「THE Telework GUIDEBOOK 企業のためのテレワーク導入・運用ガイドブック」の概要

1.ガイドブックの編集目的

e-Japan戦略Uにおけるテレワーカーの目標値(2010年までに就業者数の20%)を実現するために、テレワークの導入促進をはかっていくことが求められている。2002年のテレワーカー比率である6.1%を、e-Japan戦略Uにおける目標値の20%に増加させるためには、これまで以上にテレワークの有用性や重要性を社会に周知して行くと同時に、テレワークの導入をしやすくするための環境を整えていくことが必要である。また、e-Japan重点計画2004においては、企業におけるテレワーク導入支援策として2003年度に策定した「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」の周知、2004年度中に整備・周知される「企業によるセキュリティの高いテレワーク環境の導入を支援するためのガイドライン」等が掲げられており、これらをふまえて、2005年度早期に企業、労働者双方に配慮した統一的なガイドブックを作成する等民間における多様な勤務形態が選択可能な制度の導入が促進されるよう適切な施策を講じることが求められている。

テレワークには、在宅勤務やモバイル勤務などいくつかの形態があり、それぞれ導入の方法や導入後の運用などに違いがある。また、ねらいとする点もテレワークの形態によって異なる。一方、企業の規模や、オフィスワーカーの業務の内容によってもテレワークの導入の方法や運用に違いがあることが想定される。

こうした背景の元、これからテレワークを導入しようと考えている企業、あるいは既にテレワークを導入したが、運用がうまくいっていない企業などの人事部門及び関連する部門などの方々を対象とした、テレワークをスムーズに導入・運用ができる手引書として「企業のためのテレワーク導入・運用ガイドブック」を作成した。

本ガイドブックは雇用型テレワーカーに限定している。

2.ガイドブックの使い方

本ガイドブックは、これからテレワークを導入しようと考えている企業、あるいは既にテレワークを導入したが、運用がうまくいっていない企業などの人事部門、及び総務部門、情報システム部門など関連する部門などの方々に、必要な項目をお読みいただければ問題解決の糸口になることを念頭において編集している。

たとえば1章ではテレワークの導入においては、企業の経営者などトップマネジメントの方々の理解と指導力が極めて重要です。テレワークの導入を推進する部門の方々が、経営者に対して説明や説得をする際にもご活用いただけるように記述している。また3章ではテレワークが企業経営、オフィスワーカー、社会にもたらす効果・効用について記述している。特にテレワークの効果・効用の部分については、こうした機会にご活用いただけるように整理してある。

3.ガイドブック編集経過

本ガイドブック作成にあたって、「企業のためのテレワーク導入・運用ガイドブック編集委員会」を発足させた。

本編集員会では、テレワークを導入・運用する際に、必要とされる「人」、「IT技術」、「労働法制」に関して、日常業務に関わっている企業および有識者を委員として招き、委員長に比嘉邦彦氏(東京工業大学 理財工学研究センター教授)、以下2名からなる委員および、オブザーバーとして国土交通省、総務省、厚生労働省、経済産業省を迎え、事務局を社団法人日本テレワーク協会とし、計4回の編集委員会を開催した。

すでにテレワークを導入し、効果をあげているいくつかの企業の事例も検討し、導入・運用する際の注意点や成功のための要因および課題も洗い出した。

これらの議論の結果、これからテレワークを導入しようと考えている企業、あるいは既にテレワークを導入したが、運用がうまくいっていない企業などの人事部門及び関連する部門などの方々のチェックを経て、テレワークをスムーズに導入・運用ができる手引書として完成した。

4.ガイドブックの概要

本ガイドブックは、テレワークをスムーズに導入・運用ができる手引書として、トップマネジメント、ミドルマネジメント、オフィスワーカーのそれぞれの立場から参考になるように編集している。

テレワークの形態分類と特徴、導入の効果・効用、導入プロセス、導入時のコスト試算例、労働時間管理等の法整備、人事評価制度のあり方、セキュリティ、推進するための研修、導入後の実態把握と評価、仕事の内容と企業規模による留意点及びテレワークに関する資料と用語説明等、「テレワークとは」の解説から導入後の評価まで網羅した内容になっている。

以下に「企業のためのテレワーク導入・運用ガイドブック」の目次をあげ、一部を抜粋して紹介する。

本文中の図表番号については「企業のためのテレワーク導入・運用ガイドブック」の番号をそのまま表記している。

(1)テレワークという新しい働き方とは

テレワークは一言で言えば、 ITを活用して、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方 と定義されます。あらかじめ定められた勤務場所(一般的にはオフィス)で、例えば9時から17時まで定められた時間を勤務するという、固定された「勤務場所」と「勤務時間」に基づくこれまでの働き方に対して、テレワークはITを活用することによって、働く場所と時間を働く人が柔軟に選べるようにした働き方と言うことができます。

