第1回市街地整備研究会議事概要

 

日 時:  平成12年8月28日(月) 10時〜12時

 

場 所:  建設省4階会議室(旧CD会議室)

 

 

1.開  会

 

2.建設省山本都市局長挨拶

 

3.委員紹介

 

4.設置主旨説明

 

5.議  事

 

(1) 資料説明

 

(2) 質疑(発言の要旨は、建設省の責任において要約)

 

  密集市街地の整備と中心市街地の活性化などの事業の連携が必要である。

  整備済の市街地において、ストックを活かして再整備するという課題もある。例えば、ドイツのように道路の車線を減らして自転車道をつくるなど。

・ 課題解決型の市街地整備に加えて、次の時代にどのような都市や社会が求められているのかという発想が必要。例えば、ディズニーランド社が開発したセレブレーションという地区では、魅力的な都心を先につくり、そこでの生活を提示しつつ、周辺の住宅地を開発している。

・ 既成市街地で合意を取り付けるためには大義名分と実利が必要。小宅地が密集する地区で道路を整備するというだけでは大義名分とならず事業は動かない。魅力的なまちに変えるというような大義名分が必要ではないか。また、狭小宅地の人だけの経済力では無理であり、少し広い宅地ならば買いたいという人の経済力を導入するなどの工夫が必要である。

・ 安全性の向上など事業の効果を定量的に評価することが必要。そのような事例はないか。

その際に、街路を広くする場合だけでなく、消防技術などきめ細かな対応による効果も評価しておく必要がある。

  他の事業との連携については、福祉施設を再開発と一体化すると国の助成が多く入る、あるいは市街地整備に協力すると高齢化した後のケアをしてあげるなど、人の心に訴えるような施策が必要。

・ 鉄道の上部空間に着目して、商業や福祉と連携し、その周辺の再生も図るというような柔軟な方法が必要。

・ 新しい社会に対応した都市施設の概念を再考し、それに対して都市計画がどのような責任を持つべきかを考えたい。また、立体都市計画をどのように施設整備に活用するのかなど考える必要がある。

・ 従来の市街地整備手法では、公的な空間整備が中心で、再開発で共同化に取り組んできたが、建築物は本格的に扱ってこなかった。既成市街地では、建て替え需要を顕在化させるようなインセンティブを用意し、建物の更新を促進することが重要であり、それをうまく受け止められる事業手法が必要。

・ 既成市街地の整備には合意形成に時間がかかる。初動期から合意形成を進めていくための体制や資金が必要である。

・ 線引き制度が選択性になったが、非線引き都市では既成市街地だけでなく、周辺市街地の都市計画、市街地整備のあり方が課題である。

・ 東京都の既成市街地では公的事業だけでは市街地整備を進められない。民間に参画してもらうため、事業手法よりも 資金調達やプロジェクトの魅力が大事で、都市計画のインセンティブが与えられるかというような発想が必要。そのためにどのような市街地像を目指すのかなどが課題である。

・ 民間が木造密集市街地の整備に関わるには、採算性、スケジュールの面で困難があるが、これらが解決されると、民間が参画でき、街は相当よくなっていく。市街地再開発事業では、民間は5年後の市場が読めないので保留床を取得しにくいが、初動期から着工が見えてくるくらいの段階までの長期サイクルの資金と着工後の短期サイクルの資金を公民のパートナーシップで分担するとうまくいく。

・ 官民一体で事業を進めていくためには、公共事業への公的負担のみではなく、建物更新を含めた総事業費として捉える中で、民間や住民の負担の問題を正面から考える必要がある。民間、住民の負担の内訳をきちんとデータとして把握し、事業の正否を判断する。そこから知恵が出てくるのではないか。負担という言い方ではなく、官民一体で行う事業と言う方がよい。

・ 東京等では国際的な民間投資が入ってくる可能性があるが、海外に比べ、日本では土地の取引価格の情報が手にはいりにくい。これを開示すると民間として採算性を検討できるようになる。

・ 事業をやれば地価は上がるが、固定資産税が上昇して民間を圧迫する面と、公共団体が税収増にあずかる面がある。固定資産税上昇分を事業資金として活かす仕組みなどの議論が重要になる。

・ コンパクトな街はどんなイメージなのか、本当に住みやすいのか、などの点についてコンセンサスが得られていない。本当に実現可能なのかという議論も必要。

・ めざすべき都市像について共通認識ができるようなイメージをつくり、それに近づくための事業手法のあり方を検討したい。

・ 最終の利用を想像して利回りを計算することはできるが、5年後のところまで資金を張ることが出来ない。着工する段階になれば、資金手当ができ、それ以降は民間でどんどんやれる。着工前のリスクに対応するインセンティブが示されると判断し易い。例えば、税制優遇措置、政策融資、事業認可までの期間短縮などが考えられる。

・ 一般に都市計画は時間軸の制約をもっていないが、どこかで都市計画として認定するということが明示されると民間は出やすい。そうなると逆に、公共側も事業プロポーザルで広く民間を募るような発想もでてくる。

・ 民間としては、事前の地ならしから最後まで一気通貫で関与できるとよい。つないでいくためのジョイントベンチャーや官民の連携プレーが必要である。

・ 事業によって資産価値を上げ、事業後もそれを維持するためのエリアマネジメントが事業と一体になると良い。中心市街地活性化基本計画はそのようなものになっていない。

・ 広域的な事業者としての民、地区の商業者としての民、住民としての民ではインセンティブのあり方が違う。

・ 床需要のあるところと、大部分のそうでない市街地は別であり、絶対的に床需要のない地区では共同化は考えられない。需要によって事業の組立は変えなければならない。

・ 専門家としてまちづくりをとりまとめていくコンサルタントやNPOは、行政と住民の間の通訳ではなく、両方に対して客観的にものを言うという立場が必要であり、それを行政と住民に認めてもらう必要がある。費用は行政が負担するが、行政の手先ではないという認知が必要である。

・ 国際的に競争力のある都市にするためには、東京の環6内側の密集市街地などで、新しい都市の産業興しと市街地整備とを結びつけるようなストーリーが描けないか。ITにより、大規模なものだけではないニーズも出てくるのではないか。そのようなものを支援する仕組みが考えられないか。

・ 密集市街地の整備に早く取り組んだ人が報われるような「創業者利益」のようなインセンティブが必要である。

・ 電線の地中化は、効果が目に見えて、きれいな街になるわかり易い事業である。小空間でも可能となるような便宜的な方法も含めてもっと積極的にできないか。

・ 計画制度と事業制度の連動が重要である。なんでも自由に建てられるのではなく、まちづくりへと誘導していくような建築行政等のバックアップが必要なのではないか。

 

 

                                                                                 

第2回市街地整備研究会議事概要

 

日 時:  平成12年9月25日 10:00〜12:00

 

場 所:  建設省4階会議室(旧CD会議室)

 

1.開  会

2.議  事

  1)資料説明

  2)質疑(発言の要旨は、建設省の責任において要約)

 

・ 高齢者が住みやすい街をつくる際に、小中学校の廃校用地は種地などに利用するのか、整備後に家族層や子供が戻ってきた場合にはどうするのか。

・ 常磐新線沿線地域整備など進行中の新市街地開発を急に止める訳にはいかない。過小宅地の住民が周辺の新市街地に移るなど既成市街地整備との連携や役割分担が必要。

・ 都心に近接し地下鉄駅からも近い密集市街地は、質の高い住宅地に再生するのみならず、新しい活力を導入するなどの方向もあり得る。たとえば、社会人のスクーリング機能や起業家のワークショップを導入するなど新しい都市文化や都市産業を興して、非居住系の用途との複合を考えていく必要があるのではないか。

・ ニュータウンには、働く場所が近くにないので、子供世代が住宅を相続しないので住宅を売ろうとしても、買い手がいないなどの問題が出てくる。ニュータウンのライフスタイル、既成市街地の下町のコミュニティのどちらでも選択できるよう、両方が良くなることを目指す必要がある。

・ 阪神・淡路大震災の経験では、安全な街には温かいコミュニティがある。下町の良さのあるところには戻っていきやすい。下町の生活環境の復活が必要。また、駅を中心に商業の活性化を図り、コミュニティを再興しようとしたが、駅前に商業が戻らず、その外側で500平米から1000平米の食品スーパーがバラバラに立地した。公共交通施設を中心に住みよい交通体系と環境をつくることを強力に進めていくべき。駅前に街として必要な商業や生活サポート施設をワンセットでつくる。その種地を用意するため二種型の区画整理が有効ではないか。

・ 3つの観点で多様性のある市街地像をつくる。

(1) 従来のように郊外部に住み都心部に通うというパターンではなく、郊外で車利用を中心に豊かな緑がある暮らしをつくり、中心部と郊外部との住み分けによる多様性を確保する。

(2) 既成市街地では、再開発によって高度に利用していく部分と、そういう形になっていかない部分の両方があり、それらの多様性を認めていく。わが国の既成市街地には質の問題があり、ヨーロッパには保全地区という多様性のある地区があるのとは異なり、ストレートに多様性の議論が出来ない。しかし、様々な歴史や特性をもった地域がある。

(3) 従来は生活の場と産業の場を分離してきたが、これらを一体にしてどう都市の中で組み立てるかというテーマがある。IT産業をはじめとする都市型産業も、大規模開発の中ではなく、一定の質を持った既成市街地の中にさまざまに展開していく傾向があるので、そういうものにどう対応するかが課題。

・ 都市像や市街地像は上からの押しつけではいけない。初動期に住民参加を位置づける仕組みが必要。

・ 事業の仕組みの中にある規制が、事業の立ち上げを遅らせている面がある。規制を洗い直し、緩和して、柔軟な対応に変えていくべき。

・ 街路整備の推進には、土地価格が大きな要因となっている。公示価格ではなく、収益還元法を中心とする現実の市場での価格で用地買収をすべき。

・ 対象とする既成市街地の定義はどうあるべきか。用途地域の範囲とするかDID(人口集中地区)の範囲とするかでは考え方は異なる。現実には、1995年の用途地域の中で1/3はまだDIDになっていない。用途地域の範囲でDIDになっていない低密度な市街地のあり方の議論も必要。

・ 目指すべき市街地像と、各事業制度の改善の方向のつながりが分かりにくいので、整理すべき。

・ 大都市圏内でも鉄道新線の計画があり、鉄道に関しても議論すべき。例えば、鉄道の上下分離の方針に対して、下の部分の整備をだれがどうすべきかなどの議論が必要。

・ 都市計画法の改正で新しく用意されるツールと市街地開発事業とをうまくリンクさせる。たとえば、立体都市計画などの活用について議論しておくべき。

・ 公民の連携を進めるためには、民の共同化の実効性の担保が必要。区画整理の共同建物建設区はよいアイデアであり、共同化を希望する人と希望しない人の調整を制度化できる。そのためにも、事業計画段階で用途地域を変更するなど、事前に計画が見えている必要がある。再開発で全員同意ではなく部分同意でも共同化できるという提案もよい。

・ 既成市街地の整備に際しては、文化、伝統、歴史を考えるべき。お寺のある市街地を整備する場合に、そこだけ残して周辺を従来型の市街地整備の設計で行うのではいけない。文化のにおいがでてくるようにする必要がある。

・ ディベロッパーとしては市場原理の働くところにビジネスチャンスがあり、東京都のセンターコアとされているところには、かなりビジネスチャンスがある。このようなところでは資金効率も高いので、建物不動産のリニューアルとか、周辺の整備も含めてレベルアップしていこうとし、いいサイクルが生まれる。バブル崩壊後に再構築できたプロジェクトは、スケジュールのスローダウンと、規模のダウンサイジングや共同事業型に変えていったもの。段階的にはじめると意外にスピードアップして最終的には全部やれるという場合もある。

・ マスタープランと事業制度をつなぐ仕組み、特に初動期を支援する仕組みが必要。NPOやまちづくり協議会等をうまく誘導し、税制のインセンティブを働かせる、仮設や暫定利用を支援する、イベントで機運を醸成する制度などが望まれる。また、事業をすべてセットしてから補助金が出てくる仕組みを、もっと前倒しして欲しい。民間は事業の後半になると資金を出しやすくなる。

・ 区画整理の基本は合意形成にあり、都心部では上物も含めて簡便に合意形成できるような仕組みが必要。

・ 時間の概念を事業制度に明示的に組み込むことが必要。ひとつは、アメリカでスマートグロースといわれているように、地域に馴染み易いように開発を暫時進められていくこと。もうひとつは、時間コストという観点から、初動期の取り組みを事業制度として明示的にやることが必要。

・ 事業をやるための調査費の補助制度はあるが、事業をやるかどうか、場合によってはやらないかもしれないことを、住民参加による合意形成も含めて調査できるようにすべき。

・ 区画整理事業と土地利用規制の連携とあるが、新市街地においては、線引き制度により事業に参加するのとしないのとで差別化がなされていた。既成市街地においては、従来、差別化は容積率でやってきていた。容積率をインセンティブとするのは、都市の形自身を歪めることとなり、あまりよい方法ではない。住民が事業に入ることと入らないことの差別化には税、資産に対する金融など個人の生活設計をサポートするインセンティブが必要。

・ 建築基準法上、建替えができないはずの敷地で建替えができるというおかしなことがおきることが問題。建築指導行政でチェックできないならば、違法建築に融資しないなど金融にチェックさせるべき。よい事業への参加を誘導する仕掛けをつくっていく。

・ 都心部では1500〜2000%を使えるよう、木密地域から容積を移転し、木密地域は緑とスポーツ・カルチャーに低層住宅が融合するようなメリハリのある都市にすることが望ましい。

・ 都市再開発方針の2号地区は、全国で2万2千ヘクタール強あり、この再開発方針はマスタープランと事業をつなぐ重要な役割を果たしている。しかし、市民には2号地区のイメージができないし、例えば東京都区部の2号市街地を再開発事業で整備するには天文学的な時間がかかる。公共投資だけではできないので、地権者が参加し、どのくらいの時間をかけてどの程度のレベルを達成するかなどのシナリオが必要。

・ 日本の大都市圏は、欧米と比較して公共交通機関が非常に整備されており、省エネ省資源のコンパクトシティを実現している面がある。また、安全や治安など、国際的にみた比較優位性や特質を活かした市街地整備を検討すべき。

・ 事業について行政が感じる時間と住民が感じる時間に大きなギャップがあり、トラブルの原因になっている。住民は極めて常識的であり、ある意味でよく理解されるものであり、行政が決めつけてから地元に説明するのではなく、一緒に相談して決めていくシステムを導入すべき。その方が早く進み、行政も住民も時間のロスを感じない。一方で、住民があまりに常識的過ぎて、与えられた情報に対して保守的な選択をする傾向もあり、専門家が提案して議論してもらうことが重要。

・ 再開発絡みの不動産証券化に対しては税制の特典がつくなど、一般の証券化との差別化が必要。まちづくりに寄与する証券化への投資が主流になると市街地整備は進む。

・ 土地ではなく建物の収益力に投資する時代であり、ディベロッパーはテナントや投資家をみつけてから、すなわち売ってから事業に着手する。事業期間として最大で3〜5年で出口が見えるかどうかがリスクの限界。ほんとうは2年以内で回転させないと資金が集まらない。

・ 米国のTIFのように事業に伴う固定資産税の増収分を債券として発行して事業につぎ込めると、保留床等の問題を相当解決できる。

・ 東京都の密集市街地については、戦後50年間経ってもなかなか解決できないエリアである。東京都の都市ビジョンを検討する中で、実現方策が課題となっており、方向性を見いだしていきたい。

・ 民民の共同化はインセンティブがないとうまくいかない。

・ 区画整理や再開発について、今までは100点満点の事業に対して60点でもいいとすること。また、事業に20年かかることを当たり前とせず、公権力が強制力をもって5年でやること。逆に、みんなの意見でゆっくり30〜50年かけてやることなどのメリハリをつけることが必要ではないか。公共事業の再評価に対して、私権を尊重して事業に時間がかかることをもっとオープンにするべき。

・ 官側に資金がなく、民間には資金があるけれども資金の使い道がないのであれば、都市につぎ込むというロジックをつくり、整備制度をしっかりする。

・ 災害の危険度を地価や損害保険の料率にも組み込む。きちんと整備すると地価が上がる、敷地条件によって地価が変わるというシステムが必要。


 

 

            第3回市街地整備研究会議事概要

 

日 時:  平成12年11月2日 15:00〜17:00

 

場 所:  都市計画会館3階会議室

 

1.開  会

2.議  事

  1)資料説明

  2)質疑(発言の要旨は、建設省の責任において要約)

 

・ 共同建物建設区では土地が共有になるとして、共同建物の建て方、時期はどうなるか、土地の売買はどうなるかが課題。

・ 密集市街地では区画道路をセットバックで生み出すことは有効だが、もともと小さい宅地が多いので、セットバックした部分は宅地として容積率・建ぺい率にカウントできる、公共的空間としての利用を担保した上で一般の宅地とは異なる税制措置があるなどのルールがあると良い。

・ セミパブリックな空間として位置づけて、道路として利用しつつ、地権者は敷地としてもカウントできるなど、官民境界で切断しない方法が必要。

・ 市街地再開発事業で、従来は保留床処分により権利者負担がなくても建替えができたが それが成り立たなくなってきたので、少し自己負担を求めるという考え方は良い。その場合、共同化せずに自分で建て替えるよりも小さい負担ですむなどのメリットを示すことが必要。権利者と相談する仕組みやソフトな支援措置も必要。

・ ドイツには、地権者の経済状況、生活歴などを踏まえて社会的ケアをしっかりする形で再開発を行う仕組みがある。経済採算性だけではなく社会計画的な側面も含めて地権者の意識を転換することが必要。

・ 木密地域では再開発に地権者が負担する経済力はないが、古いRCの建物が多いような地区では資産力があるので自己負担が可能ではないか。

・ 古くても固い建物は従前資産としての評価が高くなるので再開発が成立しにくくなるのではないか。

・ 区画整理に際しては早い段階に用途・容積を明示・担保する必要があるが、その場合に上物については方針程度をきめておくという柔らかい対応が必要。

・ 容積率の割り増しがあっても、区画整理の減歩と相殺され、割り増しの効果が小さいことが問題。

・ 道路を隔てた南側宅地と北側宅地では日影規制で利用できる容積率に差があるが、区画整理の路線価評価方式ではその差が考慮されない。上物による収益還元の観点を持った土地評価が必要。

・ 市街地再開発では建物の残存価値を評価するが、区画整理は再築工法で 100%近い移転補償費を出すため事業のコストアップにつながる。

・ 都心の区画整理で細道路の統廃合を行う際に、区画整理法だけではなく、道路法上の取り扱いなどを制度的に整理することが必要。

・ 区画整理の中で床に権利変換できると税金面でも有利になり、進化した事業となる。

・ 都心部の古いビルは既存不適格のものが多く、従前の容積が使えなくなるので、建て替えが進まない。既存不適格分の容積を担保し、さらに、共同化する場合には一層の容積インセンティブが必要。

・ 防災危険度が高い地区で事業化するためには、アドバイスや補助金に加えて、時限的な税制で早く事業に誘導するなどの仕組みが必要。

・ 既存不適格の救済は、マスタープラン等の位置づけが前提とならないと難しい。不適格でも一旦確保した容積を永遠の権利として補償すると法定容積の意味がなくなる。

・ 放置すると既存不適格建物は更新されない。防災面の貢献などを評価して容積を使えるようにする。

・ 再開発マスタープランを充実させるために、地区レベルの再開発のマスタープランを住民参加で描き、全市的な再開発マスタープランと連動させる。

・ 市の基本計画・長期構想、市町村マスタープランなどいろいろあって分かりにくいので工夫が必要。

・ 全市的にみて再開発が必要なところは市民も分かるが、その他の地域では再開発が必要だといわれても住民意識とは結びつかない。

・ 住居系の用途地域の地区で街路整備をする場合に、整備後は沿道型の土地利用に変わるにもかかわらず、現行用途地域を前提に緩衝緑地をとることになる。用途地域を変えるタイミングのあり方が検討課題。

・ 商業地域で80%の容積率指定ができるようにしておき、街路が整備されたら 400%にする。そうしないと第一種低層住居専用地域が幹線道路を整備するのはおかしいとなる。事業と用途地域が都市計画の中で自己矛盾をおこしている。外環を整備する場合にもこの点が問題になる。東京都では第一種低層住居専用地域の指定範囲が広いが、これは都市基盤が整備されていない地域でアクティビティを小さくするために指定している面があり、低層住宅地が広がるべきという意図ではないはず。

・ 駐車場の付置義務は路上駐車による交通渋滞を防止するという趣旨だが、マクロな環境という面からみると、大都市ではデパートが付置義務駐車場をつくるほど車が集まり、道路上の待ち行列で大気が汚れる。環境面を配慮して付置義務のあり方を検討することが必要。逆に、地方中小都市では中心市街地疲弊の最大の原因が駐車場不足にあり、活性化に向けて思い切って駐車場を整備する必要がある。

・ 取り残された密集市街地はマーケットメカニズムでは救えないし、住民の自己負担も難しい。市街地整備をタイプ別に分けて、高福祉化型、多世代居住推進型などの冠やネーミングをつけ、それぞれ応じて補助を別個に用意すると進む。

・ 道路は自動車を停めるのではなく、動かす場だから、停めるところは交通を発生させる原因者が自分で用意するというのが日本の駐車場の原則。しかしながら、付置事務が生じるような大きな建物は三大都市圏にしかない。ヨーロッパでは小さい町でも厳しく付置義務を課している。

・ 今回の市街地整備の手法検討は、官民の連携の強化、協働という命題にもとにくくることができる。共同化、セットバック、駐車場整備はその典型。官民の協働・連携は、「企画設計段階」「資金獲得段階」「最終の担保措置」の各段階で必要。「企画設計段階」は考え易いが、「資金獲得段階」「最終の担保措置」になるほど法制面でどうなるか読みきれない。

・ 資金獲得については、セットバック、共同化、駐車場ともに地権者の自己負担という要素がある。ドイツのBプランの地区整備負担金のようなものはわが国には馴染みにくいが、現物で出すという方向は現実性がありそう。

・ 担保措置については、強権を用いて罰金をとるということにはならない。多分、契約という形で民民が協働し、行政と民が協定を結ぶような方向になる。例えば道路管理者と土地所有者が契約を結んで、当面は宅地のままだが、いずれ金ができたら道路として買うというようなことが考えられる。

・ 官民の連携・協働を手続的に支えるのは同意・合意の手続。地権者グループ内の合意と周辺住民も含めた合意があるが、行政手続法の観点からは、意見聴聞のための主催者という制度をおいて、主催者が責任をもってまとめるという役柄が要る。それが官民の関係を裏打ちする。

・ 同意のための手続システムは規制と連動する。都市計画決定して長期間整備をしない施設の区域にかかる規制の問題、共同化からはみ出す人にとっての公益性の問題などがある。

・ 合意と公益性とは相補関係にあり、合意が全くないとすれば 100%の公益性が必要。合意が80%あれば公益性は少しあれば良い。合意が 100%ならばなんでもやれる。その手続を整備することで、長期にわたる都市計画規制の問題にも対応できる。

・ 市街地再開発の要件として新耐震の基準にあっていないものを耐火建築から除くとすると、そのような建物はたくさんある。市において劣悪なものがレアだから要件にかなうということが必要。たくさんあるものを対象にするのはいかがなものか。

・ 耐火要件にかなわない地区は結構多い。市街地再開発は完璧に法律に定められているが、敷地整序型区画整理で任意の交換・分合ができるように、任意のものが担保できるような柔軟性のある仕掛けがあると進む。簡便な手続で小回りのきく手法があるとマンションの建て替えなどが進む。隣接敷地と共同化すると基準を緩和するような制度があると敷地統合が進む。

・ 共同建物建設区は都心など大きなビジネスにつながるような地区もあるが、密集市街地で活用するには建付地も対象とする必要があり、借家人対策、高齢者対策などが必要になる。それに対して社会的な住宅・リバースモーゲージなどを供給して、一生安心して暮らせるというような事業もあり得る。いろいろなバラエティをうまく説明できるようにしておく。

・ 弱者を救済するような事業は公益性が非常に高いし、合意もとりつけ易い。

・ 事業手法が決まる前に地区に入って、地元の事情を踏まえて合意をとる仕事は役所にはできない。それをNGOが担うためには、都市計画の専門家だけでなく、建築家、税理士、弁護士、福祉関係者などがチームを組んで対応する必要がある。その結果、区画整理や再開発の同意がとれる。

・ どのような事業が適しているか、どの区域を対象とするかを検討するような調査の仕組みがない。専門家が食べていけるような大きな調査費が要る。弁護士が増えてくるとまちづくり分野などで仕事をしないと食べていけない。そのような調査に金をかけて街が良くなると固定資産税で戻ってくる。

・ 事業手法を決める前の調査をやって、その次に事業調査をやって時間をかけるが、事業に入ったらなるべく早くやってしまう。時限的な仕組みを考えると良い。

・ ヨーロッパでは民間ディベロッパーは事業のリスクをとれなくなっており、住民が主体になる。プロのコンサルタントを雇うために公的な支援がある。最初から最後まで民間ディベロッパーが責任をとることはあり得ないので、前段をこなすための仕組みが必要。

 

 

            第4回市街地整備研究会議事概要

 

日 時:  平成12年12月8日 10:00〜12:00

場 所:  都市計画会館3階会議室

 

・ 共同建物建設区では、不動産取得税は無税か。土地と建物の権利を同時に変換するのか。

  → 立体換地や市街地再開発ではなく、土地の換地のみ。建物は任意に地権者が建設。

・ 共同化については、権利や資金のシステムを柔軟にするバリエーションを考えてはどうか。

  − 密集市街地の例として、旭町地区(大阪府門真市)は区画整理地区ではないが、敷地 と建物の関係が1対1であり、実質的に共同化しているように建物を設計している。相続発生時の資産処分等が容易になる。これが、どのような相談をしてどういう形ができたのかを考える必要がある。共同化には抵抗があるが、できるだけ多くの人が参加できる仕組みが必要。

  − 共同建物に入居したり、建物経営はしないが、土地からの収益は欲しい人を参加させるために、定期借地権を絡ませる。

・ 共同建物建設区に申し出をしたが、経済環境の変化で退出したい人が出た場合の柔軟な対応など、プロセス管理や共同化のバリエーションが必要。

・ 街路沿道でセットバックしても、建物前面が駐車場になり歩行者空間の魅力が半減することが多い。沿道一体型では沿道の交通動線などに関わるソフトウェアも計画に組み込むべき。

・ 駅前広場を立体化などの工夫で整備する際には、単なる交通結節施設でなく、市民の交流や文化なども含めた多様な広場機能を創出すべき。

・ 中心市街地の外縁部に駐車場を設け、ITを活用してコミュニティバスなどと連動させたい。

・ 港北ニュータウンで共同化の色々な事例があり、都市公団のノウハウを勉強すると良い。例えば、地権者が共同で会社をつくってテナントに貸す場合に、途中で脱会する人への対応など。

