筑波研究学園都市建設計画の大綱

昭和46年2月19日 昭和48年4月16日改正 研究学園都市建設推進本部)


筑波研究学園都市は、首都およびその周辺から当該地区に移転し、もしくは新たに建設する国立の試験研究機関および国立の大学を中核とし、私立大学、民間研究機関の導入を図り、国の施策として総合的かつ組織的な研究学園団地をつくり、高水準の研究および教育を行なうための拠点を形成し、もって科学技術・学術研究および教育に対する時代の要請にこたえるとともに首都圏全域の均衡ある発展に資するものとする。
このような観点から本地域の特性を考慮し、研究学園都市としてふさわしい環境を有し、研究者および教育者等に魅力のある新都市として建設するものとし、このため都市建設の大綱を次のように定める。


1 基本方針

(1)
研究学園都市においては、高水準の研究および教育の諸活動が相互に有機的連繋を保ちつつ効率的に行われるように整備するとともに、自然環境や歴史的遺産の保全を図り、住民の生活が健康で文化的なものとして営めるように計画する。

(2)
研究学園都市の建設にあたっては、研究学園地区と周辺開発地区との2地区に分け、各地区の特性を生かしつつ、総合的一体的に整備するものとする。この場合、とくに公害の防止等に対し適切な措置を講ずるとともに、研究学園都市にふさわしい市街地環境を形成するよう配慮するものとする。

(3)
研究学園地区における研究および教育機関の配置にあたっては、国立試験研究機関、民間研究機関および大学等における研究および教育の各分野の特性に応じ一体的な団地を構成せしめるとともに、団地相互間の有機的連繋を保ち、また、機能補完をも考慮するものとする。

(4)
民間研究機関については、国立試験研究機関等に準ずる研究機関、および国の研究活動と密接不可分な研究機関ならびに研究機能上誘致すべき機関の積極的導入を図るものとする。
 また、私立大学についても、積極的導入を図るものとする。

(5)
研究学園都市にかかる公共公益事業については、研究学園都市の機能を発揮するため必要な施設の先行的な設備を図るものとする。

(6)
周辺開発地区については、研究学園地区と均衡のある発展を図るものとする。

(7)
計画を達成するにあたっては、国および地方公共団体はその円滑な運営を図るよう努めるものとする。


2 都市建設の構想

(1) 人口  
研究学園都市の人口は、研究および教育機関の職員、大学等の学生およびこれらと関連する2次3次産業の従業者の導入により、新たに研究学園地区に約10万人の都市人口の定着を予定し、本領域における既存人口等をあわせて約20万人と想定する。

(2) 都市の地域構成
都市の建設にあたっては、既存の土地利用との調和を図りつつ、研究学園地区については、地区のほぼ中央部に新たに中心市街地を設け、中心商業施設等のほか中高層住宅の建設を行う。その外周部に大規模な研究および教育機関等を機能別、方向別に集団化して配置し、これらの研究および教育団地との関連において通勤、通学および日常生活における利便等を考慮して、住宅地それぞれ適正に配置するとともに、その中心部にコミュニティーセンターを設ける。

(3) 土地利用

(i) 研究学園地区の土地利用
研究学園地区として計画する市街地面積は約2,700haとし、土地利用計画の実現にあたっては、各種の都市計画事業によるほか、都市計画による地域地区制の効率的な運用を図り、研究および教育環境ならびに安全快適で文化的な生活環境の保全に努める。
    (イ)研究教育団地
    国立試験研究機関および大学のために予定する施設用地は、約1,500haとし文教系、理工系、建設系、生物系、共同利用施設の5つの利用区分により、同系統の機関の団地化を図り、方面別におおむね次のように配置を予定する。
    即ち、文教系団地約488haは本地区の北部に、理工系団地約308haは南部に、建設系団地約224haは北西部に、生物系研究団地約463haは南西部に、共同利用研究団地約6haは中心市街地周辺に予定するものとする。
    民間の研究機関については、上記の土地利用との関連を考慮してその立地を定めるものとする。

    (ロ)中心市街地
    研究学園地区のほぼ中央に配置し、中心市街地には都市人口約20万人に対応する総合的な新都心を設けるとともにその周辺に中高層化した住宅地を配置する。新都心は、研究学園地区およびその周辺の住民の購買、文化、娯楽、その他都市サービス施設の要請を満たし得るものとするほか、本地区の研究および教育活動等が円滑に行なわれるよう対研究所サービス施設を計画的に整備する。
    このため、道路等の交通網を新都市に集中せしめるとともに新都心にこれらの交通機関の集結に対応する広場等の交通施設を整備する。なお、新都心における土地利用は、極力高度化を図るものとする。

