資料5


都市再生推進懇談会(東京圏)第2回会議概要


日 時:5月17日(水)午後4時半〜午後6時

場 所:総理官邸大食堂

出席者:委員の他、内閣総理大臣(冒頭あいさつのみ)、松谷官房副長官

テーマ:「東京圏の都市再生に取り組むべき具体的な施策」

1.委員によるプレゼンテーション

(1)石原東京都知事

@ 環状道路などのインフラ整備を円滑に進めるため、土地収用制度を改正すべき。プロジェクトが決まった後に買いに入る一坪地主運動に対して大変な時間がかかる。

A 広域的なまちづくり推進のため、国及び7都県市の首長による協議機関を建設省に設けるべき。

B 廃棄物の再利用の促進についても国がリーダーシップを果たすべきである。

C 環境対策のため、軽油に係る税制の改正や脱硫の促進など軽油対策を徹底するべき。

(2)古川委員

@ 鉄道貨物輸送の促進によって環境にやさしい物流システムの構築を促進するべき。また、武蔵野操車場跡地を利用し、国際コンテナを中心とした物流基地を整備(インランドポート構想)。これにより大型コンテナ積載トラックの都市内への流入を抑制し、廃棄ガスの減少、交通渋滞の緩和が図られる。また、商業、業務、住宅などの複合用途の都市開発により地域の活性化。

A 循環型経済の実現に向け、廃棄物削減のため、首都圏の各地域にリサイクル・リユース施設や研究施設からなる新資源産業センターを整備。

B 木造住宅密集地域を、防災性と美しさを備えた職住近接の町に再構築する大胆な都市改造に取り組むべき。

(3)月尾委員

@ 集中拡大方針から連携分散方針への転換。

首都圏域の連携分散により成立する構造の策定

A 機能分離構造から機能複合構造への転換

職住複合を容易にする用途地区制度・容積制度を。

B 縁辺開発方式から中心再生方式への転換

エネルギー基準や環境基準からの都市構造評価制度の検討。

C 経済中心主義から文化牽引主義への転換

経済が文化をリードした時代から、文化が経済をリードする時代へ。

D 規模拡大志向から魅了向上志向への転換

これからの世界秩序は魅力であり、「魅力」を都市計画や地域計画に取り込む必要。


2.主な意見     

・日本は香港、シンガポールなどの都市とモノとの間で情報のハブ機能の競争局面にある。シンガポール、ロンドン、NYなど世界をリードしている都市を見ると、これからの都市はITにいかに対応するかにかかっている。ネットワークが都市の優劣を決めるのだから、企業活動の上からも抜本的な改革、対応が望まれる。

・ITは時間、距離、コストを削減し、経済・政治・教育・医療等、人の生活そのものにかかわる状況を抜本的に変える。従ってIT革命が生活や都市におけるライフスタイルにどう影響するか検討が必要。都市政策の中にITを体系的に位置づけるべき。

・「国際競争力ある東京圏づくりへの提言」(総合政策研究会:委員長 鶴田)から紹介する。

 @都心居住を推進、多機能化せよ、A首都にはもっと公共投資を、B都心部の容積率は大幅に増やせ、C民間資金の活用やPFIの推進など財源確保に知恵を絞れ、D私権の制限、収用法活用で再構築を迅速化せよ、E防災都市を目指そう、F官民協力して再構築の推進を、G都道府県を越えた広域的取り組みを。

・これからは知識集約産業など、都市型産業が重要であり、都心部が空洞化し、人が少なくなっている現状ではパラダイムを変える必要。このため、細分化した土地を集約し、都心の土地の高度利用・複合利用、垂直方向の利用を促進するべき。国際金融都市としてグローバルに行動するサラリーマンが住むべき住宅がない。都心部に快適な住居を供給するためにグランドデザインを作って受け入れること。

・空中、地下を使った都市基盤整備を進めるべき。また、その時に初期段階の基盤整備は国が先導的に行うべき。都市に立体的なメリハリをつけてやるべきだ。パリは1930年に地下都市基本計画をつくっており参考にすべきだ。資金面ではPFIを活用し、国も支援すべきだ。

