目 次
【平成10年度観光の状況に関する年次報告】
【観光に関して講じた施策】
【平成11年度において講じようとする観光政策】
「平成10年度観光の状況に関する年次報告」は、平成10年度の観光の状況及び政府が観光に関して講じた施策の報告であり、「平成11年度において講じようとする観光政策」は、平成10年度における観光の状況を考慮して、政府が平成11年度において講じようとする観光政策を明らかにしたものである。これら2つを併せて「観光白書」と通称されている。政府は、観光基本法第5条の規定に基づき、いわゆる「観光白書」を国会に提出することとなっている。
【平成10年度観光の状況に関する年次報告】
(1) 平成10年、我が国経済は、9年10〜12月期から10年7〜9月期にかけて4四半期連続でマイナス成長を記録し、これまでにない景気の低迷がみられた。10年10〜12月期も景気の低迷状態が長引き、引き続き極めて厳しい状況であったが、幾分かの改善を示す動きも見られた。また、個人消費も、家計の経済の先行きに対する不透明感もあって、低調な動きとなっており、家計収入が減少していることに加え、消費者の財布のひもが依然として固いことから低調に推移し、国内総支出は年間で前年比 2.8%減、民間最終消費支出は同 1.1%減となった。一方、消費者物価は安定的に推移し、10年の消費者物価の対前年上昇率は 0.7%となった。
家計消費については、全国全世帯の消費支出は対前年比 2.2%減となった。また、旅行関連支出(宿泊費、交通費、旅行かばん)を見ると、10年は対前年2.7%減の14万 9,903円となっている。
(2) 余暇活動と密接に関係する自由時間に関しては、年次有給休暇の取得、完全週休二日制等労働時間の短縮、学校週5日制等、ゆとりある休暇の拡充を推進しているところであり、総実労働時間は近年減少傾向で推移してきており、10年は 1,879時間と前年より21時間減少した。また、9年12月末現在で、完全週休二日制の適用を受ける労働者の割合は60.9%(対前年比 2.7%増)であり、年々着実に増加している。
(3) 現在の国民の「レジャー・余暇生活」についての意識を見ると、今後の生活に重点を置きたい分野として「レジャー・余暇生活」を挙げる者(35.1%)が最も多く、昭和58年以来連続して第一位を占め続けており、国民の余暇活動に関する志向の根強さがうかがえる(住生活23.7%,食生活19.3%)(表1−1)。
(1) 10年の国内観光は、海外旅行が景気の低迷等により久々に減少する中、宿泊・観光レクリエーションの回数及び宿泊数は、ほぼ前年並みとなり、また、消費総額は昨年に引き続き前年を上回った。
(2) 阪神・淡路地域の観光の状況
平成7年1月に発生した阪神・淡路大震災により、観光面においても多大な影響が出たが、鉄道、道路等の交通施設、文化財、博物館・美術館は、一部を除いて全て現状に回復した。また、劇場や遊園地などの民間の観光関係施設、旅館等の主要宿泊施設も、そのほとんどが営業を再開している。
その結果、神戸市の調査によれば、10年における神戸市の観光入込客数は、震災前の6年の入込客数( 2,440万人)を超える 2,528万人となっている。
(1) 国民の海外旅行
10年の日本人海外旅行者数は、前年比99万人(5.9%)減の 1,581万人であり、長引く景気の低迷等を背景に、3年以来の減少となった(図1−1)。
主な旅行先の上位5位は、アメリカ( 495万人)、韓国( 190万人)、中国( 100万人)、タイ(78万人)、台湾(77万人) となっている。
目的別では、観光を目的とした海外旅行が 1,297万人で全体の82.1%を占めている。
性別構成を見ると、男性(53.7%、 849万人)が女性(46.3%、 732万人) を上回っているが、伸び率の推移を見ると、女性が男性を上回っている。年齢階層別では、男女共に20〜40歳代が6割以上を占め、性別では、男性の場合は30歳代が、女性の場合は20歳代がそれぞれ最も多い(図1−2、3)。
海外旅行者の平均旅行日数は 8.4日となっており、ここ数年、8日程度で推移している。