・ 敷地の大きい人はビジネスとして共同化に乗り易いが、敷地の小さい人ほど共同化に参加せず、減歩緩和を受けて元通りに建てる傾向にある。一定規模以下の敷地については強制力をもって共同建物建設区に移すか、あるいは共同化しない場合は相応の位置に換地して、自己資金で基準以上の敷地規模にすることを義務づける。好き嫌いで共同化を誘導するだけでは効果が上がらない。

・ 木造密集市街地で共同化するメリットが分かるようにする。例えば、駐車場を共同化して車が持てるようになるとか、皆で集まる集会の場ができるなどのメニューの提案が欲しい。

・ 駅前広場予定地で事業の動きが出ると駅前の業者が駐車場の確保に走り、多大な補償費を要求し、一般権利者も恐れて組合設立ができないというような例がある。まとめて駅前広場を確保するのを止めて、分散型の整備にするという提案は良い。駅前までバスが入ってくる必要はないし、キス&ライドのスペースなども柔軟に分散して設けると良い。分散的な駅前広場機能をゾーンとして決めるシステムがあると良い。

・ 駅前広場の分類を人口規模や乗降客数で大雑把に決めずに、駅前広場の性格についてきめ細かな指針を提示してもらえるとありがたい。

・ 駅前までバスに乗ると時間がかかるので手前のバス停で降りる人が多い。駅前の狭い道路を空車のバスやタクシーが往復することで交通混雑も生じる。駅前広場機能を分散させて、手前でUターンさせる方が実際的。

・ 街路空間をセットバックする際に、誘導容積制度と固定資産税の減免を連動させるための説得力のあるデータを示すと良い。セットバック分を減免してもその減税規模は高がしれているが、容積の高い建物が建つと結果的に税収効果も大きいなどが公共団体に分かるようにする。

・ 多摩地域の第一種低層住居地域などで幹線道路を整備する際に、良い住環境の地区を保全する用途地域と幹線道路の計画が矛盾するということで反対が生じる。都市計画制度と事業とが絡む部分であり、骨格道路の必要な地区では先行的に整備後の用途や容積が変わることが示されていると地元の対応も大分違うだろう。

・ 幹線道路の予定がある地区では、用途・容積の一律のセット主義を止めて、商業地域で容積率80%などの指定を可能にする。

・ 古い時期に計画決定された街路を事業化する場合に、住民合意を行うためのメニューが揃っているかどうか気になる。事業者がコーディネートのための調査など合意をとるためのツールを持つ必要がある。

・ 計画制度と事業とを複合化させる場合に、例えば再開発地区計画と区画整理事業の組み合わせでは、都市計画インセンティブは、道路を除くと空地だけしか評価対象にならない。屋上庭園、緑化率、天空率なども評価対象になり得る。空地だけを評価すると高さ制限のあるところでは建築計画が成立しないとか、うまく街並みが揃わないという問題が生じる。

・ 基礎自治体の窓口は非常に限定的な判断しかしないが、多様に評価することや、用途・容積を事前明示することでスピーディに事業が進むことが最大の地域貢献になる。窓口の対応のマニュアル等を示してもらえるとありがたい。

・ 幕張や都心のマンションでは、南側、北側の値付けが同じでも人気は変わらない。コンパクトで効率の良い街を目指す上で、日影にこだわると難しくなる。南側沿道と北側沿道で区画整理の土地評価も変える必要がある。

・ 商業地域では、幅員の狭い道で高齢者が交通事故にあうケースが多い。駅前広場整備にあわせて周辺の歩行環境を整備する複合的な施策が必要。

・ 駐車場は人が集まるポイントでもあるので、量や配置の問題だけでなく、「道広場」のような車を停める広場をつくり、電気自動車、公共交通機関のターミナル、歩行者ネットワークとの連携などを行い、環境にやさしい施設にする。現行の駐車場は非常にみすぼらしいので、空いている土地につくるだけでなく、デザインや周辺との結びつけを考えた駐車場整備を本格的に考えるべき。1階に店舗が並ばない立体駐車場だけでは街の活性化にプラスになるかどうかわからない。

・ 幹線道路、交通結節点、駐車という柱だてが従来型の印象であり、世の中に出して耐えられるか。他にも、直接的な環境の問題、規制緩和後のバス事業のあり方、自転車や徒歩の問題、物流の問題などがある。

・ 街路事業のメニューは車中心で考えている印象が強い。バス、自転車、歩行者を前面に出して柱立てすると、同じ内容でも読みごたえがある。

・ これからはヒューマンスケールなコンパクトなサイズの街が大事になるが、駅を中心とした多機能化などは中長期ではなくすぐにやって欲しい。

・ 中心市街地の没落は駐車場政策がお粗末だったため。末期症状の地区には駐車場整備に思い切って投資する。駐車場をつくると結構人は戻ってくるので、カンフル剤としては効果的だし、櫛の歯が欠けたような地区では整備コストも安い。

・ 都市計画インセンティブを与える際の評価として、空地以外の物差しも入れると住民にも分かり易く、市町村の独自性も出せる。高齢化対応の度合い、景観のグレードなど新しい物差しは考えられる。

・ 駐車場を整備するほど自動車も増えるので、むしろ新しい交通システムを入れる方が効果がある。東京では無料バスにしたら利用客が10倍になった例などもあるし、丸の内・日本橋に回遊バスなどを入れて車道を狭くして歩道を広げるなどの地域からの提案もある。

・ 駐車場の要・不要は場所によるので、場所のイメージを統一するための整理が必要。

・ 計画や事業の制度の内、今回はどれを解決しようとし、どれを今後の勉強の課題にしようとしているのかを整理して欲しい。

・ 都市計画関連の制度は歴史的に継ぎ足しが多くなされ、ゴチャゴチャしている。長い目でみて制度の設計のし直しが必要であり、そのために今はどの課題を解決するのかなど、長期的にみたグランドデザインが必要。

・ 古い時期に道路の計画と沿道の用途・容積が決められた地区が、将来どういう機能を果たすかは当初の計画とは異なる。既定の計画や用途・容積をチェックする制度が必要。

・ 歩行者ネットワークは色々な制度でつくられるが、ネットワーク全体がクローズアップされるような制度設計をした方が魅力的でインパクトがあり、実現性も高い。

・ バスが段々と野放図になっていく中で、バスのルートをきちんと設定するなど道路の事業制度と公共交通とをコンバインすべき。

・ 駐車場をつくっても効果のない商店街もあり、インフラだけつくって欲しいというのは金を捨てるようなもの。将来のビジョンがきちんとしている商店街には大胆に補助するなどマーケットメカニズムと公共事業をうまく接着させる論理が必要。

・ ヨーロッパの古い街では駐車場ができないので、開き直って歩行者ゾーンにしてしまい、それを前提に街づくりの動きがでるが、日本では車が来ないと人が来ないという論理が強すぎる。街のフリンジに駐車場を設けるべきとか、これ以上は駐車場をつくらないというアッパーリミット規制などのスタンスの方が良い。

・ 街路にマンション敷地がかかる場合(建物はかからなくても)、住民全員の同意が必要となるので、街路事業の支障になっている。

・ 東京都はGISによる都市計画情報処理システムを更新するが、ゆくゆくは一般都民にも開放し、合意形成に役立てたい。

・ 大深度地下利用は、私権と公益のバランスを見直しているが、成熟した「大人の社会」を目指す上で、私権と公益の関係のあり方についてもコメントしたい。

・ コンパクトな都市をいう中で、密集市街地と臨海工場跡地のまちづくりの方向がこれにリンクしていない印象がある。

・ 市街地整備手法の記述の前に、なぜ手法毎に検討するのかという説明が必要。

・ コンパクトな都市というと小さい町を支援するという意味に誤解される。メリハリをきかせて集中的にやるという意味がわかるように工夫したい。都市規模の大小によってコンパクトな都市づくりと交通のあり方が異なるなど柔軟に考える。

・ 全体を貫くテーゼとして公民のパートナーシップなどを打ち出す。

・ 今回法改正による商業地域での容積率移転が、区画整理や市街地再開発の地区では活用できないが、当然適用されるべき。

・ 市街地再開発で敷地のみに権利変換できるようにすると、区画整理との境界が不鮮明になる。区画整理と住宅局再開発の奪い合いになると公共団体が迷惑する。はっきりとした整理が必要。

・ 住民参加や住民主体の動きを強めていく中で、役所側の話だけではなく、住民からみて、何が良くなるのか、どういうふうにやっていくのか、などの呼びかけのニュアンスが欲しい。安全な街というだけでなくて、実利面や住み心地が良くなるというような話が必要。地域管理・地域運営などの言葉が固いので、住み心地が良くなる街をみんなで育てていこうという中で、維持や管理をすることはあたりまえというようなニュアンスにならないか。

・ 区画整理で道路はできてもゴミステーションは路上になり、どこに置くかが解決できない。共同建物建設区でも街区の端にゴミステーションなどの共有施設をつくるならば支援するなどメリットが見える仕組みと連動すると、住民にも分かり易い。

・ 老い先短い思っている高齢者には、共同建物建設区ならば早く移ることができ、本人にとっての事業も終わるということが大きなポイントになる。

・ 市街地再開発の施行区域要件については、耐火建築物の基準の見直しだけでなく、空きビルでの犯罪や治安などの近未来的な要素も課題となる。そういうところは草の根民活やNPOに修復してもらうなど、再開発の経済的採算性があまり高くない地区での手の入れ方が必要。

・ まちづくりのツールとして整理されていることで、・−3の今後のまちづくりの方向にあるような目指すべき街ができるかどうか。最終のとりまとめでは本当にまちづくりができるということをきちんと書く。

・ コンパクトシティのための車利用のあり方が都市規模で随分違う。特に公共交通の整備の有無で違うことになるので、国土交通省として公共交通を考えるのであれば、その出だしは書いておく。

・ 高密度にコンパクトに利便性を高くしようとするならば、日影などの一定の制約や犠牲はどうしても伴う。そういうルールはきちんと言うべき。

・ 開発者負担として地主負担が中心となっているが、整備された公共空間を使う人の受益者負担の仕組みが必要。TIFもそういう発想。

・ 出口としてのタウンマネージメントの側から制度のあり方を見直すなどメリハリをつけて欲しい。

・ 迅速かつ機動的な事業実施にとっての弊害があまり明確に書かれていない。私権の保全と公共の福祉のバランスの中で、事業スピードも含めてどういう問題の認識をしているのかということを中間のとりまとめとして入れておく。

・ 役所の人間だけでなく、住民にわかってもらうという文章にした方が良い。

 

 

第5回市街地整備研究会議事概要

 

日 時:  平成13年1月30日 10:00〜12:00

場 所:  都市計画会館3階会議室

 

1.中間とりまとめ(案)について

 

・ 地価が下落し、民間が出にくく、公共団体の財政も厳しい中でどのように事業を動かしていくかというスタンスと、今後、これらの問題が改善されていく中で事業制度をどう考えるかというスタンスとでは議論が異なる。前者のスタンスでもう少し厳しい議論が必要ではないか。現在の状況の中でどうするかという議論として、例えば、民間が事業に参加するための資金調達の透明性、公共団体が資金を出しにくい状況への対策など。

 → 厳しい認識が不足しているという指摘は受け止めなければならない。密集法ができて 3年経つものの、民間も公共も資金がない中で、整備は難しいとなりがちだが、何とかしなければならないという世の中の認識が広がれば、国土交通省として力を注ぐ環境はできてくる。政府中枢も都市再生・都市新生を重視しており、国としてコミットしてく上で追い風となる。

・ 制度を改善するためには、少し時間がかかるというスタンスで書かれているようだが、短期的に対応するには、民間のリスク負担の問題や、全員同意・公平性を配慮するために事業が長期化する問題をどうするのかなどの認識が必要。時間がかかり過ぎると民間は乗り出していけない。

II章では、直ちにできるとは限らないことも含めて、方向認識を厳密に書いた上で、III 章の個別事業制度の話に移行すると良い。OECDのジャパン・アーバン・ポリシーのような骨太の主張をII章に置いて、中長期的な制度設計の方向性、短期における制度改善の方向性を出してからIII 章に移る。骨太に4〜5程度のポイントでまとめると良いが、以下の点が欠けている。

  − 特定の経済・社会環境のもとで機能した制度が、状況変化によって機能を発揮しなくなっていることを強く訴える。

  − 制度が機能を発揮して出来上がった都市が、必ずしもすばらしいものになっていない。次の時代の都市整備はクオリティを上げることが課題。制度には根本の設計思想があり、その設計思想自身に改変を求める必要があることを訴えて欲しい。

・ 今回の内容が5年前にできていれば、状況は違ってきただろう。時間はかかったが、かなりのメニューが改善され、制度もでき、柔軟性も伴って、完成の域に近づいてきた。

・ 再開発には時間軸が重要。10年で実現する目処をたてる。それでできないならばあきらめる、見直すなどのメリハリをつける。PFIなどで民間の資金を活用するにはスケジュールの確定が必要。時間と資金の関係が大事。2年以内に目処がたつ案件ならばファンドが向かう可能性があるが、ずるずる延びると不可能になる。プログラムがきちんとできていて5〜6年後にリターンが見込まれるならば、民間のファンドが動く可能性が出てくる。

・ 海外の資金が日本の都市に投資するには、市場の透明性が非常に重要。開発によって地価がどう変わるかなどの全体像を示さねばならない。このような議論が欠けている。

  → 鑑定評価基準の改正をそのような観点から進めている。再開発事業もそのような評価に耐えるものとして公表しないと、民間資金は集まらない。システムを変える必要がある。

・ まずは、短期的には、現下の経済・社会状況の中で、一歩前進するために緊急に改善すべきことを絞って整理したい。その上で引き続き抜本的な制度改善の議論を深めていく。

・ 短期的というのはどの位のスパンを考えているのかを示す。

・ 短期/中長期という違いではなく、政治的に短期に改善できる課題と、わが国の経済・社会の抱える大きな課題とは違うという認識が必要。時間と資金の問題などは現在の非常に大きな課題などの整理が必要。

II章を少し加筆すれば、現状を深刻に捉えた上で、今できることに着手するというニュ アンスは出せる。

・ 街路事業でマンションがかかる場合、現行制度では所有者全員に補償金を支払うことになっているが、管理組合法人などの団体に払うことができるよう土地収用法の改正が必要。

  → 個々人に支払おうとしても金を受け取らない人がいる場合、供託できるならば補償がスピーディにはなるが、今回の改正の範囲外。マンションの管理や区分所有法にも関わる問題ではないか。

・ 公園・緑地や景観と市街地整備の関係が入っていないが、そのような項目が必要。

・ 街区再編の計画と事業についてネゴシエーションしながら、段階的に都市計画を細かく決めていくという制度が必要。再開発地区計画よりも大きな範囲で適用できるようにしたい。

 → 抜本的な制度について今後、勉強したい。区画整理と土地利用規制の連携というテーマにも関連する。

・ LRTの補助制度の強化、運用の柔軟性が必要。

・ 区画整理の先買について2000万円控除を5000万円に引き上げられないか。

  → 難しいと思う。

・ 4つの事業の全体を通した視点があると分かり易い。計画制度との連携については街路事業でも言うと良い。街路事業は費用対効果で評価されているが、効果の部分が交通だけではなく、防災も必要ということで街路事業を創出しても良い。

・ 権利者や市民への対応を柔軟にやろうということが各事業に共通しているが、区画整理では共同化が自由になり、市街地再開発では共同化から抜けることが自由になるなどの違いがあり、各事業間の公平性と公共性のバランスの整理が必要。

・ 区画整理や市街地再開発については、建物の整備のあり方などにもっと色々な工夫があって良い。それを課題として書く。

・ 事業資金のリスクの問題は、事業によって重みづけが違うので、分かりづらい。

・ 道具としての事業手法を組み合わせて総合的に市街地をつくっていくという、総合化する場合のイメージが見えにくい。

・ 再開発などで出来上がった建物を長期的に維持していくことが重要。完成当初は魅力的でも時間が経つと陳腐化していくことに対して、ストックの管理だけでなく、使い方の管理に対しても適切な手当てをしていく。

II章では、市街地整備の責任と役割が住民側にもあることをきちんと位置づけて、その道具だてとしてのまちづくり協議会を出していく。まちをつくり、育てていく組織もインフラの一部というくらいの位置づけが必要。

・ 密集市街地の整備などは色々な事業手法や施策分野の連携が必要だが、役所内の調整に時間がかかり、地元からは何をやっているのかという話が出る。調整の進捗が、個人の主体性や資質の問題になっている状況を改善すべき。部局間の調整を促進するための法的な裏づけなどがあると良い。事業を機動的に進める上では効果があるはず。

  → シビックセクターのパワーが上がれば、官の縄張り主義は捨てざるを得ない。

・ 中間とりまとめの公表の仕方がどうなるのか。分かり易く説明するための工夫が要る。

  → ホームページで公表する。一般の方にもわかり易い用語の説明や資料をつける。

 

2.将来市街地像について

 

・ コンパクトという用語はメリハリを強く意味しているが、日本語では小さいという意味にとられるので、メリハリという言葉を使うと良い。それに関連してTOD(公共交通手段優先開発)やTDMなどの概念を入れてはどうか。日本は可住地面積が狭く、人口が大きいため、結果的に公共交通を中心とした高密度市街地が形成されているが、メリハリづけは得意ではなく、だらだらと郊外化している。これまでの日本の都市の形成を維持できるかどうかはクリティカルな状況にあるというニュアンスをいれる。

・ 市街地のイメージ図は幾何学的な表現ではなく、既成市街地を改良していくというような有機的な絵にすると良い。業務核都市をリンクさせて構造化するというマクロ構造がわかるようにすると良い。都心の高密度・複合市街地の範囲が広いのに違和感がある。ここのミクロ構造は相当議論が必要というのが分かるように工夫すると良い。

・ サステイナブルな都市にするためにコンパクト化するという論理はシンプルで分かり易いが、景観の問題、移動の不便さ、不公平感などの住民レベルの話が抜け落ちている。

・ 超高密度自立市街地に住むのは勘弁願いたいという感じがして、郊外にいくほど住んでみたいというイメージになる。どの市街地もよさそうというイメージ図にする。

  → 2050年頃を念頭においた市街地のタイプをまとめているが、いろいろな議論をして欲しい。修復型の取り組みも含めて、市街地を整備することを考えている。

・ オープンスペースの確保、都心居住などの話をひとつの絵にインテグレートした結果、住みたくないような絵になったというのは、研究会が問われていることでもある。

・ 超高密度自立市街地は 100階建てのビルということだが、航空制限の関係で、これだけの高さのビルが立てられる場所は都内にはほとんど無い。

・ コンパクトな市街地は、これからつくるのではなく、これまでの形成過程でコンパクトにつくってきた要素が残っている場所もある。それをどう再生するという観点が必要。スプロール途上の市街地はコンパクトとは言えないが、都市の魅力の中では結構重要な位置を占めており、そこをどう整理するか。

・ 大都市と地方都市の両方が、都市の中心部ほど業務や居住が高密になるという富士山型の構造で良いのか。地方都市で居住地の外側の沿道にショッングセンターが立地して中心部が機能しなくなったとすれば、中心部に高密に住んで、外側に商業や業務が展開するというようなオプショナルな構造もあり得る。

・ サステイナビリティのためにコンパクト化するほど、マネジメントが必要となってくる。色々な分野の連携と、住民の協力がないと、高密な市街地の環境を分かち合って住むことができない。サステイナビリティを支える色々な要素があってはじめてコンパクトな市街地が成立する。

・ 富士山型の構造の中で、高齢者は中心部と外縁部を選択して住むなど、生活像と市街地像を一体に考えていく必要がある。外資系企業の従業員は、ランチがおいしい街に住みたいという意向が一番強い。その次が質の高い住宅があること、ウィークデイにスポーツができること。それらを満たすまちが中心部にできることが必要で、コンパクトとは複合化への努力。川崎ファクトリアでは工場と共存できる街づくりを慶応大学と一緒に勉強しているが、未来工場のようなものを想定して、エンターテインメント、銭湯、住宅などと複合化することを考えている。具体的な生活イメージを示して、選択できるようにすると良い。

・ 都市の人口が減少していくとすれば、相続される個人の資産はどういう方向になっていくか。都心居住の動向がみられるが、大規模マンションではなく、小規模戸建に回帰している状況があるが、それはどういう理由・原因によるのか。個人の資産形成の流れにあっていない手法は使われないだろう。

・ 資産価値が下がっているので、住宅を資産で持つという発想は徐々に少なくなる。都心では賃貸住宅が伸びてくる。木造3階建ての都市型住宅は利便性を評価して買われるので資産価値として買っているのではない。

・ ストック重視の時代が変わり、資産処分のし易さが評価される。分譲マンションの処分の難しさも認識されるようになっている。

・ 長期資産ではない、一時利用型の資産をどう評価するかは難しい。

・ 中古市場が整備されると状況は変わる。

100階建てのマンションは賃貸のイメージ。分譲だと維持管理も含めて成立しない。

・ マンションは 100年建って上物がなくなったら何も残らないというのが嫌われる。高齢者がマンションでどう暮らすかというビジョンもない。若い世代だけでなく、高齢者のライフスタイルが開発され、それにあったマンションができる必要がある。若い世代はマンション指向が強い。女性は結婚後の戸建指向がある。

 

 

第6回市街地整備研究会議事概要

 

日 時:  平成13年3月23日 10:00〜12:00

場 所:  都市計画会館3階会議室

 

1.中間とりまとめについて

・ 各委員からの意見を踏まえて修正している。この形で公表する。

 

2.岩崎委員「コミュニティ重視の市街地整備」

【説明事項】

○ 震災復興での取り組みの事例

・ 大道地区(長田区)

・ 六甲道駅西地区(灘区)

・ 六甲道駅北地区(灘区)

・ 神前地区(灘区)

・ 梅ヶ香地区(長田区)

○ これからのまちづくりに向けて

・ 大道地区の共同化はどうやって実現したのか。

  → 道路がないため個別には再建できない、共同建ては自己資金が不要ということで説明した。公団が会合に出てきてくれたので信用してもらえたことも大きい。

・ 戸建を選んだ人もいたが、元々のコミュニティのあり方が関係しているのか。

  → 隣の自治会の人とは共同化したくないという意向、職業や意識の違いなども原因。

・ 市が柔軟に対応したとされるが、区画整理方式と用買方式との間の公平性の問題、出来上がった市街地の質の差、道路ネットワークができていないことなどがどう評価されるか。

  → 地区によって、人、地形、条件がいろいろと違う中で、均質の条件を示して、同じようにやることは不可能。タイミングを逃すとできなくなるので、最大限の努力でできた市街地が30点でも構わないと考える。だんだんと何度も重ねていけば良い。一度面整備をかけた地区だと、次公的事業が困難。既成市街地では、一度にきれいにつくってしまうというのではなく、タイミングが出てきたらできることを何度でも繰り返してやっていく。そのためにも行政とコンサルタントの弾力的な連携が必要。地元が何をしたいかということが先にあって、何ができるのか考えるという順番になる。

・ 事業制度ありきで整備後の空間をイメージするのではなく、市街地を少しでもステップアップさせるための手法を工夫しながら、つぎはぎでもよいからやっていくと、結果的に一定の水準の市街地ができるということか。

  → 最初、無理してでも動き出させて具体の成果をつくると、隣接する地区でもまねをしたいという動きが出てくる。まちづくり総合支援事業は弾力的に使えそうだが、メニューを無限につくれるようにしないと、既存の仕組みの適用に戻ったとたんに足元がおぼつかなくなる。

・ 病気に例えれば、大震災のような外的要因で大怪我をして、もともと慢性疾患もあったので直そうというのは分かるが、多くの既成市街地は慢性疾患に気づいていない。このような地区に自覚してもらうきっかけとしては何があるか。

  → 神戸では都市計画決定が外圧としてかかり、期間が限定されたことが重要であった。通常、住民は結構良い街と思いたがるので、内発的に動きだすのは非常に難しい。街のリーダーが頑張っても、住民はまあいいやという方向に流れてしまう。危険度判定などで生活習慣病の病状指摘をしながら、少し外圧をかける。例えば「市街地整備事業促進区域」などに指定して、一定期間内は応援するということで、だんだんと網の中に入ってもらう。

・ 地域に密着した施設ではなく、地域を超えた広域的な施設が必要な場合に、住民が一緒になって絵を描くという手法で答を見つけられるか。

  → 地域の中で、広域のことを分かってもらうのは無理。六甲地区の17m道路については、なぜ都市計画道路が必要なのかや、つくる/つくらないの議論をしている限りは前に進まないので、自分たちにとってどう良くつくるかを見つけようという現実的な解決の方向を目指した。結果として、皆さんはつくって良かったと思っている。 一方、1haの近隣公園が大きすぎるというので、 8,000uに縮小して、その替わりに公園とまちを結ぶ幅員13mの生活防災道路をつくった。後になって、地元からどうして1haで頑張ってくれなかったのかと言われたこともある。一緒にものをつくるための時間をかけると、そこからメリットを見つけていく力は住民にある。住民は極めて良識的。

・ 持続的なシステムとして、まちづくり協議会と自治会の機能を備えたコミュニティ組織が、自前のコンサルタント機能をもって平時のまちづくりを進めていくというような可能性をどう考えるか。

  → 六甲地区では、自治会組織は休会にしてまちづくり協議会を立ち上げたが、自治会を復興しようとしている。旧来の封建的な組織に戻さずに、定年制や選挙などの規約をつくるとともに、道路、公園管理、防災などの部会も設けた。事業が終わるまでは協議会は残すが、街の日常管理などは徐々に自治会にシフトさせていく。事業後にも、自治会は街を守るだけでなく、直したり、つくったりしていく機動的な組織に変わり、その中で専門知識をもった住民が育っていくことは十分に考えられる。

・ リバースモーゲージが受け入れられにくい理由は何か。

  → 高齢者になるほど、財産を手離さないという傾向があるとともに、親族や子どもから財産を他に預けるという同意が得られにくい。色々な問題を抱えているために、理屈では理解しても、踏み切れないことが多い。

・ もう少し若い時期にリバースモーゲージを選択してもらう。

  → ドナーカードのように、冷静で良識的に判断できる時点で判断するということはあるかもしれない。

 

2.山枡委員「民間事業者からみた将来市街地像」

 

【説明事項】

○ 都市みらい像の実現に向けて

○ 事例推進例

 ・ 港区芝3丁目地区

 ・ 品川区東五反田地区

 ・ 汐留ツインパークス

 ・ 日本橋エリア

○ 将来市街地像に向けて

・ 都心居住やセカンドハウスを求める層は自由業か。30代はどういう人々か。

  → 汐留は自由業のセカンドハウスが多く、ネット関係者もいる。芝や五反田は郊外からの移り住みが多い。住宅に価格帯を設けており、北側で小さいものは値段も手頃で買い易い。2000〜3000万円代もある。それを共働きの新婚家庭等が買う。

・ 敷地単位ではなく、エリア・街区単位の開発にすると、調整や事業の期間が長くなり、投資の回転も難しくなるのではないか。そのような街区開発の場合、公民の連携としてどういうことが必要か。

