市街地整備研究会中間とりまとめ

 

 

平成13年3月

 


T.市街地整備研究会の検討経緯                                          

                                                                            

T−1 市街地整備研究会の趣旨

国民の大半が居住し、経済活動の大部分が営まれている都市のあり方は、今後の我が国の経済活動、国民の生活の質のあり方と密接に関連している。我が国は、少子・高齢化、経済のソフト化・サービス産業化等産業構造の転換、国際競争の激化やIT(情報技術)の進歩、地球環境問題の深刻化等の急激な社会・経済状況の変化に直面しており、このような変化に対応した優れた機能や、環境を有する都市の形成・再構築が、喫緊の課題となっている。

このため、今後の都市整備の重点をこれまでの都市の成長・拡大に対応した新市街地の整備から、既成市街地の再生・再構築に移すこととし、大都市の都心、臨海部の再整備、木造密集市街地の整備や地方都市の中心市街地の再構築に重点的に取り組んでいるところである。

本研究会は、このような都市の再生・再構築をさらに推進するため、事業遂行の隘路等の所在とその解決方策、事業の推進方策等について検討するため、設置されたものである。

 

T−2 中間とりまとめの趣旨

平成12年8月に研究会が発足して以来、平成13年1月までの計5回にわたり、都市整備の経緯と実績、社会・経済動向及び現在の都市の抱える問題、今後のまちづくりの方向、都市整備の進め方の課題と改革の方向、街路事業、土地区画整理事業、市街地再開発事業、都市防災関連事業等の市街地整備手法の課題と対応方策等について、様々な観点から意見交換を行った。

これらの研究会における議論のうち、現行事業制度の下で、特に早期に取り組むべき課題について、各事業ごとに具体的な対応策をとりまとめ、ここに中間とりまとめとして提言する。今後、国土交通省においては、さらに施策の検討を深め、具体的な取組みに着手されることを願うものである。

 なお、具体的な対応策の策定に更なる検討を必要とするテーマ、中長期的視点に立って抜本的な制度改正を含めて幅広く検討すべきテーマ等については、引き続き検討すべき課題として整理した。                                            

 

 

U.都市整備の課題と方向性                                     

 

U−1 都市整備の経緯と実績

 我が国の戦後の都市整備は、戦災復興事業による都市中心部の復興事業から出発した。名古屋市のように戦災復興事業により都市中心部の都市基盤が形成された都市がある一方、当初の復興計画から事業が大幅に縮小され、結果として多くの都市整備上の課題を残した都市も存在する。

 昭和30年代以降の高度経済成長期になると大都市への急激な人口・機能の集中が進み、都心縁辺部等において都市基盤が未整備のまま密集した市街地が形成されていった。

 昭和40年代に入ると、このような市街地の無秩序な外延化が深刻な問題となり、新都市計画法の線引き制度や、郊外部の大規模ニュータウン開発等の計画的市街地整備により、スプロールの防止と計画的な新市街地の開発・誘導に重点をおいた市街地整備を進めてきた。

 しかしながら、戦災復興事業がなされなかった都市の中心部においては、都市基盤整備が不十分のままの状況であり、また、都市中心部と郊外部との間において手がつけられないまま放置された密集市街地や、郊外部におけるスプロール市街地が取り残された。

 

U−2 現在の都市の抱える課題と今後のまちづくりの方向

 

 我が国は現在、大きな転換点にあると言われている。戦後の高度経済成長からバブル経済崩壊を経て、安定成長への転換を目指している経済状況だけでなく、少子・高齢化の急速な進展、地球環境問題の深刻化、国際競争の激化やITの進歩、国民意識やライフスタイルの変化、多様化等の社会・経済動向は大きくかつ急激に変化している。

 また、都市においては、都市への人口集中の沈静化、市街地拡大傾向の終息、バブル経済崩壊や産業のサービス化・ソフト化といった産業構造転換による都心部、中心市街地、臨海部等の既成市街地における空洞化等の変化が生じている。

 上記のような都市整備の経緯と実勢に由来し、また社会・経済の動向に対応して、以下のような都市を実現することが課題となっている。

 

 @ 『暮らしやすい都市』の実現

 これまでは、高度成長期の急激な都市人口増大に対して必要となる都市整備を、公共主導型で進めてきた。

 これからは、都市への人口集中が沈静化する中で、ひとりひとりの市民が、都市に暮らす安心、豊かさ、喜びを実感できるようなまちづくりが大切である。

 このため、少子高齢化の進行や市民意識・ライフスタイルの変化を踏まえつつ、地域住民が主体となって、暮らしやすさを向上させる都市整備を進める必要がある。

 

 A 『環境に優しい都市』の実現

 これまでは、モータリゼーションの進展によって、エネルギー多消費型の交通体系、郊外拡散型の市街地が形成されてきた。

 これからは、地球レベルの環境問題、資源問題を視野に入れて都市整備を進める必要がある。

 その場合、環境への配慮と都市生活の利便とが両立するような環境負荷の小さい持続可能な都市を目指すことが重要である。 

 

 B 『活力のある都市』の実現

 バブル経済崩壊後、我が国の経済は、国際競争の激化、ITの進歩などに対して、厳しい戦いを強いられている。また、産業構造の転換に伴い、中心市街地、臨海部等の既成市街地の空洞化という状況も発生している。