(2) 外国人旅行者の訪日
10年の訪日外国人旅行者数は、前年比11万人(2.7%) 減の 411万人となった(図1−1)。
訪日外国人旅行者数を国籍・地域別に見ると、台湾が84万人と最も多く、以下、韓国72万人、アメリカ67万人、イギリス(香港)30万人、中国27万人の順となっている。対前年伸び率では、中国(香港)(74.6%増)、イギリス(香港)(29.0%増)、オーストラリア(21.9%増)の増加が目立っている。
州別構成比は、アジア州54.5%、ヨーロッパ州21.1%、北アメリカ州19.2%の順となっており、アジア州が主流となっている(図1−4)。
訪日外国人の平均滞在日数は、 8.8日となっており、回復傾向にある。
訪日外国人の主な訪問地は、東京、大阪、京都、名古屋の順となっている。総じて、アジア地域からの旅行者にはテーマパークの人気が高く、また、韓国、台湾を中心として、九州地域の人気が高い。
(3) 国際旅客輸送状況
10年の日本人海外旅行者、入国外国人の国際旅客輸送は、98.9%が航空輸送により行われている。
航空機を利用して我が国から出国した日本人海外旅行者及び入国外国人の約78.1%が成田空港及び関西国際空港からの発着である。
(4) 国際旅行収支
10年の我が国の国際旅行収支(旅客運賃を含む。)は、受取が 7,409億円(前年比 0.8%減)、支払は4兆 6,131億円(同 7.7%減)で、収支の赤字は前年に比べ 3,794億円減の3兆 8,722億円となった。
II 景気低迷下における我が国の観光レクリエーションの動向及びそれに対する対応
(1) 最近の日本人の国内観光の動向
ア 国内旅行取扱額の減少
主要旅行業者50社の10年の国内旅行取扱額が前年比で減少となった要因としては、法人の団体旅行の落込み、低価格旅行商品の販売競争の激化等が考えられる。
イ 「安・近・短」旅行と「安・遠・短」旅行の傾向の並存
国民の宿泊旅行については、従来より、いわゆる「安(旅行商品の低廉化)・近(近距離への旅行)・短(短い日数の旅行)」の傾向が指摘されてきたが、10年には、このような傾向と並び、北海道、沖縄方面を中心とした「安・遠(遠距離への旅行)・短」の旅行が人気を集めた。
ウ 旅行商品の低廉化の進展
長引く景気の低迷状況の中で、従来、海外旅行に対して割高感が指摘されていた国内旅行商品について、消費者の低価格傾向に対応して、観光関連産業によって低価格の商品開発への取組がなされたこと、航空企業によって多様な利用者ニーズに対応した運賃・料金が設定されたこと、10年後半に国内航空事業に新規企業が参入したこと等を背景に、旅行商品の一層の低廉化が進展した。
エ 体験型レクリエーションが人気
観光地での行動は、「温泉などでの休養」、「自然風景鑑賞」が多いが、他方で「特産品などの買物、飲食」、「遊園地・レジャーランド」などの体験型の旅行も人気を集めている。
オ 国内旅行での支出傾向
国内旅行で最も費用をかけたいところは、「宿泊施設」、「食事」、「現地での観光・オプション」の順になっているのに対して、海外旅行では、「宿泊施設」、「現地での観光・オプション」、「食事」の順となっている(図2ー1)。
また、20・30歳代では、「旅行回数は少なくても贅沢に楽しみたい」と考える傾向が強くなっており、低価格商品と並んで、多様化した旅行商品が求められる傾向にある(図2ー2)。
カ 職場関連の旅行の不振
近年の景気の低迷状況の中で、企業における職場旅行、招待・報奨旅行は、非常に厳しい状況となっている。他方で、サークルや地域の親睦旅行は健闘している。
(2) 最近の日本人の海外旅行の動向
ア 20歳代、40歳代の世代の海外旅行は減少傾向
4年から10年までの海外旅行者の性別・年齢階層別構成比率をみると、男女共に20歳代、40歳代の世代の海外旅行が減少する一方で、60歳代の世代は増加傾向にある。特に、40歳代の男性と20歳代の女性の構成比率の減少が目立っている(図2ー3)。
イ リピーターが海外旅行需要を支える
