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平成14年度人にやさしいまちづくり推進方策調査
第4章 人にやさしいまちづくり実現に向けた推進方策

「人にやさしいまちづくり」の目標を本調査では「高齢者・障害者等が直面するバリアの除去を端緒とした、クラスター内外または立地施設と地域住民等の活発な交流活動の促進」としている。そのため平成13年度・14年度においてそうした交流活動を支えるハード・ソフト両面でのバリアへの対応を検討してきた。

ここでは、これまでの検討を踏まえ、学研都市における「人にやさしいまちづくり」の目標実現に向けた方策を提案する。主要な提案は 1)ハード面からのバリアフリー化の促進 2)ソフト面からの障害者等の交流活動促進及び 3)学研都市の特徴を活かした学研都市の研究成果の活用である。

1.学研施設のバリアフリー化から都市のバリアフリー化への展開

(1)モデル地区を設定したバリアフリー化の促進

施設のバリアフリー化は、学研都市では3 府県の「人にやさしいまちづくり条例」を基本にして進められている。しかし、同条例は新たな建築に対して適用され、1)既存施設については対象外である 2)戸建住宅及び研究所等の施設は対象外である。そこでこうした建築に対しては各自治体で独自の対応を進めているのが現状である。

一方、学研都市内にある学研施設の多くは研究施設であり、府県条例の対象外のものが多い。しかし、平成13 年度の調査の結果、主な学研施設においては府県条例をクリアするようなバリアフリーの整備を行っているものがほとんどであった。これはすでに新規建築のバリアフリー化が一般化していることが背景にあるものと考えられるが、また学研施設での余裕ある空間的条件にも支えられている。

そこで今後の施設のバリアフリー化を促進するにあたっては、こうした学研施設のバリアフリー化の水準を基礎に、それを地域全体に展開していく方向が有効である。

具体的には、現在自治体のいくつかで実施している、「モデル地区を指定してそのバリアフリー化を促進する施策」を文化学術研究施設地区に拡大し、さらに人の集積がある交通施設あるいは福祉施設等を含む地区をも要綱等で指定して、既存施設も含めた生活上主要な地区でのバリアフリー化を促進することが有効である。

(2)バリアフリーに関する条例等の整備

将来的には、モデル地区での整備の促進を図りながらそこでの人の集積等を評価し、住民のバリアフリーへの関心を高め、高齢社会を展望した施設バリアフリーの条例化を促進していく方向が考えられる。

条例化にあたっては、住民のコンセンサスを形成する必要があるが、当面の取組みとして、今後とも増加していく高齢者等の参加を得ながらまちの点検活動等を促進していくことが重要である。その上で市民、行政、及び関係事業者等による「人にやさしいまちづくり」に関する協議会等を組織して議論を深めていくことが有効である。

2.交流活動を促進する介助等の支援ネットワークの充実

(1)交流活動情報の統一化

障害者等の交流活動を促進するにあたって、学研施設の交流活動現状から、まず問題となるのが施設見学等への情報アクセスである。

学研施設では見学等を事前申込によっている場合が多いが、必ずしも障害者等であることが確認できない状況にある。この方式の採用は障害者等の参加がまだ限定的であることが背景にあると考えられるが、今後高齢社会が進展し、また学研施設が産業観光として、さらに多くの訪問者の参加が見られれば、問題はさらに拡大してこよう。

こうした事態への対応として、交流情報についての学研都市として統一的な様式を作成し、HP等からでも容易にアクセスでき、障害者等の条件を確認できる方式へと改善することが重要である。

(2)学研施設の案内等への地域ボランティアの参画

見学できる施設において、障害者等が訪れた場合、現在のところ案内者をつけて対応しているケースが多い。しかし障害者等といっても障害は多様で、いつも案内者で対応できるとは限らない。実際施設によっては、地域の福祉ボランティアによって、聴覚障害者への手話翻訳や要約筆記を行っているケースもある。

一方、地域の福祉ボランティア活動ではこうした手話や要約筆記等の講習を実施し、ボランティアの育成を進めているが、必ずしもかれらの活動の場面が多いとはいえない状況にある。施設見学では、障害者ニーズとボランティア活動のマッチングも可能であると考えられる。

そのことは学研都市と周辺地域等の関係を親密なものとするとともに、多様な障害者等へのニーズにこたえる取組みにもつながっていくものであり、促進を図ることが重要である。

(3)ボランティア活動促進のための支援ネットワークづくり

福祉ボランティアの活動は、現在各自治体単位の取組みが多く、また活動は小規模なものが多い。また相楽郡では木津町にある相楽会館の聴覚言語センターでボランティア派遣が進んでいるが限定的である。

そのためボランティアへのニーズが高まってくれば、その活動のあり方を見直すことも検討すべきことである。

一方、木津町では「住民相互支援システム」という、ボランティア活動と一般住民を結んでボランティアへのニーズと活動のマッチング事業を推進している。これはボランティア団体内の情報交換にも利用され、活動の活発化が進んでいるとされる。

こうしたボランティア活動と地域を結ぶ支援ネットワークを広域的に形成していけば、ボランティアへの多様なニーズへ機動的に対応することが可能となり、学研施設内でのボランティア活動の活性化も期待できる。

3.学研都市の研究成果を活用した人にやさしいまちづくりの推進

(1)学研施設の研究情報の共有化

学研施設での研究成果は、今回の調査でみると実用化に近い段階の技術的水準のものがあることが確認できた。しかも障害者等の生活をめぐるバリアフリー研究が進展している事情は重要である。しかしこうした学研施設の研究成果についての情報は、必ずしも当該地域で普及しておらず、そのため行政においても関心がうすい存在となっているケースが多い。

研究が当該技術の実用化に向けた取組みとはいえない事情もあるので、関心を喚起することに重点がおかれない背景もあろうが、今後の「人にやさしいまちづくり」の進展にはこうした新たな技術開発は欠かせないものである。

そのため、当面学研施設での研究成果をわかりやすく情報として開示し、関係自治体等で情報の共有化を進めていくことが重要である。

(2)テスティングフィールドとしての学研都市の活用

学研都市では、生駒市と奈良先端技術大学院大学に見られるように、研究成果を実際のコミュニティセンターで活用しているケースがある(音声案内システムと図書館内案内システム等)。

研究施設では、技術の現実への適用上の問題点を把握し、また基礎データの蓄積を行う必要があり、また当該自治体では新たな福祉施策展開の契機となるものである。さらに学研都市と周辺地域の交流促進ともなりうる取組みともなるなど、波及効果の高い取組みと考えられる。

そのため学研施設の研究情報の地域での共有化を促進しながら、こうした新たな技術の活用についての運用ルールを定め、いわば学研都市でテスティングフィールドの形成を促進することが重要である。

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