 このため、都市基盤や都市空間の整備が個々の都市や地域で営まれる経済活動に対して与える効果を十分に配慮した、都市整備を目指す必要がある。

 

  上記のような都市をどのように実現していくのかについては、今後、引き続き議論を深めることとするが、早期に対応すべき施策として、具体的には以下に示す観点からの市街地整備を重点的に行い、既成市街地の再生・再構築を実現していくことが必要であると考える。

 この場合、既成市街地においては現に多数の人々が生活を営んでおり、住民が自らのまちを自らが育てるという自己責任の下に市街地整備を推進する体制の構築が必須である。

 

@ 都心縁辺部等の密集市街地において、高齢者を含む地域コミュニティに配慮して、安全・安心で多様な市街地整備を展開する。

A 駅、幹線道路等の都市構造上重要なインフラを整備する地区においては、インフラの更新・新設と一体化した市街地整備を行い、都心居住や職住近接の拠点性を高める。

B 機能が低下した都心業務・商業地については、陳腐化したビルの更新、空閑地の活用を契機に、都心部の立地条件を活かしつつ、緑とオープンスペースの確保等により、国際的な競争力と魅力をもった業務・商業市街地に再編する。

C 遊休化等が進む工場等用地については、都市基盤整備と土地利用転換との連動により、大規模な空間を活かして新しい産業・都市機能を生み出す市街地整備を行うとともに、大規模な緑地の創出等による自然的環境の復元を行う。

D 空洞化が進む中心市街地については、人口回復や都市間交流、生活関連機能の導入により、都市の核としての風格・機能と街なかの生活環境を備えた中心市街地に再生する。

E 歴史や文化を尊重し、歴史的建造物や街並み等を活かしたまちづくりを行う等、地区の特性を踏まえた、個性と魅力ある市街地整備を進める。

 

 

U−3 都市整備を推進するための事業制度の検討

 

 今後の都市整備、まちづくりを推進するためには、従来の高度経済成長期の右肩上がり時代の手法、都市化の進展に対応し、都市基盤施設や宅地の全面的な改変・整備を行う新市街地整備型の手法から、空間制約が多く、多数の人々が生活を営み、複雑な権利関係の存在する既成市街地に即した手法、居住や就業等の様々な都市活動やコミュニティが維持される手法への改革が求められている。

 このためには、まず、今後は経済成長期のような地価の大幅な上昇は見込めないため、地価の上昇によって事業費を確保するというこれまでの事業スキームを、根本的に見直すことが必要である。

また、国民の意識の変化に対応して、景観、歴史文化、環境といった観点からの都市整備の質に対するニーズが高まっており、こうした新たなニーズに対応した、市街地整備の水準を確保することが必要である。

 更に、公共投資余力の減少、民間活力の導入、地方分権の進展、住民参加の進展といった事業実施環境の変化への対応や、急速な時代の変化に対応したスピード感のある市街地整備の展開が求められている。

 なお、現在実施中の事業について、バブル経済崩壊から安定成長への転換を図る過程において、宅地需要の低迷、地価の下落により、事業環境が悪化しているとともに、地方公共団体が財政難から市街地整備事業に対する支出を抑制しており、これらの事業に対する制度的な支援を強化することも必要となっている。この場合、事業期間の短縮化や不確実性の軽減、透明性・市場性を持たせることにより民間の参画を促進していくことも急務となっている。

 これらの要請に対して、以下の観点より、市街地整備事業制度の見直しを行うことが必要である。

 

@ 市街地の特性に即し、それぞれの実情・課題を踏まえた柔軟なまちづくり手法

 ・ 地区要件の緩和、整備水準の弾力化

 ・ 地区固有の歴史・文化等を尊重したまちづくり

 ・  地区特有の交通環境に即した交通政策の推進

A 市街地構造や都市交通の確立を目指した重点的な事業展開

 ・ 幹線道路、交通結節点に着目した重点的で早期に効果の現れる事業展開

 ・  立体的、重層的な空間利用による事業展開

B 望ましい市街地像を目指した基盤整備と土地利用・建築物整備の連携

 ・ 基盤整備にあわせて共同化を推進するための誘導、調整手法

 ・ 都市計画制度と市街地整備事業制度の連動

    高質な都市景観の実現、緑地・環境の確保への配慮

C 住民のまちづくり意識の醸成と事業の立ち上がり期等の支援

 ・ 事業立ち上がり期等における住民参加によるまちづくりの方向や手法の検討、  まちづくり組織の支援

 ・ 住民意向を踏まえた合意形成プロセスの多様化

D 迅速かつ機動的な事業実施

 ・ 合意形成後の迅速な事業実施、事業スケジュールの明示

 ・ 公共用地取得等に関する強力な推進方策

E 公共投資余力の減少を踏まえた公民の連携、民間活力の活用、市場原理の導入

 ・ 地区施設、共同施設等に関する公民の負担協力

 ・ 民間の資金・ノウハウの導入に向けた条件整備

 ・ PFI、TIF等の新しい資金調達方策

                                                             

 

V.市街地整備手法の課題と対応方策

 