海外旅行の経験者の割合は47%と、この10年間で約20%近く増加しており、また、海外旅行を2回以上経験した人の割合も、この10年間で2倍以上に増加しており、リピーターが海外旅行需要の下支えとなっている(図2ー4)。
ウ 韓国への旅行者の増加
10年の日本人の海外旅行は、対ドルの円安傾向、東南アジアの経済・政治情勢の悪化等を背景として、旅行先による増減の差が目立った。
このうち、韓国への旅行者数は、韓国通貨ウォンの対円安傾向が続く中で、買物等を目的とした女性旅行者の増加等により、10年は年間を通じて前年を上回り、約 190万人の日本人が訪れた(図2ー5)。
エ 海外旅行商品の低価格化
10年の主要旅行業者50社の海外ブランド商品(主催旅行)の取扱人数が、前年比で概ねプラスとなっているのに対して、その取扱額は、概ねマイナスとなっている。
このような傾向の背景としては、国際線の航空運賃の下限が撤廃されたこと等によって、日本発の海外旅行パック商品の値下げ競争が激しくなっていることが挙げられる。
(3) 最近の旅行業、航空企業の動向
旅行商品の価格競争が進展する中で、観光関連産業は、総じて減益の環境下にあり、旅行業では、海外旅行者の減少、旅行商品の低価格化競争に伴い、厳しい経営環境に置かれている企業もあり、倒産に至った企業も一部にある。
このような経営情勢に対応するため、旅行業者は、新聞広告販売、コンビニエンスストアでの商品販売の開始等により、旅行商品販売の強化に努めている。
また、我が国の航空企業は、航空ネットワークの拡充や輸送力の増強、多様な利用者ニーズに対応した運賃・料金等の設定に努めるとともに、経営の効率化の課題に取り組んでいる。
(1) 訪日外国人旅行者数は3年ぶりにマイナス成長
訪日外国人旅行者数は、9年で 422万人と史上初めて 400万人台を達成した。10年は、香港及び欧米諸国からの訪日客は好調な伸びを示したが、深刻な経済不振を背景とした韓国からの訪日客の大幅な減少等により、前年比約3%減の411万人となり、阪神・淡路大震災が発生した7年以来3年ぶりにマイナス成長となった。
(2) 受入数は国際的に見て依然として低水準
訪日外国人旅行者数を、世界における外国人旅行者受入者数と比較すると、日本は世界第32位であり、地理的にほぼ同条件にある韓国よりも若干多い数値となっている(図2ー6)。
また、世界の主要国・地域の人口規模と外国人旅行者の受入数を比較すると、訪日外国人旅行者数は国際的に見ても依然低い水準にあり、日本人海外旅行者数の約4分の1と、不均衡な状態が続いている(図2ー7)。
(3) アジア諸国からの訪日旅行者の減少
アジア諸国からの訪日旅行者は、昭和40年代より急速な伸びを示しており、平成7年以降は、全体の約6割を占めるに至った。
こうした中、近年の東南アジア地域や韓国の経済危機の影響により、10年のアジア諸国からの訪日旅行者は、前年比約11%減と大幅な減少を示した。
(4) 商用客の訪日の減少
経済が比較的好調な欧州・北米からは、観光客が約17%増、商用客が約1%減となっており、我が国の景気の低迷が特に商用客の訪日客数にも影響を与えていると推測できる。
21世紀を間近に控え、我が国においては、国民の多様化した価値観に対応して、国民一人一人がゆとりとうるおいを感じられる生活の実現が重要な課題となっている。このため、景気の低迷が続く現下の我が国の経済情勢の中で、政府としては、緊急経済対策などを通じて観光の振興のための諸施策を講じており、また、「生活空間倍増戦略プラン」においても「遊空間の拡大」を重要な分野として位置づけている。
今後とも、国、地方公共団体及び観光関連産業との緊密な連携により、国民が将来にわたり夢と希望を持てるような観光関連の施策を展開することは、政府の重要な政策課題の一つである。
(1) 観光政策審議会答申「今後の観光政策の基本的な方向について」(平成7年)