(2)テレワークの形態分類と特徴

(3)テレワークの効果・効用

(4)テレワーク導入のプロセス

図4-1 テレワーク導入のプロセス

テレワーク導入のプロセス

表4-1 テレワークの導入ステージごとの関係主体の役割


導入ステージ 関係主体 役割
導入の検討と経営判断 トップマネジメント 社内に対するコミットメント
ミドルマネジメント テレワークに対する理解と協力
現状把握 推進部門 テレワークに関連する事項の現状把握
ミドルマネジメント テレワーク導入に際しての課題の抽出
プロジェクトチームの設置と基本戦略策定 トップマネジメント プロジェクトチームのリーダーシップ
推進部門 基本戦略の策定
社内ルール
導入スケジュール
社内支援体制
評価項目設定
ワークフロー、ビジネスプロセスの見直し
推進部門 プロジェクトチームに参加し検討を進める
関連部門
テレワーカー
試行導入 推進部門 試行状況のウォッチ
ミドルマネジメント 試行
テレワーカー 試行
試行導入の評価 推進部門 プロジェクトチームで評価
関連部門
ミドルマネジメント
テレワーカー
本格導入 関係主体全て参加して本格導入・実施

(5)テレワークの導入に必要な事項

テレワークの導入を円滑に進めるためには、トップマネジメント、ミドルマネジメントそしてオフィスワーカーがテレワークという働き方を理解した上で、組織として明確な目的を持って導入を図ることが重要です。どのような目的を主眼に置くかは企業によって異なるでしょうが、テレワークそのものはトップマネジメント、ミドルマネジメント、オフィスワーカーの3者にとってメリットのあるWin-Winの関係を構築できる働き方です(図5-1参照)。

図5-1 テレワークの効用(Win-Winの関係)

テレワークの効用(Win-Winの関係)

組織としての意思統一ができれば、テレワークの導入は半分くらい成功したようなものです。残る半分には、企業活動に必要な業務プロセスをテレワークに適した形に変えていくという作業やテレワークに必要な社内インフラや社内ルールの整備などがあります。

以下に共通編、在宅勤務、モバイル勤務について社内インフラや社内ルールの整備する主要な項目を明記します。

  1. 共通編
    • テレワーク導入の目的の明確化と共通理解の確立
    • 常時型テレワークと随時型テレワーク
    • プロジェクトチームの設置
    • テレワークポリシー
    • ワークフローの見直し
    • ルール・制度作りと社内への周知
    • 社内情報通信システムの整備
    • 情報セキュリティの確保
    • センターオフィスの整備
    • テレワーク導入に関わるコストの算出など
  2. 在宅勤務編
    • 労使双方の共通の認識
    • 業務の円滑な遂行
    • 業績評価等の取扱い
    • 通信費及び情報通信機器等の費用負担の取扱い
    • 社内教育等の取扱い
  3. モバイル勤務編
    • 導入範囲と対象グループの選定
    • 業務計画と管理
    • 利用する情報通信機器
    • モバイル勤務とワークプレイス

(6)テレワーク導入後の実態把握と評価

テレワークの導入にあたって主たる目的とした事項を中心に評価項目を設定します。ただし、テレワークの効果は多岐にわたりますので、副次的効果についても評価項目を設定します。

評価項目は、数字で定量的に評価できるものが望ましいのですが、直接に数字としてあらわれない項目については段階評価(3段階、5段階等)によって数値化を図ります。定量的項目の集計は1週間あるいは1ヵ月単位で集計します。評価に使える項目は、業務内容によって変わってきますから、以下に示す例を参考にして部署ごと、あるいは、業務ごとに選定する必要があります。

表9-1 定量的評価の可能な項目の例


項目 指標
顧客対応 顧客対応回数、顧客対応時間、新規契約獲得数、顧客訪問回数、顧客訪問時間
事務効率 伝票等の処理件数、月例報告等の作成時間、企画書等の作成件数、企画書等の作成時間
オフィスコスト オフィス面積、オフィス賃借料、オフィス付随費用、コピー費用
移動コスト 移動時間、移動コスト(通勤を含む)
情報通信コスト 情報システム保守費用、通信費用
人材確保 退職者数
オフィス改修コスト オフィス改修コスト
引っ越しコスト (引っ越しがともなう場合には)引っ越しコスト

表9-2 段階評価が必要な項目の例


項目 指標
業務プロセス 情報共有度、仕事の質、生産性
顧客サービス 顧客満足度
コミュニケーション 垂直方向・水平方向のコミュニケーション頻度、質
情報通信システム システムの機能・能力についての満足度
情報セキュリティ セキュリティ意識、ルールの整備度
業務評価 評価に対する被評価者の満足度
自律性 業務の自律管理
働き方の質 仕事に対する満足度、通勤疲労度、働き方に対する満足度
生活の質 私生活の満足度(家族との団欒、住居、趣味、地域活動、等)

(7)仕事の内容・企業規模による留意点

「企業のためのテレワーク導入・運用ガイドブック」についての問合せ窓口

社団法人日本テレワーク協会

〒102−0083 東京都千代田区麹町3−2−5 垣見麹町ビル別館

Tel : 03−3221−7260 Fax : 03−5211−8834

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