V−1 土地区画整理事業  

 土地区画整理事業は、これまで戦災復興事業や高度成長期における新市街地整備において顕著な効果をあげてきた。しかしながら、「都市化社会」から「都市型社会」への移行に伴い、都市政策の重点は既成市街地の再生・再構築へとシフトしており、土地区画整理事業により密集市街地の解消や土地の集約化等による都市機能の更新を図ることなどが求められている。しかしながら、多数の人々が生活を営んでいる既成市街地にこれまでの土地区画整理事業の制度や実施方法をそのまま適用した場合、移転戸数の増加による事業費の増大や事業期間の長期化、多様な権利者ニーズが存在することによる合意形成の難航等の問題に直面することとなる。

 このため、都市の再生・再構築を円滑に推進するための魅力的なツールとして、新しい土地区画整理事業のスキームを構築することが市街地整備上の大きな課題となっている。

 

 また、バブル崩壊以後の地価の下落や経済の停滞により先買い用地や保留地などの土地の処分をめぐる環境は極めて厳しく、健全な組合事業経営などこれに関連した土地区画整理事業における課題への対応も急がれている。

 

1.土地区画整理事業と土地利用規制の連携の強化による円滑な事業推進

  既成市街地では、多数の人々が生活を営んでいることから、土地区画整理事業の実施により可能となる土地利用が事業のスタート段階で明確に示されない場合、事業の合意形成が困難となったり、施行区域内の土地の活用を計画しようとする民間事業者の開発意欲を引き出すことが困難となる等の課題が生じる。

  具体的には、用途地域等の土地利用規制の変更を予定していても、道路等の整備がなされていない事業初期の段階では、都市計画変更を行っていない状況であり、地権者等にとっては、将来の都市計画変更が担保されていないという問題がある。

  このため、土地区画整理事業の都市計画決定段階において将来の土地利用の方向を明示する方法として、例えば、都市再開発方針、住宅市街地の開発整備の方針その他のいわゆる方針都市計画に当該地区を位置づけ、この方向性に沿った形で住民等の関係者(民間の開発事業者を含む)が用途地域の変更を要請し、具体の都市計画の変更につながるような新たな仕組みを検討することも考えられる。

 

 

2.敷地・建物の共同化による土地の高度利用の推進

 敷地が細分化されている既成市街地の再生・再構築を進める上では、敷地の個別利用に一定の歯止めをかけ、敷地・建物の共同化を図ることにより、その規模を拡大させ、土地利用の高度化、オープンスペースの確保等を実現することが重要である。このため土地区画整理事業の換地手法を活用して、多様な土地利用意向を有する権利者の宅地を集約換地し敷地・建物の共同化を促進する必要がある。これにより、例えば、分散している商店を集約化し共同で店舗やパティオを整備し、商店街の活性化を図ることも可能である。

 しかしながら、土地区画整理事業においては宅地の集約換地を図るためには関係権利者全員の合意が必要であることから、反対者が一部でもあれば敷地の共同化が実現しないのが実態である。

 このため、敷地の集約換地を行うことができるよう、事業計画において敷地の共同化を行い土地の高度利用を図る共同建物建設区(仮称)を定め、共同化意向のある権利者の申出その他の措置を制度化することが必要である。

 

3.多様な地区特性を踏まえた土地区画整理事業の推進

 既成市街地においては様々な主体による都市活動が営まれていることから、新市街地と同様の方法で土地区画整理事業を実施した場合、結果として大きな市街地改造となり、事業費の増大や事業期間の長期化、コミュニティの崩壊等の課題が生じる恐れがある。

 このため、必ずしも理想的な市街地整備にこだわることなく、地区住民等の意向を踏まえた事業実施が可能となるよう技術基準の見直しや、住宅施策との連携のための指針作成等を行うことにより、多様な地区特性を踏まえた土地区画整理事業の推進が必要である。

 

4.土地区画整理事業を契機とした住民主体の地域管理・地域運営の推進

 既成市街地における再生・再構築を進める上では、地域住民が主体的にまちづくりに取り組んでいこくとを可能とする枠組みづくりが今後重要となってくる。

 土地区画整理事業は地権者参加型の事業であり、事業を契機にまちづくり意識が強化され、土地区画整理組合や公共団体施行でも住民協議会などの形で組織化される場合が多い。

 このためこの組織を、土地区画整理事業中に限定せずに、事業完了後の地域管理・地域運営を行う主体として活用するなど、より幅広く継続的にまちづくりに活かす仕組みの検討が必要である。

 

5.交換分合手法を活用した先買い用地の有効活用

  都市郊外部において住宅供給目的でバラ買いした用地の中には、住宅宅地需要の低迷や都心居住志向、里山保全に対する意識の高まりなどの社会情勢の変化により、当初の住宅供給目的の開発が困難なものもある。

 このため、こうした用地を整序し自然的環境を保全するなどの社会のニーズに合わせた土地利用が可能となるよう、宅地の利用の増進を目的としない土地の交換分合のみを行う新たな制度について、農住組合法を参考としつつ、検討する必要がある。

 

6.引き続き検討すべき課題

 この他、現下の社会経済情勢を踏まえ、既成市街地以外で行われる土地区画整理事業を含めて、以下の課題について引き続き検討する必要がある。

 

 @ 機動的な事業の推進のための用地の先行取得制度の強化

 既成市街地における土地区画整理事業を円滑に進めるためには、減価補償地区で行われる公共施設充当用地の先行取得(減価買収)を事業認可前に行うことや、事業推進のために必要な換地調整用地等の先行取得を行うことも必要となる。

 これらの先行取得は、土地区画整理事業の施行者側の要請によって行われることから、税制面での優遇措置や無利子資金などの財源について検討する必要がある。

 