7年6月の観光政策審議会答申「今後の観光政策の基本的な方向について」において、国内観光振興のため、国内旅行の大規模なシステム変更の必要性等が指摘された。同答申を受けて、国、旅行業者等観光関係事業者からなる国内観光促進協議会が設置され、行動計画の策定、推進に向けた協議、検討が行われた。また、国際観光振興のため、訪日外国人旅行者をおおむね2005年時点において 700万人に倍増させることを目指し「ウエルカムプラン21」が策定された。
(2) 我が国の観光再生に向けた政府の取組
(1) 観光をめぐる社会環境等の変化
(2) 我が国の観光再生に向けた今後の課題
ア 宿泊業
旅館・ホテル等の宿泊業においては、消費者の志向の変化に対応した料金体系の見直し、従来型の接客方式からの脱却、地域と一体となった誘客に向けた取組、共同宿泊プランや連泊割引の設定等が図られつつある。
今後、連泊の促進、長期滞在型旅行の促進への取組の強化が求められる。
また、質的な面では、宿泊自体の楽しみの増大、個人客に対応したサービス・施設体系の対応促進、労働力の確保等が、主な質的な課題として挙げられる。
イ 旅行業
旅行業においては、個人消費が低迷する中、旅行業者間の競争は一層激しさを増しており、最近の家族旅行の増大を受けた家族向け商品の充実、経済的、時間的にゆとりのある熟・高年層の潜在需要の喚起や一人旅の拡大を狙った商品の開発、昨今のアウトドア志向の高揚を背景とした各種体験型ツアー等、個別化、多様化する旅行者ニーズに対応した商品開発も見られる。また、日程・料金面でも様々な商品開発が行われている。
今後は、旅行市場の変化に対応した、団体旅行からパック・個人旅行への旅行商品の転換、高齢者や障害者に向けた旅行情報の収集・提供、旅行情報システムの拡充、更なる経営の効率化が求められるとともに、旅行業に対する消費者の信頼の確保に努める必要がある。
ウ 観光レクリエーション施設等
近年、各種観光施設や郷土資料館・博物館等の観光レクリエーション施設においては、単に見るだけではなく、観光客が参加・体験する等の要素が求められているところであり、地域の文化、歴史等を興味深く紹介するハード・ソフト両面の工夫が必要である。
また、テーマパーク等については、近年の景気低迷の中で、入場者の減少に伴う採算の悪化に直面する施設もあり、今後、各施設の個性化及びより一層のコストの削減等が求められている。
エ 飲食・地域の特産品
地域の食材や特産品は、旅行先の地域の特色を伝える主要な要素の一つとして、また、旅行の同行者や旅行先の人々とのコミュニケーションを深め、観光の魅力を高める重要な分野となっており、観光地の賑わいを創出し、季節波動の少ない通年型の観光地づくりのキーポイントになっている。
しかしながら、海外旅行と比較すると、国内観光における土産品の多様性の乏しさ、内容の充実の遅れ、観光地における商店街の魅力の低下による買物等のための行動の減少等により、買物等に関する支出の志向は低調であり、今後、地域独自の特色あるメニューの開発・提供、選択肢に富んだ安全な飲食の提供、宿泊施設から「まち」に出て賑わいを感じられる受入体制の整備、地域の特色ある農水産物・加工食品・民工芸品等の開発・提供が必要である。
オ 交通
観光行動において交通機関は、より充実した楽しい旅行を構成する主要な要素となっており、より速く、より安く、という機能と効率の両面の向上が求められている。国内宿泊観光旅行費用の支出に関して見ると、交通費は宿泊費と並ぶ主要な支出分野となっており、航空分野など既に多様な利用者ニーズに対応した運賃・料金の進んでいる分野に加えて、今後の交通運輸分野における需給調整規制の廃止に伴い、他の分野においても運賃・料金の多様化等、利用者利便のより一層の増進が期待される。
また、交通バリアフリー化に向けた施設整備への取組、大都市圏における混雑緩和、「ゆとり」、「安らぎ」を感じさせるハード・ソフト両面の連携強化、各種交通機関のネットワーク化、地球環境問題等を踏まえた公共交通機関の利用促進、訪日外国人旅行者に対する旅行費用の低廉化対策の一環としての外国人向け割引制度の積極的な展開、景観保持への一層の配慮等が求められる。
【観光に関して講じた施策】
政府は10年度においても前年度に引き続き、国際観光の振興及び国内観光の振興等、観光に関する施策を講じてきたが、これらのうち、主なものは次のとおりである。