・大深度地下利用法は10年以上も前から検討されていたもの。スピードの遅さを象徴するようなものだ。

 今東京で50年後のあるべき姿を見据えた中長期のビジョンをつくろうとしているが、人口年齢構成などのほかにどのようなことを考慮すべきか。皆さんからご教示を頂きたい。

 また、可処分時間をうまく利用する方法について、サジェストがあれば聞かせて欲しい。高齢者をどのように位置づけ、どう社会参加を促すか。

・情報化時代の到来で、アメリカでは10年後すら予測することが難しくなっている。50年後は想像もつかない。

・アメリカでは70歳が定年なのだから、日本でも働けるような環境が必要だ。

・月尾先生のプレゼンテーションに賛成である。都市の再生を考えるにあたっては、具体的なプロジェクトだけでなく、フィロソフィが大切だ。理念についてコンセンサスをつくりたい。

 都市開発を進めるにあたっては、土地収用法はあるが、何よりも環境づくりが大切だ。都民として、協力するようなパブリックマインドが必要ではないか。当然、協力に対する代償は都民全体により負担されるべきた。

 臨海部の活性化が課題となっており、遊休地を有効活用する必要がある。周辺の開発動向をみながら暫定的に土地の利用、建物を建てられよう認めるべきだ。このため、工業専用地域を、弾力的、柔軟に運用すべきである。暫定的な利用にあたっては、暫定の仮設建物は1年しか認められていないが、5年ぐらいにできないか。仮設建物の賃貸契約も1年で後は延期では不安定なので長くすべき。さらに暫定建物の償却できる税制、等を政府は対応すべき。

・老後の可処分時間については、アダプトプログラムが参考になる。公共施設について公的部門がすべて管理するのではなく、河川、国道、等を地域が引き受け管理する手法だ。

・老後はもっと遊んでもらいたい。臨海部にエンターテイメントをつくることを進めてはどうか。観光産業も活性化する。

・今後は少子・高齢化社会、環境問題が時代のfactorとなろうが、何より21世紀は予測不能で不確実の時代だ。坂本委員が言われるように、予測することが難しいのだから、柔軟な土地利用のあり方が必要である。臨海部は重工業で発展してきたが、これらの地域の暫定的利用を可能にする都市計画が求められる。また、土地の有効利用、プロジェクトファイナンスの手法確立・普及、資金調達の多様化、税制のあり方、特に不動産取得税の検討が必要。

・実際に都市の整備を担当している側の実感では、プロジェクトを実行するには、時間・カネ・手間がかかる。採算条件の悪いところもあるしオールジャパンでやるなら国の投資が不可欠。どこにターゲットを置くのかが、重要ではないか。また、50年後には大幅に人口が減少するであろうが、ひとつ言えることは50年後であってもガラクタにならない美しい都市として残るようなまちづくりが大切だと考えている。

・都市がどうあるべきかの絵を描くことは結構だが、実際に進める者からすれば、土地ひとつ動かすにも大変な時間がかかっている。これでは、市民の都市開発への期待・希望が失われる。実行可能なものから着手し、実際に都市が変わることを見せるべきだ。実際プロジェクトを実施してみると、結構民間から手が挙がった。官民の協力、公の支援が必要だ。また、臨海部に走る貨物鉄道の旅客化、新川崎操車場の跡地利用などを進めているが、時間ばかりがかかり、早く実行に移したい。都市開発ではスピードが大切だ。

・東京の再生について世界に向けて紹介したい。IT、情報産業など都市のスタイルが変化している。高齢化、少子化等で都市の人口構成比は変化し、都市のあり方が変わろうとしている。こうした環境にあって国は課題解決型の都市づくりを行い、具体的なプロジェクトを示すことが必要。首都圏は、GNPで世界で4番目である。人、モノ、かねを世界から呼び込む都市に再生することが必要。

・最近の犯罪等を見ると、子供を取り巻く遊びの世界、家族との団らんや大人社会との関わりが失われているいるのではないかと気にかかる。これからの都市づくりでは、これらを復活させる必要がある。ヨーロッパでは公園の周りに高い建物が立ち並び、いつも広場を見渡せるようになっている。

・道路の整備は必要。土地収用法を実際に適用すること。東京、狭い日本では、上に広がるしかないのだから、多重層道路などたてに広げるべきだ。さらに住民はどういう街づくりを進めるか共有認識を持つべきであり、国民の意識改革が必要だ。

・都市への投資を大幅に拡大することが不可欠。ウルグアイラウンドでは、6兆円だった。東京圏、京阪神地域で国民の約半分なのだから、例えば都市の再生には10年で約12兆円のビックプロジェクトとすること、国が責任をもって都市の再生に取り組むことを明確に示すべきだ。

・会計年度の見直しも必要ではないか。

  3.今後の進め方  

7月に第3回懇談会を予定。

東京圏では、提言(案)の考え方を提示したいので事前に各委員からご意見をいただけるよう文書で照会をするのでご協力いただきたい。



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