「平成8年度観光の状況に関する年次報告」及び「平成9年度において講じようとする観光政策」(二つを併せて「観光白書」と称している。)は、観光基本法第5条に基づき,政府が毎年国会に提出しているものであり,9年版観光白書の概要は次のとおりである。
I 観光の状況 |
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1)平成8年,経済の状況は緩やかな回復基調をたどり,国内総支出は年間で前年比 3.6%増,民間最終消費支出は 2.8%増となった。一方,消費者物価は安定的に推移し,8年の消費者物価は前年比 0.0%となった。
家計消費については,全国全世帯の消費支出は対前年比 0.1%減となった。支出内訳を見ると, 近年, 旅行関連支出は減少傾向であったが,8年は対前年1.3%増の14万 8,130円となっている。
2)余暇活動に関係する自由時間に関しては,年次有給休暇の取得,完全週休二日制等労働時間の短縮,学校週五日制,ゆとりある休暇の拡充を推進しており,総実労働時間は近年減少傾向で推移してきているが,8年は 1,919時間と前年を10時間上回り足踏みが見られた。また,7年12月末現在で,完全週休二日制の適用を受ける労働者の割合は57.8%(対前年比 3.9%増)と年々着実に増加している。
3)国民の自由時間に対する意識を総理府の「国民生活に関する世論調査(8年7月)」で見ると,今後,生活に力を入れたい分野として「レジャー・余暇生活」を挙げる者(36.6 %)が最も多く,昭和58年以来第一位を占め続けており,国民の余暇志向の根強さが伺える(住生活25. 0 %, 食生活15.5%)。
1)8年の国内観光は,緩やかな回復基調をたどる経済状況の下,前半はここ数年の停滞傾向からやや持ち直しの傾向が出てきたものの後半は病原性大腸菌O−157 による食中毒の集団発生等により停滞が続き,宿泊観光レクリエーションの量は,前年と同程度であった。
新幹線は前年が阪神・淡路大震災の影響で減少したが,8年は年間で 7.6%増となった。また,航空も,通年で 3.2%増と3年連続の増加となった。
2)阪神・淡路大震災による被害の復旧状況及び観光の状況
観光施設では,博物館・美術館は全て現状に回復している。そのほか,劇場や遊園地などの民間の観光関係施設も復旧が進められ,主要観光施設の約9割が営業を再開している。また,宿泊施設も約9割が営業を再開している。
交通施設では,鉄道が7年8月にすべて復旧し,道路についても8年9月に阪神高速3号線の供用をもって全て復旧した。また,神戸港のフェリーバースも8年7月に完全復旧した。
阪神・淡路地域は,従来より歴史的建造物や洋風文化等多様な観光資源を背景に我が国でも有数の国際観光都市神戸を中心とした一大観光地域を形成している。主要観光施設がほとんど営業を再開している状況においても,入込み客数は徐々に回復しているものの8年12月は震災前の85%であり,なお,震災の影響が残っている。
政府においても関係会議をできる限り神戸で開催するなど努めるとともに,地元が行う観光キャンペーンやイベントに協力している。
8年の日本人海外旅行者数は,前年比 140万人(9.1%)増の 1,669万人と史上最高を記録した。一方,訪日外国人旅行者数は,前年比49万人(14.7%)増の384万人となった(図1)。
1)国民の海外旅行
旅行者に占める比率は依然として男性(54.5%, 909万人) が女性(45.5%,760万人) を上回っているが,伸び率では女性が男性を上回っている。男性の場合は40歳代が 213万人(男性全体の23.4%)で最も多いのに対し,女性の場合は20歳代が 290万人(女性全体の38.1%)で最も多い。
目的別では,観光を目的とした海外旅行が 1,377万人で全体の82.5%を占め、旅行先は,アメリカ(518万人) ,香港(151万人) ,韓国(144万人)の順となっており、平均旅行日数は 7.9日でここ数年,8日前後で推移している(表2)。
2)外国人旅行者の訪日
訪日外国人旅行者数を国籍・地域別に見ると,韓国が99万人と最も多く,以下,台湾72万人,アメリカ59万人の順となっている。州別構成比は,アジア州61.0%,北アメリカ州17.8%,ヨーロッパ州16.0%とアジア州が主流となっており、平均滞在日数は,8年は 8.4日で近年減少傾向にある(4年は11.2日) 。