(1) 国内観光の再生に向けた取組として、国・地方公共団体、観光関係事業者等の緊密な連携による、様々な観光振興施策が進められている。
21世紀に向けた観光の新しい課題に対応していくため、地方ブロック単位で「広域連携観光振興会議(WAC21)」を開催し、より広域での観光振興を目指すこととした。10年11月には、第1回目の広域連携観光振興会議が東北ブロック(青森、岩手、宮城、秋田、山形及び福島の6県)において開催され、「東北六県観光立国宣言」がなされた。
(2) 地域伝統芸能等は、地域固有の歴史、文化等を色濃く反映したものであり、地域の特色を活かした観光の振興を図るために、極めて効果的である。
10年5月には、岐阜県高山市及び下呂町において「第6回地域伝統芸能全国フェスティバル」が開催されたほか、海外においても地域伝統芸能等を披露し、観光客の誘致に努めている。
(3) 送客側と受入側の地方公共団体と観光産業とが協力し、首都圏の消費者をターゲットに新しい国内旅行の提案、旅についての総合的な情報の発信と交流、旅の魅力をアピールする展示と実演等を行う旅の総合イベントとして「旅フェア '98」が、10年4月に開催され、25万人の入場者があった。
(4) 9年11月の政府の緊急経済対策を受けて、モデル地域における観光地評価を踏まえた観光地づくりプログラムの策定、観光振興イベント支援事業の集中的実施を内容とする「観光地づくり推進モデル事業」に関し、全国5ケ所の観光地について、事業に着手した。
(5) 北海道は、豊かな自然・新鮮な味覚等の多彩な観光資源を有しており、来道者数もここ数年増加傾向にある。また、観光振興は、北海道において重要なテーマであり、政府においても、観光基盤の整備、観光資源情報ネットワークの充実、アウトドア活動に資する施設整備等を通じ、北海道の特色を生かした観光振興を積極的に支援している。
(6) 沖縄県は、恵まれた自然景観・独特の伝統文化、歴史等、魅力的な観光・リゾート資源を有しており、観光客も年々増加している。また、観光振興は、沖縄県において重要なテーマであり、政府においても、沖縄振興開発特別措置法等を改正することにより、より一層の観光振興を図るとともに、道路整備等の関連インフラの整備等を通じて、積極的に支援している。
(1) 旅行業等に係る施策
(2) 価格・サービスの多様化等
(3) 観光情報提供体制の整備等
(4) 高齢者・障害者等の円滑な移動の確保
公共交通機関、宿泊施設、文化施設等及びその他観光関連施設において、高齢者・障害者等の円滑な移動を確保するため、エスカレーター・エレベーターの設置等の施設の整備改善などのバリアフリー化を推進するとともに、運賃の割引措置等を講じた。
(1) 国立公園等自然公園の整備、森林の保全管理、河川、湖沼及び海洋環境の保全、都市緑地の保全、温泉の保護、野生生物の保護等を推進し、自然とのふれあいの要請にこたえるとともに、自然環境の保全を図った。
(2) 国宝・重要文化財等の文化財の保存・活用、無形文化財の伝承者養成等を進め、また、歴史的集落・町並み、歴史的港湾についての保存・活用を図った。
(3) 10年11〜12月に京都において開催された、第22回世界遺産委員会会議において、「古都奈良の文化財」が我が国で9番目の世界遺産として、新たに世界遺産一覧表に記載された。
(4) 都市、農山漁村、水辺、道路について景観の整備を促進し、良好な景観の形成と魅力あるまちづくり等を進めた。
(5) 「旅しよう 日本列島再発見」を統一テーマとした第34回観光週間(8月1日〜7日) 、みどりの週間(4月23日〜29日)等を通じて、観光資源の保全・保護等について、広報・啓発等を行った。
(1) 公的観光レクリエーション施設等
各省庁においては、@宿泊を中心とするレクリエーション施設等、A農山漁村地域におけるレクリエーション地区等、B森林・公園等を活用したレクリエーション施設等、C自然体験施設・親水レリエーション施設等を総合的・広域的に整備した。