  → 一気には立ち上がらない。住民との間でガイドラインやマスタープランをつくり、それに沿って街区単位、敷地単位に入っていく。公民パートナーシップでは、大川端では公民の縦割りでそれぞれが一気通貫でやったが、これからは、基盤整備と初期のリスクは公共が担い、都市計画とスケジュールが見えてから民間資金を入れて、民間事業にシフトしていくことが必要。上物は民間がしのぎを削って競争すると良いものができる。

・ プロジェクトの完成当初の良質な環境を安定的に維持管理するコストをどうするか。立体スラムのような状況が出現することはないか。

  → 維持管理コストがタウンマネージメントの障害になる。町内会費を集めることも難しいので、法人や組合が収益性のある施設や床をもって、それを財源として都市経営をする。そうしないとグレードの高い環境の維持は難しい。

・ エリアマネージメント手法としてBIDの考え方に近いのではないか。

  → BIDとして税金を徴収して地域に返ってくることが考えられるが、東京都はTIFならば可能性はあるが、BIDは難しいといわれる。日本橋ではお金の話ではなく、まずこのエリアをインプルーブするという精神条項をつくる。

・ 地域が市場で評価されて、中古物件にも良い人が入ってくるということを目指しているのだろう。そういう選別は、単なるマンション乱立とは異なる。わが国に選別してくれる市場ができるかどうか。

  → 外資系企業の従業員は、楽しいランチ、良い住宅、英語が通じる、アフターファイブが楽しいなどを求めるが、日本人とは違う。それらに対応できると外資系でテナントになる。それぞれのエリアで工夫しながらしのぎを削る。

・ 完成後も人気が上がって価格が下がらないのが理想か。空きがでればすぐ埋まるという良回転になると不動産価格の維持ができる。地価が下がっていく中で、上がっている地区はどうして上がっているのか。お金をかけて良い街にメンテナンスしてけいば、地価は下がらないし、上がることもあるというのが常識になると面白い。平時のまちづくりのインセンティブとしては不動産価格の維持ということもある。そういう事例を繰り返していく。

 

 

第7回市街地整備研究会議事概要

 

日 時:  平成13年5月29日 10:00〜12:00

場 所:  都市計画会館3階会議室

 

1.東京都都市計画局総合計画部都市づくりビジョン担当課長 座間氏

 

【説明事項】:東京の新しい都市づくりのあり方

○ 東京都都市計画審議会答申「社会経済情勢の変化を踏まえた、東京の新しい都市づくりのあり方について」の説明

・ 50年後の都市計画道路、緑のボリューム、都心居住人口、観光客数などの数値目標はあるのか。

  → 道路については、3環状と主要な幹線道路は2025年までに完成を目指す。鉄道については運政審答申のA1とA2路線は2025年までに完成すべき。観光客数についても考えていきたい。宅地内緑地も含む緑率は、区部で29%の水準を2割増、多摩で80%の水準を維持することを目指す。

・ 東京オリンピック前後に大量に整備されたインフラが2025年には半世紀過ぎて老朽化する。新しくつくる広域インフラと、老朽化するインフラの修復のアロケーションはどう考えているか。

  → 例えば3環状については是非進めていきたい。更新時期を迎えるインフラについては延命策により整備時期をずらして投資の平準化を図る。その具体的プログラムは今後の課題。

 

 

2.青森市 佐々木誠造市長

 

【説明事項】:コンパクトな都市づくり

○ 青森市の目指すコンパクトな都市づくりとその実現に向けた具体的な取り組みについての説明

・ コンパクトな都市づくりを目指す上で、郊外に大規模店舗が立地したいという場合にどういう対応をしているのか。

  → 予定されていた大規模店舗は全てオープンした。いずれも道路、駐車場をはじめとする規制をすべて充足しているので、新たな都市問題を発生させるという状況にはない。ただし、地場の従来の小売業との競争は始まっており、中心市街地の売り上げが減少している。中心市街地では負けてたまるかということで、デパート3店と専門店が連携・連合して取り組んでいる。パサージュ(広場)、アウガ(駅前再開発ビル)がオープンして自信を持ち始めた。あとは、街なかとウォーターフロントのつなぎについて議論している。外圧に耐えて、個性があり、市民に喜ばれる街として再生してくると考えており、ピンチはチャンスにもなる。

・ 様々な施策が十数年をかけて積み上げられ、目に見える形になっている。官庁街が真ん中に残って中心市街地を支えている。「まちぐらし」の国際コンペはどういう場所でやるのか、権利者の権利調整まで含むようなプロジェクトになるのか。

  → コンペの対象敷地は学校用地であり権利調整はない。しかし、コンペはあくまでも北国における新しい集合住宅伸す型の提案を求めるものであり、建設場所については今後、学区の見直しの結果を踏まえ決定されるものである。

・ 市民は街なかに住みたくないと思っていることに対して、何らかのインセンティブを与えて住んでもらうのか。

  → お金をあげて街なかに住んで下さいとはしたくない。北国の集合住宅のモデルを実現して、それを見て体験させて「いいぞ」と思わせたい。従来は郊外が「いいぞ」ということでみんな郊外に住んだが、実際はあまり良くない。郊外は雪が降ると大変で、街なかに帰ってくる人もいる。郊外の一軒家に高齢者が取り残されるのは恐怖。街なかは土地が高く、生活に金がかかるということが障害になっているので、地主にインセンティブを出してマンションにすることや、定期借地権を活用するなどの誘導方法が必要。

・ 除雪費はコンパクトになると安くなるのか。

  → 雪の降り方次第だが、このまま郊外化すると費用が上がる。街なかの暮らしをきっちりとつくれば、とめどなく費用が上がることはなくなる。街なかのマンションは単位面積に住む人が増え、除雪が必要なスペースは小さい。郊外の一軒家だと除雪対象の市道の延長は増え、人口密度は小さいが苦情は多く出る。

・ 港の埋め立てはあまりやっていないのか。

   → 積極的には埋め立てていないが、必要最小限はやっている。

 

 

3.森ビル 山本和彦専務取締役

 

【説明項目】:高層高密度の都市づくり

○ 六本木ヒルズの取り組みを題材に、高層高密度のまちづくりの可能性、効果、課題等についての説明。

・ 日本とマンハッタンとでは街区規模が違うが、街区を細分化する道路をどのように処理するのか。

  → 道路の処理は大変。再開発法という法律のもとでやると、比較的手続は進め易いが、道路法の規定と再開発法の規定が必ずしも整合しておらず、道路法上は廃道について議会の同意が必要というようなこともある。任意の再開発の場合はさらに大変な手間がかかり、やりたくてもできないというのが実態。

・ 低層高密型の市街地を超高層に変える場合、人々が空間を管理できる領域がどういう形になるのかが難しい。猫の額のような敷地でも自分で手入れする所有感に対して、超高層街区でどこまで管理や維持できるのかは、相当のギャップがある。その辺をどう考えているのか。

  → 屋上緑化をなるべくやりたいが、それを管理費という形で負担してもらうと相当のコストになるし、緑や土に親しむ楽しみを失われる。これはボランティア活動や地域コミュニティを形成する上では大事な要素であり、アークヒルズの中ではガーデニングクラブをつくって、イングリッシュガーデンの専門家の指導のもとに、ガーデニングを実践してもらっている。その他、戸建居住者から、経済的な問題も含めていろいろなことで理解を求める努力をしている。

・ 用途の純化ではなく、複合化の方が良いとして、どこまで複合化すべきか。例えば23区全体を複合化すべきなのか。

  → 超高層型の街は、山手線や環6の内側というイメージを持っている。

・ 民間が、部分的な補助を導入しながら再開発できるエリアは山手線の内側だけか、いわゆる密集市街地での適用は可能か。

  → 密集市街地でも不可能ではないが、どれだけ魅力のある住宅につくりかえられか、付加価値をつけられるかによる。ポテンシャルはあるけれど、現状が非常に悪い市街地で、地価が低いような場合にはチャンスがある。加えて、コンセンサス形成の仕組みづくりや、建築基準法、都市計画法の見直しも必要。大きな土地があれば、その周辺も敷地に含めて高い建物をつくると、周辺の人たちはそこに移ることに賛成する。そういうダイナミックな手法を是非考えて欲しい。

 

 

第8回市街地整備研究会議事概要

 

日 時:  平成13年6月19日 10:00〜12:00

場 所:  都市計画会館3階会議室

 

        市街地のボリュームとして、地方都市では中高層で全部人口が納まることになるのか。

        中高層市街地にオープンスペースを1/4確保するという前提で、納まる。

・ 神戸市の山麓部に密集市街地があるが、交通手段が弱く街なかに出かけにくいし、日常生活も大変。そのような市街地を高齢者向けに整備することが効率的か、あるいはフラットな駅周辺に移ってもらう方が正解ではないかなどを議論している。市街地の縮退は、どこにでも空地がバラバラと生じるのではなく、どこを縮退させるかという大きな方向づけが必要ではないか。

・ 最近まで市街化区域内農地の宅地化を進めようとしていて、今度は農地に戻せということになると、税金をどうするのか。また、住宅と農地は虫や農薬、日照、水等の問題で共存しにくいので、共存のシステムの検討が必要。

・ 都市的な地域と農地的な地域とのゾーニングがうまくできる場合は、後者は全面的に農地に移行させてはどうか。農地が介在する地区では市民農園や自然に親しみたいなどの希望を持つ人に住んでもらう。ダイナミックな土地利用転換を無税でできるようにしないと実現しない。

・ 地域が住まい方を選択し、それぞれの場所にふさわしい住まい方を導入する必要がある。また、ライフサイクルの中で、居住地を選ぶような形になっていくべきではないか。

・ オープンスペースを確保してゆとりある環境をつくるという話と、機能複合の話とがあるが、高層・超高層市街地の場合には棟毎に機能が純化される。中層市街地であれば、いろいろな機能の複合化が可能。その違いを明確にして、どちらを選択するのかという議論が必要。

・ パリでは 350%の容積率で、採光のとれる上層階に住んで、下層にはさまざまな機能を導入するなど、限られた空間容量と環境容量を分かち合って、職住の場の調整をしている。今回資料は、すべてオープンスペースで環境を維持するという考え方に傾きすぎている印象がある。限られた環境容量の中で調整する用途別容積制などの計画技術も視野に納める。

・ 機能複合化する場合に、税制上、住宅、オフィスのいずれに認定するかが分からない段階では経営企画をたてられないという問題がある。

・ 地方都市の中心市街地では、商業的な土地利用の縮退の議論が出てくる。商業をやる気のある人が集まって中心市街地を形成するという時代にならざるを得ない。

・ 日本では、中高層の都心居住の土地利用形態や縦方向の用途の分担などのイメージができていない。奨励すべき土地利用のあり方が出てくれば、容積率は 300%を超えて 400〜 500%で都心居住と仕事が両立できるまちづくりが可能になってくる。その議論を都市再生に絡めてやっていきたい。ボリュームだけでなく、イメージを議論したい。

・ パリは市街地のイメージを用途別容積制という規制の中にもっている。

・ 住宅の容積にバイアスをかけながら、生活支援サービスや仕事場を導入していく必要がある。ニューヨークでネット関連、コンテンツ関連の企業集積が進んでいる地区や、日本の渋谷、秋葉原などは若者に人気があり、海外からも才能が集まってくるような地域になる。そういう地域をつくるための土地利用や税制などは政策的テーマになるか、あるいは自然発生的に形成されるようなものなのか。

・ ニューヨークは政策的に打ち出しているようだ。サンフランシスコは自然発生的。ニューヨークではBIDという手法を活用し、ネット関係の産業を集めて、不動産の資産価値を高める。それが賃料にも反映されるという循環をつくり、地域の活性化を図っている。

・ BIDは地主がよい街づくりのために負担し、他の地域と差別化して客を引きつけるという意志が働いているが、日本ではそういう意識があるか。

・ 大手町・丸の内・有楽町地区はそれに近いことをやっている。大阪のビジネスパークもそういう指向をもっている。日本でもBIDのような方向に向かっている。

・ 地方都市の中心市街地では区画整理や駐車場などハードを主体に考えてきたが、壁がある。まず人が住んで、商売をやる人がいて、雇用や起業につながるという街づくり活動そのものを支援するという政策展開が必要とされている。

・ イタリアの中心市街地活性化では、商売をしたい人の資格審査をやって、相応の能力を持たない人は商売できない。能力のある人を支援することで活性化した。

・ ある意味でのTMOになる。5年契約でやらせて、だめならクビという形のマーケットをつくり、人件費に支援できるとずいぶん違う。成功した人をどんどん転がしていくようなこと考えないといけない。

・ どの程度の所得階層の人が住むような都心をイメージするのかが大事なポイント。容積率を低くとどめると賃貸や分譲価格は高くならざるを得ない。普通の人が住めるようにある程度の価格に抑えるには容積率を上げざるをえない。普通の人は郊外に住むような社会は望ましくない。

・ 日本は、欧米に比べると公共交通を中心とした高密度な市街地が形成されていることは事実だが、それが崩れつつあるのも事実。経済メカニズムで高密度な市街地になったが、それを維持する仕組みがビルトインされているとは限らない。大都市では公共交通を拠点とした街の形態になっているが、それが維持できている間にもっと強化することが必要。交通の拠点により重点的な開発を行うというようなメリハリつけることが必要。また、公共交通の沿線の狭間に対する開発の抑制をやっていないし、スプロールの抑制も十分ではなかった。高度化の促進策と同時に、抑制策も持つ必要がある。それがセットになって計画的な縮退が位置づけられる。

・ これからは都市の保安度、防犯性が非常に重要になる。公園の中に超高層タワーがあるような街は安全ではない。街の防犯性を高めるにはどういうスタイルがよいのかという考え方をはっきりさせた方がよい。都市河川の水防上の危険度が高い地区では土地利用や開発のあり方もメリハリをつけてコントロールしていく。

・ 超高層の街では、1/3は緑地だが、1/3は低層建物の屋上緑化をイメージしている。その部分には人の目がある。高層ビルだけで、残りは全部緑地で危険という感じではない。

・ 日本の都市が絶対失ってはいけいないのは保安上の安全性。世界に誇れる安全性を失わない仕組みにする。

・ 都市再生の議論でも犯罪防止にどう取り組むのかという議論があった。東京やニューヨークに共通し、市民が一番気にしているテーマ。水防については、合流式下水道の改善を打ち出している。貯水槽に一時貯留して、ポンプアップして河川に戻すことを緊急対策としてやっていく。

・ 都市はどこでも安全で高度利用できるというのもシナリオだが、一方、ここは縮退させようという方向もある。それを状況に応じて使い分けていく柔軟性が求められている。

・ 名古屋の水害が発生した地区は昔の農地に人が住んでいるところ。土地利用のコントロールを受け入れるような基盤が、都市計画マスタープラン等を通じて培っていけるかどうか。難しいテーマではある。

・ 日本橋の室町でホテルを導入することにした。オフィスだけの方が採算はよいが、街を元気にするにはホテルが極めて重要ということになり、垂直型に複合化する。水平的にみると日本橋の通りの過半は銀行であり、百貨店を除くとアフターファイブや土日の元気がない。オープンスペースに匹敵するものとして街並みが重要になる。水平の複合化として街並みをどうつくっていくかを考えていく必要がある。

・ 民間資金を都市開発に向けるための不動産投資市場が形成されつつあるが、キャッシュフローが持続するためには、元気な街の中にオフィス、住宅、商業施設が常に存在しなければないない。BIDやタウンマネージメントで街ブランドをつくって競争する。用途の複合化の割合によって街のイメージが変わっている。そのためのゾーニングを考え直す必要がある。街のイメージを分かり易くし、敷地の統合化が進むことで初めて縮退化もできる。統合化と複合化を進める制度をつくる。

・ 民間提案型の都市計画制度とはどういうイメージか。

・ 都市再生では、プラットフォームという議論をしている。民間が協議会のようなものに都市計画の原案を提案できるようにする。再開発地区計画でも容積がどの程度になるのかがはっきりしないという苦情があるが、それは民間の提案力の問題でもある。あとは公共とのネゴシエーションの中であるべき姿を模索する。それがシステマティックに動くような仕組みを考える。民間都市開発に、都市計画の運用をあわせていく。

・ 下層は事務階にして、エンタープライズゾーンの指定などで大幅な規制緩和をしてもらい、民間が自由に提案を行い、行政と協議していく。

・ 東京臨海部などでは提案型はあるとしてもそれほどの床需要があるかどうか。臨海部ではエンタープライズゾーンのようなことは考えていない。むしろ山手線の内側あたりをイメージする。現行の都市計画の特例制度に、民間の提案力が生かせるような協議型のシステムで対応が可能ではないか。

・ 民間提案型の中には、用途別容積制など規制の側面もあるが、民間が提案した都市施設を公共が受け止め、資金を優先的に投入する側面もある。東京の道路網をみると補助幹線道路レベルは開発にあわせて計画しないと実現しない。

・ 民間が土地を買う際に、再開発地区計画などを公共が受け入れてくれるという前提があれば、買えるが、権利者にならないと制度にのせないというのが民間にとってはつらい。民間のプロポーザルをOKとした上で、買ってから協議をやりましょうという保証があるとよい。利子がどんどんかかっているのに、都市計画がなかなかOKしない、建築との協議が長引くというのがつらい。

・ 行政側には、民間はすべて業務にするなど利益のマキシマムを狙う心配がある。民間側には、行政が利益を度外視して制約条件を押しつけてくるのではないかという心配がある。これらはニワトリと卵の関係であり、本当に協議しながらどれだけ質を高めていくか。周辺の公共施設の利益をただで享受するのではなく、トータルとして地域全体をよくしていくような開発計画ならば行政は認めなければならない。民間開発者や都市計画主体が技術を磨いていかなければならない。ある程度の範囲の中で、合理的な観点から善し悪しをきちんと議論できるようにならなければいけない。皆が習熟していけば高い次元で議論できるようになる。それをどうやって高めていくか。

・ 時間リスクを減らすためには、開発オークション制度のようなものを取り入れる必要がある。

・ 都心居住を進める上で、どの辺の所得階層をねらうのか、そのためにどういう制度が必要なのかを検討しないと、市街地形態だけで議論することはできない。

・ 住宅価格は民間の市場で決まるので、それを誘導するために公的負担の度合いを決めるという発想ではない。東京都心の家賃は1万円/坪をきっており、中堅サラリーマンが入居が可能な水準が実現しつつある。山の手線内で住宅にバイアスをかける形で有利な市場をつくると家賃はもっと下げられるのではないか。若者や共働き世帯が入居できるような都心居住がもう少しで手の届くところまできている。

・ 限られた空間容量の中で住む工夫としては、若い共働き夫婦は北向きであっても立地のよいところに住めるなどの供給が必要。

・ 民間の投資の期待するためには、TIFの議論をやっていくべき。密集市街地を整備するならば、民間による空間創出だけでなく、公共施設整備の議論がないと無理がでてくる。そのために、TIFはプロジェクト実現後の固定資産税を想定して、それを債権市場で資金化し、プロジェクトに投入するという仕組みとして議論する。

・ 固定資産税は木造系、コンクリート系で差があるので、木造市街地からコンクリートに変わると住民の負担が大きくなるのではないか。

・ 民間プロジェクトをおこす際に、基盤施設は行政的な支援を行うので、これまで民間が抱えてきたさまざまな負担が軽減される。供給される住宅価格も相応に低くなることを計算にいれる必要がある。

・ 公共が必要な道路、公園をつくる場合でも、戸建住宅地と同じくらいの市場価格で提供するとなると、固定資産税の評価の仕方のひずみが残る。

・ 現状の木造市街地が、相応の密度の市街地なれば、建物に対する固定資産税をもっと下げた方がよい。

・ 都市計画道路の投資順位を、民間プロジェクトにあわせて優先的に決めていく。街路の整備に公共団体の負担があるが、そこに民間プロジェクトが付随することで固定資産税収入が上がるので、優先順位を上げるのは当然。

・ 木造とコンクリートの固定資産税の評価額の違いをTIFの原資につかってよいのか。

・ 建物に対する評価がきつすぎるので、それを下げる必要がある。それでもプロジェクト前後では固定資産税収入のトータル額の差は出る。

・ 大都市の中での競争や需要がある場合の議論だけでなく、地方都市で縮退していくところへの手当てをやらねばならない。本当は縮退ではなく、分散化していくのではないか。線引き制度が選択制になり、農業も危ない中で、散居都市になっていくのではないかという危惧がある。良好なストックが次世代に継承される必要があり、敷地規模の問題や介在する農地の問題も含めて考えていく。

・ 地方都市の中心市街地で中高層の市街地を実現するのは非常に難しい。車社会の中ではバラバラに駐車場に変わっているだけ。駐車場の集約化などをやりながら街づくりをすることが当面は必要。

・ 市街地のボリュームについて、高層にできるからオープンスペースが生まれるというのは論理矛盾ではないか。床面積と人口の関係にも疑問がある。公共用地率が5割になるというのはイメージとしてどうか。

・ 公共用地は、プロジェクトを転がしていく内に、公共がただで取得できるような仕組みがないかどうか検討している。

・ 縮退というのは、街に元気がなくなるという嫌な感じがする。街を魅力的につくるために、密度を高め、空き地もつくり、うまく利用していくという論理が必要。そのための街の全体イメージが必要。

・ 地方都市の市街地の縮退では、住宅や産業用地がバラバラに空いてくると、現状の公共基盤を自治体が保持することが不可能になる。質の高い公共インフラを保持しながら小さくするためには、コンパクトにまとめざるを得ない。車利用の日常生活に対して、移動量を小さくしてでも今の同様のサービスレベルを維持するためにコンパクトにしなければならない。コンパクトにすると建てづまってくるので、縦に積む場合にはオープンスペースを現在よりも大きくしなければならないという仮説に立っている。縦に積む際には日常生活を確保するためのミックスユースもしたい。

・ 地方都市の規模によっても、オープンスペースの緑のとり方は変わる。むしろ緑をとらずにアクセスを短くする方がよい都市もある。農村では集落内には緑はない。

・ 都市計画法改正の際に、線引き制度をやめて、農村地域に家が建てられるようにしてくれという声が多かった。そうするとコンパクトな形にはならない。コンパクトを指向するならば、シナリオが必要。

・ 散居型でも、積極的にそうしているのと、取り残されているのでは違う。取り残される形が一番怖い。

・ オープンスペースが、街区ごとに25%あるのではなく、街区を超えてまとめるような方法が必要。

・ ひとつの開発が次の開発につながり、最後にはセントラルパークのようなまとまったオープンスペースが生まれる。

・ その際に日影規制ははずれていくのだろう。

・ 超高層の街での日影や日照はどうなっていくのか。

・ 日照が大事といいながら、木造密集市街地では建ぺい率が高くて日照はとれていない。それが中高層化するときに問題にされるのは不思議。

・ 日影規制のため北側にある宅地には高層は立たないが、日影になる部分の住民の移転が前提になると日影を外すことができるというメリットがある。通常の再開発だと周りに連鎖しないので、それをつながるようにするとよい。

・ 次の開発のために権利変換を優遇して、転居すると得だというような選択的な手法を使ってもよいか。

・ 税制とファイナンスが一体になった規制緩和の制度が必要。

・ 神戸市の山麓部の密集市街地から駅前のマンションに移る際にインセンティブがあることや、空いたところはオープンスペースとして確保していくことなどをリンクさせた事業をつくる。それでライフスタイルを変えてもらうことが可能になる。

・ 臨海部でも、高容積を与えるかわりに、政策的な住宅を出してもらうなどのリンケージは議論している。

・ ボストンでは、敷地間の開発のリンケージを行うパーセル・トゥー・パーセル・リンケージという方法がある。

・ 最初の開発に転居して生まれる空地がポイントで、そのメリットを拡散させてはいけない。公共住宅を確保する場合にはだれでも入居できるとせず、必ず次の空地の確保につなげていく。それができるならば、最初の開発は駅上空でも臨海部でもよい。既存公園を開発して、あとで公園をつくってもよい。

・ 最初に工場跡地を開発しても、そこに転居する人をまとめるのに時間がかかり、結局は1、2棟が建って終わってしまった。

・ 60m2の戸建に住んでいる人が、負担なしで 120m2のマンションに移れるとしたら、多分合意してくれるが、それが甘すぎるとならないかどうか。

・ 空地が確保できるメリットが大きければ問題ないのではないか。

・ どうしても移りたくない人が残ったらどうするのかという問題はある。

・ 収用にするのではなく、組合再開発でも行政代執行の対象にはなる。現状では公共団体はあまりやる気にはならない。

・ 時間が勝負の開発では、足踏みするリスクが大きいと言われる。

・ 官がやると公平や公正が問題になり、やりにくい。

・ オープンスペースをすべて公共用地にするのがよいのか。英国ではコモンのような私有地のオープスペースもある。民間側で持ってもらってもよい。

・ 公共が持つと保安や、安全などの問題を抱える。

・ 高層パターンでは都心居住を思い切ってやると、昼夜間人口比が1:1にできる。

・ 23区は昼夜間人口比は1を超えないとおかしい。マルチハビテーションが進み、平日は都心のマンションだか、週末は郊外の自然の中に暮らす。

・ 人やソフトに助成できる仕組みが必要。

・ 10万人程度の地方都市ならば、都心の下駄履き型のマンションが望ましい。1階を駐車場にせず、駐車場とコミュニティスペースをマンションのどこかに確保する。地方では井戸端会議ができるようなマンションに住みたい。

・ 震災復興で共同住宅をつくった際も、その中に下町をつくる、長屋街を再現するという方が受けがよかった。廊下に談話コーナーをつくるというようなことが説得力をもった。

・ 東京と地方のマンションは違う。地方では銭湯を併設しても利用しない。

 

 

第9回市街地整備研究会議事概要

 

日 時:  平成13年7月27日 10:00〜12:00

場 所:  都市計画会館3階会議室

 

1.民間都市開発による市街地整備の推進について

 

○ 民間企業が関与するタイミング、方法、メリットについて

・ 民間企業は、時間と形がはっきりして収益性が見える後半しか投資できない。前半の5〜10年は民間は金を出せないので、地権者と公的セクターとの役割分担で進める必要がある。これまで企業が地権者と一緒になって前半に取り組んだのは、土地を持って地権者としての立場で関わったことによる。 現行は、住民主体の組合再開発、公共主体の基盤整備の2つの仕組みはあるが、それぞれが良いところを出し合うイーブンパートナーとしての進め方がない。基盤整備は公共、上物は民間という役割分担を前提に、前半は地権者と公共のイーブンパートナーで進め、後半に企業がお金をもってくるという仕組みができないか。いずれにしても民間企業の関与は後半にしかないということで明解に整理すると分かり易い。

・ 保留床の取得者が問題になるが、そこに民間企業が最初から金を持ってくることは難しい。持ってこれるのは事業認可から最終的な権利変換の段階になる。それまでの間は住民と公共とのパートナーシップをどうするかが重要。

