宅なら低層住宅、中層住宅、高層住宅、と、それぞれがまとまって街区を形成していれば形になるが、現実は乱雑だ。それぞれのスタイルによる地区を決め、それに合う街区形成を行うことが必要。特に大規模建築物、超高層の建築物を建てるときはなおさらだ。

・花粉症など大気汚染を要因とした問題は深刻だ。大気汚染は大都会への集中集積により、必然的に起こるものであり、軽油の問題を含め、これを解決するには総理の御決断が必要である。

・一番痛切に感じるのは、幾らの金を、いつまでに、だれが責任を持って、どういう領域に投入するかということをはっきりすべきということ。

・かつては国土利用等、大きな政策目標があった。今これを明確にすれば、各省も個別の政策を進めやすい。
 東京、横浜と個々の都市と世界を比較するのではなく、これからは東京圏全体で考えるべき。東京の都市再生ではなく、東京圏の再生だ。その上で、各自治体なり各都市がどういう機能分担するか、各都市がどう力を合わせるかだ。例えばITでも、圏域内の情報交換を容易にし、圏域で海外にも情報を集めたり発信したりすることが考えられる。

・どういうふうに具体化していくかが極めて重要。その際、省庁横断的、そして自治体と国が協働で進めていく総合プロジェクトとして打ち出す。
 今まで都市政策はハードのイメージが非常に強いが、これからはソフトの面が重要。その面からも、総合的な施策としてグランドデザインを打ち出していただきたい。
 もう一つは、タイムスケジュールの問題が重要だ。これらいろいろな施策の中で、急ぐものも多い。特に高齢化、少子化というのは非常に急速な勢いで進んでおり、これに対応した都市づくりは極めて重要な施策。

 本日のご議論を踏まえ、懇談会としての提言をまとめたい。取りまとめに当たっては、伊藤滋委員に起草委員をお願いし、提言案を作成していただき、委員の皆様方には個別にその素案につきご了解をいただき、それを踏まえて提言とさせていただきたい。

・今日を含め、これまでいただいた意見を総論として要約すると、いつ、誰が、どのように、幾らでやるか、そしてそれを国民に見せ、具体化すべきということ。
 森総理の目玉として、森総理に何をしていただくかは、ぜひ森総理にご決断いただく。今までの3回のご意見を踏まえ、私も一生懸命、総理を支え実現するよう取り組みたい。特に日本新生プラン、何が新生なのかをぜひ私は森内閣として出していきたい。日本に国際都市と言えるものを残せるかどうかだ。

・提言をまとめる際、都市の新生にあたって、国の責任、地方公共団体の役割を明確にしていただきたい。
 パキスタンのイスラマバードを見てきたが、予想していたよりも立派な都市、首都だった。これを見て首都圏を移す場合は更地かと感じた。ところが、核実験の関係で日本の経済措置のため、イスラマバードにいた日本の企業、人は全部カラチに移ってしまった。私が訪問するということでカラチからみんな3時間かけて来たが、経済と政治行政は一体でなければいけないとも感じた。インドのバンガラルは古い町だが、風格がある。緑も豊かだ。日本は経済大国になったが、東京を美しい都市にしなければいけないと改めて感じた。

・やはり強いところは強くはっきりと主張し実行するということがないといい街にならない。東京はそれを全部いい加減にしてきた。



目次に戻る   都市再生推進懇談会のホームページに戻る