  A 多様な地区特性を踏まえた新たな事業手法

    多様な地区特性を踏まえ、既成市街地の再生・再構築を推進するためには、3.で述べた取り組みのほか、新たな事業手法を創出する必要がある。

 例えば、

  ・区画道路等の地区レベルの施設は、建物の建て替え時期を待って整備する

  ・道路と同じ機能を持つ空間を、減歩ではなく宅地のまま創出する

  ・施行区域を幅広く設定し、権利者調整が整った地区から段階的に事業化する

  等を可能とするような事業手法について検討していく必要がある。

 

 B 公共施設と宅地との複合利用への対応

 河川でありながら一定の土地利用を許容する高規格堤防や、立体都市計画制度により公共施設の範囲が立体的に決定される場合等、公共施設と宅地との複合利用が必要となる場合において、公共施設と宅地とを明確に区分している土地区画整理事業における取扱いを明確化する必要がある。

 

 C 健全な組合事業経営の推進のための資金調達方策の構築

 組合施行の土地区画整理事業においては、近年の住宅宅地需要の低迷や地価の下落等により保留地処分が困難となるなど、組合事業経営に支障をきたす危惧から、健全な事業がのぞめる地区についても金融機関からの事業資金の調達に苦労する状況となっている。

 このため、今後、組合の資金計画等、経営内容の適切な開示により経営の健全化や透明性を高めることと併せて債務保証制度を見直すこと等により、資金調達市場からの評価が十分に得られるような方策を構築する必要がある。

 

V−2 市街地再開発事業

 市街地再開発事業は、都市における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を図ることを目的として、施設建築物の建築と公共施設の整備とを一体的かつ総合的に推進する事業であり、既成市街地の整備改善に有効な手法として定着してきたところであるが、社会経済動向の変化に対応した円滑な事業実施を促進するとともに、多様化する地権者ニーズや地域の実情に対応した柔軟かつ機動的な事業実施を促進する観点から、再開発事業手法の改善・充実を図る必要がある。

 

1.民間の発意に基づく再開発事業の推進

 関係権利者のまちづくりへの関心が高まり、具体的な事業化に向けた検討が行われる段階である初動期は、その後の事業展開を図る上で極めて重要な時期であるにもかかわらず、権利者や民間事業者による負担には限度があることから、公的支援の一層の充実が求められている。

 また、民間活力を効果的に活用する観点から、民間事業者による再開発事業を促進することも求められている。

 

 @ 市街地再開発事業の初動期における支援の充実

 事業の初動期においては、関係権利者間で事業化への熱意を醸成しつつ、できるだけ自発的な検討が行われることが望ましい。しかしながら、こうした検討を進めるためには、各種調査等に費用を要するが、事業化の不確実性や着工に至るまでの期間の不確定性等の事業リスクを伴うことから、施行者や準備組織が必要な資金を調達することが困難なものとなっている。

 このため、市街地再開発事業の初動期においては、調査設計計画費や土地取得費、補償費等に対する公的機関による融資や債務保証等の支援を一層利用しやすいものとする必要がある。

 

 A 民間事業者による任意の再開発事業に対する支援の充実

 民間事業者による都市再開発を誘導するためには、市街地再開発事業等の強制力を伴う事業手法に加えて、税制上の特例措置を講ずることにより、関係権利者の発意による任意の再開発を促進する制度である認定再開発事業の積極的な活用を図る必要がある。

 このため、認定再開発事業が有する簡便で小回りのきく制度としての特徴を活かしつつ、税制特例の一層の充実を図るとともに、融資及び補助制度等の支援措置を効果的に組み合わせた総合的な支援措置を講ずる必要がある。

 

2.地域の実情に対応した柔軟かつ機動的な再開発事業の推進

 道路等の公共施設が未整備なままに老朽木造建築物が密集する市街地や、事務所や住宅としての機能が陳腐化した建築物が建ち並ぶ地区等、早急に再開発を実施する必要がある地区が未だ多く存在するが、従前建築物の全面的な除却と敷地の共同化による大規模な再開発ビルの整備を原則とする現行の市街地再開発事業では、多様化する地権者ニーズや地域特性等に柔軟に対応して、円滑に事業を実施することが困難な状況にある。

 

 @ 施行区域要件の見直し

 市街地再開発事業の施行区域は、高度利用地区等の土地の高度利用が要請される区域内、かつ、現に土地を有効・高度利用している耐火建築物等の割合が低い区域内等にあることとされており、老朽木造建築物の存在を前提としたものであるが、耐火建築物であっても、機能面で陳腐化している建築物や、耐震性能に問題のある建築物も存在しており、建築物の実態や社会的ニーズ等に対応した施行区域要件の見直しを行う必要がある。

 具体的には、施行区域要件における耐火建築物から除外する耐用年限の三分の二を経過した建築物を算定する場合の耐用年限(例えば、SRC造またはRC造の事務所では65年)の短縮を行うことや、耐火建築物から除外する建築物の類型の一つとして、地震に対する安全性に係る建築基準法等の規定に適合しない建築物を追加すること等が考えられる。

 