3)国際旅客輸送状況
我が国と諸外国との間の国際旅客輸送は,大半が航空輸送により行われており,8年の日本人海外旅行者,入国外国人の99.0%が航空機を利用している。
航空機を利用して我が国から出国した日本人海外旅行者及び入国外国人の78.1%が成田空港及び関西国際空港からの発着である。関西国際空港の利用者は 502万人と5年の伊丹空港の実績に比べ 1.9倍に増加している。
4)国際旅行収支
8年の我が国の国際旅行収支(旅客運賃を含む。)は,受取が 6,275億円(前年比35.9%増),支払は5兆767 億円(同14.7%増)で,収支は赤字が前年に比べ 4,859億円増の4兆4,491 億円となった。
この支払いは,相手国においては国内需要として経済に寄与しており,また,我が国における国際旅行収支の赤字は,国際収支全体のバランス改善につながっている。
II 観光政策審議会答申を受けての取組 |
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7年6月の観光政策審議会答申「今後の観光政策の基本的な方向について」において,観光は21世紀の我が国経済社会の発展の核となり得る重要性を有するものとして位置付けられており,観光に対する期待の高まりに対応して訪日外国人旅行者の増加,国内観光の振興,ゆとりある休暇の実現,障害者・高齢者などの人々の旅行の促進等について提言されており、同答申の内容を具体化するための施策を推進していくことが重要となっている。
訪日外国人旅行者の増加については,「ウェルカムプラン21(訪日観光交流倍増計画)」に関する提言を取りまとめ,その具体化を推進するとともに,円高等により海外旅行と同一市場化が進んでいる国内旅行の振興については,その促進に向けた諸施策を国内観光産業全体の取組により具体化していくため,国内観光促進協議会を設置して検討を進めている。
1)「ウェルカムプラン21(訪日観光交流倍増計画)」に関する提言の取りまとめの背景
国際観光交流は,他国の社会や生活をよりよく理解できる機会を提供し,国際相互理解の増進に大きく貢献することから,現在低い水準にある外国人の訪日旅行を促進することは,対日理解の増進を通じた我が国のイメージ形成の観点からも不可欠である。
世界的な経済成長による所得の拡大等により世界の旅行者数は増加の一途をたどっている中,日本人海外旅行者は順調に推移しているが,訪日外国人旅行者数はここ数年横ばい又は微減の状態にあり(図2),訪問地は東京,大阪に集中している。このため,地方の観光圏を活性化して外国人観光客の誘致方策の充実を図り,国際観光交流を通じた地域の国際化を推進するため,8年1月「観光交流による地域国際化に関する研究会」を発足させ,4月に「ウェルカムプラン21」に関する提言が取りまとめられた。
2)提言の概要
本提言に盛り込まれた施策については,関係省庁,地方公共団体,観光産業等関係者が連携し,その実施を図っていくことにより,国際観光交流の拡大を通じた国際相互理解の増進と地域の活性化,国際化を図っていく必要がある。
このための施策の一つとして,海外における宣伝,外国人観光旅客の国内における旅行に要する費用の低廉化,接遇の向上等,来訪地域の多様化を促進するための各般の施策を総合的に講じることにより国際観光の振興を図ることとする「外国人観光旅客の来訪地域の多様化の促進による国際観光の振興に関する法律案」を今国会に提出した。
1)背 景
国内観光は,我が国の様々な地域の文化,伝統,生活にふれるよい機会であり,また,地域の活性化につながるなど様々な意義を有している。しかし,国内旅行は,円高,国外航空路線網の充実等により海外旅行との同一市場化が進行する中,割高な価格水準,ニーズの多様化に対応していないサービス体系等構造的問題に起因した低迷状態にあり,その振興対策が重要な課題となっている。
2)国内観光促進協議会等による国内観光の振興等
観光政策審議会答申においては,国内観光振興のため,低価格と価格・サービス体系の多様化による国内旅行システムの変革が必要と指摘している。