・ 民間資金は、スケジュールや形が明解にならないと持ってこれない。

・ 最初から保留床をいくらで取得しますとは民間は約束できない。約束できる時期は後半になる。それまで再開発が動かないと困るので、そのタイムラグは公共の支援が必要。

・ 前半の権利変換などについて民間企業が汗をかくという手伝い方はあるが、その部分はコンサルタントであっても良い。

・ 民間ディベロッパーが地権者の要請を受けて権利変換までコンサルテーションを行い、早い段階で保留床取得のための金をもってこれれば良いが、1割でも反対があると基盤整備が止まる。その間、ずっと待っていなければならない。保留床取得者が決まらなくても基盤整備を先行して進め、その後、取得者が決まれば鋭意、上物開発をしていくということがあっても良い。現行では、保留床取得者が決定しないと基盤整備に入れない面があり先行する部分を公的セクターが担う。まちづくりの計画や権利変換については民間も最初から入って汗をかくが、お金を持ってくる部分は後半になる。金を持ってくることが決まっていなくても、権利変換計画に基づいて基盤整備を進めていくという手法はできないか。

・ 今回提案には、前半の権利調整を公的セクターではなく、民間のディベロパーが任意の格好でやるというイメージがある。単なる等価交換ではなく、事業を促進するための弾力性を高めるため、ディベロッパーがある程度の権利変換をやってしまう。

・ 最後のビル建設だけ民間がやるならば、従来の公的開発と何ら変わらない。前半に公的セクターが入ると、各地権者の状況がうまく吸い上げられない、あるいは配慮しすぎて採算性がとれないなどの問題が生じる危険性がある。できるだけ最初から民間で動いて欲しい。その民間のリスクに対しては、1棟目の建設を公的所有地を無償で使用できるようにしてイニシャルコストを軽減する。最初から民間が土地を購入するよりも楽になるのではないか。住民の中でネゴシエーションや説得するコストの方が、土地を購入するコストよりも軽いのではないか。

・ 何が動機で都市開発が始まるのかということが非常に重要。公共が良い基盤整備をしたいのか、あるいは民間が高度利用したいのか。民間側に動機がある場合の方が色々なコストが安くなる。公共が基盤整備目的で入ると高い移転補償費がかかるが、そのような公共事業を進める時代は終わったと考えている。 民間側の土地保有リスクをできるだけ下げる工夫が必要であり、土地を買ってから入るのではなく、最大限保留地を取得する程度にする。あるいは、保留地・保留床を、地域住民が賃貸住宅を経営する形で持つような形を民間がつくることを考える。

・ 1割の説得が難しい時に再開発がストップしない仕組みが重要。

・ そういう地区では事業をやめてしまえば良い。やるべき地区は他にもたくさんある。

・ エリア指定と公共の役割分担を宣言してから、民間が要請を出してくるまでにプロジェクトの仕込みの期間がある。そこに対する公的支援としては、まちづくり協議会への支援、仮設計に対する支援などがある。ただし、その期間を主導するのはあくまで民間。基盤は公共、上物は民間という上下分離ではなく、民間が主導し、公共は側面支援を行う。

・ 基盤整備も民間が主体となるのか。

・ 然り。

 

○ 公共と民間の役割、責任、リスクのあり方について

・ 例えば、都区部で2000haで高度利用を進めるべきエリアがあるとして、その中で民間開発で採算がとれるところを提案し、住民にとっても周辺地域にとっても質の良い開発計画であれば、公共も応分の役割を担って応援すると宣言する。それに乗ってくれるところは手を挙げて下さいという仕組みを考える。是非再開発が必要だから民間に出て下さいとお願いするのではなく、民間側もいい計画をつくるので、公共はこれ位の応援をしてくれと主張する。それで大部分の地権者からみても納得できるものになるようネゴシエーションしていく。最初から難しいと判断される地区では民間はやらないだろう。

・ 民間企業としてどのような社が要請してくるのかが重要。土地を持たずに開発計画だけだして、地元をかき回して逃げていくのでは、住民は非常に困る。再開発を提案するならば、一般地権者と同様に土地を取得・借地した権利者としての責任ある立場で入ってもらう。民間側もそのような方法を念頭においているのではないか。権利を持たないで民間が参画する方法はあるのか。

・ 民間企業が全く権利のない地区で絵を描くのではなく、最初のリスクを軽減するために公的所有地に1棟目を建てることをきっかけにするので、権利は民間ディベロッパーに契約等で与えられる。

・ 公的所有地がない場合もたくさんあるが、従来は民間企業は土地を買うことで地域から逃げられなくなり、住民に金銭で対応するためコストがかかった。そうではなく、地域をまとめることや機能誘致をするなど、民間の持つノウハウで勝負できる場合もあるだろう。形式的には地権者・住民が要請することになるが、民間企業がまちづくり協議会のめんどうをみて、要請に誘導していくことがひとつのスタイル、実態的には民間企業が要請するスタイルになる。

  今の話で非常に明解になったが、最初は、地権者から推薦されて民間ディベロッパーがまちづくりの方向や権利変換で汗をかくことはできる。従来は保留床取得者になることが期待されていたが、取得者を他から連れてくる、あるいはファンドをつくって売るなど色々な選択肢があり、そちらの方に力を入れる。そのためには事前明示性や宣言は大変心強い。 その一方、都市再生のために基盤整備が必要なエリアもあり、そこは公共が先行整備することがあっても良いのではないか。

・ 従来型の公共の基盤整備部隊が先行するのは難しいというところから検討をはじめている。

・ 公共が確実に基盤整備をやるとわかれば、地元は待ちに入る。基盤整備が済んで地価やポテンシャルが上がってから利益を配分するという行動に移る。それでは困るので、地権者も一緒になって利益を創造するというようなところを応援したい。

・ 都市計画道路の整備は、ネットワークとして見れば優先度が低い区間でも、民間開発に公的セクターがつきあって負担できるようにする。従来であれば公共のプログラムに従って用地費、移転補償費を払いながらやってきたが、地域開発と同時一体に進めることにすれば、用地は公的セクターが買うが、移転補償は民間開発の中でやってもらう可能性が高くなる。ただし、原則は公的セクターが同時一体的に都市計画決定された公共施設については責任を持つ。

・ 従来は公共がやってきた基盤整備まで民間にお願いするためには、ディベロッパー、コーディネーター、地域住民など、だれがどの段階でリスク負担するのかという整理が必要。東京都はそれを計画論で整理する。即ち、容積率や公共施設整備をどうするのかということを最初にセットし、それで9割が同意できるならば、強制的にやれる権限も与えようと検討している。

・ 本来都市計画道路として整備すべきものを再開発地区計画の2号施設のような形で民間が整備するとなると、逆インセンティブとしての負担は大きくなるし、アセスの期間も長くなり、民間はなかなかやれない。内部経済的に採算がとれるようなところはやっていけば良いが、そうでないところまで再開発でやろうとすると、公共との役割分担が必要。

・ 民間企業は土地の権利を持たなくても、コーディネーターとして整理できるのではないか。そういう入り方をしてもらうためのインセンティブを検討する。

・ 地権者の減歩率、補助金、容積ボーナスなどの要素があるが、経過によって変動もする。上物の権利変換や形のイメージを最初につくっておいて、当初は区画整理手法ではじめて段階的に進めるという制度を目指して欲しい。

・ 都市計画の原案は、従来は都市計画決定権者しか決められなかったが、民間が原案を出せるということをきちんと表明したい。その後の手続きは現実にあったやり方にする。

 

○ 施策の公益性、公平性、社会的なバランスについて

・ 横軸として民間を「住民」と「企業」に分け、縦軸として民から公への「要請」と「負担」に分けるとマトリックスができるが、制度を決める際には、この全体をにらむ必要がある。 住民からの要請については地区計画で制度化され、自治体レベルでも意識するなど既に一歩踏み込んでいる。企業からの要請については、高度成長期に企業開発促進法で、企業が立地する地区において道路、港湾、河川等の整備を当該管理者に要請できる制度ができた。その制度の実績とその後の成り行きを調べるとヒントになる。 住民の負担については、身の周りの施設を住民が負担しながら整備するドイツのBプランのような体系をどう取り込むかが課題。今回の提案は企業から要請があると公共は積極的に応援すべきという印象があるが、住民の身の周りの負担を言いつつ、一方で企業をどんどん応援しようとすると思想が調和しない。そこを調和させる手だてが必要。 住民と企業、要請と負担をトータルで考えずに、どこか一部だけとって制度をつくるのはまずい。

・ ディベロッパーには応援するが、住民の負担はあるというのはどう整理できるか。

・ 大変難しい問題だが、どうして公的再開発でなく、民間中心の再開発を推進するのかを解く必要がある。公的セクターがやると杓子定規に採算性をはじくが、個人の生活など計算できないことがあって事業が止まる。また、低採算性の地区を底上げした結果、他の地区では割高になって採算倒れになることもある。民間であればその辺りの事情を斟酌しながら弾力的にやれるのではないか。それが民間のノウハウ。地権者と企業が利益をうまく配分する中で一定の合意ができれば、利害のアンバランスは発生しないだろう。仮に、アンバランスが発生するならば、事業は破綻すると割り切って考える。

・ TIF(タックス・インクリメンタル・ファイナンシング)のような発想で、固定資産税の増収分を減免して民間開発者に戻すという提案をしているが、公的財政経営の面で増収が少ないものは支援しないというチェックが働く。しかしながら、効率性だけでなく福祉などいろいろな公益目的の施策とペアでなければならないだろう。立ち上がらない地区は放っておけばよいという施策が耐えられるかどうかもチェックしたい。これまで多大な公共投資をしても大海の一滴にしかならなかったことの反省の裏返しの提案になっているが、全く裏返してもよいかどうかという議論は残る。

 

○ プロジェクトの優先順位、エリア指定について

・ 複数のプロジェクトがある場合、限られた資源に応じて優先順位をつける必要がある。民間であれば最も収益の高いプロジェクトが最優先になるが、それを応援する公共は、従来通り費用便益分析で評価するとしても、きちんと順位をつけられるような手法になっていない。そうすると収益原則が強く働くイメージになるが、直感的には収益の上がる事業を公共が優先するというのは非常に危険な感じがする。

・ 指定エリアが広いほど民間が手を挙げる箇所が増え、都市改造はスピードアップするがそれを全部公共が応援するとなるとスピードが遅くなる。エリアのとり方で解ける面もあるし、先着順という割り切りもある。

・ エリアを指定して、公共が支援する大義名分をつくるとすると、エリア指定自体が権利というように捉えられる懸念がある。世の中が大きく変わっていくなかで、地権者や民間企業はエリア指定という権利を持ちたがるが、そのあたりを柔軟にできないか。例えばリゾート法でやったように、要件にあったプロジェクトを順番にやっていくというのは、商品開発という観点からは一番重要。公共だけがエリアを決めるということを崩せないか。

・ エリア指定されると公共の金が出ると理解されることを一番恐れている。公共が金を出すには、それだけの政策的意義が求められる。郊外では通勤時間が長くなるのでエリア指定をしない。手を挙げる人達に対しては、例えば都市計画税は倍払うなどの「踏み絵」課すことを経て、公民の共同事業にする。そういう覚悟のあるところをどうやって選んで指定するのかを検討する。

・ エリア指定が公共が役割分担することの必要条件になる。それに加えて、民間が提案した開発が優良であるということが十分条件になって初めて公共が役割分担する。エリア内の開発ならばすべて公共が負担する訳ではない。

・ 線引き制度など、ポテンシャルに比して区域を広げすぎた面があり、都市再開発方針も都区部全体が1号市街地など広すぎる。地権者や民間の声をきくと無秩序にエリアは広がる。それに対してエリア指定の優先度を決めることが難しいが、地権者が潜在的に受益するのであれば、寺銭的な義務があっても良いのではないか。民間重視でエリアが広がりすぎることに対してカウンターウェイトが必要。

・ 東京都では街区再編誘導型プロジェクトを検討しているが、どういう地区を対象にするのかについては、割り切ろうと考えている。即ち、民間に入ってもらうには儲かることが前提で、ある程度の利潤を確保できるところしかない。

・ 民間がエリアの改造や活性化を発意して手を挙げられるように、熟度に応じて段階的にエリアを指定していくことでも良い。1つのエリアが進めば、連担して次につながる。

・ 種地は限られるので、当初の開発の保留地や保留床を種地・種床化し、次の開発につなげるような段階的な権利変換ができると面白い。

・ 連続整備制度は絶対にやるべき。土地交換の税制を変えて、種地がだんだんと大きくなるように促進するシステムをつくる。税制を勉強する。

 

○ 優良な民間企業の誘導・選択について

・ 公的所有地を無償で使用してひと儲けしようという民間ディベロッパーが、地元を引っかき回して逃げていくと、あとから真面目な企業が入ろうとしても難しい。よかれと思ってつくった制度を逆用される恐れはないか。バブル時にはそのようなことがおきた。

・ スタート時点から、公的セクターと民間企業が共同で入り、協調しながら進めることで対応できるのではないか。

・ 公的所有地を使用させるためには、土地信託のように、逃げるときには違約金を課す。

・ 制度として小刻みな段階を持つ必要がある。最初はエリアの中で手を挙げさせ、次にネゴシエーションの中で、スターターとして何が必要か、土地使用は必要かどうかなどを複数の民間を相手に協議すると、変な企業はふるいで落とせる。ふるいを多くすると民間はくたびれるし、粗くすると変な企業も残るというジレンマもある。

 

2.密集市街地における効率的な整備を推進する手法の構築について

 

○ 施策のメニューについて

・ 案3が本当にできるならば、今までもやれたはずではないか。都区部の6000haの木密地域は、多少の刺激では動かない。木密事業だけでは動きは微々たるもの。

・ 動かない原因には、財政の問題もある。アンコの市街地の部分にどれだけ公的資金を導入すべきか、中に道路を通す場合にどんな方法があるのか、などの問題はあるが、危険な地域であること言い続けて、パッケージとして仕組みを用意する。案2をメインに制度をつくりながら、住民の言い分に対応できるようなものを案3で用意する。

 

○ 空地の確保について

・ 現状では密集地区内で道路や防災性のある建物をつくっているが、そういうことをやるとなかなか地価が下がらずに、市街地整備に高いコストがかかる。人口が減る市街地では土地を空けていくことにインセンティブを与えられないか。生産緑地の固定資産税を減免しているのと同様に、防災環境緑地として空けてもらう。将来、事業をやる場合に安くなる。

・ 私有財産の権利に抵触しないで制限を与える。民有緑地か、容積率と建ぺい率を0にする方法もある。

・ そのままでは建て替えできない土地が多いが、違法建築が進んでしまう。

・ 案1、案2で整備した地区に移転する人が多くなると、その跡地を防災上好ましい形でキープし、また、密集しないようにすることが必要。

・ 案3を積極的にやる考え方と、消極的にやる考え方がある。最低の安全性を確保するためには、公的セクターは整備しないまでも、案3で運営、維持管理はやらざるをえない。

・ 空いた用地を公的セクターが買ってストックすることは用地費が大きくかかってしまう。都市防災という命題を高位に位置づけて、強権的なやり方を導入するエリアを指定する。

・ 防災環境軸というエリアを指定して、その他はあまりいじらない。

・ 案1では、次開発につながる仕組みを入れ込む。案2では縮小再生産になって種地は消えていくだろう。

・ 都市計画も世の中の考え方も遊休地は積極的に利用するとなるが、いくつかのパターンで考える。積極的に使う土地、将来は何かに使うが暫定的に留保しておく遊休地、防災空地として空けておく土地などである。そこに規制を働かせる可能性もある。

・ アンコの部分に空地ができて、容積が表部分に使えるとなれば、民間も手を出す意欲がでてくる可能性がある。

 

  (注:議事概要には事務局発言を含む)

 

 

第10回市街地整備研究会議事概要

 

日 時:  平成13年9月20日 15:00〜17:00

場 所:  都市計画会館3階会議室

 

1.民間都市開発による市街地整備の推進等について

 

・ 民間都市再整備事業推進区域を時限的に指定する場合に、どういうプロジェクトをどういう形で展開させるのかという問題や、あるプロジェクトをやっている際にいろいろな関連工事がでてくるなどの問題に対して、マスタープログラムをだれが管理するのかということが大事。

・ わが国では大型のプロジェクトを市民に広報、紹介するコミュニケーション・ツールが欠けている。ベルリンのポツダム広場の再編整備でインフォ・ボックスを設置して、観光やプロジェクト理解の場としたようにアピールの仕掛けが必要。

・ 民間都市再整備事業促進区域における「弱い土地利用規制」というのがわかりにくい。敷地分割規制の意味ならば、計画を担保するための土地利用規制というような言い方にする。ネガティブなコントロールではなく、積極的につくるためのポジティブなコントロールになる。

・ 民間都市再整備事業促進区域の設定は、民間がやるというよりも、行政が動くのだろうと思う。その場合、協議会を設置する1/10の地域住民というのが一体だれになるのか、借家人はどこに入るのかなど地域住民の定義が必要。1/2の合意で区域決定する場合に弱い規制であっても手続きがうまくいくのかどうか疑問がある。

・ 防災環境軸については、密集市街地の都市計画道路で事業化できないところで、線買収では住民合意がとれず、区画整理で広い範囲の整備もできないような場合がある。沿道型区画整理に絞り込むことに連携して、緑地整備との連携などを検討する。飛び換地で空いた公有地を移して種地にしたり、民間の土地を沿道に移して建物を建て易くしたり、点々と区域設定するとうまくいく。

・ 換地設計が認められるまで事業がスタートしないのではなく、公有地を種地に使うことでゆとりをもってやれるようにしたい。行政に十分な資金はないが、公有地をうまく使えるようにすると事業が動く。

・ 民間都市再整備事業の区域面積が15ha程度とすると、その中に 1,500戸ぐらいが密集し、その内の 150戸が賛成すると協議会をつくって説得を始め、 750戸が賛成したら区域を決めるというイメージになる。

・ 民間の任意事業では権利変換できない場合には、例えば組合再開発に切り換えて強制的に権利変換する方法も考えられる。最終的にごく一部については強制力を持つ事業手法に移行できるようにしておくということで担保する。

・ 1/10の人が近い将来に家を建て替えるつもりで協議会をつくるとして、その他の人にどのようなインセンティブがあると説得するのか。

・ 都市再整備区域の決定によって、敷地を大きくまとめれば、行政としてインセンティブを出す用意があると宣言する。それを1/10の住民が他の住民に説得して、民間都市再整備事業促進区域が決定されると、インセンティブの大きさが具体的に決まる。

  この手法はポテンシャルが高いところでしか使えないと考えている。大規模に開発することで、民間事業者が利益を得られる可能性が高いと最初に判断されるエリアしか動かない。大規模にまとめることで得られる利益を地権者に還元することによって、それほど負担がなく高水準の居住環境が得られると判断すれば、賛成してくれるだろう。それを行政ではなく、民間に説得してもらう方が実現性が高い。

・ 絵に描いた餅にならないように、ポテンシャルの高い地区で公的な用地が空いているのを種地にして第1棟目を建てさせることで、事業開始のリスクを軽減すると同時に、住民の住宅地が変換される姿を具体的に示す。公的な種地提供のかわりに、最終的に空いた土地を公共に返してもらう。うまくやれば何倍かに増えて戻ってくるのではないか。

・ 公共は第1期に用地を提供した見返りに、第2期の事業で空いた土地をもらう。第1期よりも大きな土地が空くと、連鎖的に事業はどんどん進む。開発利益を空いた土地として公共に分けてもらう。最初は公園をつぶして第1棟目を建てるかもしれないが、最後はもっと大きな公園ができるようなしかけにする。

・ 第2期で空いてくる土地がバラバラだと困る。隣同士の話がついて空く土地がまとまるならもっとインセンティブを高くするなど、プラスアルファを与える必要がある。

・ マスタープログラムを書くときに、連鎖させていく手順についての地域の合意があれば、空けたいターゲットとなる土地からの変換率を高くする、あるいは税の減免を大きくする。遠いけれども早く移りたい人は、少し変換率を下げる。公的機関がやると公平性が問われるが、民間主体の場合には柔軟にやれるのではないか。

・ 公共は最初にただで空閑地を提供することと、規制緩和を行うことだけやると言えるかどうかによる。

・ 間引いて空地をつくると、その前面の人は移り住むインセンティブが薄くなるのではないか。1棟目でとまってしまう場合にどうするか。

・ 民間事業者の話では、土地の面積の2倍の床をあげるといえば大概の人は賛成してくれる。 800〜 900%の容積率があれば2倍にしてもつじつまが合いそう。従来のような等価交換にすると縮小連鎖になってしまうので、思い切って、公益性のあるプロジェクトであれば割り増し変換をしても結局は公共の財になると判断できる。

・ 合意を形成する地域住民の中に借地権者、借家権者が入るかどうかで迷っている。

・ 都道府県が都市再整備区域を決めて、市町村が民間都市再整備事業促進区域を決めて、民間がのってくるという流れが、旧来方式のような印象がある。現実には民間がこの地域をやりたい、できるという時に、その話に市町村が乗って促進区域をきめ、それを都道府県がもう少し広く担保するという筋道が基本になる。

・ 民間事業者が採算をとる確信をできるだけ早くもてるようにすることが必要だが、住民を巻き込んでうまく採算ベースに乗るという判断ができるのはどのような時期になるのか。

・ 民間事業者は、この土地を買ってこうやれば採算がとれると計算しつくして動きだすが、区域を広く決めたために、民間が区域を確定し、採算を確定するのに時間がかかるのではないか。

・ 都心7区で民間のビジネスになりそうな地区のほとんどは、以前に協議会ができていたり、再開発を中断したり、何らかのアミがかかっているところで、多くは立ち上がり期を経過しつつある。自治体も認知しているし、協議会などもできている。その先が何故進まないのか。5〜10年の時限では、5年で目処がたたないと大体は難しい。3年目で第1ステップがあり,5年に限るというような時限が良い。

・ 再開発が中断している地区で、都市再整備区域をかけて、エリアを限定して日影規制の緩和がなされるならば、相当進むのではないか。日影規制の緩和に対する補償は、日影時間を経済行為で売買することになり、非常に分かり易い。未消化の容積率が使えるようになる。加えて税制的なインセンティブが働くと進み易い。

・ 皆で汗をかいてやるといいことがあるということを、民間都市再整備促進区域の中身として具体的に、事前に知らせることができるかどうかによってくる。それが抽象的だったり、小さかったりすると民間は汗をかいてまでやろうとは思わない。

・ ある程度時間が読めることが必要。3年以内に確実に着工できるなど時間が読めることが最大のインセンティブになる。

・ 事業区域の指定を申請する場合に、1年以内にはやるなどの時間の制約をかけたい。

・ 最初の種地としては、工場主がマンションを建てたい場合に、ディベロッパーに話を持ち込んで、周辺への説得もお願いする、全体の中で儲かればよいというのがリアリティがある。

・ 公的な用地については、公有地だけではなく、民間の土地を使う場合の信用保証なども含めて考えられる。

・ 開発による固定資産税の増分を公的が負担すべき。

・ 15haで促進区域をかけて、パラパラとしかできずに、かえって街のためにまずいケースも起こりうる。短期間でケリをつけるためには、エリアを絞り込まないと民間は勝負できないのではないか。マンションの需要がピンポイントである状況で、10haオーダーだと最寄り駅との位置関係なども気になる。現実的なスケールとスピードがあるはず。

・ 広い範囲を対象にして、日影の補償などもやる場合に、もし全部やりきれなかったら、どうなるのか。補償を受けた人が転出して、残った土地が日影になる場合に、その土地はどう動くのか。補償を受けるのは人なのか土地なのか。

・ 日影の補償は土地に対して行い、日影補償済土地という登記をする。

・ 広いエリアで街のビジョンをつくり、これを踏まえて1〜1.5ha 程度の街区毎に日影規制の緩和や補償について説明する。一気に広い範囲を対象にせず、段階的に街区毎に説得するとうまくいく。

・ 設計図の実現に障害がある行為は規制しなければならない。弱い規制とは、敷地を分割したい人は届け出てもらい、分割せずに利用する人に買ってもらうが、買い手がいない時には規制をやめるということになる。建築行為についてもいろいろな動きが起きた場合に押さえていかないと最終型は実現できない。弱い敷地分割規制にとどまり、また建築行為への規制が抜けているのはまずいのではないか。

・ 従来のように設計図の実現にやみくもに突き進むというのではなく、途中で変更可能な弾力的な設計図というのが良い。事業主体もあいまいだが、民間ディベロッパーと地元の所有者と公的セクターが複合的に事業をやるというイメージが従来と異なる。これらの点は、非常に弾力的で、新しい仕掛けと理解できる。

・ 今までの規制のようにイエスかノーかの許可制ではなく、条件次第で許可がどんどんおりるという弾力的な許可制ができないか。条件を入れ込んだ許可制や、協議会の意見を聞いて許可するなどの弾力的な手続きに基づく許可制が考えられる。それは弱い規制ではなくて、規制は強いのだが、その中身が弾力的ということにする。

・ 一般の民間ディベロッパー主体の事業は住民合意を必要としないが、今回の民間都市開発では2/3の合意を必要とするシステムにすると、一般の事業にも波及する。波及させないとすれば、本件のみなぜ住民・権利者の2/3がキャスティングボードを握るのかという根拠を説明しなければならない。それは、地元の権利者が事業者の一角に入るということが念頭にあるのではないか。再開発組合的要素もあり、民間ディベロッパーの参加組合員的要素もあり、公的事業主体も入るという事業という説明の工夫をしないと、一般のビル建設にも2/3の合意が必要となってしまう。

・ 規制と合意は相補的な関係にあり、規制の強さと合意の程度は常に相補う。非常に合意が強ければ、規制も強くて良い。許可の弾力性についても、合意の強さとの掛け算のシステムをおくことができるかもしれない。

・ 飛び再開発手法が、一発目の事業で終わってはいけないという前提ならば、あまり容積率移転のことを言わない方が論理的ではないか。再開発に飛んで参加する者の元の土地の容積率が0になると、二発目の開発が不可能になることを容認してしまう。違う方法で大規模な連鎖をやるという説明の方が論理的。

・ ダウンゾーニングをして、開発する地区の容積率に元に戻す。開発に参加しないならば下げたままにしておく。そうしいなと、参加しない人が容積を買ってくれというビジネスができることになる。

・ はじめにまとまった土地があることがポイントであるならば、その種地は公的土地に限することはない。ある程度まとまった民間の土地で、地権者としての参加ではなく、種地の提供という役割だけで参加するという者も出てくるのではないか。具体的には、不良債権がらみで出てくる土地はなかなか売れないので、売れないなりに、再開発に供することで税の減免が得られたり、その容積率が別で発現したりする方が所有企業にとってプラスになるのではないか。

・ 10年間種地として持っていれば、周辺が良くなり、価値が上がるということもあり得る。

・ 公的な土地という言い方をした理由は、初期のリスクの負担の問題と、1回転目で種地が雲散霧消してしまうことを避けるため。公的土地で1棟目のビルの権利を公共が相当持つことによって、特定のエリアから移転することを積極的に推奨するという発言力を公共が持てるようになる。2棟目以降の建築敷地のターゲットとして優先する地区に対して、民間ディベロッパーと公共が2人3脚でやれる。そうしないと民間に一番が収益出る形で分譲して終わってしまう。公的な土地というのは、種地からの連鎖を忘れないでやりたいという主旨。