 A 権利変換手法の柔軟化

 市街地再開発事業の権利変換手続においては、権利者全員の同意が得られた場合には、関係権利者間の利害の衡平に考慮を払って、自由な権利変換を行うことが認められているが、関係権利者全員の合意が得られない場合には、法令に定める権利変換基準に従い、地上権を設定する原則型または地上権を設定しない市街地改造型の権利変換を行う必要があり、これが円滑な権利調整や建築物の管理の支障となっている場合が見受けられることから、権利変換手法の柔軟化を図る必要がある。

 具体的には、同意に加わらない者の権利を侵害しない範囲内で、同意が得られた権利者のみに関係する権利の部分については、施設建築物の一部を共有とする等、法令に定める権利変換基準によらない権利変換を可能とすることが考えられる。

 また、権利者の申出により、施設建築敷地のみに権利変換し、当該敷地での建築物の建築を委ねること等も考えられる。

 

 B 適正な事業規模の再開発事業の推進

 市街地再開発事業において、高容積を追求した大規模建築物を整備することは、事業を実施する地域のポテンシャルによっては、事業リスクを増大させるとともに、事業期間の長期化を招き、事業成立自体を危うくするおそれがある。

 既にペンシルビルが建ち並ぶ地区等、必ずしも低度利用とは言えない地区においても、合理的な建替えや共同化を誘導することが必要な地区が存在することから、利用容積率の増加を前提としない再開発事業の実施が必要である。

  また、市街地再開発事業は、施行区域内の建築物を全面的に除却することを原則とするが、比較的新しい耐火建築物や歴史的建造物等については、必要に応じて改修等を行い、存置することも考えられる。

 このような状況を踏まえ、地域特性や権利者ニーズに柔軟に対応した再開発事業を推進するための指針等を明らかにする必要がある。

 

3.保留床処分に過度に依存しない再開発事業手法の導入

  市街地再開発事業は、土地の高度利用により生み出した床(保留床)を処分して、事業資金に充当することを基本とし、事業収支上、収入の約5割以上を保留床処分金に依存している。従来は、右肩上がりの経済成長の中、地価の上昇や床需要の増大が見込まれ、民間事業者の参画を得ることができたが、安定成長期においては、民間企業の保留床取得や事業参画が消極化し、事業成立が困難化する傾向にあることから、保留床処分に過度に依存しない再開発事業手法を導入する必要がある。

 

 @ 地権者による共同事業方式の推進

 従来、権利者は追加的な資金負担なく、従前資産に代わる再開発ビルの床を取得できたが、保留床処分が難航する中で、権利者にも負担を求めることが避けられず、保留床処分に過度に依存しない共同事業方式を推進する必要がある。

 共同事業方式としては、組合施行事業における賦課金制度のほか、権利者が増床部分を保留床として取得する権利変換手法等の活用が考えられる。

 この場合、権利者も資金負担が必要となる現状を十分認識し、自らの建替事業として、一定の資金を負担して事業参加するよう意識の転換を図るとともに、その負担に耐えられない零細権利者や、賃料の上昇や取得床の縮少等による転出者に対しては、生活再建のため、公的住宅への入居や公的機関による低利融資をあっせんすること等、適切かつ十分な救済措置を講ずることを考慮すべきである。

 このため、具体的な活用方法に関する指針等を明らかにする必要がある。

 

 A 事業リスクの低減及びリスク負担の分散化

  市街地再開発事業の実施に伴うリスクの低減に努めるとともに、施行者のほか、地方公共団体、権利者、事業参加者、投資家等の多様な主体が、負担能力に応じて、事業リスクを分担するしくみを構築することにより、事業資金の調達手法の多様化を図る必要がある。

 このため、保留床の賃貸経営を行い、賃料収入によって長期にわたって事業資金を回収する方法が考えられるが、こうした賃貸経営を支援するため、権利者等が出資する管理法人に対して、保留床取得に関する無利子貸付け制度の改善を図る等の措置を講ずる必要がある。

 また、地方公共団体等の公的主体が保留床を取得し、福祉施策等の関連施策との連携を強化しつつ、公益的施設や公的住宅等を導入することを促進する必要がある。

 さらに、民間事業者の再開発事業への参加を促進する観点から、特定建築者制度の一層の活用を促進するため、事業計画等への事業者の提案の反映と併せて公募時期の早期化を図るとともに、「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(PFI法)に基づく事業者の選定及び契約手続きとの調整を図り、PFI手法の円滑な導入を図る必要がある。

 また、保留床を証券化して投資家に売却することも、事業資金を調達する手法として有効である。

 

4.引き続き検討を深めるべき課題

 以上の施策を講ずることにより、市街地再開発事業の円滑な実施を推進するとともに、以下の課題について、引き続き検討を深めていくことが必要である。

 

  @ 市街地再開発事業の枠組みの見直し

  豊かで快適な都市生活の実現、都市経済の活性化、地球環境問題への対応等を図るためには、広く都市の再開発を推進し、既成市街地において、土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を図る必要がある。

 このような都市の再生・再構築を進める上で、市街地再開発事業は有力かつ効果的な手法の一つであるが、現在の市街地再開発事業は、老朽木造建築物の不燃化による防災性の向上を図るよう組み立てられており、陳腐化した耐火建築物等の再整備等を含めて、広く都市の再開発を推進することには、必ずしも対応していない状況にある。

 このため、当面は、現行の耐火建築物要件の枠内での対象の拡充を検討するが、引き続き、施行区域要件の抜本的な見直しについても検討する必要がある。

 