このため,7年9月,国内観光産業全体の総合的取組により具体化していくことを目的とし,国や旅行業者等の観光関係事業者からなる国内観光促進協議会を設置し,答申を受けた行動計画の策定・推進に向けた協議・検討や施策テーマごとにワーキンググループ(高齢者・障害者旅行促進WG,滞在型・拠点型旅行促進WG,地域イベント等創出・地域観光振興計画WG,グリーンツーリズムWG,エコツーリズムWG,外客受入広域モデルルートWG,情報システムWG,国内旅行低廉化WG)を設置するとともに,必要に応じてモデル事業実施のために地方公共団体関係者を含めた地域検討会を置き,施策の具体化を図るために必要な基本的事項と総合的な推進方策の協議・検討を行っている。各ワーキンググループは,8年8月に報告書を作成し,協議会に報告したが,今後も引き続き,モデル事業実施のための検討を更に深度化して進めていく。
なお,同答申において「一部の祝日の曜日指定化による連休の創出」等ゆとりある休暇の実現が提言されており,その実現に積極的な民間団体が組織する祝日三連休化推進会議が8年11月に設立された。
III 観光に関して講じた施策 |
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政府は8年度においても前年度に引き続き,国際観光の振興,観光資源の保全・保護,公的観光レクリエーション地区・施設等の整備,国内観光の安全の確保,観光旅行者の保護及びサービスの向上等を図ってきたが,これらのうち主な施策は,次のとおりである。
1)国際観光振興会は,外国人旅行者の訪日促進のため,海外での観光展への参加・協力,各国旅行業者,有力紙,テレビ等を通じた広報活動等を行ったほか,7年から開始したインターネットを活用した英文による観光情報の提供を実施しており,世界各国から月平均70万件のアクセスがある。
また,在外公館,日本貿易振興会の広報活動や日本放送協会の国際放送により対日理解の増進を図った。
2)国内における国際交流の推進対策として,外国人旅行者向けのトラベルフォン等の情報提供体制の整備・充実,「i」案内所の整備・充実(8年12月現在89か所),国際観光モデル地区の整備等を推進した。
コンベンションの振興を図るため,いわゆるコンベンション法に基づき,45都市を「国際会議観光都市」として認定し,国際観光振興会に設置したセンターによる情報の提供,諸外国における宣伝,誘致活動への支援等を行うとともに,寄付金の募集,交付金の交付等により受入れ体制の整備を進めた。
3)出入国管理,検疫,通関等において,手続の円滑化を進めた。
4)海外旅行者の増加に伴い,病気,交通事故及び犯罪等に遭遇する日本人が増加しているため,外務省海外安全相談センター,国際観光振興会等により,パンフレット,ビデオ等を作成・配付し,広報・啓発に努めた。
5)観光関係国際機関への協力,開発途上国に対する国際観光開発促進協力調査等の調査,専門家派遣,研修員の受入れ等の支援,協力を行った。
1)国立公園等自然公園の整備,森林の保全管理,河川,湖沼及び海洋環境の保全,都市における緑地の保全,温泉の保護,野生生物の保護等を推進し,自然とのふれあいの要請にこたえるとともに,自然環境の保全を図った。
2)国宝・重要文化財等の文化財の保存・活用,無形文化財の伝承者養成等を進めるとともに,新たな文化財保護の制度として,文化財登録制度を設けること等を内容とする文化財保護法の一部改正(8年10月施行)が行われ,12月までに 118件の文化財建造物が登録された。
3)8年12月,メキシコのメリダで開催された世界遺産委員会において,我が国推薦の「原爆ドーム」,「厳島神社」が世界遺産一覧表への記載が決定された。また,自然遺産である「屋久島」,「白神山地」については管理計画に基づき適正な保護・管理を行うとともに,屋久島では遺産地域の管理等の拠点となるセンターの供用を開始した。
4)第32回観光週間(8月1日〜7日) ,みどりの週間(4月23日〜29日)等を通じ,観光に関する正しい観念の普及と観光資源の保全等について,広報・啓発等を行った。
1)レクリエーション地区・施設の現況と整備