(2) 民間活力の活用による総合保養地域の整備
民間活力の活用に重点を置いて整備し、ゆとりある国民生活の実現と地域振興を図るために「総合保養地域整備法」に基づき整備が進められ、多数のプロジェクトが供用され地域の活性化に貢献している。リゾート整備を着実に整備・推進するため、アドバイザーの派遣等を行っている。
(3) 民間観光レクリエーション施設
国民の観光レクリエーション需要の高まりに伴い、民間等により、レジャーランド、オートキャンプ場、一般キャンプ場、スキー場、マリーナ、クアハウス、ゴルフ場、観光牧場等様々な観光レクリエーション施設等が全国的に整備・運営されている。
(1) 博物館、美術館等の整備・充実を図り、所蔵品を収集・保管・展示して一般の利用に供するとともに、解説書の発行や各種講座等を開催した。
(2) 国立競技場等の体育・スポーツ施設や青年の家等の青少年教育施設の整備を進めた。また、パラグライダー等のスカイレジャーの進展に対応し、安全の確保及びその振興・普及に係る施策を進めている。
(1) 一定規模のホテル・旅館等について、近代化を推進するため環境衛生金融公庫において設備資金等の融資を行うとともに、「国際観光ホテル整備法」に基づく登録ホテル・旅館については、政府系金融機関による融資によって施設整備を支援した。
(2) 宿泊施設やサービス・料理の面で高齢者が利用しやすい旅館・ホテルとして一定の基準を満たした旅館等をシルバースター旅館として認定登録し、従業員等に対し研修を実施しており、11年2月現在 694軒が認定登録されている。
(3) 公的施設等として、国民宿舎、ユースホステル等の運営、整備を行った。
(1) 鉄道については、整備新幹線の既着工3線4区間の整備を推進するとともに、新規に3線3区間を着工した。
また、主要幹線鉄道では、引き続き宗谷線及び豊肥線の高速化事業を推進するとともに、愛知環状鉄道の高速化事業に着手した。
さらに、車両の居住性の向上や移動制約者対応トイレの導入等の社会的ニーズへの対応等の観点から、輸送サービスの改善が進められている。
(2) 道路については、高規格幹線道路、地域高規格道路、一般国道及び地方道、有料道路の整備・建設を促進し、「道の駅」や「ハイウェイオアシス」の整備を進めた。高速自動車国道は、東北横断自動車道寒河江〜西川区間等の開通により、全体供用延長が 6,453]となった。
また、一般自動車道やバスターミナルの整備・運営、観光地のバス・タクシーについて、利用者利便の向上が図られている。
(3) 空港については、航空ネットワークの拠点となる大都市圏における拠点空港の整備を最優先課題として推進するとともに、一般空港等の整備を進めた。
また、航空運送分野における競争促進を通じて利用者利便の向上を図るため、国内線のダブル・トリプルトラック化、国際線の複数社化を推進した。
さらに、羽田空港新C滑走路の供用に伴う発着枠配分を契機として、国内航空分野において2社が新規参入した。
(4) 海上交通については、運輸施設整備事業団との共有建造方式による国内旅客船の整備を進めるとともに、旅客船ターミナル等の整備を行った。
(5) 観光地の環境衛生施設について、地域の生活環境の保全及び向上を図るために、水道及び下水道の整備の推進に努めた。
(1) 鉄道、道路、航空及び海上交通の交通安全対策
鉄道事故の防止を図るため、自動列車停止装置(ATS)の整備等を推進するとともに、乗務員等の教育訓練の充実、厳正な服務の徹底及び適正な運行管理を指導した。
道路については、交通事故が多発している道路等について、特定交通安全施設等整備事業七箇年計画に基づき交通安全施設等の整備拡充を図るとともに、交通安全思想の高揚、自動車運送事業者における適正な運行管理の確保及び整備不良車両の運行防止等により交通事故の防止を図った。
航空における安全の確保のため、航空保安施設の整備、航空機の運航の安全の確保、ハイジャック等に対する航空保安対策を行った。
海上交通の安全を確保するため、海事関係法令の励行、旅客船の運航管理制度の徹底、プレジャーボート等の海難防止指導等により事故防止に努めた。