 A 補助制度等の支援措置の見直し

 現在の市街地再開発事業に対する国庫補助制度は、従前建築物の除却、敷地や建築物の共同化等によって生ずる附加的経費に対する補助を中心に組み立てられているが、事業の緊急性や効果、公益性、先導性等を総合的に判断して、事業の必要性は高いが採算性に劣る事業を強力に支援するしくみの導入を検討する必要がある。

  また、施行者が用地の先行取得を行う場合に、当該用地の保有に伴う金利負担を軽減するために、無利子融資の導入等についても検討する必要がある。

 このほか、再開発事業の円滑な実施を促進するための税制上の特例措置の充実や再開発事業による開発利益を適切に活用する観点から、当該再開発事業の施行に伴う税収増を財源として事業資金を調達するしくみの導入についても検討する必要がある。

 

V−3 都市防災関連事業  

 大都市都心縁辺部には、災害危険性の高い密集市街地が多く存在する。今後さらに、建物の老朽化等が進み危険性の増大が懸念される。これらの地域で地域コミュニティに配慮しつつ都市防災性能の向上を図るためには、前述の事業の活用促進を含め、柔軟かつ効率的な施策の展開が求められている。

 

1.住民意識の高揚による主体的なまちづくりの促進 

 密集市街地の居住者は、ある程度自らの住居安全性に不安はあるものの、建替えや地域の改善に対する意向は大きくない。この中で災害に強いまちづくりを進めるためには、危険度に関する客観的情報を公表して、住民の防災まちづくりに対する自主的な意識の高揚を図るとともに、住民主体のまちづくりが推進できる体制の整備を促進することが有効である。これにより事業着手前に地域整備の方向が定められ、密集市街地の効果的整備が期待できる。

 

@ 危険度判定結果の公表

  地震等による都市災害に対して、防災上重点的かつ緊急に整備を要する地域を明確にして、これを公表することにより、住民が自ら住んでいる地域の災害に対する危険性への認識を深め、住民主体の防災まちづくり活動の気運を高めることが必要である。この場合、GISを活用したビジュアル化を行う等、住民に理解しやすい方法が求められる。これらを推進するため、国の技術的、財政的支援を充実すべきである。

 

A 住民意識高揚のためのまちづくり協議会、NPO等の活用

   市民の協力と参画を得てまちづくりを推進するため、大都市等の防災上危険な密集市街地を対象として、都市整備の事業着手以前の段階から住民等の主体的なまちづくり活動を活性化する必要がある。このため、住民主体のまちづくり協議会の設立促進やNPO組織の活用、まちづくりに係る各種の専門家派遣を行える仕組みを構築するとともに、これを奨励するための支援措置を拡充すべきである。

 

2.多様な施策との連携等による効果的な整備手法の工夫

密集市街地は、狭小な敷地や狭隘道路が多いこと、接道条件等によって容積率を十分使えない宅地が多いこと等から、建替えが物理的に困難なものが多い。また、公共負担や地権者調整等地区の状況から全面更新型事業の導入が困難なものも多い。

この中で、効果的な市街地改善を行うためには、多様な市街地整備手法の導入、規制誘導施策や福祉施策等と連携した整備を図ることが有効である。これにより、地域住民のニーズに応えるとともに、官民の適正な連携による整備を行うことが可能となる。

 

@ 基盤整備と建物整備等の合併施行等、福祉政策等との連携の推進

  密集市街地において、共同化、集約化、協調化、個別建替権利者の様々なニーズに対応して、多様でかつ段階的整備を行えるようにするため、当該地域の状況に応じて対応しうる土地区画整理事業・市街地再開発事業等の面整備手法の柔軟化、土地区画整理事業等の基盤整備事業と密集住宅市街地整備促進事業や市街地再開発事業との合併施行等を推進するとともに、オープンスペースの確保による都市の防災性の向上のため防災公園整備と市街地整備との連携を進める必要がある。

 また、密集市街地等の整備に当たっては、単に公共施設の整備や市街地整備を行うだけでは住民ニーズに対応できない状況にある一方、地方公共団体の中で都市整備部局と他部局との連携が十分ではない場合も多い。このため、現に居住している高齢者の福祉ニーズに合わせた高齢者用住宅の建設やデイサービスセンター等の福祉施設の立地と併せた整備を行うとともに、比較的都心に近い地理的利点を生かし、様々な世代が居住するコミュニティの形成や地域の産業振興等にも配慮して、街づくり部局と住宅・福祉・産業部局との連携体制を確立して多様で幅広い手法を活用して地域整備に対応する必要がある。

 このため、合併施行や連携施策を推進するためのマニュアルの策定、体制の整備を行うとともに、地域の状況に応じて各種の防災まちづくりを実施しうる総合的支援事業を検討すべきである。

 また、密集市街地において地域の実情に応じた防災公園の整備を推進するため、公団を活用して機動的な整備を図る防災公園街区整備事業の拡充等地方公共団体の負担を軽減する方策を検討すべきである。

 

A 地区計画、協定等の活用と事業手法との連携等

  密集市街地の整備を図るため、住民参加の下、地区計画、建築協定等の活用とあわせた、効率的な補助を推進していく必要がある。

  例えば、地区計画・協定等によって建物のセットバック規制に併せて地区公共施設整備事業等により道路、公園等の公共施設の整備を優先的に行えるよう支援制度の推進を図り、官民連携による密集市街地の整備、改善を図ることが考えられる。