各省庁においては, 1宿泊を中心とするレクリエーション地区・施設(オートキャンプ場,家族旅行村,国民休暇村等), 2農山漁村地域におけるレクリエーション地区・施設(″リフレッシュふるさと″推進モデル事業地区,「農山漁村でゆとりある休暇を」推進事業等), 3森林・公園等を活用したレクリエーション地区・施設(保健保安林,自然公園核心地域総合整備,長距離自然歩道等), 4親水レリエーション施設(河川周辺レクリエーション施設,マリーナ,フィッシャリーナ等)を総合的・広域的に整備した。
2)民間活力の活用による総合保養地域の整備
「総合保養地域整備法」に基づき整備が進められ,宮崎シーガイア,志摩スペイン村等多数のプロジェクトが供用され地域の活性化に貢献している。リゾート整備を長期的な観点の下に着実に整備を進めるため,アドバイザーの派遣等を行っている。
1)博物館,美術館等の整備・充実を図り,所蔵品を収集,保管,展示して一般の利用に供するとともに,解説書の発行や各種講座等を開催した。
2)国立競技場等の体育・スポーツ施設や青年の家等の青少年教育施設の整備を進めた。また,パラグライダー等スカイレジャーの進展に対応し,施設の整備等を行った。
3)都市,農山漁村,水辺,道路について景観の整備を促進し,景観の向上と魅力あるまちづくり等を進めた。
4)公的観光施設のほか,民間等により,レジャーランド,オートキャンプ場,一般キャンプ場,スキー場,マリーナ,クアハウス,ゴルフ場,観光牧場等様々な観光レクリーション施設が整備運営されている。
1)旅館業の健全な発展を図るとともに利用者の需要の高度化・多様化に対応したサービスの提供を促進し,公衆衛生及び国民生活の向上を目的として,旅館業法の一部が8年の通常国会で改正された。
2)一定規模のホテル・旅館等について,近代化を推進するため環境衛生金融公庫において設備資金等の融資を行うとともに,「国際観光ホテル整備法」に基づく登録ホテル・旅館については,政府系金融機関による融資及び税制によって施設整備を支援した。
3)宿泊施設やサービス・料理の面で高齢者が利用しやすい旅館・ホテルをシルバースターとして登録する「シルバースター登録制度」については,9年3月末現在で 409軒の旅館・ホテルが認定登録されている。
また,国民が利用しやすいように低廉であり,宿泊料金と食事料金が区分されているなどの基準に合致する旅館をナイス・インとして指定し,その普及,指導に当たっているが,8年12月現在で 100軒の旅館が指定されている。
4)公的施設等として,国民宿舎,ユースホステル等の運営,整備を行った。
1)鉄道については,輸送サービスの改善に加え,整備新幹線は既に着工している3線5区間の整備を着実に推進した。主要幹線鉄道では,8年3月に,山陰線宮福線(園部・天橋立間)の高速化事業が開業した。鉄道施設の耐震性の向上については,鉄道施設耐震構造検討委員会の提言を踏まえ,所要の工事を推進している。
2)道路については,高規格幹線道路,地域高規格道路,一般国道及び地方道,有料道路の整備・建設を促進し,また,郷土資料館等と休憩施設を一体的に整備する「道の駅」の整備や,パーキングエリアと公園との一体的整備を進めた。
高速自動車国道は,8年11月の東北横断自動車道津川〜安田の開通等により供用延長が 6,000kmを超えた。
阪神・淡路大震災を踏まえ,高速自動車国道等の緊急度の高い橋梁について,橋脚等の補強対策を概成させる震災対策緊急橋梁補強事業を推進した。
3)空港の整備については,航空ネットワークの充実を図るため,第7次空港整備五箇年計画に基づき,航空ネットワークの拠点となる大都市圏における拠点空港の整備を最優先課題として推進するとともに,一般空港等の滑走路の新設・延長等を図ったほか,ヘリポート・コミューター空港の整備を行った。9年3月には東京国際空港の新C滑走路が供用された。
4)海上交通については,船舶整備公団との共有建造方式による国内旅客船の整備を進めるとともに,旅客船ターミナル等の整備を行った。
5)環境衛生施設については,水道,公共下水道,流域下水道,特定環境保全公共下水道等の整備を行った。
1)鉄道,道路,航空及び海上交通の交通安全対策を推進した。
鉄道事故の防止を図るため,列車集中制御装置の整備等を推進するとともに,乗務員等の教育訓練の充実,厳正な服務の徹底及び適正な運行管理を指導した。