    (ハ)住宅地
    新市街地人口約10万人に必要な住宅地は、約1,000haと想定し、新都心周辺部および研究教育機関等の団地に近接する数団地に分けて整備する。このうち3か所約257haについては新住宅市街地開発事業を行なうとともに残余の住宅地については、土地区画整理事業を実施し、健全な住宅地として整備する。国立の移転機関等職員の宿舎は主として新住宅市街地開発事業の区域において建設するものとする。
    なお持家希望の職員等に対する住宅については、これらの地域の中で考慮するものとする。
    住宅地の整備にあたっては、文化的な生活環境の確保にとくに配慮するものとし、それぞれの住区について、保育所、学校、公園、購買施設、医療施設等を整備するとともに歩行者用専用道路を整備する。
(ii) 周辺開発地区の土地利用
周辺開発地区においては、無秩序な市街化の抑制に努め、農林業の近代化のために諸施策により近郊農業および林業地帯として整備を図るものとする。
また、研究学園地区との均衡ある発展を図るため、谷田部町、筑波町等の既存の市街地または大集落をコミュニティーセンターとして育成し、生活上の拠点を充実する。
また、リクリェーション緑地の保全ならびに研究学園団地周辺の研究および教育環境の保全を図るとともに、農林業上の土地利用との調整を図りつつ、公害等のおそれのない研究学園地区との関係の深い民間研究機関および私立大学等を選択的に導入し、蚕食的な市街地の防止を図るものとする。
(4) 住宅等
国立の移転機関の職員の住宅については、その移転計画に対応して計画的に整備を進めるものとする。住宅の質、規模については、研究および教育機関にふさわしいものとして整備する。また、幼稚園、小、中学校、保育園等の利便施設についても、住宅の建設と並行して整備するものとする。

(5) 交通通信体
系研究学園都市の広域交通通信体制の整備にあたっては、首都との連絡を密接にすることを重点とする。そのため、鉄道については、国鉄常磐線の整備、道路については、一般国道のほか常磐自動車道の早期建設を図る。また、通信施設については、大量かつ迅速な情報交換を可能ならしめるよう整備する。
周辺諸都市等との連繋強化については、土浦市等との間における道路の先行的整備を図る。
研究学園都市内部における交通通信体系は、土地利用計画に基づき発生する交通量または通信需要等を想定し、新たに都市形成の骨格となる近代的な道路網および通信網を整備確立する。
なお、交通通信体系の確立にあたっては、それぞれの機能が十分発揮しうるような設備水準とするほか、安全対策、公害防止等について特段の配慮を払うものとする。

(6) 給排水体系
研究学園地区において建設される研究所および教育機関および人口増加により新たに発生する水需要に対しては、用水の質、量等に応じて給水体系を確立するものとし、霞ヶ浦および地下水を水源とする上水道ならびに研究用水のための施設を整備する。
なお、これとあわせて、とくに地下水の汲み上げについては周辺地域に及ぼす影響を考慮しつつ、地下水源の有効利用を図る。
市街化の進展に伴なう雨水流出量の増大に対しては、地区内の公共下水道の整備とともに谷田川、花室川等の改修を進める。また、汚水については、公共下水道を整備し、汚水処理を行なう。この際、研究および教育機関等の排水のうち、人の健康にかかる有害物質については、環境基準値を確保するよう処理するものとする。
なお、河川の改修および下水道の整備等が完了しない段階においても、必要に応じ災害の防止については、暫定的な諸措置を講ずるものとする。

(7) 都市エネルギー供給体系
研究学園地区の電力、ガス等のエネルギーについては、需要種別と需要量に対応し、系統的かつ組織的に供給するものとする。なお、施設の建設にあたっては災害の発生、都市機能、研究機能の障害の防止に努めるほか、都市景観についても十分配慮する。
電気については、各研究および教育機関等の便益を考慮して、特別高圧送配電体系を確立する。また、中心市街地、住宅等の一般低圧電力についても上記特別高圧送配電体系の一環として供給する。
なお、都市の枢要な区域においては、美観の観点から配電線等について十分考慮する。
ガスについては、都市ガス供給の体系を確立することを目途として、初期において暫定的な供給方式を併用し、逐次段階的に整備する。

(8) 研究および教育施設
研究学園都市に建設する研究および教育施設については高性能、高能率施設等の整備に努めることともに、共同化を図るべきものについては共同利用施設等の整備を行なう。
なお、団地内の研究施設と密接不可分の関係にあって地区に収容することが困難な施設については、別途考慮するものとする。

(9) 行政体制等
筑波研究学園都市における関係町村の行政体制については、施設の整備が数町村にまたがり一体的に行なわれること等に伴い、関係町村が処理することとなる事務を広域的、総合的に処理する必要が生ずるので、この要請にこたえ得るよう必要な措置を講ずるものとする。
なお、上記の措置ともあわせて、研究学園都市の建設に関連する公共公益施設の整備に伴う関係地方公共団体の財政負担について、適切な措置をとるよう配慮するものとする。

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