 また、密集市街地において、建築基準法第86条第2項の規定により、既存建築物のあることを前提として、安全上、防火上、衛生上の総合的見地から、一定の一団の土地の区域を同一の敷地と見なす設計特例(連担建築物設計制度)の活用を図ることにより建築物の適切な建替促進が期待できることから、その運用促進を図るべきである。

 

V−4 街路事業  

   街路事業は、都市の骨格を形成する主要な放射・環状道路から生活道路までの街路 ネットワークの整備、鉄道を立体化することにより交通円滑化と鉄道により分断され ていた市街地の一体化を図る連続立体交差事業、新交通システム・都市モノレール等 の公共交通基盤の整備、駅前広場等の交通結節点整備、歩行者や自転車のための専用 道路整備等、良好な市街地の形成と安全で快適な都市生活や機能的な都市活動を支え る都市交通施設を整備する事業である。

  このため、既成市街地の再生・再構築をはかる上でも重要な役割を果たす事業であ り、その事業制度についても幅広い検討を行う必要がある。このうち、本研究会では 当面、特に既成市街地の再生・再構築と関連の深い、市街地整備と連携した幹線道路 の整備推進方策、駅前広場の整備推進方策、市街地整備と連携した駐車施設整備の推 進方策について検討することとした。

  また、高齢化や地球環境問題に対応したコンパクトな市街地の実現のため、コンパ クトな市街地における諸活動や市民生活を支える、交通、供給処理等に関するあらた な都市システムのあり方や整備方策についても検討することが必要である。

 

1.市街地整備と連携した幹線道路整備の推進

  都市の再生・再構築を進める上では、幹線道路整備による沿道地域のポテンシャル アップを活用して、市街地整備を進めていくことが効果的である。

  また、幹線道路整備に際しては、残地買収要望や現地残留要望等への対応難航、不 整形な残地の発生や非効率な沿道土地利用等の問題があり、既成市街地における幹線 道路の整備をはかる上でも沿道市街地と一体となった整備を推進することが重要。

 このような観点から、従来より、沿道区画整理型街路事業等、区画整理手法等を活用して道路と沿道市街地との面的・一体的整備を行う事業手法が制度化されてきたところである。

  これらの事業制度のさらなる活用を推進するためには、次のような点を強化する必 要がある。

 

 @ 面的な事業手法は、直接買収方式に比べ関係者が多く、調整に時間や手間がかか  ることから、関係権利者の合意形成を促進するための地元意向把握、計画策定、コ  ーディネーター派遣等の各種調査を支援することが必要である。

  A 幹線道路と併せて行う周辺整備に対して助成制度が不十分であることが、制度活  用の阻害要因となっていることから、幹線道路と一体的に整備が必要となる区画道  路の整備に対しても街路事業等による助成を行うことが必要である。

 

2.駅前広場の整備方策の充実

  駅前広場については、大都市郊外部、特に既成市街地部等において整備率が低く、 早期の整備が望まれている。また、既に整備済みの駅前広場においても、駅前広場の 機能増強やバリアフリー施設等新たな施設導入のための再拡幅が必要となる場合が多 い。

   従来の駅前広場は、「平面的に必要な機能を一箇所にまとめて確保する」ことを前 提として計画されてきた。しかし、駅に隣接した地区は既に高度に土地利用されてい る場合が多く、駅舎に接して前面に駅前広場を整備したり、再拡幅するための用地確 保が困難である場合が多い。このため、空間制約の厳しい中で駅前広場機能を確保す るには、鉄道施設用地や周辺の民地空間を活用した空間の立体的利用や、駅前広場空 間の分散的確保が必要である。

 

 @ 駅前広場整備を推進するための新たな計画指針の策定

 空間の立体的利用や駅前広場の分散的確保をすすめるためには、これまでの「平面的に必要な機能を一箇所にまとめて確保する」ことを前提としない新たな駅前広場についての計画指針を検討することが必要である。

  たとえば、平成12年度の都市計画法の改正により創設された立体都市計画制度を活用して、平面広場と建築物の一部空間とを駅前広場として一体的に整備する場合などにおいて、必要となる駅前広場の機能・面積・配置の考え方等を示す計画指針が必要である。

 また、例えば、駅舎から離れた場所にタクシープールを配置する等、用地確保が困難な駅前において駅前広場を分散的・効率的に配置する場合等において、必要となる駅前広場の機能・面積・配置の考え方等を示す計画指針が必要である。

  

 A 助成制度の見直し等既存制度の改善

 上記のような多様な駅前広場整備を支援するため、例えば、地方公共団体が、民間が建築した建築物の床を交通結節点施設として買い取ることに対する助成制度や、分散化した駅前広場を効率的に活用するため、ITを活用してタクシー待ち客の情報を駅舎から離れたタクシープールで待機しているタクシー運転手に伝える案内システムを駅前広場整備と一体的に助成する制度も必要である。

 

3.市街地整備と連携した駐車施設整備の推進

 駐車場は、附置義務制度を基本としつつ、官民の役割分担のもとで整備が進んでいるが、路上駐車については大きな改善は見られず、引き続き積極的な駐車施設整備が必要である。

  また、現行の駐車場附置義務制度が必ずしも地区特性、交通特性に対応していないこと、コンパクトな市街地形成と中心市街地活性化の観点から、駐車場整備を土地利用や交通体系等のまちづくりと連携させることが必要である。