道路については,交通事故の防止のため信号機等交通安全施設の整備,交差点の改良等を図った。また,交通渋滞,旅行時間などの道路交通情報を車載装置を通じてドライバーに提供する道路交通情報通信システムの運用を開始した。このほか,交通安全思想の高揚,自動車運送事業者における適正な運行管理の確保及び自動車の点検・整備の励行等により,道路交通事故の防止を図った。
航空における安全の確保のため,航空保安施設の整備,航空機の運航の安全の確保,ハイジャック等に対する航空保安対策を行った。
海上交通の安全を確保するため,海事関係法令の励行,旅客船の運航管理制度の徹底,各種船舶への海難防止指導等により事故防止に努めた。
2)宿泊施設等における安全対策を推進した。旅館,ホテル等の防火対策として,建築基準法,消防法による指導,防火基準適合表示制度の推進等を図った。
また,ホテル・旅館,飲食店等食品関係営業者について,食品衛生指導員の指導,食品衛生法に基づく管理運営基準の遵守の徹底を図った。
3)台風や集中豪雨などの気象条件により土砂災害の発生しやすい環境にある山地流域については,砂防工事を実施するとともに,土砂災害危険箇所の周知,点検,警戒避難体制の確立等総合的な土砂災害対策を推進した。
4)台風・集中豪雨雪対策等観測予報体制の強化,地震・火山対策の強化及び海洋・海上気象業務の強化を行い,観測体制の充実及び適切な予報・警報情報の提供に努めた。
阪神・淡路大震災の経験にかんがみ,防災上より有効な震度情報とするため,震度5と6をそれぞれ2階級に分割し、8年10月から発表を開始した。
5)山岳遭難,水難防止を図るため,救助体制の充実,安全指導等諸施策を推進した。そのほか,観光旅行者に対し災害危険箇所及び避難地・避難路などについて周知徹底を図るよう地方公共団体に対し指導を行うなど,避難体制の確立に努めた。
1)旅行業等に係る施策
2)価格・サービスの多様化等
また、運賃制度については,従来から運賃の50%までの営業割引等の設定・変更について届出制としているが,9年1月から,認可された上限運賃の範囲内であれば,路線別,季節別,曜日別などの多様な運賃の設定・変更を報告により行えることとなった。
3)観光情報提供体制の整備等
4)障害者等の円滑な移動の確保
公共交通機関,宿泊施設,文化施設その他関係施設において,高齢者・障害者等の利用の円滑化のためエレベーター等の施設の整備改善,運賃の割引措置等を講じた。
また,宿泊施設については,高齢者・障害者の利用に配慮した施設整備に対し,中小企業金融公庫による特利融資制度により支援した。
1)近年,観光振興の施策としては,個別観光資源の保護や観光関係施設を整備するだけでなく,地域全体の景観や雰囲気を含めた広域的かつ総合的な施策を推進することが重要になってきており,地方公共団体の主導により魅力あるふるさとづくり,活力あるまちづくりの有力な手段として進められている。
地方公共団体は,自然環境の保全,文化財の保護,観光地の美化等を進めるとともに,国の支援・協力を受け,また独自に,観光施設,観光基盤の整備を行っており,観光地のトイレ,情報センター,駐車場等の整備も進めている。
さらに,全国各地で特色あるイベントやキャンペーンを実施し,観光宣伝に努めており,物産展やジャパンエキスポの開催等を進めている。
また,地元の観光従事者の接遇の向上や観光バスの整備等受け入れ体制の充実にも努めている。
2)地方公共団体,国,観光関係事業者の連携による観光の振興が強力に進められている。
「90年代観光振興行動計画(TAP 90's)」(昭和63年策定)に基づき,観光立県推進運動を推進し,8年度には,10月に沖縄県で観光立県推進地方会議を開催し,政府の緊急課題となっている沖縄振興の重要な柱である観光振興方策について,具体的な提言を報告書として取りまとめられた。
6月には,盛岡市及び滝沢村において「第4回地域伝統芸能全国フェスティバル」を開催した。
また,地域と観光交通関連産業が連携して観光の振興と交通基盤の整備・運営を一体的・計画的に推進する観点から新規施策として「観光交通地域振興アクションプラン」の策定に着手した。8年度は,北陸地域(富山県,石川県,福井県)及び四国地域(徳島県,香川県,愛媛県,高知県)の2地域を対象地域として実施した。
そのほか,送客側と受入側の地方公共団体や観光産業とが協力し,首都圏の消費者をターゲットに新しい国内旅行の提案,旅についての総合的な情報の発信と交流等を行う「旅フェア,96」が開催された。