(2) 宿泊施設等における安全対策
旅館、ホテル等の防火対策として、建築基準法、消防法による指導、防火基準適合表示制度の推進等を図った。
また、ホテル・旅館、飲食店等食品関係営業者について、食品衛生監視員の指導、食品衛生法に基づく管理運営基準の遵守の徹底を図った。
(3) 観光地における自然災害防止対策
台風や集中豪雨などの気象条件により土砂災害の発生しやすい環境にある山地流域については、砂防工事を実施するとともに、総合的な土砂災害対策の推進、火山噴火警戒避難対策事業の実施等の災害対策を推進した。
(4) 気象等の情報の提供
台風・集中豪雨雪対策等観測予報体制の強化、地震・火山対策の強化及び海洋・海上気象業務の強化を行い、観測体制の充実及び適時適切な予報・警報並びに情報の提供に努めた。
(5) 遭難等の防止対策
山岳遭難、水難防止を図るため、救助体制の充実、安全指導等諸施策を推進するとともに、観光旅行者に対し災害危険箇所及び避難地・避難路等の周知徹底を図るよう地方公共団体に対し指導を行うなど、避難体制の確立に努めた。
(1) 地方公共団体は、地域経済にとって多大な影響を及ぼす観光産業の振興のために、全国各地で特色あるイベントやキャンペーン、物産展等を実施・開催している。
また、インターネットのホームページを活用して情報発信等を行うなど、観光宣伝に努めるとともに、地元の観光従事者の接遇の向上や観光バスの整備等受入れ体制の充実にも努めている。
(2) 地方公共団体は、交流を通じた様々な地域振興の観点から、観光振興に積極的に取り組んでおり、観光基本計画等を策定し、総合的な推進を図っている。
また、観光関連産業は、交通産業、旅行業、宿泊業、飲食産業、土産品産業等幅広い分野を包含した産業であり、その消費額の規模や関連する雇用規模からみて地域経済に多大な貢献をしている。このため地方公共団体は、観光情報の発信・提供、各種キャンペーンの実施、外国人観光客誘致の促進、観光客の受入体制の充実等を図っている。
さらに、自然環境の保全、文化財の保護、観光地の美化清掃等を進めるとともに、国の支援・協力を受け、また独自に、観光施設・観光基盤の整備を行っている。
【平成11年度において講じようとする観光政策】
平成11年度においては、従来の観光関係施策の充実強化に努めるほか、以下の事項について重点的に実施することとしている。
(1) 観光資源の保全・保護、公的観光レクリエーション地区・施設の整備、観光関連施設の整備、宿泊・休養施設の整備、観光基盤施設の整備等に関して地方公共団体を支援し、地域における観光の振興を引き続き進める。
(2) 10年度に成立した一部祝日の月曜日指定化のための「国民の祝日に関する法律」の一部改正などを受け、旅行期間の長期化、国内観光機運の醸成により、消費の拡大、景気の回復を図るため、旅行需要喚起等のための施策を推進し、長期滞在型観光を推進する。
(3) 広域連携での観光振興方策を討議し、官民一体での各種施策の展開により、地域の活性化を目指し、「第2回広域連携観光振興会議(WAC21)」を、北陸地域において開催するとともに、和歌山県において「第7回地域伝統芸能全国フェスティバル」を行う。また、11年度に和歌山県において開催される「南紀熊野体験博」に対して各種の支援措置を講じる。
(4) 国内旅行の促進と旅行を通じた交流人口の増大による地域の活性化を図るために、都道府県等と旅行関連産業が連携し開催する旅の総合見本市「旅フェア'99」を、11年4月に愛知県のナゴヤドームで開催する。
(5) 受入側の地域と送客側の観光産業が連携して、共同で地域観光発展方策について協議する「デスティネーション開発協議会」を引き続き開催するとともに、10年度に着手した5カ所の「観光地づくり推進モデル事業」について、引き続き事業を実施していく。
(6) 北海道観光のより一層の振興を図るため、道路・空港・港湾等の整備や観光情報システムの充実等の観光基盤の整備について各種の措置を講ずる。