 このため、以下のような内容の「駐車場法の運用指針」を策定し、地区特性に合わせた適切な駐車施設の整備を促進することが必要である。

 

1)都市規模、地区の交通状況、土地利用、建築物の規模・用途等地区特性を踏まえたきめ細かな附置義務駐車施設整備を推進するため、附置義務の対象となる特定用途における延べ床面積の下限、地区の交通特性を加味した原単位の設定、施設特性に配慮した原単位の設定等についての考え方を示すこと

2)まとまった規模の駐車場をアクセスの容易な場所に設置し、歩行者、自転車、公共交通機関のネットワークと連携した一体的な地区交通体系を形成することにより、回遊性の高い中心市街地を形成する事を推進するため、共同駐車場の規模、配置等についての考え方、一体的な整備方策等を示すこと

3)隔地附置義務制度の活用や駐車施設を確保することに替えて賦課金制度を導入し、適切な箇所にまとめて駐車場を整備することが促進されるよう制度の概要および運用上の注意等を示すこと

 

4.引き続き検討すべき課題

  この他、市街地整備手法のさらなる工夫、他省庁施策との連携、技術開発等を行いながら、以下の課題について引き続き検討する必要がある。

 

 @ 事業認可前のセットバック誘導手法の充実 

    未着手の都市計画道路において、沿道の建築活動等に対して支援を行うことによ  り、自主的な建て替え・セットバックを進め、沿道のまちづくりを先行的に進める  ことが、円滑な用地取得による幹線道路整備促進と良好な沿道市街地の形成を図る  うえで効果的である。  

    このため、さらなる誘導容積制度の活用(沿道市街地整備促進街路事業)の可能  性を探るとともに、建て替えに伴いセットバックした都市計画道路用地を確保する  方策等について検討する必要がある。

 

 A  駅等の交通結節点を中心とした市街地の再生・再構築の推進

    中心市街地活性化やコンパクトな市街地形成の観点から、駅を中心とした地区で、  SOHO等新たな職場機能、質の高い住宅、福祉・医療施設、文化・交流機能等日  常生活のための機能や都市サービスを集約的に立地させ、都市の拠点として整備す  ることが重要である。

   その際、交通結節機能を受け持つ駅前広場に、周辺の各種施設へのアクセス交通  や周辺の都市活動により発生する物流交通が流入し、駅前広場の交通結節機能が十  分に発揮できないという問題が懸念される。

   このため、駅を中心に都市の再生・再構築を進める際には、交通結節機能だけで  なく、周辺の都市開発により発生する交通需要を処理する機能を取り込んだ駅前広  場として整備していくことを検討することが必要であり、このような駅前広場機能  のあり方、周辺の都市開発と一体的に整備する場合の公共施設整備と都市開発との  連携・役割分担について検討することが必要である。

 

 B 新たな都市インフラのあり方

 今後のまちづくりは、都市における高齢人口の増加、地球環境問題への対応、既成市街地の老朽化、さらには、情報通信等の技術革新等、かって経験したことのない社会・経済・文化の変化を背景に、従来とは異なる新たな視点からの取り組みが必要である。将来の都市像を踏まえながら、豊かで快適な都市生活、都市経済の活性化をもたらすコンパクトな市街地を実現するため、都市の活動を支える交通、供給処理等の都市システムについて、各種技術開発の動向を踏まえ広範に検討する必要がある。

 まず、コンパクトな市街地を支える都市交通は、高齢者・身障者等の交通弱者のモビリティーの確保、地球環境問題への対応、といった観点から、どのような体系を構築していくべきかを検討する必要がある。その際、国土交通省の誕生を踏まえて、運輸政策とのより一層の連携を図ることが重要であるとともに、福祉政策との連携も考慮することが必要である。

 さらに、IT技術等の各種技術革新を活用した新しい交通システムの開発・可能性の検討や、それを都市交通インフラとして整備推進する方策等について検討することが必要である。

 また、交通分野以外の新たな都市インフラとしては、従来より、地球温暖化や大気汚染への対応、リサイクルの推進、地域の美観や衛生の向上を図ることを目的に、都市熱源ネットワーク、都市廃棄物処理システム等が導入されてきた。これら都市インフラへのニーズは、都市生活の高度化、質的変化等に応じて多様化してゆくものと考えられる。このため、こうした都市インフラのあり方、整備推進の方策等について広範な検討が必要である。

 

W.今後の検討の進め方

 

  本提言は、都市整備の経緯と実績、社会経済動向及び現在の都市の抱える課題、今

 後の街づくりの方向、都市整備の進め方の課題と改革の方向等に関する、これまでの

 研究会における幅広い議論をふまえ、現行事業制度の下で、特に早期に取り組むべき

 課題について、各事業ごとに具体的な対応策をとりまとめ、ここに「中間とりまめ」

 として提言したものである。

  今後、本研究会においては、都市の再生・再構築を具体的に推進する市街地整備の事業手法の検討を深めるため、将来の市街地像のあり方についての議論を踏まえつつ、今回の中間とりまとめにおいて、具体的な対応策の策定に更なる検討を必要とするテーマ、中長期的視点に立って抜本的な制度改正を含めて幅広く検討すべきテーマとして整理された課題等について、引き続き、見直しを進めるものとする。