・ 土地供給圧力はどんどん強くなるので、再開発すべき地区の近くに土地が出た場合に、公共が土地を買い上げて種地にして再開発を動かす。

・ 公民の色々な主体が混合して事業をやっていくスタイルには、民間ディベロッパーがつぶれたり逃げたりすることに対して、零細な参加者のリスクを担保、バックアップすることが必要になる。

・ 密集市街地の防災空地は、たくさん集まれば何らかの空間ができるが、それまでの間はスラム化や防犯上の問題が生じる可能性がある。仕方なしに空地にするのではなく、もっとポジティブなスタイルが必要。

・ ポテンシャルが高い地区の収益性の高い事業で、必ず儲かるスキームになっていれば、民間ディベロッパーは最後まで逃げないと考えている。連鎖によって利益がどんどん積み重なるスキームであれば、どこで終わっても大丈夫。

・ 密集市街地では、従来は、膨大な公共投資でごく小さい部分だけ完成型になるということばかりやってきた。公共投資のペースからすれば200〜300年たっても全部できるかどうか分からない。そうするとポテンシャルの低い地区はやめたという0が合理性が高いのかもしれいないが、行政の立場でやめるとは言えない。そのかわりに民間共同事業が成立する地区とドッキッグさせて、ポテンシャルの低い地区は空地を多くすることによって、防災性を向上させていく。

・ ポテンシャルの低いところに防災環境軸を積極的に入れていくことはできないか。

・ ポテンシャルの低い地区が膨大に広がっているのが現状。その一部に民間共同事業が成立する地区があって、大災害に対する担保をする。

・ 全部をつくり直すことはできないので、幹線道路の沿道をしっかりつくることで延焼防止や避難ができるようにする。

・ 墨田区などは、幹線道路よりも少ししたのランクの幅員15mクラスの道路を整備することが防災時のレベルアップにつながると考えている。防災環境軸は相当高規格の道路が中心になるのか。

・ 補助幹線道路クラスと考えている。

・ 多数の防災空地が空いてくれば、敷地整序型区画整理でまとめていくことはできる。ただし、そこまでワンセットに全部動かせるかどうか読みきれない。

・ 一般のマーケットでは、優れた商品をだすところが勝って、劣る商品を出していくところはつぶれ、それによって全体が良くなっていく。ところが都市計画では、水準以下の部分に公共が支援してなんとかしていくという事業をずっとやってきた。これは資金も労力も大変なので、マーケット・メカニズムをできるだけ入れて、少しインセンティブを与えていいことをどんどんやってもらう。そうでないところには、基本的にはお金をかけずにマーケットによる淘汰をねらうとうい発想がある。しかしながら、それをストレートに出すのではなく、防災空地で防災性を高めていく。本当に良くしようとするならば、空地がどんどん空いてきた段階で事業を立ち上げる。

・ 都市開発にマーケットメカニズムを活用していくことは、密集市街地でも必要だが、同時に治安が悪くなっていくことにも対応しなければならない。アメリカでもきれいなところの再開発は進んでいるが、裏手のスラムはどうしようもない。それだけで良いのかということは絶えず考えていく必要がある。防災空地をネガティブに捉えるのではなく、プラスアルファの手を加えることで、決して捨てているのではないという担保の工夫をする。

・ 交番の密度を上げるというのは都市計画だけでは無理だが、そういうソフトな対策は必要。都市再生の中では警察官の増強による安全なまちづくりは不可欠。

 

 

2.これらの都市計画道路の目標とすべき整備水準について

 

・ 幹線道路の整備量が多いというのは本当か。街路事業の認可のプライオリティを上げるために、補助幹線道路クラスも幹線道路と称しているのではないか。

・ ネットワーク的に幹線道路としての機能を果たすものの整備や計画が先行しているという事実はある。

・ 幹線道路の車線数の基準がなく、居住環境エリアだけを考えて 3.5km/km2の整備水準を設定した結果、2車線の幹線道路が多くなってしまった。トラフィック機能を持つ幹線道路として、2車線道路が多い現在の計画で整備して完全に出来上がりと考えてよいのか。これから高密度に市街地をつくり直すとか、コンパクト化するときにどうかという疑問が残っている。幅員をどうするのかというところがまだ解けていない。

・ 最初は4車線のつもりで計画決定したが、道路構造令が変わって2車線になってしまったというのが実態だろう。

・ 3.5km/km2の整備水準は状況によって変わり得るもので、トランジットオリエンティド型のエリアと、バスサービスがあれば十分なエリアで分けて明確に示す方が良い。

・ 今回の資料は車のための道路という印象が強いが、歩行者・自転車からみた場合の街路の整備水準を考えるべき。

・ トラフィックコントロールによって街路の必要量は変わってくるが、所管が異なるために一体的なシミュレーションがやれていない。いろいろな状況を加味しながら、どのくらいの建物が建っていくところでは、どのくらいの街路が必要か、どのくらいの歩行者ネットワークで満足できるのか、などをスタディして提案してはどうか。

・ 歩行者の通行が中心となるような街路には、その上部に建築床があっても良いのではないか。そうすると道路も随分つくり易くなる。

・ 超高層ビルが建つ都心の容積率は、その周囲にある道路空間との対応で決まってくる。その説明をする場合に、国土交通省は街路と敷地の関係を示すデータをほとんど持っていない。広い領域での容積率と道路率の関係の整理はあるが、具体的なプロジェクトがおきた場合の道路と敷地空間の関係を議論する時期に入っている。

・ 整備延長が同じように高い都市でも、ある都市では25m幅員で植栽もきちんとできているし、ある街では12m道路で歩道は 1.5mずつしかなく、木も植えられないという差がある。細い街路が街の区画を固定化している面もある。整備済の道路でも、歩行者空間や環境帯としての役割という観点から、幅員構成を見直すことが必要。未整備の道路整備だけに取り組むのは違うと思う。

・ これまで営々と築きあげてきた道路ネットワークと実際の市街地の対応関係が市民実感としてあっていない部分が相当ある。補助幹線道路は、地区の土地利用や市街地整備に応じた構成を考えることが非常に重要であり、単に 500m間隔でつくれば良いというものではない。人口密度や活動量に応じて、高規格の区画道路など歩行者にとって快適な空間をつくっていかないと、既成市街地の魅力アップにはつながらない。

・ 日本橋のデパートに自転車で買い物にくる人が多くなっている。車中心でつくった道路は歩行者のプライオリティが低い。それを優先して定める手法があると良い。五反田の再開発で、セットバックも含めて車道よりも広い歩道空間をつくったが、子供が生き生きと走り回る別世界のような雰囲気になっている。歩道を優先する整備水準と都心居住の再開発が相まって力を発揮してくる。

・ 横断歩道と歩道を同じレベルにつくるとバリアフリーになって良い。

・ 幹線道路以上は、人流、物流を問わず自動車交通が残らざるを得ないので、自動車対応のきちんとした骨格で、従来と同様の判断でつくっていく必要がある。一方、ミクストユースやコンパクトにしていくことで、車から徒歩・自転車に移行するトリップが相当増える場合に、補助幹線道路以下のレベルは、従来と違ってどういうつくり方ができるかという検討が必要。幹線道路も歩行者・自転車を拒否することはできないが、幹線系は自動車中心で密度を考え、補助幹線以下は歩行者・自転車を中心に密度を考えていく。

・ 土地利用と発生集中量の関係、床利用によるトリップエンドの空間的分布については簡単に分析はできないが、努力したい。

・ 幹線道路に接する宅地の利用の仕方によって、アクセス交通が多い。たとえばコンビニエンスストアが、駐車場を持たないまま幹線道路に面して立地することは許されるべきではないのに、現実には一番立地しやすい場所になっている。

・ オランダのように高速走行できる自転車道が不可欠になっても、日本の都市にそれを入れるのは不可能。自転車のトリップ長をどの程度にするか決めきれないでいる。

 

(注:議事概要には事務局発言を含む)

 

 

第11回市街地整備研究会議事概要

 

日 時:  平成13年10月11日 10:00〜12:00

場 所:  国土交通省都市・地域整備局 局議室

 

1.民間都市開発による市街地整備の推進等について

 

・ 柔軟性のある進め方と評価できるが、民間ディベロッパーがリスク分担を確認する場合に、2/3の合意形成以前に工事の実施、保留床の処分などについてどの程度拘束力を持たせるのか。スケジュールが確定しない段階ではマーケットリスクはとりづらい。事業をやめたり、進めたりする仕組みにペナルティを組み込むなどの工夫が必要。ディベロッパーと住民の関係について、ルールを予め決めておく必要がある。

・ 民民間の契約になるので、ディベロッパーがリスクをとる形で入る場合、地元側も建て替えなどの共同事業をやりたい場合など、内容は事情によって色々なパターンがある。事業期間中の経済情勢の変化も考えて、リスクテイクについてはルールを決めておく必要がある。

・ 用地の先買いを進め易くするための公的規制などがあると良い。

・ 買い取り請求に応じる事業主体とは一体だれか,民間事業か、組合などか。先買いする場合もあるが、土地を抱えるのは大きなリスクであり、慎重に検討していきたい。

・ 民間事業者のあり方が段階によって異なる。大枠の条件提示を求める民間と、具体的な事業をするための条件提示を求める民間とは立場が違う。権利制限のあり方とも関連するので正確に整理した方が良い。

・ 行政は民間事業者と対応するのみで、地域住民対応はコーディネーターに任せるという図式だが、現実にはそうはいかない。行政は地域住民との関係でどういう役割を担うのかを考えるべき。従来のように、住民と行政がおんぶに抱っこのような関係となるのは問題なので、段階によって関係のあり方を設定すると良い。

・ 民間と地域と行政の3者の関係については、これまでと違って民間事業者に機関車的な役割を担ってもらおうという意識が強く出過ぎている。地域全体と行政が協議をするということについて考え直したい。

・ 再整備事業区域がどんどん広がって、再整備促進区域全域に広がるというイメージを持つのか、1つだけできて連鎖していかない場合も考えるのか。再整備促進区域の中で普通の個別建て替えを認めるのか。連鎖していく場合に、再整備促進区域では建築の計画が確定していないので個別建て替えをある程度認め、再整備事業区域では厳しく制限するというギャップをどう考えたらよいのか。ある幅の中で水準を確保できれば良いというスキームにしていくかどうか。

・ 再整備事業区域内の事業が完結して次に連鎖していくイメージはなかなか難しいので、事業期間内にもほかのものをレベルアップしていく仕組みが必要。マスタープログラムのようなものが必要ではないか。

・ 連鎖拡大手法によって、最終的に再整備促進区域と再整備事業区域とが一致するような手法をつくり、いろいろなところで適用されることを目指しているが、西新宿のような地区は条件が良いのでうまく行くが、他はなかなか難しいと認識している。最終的に事業にならない地区がある場合には建築制限をかけることは不合理。メリハリをつけて制度を適用する。

・ グレーゾーン的な地域で、再整備事業区域と密集型の事業を進める区域とを分けることが住民に納得されるのか。

・ グレーゾーンの扱いはまだ考えていない。民間の力で十分にやれそうなところは、民間活用型というタイプでブレークスルーすることを考えている。100点満点は目指さないが費用対効果の高い手法としてつくる。

・ 区域を決める際に、地域の人々や権利者と相談しながら、また民間ディベロッパーも協議に入ってもらって決めるので、動きそうにもないところが区域に決められるはずがない。一番大きな区域取りである都市再整備区域は行政中心で理念的に決めるが、再整備促進区域は地域の意欲も加味されて区域が決められるのでかなり熟度が高い地区が対象となる。結果として、密集型の地域が残る場合には、そこにふさわしい手法で処理していくか、少し低密度で良好な形にしていく。

・ 権利の制限に対応して買い取り請求を行なうことについては、共同建物が建つ地区では応じてよいと考えている。期間を限定しているので、未来永劫規制するのではなく、時限的な規制になる。民間が買い取りを行なう場合にも、住民の意向には濃淡があるので、議論を重ねていく中で、民間事業者も情報が分かってくる。その中でやれそうな地区を判断して買い取りに応じる。同じテーブルで議論するシステムが重要。

・ ポテンシャルが高そうな地域に入ってくる民間事業者は1チームではないのではないか。いろいろな事業者が入りたいと地権者と話し、いろいろなプロポーザルを提示していくなかで、事業者が決まっていくのではないか。

・ いろいろな事業者からオファーがでると、地域の側にとっても選択肢が増える。多くの民間は入ってくるのは悪いことではない。

・ 最後のルールがはっきりしていない限り、色々な者が入ってくると混乱する。地権者の多数決のルールも1人1票もつのか、面積割合かなど、決定のルールが決まっていない段階でオファーを受けるのは良くない。

・ 合意の割合が2/1や2/3というのは妥当かどうか。特定の1社が特定の個人と結びついている場合の問題もある。透明性をどのように高めていって、隅々の権利者を保護しながら、合意をどこで打ち切るかという課題である。

・ 民間事業者にも色々なタイプがあり、合意形成に努める事業者、保留床を取得してビジネスを展開する事業者が交代しても良い。プロジェクトを進めるためには立場が入れ代わる。他の業者が入ることにこだわっていると進まない。

・ 民間事業者が整備計画を立案して、全体のマネージメントをすることが仕事になるようにしないと事業は進まない。コーディネートが一定のペースで仕事になると良い。

・ 最初に事業をやる民間事業者とは別の、コーディネートだけやる民間事業者が入るというパターンも勉強してみる。

・ 事業者が変わっても、合意のレベルや契約の内容が継承されていけば良い。

・ 民間事業者の代わりに、まちづくりセンターやNPOがコーディネートし、認可取得して事業やる段階で民間事業者が入ってくるということか。当初は土地所有を前提としていないので、変わることもできる。

・ 同じ人格で、役割が変わることもある。

・ 民間都市整備事業区域は何に基づいて決めるのか。

・ 都市計画で決めるが、現行の都市計画は公共がスケジュールに従って資金を供与するということがついてこないので動かない。行政意志決定の段階で、具体的な事業内容をチェックし、事業資金の供与や約束や許認可を行なう。それらをプラットホームで一括整理して、それらが伴った都市計画を行政事業認定としてやればどうか。行政の意志決定には学識経験者は関与しなくても良いのではないか。

・ 最終的に強制力を働かせるためには、事業区域内で合意を形成する地域住民の定義を明確にする必要がある。事業が途中で倒れないよううまく担保する必要がある。

・ 事業区域に樹木や古い屋敷跡の保存運動がある場合、2/3の合意があればつぶして良いかとなると、審議会で通らない。

・ 審議会として都市計画を決定するに足るかどうかをチェックする必要がある。2/3の合意があるから自動的にオーケーとはならない。

・ 区域の決定と事業の決定を一緒にすると難しくなる。

・ 行政は規制緩和という観点で関与するが、区域の決定までしかやらない。民間主導型の事業では、事業の決定は地域がやるべき。

・ 事業に対して行政が助成するならば、その是非はどうやって判断するのか。

・ 助成するためには、地区計画ではない法体系が必要かもしれない。あるいは都市計画法の中で、民間型都市計画事業を認定する形で動かすのかもしれない。したがって、区域と事業の仕組みまで全部公的担保が必要というのは行き過ぎ。事業をやりたいという多数の人の考えと、地区外の人の考えが相反した場合、地区外の人の考えを担保するための法的認定をすることや、天然記念物の保全等の規制がかかっている場合にはそれを守るという判断が合理的。より高次かつ広域の住民の合意があって担保されるという形にしないと守りきれない。

・ 現行の協議会は、提案やあっせんを行なうが、判断はせず、行政の判断のための準備までやる。協議会が持っている地域住民の代表制が大きな問題になってくる。それを出発点から保証してあげないと誰も代表にならない。10〜15haの区域の相当数の代表になる人は、最後に親分として座ってくれる知名度が高く信頼のある人が最初から入ってくれないとうまくいかない。議員がその役まわりになると地域として困ることになる。協議会を立ち上げる最初の手順・手続きと、協議会の権限・責任をはっきりする必要がある。代表者は行政との関係についても信頼感がないと責任を持てない。

・ 小さな区域の事業では、地元の工務店が参加する場合もある。民間事業者が途中で自由に出入りできるのか、参加業者をだれが認定するのか。どこまで企業としての信用保証ができるか。ルールはつくれるとしても、実態上の判断が難しい。

・ 民間ディベロッパーがコーディネートしようと考える区域は、それなりの条件が整っているところであり、地元でもそれなりの動きがある。それが再整備促進区域を決める原型や単位になってくる。行政が10〜15haを勝手に決めていくものではない。民間ディベロッパーとしてどういう地域のどういうまとまりならば入っていけるのか。その場合の流れとして提案のしくみは適切か。

・ この事業は、住民同意を必要条件とする民間事業に公的特権を付与するシテスムと言える。公的特権とは、(1) 公計画に位置づけること、(2) なにがしかの規制項を持たせること、(3) なにがしかの助成項を持たせることの3つ。その中で(1) と(2) が法律事項になる。(3) は予算など実行上の措置となる。このように整理すると2つの側面から問題がある。ひとつは、都市施設の整備事業や市街地開発事業は住民同意を必要としていないが、これを必要条件とすることとの違いをどこに求めるか。強い公益性がある事業は、住民意見を聴くのは結構だが、キャスティングボードが住民同意にあるのは困るとなる。したがって、これはそれほどの公益性がないから住民同意を必要条件にするということになる。他方、マンション建設と同じ単なる民間事業ではないかという場合に、住民同意を条件に公的特権が与えられることをどう説明するか。住民同意とは特権を与えられるほど特別なものか。再開発事業ほどの公益性はないが、民間マンション建設とは違うという領域をねらっているという感じがあるが、それを文字で書けないと制度にはならない。都市再整備区域が23区全体ということも素人にはわかりにくい。言葉が出てこないと制度論としては入り口にも達していない。もうひとつは、規制の問題。中間公益的な事業と仮定した場合に、規制を強くして、出ていく人の土地を買い取れば良いというのは単細胞的で、弾力的規制ではない。新しい事業であれば新しい事業の仕組みが必要。例えば、ディベロッパーと公が協定を結び、その内容に従ったような規制が働く仕組み。ディベロッパーが非常に強い規制を選択する場合と、非常に弱い規制を選択する場合があり、その合意を基盤にした規制という風に組み立てるならば、弾力性がある。その場合に重要なことは、ミニマムとマキシマムの枠を肯定すること。200m2を越えるようなサブディビジョンコントロールをしてはならならいなどの肯定条件を書いておく必要がある。野放図に規制が強くなったり、弱くなったりしてはならない。ある枠を設けて、その中で協定という合意を基盤とする内容があり、その内容に従った規制をかけていくイメージになる。それは司法上の契約の効果にも近くなり、公法をつかってその通りに従わせるという要素もあり、非常に中間的な、法律上も解明されていない分野になる。建築協定や緑化協定に少し顔を出している分野でもある。買い取り請求だけでは面白くない。総じていえば、いろいろ考えるべき点がある面白いプロジェクトであり、ゆっくり考えていきたい。

・ 任意でやる再開発という中間領域は重要。そういう制度がないと、都市をつくるエネルギーは出てこない。合意形成が進んだ街区があり、もっと大きなエリアでやろうという地元の意向があると、事業区域が促進区域に近づくが、まだ白地の部分の合意をとることは難しい。合意がなくても,促進区域として民間事業者が指定をしてもらうというのが現実的ではないか。民間として確信を持てる地区が核にならないとなかなか動き出さない。

・ 都道府県が都市再整備区域を決めて、次に市町村というフローだが、都市再整備区域の決定が前提となるならば、なぜ都道府県が決めるのか。

・ 都市再整備区域は再開発法の1号市街地のようなイメージでかなり面的な広がりがあるため、市町村を越えた広域的な指定が必要。再整備促進区域は、街区単位で捉えるので、市町村が地域の実情に応じて指定していくことが適切。そのため都道府県−市町村という段階をつけている。

・ 高度利用すべきかどうかというのは都市構造の問題だから、都市計画区域全体を見ている都道府県が決めるのが適切。

・ 都市計画区域は、複数自治体による広域都市計画区域と、単一市町村の都市計画区域とがあり、なるべく広域に一体で運用できる都市計画を求めているが、実際はそうは動いていない。兵庫県などはかなり広域で考えているので、そういうところでは、県ではなく自治体連合のようなものが決めれば良い。そうでないところは最後は知事が決めるべきと考えている。

・ 最終的な事業を担うディベロッパーが一定の時期から活躍をしないと、区市町村はだれを相手にして最終的な整備までフォローしなければならないのか分からなくなる。民間事業者は場面によって変わるという意見がでたが、結局は変わらないようにしないと、行政として対応できない。したがって、特定の民間事業者が土地や意欲をもって街に入るという状況からスタートすることになるが、都市計画で決める場合の透明性の確保が都市計画限定権者としてはつらいところ。東京都は政令市のある県と異なり、どこまで区市町村で対応できるかが課題。

・ 街路整備や再開発事業は直接的な公益性があるから、公共が色々な手当てをしているが、今回の事業は、地球環境、ヒートアイランド対策、歩いて暮らせるまちづくりのような間接的な公益性はある。ただし、他の方法でもやれるという代替性もある。そう整理ができれば良い。

・ 従来の制度でいえば、地区計画がこれに近く、参加とはいっているが、必要条件にしていない。再開発地区計画でもやれそうな気がする。参加をどうするのかという切りわけを詰めるべきであり、道路などと比べず、面整備事業や地区計画と比べると良い。

・ 参加を必要条件にするか否かの違いはスピードに出てくる。期待できる社会的効用を発揮するスピードの差を支援するという考え方ができる。

・ ポテンシャルの高い地区ではエリア全体の将来像をそれなりに描くことができるが,そうでないところでも、将来像が見えないまま、地域の人々が事業をやろうとなったとき、自分達の街がどうよくなるのかという議論を前段でたいていはやっている。その際、将来イメージを実現するために、事業で将来イメージに近づけることが、どういう手順で合意されていくのかを決める必要がある。面的な広がりの中で均質に日影規制を緩和して容積等のオプションを付けてもらおうという話ならばできるが、どこに公園を配置するかなどきめ細かいことが求められる場合には、ざっくりした手法が全部使えるまとまりが見つけにくい。見つかったところは既に事業をやっているという感じもする。

・ 都市の目標が明示されていて、それを達成するために、区域を指定し、事業をやることが目的にかなっているとして、その目的としては、CO2 の排出の削減目標、渋滞解消のための都市計画道路の数値目標、密集地の安全性の評価と優先順位などをオーソライズして、この事業区域は適合しているから公益性があるというような方向がある。

  民間企業と地元の協議が整っているところであれば、どこでも公が応援するのか。その判断のために客観的な公益性が立証できると良い。数値評価やミクロシミュレーションをやって、こうすればこれだけ安全性が高いるという調査を必ずやるようにする。地域によって要求することが異なり、公的な助成よりも容積率緩和を求める場合もある。それをきちんと評価して、しかも行政の施策として正当化できるような手法とセットにする。

・ 具体的な目標をたてて事業やるというのは、地区計画の発想と近いかもしれない。提案支援型プロジェクトとして、行政で決めずに地元や民間企業の提案に対して支援が要請され、助成や規制を行ない、全市民にも示していくという制度として構成すると、地区計画や建築協定のようなものを、公的制度として発展させるということになる。既存の再開発事業などを緩めるのか、協定制度を強めるのか。両面で考えていくと複雑になる。

 

 

2.密集市街地の整備方策について

 

・ 特例容積率適用区域制度は、商業地域で基盤ができているところから始め、その効果をみて他の地域にも適用を検討しようというもの。いきなり密集市街地で適用しようという提案であるが、下手に使われると困る。なぜ、この制度が使えるのかという説明がはっきりしていない。特例容積率適用区域制度は、幹線道路に囲まれているだけでなく、その中で共通の基盤が整っていて、しかも容積率移転とは言わないで、同じ敷地だというふうに読めるのではないかという、かなり飛躍した考え方を導入している。密集市街地で適用することには疑問がある。

・ 交換分合ができた場合に、地区計画で容積率を緩和し、他方はダウンゾーニングするというのであれば良いが、飛び地間で容積率を移転するというのは奇異な感じがある。

・ 省内で議論をして欲しい。

 

 

3.都市計画道路の整備目標水準の検討について

 

・ 交通密度が少ないところでの幹線道路のあり方は、トラフィック機能とアクセス機能が付与されているということか。

・ 方法論として幹線道路と補助幹線道路をきっちり分けたい。実際は幹線道路もアクセス機能を持っているが、補助幹線道路は地区にアクセス交通を担うものであり、通過交通を排除すると割り切った上で、幹線道路としてどういう整備水準が必要かということを検証してみる。

・ 幹線道路と民地の土地利用や活動にどういう接点があるかを、はっきりすべきか否かということが問題。

・ 徒歩生活圏のイメージが重要で、日本の市街地は、身近な生活圏域内の便益施設のほとんどが幹線道路にぶらさがっている。そうなると、幹線道路の反対側の住民も利用するという前提で成立しているので、そこをどのようにコントロールできるか。建物利用と幹線道路の接続やアクセスの仕方をコントロールする手法を持っていないので、自由な沿道利用ができる。それをコントロールすることがいいのかどうか、もしくはコントロールするとどういう影響があるか。それらを踏まえて、できる限り幹線道路はアクセス機能を排除して、トラフィック機能中心で使うことで、投資量を減らしながら質の高い都市空間を形成していく議論をしたい。

・ 最終的なアウトプットの目標によってやるべき仕事の質が違ってくる。1kmメッシュという荒っぽい水準を前提に、それを改善することで解決できるならば良いが、都市計画道路は必要だという国民の認識になるかどうかは疑問がある。求められているのは、もう少し緻密なことで、幹線道路とコレクター道路(地区集散道路)を機能分担するならば、コレクター道路は必ず行き止まりにするなどの方法をとらないと抜け道になる。抜け道マップが重宝されるのが日本の現状であり、それで良いのかということに取り組む。幹線道路の沿道立地は今のままで良い部分もあれば、いけない部分もあるということを緻密に言わねばならない。

・ 信号などの交通運用に依存する面が大きい。道路の機能を 100%発揮しようと思うならば、もっと良い交通運用をすべき。現行の運用を前提としたシミュレーションではなく、ドイツ型でやればこんなに走れるなどを視野に入れないと次の世代にいけない。そういう作業の方が実りが多い。

・ 混雑度を評価する場合の容量をどう定義するか。容量は交通運用で変わる。使い方でいろいろなことを許容すると、たくさんの道路が必要となるというような展開になる。

・ TDM(交通需要管理)やTOD(トランジット・オリエンテッド・ディベロップメント)の流れからすれば、バス利用の促進を念頭に置く必要がある。そうすると道路の使い方は大きく変わるので、それにも耐えられるような作業にする必要がある。特定の都市を対象に緻密な作業をやる方が良い。