(7) 沖縄の基幹産業ともいえる観光の振興を図るため、11年度においても本土〜那覇間の航空運賃の低減に向けた措置を講じるとともに、観光振興に資するため、引き続き関連施設の整備推進等を行う。
(1) 一層の消費者保護を図るため、8年4月から施行されている旅行業法の円滑な実施を引き続き図る。
また、各運輸事業者による各種運賃・料金施策等利用者サービスの充実を図る。
(2) インターネット等の情報通信メディア等を活用し、国民に観光地の最新情報を正確かつ迅速に提供するための観光情報提供体制の整備を進める。
(3) コンピュータ西暦2000年問題に関し、我が国における交通、旅行、宿泊等の観光関連分野において、システムの改修等民間部門の徹底した対応を促すとともに、日本人海外旅行に関し、関係省庁、関係機関等が連携し、海外における2000年問題に関連した情報の収集に努める。
(4) 公共交通機関等における高齢者・障害者の円滑な移動の確保のためのバリアフリー施設の整備を進めるとともに、割引運賃等の措置を引き続き実施する。
(1) 自然公園の公園計画について所要の見直しを進める。また、国有林野では、適切な森林の管理施業を推進するとともに、保護林の設定、世界遺産に登録された屋久島、白神山地を始めとする既存の保護林の適切な保護管理等により自然環境の保全・形成を図る。
(2) 水質の保全を図るため、水生植物等の生態系を活用した水質浄化施設の整備を推進する。また、水質・底質の浄化を図る海域環境創造事業を実施する。
(3) 文化財等の文化遺産の保護・保存・活用を一層推進するとともに、都市景観、農山漁村景観等の整備等を推進する。
(4) 第35回観光週間(8月1日〜7日)、自然に親しむ運動、みどりの週間、文化財保護強調週間等を通じて、観光資源の保全・保護に関連する広報啓発活動を実施する。
(1) 公的観光レクリエーション施設等の整備
(2) 「総合保養地域整備法」の適切な運用により、中長期的な視点から魅力ある多様な総合保養地域の整備を推進する。
(1) 整備新幹線の建設、主要幹線鉄道の高速化、輸送力増強及び輸送サービスの向上等を促進するための都市鉄道の整備を推進する。
(2) 道路整備五箇年計画に基づき、「新たな経済構造実現に向けた支援」等4つの緊急課題に重点を置き、道路政策を重点的かつ計画的に推進する。
(3) 空港整備七箇年計画に基づき、大都市圏の拠点空港の整備を優先課題として空港整備を推進する。
(4) 港湾整備七箇年計画に基づき、旅客船ターミナル、マリーナ等の整備を図る。
(5) 下水道整備七箇年計画に基づき、公共下水道、流域下水道、特定環境保全公共下水道等の整備を図る。
(1) 鉄道事故の防止を図るため、自動列車停止装置(ATS)等の整備を進める。
(2) 近年の交通事故の多発傾向にかんがみ、安全かつ円滑・快適な道路交通環境の整備を図るため、特定交通安全施設等整備事業七箇年計画に基づき、交通安全施設等の一層の整備拡充を図る。
(3) 航空交通の安全性、効率性及び管制処理能力の向上を図るため、衛星を利用した航空管制を行うための航空衛星システムの整備を引き続き推進し、12年度からの運用開始を目指す。
(4) ハイジャック事件等の防止のための航空保安対策の一層の推進を図るとともに、航空分野における危機管理の充実を図るため、新たに国管理空港に監視カメラや通信回線用機器等を整備し、航空危機管理体制の迅速かつ的確な管理体制を構築する。
(5) 海上交通の安全を確保するため、海事関係法令の励行に重点を置くとともに、航路標識の新設等を計画的に推進する。(6) 宿泊施設等における防火安全体制を確立するため、防火基準適合表示制度の充実及び一層の推進を図る。
(7) 気象、地象、水象に関する観測・監視体制の強化及び予報・警報等の精度向上等的確な気象情報の提供を推進する。
(8) 山岳遭難に関し、救助体制の強化・充実、安全登山の注意喚起を図る。また、迅速かつ的確な水難救助を図るための指導や救助訓練等を実施する。
(1) 観光政策審議会を始め各観光関係審議会は、適宜所管の事項について調査、審議を進める。
(2) 観光関係団体の活動に対し引き続き支援、指導を行い、観光の振興を図る。