まちづくりの目標や課題は、地域や地区ごとに異なりますが、具体化したプロジェクトごとに個別対応
するばかりではなく、都市計画上望ましい建替え等を面的に実現することもまちづくりを進める上では重
要です。この際、地区の実情にあわせて、貢献の内容と容積率の緩和の具体的なルールを定め、これを事
前に明示することで、地権者や民間事業者等による事業検討が促進され、まちづくりの誘導が図られるこ
とが期待されます。都市計画提案制度を活用し、地元発意によりこうしたきめ細やかなルールを定めるこ
とも有効です。
また、地区の目標や課題によっては、「高度利用型地区計画と街並み誘導型地区計画」、「街並み誘導
型地区計画と用途別容積型地区計画」など複数の手法を組み合わせることも効果的です。
ここでは、地域の創意工夫による容積率特例制度の活用例について紹介しますので、地区の目標実現や
課題解決に向けて御活用ください。
1. 地域特性に合わせた緩和ルールの設定(民間の創意工夫を最大限に引き出す仕掛け)
地域のまちづくりの目標の実現に向けては、一律に考えるのではなく、地域特性にあわせた貢献の内容を定
め、その実施に応じた容積率緩和の組み合わせを定め、これを事前に明示することが効果的です。こうした工夫
により、地元地権者や民間事業者等における事業検討に係る労力と時間の軽減が図られ、事業化の促進が期
待できます。
また、あらかじめ定めた一定のルールによらない創意工夫による提案がなされた場合にも、柔軟に受けとめ、
民間事業者等の創意工夫を活かしていくことも大切です。
これらの取り組みにより、地元地権者や民間事業者等によるまちづくりへの積極的な提案と参画を進めること
が重要です。
1)個別の地区計画に、貢献内容に応じた容積率緩和のルールを定めている例
地区計画の地区整備計画における「建築物の容積率の最高限度」の欄に、評価対象となる貢献内容及びそれに応じ
た容積率の緩和度合いを記載し、事前明示している例を紹介します。
(地区名をクリックすると、地区の詳細がご覧いただけます。)
○
札幌駅前のメインストリート沿道。メインストリートにふさわしい賑わい・歩行者空間の創出や公共地下歩道・地下鉄駅との接続等に寄与する
事項(低層部への店舗等の導入、歩道状空地の確保、地下鉄駅への出入口の設置等)を評価対象とする貢献内容とし、貢献度合いに応じた
容積加算分を設定しています。
なお、まちづくり計画策定担い手支援事業(詳細HP参照)による国の補助を受け、地権者による都市計画提案がなされている点も参考
となります。
○
市の総合計画で新都心としての発展を促進する地域として位置づけられている札幌駅近郊の市街地。新都心にふさわしい土地の高度利用
と併せたオープンスペースの創出や都市サービス機能の充実に資する事項(歩道状空地の確保、広場の確保、低層部への社会福祉・医療施
設、商業施設等の導入等)を評価対象とする貢献内容とし、敷地等条件とそれらの組合せに応じた容積加算分を記載しています。
2)独自条例に基づき指定された地区毎に、貢献内容に応じた容積率緩和のルールを定めている例
東京都は「東京のしゃれた街並みづくり推進条例」を制定し、その中で「街区再編まちづくり制度」を創設してい
ます。
(制度名をクリックすると、制度の詳細がご覧いただけます。)
密集市街地などまちづくりの様々な課題を抱える地域において、細分化された敷地の統合や細街路の付替えなどを行いな
がら、共同建替え等のまちづくりを進めることにより、魅力ある街並みの実現を図るための制度です。
対象地域を「街並み再生地区」に指定し、地域におけるまちづくりの独自のガイドラインとなる「街並み再生方針」を定
め、都市計画に基づく規制緩和を活用しながら、合意形成の整った地区から段階的に整備していく。
2.複数制度の効果的な組合せ
都市計画特例制度では、一定の考え方に基づき、規制の担保と併せて都市計画制限を緩和する特例メニューを制度化して
いますが、地区の目標や課題によっては、規制と緩和のセットを柔軟に考え、複数の特例制度の組み合わせが有効な場合が
あります。以下、地区の課題に応じて都市計画特例制度を組み合わせて活用している例を紹介します。
(地区名をクリックすると、地区の詳細がご覧いただけます。)
○ケース1
◆課題 |
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◆解決のための制度組み合わせ |
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○ケース2
◆課題 |
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◆解決のための制度組み合わせ |
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○ケース3
◆課題 |
→ |
◆解決のための制度組み合わせ |
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※上記のケースのほか、区域を区分して建築物の容積を適正に配分する必要があるが、適正な配置及び規模の公共施設がないためその整備を併せて行う必要がある場合には「誘導容積型地区計画+容積適正配分型地区計画」、住宅の用途に供する建築物に係る容積率の制限の特例を設ける必要があるが、適正な配置及び規模の公共施設がないためその整備を併せて行う等の必要がある場合には「誘導容積型地区計画+用途別容積型地区計画」、建築物の形態を一体的に誘導し、併せて区域を区分して容積を適正に配分する必要がある場合には「街並み誘導型地区計画+容積適正配分型地区計画」などの組み合わせが考えられます。 |
容積率特例制度の活用事例の情報提供を今後とも充実させていき、各地域・地区における課題や目指す
べき将来都市像に応じた都市計画制度の活用を図っていきたいと考えております。
有効な活用事例等がございましたら、情報提供をお願いいたします。