・ 街路施策として、ビルの中の歩行者通路も含めて、民地の中で公がある程度の関与を行いながらネットワーク化するということをやれないか。

・ 現在の幹線道路密度は2km/平方km前後であり、2km/平方kmの整備水準は常識的な線と考えているが、沿道の使い方など交通運用をあわせて考えながら、1kmメッシュでつくりないさいということが整理できれば、その次に1kmメッシュの中をどうするかという議論になる。それは地域住民の生活をどうしたいかという都市改造とリンクしてくる。大型のビルの需要がある地域では、道路に降りない近距離移動をどうするかなどの話は次のステージでお願いしたい。

・ 都市計画道路の整備水準については、多少のメリハリをつけるだけでなく、公共交通管理型や徒歩主体型の都市計画道路に変わるなどドラスティックな転換の可能性があり得ないか。中心市街地の再生や密集市街地に都市計画道路を計画する場合に、従来型の交通処理型の道路だけでなく、都市構造を変えるのための使い方をするなど、メッセージ性のあることが考えられると良い。

 

 

第12回市街地整備研究会議事概要

 

日 時:平成13年11月15日

場 所:国土交通省都市・地域整備局 局議室

 

・ 防災空地の規模が25平米ならば手が届くなという気がする一方で、25平米で防災という効果があるのか。

・ 東京都が不燃領域率に算入する空地の面積は100平米以上だが、それ以下でも、例えば木防建ぺい率という考え方に立てば、燃え草にならない面積の割合として算入できる。

・ 木密地域の1つ1つの建物、敷地の大きさは、どの程度のが多いのか。

・ 割合的には100平米以下のものが多いが、密住事業で空地として確保されてきたものを見ると100平米を切っているものも幾つかある。

・ 都区部では50〜70平米程度の敷地が、最頻値。

・ 10年程前の「東京の土地」には100平米未満の土地の件数が5割を超えたとあった。規模別の分布を調べた上で、どの辺に網をかければいいのかを検討すべき。

・ 防災空地の要件として駐車場は不可とあるが、木密地域で一番不足しているのが駐車場であり、ある程度以上の防災空地であれば、一部は駐車場にしていいのではないか。

・ 車はガソリンを積んでいるので、災害時に問題。土地利用側からすれば、駐車場にして収益を上げたいというニーズは一番多いが、駐車場だけはやめてもらうと整理した。

・ 一定規模の緑地があると延焼防止効果があるというのが実証されている。植栽を一定程度植えることができる規模があれば、駐車場に活用できるということはあり得る。

・ カーシェアリングのように共同的に車を使うことによって交通量を減少させたり、ガソリン車じゃない安全性に問題がないような車であれば駐車場利用ができるとする。

・ 阪神・淡路大震災では、車から出火したということはあまり聞かない。

・ お屋敷街では駐車場経営の採算が成り立たないが、密集市街地は需要が多いため成り立つ。容積を使って高度利用するよりも駐車場にする方が現実的。

・ 権利者は防災空地からも利益を上げようと考えるので、利益が上がらない状態で置いておきなさいというのはかなり酷になってくる。

・ 500m四方の住区では街区公園をつくらねばならないが、実際上、2,000平米も買収できることはあり得ない。小さい公園を寄せ集めて、街区公園に見做す発想はないか。

・ 容積率がゼロになった土地の価値をどういう仕組みで評価するのか。

・ 駐車場等の利用を認めるか否かによって評価は変わってくる。

・ アンコの評価額と沿道での評価額が違う。2項道路でセットバックで削った土地に、容積率が160%しか使えないことをベースに評価するのか。

・ 防災空地は建物の敷地として存在し、これだけを切り離して土地評価するということではない。マンションの所有者が管理するほうが、永続性の問題や第三者に対する権利関係も適切に対応できる。

・ 個別に空地が発生した後、第二段階でこれをまとめることは考えられないか。

・ 第二段階で事業がおきるのはに結構だが、それが必然ということにはしない。

・ 沿道の地権者は、事業後にどれだけの容積をもらえるのか。事業後の防災空地の土地は、防災環境軸に建てる建物の敷地として認めるのか。

・ ケース1では、地域全体に300%の容積率が指定されているとして、A(ガワ)とB(アンコ)の土地が同じ面積であれば、Aの土地の容積は600%になる。事業後の建物床と土地の配分割合はそれぞれの従前の資産評価に応じて決まる。

・ A(ガワ)、B(アンコ)の共有となった場合に、建築敷地の面積は変わっているのか変わってないか。

・ B(アンコ)の容積と権利をA(ガワ)に移転できるようにすると、Bの地権者にはメリットがある。それだけではAの人はメリットがないので、容積を割増配分することも考えられる。防災空地をあけるという貢献に対して容積率を上乗せする。そうするとA、B一緒に、この事業をやりましょうかということが自動的に動いてくる。建物と土地の配分については、行政はタッチせず、全体としてメリットがあるという図式だけをつくっておく。

・ 従前のBの土地は、事業後の建築敷地としてカウントされるのか。

・ 然り。一体の敷地として考える。離れていても、一体の敷地とみなす。

・ 道路に当たっている土地は街路事業で直売するか、区画整理で減価しないよう換地してきたが、これからは、従前10の値打ちの土地があった人に対して5の土地と5のお金を渡す。その5のお金は建物建設財源になる。

・ 尾久地区では都市計画道路が整備済と未整備の区間がある。整備をしていないところでは、すべての権利者が、ある意味で容積率がダウンされている状況で、容積率がアップするというメリットを受ける。整備が済んでいるところでは、そういうメリットを受けない。

・ 整備されてないときには、AもBもイーブンではないが、パイが大きくなることで動きやすいという可能性はある。いずれにせよ、パイの分け方に対して、公は立ち入らない。

・ 都市計画道路の区域の真ん中に100平米しか土地を持っていない人がいっぱいいる。・ 100平米を持っている人には、50平米の共有持分と減った50平米に相当する床あるいは減価補償金を与える。

・ 沿道で道路に当たった人は自己所有だけのマンションをつくるのではないか。民民の関係で、アンコの権利者と共同化が進むのはレアケースにならないか。

・ 見えざる手に導かれてうまくいくケースはせいぜいケース1から4まで。

・ 容積配分可能な一定規模の敷地のイメージはどんなものか。

・ 一般的には500平米以上程度であれば、優良建築が建つと言える。

・ 防災環境軸に100平米を持っている人が、アンコで100平米の土地を持つ4人と共同して、100平米の土地に500平米×300%の建物を建てられるのか。

・ 一定規模以上の敷地でないと容積を移転できないという歯どめで、500平米以上というルールをつくる。都市計画道路に接する土地が一定規模以上という概念を入れている。

・ 沿道に500平米を持っている人が少ないので、制度が動かない。沿道に100平米の人が5人いたら、5人が一緒に合意しない限り、先へ進まない。

・ 皆が平均100平米しか持ってないところでは、ケース1はかなり難しそうで、むしろケース2のデベロッパーが中に入ってまとめるというのはリアリティーがある。

・ ケース2は非常にいいが、防災空地の容積はゼロでなくて、70%を残して230%を移転することはできるのか。

・ 移転元は防災空地にするという前提で、容積率ゼロであり、かつその利用形態についても、いろいろなルールを決める。

・ 容積率がゼロになった場合には、固定資産税はどうなるのか。

・ 基本的には、柔軟でおもしろいと思う。防災環境軸を実現するためには、いろいろなことをやろうという方針のもとに、防災空地が大事と言うことによって環境軸をつくろうというふうに読める。もう一つの見方は、防災空地に積極的に意味合いをつけて、ポケットパークにして防災の資機材を保管するなど公共側が必要なものと位置づけて、公共側が安く買わせてもらうとすると積極的な提案になる。

・ 防災環境軸は2つの側面を持っている。一つは、広域的な機能として広域的な交通を処理し、焼けどまり線になるということ。もう一つは、避難路になるとか、耐火建築物でより安全性が高まるという地域的なもの。広域が受益することについては公共は金を出すが、特定の地域だけが受益することについては、地域の皆さんでいろいろ考えてくださいという時代が来ているという認識にたっている。アンコの中の整備については、移転補償費を払うということはせず、公共が用地買うということもやめておく。しかしながら放置するのではなく、防災環境がよくなるという施策を考えたい。その答えとして、容積移転によって空地を生み出し、できるだけ永続性のあるものにする。 マンションを建てる際に提供公園を要求するように、公有化することも考えたが、それではお上が召し上げるというイメージが強すぎる。民間所有のまま使ってもらう。

・ 大したものに使えない土地なら、保有して税金もかかる。公共の土地にして管理は地元の町内会に任せる。

・ 地元の公共団体がそうしたい、地主もそうしたいということで公有化するならば結構。しかし、それは制度設計としてやる枠の外で、ご随意にという世界。

・ 防災空地がどのぐらいできると良いのか。あんこは空地だらけになって、ガワだけ大きく立ち上げるというのが良いのか。

・ 不燃領域率40%を超えると、急速に燃え広がらなくなるとすれば、それに必要な防災空地面積は、そんなに大きくはない。空地を統廃合して、使いやすい形にリフォームしようとすると従来の区画整理と全く同じことになる。余力があれば次の段階で考えてください、そこまでは我々はコントロールしませんという。空地がほとんど価値を生まないならば、寄附という行為で、公共団体の用地に移し変えることは否定も肯定もしない。

・ 防災住区を運命共同体だと捉え、その中の人たちが、防災性を高めるために、道路整備に合わせてしっかりと高容積を使いこなして、アンコは空地率を高めた低層住宅のままで、環境は良くしていこうという大まかな合意形成ができるなら、それを都市計画で粗々に決めて、その実現は個別の敷地単位の建築行為でやってもらう。

・ 分散的に出てくる防災空地が副産物としてあるに越したことはない、自治体が好きに考えてくれというのか、もっと積極的に位置づけるのか。

・ どの程度、空地を生み出すかという目標値は、住区全体で合意してもらうと良い。

・ 不良のたまり場になるとか、何が起こるかわからない。コミュニティーのセキュリティーを担保して、いい姿にするためには、空地の量以外にも地元で決めることがある。

・ 緑の管理は、地主だけでは対応できないが、緑を管理してくれるNPOは多い。自治会みたいなものかもしれないし、広域的なものかもしれない。公共は管理しない。

・ 隣接地の権利者は空地を買うことはできるのか。

・ 不可。隣の人だけが使うということにすると難しくなってくる。

・ 防災空地の使い方について、ある種の規制や管理をしなきゃいけないというルールが要る。土地の登記上も、何かやるのか。

・ 区分所有みたいな共有処理ができれば良い。みんなの所有にしておくということによって、変な使われ方を防ぎたい。

・ 共同になればなるほど、日本人というのは無責任体質になってくる。私の空間は大切にするが、公共空間になった瞬間に無責任体質になるという特質をどう考えておくか。

・ 運命共同体だというコミュニティー意識が醸成できるかどうかということに基軸を置いているので、それが醸成できる地区であれば大丈夫であろうと思っている。

・ 新規参入居住者が出てくると、そこが壊れる可能性は強くなるという感じはする。

・ 駐車場を許すことによって、逆に管理が安定する面はあり、悩んでいる。

・ 緑地にした瞬間にだれも管理しなくなる。建設廃材を持ち込まれる可能性もある。

・ 六甲の区画整理地区の協議会で、既存の公園の掃除から始めようということで、3年前から毎週日曜日の朝、みんなで掃除しているところがある。運命共同体的に考えるようなコミュニティーをつくっていき、街をどうしようかという計画を地域でつくる。

・ 一定の空地量ができると、現在の前面道路による容積率規制を緩和するというルールの提案がある。空地を管理しない限り、そういうことは認められないという歯どめを入れておく。少しずつ空地ができるプロセスを経て、地域全体として空地を維持管理する仕組みが、容積緩和できる段階で初めてでてくる。

・ タイトではなくルーズな運命共同体と想定する。性悪説的にやれば、みんなに空地を空けさせて、最後に目いっぱい建てる。

・ 木造建築物は、大体20年で建てかわっているので、20年待っていれば、必ず立て替えはおきる。建てかえざるを得なくなった人が、建てかえられないから、容積を移す。

・ 日本の都市計画には、最初にやろうとした人は周りの人たちの要求を受けなければならないという仕組み。お互いにらみ合っていて、ことが進まないということは避け、最初にやる人はメリットがあるようにする。空地規模の目標値をセットし、それを達成するまでは容積移転できるという仕かけにしておけば、早い者勝ちの世界になる。

・ 制度の詰めがなく 大きな問題がいっぱいある。ある地区の人たちがみんな集まって、私契約、合同行為による協定を結び、それに従って公権力がアンコの土地はゼロの容積率にしてガワに配分するというスキームだとすれば、公権力が補償もせずに建ててはいけない土地にするというのは憲法違反になる。それに対して、これは強制ではない、皆が合意ことを追認するのだから、補償しないというにしても、相当に無理がある。永久に建物を建ててはいけないような財産を私有地のままで残しておくという合理性がほんとうにあるのか。権利移転して新しく建つビルの床をもらうといっても、その担保の規定はどこにもない。再開発法というのは、まさにそういうことができるように制度を強権的に組んでいる。制度論としてはその仕組みを書かなければものにならない。強権的に権利変換する部分がなければ、トラブルで権利移転ができなかったが、元の土地の容積ゼロにしてしまったというのはひどい。容積率が都市計画の基本的な道具だとすれば、それを私人の自由にして良いのか、計画論としても非常に問題になりそうな気がする。建築協定のように、基本やミニマムは押さえておいて、フリンジにあるものを自由にというケースとは違う。先の法改正で容積移転制度の芽が出たけれど、あれも相当の担保をしている。指定容積率の範囲内で移転するというが、その指定容積率とは何だというのを整理する必要がある。指定容積率は変更不可能なものなのか。防災上の問題のある地区はそのような観点から指定されているのか。指定容積率を固定しまうというのもひどい。容積率は、指定値以下に規制する制度だが、今回は一定の容積率以上でなければならないというイメージ。建てる建物が低容積だと容積がゼロになった人は困る。そうすると容積率は絶対にこれ以上で建てるという規制になる。現行法に存在する容積率の概念と基本的に違うもので、大きな制度変更になる。

・ 例えば高度地区で何メートル以上でなければいけない等を定めることか。

・ 公共がお金を出して不燃化している建物は、高度地区をかけてやっている。

・ ガワとアンコの地権者が、まず土地を共有するという契約が完全に成り立ったという前提から動き出す。防災環境軸内に土地を持っている人とアンコの密集市街地の中に持っている人が、将来、こう建てていくという大前提で、権利者が全員、価値に応じた共有持分に持ち直すことを合意する。

・ そのように強制し、担保する手法が必要。そういう絵が実現することは結構だとしても、契約違反したらどうするか。裁判所で判決をもらって、当初予定されたとおりにできるのか。そんな手法を念頭に都市計画をやっていくというのはどうか。

・ 契約関係を前提に都市計画的な機能を持たせるというところに相当飛躍があるという指摘で、だれかに売った時に効果をどうやってつけるかなど、もう少しすき間を埋めないとジャンプできないということだと思う。

・ 一番の基本は、容積をゼロにするというひどさは必ずどこかで挽回されているはずで、それは建物床をもらうからだが、その担保がなければ、容積をゼロにすることを強権的にやるのはおかしい。

・ 権利変換的な仕組みが、きちんとなければならないということか。

・ 然り。そうなると再開発と同じになる。

・ 区画整理は手法としていろいろな部品に分かれる。税がかからないというだけの使い方をしようということもある。区画整理の手法もフルセットで使うのではなく、例えば敷地を集めようというだけで適用する。あるいは、2m道路が3本集まって6mになった時に補助することができないか。区画整理の手法を、権利変換、公共施設整備、公的な助成など部品分解して、軽く使えるような簡易型の仕組みにする。区画整理に地区計画をかぶせることによって、いろいろな担保もできるようにする。

・ その場合、建物を担保する立体換地を入れないといけないから、そこが難しい。

・ 建築活動は、民間に自由にやってもらい、区画整理は使いたい部分だけ使う。

・ 総合設計制度など公開空地に伴う容積のボーナスがあるが、飛び建築敷地で、高い容積率の建物は建てるけれどもあとは公開空地だとすると、容積ゼロと言わなくても良い。

・ その公開空地というのが法律上の謎。ぎりぎり言えば、どう使われても仕方ない土地と思う。公共が買い取ってないわけだから、私所有者が契約に反して何かつくっても、除却もできなければ罰金もかけらない。それでもまあまあの世界でやる価値がある。今回の提案は容積率がゼロだと言った後で、建物を建ててくれというので、総合設計制度とは全然違う。

・ 何か起こったらどうしようもないが、憲法違反までいかないんではないか。

・ 一旦約束して、あとは勝手ですよとというならば、憲法違反ではない。そのかわり、公目的として一体何のためにやったんだとなる。

・ 不動産学的に言うと、アンコの土地の容積率が沿道側に移ると、合計は同じになるので、空地の部分は公開空地と同じこと。デベロッパーとしても、地権者同士でもそろばんとして成り立つ。ただし、性悪説に立って空地の管理に指針を出す。

・ この研究会の最初のころに出てきたサステーナブルなイメージ、アメニティー、環境面への配慮に加えて、今回の防災を含めて密集市街地の改善の工夫が提案されているが、防災環境軸でも自然の回復を全面に出して欲しい。例えば水辺とか、風とか、川を復活させるとか。

・ 防災環境軸という言葉の中には、緑地の要素はある。延焼遮断効果も街路樹があることによって高まる。

・ 沿道の容積率アップよるメリットは、沿道の地権者が享受すべきものなのか、アンコの人との共同の産物として考えるのか。

・ 誘導容積的な仕組みとして、背後地も含めて整備するのであれば容積率をアップさせるという方法もある。あるいは敷地を500平米以上にまとめれば、アップするという使い方もある。

・ 運命共同体はどの辺まで指すのか。500m四方の中の2,500人、1,000戸が運命共同体だという感じはしない。100戸だとかなり見えてくる。

・ ざっくりしたことを都市計画で決めなくてはならない場合に、1,000戸が話し合いでまとまれる現実的な計画単位かどうかは若干心もとない。ざっくりした仕組みをかけるだけであれば、1,000戸でもまとまるかもしれない。事業面ではせいぜい十数戸がまとまれれば、立派なものだとう思う。事業の単位は十数戸、全体としての目標の確認みたいな世界は1,000戸という2つの計画単位がありそう。

・ 東京等の鉄道計画では、駅勢圏は1キロで駅間隔は2キロとなり、そういうイメージで街づくりがされている。500mはその間を4つに区切することになりかなりいろいろな人たちがいる世界。そこでの運命共同体には性悪説的な人も必ずいる。

・ 全員が良いという人ではないのが運命共同体だが、そんなに強烈に悪い人もいない。

・ 今までの公的事業では、完成形があって、時間と空間を限って100%の形でつくり上げるという仕事ばっかりやっていたが、反対で動きが取れず、コストがかかり過ぎる。目的が厳格であるかわり、問題も大きくなる。そうではなくて、自由度を高めて、空間的にも広げて、時間的にも10年後にライフスタイルが変われば参加してもいいですよという、かなりルーズな形を考える。500m四方の住区を時間をかけてつくり変えるのが望ましいというラフな合意をしてもらって、その中の人たちが、できる範囲で協力していきましょうという運命共同体はつくれるのではないか。

・ 運命共同体という言葉が強烈過ぎたかもしれない。防災住区で容積の誘導配分に関する大まかなルールを都市計画に定める。参加しようと思えば参加できるというようなことであれば、1,000戸でも合意できる。

・ 中央区の用途別容積制度のように、活用したいところでは活用しなさいということか。防災という大きな目的があって、地域の人々もそういう意識があるだろうから、地区計画をかける上でも地域の意志がある。権利制限はないので賛同する人が徐々に増えていけばいいのではないかという仕組みとして理解する。

・ 中央区の用途別容積と違うのは、防災環境軸という強烈な公共性のあるものを入れることであり、そこがうまくいくのか。

・ 道路は要らないという人は、反対側に回わるので、そこは非常に苦しい。

・ 防災環境軸をこれからつくるところと、既にある程度の街路ができているところがある。

・ 沿道から見ると、道路ができれば地価も上がるし、いろいろな利用効率も上がるから、地権者にはメリットがあるはずだというシナリオになる。

・ デベロッパーの立場で、容積が沿道に移転できるとかなりもうかるから、空地の容積はゼロになっても問題はないとすれば、公共に寄附するという大前提で動かすこともあるかもしれない。公共団体が持つと地域の要求が出て泥沼になって挫折するという心配があり、公的取得はしないと考えていたが、考えを改めたほうがいいいもしれない。

  悪い不動産屋が知らん顔して、防災空地を売るというのが一番怖い。買う人が容積率がゼロということが分かる担保がいる。 特例容積率適用区域制度と同様に、容積が移っていることをきちんと公告縦覧する。

・ 特定容積率はどこでも使えるというふうに巷に流布されていることが非常に怖い。

・ 防災住区の中で完結する制度としてタガをはめようと考えている。高度利用ではなく、防災性の向上という高らかな政策目的に立つ。

・ 実態上、自治会の日常を考えてみると、1ヘクタールぐらいの単位でしか物を考えておらず、町というスケールで考えるつながりがない。そこへ、みんなで考えようという話をもって入るのは非常にいいインパクトになる。ただし、防災環境軸の90mの幅が、コミュニティを分断する可能性がある。既存コミュニティに対する配慮ができるような仕組みがあると、地域としてはより受け入れやすい。

 

 

第13回市街地整備研究会議事概要

 

日 時:平成13年12月20日 15:00〜17:00

ところ:国土交通省11階特別会議室

 

1.コンパクトな都市に対応した都市交通施設について

 

・ 宇都宮の周辺の人口が都心部に移動するという前提条件はフィージブルか。

・ 仙台レベルの都市では都心にマンションが建って、都心回帰が始まっている。宇都宮のような県庁所在都市において、都心回帰の趨勢があり、それを後押しするのと、そういう動きは全くない中で政策的に何かやるのではかなり違う。

・ 宇都宮市のマンション供給量は、全部は把握できていないが、ある大手のマンションメーカーは5年間で10棟、約1,200戸を都心部で供給しており、その半分は高齢者向け。

・ 郊外部から均等に都心に戻り、戻った元のところは少し密度が低くなるという想定か。

・ 今回のモデルではそういう想定をしているが、移った元の地域の考え方が課題。

・ こういう評価分析するとき、マイナスの要素を計量に加えるということが理想。例えばコンパクト化して密度が高まって精神に打撃を与えるならば、それを緩和する公共空間を整備する事業費はマイナス項目にすべき。公共交通機関として鉄道を導入するならば、一定の距離で営業しなければならないが、そこに矛盾はないか、工夫が必要ではないか。

・ 最大のマイナス項目は、高密度に居住する都心で車が非常に混むという状況。それを課題として受けとめて、幹線道路における交通容量の増大、歩行者空間の確保などの対応を分析している。

・ 彌縫策で対応できない根本的なマイナス点があるはず。世の中一般にコンパクトにすることはよいという風潮があるならば、本当かどうかということをやってみるべき。

・ コンパクト化の度合いについては、宇都宮では、現行指定容積をほぼいっぱいまで使うという前提にしており、その範囲ならば建て詰まりの問題や公園計画等への対応は可能と考えている。マストラについては、コンパクトな市街地の中だけでは成立しなので、郊外にも集積地をつくり、都心と繋ぐ都市軸の中に導入する必要がある。

・ 都市経営のコストは、都心部では削減するようだが、郊外では社会福祉、供給処理等のコストが増大するかもしれないので、トータルでバランスを検討すべき。自動車交通需給は計測しやすいが、防災、建設等で既存のものを移す費用を加えると結果は大分違う。

・ コンパクト化のメリットとして、都心部のにぎわいが増し、そこに住宅が入ることによって、保安度や安全性が上がり、危険社会に向かうことを抑制することを意識すべき。

・ コンパクトシティの意味を3点。1点目は商店街が陳腐化し、郊外で商業を立地させ、それもだめになるという振り子が揺れるようなやり方ではなく、荒廃をもたらさずに、重点的ににぎわいを維持するために、常にリノベートしていこうという面がある。2点目は、交通需要マネージメントやバス、LRT等を全部セットにしてうまくいく。コンパクトシティのコンセプトがでることによってフルセットの都市施策として展開できる。3点目はコンパクト化にをやらずに、放っておくとスプロールしていく都市像になる。それに対して、増加分を特定のエリアに集中するやり方もある。即ち、施策の有無によるウィズ/ウィズアウトで比較することが必要で、現状とのビフォー/アフターの比較ではない。

・ 宇都宮のような都市ではまだ郊外開発が進んでいるが、その量と都心部への人口移動の量にフィジビリティーがあるようにする。郊外開発では自然を壊すし、公共施設の整備が必要となることに対して、コンパクト化していくというストーリーであれば成り立つ。

・ 都心部で従来28,000人だった居住者が、76,000人になると都心の持っている魅力が非常に大きくなる可能性がある。魅力が高まればさらに人の動きが出てくる可能性がある。それが地方都市の都市構造を変える大きな力になることが重要。1つのプロセスが次のプロセスにつながることで都市づくりを実現する。公共交通のあり方も次につながる議論。

・ 成長力のある都市とない都市では大きく違う。例えば鳥取では、郊外の家を放ったまま、ウィークデイは都心に暮らし、掃除や管理に週末に帰るというような二重生活をやらざるを得なくなっているようだが、福岡では、あらゆる層が都心の職住接近型のマンションを買っている。力のある都市であれば郊外の家は処分できるのかもしれないが、そうでない都市は処分できないことがネックになる。行政としてコンパクト化をやりたいというときには公共交通施策を一体的に実施することと、郊外の家の処分が条件になる。

・ 都心居住を抜きにしてコンパクト化はあり得ない。日本橋でもかなり都心居住が進み、デパートに自転車で買い物に来るようになった。短トリップの自動車利用は減り、徒歩・二輪車が増えて、道路への負荷は増大しないのではないか。特に、ミックスユースで都心居住と24時間都市の組み合わせで効率化するとかなり効果がある。

・ 地方都市は軌道系を含めた公共交通の整備が十分ではないため、都心内の 500mを車で移動するが、公共交通の利便性を高め、楽しい歩行者空間をつくれば、徒歩・自転車や公共交通に転換するという可能性は高い。それをセットで考えていくことが交通政策上重要。都心の居住密度として260人/haを想定しているが、路面電車であれば、夜間人口、従業人口が100人/haを越えると事業採算がとれるという試算がある。5キロ程度の延長の路面電車の沿線に人口密度が貼りつくと、公共交通で支えられた街が実現できそう。

・ ウィズアウトのケースを想定して、どうやってウィズのケースに移るのかという整理が重要。郊外の住宅が売れなくなったら例えば緑に戻すのかなども含めて整理する。

・ 郊外の開発も進められている中で、郊外と同じコストで都心に住めるなどのインセンティブを与えていけば何とかなると考えているが、郊外開発圧力がなくなってきたときには、インセンティブを与えなくて郊外が不便になるから、都心へ戻りたいという意欲が出てくるのか。都心へ戻りたいけれども戻れない人に手を差し伸べるべきなのか。

