資源・エネルギー循環の形成
- 地球温暖化の顕在化や世界的な資源・エネルギー需給のひつ迫が懸念され、循環型社会への転換、低炭素社会の構築が求められており、従来の下水を排除・処理する一過性のシステムから、集めた物質等を資源・エネルギーとして活用・再生する循環型システムへと転換することが必要
- 下水道は、下水や汚泥の処理に伴い大量の温室効果ガスを排出している一方、大きなエネルギーポテンシャルを有しており、京都議定書目標達成計画(平成20年3月閣議決定)に、対策を行った場合と行わなかった場合とを比較し、2010年度で216万トン(約3割)の温室効果ガスの削減を位置付け(省エネ・新エネ対策90万トン、下水汚泥の高温焼却126万トン)
- 下水汚泥の高温焼却、下水道施設における省エネ対策、汚泥の燃料化や太陽光・小水力発電の導入等の新エネルギー対策に関し、新技術の普及・促進を含めた具体的な取組を支援
- また、下水に含まれる貴重な資源であるリンについては、世界的なリン資源のひっ迫等を背景に国内の肥料価格が上昇していることから、下水や下水汚泥からのリン等の回収、活用が求められており、農水省等関係省庁と連携し、下水汚泥等からリンを回収し、活用する取組を推進
下水道における資源・エネルギー利用の現状
- 下水道は、都市活動から発生する下水や熱を収集しており、大きな資源・エネルギーポテンシャルを保有しているが、利用状況は低い水準にとどまっている。
下水道における資源・エネルギー利用の現状
下水汚泥の利用状況
- 下水汚泥のマテリアル利用は着実に進展し、約7割に至っているものの、汚泥中の有機物の資源・エネルギーとしての利用は一部に限られている。
- 下水道には我が国のリンの輸入量の14%が流入しているが、コンポストとしての利用の1割に限られている。
マテリアル利用の推移
汚泥中のバイオマスの利用(2006年度)
リン輸入量の利用状況
循環型社会の形成に向けた今後の下水道のあり方
- 下水道だけでなく、他分野・他事業と連携し、地域に資源・エネルギーを供給するなど、関係主体と連携・協働した取り組みを推進
下水道分野における温室効果ガス削減可能量
10年後、20年後の温室効果ガス削減量を算出。今後、温室効果ガス削減対策を行わなかった場合と比較して、
- 2017年度に約4割削減(約340万tーCO2の削減)
- 2027年度に約5割削減(約410万t-CO2の削減)
※一定の想定のもと現状の技術レベルで温室効果ガス削減可能量を試算
(「下水道における地球温暖化防止対策委員会」の試算による)
下水道分野における温室効果ガス削減可能量
具体的な取り組みと効果
@下水道施設における省エネルギー対策
・生物処理に必要な空気を送る散気装置を、微細な気泡を発生させるものとすることで、酸素が溶解しやすくなり、処理場で最も多くの電力を消費する散気装置の消費電力を約2〜3割削減可能。
散気装置の消費電力削減例
A下水道における新エネルギー対策
下水道における新エネルギー対策イメージ
・交通部局と連携し、精製したバイオガスを天然ガス自動車の燃料として供給 (神戸市)
精製したバイオガスを燃料とする天然ガス自動車
・電力会社と連携し、炭化した汚泥燃料を石炭代替燃料として火力発電所で発電 (東京都→常磐共同火力発電所)
石炭代替燃料として火力発電所で発電(東京都→常磐共同火力発電所)
・下水処理水の放流落差を利用した小水力発電や、下水道施設の敷地を利用した太陽光発電や風力発電
太陽光発電、風力発電、小水力発電
B一酸化二窒素(N2O)削減対策
流動焼却炉において燃焼の高度化(燃焼温度を800℃から850℃に上げる)により、CO2の310倍の温室効果を有するN2Oを約6割削減
流動焼却炉の対策前と対策後の比較