・ デベロッパーとしては、都心型のマンション部隊と郊外型の地域開発部隊の比は10対1という感じ。ほとんど郊外では供給していないという状況。郊外の住宅が安くなって売れない状況では、郊外の緑と都心のコンパクトを対で考えていくという施策が必要。

・ 都心に戻って来る人は 子育てを終わって便利なところで自由に気楽に生きる人たちという想定なのか、子育て世代が利便に暮らせるような環境をつくるのか。ファミリー層が戻るためには社会施設が相当必要。どんな生活像になり、路面電車が要るようになるのかどうかで変わる。

・ 東京では、都心回帰の半分が50歳代以上。

・ 環境面や省エネルギーという観点だけに立つと、都心に戻ってほしい層は、トリップ数がお得、トリップ長も長い人である。具体的にイメージできるような、宇都宮のコンパクトなモデルをつくって、ウィズアウトの形とわかりやすく比較したい。

・ 年齢層の高い人たちが都心に移って来ると高齢社会の行政コストの問題の解決策になる可能性がある。エネルギーや環境と同じぐらいの重要性がある課題として、高齢化社会に向けての行政コスト削減上の意味が大きい。

・ ここ一、二年の東京の都心回帰傾向があり、地方でもかなり回帰現象が出てきており、そんなにリアリティーのない話ではないという世論ができてきている。そのプロセスを整理する。

・ 郊外の家を残したままウィークデイは都心に住んで、土日に戻るという状況は、中山間地で議論されている。夏山・冬里住宅というパターンが出てくる可能性もある。

・ ヘルパーが必要な高齢者が増えたときに、まとまって住んでもらう方が効率が高く、コストが下がると考えるが、1人のヘルパーが連続して回ると嫌がるお年寄りが多く、わざわざ組みかえて、むだな動きをすることで不満感を解消しているという話もある。

・ 低密な地域では、組みかえもできないのではないか。集まって暮らすからヘルパーのチームを再編しながら対応できるのではないか。

・ 連続してケアを受けるということに対する抵抗感が強いという話。

 

 

2.コンパクトな市街地に対応した都市計画道路の整備について

 

・ 新橋の大街区化はかなりのスケールだが、既存の街区との中間に、いろいろなバリエーションがある。現実的には2つの街区に区分して、その間の細い路地に、飲食店等の小さい単位のがはりつく空間をつくっておいて、両側に比較的大きな建物が建つ横浜の関内地区のようなパターンになる。

・ 幹線道路を沿道でセットバックするとプライベートビーチ化することが大阪ではみられる。そうなると4車線道路がまた機能しなくなってしまう。それならば中へ一度引き込む方がかえって交通処理がしやすい。

・ 最初はプライベートビーチになるが、幾つかつながって道路として見えてくると、プライベートビーチをあきらめざるを得ない。あと数軒しか残ってない段階では、事業で抜く。

・ 神宮前の補助幹線道路のケースでは、文章で書いた方針だけでスタートするのか、最初から道路予定線を示すのか。全体を特定のデベロッパーが一緒にずっとやってくれれば良いが、部分的に開発する場合にどうやるか。

・ 途中段階では、行きどまりの道路として、部分的に都市計画決定をするということになるだろう。

・ 最初から都市計画で道路の位置を決めて、通常の道路事業で整備するのではなく、民間開発と合わせて、ある部分はつくり、一定の延長比率になれば残りの区間は、場合によっては、公共で整備することもあり得る。そのときに、最初はおおむねの位置を決めておいて、一番最初に出てくる民間開発事業者が早い者勝ちでルートを決め、残りの部分は多少ずれても少しずつつくっていく。近い発想としては、杉並区等では生活道路の予定線を示し、建て替えや開発行為が出たときに、行政指導でつくってもらうという施策がある。

・ 民間デベロッパーが街区の真ん中で開発してどっちにもつながらない道路だけつくることにならないか。

・ 余丁町のケースでは、容積の配分などアンコの部分と連鎖させる方法があればフィージブルな可能性はあるのか。

・ 防災環境軸と防災空地の関係については応用事例のひとつになり得る。

・ 神宮前のケースでは、方針だけ決めて、早い者勝ちというのはできないのではないか。連続して使う道路である以上、隣接地区のルートが機械的に決められてしまう。クルドサック型の道路を許容し、隣の人が、いずれ頑張ってくれたら抜けるような備えをしておいてくださいという両にらみの開発であればやれる。クルドサック型の道路でも価値がある場合は有効な施策になる。

・ 2案の文言での方針提示と、1案の概括ルートの提示は代替案ではなく、マスタープランで、こことここの間をつなぐ補助幹線道路が必要という計画があって、具体的に、その計画が沿った開発が出てきたときに、概括ルートに移行する。

・ デベロッパーが都市計画決定してくれという際に、隣地はその気がなく、デベロッパーのために都市計画決定するのかと言われると、都市計画決定の手続ができるか。

・ 地域としてのマスタープランに必要性がうたわれているという前提があるかないかによって大分違ってくる。

・ 2案のようなマスタープランを1案に移行しようとするときに、区役所はデベロッパーの味方なのか、住民を相手に回してやるのかという言い方をされそうな気がする。

・ ニワトリと卵の関係だが、2案のようなマスタープランに描かれていると、デベロッパーの意思ではなくて地域全体の意思であるという前さばきにはなる。

・ 総論としてはいいと言ったけれども、何でうちの前なんだという各論のところが非常に苦しい。デベロッパーだけが来て決めるということではなく、まちづくり協議会、まちづくり協定などをかませないと動かない。

・ 2案のように直接の権利関係がないところで合意をつくっておいて、1案に移行するとなるが、1案も結果的にデフォルメされ、くねくねした道路になる。その場合、都市計画道路ではなく、生活道路のような決め方になるのではないか。デベロッパーが種地を持ち、地元をまとめる自信がないとうまくいかない。協議会を大規模につくるのは大変。

・ 既存の交差点に繋ぐとすれば、実際でき上がる道が案1から逸脱して、くねくね曲がることはあまりない。どこに繋ぐかで道路の価値が変わるので、デフォルメしたら、逆にできないのではないか。価値が生み出されることを、計画として表現することが必要。神戸市が出した概括ルートは幅200メートルほどある。どこまで描くのかにかかる。

・ 1案の絵が具体的過ぎるが、補助幹線道路と幹線道路とのつなぎなどを詰める必要がある。既存の交差点から抜けるような道路だとアクセス主体の道路にならない。場合によっては、カギ型とか曲がっていても良いのではないか。どこまでそれが許されるかとわからないので、その性能表示ができるかどうか検討してみる。

・ 補助幹線道路にトラフィック機能を求めると地元からは反対される。土地利用のために必要な道路であれば、曲がっていてもよい。それを整備することについては話し合いで可能。

・ 大変おもしろいし、ぜひ進めてほしいと思うが、今までなぜできないのかというのを教えてほしい。開発と道路整備を一体でやるとそれぞれ切れていた話をつないで1+1=3になる。予め決めておくと、できないものはできないが、フレキシビリティーを向上しておくことによってフィジビリティーを高められる。公共施設などに高いスペックを求めると、放っておくというのと同じになるが、スペックダウンしてでも、やれるようにする。補助幹線道路が少し曲がってもいいというのは、その1つの姿であって、車線数や歩道幅員もデコボコしても良いとする。

・ 道路面積率と利用容積率の相関関係が示されているが、相関が低い地区がどうなっているかを調べたい。

・ コンパクトな都市をつくろうとして、都心部でトラフィック機能を高めることを意識しながら、4種類の施策が示されているが、これらの施策はどのようなバランスになるのか。

・ トラフィック機能を重要視するならば、駐車場を一緒に考えるべき。宇都宮のケースで都心に移る人が車を持つと、25,000台分の駐車場が必要となり、住宅床の1/3の面積がどこかに要る。

・ 地方では、古い時期に都市計画決定されて道路が多く、歩道が圧倒的に不足している。歩道空間をどうやって確保するのかということについても意を払うべき。

・ 必ずしもアクセス機能に重点を置いているのではなく、中心部ではトラフィック機能も強化しなければいけない面がある。外苑西通り再拡幅のケースは、トラフィック機能を強化する施策として、スペックダウンではなくスペックアップするやり方を考えなければならない。地方都市では、歩道が足りないことに対してどういう手があるだろうかを考えなければいけない。アクセス機能のためにスペックダウンしながらつくりやすいところをつくるという話と合わせて、強化しなければいけない道路については、どういう方策で強化するかということも合わせて検討する。

・ 都市計画道路の区域と実際にでき上がった道路の区域とが一致しなければならないのか。歩道と民地の関係で、1階部分だけ借地するとか、利用権だけ預かって2階から上は容積だけ使うとこがあっても良いが、建て替える時は買取請求権はあるので、道路区域にするなど、道路予定区域と道路区域との関係をダイナミックにしておく。

 

 

第14回市街地整備研究会議事概要

 
 日 時:平成14年1月31日 10:00〜12:00
 場 所:国土交通省 都市・地域整備局 局議室
 
1.密集市街地の新たな整備手法について
 
・ 現状の建物の延床面積はどの程度のイメージか。
・ 70平米の土地に70〜80平米程度の床面積のイメージ。
・ アンコで接道条件が悪いなど再建できない人が参加することはあり得る。ガワの人は負
担無しで再建できるならば乗り気になる。アンコの空地は、収益は上がらないという前提で、地域が広場として管理する仕組みを連動させることが必要。例えば、防災まちづくり協議会等の仕事にする。
・ 防災空地が空いた次のステップで、空地を種地にして区画整理で道路網や小公園をつく
る場合に、権利調整はどうなるか。そのような段階も当初から念頭に置く必要はないか。寂しげな空地が散在すると不良やホームレスが集まるのは避けられない。そこで共有にするか特別の法人が所有権を持つようにするか。
・ ガワとアンコの指定容積率に差がないのはどういうことか。アンコの防災性が低いなら
ば容積率も制限すべきではないか。
・ 荒川区の容積率指定の状況としては、幹線道路沿道は300、400%が多く。アンコ
は200、300%が多い。事例地区はたまたま同じ指定のところ。東京都下は、商業地域や容積率が400%でなくても幹線道路沿道で日影規制を外しているところが多い。
・ 木密地域は過去半世紀間何とかしようとしたが、何もできていない。理想的な街にはな
らないが、民間の建築活動を活用してアンコの部分を変える仕掛けとして考えた。その次のステップが動くにこしたことはないが、当初に空地をあけることに重点を置いてはどうかというのが問題認識。空地の維持管理としてNPO等を活用することは必要。
・ どうせやるならばプラスアルファのメリットが出るようにやったほうがよい。
・ プラスアルファと言うと、結局重装備になって動かないのが、今までの木密政策。
・ 密集市街地に公有地がたくさんあれば、区画整理の大変さも軽減される。
・ 公有地ではなく、容積率を使えない空地なので、他に使うことができない。
・ 容積率の指定が防災性を反映していない。危ないところにはもっと低い容積を指定すべ
き。少なくとも安全になるところについては、もっとプレミアムの容積率を指定すればよい。そうすれば空地は公有化できる。
・ 私有財産は簡単に公有地にはならない。
・ 公共が何かするということではなくて、民間の経済行為である建築活動をうまく誘導し
て民間が選択する仕掛けをつくりたい。
・ その先を何か手を打って、上手な担保ができるような仕組みづくりにしておいたほうが
ベターではないのか。木密地域の将来展望が空地が空くだけでよいのか。
・ こういったことが定着すると、次に進もうという声がでてくる。ただし、スタートする
時点で次のステップを言い過ぎると、初めの一歩が踏み出せない。
・ 環境防災軸内の安全なところに高い容積率を指定しても、その床を買える人はアンコの
人ではなく、アンコは変わらない状態のまま置いておかれる。ガワが高容積になると同時に、アンコのほうも今よりはよくなるというリンケージをとらないと、地区全体がよくなっていかない。その次に空いた空地を再利用しようすると、従来型の木造密集地における区画整理事業と同じく30億円/haという膨大な費用がかかる。今よりも少しよくなる状態を実現させた後で、そこを原点にまた10年か20年先を見通して、空地を公共に譲渡してもらって新たな地区計画をかけ直そうという声が出てくるのではないか。最初から60点を目指すのではなく、確実に30点をターゲットにしてやる。共有地よりも制限つき
公有地のほうがよいとなれば、無償譲渡を条件とした容積割り増しの方がベターだと思う。
・ 第1ステップまでしか考えていないというのはいかがなものか。第2ステップに入ると
きにおかしなことがおこらないように上手に考えおく。
・ 今回のスタディではアンコの人は1, 400万円負担しないとガワの床を取得できない。
じっとまっていたら根こそぎ公共が整備して、負担なしで建て替えられるならば動かない。
動いたら確実によくなる形を見せないと協力してもらえないのではないか。
・ 密集市街地の中でも緊急性の高い「局所密集」があり、個別建て替えができない。大阪
ではほとんどが明治期のスプロールであり、一番問題がある、そこに空地があいてくると緊急措置としては効果が高い。自分で建て替えられない人に動いてほしいということで制度を活用する。
・ 非常に密集している土地は建てられないので地価が低い。そういうところをディベロッ
パーは買うだろう。見えざる手に任せておけば、選択的に空地があいてくると考えられるのか、あるいは公共がなんらかの動きをする必要があるのか。
・ 公共が方向を示し、地元の協議会が情報提供し、ディベロッパーが一緒に動いてくれる
とよい。
・ 再開発を進める場合に、保留地の処分が難しい。アンコの300%の容積率の150%
を残して、150%を売ると、アンコにも少し資金ができるので、低層住宅地として再開発できる。その中でうまく集約して空地を生み出す。
・ もともと敷地が60平米しかないところで集約して空地をつくれるのか。
・ 実態として160%までしか利用できないので、それ以外の容積率を売るとなると、ま
た建ててよいことなる。それは避けたい。容積率をゼロにするところに初めて防災性の向上がある。
・ 地区計画、規約敷地、総合設計、特例容積制度など相当知恵はつかっているが、制度と
しては7〜8割りではなく100点をとらなければならない。今までの地区計画はその地区をどうするという積極的な目的があって規制・誘導するが、今回の提案は空地をつくるという合意が成立することに地区計画という看板をたてているにすぎない。規約敷地は共同管理するインセンティブはあるのかという現実的な問題からアプローチしなければならない。総合設計制度は、空地を担保するために、土地の所有者がビルと一体で管理するということで現実味があるが、離れた空地の管理も同様に可能とは言えない。特例容積制度は、だれが見てもお寺がここにあるという即地的な客観性があり、どの土地でも容積を移転できるというのは不安定で特例容積制度の類似には考えられない。例えば、マンション開発がつぶれてうまくいかない場合の手当てや、空地が転売されて建物が建てられた場合のトラブルへの手当てが考えられていない。
 ガワの容積率を高くすることが先行している方がよい。同時にやって私契約に公権的な力を与えようとすると非常に無理なことが出てくる。アンコの空地は別途のやり方で生み
出し、その担保は容積率ゼロではなく、公有地化するか、受忍できる範囲で利用制限する。
・ ガワの容積率を先行して上げると食い逃げされる可能性がある。アンコの空地を寄付す
るなど防災性への貢献がないと容積を利用できないということは考えられる。
・ 空地の寄付を条件にすると特例容積制度と同じで防災空地にする即地的客観性が必要に
なる。地区全体の容積率と各敷地の容積率の混同があり、それを解く必要がある。
・ 20世紀の負の遺産を解消するという公共性があり、それを民間同士でうまく整理する
のを手助けする制度。防災機能を上げるには他に方法がないので、それを動かす一つのツールとして考える。住民も不安に思っていて、自ら動くという条件の中で制度を動かせないか。
・ 容積率はだれの財産でもないが、それを売って空地になるというというのは財産として
使うこと。そういうおかしさがある。
・ 空中権という財産として使っている面がある。
・ 寄付ということに嫌な感じがあるのはそのため。個人が社会的な貢献をしてくれること
にたいしてボーナスを与えるということであればよいのではないか。
・ それが可能とすれば、容積率を自由自在に、いろいろな目的で売り買いする操作ができ
ることになる。制度の趣旨はわかるが、汎用性を考えると怖い。
・ 米国でも容積売買の制度は批判にさらされている。
・ 容積が財産ならば税金をかけなければならない。
・ ガワとアンコの指定容積率が等しいのはおかしいが、逆に差がついていると容積移転の
必然性がなくなる。地区の総容積を上乗せしないと民間活動が出てこないとなるという危惧がある。むしろ、ガワとアンコの指定が等しいという、都市計画にみるとおかしい状態の方が制度の効果がある。
・ 容積率を廃止して、高さ制限という世界になると制度はおかしくなるか。高さがゼロと
いうのもおかしい。行政として都合よく情報を使いすぎている。
・ 最終的にはその街区全体がどうなるという説明をしないと、行政的には動きづらい。地
区の全体像の中で個別の容積率移転をどの程度使えるのかという議論をしないと、特例容積制度だけでは説明しきれない。当初の地区計画のレベルで全体像をまとめておく必要がある。
・ 20世紀の負の遺産は21世紀ではこういうところまで対処したいという説明をして、
何とかスタートする。
・ 計画的な説明としては、防災環境軸と不燃領域化率の向上の2つの軸になる。
・ 緊急対策という位置づけにして、時限を決めて、その期間についてはいろんなメリット
があるとしてはどうか。
・ 緊急対策というよりも、ガワの方が全部建ちあがるとアンコの人は行き先がなくるので
乗り遅れないようにしましょうと促す。時限をいい過ぎない方がよい。
 
 
2.都市計画道路の新たな整備方針について
 
・ 補助幹線道路は公共としてはあまり要らないので開発のついでにつくってもらうという
姿勢か、あるいはもともと必要なので民間開発をトリガーとするということなのか。
・ 後者のスタンス。
・ 開発区域内の区間は民間が整備するとして、区域外では民間にコーディネートしなさい
というのか、お金も出しなさいというのか。
・ 幹線道路は公共が主導し、費用も負担することでよいが、補助幹線道路は公共・民間と
もに負担してもよいのではないか。その比率をどうするのかということは課題。
・ 防災環境軸は補助幹線道路か、幹線道路か。
・ 通過交通を入れる。
・ 提案の制度は、高度利用を図るべき地域で、補助幹線が不足しているためにアンコの高
度利用が図られていないようなところを対象にする。密集市街地は対象外。
・ 街区真ん中のAという再開発への進入路を、民間が合意をとりつけ、都市計画決定をす
ることで公と民の負担率が変わることはあるのか。
・ 都市計画決定するということと、公・民の負担率の議論とは分けて考える。都市計画制
限をかける正当性があるか否か、場合によっては収用をかけることがあってよいかという議論と、負担の話は別。
・ Aの開発の区域内は開発者が負担するとして、その外の区間は、公共もある程度負担し
てもよいのではないか。
・ その際に、区域外の区間について民間事業者は何をコーディネートするのか。
・ 一般的には用地の買収とかの話をつけていくことになる。
・ Aの開発を契機にして、アクセス道路の周りの人たちも一緒に敷地の共同化や共同建て
替え等に誘導できると望ましい。それにデベロッパーが入って、一緒に話をまとめるということが期待できるのではないのか。
・ ディベロッパーはアクセス道路沿道も高層化し、開発区域を幹線道路まで広げるとなる。
その際に公共が都市計画決定までして、事業の段階では民間に負担しろというのは腑に落ちない。公共が1割しか出さないならば民間は心が揺れる。分割払いでも公共が負担してくれることでもないと、コーディネートする理由がない。
・ 部分的に都市計画決定することがデベロッパーにとってメリットがあるのか。
・ 大いにある。アンコはアクセス道路がないとほとんど開発できない。アクセス道路に公
共性があり都市計画で位置づけられれば、大きな力になる。負担率は後追い的に整理すればよい。
・ 区域外の区間はいつ完成するのか、完成の担保はどうするのか。あとから買収できない
ということはないのか。Aの事業がスタートする時点では、確実に事業区域外の道路もできるということが担保されているという前提が必要。
・ 区域外は基本的には公共が事業する。その上で民間が特許事業でやるという選択肢はあ
る。
・ ディベロッパーが地ならしして、アクセス道路を抜くということで地元をまとめるので
あれば、民間が都市計画を提案する。
・ 神谷町の駅の裏の道路が幹線道路まで抜けていない。それを都市計画で位置づけると民
間にとってはメリットがある。公共が金をだすかどうかではなく、都市計画論としても必要かどうかということを考える。
・ 都市計画決定することで用地買収が進むということはある。単にアクセス道路を確保し
ないさいという行政指導では、なかなか抜けない。計画論的に必要なので都市計画決定するならば進む可能性がある。
・ 公の側と民の側が補助幹線道路の必要性で一致し、都市計画決定できると一石二鳥にな
る。
・ Aの開発側からここに都市計画決定をしますという理由が何なのかがわからない。公共
がこの位置での整備を事前明示する必要性がわからない。
・ 都市計画をかける側からは、開発のための道路でしかない。絶対に公的に必要とは言え
ない。公側が援助することもない。むしろ民が負担するので、都市計画決定するという方が理屈は成り立つ。
・ この街区は低利用のままで、補助幹線道路を整備してアンコを開発するのはよいことで
あるというホワっとしたことをオーソライズして、それに合致した提案があったらなんとかしようという趣旨ではないか。
・ ホワっとした概念的なネットワークの必要性を提案しておいて、それに対して協力した
い人を集めて、決めるときは一気呵成に明治通りから青山通りまで全部を決めるのならばあり得る。機能だけを最初に提示しておいて、その機能を実現する手法として、民間の開発者の知恵を聞いて、一番合理的かつ安くて高度利用が広範に起きるところを共同して決めましょうというルールはあり得る。決める時は全部を決めないと意味はない。開発者側も自分たちの提案どおりできるので、応分の負担はあってよい。しかしながら、そんなに理想的な絵は例外的。AやBが個別に手を挙げても、結局は決められないだろう。
・ クルドサック状の補助幹線道路を認めるとすれば、開発の論理でやるしかない。全区間
を抜くための地域の話し合いは困難。
・ 幹線道路間をつなぐ都市計画決定をしておいて、開発にあわせて都市計画変更するとい
うのは可能か。
・ 交通機能の理屈で決めるならば、途中で曲げるのはあまりよくない。
・ 補助幹線道路の機能が交通処理なのか、防災なのか、オープンスペースなのか。トラフ
ィック機能は全く必要ないとするかどうかで大きな違いがある。
・ 都市計画決定する必然性がなければ、再開発地区計画の2号施設で決めれば良い。都市
計画決定するのは街路としてやりたいということ。開発の論理に公共団体が補助するしくみはできない。
・ 都市計画決定と街路事業の連動を意図しているのではない。東京都は昭和30年代に補
助幹線道路を廃止したことがあるが、幹線道路で囲まれた地区の中の交通処理、交通を集散させるための補助幹線道路は必要ではないか。この街区の人たちのサービスや土地利用更新、高度化に役に立つ道路ならば、クランクになる線形とか、整備水準が多少低くてもよいのではないか。
・ リンクとして抜けているということがないと、クルドサックだけで都市計画上のメリッ
トはあるとは言えない。
・ 仮に、Aの先に鉄道駅があるとすれば鉄道を通じてつながっているというようにケース
バイケースで考えると、スルーであることがいつも必要と考えなくてよい。
・ クルドサックの積極的な理由を明示し、都市計画決定するべき。
・ Aの開発者だけでなく、地区全体にとって良いことであると正当化できることが前提。
・ それを正当化するために、マスタープラン的なもので説明する。
・ それを説明するシナリオがまだ弱い。
 
・ 幹線道路を再拡幅する場合に雁木型で良いということであれば、規定の都市計画道路の
整備でも認めるということにしないと整合性がとれない。
・ 道路として拡幅するのではなくて、その他交通施設という道路とは違う形として決める
イメージ。
・ 長期未着手路線も同じようにできないのかという議論になる。
・ 概成や未整備の道路は基本的には都市計画の変更をして広げるべきだが、いったん都市
計画通りに整備した道路の再拡幅は困難なので、緊急避難的な策としてやる。
・ 最終的に完成しなくてもいいと言っているが、そういう概念で良いかどうかは疑問。
・ 都市計画決定というのは、収用権を与えることなので、収用しないのであれば、これは
都市計画の世界ではない。
・ 都市計画決定して収用しないという概念があるのかどうか。公共のために必要な空間だ
と定義しておいて、長時間放置しても構いませんということか。
・ 都市計画施設ではなく、待つような計画線の示し方はないだろうか。50年後、全部建
て替えたときには広がっているというような仕組みにする。
・ 壁面線指定をしておくということで良いのではないか。7割か8割が壁面線を守って建
て替えた後は都市計画道路を拡幅して収用の世界に入る。
・ これから整備する都市計画道路に影響しないかという懸念が出てくる。
・ 早いか遅いかで不平等がおきて、最後に金が出てくるのを持つという人が多くなる。
・ 都市計画しないならば、セットバックを誘導するという方法はある。

第15回市街地整備研究会議事概要

日 時:平成14年3月6日 15:00〜17:00
場 所:国土交通省 都市・地域整備局 局議室
 
1.都市の将来像(コンパクトな市街地)について
・ 戸建住宅を選択する人の応分の負担とはどんな意味合いなのか。コンパクトな市街地を
実現するまでに経過的な代替措置として自動車利用を考える必要があるのか。ロードプライシング等の課金を財源として公共交通手段を整備するなど政策のミクスチュアがないと進まないのではないか。
・ 応分の負担が、税金か負担金かはまだわからない。アイデアは出しているが、具体的な
施策に結びつけていくためにはこれから議論が必要。
・ ドイツのカールスルーエでは、周辺の自治体も巻き込んで路面電車を郊外部まで延長し
ていくと同時に、沿線で住宅市街地開発を積極的にやっている。ドイツ鉄道と相互乗り入れして、ベルリンまで行ける特別列車も仕立てられる。郊外部の沿線ではパーク&ライドができるようにして、密度薄く広がっている住宅地に対しても手当している。使い方も週末は家族で乗り放題にしたり、自転車を持ち込んで都心まで乗ってこられるような仕組みをつくっている。都心から伸びていく公共交通沿いに市街化を誘導していく仕組みとして参考になる。
・ ニュージーランド製の電気自動車を試乗してみると、歩行者の目と同じ高さで、乗り心
地も良い。周辺の企業でお金を出しあって無料で回遊させようとすると、無料運行の許可をとるのが大変。そういうものが許可され、助成があると公共交通を中心とした市街地の形成が進む。
・ 六本木6丁目では人口密度が70人/haが100人/haになるとあるが、就業人口も含
めてトータルに捉えないと実態が把握できないのではないか。
・ 市街地のコンパクト化の効果としてCO2削減等は腑に落ちるが、一般の人は庭つき戸
建をあきらめて都心に移ることの引き替えに何が手に入るのかに関心が向く。例えば、どれぐらいの居住面積になるのか、通勤時間がどのくらい短縮されるのかなどを知りたい。さらに、きれいな空気や緑がたくさん確保できるようになるなどのプラスのほうの数値化があるともっとわかりやすい。
・  市場メカニズムの中でコンパクト化を実現したいと考える一方で、行政コストが削減さ
れることによって公共交通の整備や都心居住の誘導等の様々な施策が展開できる。環境問題は市場メカニズムだけでは解決できないので、住民の行動面でも寄与すべきという意識を持つ時代に少しずつ変わってきている。市場メカニズムと環境に配慮する市民意識が醸成されてきて、公共が一定のメリットを認めて乗り出していくという3つのストーリーが含まれていて、こういう施策が展開できると構成したほうが良い。今回資料では市場メカニズムが表に出過ぎているような感じがする。
・ 21世紀に入ったので、21世紀に向けてという表現はやめる。
・ 試算1で300haで夜間人口が約5万人近く増えるとすると、床面積が150ha必要に
なる。さらにオフィスが120ha増えてグロスで100%容積を上乗せするというのを建築的に考えると結構厳しい。試算2では容積率が50%増し程度。空間的に対応は可能かどうかのチェックをすると問題が出てくるかもしれない。コンパクト化と同時に周辺の豊かな自然環境等の話も含めて、コンパクトシティの良さを出す。
・  阪神間で私鉄の交通量が減少している。乗降客数の減少と既成市街地の駅前が元気にな
らない、魅力的にならないということとはかなり大きな関係がある。郊外部の公共交通沿線に人口を集めることが、街なかで魅力のある駅前をつくることに対して効果があるかもしれない。ただし、大都市の都心集中ではなく、幾つかの駅前へ集めて魅力づけるというプログラムとリンクさせていく必要がある。郊外の一戸建で駅からバスを利用している人が、郊外の駅前へ移り、その次に都心へ移るというツーステップの移転が現実的か、一気に都心に移るのか、その辺も郊外部の公共交通沿線整備においてプログラムイメージが必要ではないか。一足飛び都心に移るとすれば、既成市街地を魅力的にするということとリンケージが必要。
・ 都心でバスの昼間の乗車率がかなり高い。高齢者は時間がかかっても構わないので、料
金が安いなどの利用条件があれば、ステップが高くても利用する。低床バスにすれば乗るというわけでもない。もう一度システムとして考え直す必要がある。
・ 駅前の整備に際して自転車を放逐したいという気持ちが強いが、50m離れた駐輪場は 空っぽで不法駐輪がなかなかなくならないという状況に対して、新しいシステムを提案し
ていかないと駅前の緑化ということと相反することになってしまう。
・ 都心の居住人口は、現状の指定容積率から床面積を算定したものを夜間人口の上限とし
て設定している。容積率は230〜250%程度。
・ 夜間人口で250%を使って、就業人口でプラス100%とすると、宇都宮では高すぎ
るか、適切とみるか。
・ 地方都市で指定容積を目一杯使っているところはない。指定容積まで使うように建物を
積み上げていくことができるのかというチェックが求められる。
・ 郊外の居住形態はどんなイメージを持っていたらいいのかも考えるべき。高齢者は戸建
庭付きにこだわらなくなっている。高齢者が住みたいのは都心。特に女性は単身になった時に転機がくる。
・ 市場のメカニズムをうまく使って都心に移転させる場合、従前資産をどうすれば良いの
か。最初の一転がりをうまくやれば自転するような仕掛けが構築できるのか、エネルギーを供給し続けないと動かないのか。
・ 老夫婦が都心に移り、郊外の庭付き戸建は子育て期間の子供世代が使うという事例はあ
る。子供の教育上は土と遊んだほうがいいが、高齢になったときはもっと違う意味で刺激の中にいたほうがいいという感じだろう。
・ 郊外を緑に戻すことはできないか。自治体が買い戻して緑に戻す方法はないか。
・ 農地に戻せないのは、外国の野菜や米の輸入があるため。緑に戻す費用をだれがどうや
って負担するかが一番難しい。
・ 敷地を大きくするという動きが出てくればよい。
・ 例えば宇都宮で都心居住のイメージがわかないために、オールターナティブとして考え
られず、居住が郊外に展開する。都心に選択可能なオールターナティブが提供されたとき
にどちらを選択するか、あるいは選択を誘導する方向性をイニシアティブとして与えるか。
市街地像が明確でなく、容積率350%という市街地が都心に移りたいと思わせる市街地像なのかということが問題。人口密度が高まって楽しい空間ができるというストーリーにするのか、あるいは250%ぐらいが限界と考えるか。350%で高層の住宅が林立する
という市街地が地方都市でほんとうに魅力ある中心市街地なのかという議論に行き着く。
 
2.都市計画道路の機能の再評価について
・ トラフィック機能が強い道路でアクセス交通を認めないとすると、周辺はどういう街に
なるのか。両側にまちがあるのか、幹線道路はまちの端なのか。
・ トラフィック系道路と非トラフィック系道路という分類の基準がよくわからない。
・ 交通流動の分析や道路計画を考えるときに主要幹線、幹線、補助幹線という3分類でや
ってきたが、実際には主要幹線と幹線の境目がわかりにくく都市計画で明示できない。今回の問題意識は、3分類は無理がありそうなので、トラフィック機能とアクセス機能とい
う2つの機能に着目して、道路のつくり方や使い方を区分できないだろうかということ。
トラフィック機能を特化して持たせるべき道路は、路上駐車は一切認めないということに割り切ってしまったらどうだろうという第一段階の仮説を出した。
・ トラフィック機能という集団と非トラフィック機能という集団も必ずしもうまく分化で
きずに重なってくる。青山通りはその中間項になる感じがする。
・ 大型車の混入率で道路の性格が違うなど、トラフィック機能、アクセス機能以前に交通
目的が違っている面がある。沿道の土地利用が商業・業務型の場合に路駐密度が高くなっている。交通目的と沿道の土地利用の関係から整理するべき。同じ路線でも、区間によって性格が変わる。沿道の土地利用を考えずにトラフィック機能とアクセス機能と分けるということでは切り口にならないのではないか。
・ 沿道利用によって道路の使われ方が変わるのは当然だが、道路側が受け身で土地利用追
随型で整備していくのか。そうではなく、広域レベルから地区レベルまで道路側がうまく
役割分担し、それにあわせて土地利用を変えていくことによって、道路投資を増やさずに、
交通、土地利用の両面を合理的にしていくことはできないのか。沿道利用によって路上駐車が仕方がないので、もっと広い道路が要るということでやってきたが、駐停車がないという大前提で街を変える方がトータルとして都市全体のコスト、また行政コスト全部が下がっていくという仮説をたててみた。そうしないと、エンドレスに交通側が対応して、結局まち全体が悪くなっていく危険性はないのか。
・ 筑波はトラフィック機能特化型で、沿道からのアクセスはガソリンスタンド以外は認め
ず、裏側からアクセスする構造になっているが、研究所を誘致する目的の地区で、景気悪化でロードサイドショップの立地が進み、沿道は出入り自由になっている。土地利用が変わるときに、沿道の受け方を考えていくべきだった。宇都宮で都心居住を推進していく場合に、大型の沿道開発の受け方をどうするか。沿道の土地利用が変わるのを契機にどうしていくかを考えるべき。
・ 青山通りで駐停車がないとまちが死ぬのか。来街者の内、路上駐車をしている割合は誤
差の範囲。それをほんとうに残さなければならないのだろうか。自由放任型で後追いでエネルギーや資本を無駄にし、浪費しているまちで良いのか。
・ 青山通りはいろいろな業務形態が複雑に配置されているので、駐車車両と土地利用の関
係あまりないだろう。もう少し単純な地域では、沿道利用の土地所有者が駐停車禁止でと困るというので停車帯をつくる。商店が張りついている地域では、商店用の駐車や荷さば
きで使うことが多い。郊外部の沿道土地利用者と駐車の関係は今回の調査ではわからない。
・ 青山通りのような性格の道路では、宅急便の車は一度停車したら、そのワンブロック全
体で集配せざるを得ない。
・ 広幅員道路でパーキングメーターで路上駐車を許しているのは、体系的な考え方に基づ
いているのか。
・ パーキングメーターは交通量が比較的少ない道路が対象だが、交通警察がやっているの
で、道路の計画目的外に使われている面があり、弊害もおきている。
・ 現道を拡幅している街路事業ができあがったところをみると、駐停車のスペースだけを
膨大な金をかけてつくっているのが現実。今後ともそういう方向でやっていくのか。膨大な金を使わないで、現道のまま放置してはいけないのか。
・ 2車線が完全に使えるようになっていれば良いが、 1.5mの停車帯だと1車線ちょっと
しか使えない。このような停車帯が有効かどうかは考えるべき。場所によっては荷物を扱うベイをつくる方がトラフィック機能はスムーズになるかもしれない。
・ 青山通りではタクシーの駐車台数がかなり多いが、客拾いで5分間ぐらいしか駐車せず
循環している。いいお客さんはみんなタクシーで来ているという可能性はある。
・ タクシーが公共交通手段かどうかというのはよくわからないが、どこでも止まり、客を
拾うという無秩序なやり方を許容するのか。100mに1カ所ずつぐらいにタクシーベイを整備して乗り降りを限定することもあり得る。
・ タクシーベイがあると良いが、お客さんのいるでは3台分のベイをつくってもその後ろ
にはみ出して並ぶ。夜間にバスがなくなると急激にタクシーが増える。ベイを設置するだけでコントロールしなかったら、路上停車の呼び水になってしまう懸念がある。
・ 交通警察が徹底的に路上駐車を取り締まりできるかどうかは疑問。物理的にアクセスで
きないように密植するか、ガードフェンスを立てるか、ソフトな形でやるか。交通に影響
がないような低交通量の住宅地で駐車違反にされるのは、近所の人が通報するからである。
それと同じことをすれば良いということで、警察庁が主要な大都市には駐車誘導条例、駐車正常条例などをつくらせているはず。行政側が職員を雇って取締を強化することによってトータルでコストが下がるならば、ソフトとして動くかもしれない。現在は労働力が余っているので労働集約型の施策として受け入れられるのではないか。
・ 東京都で実験をやっており、靖国通り、明治通り等の4路線を選び、停められては困る
交差点の舗装を工夫して、監視カメラをつけて警察と一緒に監視している。停まるとマイクで警告するというきめの細かな対応をしてトラフィック機能を確保しようとしている。イギリスのレッドゾーンシステムを我が国流にやってみたらどうかという実験。
・ それで公平性が保てるのか、停めてはけいないと言われた人が納得するのかがわからな
い。
・ ニューヨークでは、ジュリアーニ前市長が駐車場対策に力を入れて、市の財源としても
無視できないぐらいの駐車違反の収入が上がるほどきめ細やかに大量の人を投じて、相当よくなった。新規投資の余裕がないならば、大量に余っている人を活用した人海戦術でトラフィック機能を回復させるというのは妥当。
・ 駐停車をさせない道路を明確に分類できるのかどうかの知恵が出ない。明確に分けても
非合理と言われたくはない。交通取り締まりを民営化すれば解決するし、膨大な収入が出
て、地方自治体も赤字が解消できる。
・ 道路の構造改革ようなもの。バスと自転車と歩行者を中心に変えていこうとすると、車
はどうしても規制しなければならない。日本橋では1車線つぶして、歩道を倍にして並木を回復する議論をしたが、反対する人はあまりいなかった。車で来ると、どこかのデパートに寄って回遊せずに帰ってしまう。まちを回遊させるのが商店主の願い。東日本橋の問屋街は駐停車の時間のルールをつくっており、我慢すべきはするという方向に行くのではないか。
・ 合理的に既存ストックの価値が上がるんであれば、その価値に応じて害やマイナスを受
ける人を救済するような施策について議論をしていく必要がある。
・ そもそも都心の地価の高いところにただで停められると思うのが間違い。それは害では
なくて、外部不経済を解消してくれという説明にするのか、補償措置として駐車場もつくるというのが正しいことなのか。
・ 都心部でコンパクトにするためには、車の不自由さを高めたほうがいいと割り切れば、
外部不経済の解消という説明で良いのかもしれない。
・ コペンハーゲンの歩行者天国は10haくらいあるが、最初は1haで少しずつ拡大し、駐
車場を少しずつ知らない内に減らしている。それでだれも気がつかないし、文句も言わない。表に出すと、反対と言われるから黙ってそっとやる。逆に週末に行くと何かおもしろいことがあるからと、人が戻ってきている。
・ トラフィック機能を阻害することによる社会的なコストについての説明があると良い。
1時間かけて移動するところが45分で済むと、15分は大きなコストを払っていたことになる。そのトータルは膨大になる可能性がある。
・ 混雑している間の排出ガスだけでもすごい負荷だとということは簡単にわかる。
・ 今日いろいろな切り口をいただいたので、中身を掘り下げていきたい。
 
3.中間とりまとめの作成について
・ 今後の進め方としては、昨年度3月に中間取りまとめを行って以来約1年経過したこと
から、再度、第二次中間取りまとめというような形で取りまとめを行いたい。次回はその案を作成して報告する。
 

第16回市街地整備研究会議事概要

日 時:平成14年4月25日 15:00〜17:00
場 所:国土交通省 都市・地域整備局 局議室
 
・ 密集市街地全部が一様に密集しているのではなく、ここはひどいというところが非常に
密度高くある地区と、間があいている地区がある。そのような局所密集を指定して地元が一緒に移転する相談ができるような仕組みを強制的につくるとよい。みんなで移れば得になる制度をつくると、空地がまとまって生まれるので、次の展開にもつながるし、公園にもなる。
・ 神戸市郊外の私鉄駅前の外側に比較的良質な戸建て住宅地があり、住民が駅前には買い
物に行かずに、さらに外側の郊外スーパーへ行くようになっている。駅前に戻ってもらうためには駅前の再整備が必要だが、土日には駅前の店舗が皆閉まっているなど再開発のポテンシャルが感じられない。そこへ大手術をするような投資をする値打ちがあるかという疑問があり、使い物になる駅前と使い物にならない駅前という選別が必要になる。
・ 自動車依存からの脱却という意義はわかるが、そう簡単に自動車から離れられるだろう
か。ロードプライシングやTDM等の需要抑制手法も触れておく方がよい。
・ コンパクトな市街地のイメージ図はコンパクト化と複合化への努力が同時に表現され、
非常におもしろいと思うが、大都市では、アメーバー状の市街地の足が切れて、緑を介して次のコアができるというようにならないか。アメーバー状ではスプロールと大きく変わらないのではないか。
・ イギリスの『アーバンルネッサンス』という本で平面図で表現しているが、大都市の中
心と分節化された部分があり、その中にも高密と低密があって、コンパクトに玉状なっている。大都市圏の将来像のひとつに「平成の森」があるが、大都市圏にはもっと大きな河川が市街地の分節化に役立っている面がある。河川を利用したイメージにチャレンジしてもいいのではないか。例えば、東京都は郊外に展開する道路を環境道路として位置づけて公園その他をネットワーク化させて、大きな意味での環境軸をつくろうというビジョンを出しているが、そういう大きな自然インフラ、社会インフラをうまく組み込めないか。
・ 高密度市街地には、超高層の市街地から中層、あるいは良好な低層市街地まで、多様な
市街地があると言っている半面、超高層の下に緑があるという市街地のイメージパースは多様な市街地形態とはアンバランスな表現になっている。
・ 目指すべき将来市街地では、産業が重要となっているが、住工融合化の「工」という言
葉が理解できない。「工」だけが産業ではなくて、もっと幅広い産業が実は都市の中にあり、「複合機能化」という形で表現しておけばよい。超高層の市街地はソフトな産業などが入るのはかなり難しい。むしろ容積率300%ぐらいの市街地こそ新しい産業、ソフトな産業が根づく、そういう場所になるということをイギリスの『アーバンルネッサンス』という本は紹介している。大都市圏では800%の市街地だけではなくて、容積率300%の市街地も含めた多様な市街地の中に多様な産業が息づき、複合した市街地になるということを表現したほうがよい。
・ 高密度市街地の形成のために「行政側からの規制や強制的な誘導という手法」という表
現があるが、誘導というのは市場メカニズムを活用する手法であり、「強制的な誘導」というのはおかしい。行政の力、市場の力、コミュニティーの力、この3つの力の融合が必要である。市場の力を生かす。行政の力を使って、緑地空間の回復を実現する。市場の力だけではできない部分をコミュニティーの力を活用してつくっていく。
・ 東京をモデルにして、それに合致するイメージ図を描くと、本質的な議論と違うところ
に紛れ込む危険性がある。できるだけ本質的にねらっているところに絞って描きたいが、いろいろなはパターンを考えると収拾がつかなくなる。言いたいことは、日本の都市は、大都市も地方都市も中心部の密度が低過ぎ、空間的に広がり過ぎているところに大問題があって、多様な市街地をつくっていくにしても、トータルとしては密度を上げて平面的な広がりを小さくしていくのが一番望ましいということである。もう1つは、土地利用が純化型だったのをもっとミクスト型に変えていきたい。この2つのことを1つの図面でできる限りシンプルに説明したい。あるいは、もっと現実に即して、社会インフラも取り込んだ形で緑の軸を強化するなどの表現がよいのか。
・ シンプルなほうがよい。イギリスの『アーバンルネッサンス』は、平面表現で極めてシ
ンプルである。
・ イメージパースでは、どこが複合化しているか等が表現されるとよい。
・ 「まとまった空地を確保した低建ぺい高容積の優良な高密度市街地」と書かれているが、
公園の中に超高層が建っているという単純なものではなく、沿道の低層の建物があって街をつくるというような楽しく魅力的な視点がもっと書かれる必要がある。街区型の建物を建てようと計画しても、駐車場の入口やごみデポを沿道につくると、通りにならない。サービス動線とか楽しい道をみんなで合意していくシステムをワンクッション置いておかないと、でき上がるのは高密スラムになりかねない。箱の中へ囲い込むのではなく、まちの中の散策に導くという視点が欲しい。
・ 高容積のイメージパースにはコルビジェが描いた輝ける都市のイメージがそのまま出て
いるという気がする。これが21世紀の中心市街地のイメージとするとちょっと寂しい。今、多くの国々ではこういうタワープラザ型ではおかしいとされ、ストリートライフを楽しめるような街並みの連続性をつくる方向に向かっている。イラストは非常にわかりやすいが、固定観念をつくる面もあり、工夫が必要。日本では都市基盤整備が不十分だいう部分はあるかもしないが、東京、大阪、名古屋などは公共交通機関のストックが非常に充実してきている。しかしながら、基盤ストックに対応した建築や空間利用ができいない。地方都市でも中心部の区画整理をしたり、幹線道路が整備されているにもかかわらず、低密な市街地になっている。それを何とかしたいというモチーフがあるとして、高密度化というキーワードで全部表現するのはなかなか難しい。むしろ20世紀の後半につくり上げてきた都市基盤に対応した空間利用を21世紀に向けてどう実現していくのかというメッセージを出した方がよい。
・ 新しく大再開発をしていくだけでなく、良いストックを違う用途に転換することも重要。
例えば横浜のレンガ街のように都市空間ストックをもう1回リユースしていくということもコンパクト化の大事な観点である。
・ 木造密集市街地については、20世紀の負の遺産を解消していくという強いメッセージ
性とともに、土地の権利分割規制などにより負の遺産を再生産するような行為は絶対に抑えるという強いメッセージを出すと良い。
・ 前半の部分は非常にわかりやすくて、人間というのが前面に出たよい文章になっている
が、後半の整備の方策等では、急に姿を見せなくなる単語がたくさんある。例えば、コミュニティーの維持・創造、環境貢献、歴史の復元などがなくなり、前半とのギャップを感じる。高齢化対応や民意の反映に対してのインセンティブをメニューとして手厚くするなどを示すと前半との整合性がとれる。コロガシ方式という用語はイメージが悪いので連鎖型開発方式のみで良いのではないか。
・  III章の密集市街地の整備論は後片づけみたいな感じで書いてあるが、前向きに位置づ
けができないか。コンパクトな市街地というイメージの延長線上に密集市街地の整備が浮かび上がってくると全体がつながった感じがする。飛び再開発手法という言葉が2箇所にあるが、同じことなのか、違うことなのかわかりづらい。
・ 一連の流れの中でコンパクトな中で密集市街地を書こうとしているが、概念としてどう
やっても書き切れない。無理して一緒にせずにで、密集市街地はそれなりに取り込んで短中期的には処理する方法も必要ですねという形で枝分かれさせた書き方とした。
・ 防災環境軸は中・長期の課題であり、一つの流れの中で書いたほうが、後始末をします
という感じで片づけるのよりは良い。
・ コンパクトな市街地形態では、地域内における交通手段として、歩行系・自転車系、L
RTなどをどう扱うのか。整備手法の中で、税制は固定資産税の優遇だけが出ているが、今後のまちづくりというのは税制プラス金融という視点を書いておく必要がある。さらに生活再建という意味での社会福祉との連携や高齢者の財産管理などは密集市街地において大事である。
・ 様々な整備手法を組み合わせながら、飛び地や時間的なズレを認めたまちづくりを行う
場合に、セミパブリックあるいはパブリックな形で、一時的にだれかが持ってなければい
けない土地が必ずある。それがプロジェクトが動くか動かないかのキーポイントになるが、
そのマネジメントなどの視点も書くと良い。
・ あまり検討をしていない点は検討課題として残す。
・ 固定資産税の優遇は、所有者・開発者の側に立ったインセンティブだが、ユーザーやテ
ナントにとっては事業所税の軽減のインセンティブはかなり大きい。スケジュールをできるだけ確定させていくことが民間の資金をうまく引っ張ってくることにつながるので、時限ということが大事。
・ 密集市街地全部がきれいさっぱり解消することはあり得ないということを初めて明確に
しているが、メリハリというよりも明暗というような受け取られ方をする懸念がある。防災環境軸の表通りは明るくなるが、アンコは暗いところが残ってしまうような感じにとられるところがある。連鎖の結果、それなりによくなっているというような表現がもう少し強調されれば、防災環境軸をやることで、アンコがある程度ボトムアップする効果が見える。
・ 従来型の手法で木造密集市街地を片づけようとするとおそらく200年ぐらいかかると
いうイメージを持っており、長期というのはそれぐらいのイメージである。短期や中期というのは30年とか80年ぐらいのイメージを持っている。比較的短期で頑張るという手法であっても、全部の防災環境軸を整備し、すべての不燃化領域率を一定の比率以上に高めるためには30年〜50年かかると予想している。今のような低密度巨大都市をコンパクト化に是正するためには多分、50年、100年、200年のオーダーで考えていくべきという提案であるが、それを明示すると、そんな先の話かと思われるので、あえて触れてない。
・ 市街地のイメージをどう捉えるかに関わる。防災環境軸は負の遺産だと言われている地
域の将来の姿で、それ以上のことは多分できない。それを例えば容積率200%、300%の市街地として設定するかどうかという話である。それをもう一回つくり直すということはあり得ない。
・ 市街地形成の意義・効果の部分で、自動車依存から脱却した魅力あるアーバンライフな
どがあるが、イメージパースには鉄道の駅などが見えない。そういうのが少し見えると空間のあり方がわかる。緑が多いというのは理解できるが、コミュニティーの中心がどこにあるかというのが見えない。すこし郊外の方では、超高層が二、三棟建てばいいというイメージかもしれない。郊外で育った子どもが家を持つときに駅直結の高層居住がインセンティブを持つことになる。田舎で暮らしていた人が選ぶにはまだ時間がかかる。
・ 第2回中間取りまとめとしては、まちづくり上の課題を限定的に書くか、総論として華
々しく書くか。第1回中間とりまとめで書いたことは省略するというのなら、それでも良いが、最初の出だしのところで、将来像の課題はこれだけかということになる。歴史的に見て都市がどんどん拡大・膨張していたところが、初めてドラスチックに既成市街地をなんとかするというチャンスが訪れたということを冒頭に書いておくと良い。ようやくそういうことが都市計画でさわれるようになった時代に入ったというような言い方が最初にあってもいい。第2回中間取りまとめだからスキップしようというなら、それはそれでいいから、そこの整理だけはつけておく。
・ 都市構造をできるだけコンパクト化・複合化することに異論は出ていないが、具体の空
間像、特に建物の像、敷地像、あるいは道路と沿道との関係などについてはまだ十分議論されていない。今、世界各国は街なかでどのように居住するかをテーマに、ニューアーバニズム、アーバンビレッジ、アーバンルネッサンスなどいろんな流れがあるが、それらと比べて日本の特性、社会・経済的背景、あるいは国民性みたいなものを考えた上で、どんな形がいいのか。
・ デュアルシティーという言葉をよく使っているが、日本の都市は二層性からなっている。
東京をベースに考えると、世界に対する顔の市街地をつくる上では、市場メカニズムの中でつくられてくるものが多大にあるだろう。それとは別に、木造密集市街地など市場メカニズムでは対応できない部分がかなりあって、コミュニティーに期待し続けながらどう支援していくかが重要。何も手をつけないと市場メカニズムで動く市街地とそうでない市街地の間に圧倒的な差別化が起こる可能性があり、行政的には差別化をできるだけ起こさないように努力をしていく必要がある。そういう意味では、市場メカニズムをできるだけ動かすと同時に、大きな差別化が生じないように密集市街地のところの手当てをしていく。ここで言うCタイプの市街地を20世紀のある意味での歴史的な市街地として残さざるを得ない面があるが、その部分が圧倒的な非対称を生じないように何らかの手当てをしていく。その中間に容積率300%とか250%の市街地があって、そこに新しい産業が入っていく。
・ ニューアーバニズムやアーバンルネッサンスにしても、コンパクトな市街地の重要な概
念の1つとして、近隣性とか、ヒューマンスケールとか、コミュニティーというのが必ず出てくる。そういうものを成り立たせるにはある程度の密度が必要だが、その上限を計画論として意識すべきか、密度は高ければ高いほど良いのか。
・ 例えば、ヨーロッパの都心の容積率は300〜350%であり、世界共通の市街地像を
イメージした密度というのがあるのだろう。日本は権利が非常に小さいから、それより若干抑えて250%ぐらいじゃないかと考えている。
・ ドイツが戦後、都市計画を進めるイメージの図をつくったが、都心部に高密度な市街地
があるのを分節化して郊外に低密度〜中密度の市街地を形成するという方向であった。日本の場合は、現状でも昼間人口の密度分布と夜間人口の密度分布がものすごく極端に分かれていることが非常に大きな問題になっており、建物だけでなく、どういう居住形態になるのかというのがこの議論の背後に控えていると理解したほうがいい。
・ 本日の議論に基づいて、リライトする。次回は、ブラッシュアップしたもので議論をし
ていただく。今回はできるだけ強烈に主張したいことだけ主張するという形で書き、意図的に漏らすべきものを積極的に漏らして書いている。ご指摘の点とどう調和させるかについては検討していく。
・ 例えば、山手線は 1.5km間隔で駅があるが、郊外は2〜4km間隔になり、徒歩圏として
コアをつくると郊外は分節化するはず。コペンハーゲンのフィンガープランは明らかにそれをねらって、3つ駅ぐらいで1つのニュータウンを形成し、次のニュータウンとは離してある。ここでは多分そういう絵にはならないが、ある程度複雑な表現でないとと書き切れないだろう。
・ 高密度型の中にもコミュニティーが醸成されるべきという概念を同時にあらわそうとし
て複雑になってしまっている。