平成11年版 観光白書の概要


目  次

【平成10年度観光の状況に関する年次報告】

I 観光の状況 
1 国民生活の動向
2 国内観光の状況
3 国際観光の状況

II 景気低迷下における我が国の観光レクリエーションの動向及びそれに対する対応
1 日本人の観光レクリエーションの動向
2 外国人旅行者の訪日の動向
3 我が国観光の再生に向けた政府の取組
4 観光をめぐる社会環境の変化と今後の課題

【観光に関して講じた施策】

III 国際観光の振興

IV 国内観光の振興
1 国・地方公共団体等の連携による観光振興の取組
2 観光旅行者の保護及びサービスの向上
3 観光資源の保全・保護
4 観光レクリエーション施設等の現況と整備
5 観光関連施設の現況と整備
6 宿泊・休養施設の現況と整備
7 観光基盤施設の現況と整備
8 国内観光の安全確保
9 地方公共団体による観光振興の取組

【平成11年度において講じようとする観光政策】

I 国際観光の振興

II 国内観光の振興
1 国・地方公共団体等の連携による観光振興の取組
2 観光旅行者の保護及びサービスの向上
3 観光資源の保全・保護
4 観光レクリエーション施設等の整備
5 観光関連施設の整備
6 宿泊・休養施設の整備
7 観光基盤施設の整備
8 国内観光の安全確保
9 観光関係行政機関等の活動

 「平成10年度観光の状況に関する年次報告」は、平成10年度の観光の状況及び政府が観光に関して講じた施策の報告であり、「平成11年度において講じようとする観光政策」は、平成10年度における観光の状況を考慮して、政府が平成11年度において講じようとする観光政策を明らかにしたものである。これら2つを併せて「観光白書」と通称されている。政府は、観光基本法第5条の規定に基づき、いわゆる「観光白書」を国会に提出することとなっている。


【平成10年度観光の状況に関する年次報告】

I 観光の状況

  1. 国民生活の動向

    (1) 平成10年、我が国経済は、9年10〜12月期から10年7〜9月期にかけて4四半期連続でマイナス成長を記録し、これまでにない景気の低迷がみられた。10年10〜12月期も景気の低迷状態が長引き、引き続き極めて厳しい状況であったが、幾分かの改善を示す動きも見られた。また、個人消費も、家計の経済の先行きに対する不透明感もあって、低調な動きとなっており、家計収入が減少していることに加え、消費者の財布のひもが依然として固いことから低調に推移し、国内総支出は年間で前年比 2.8%減、民間最終消費支出は同 1.1%減となった。一方、消費者物価は安定的に推移し、10年の消費者物価の対前年上昇率は 0.7%となった。
     家計消費については、全国全世帯の消費支出は対前年比 2.2%減となった。また、旅行関連支出(宿泊費、交通費、旅行かばん)を見ると、10年は対前年2.7%減の14万 9,903円となっている。

    (2) 余暇活動と密接に関係する自由時間に関しては、年次有給休暇の取得、完全週休二日制等労働時間の短縮、学校週5日制等、ゆとりある休暇の拡充を推進しているところであり、総実労働時間は近年減少傾向で推移してきており、10年は 1,879時間と前年より21時間減少した。また、9年12月末現在で、完全週休二日制の適用を受ける労働者の割合は60.9%(対前年比 2.7%増)であり、年々着実に増加している。

    (3) 現在の国民の「レジャー・余暇生活」についての意識を見ると、今後の生活に重点を置きたい分野として「レジャー・余暇生活」を挙げる者(35.1%)が最も多く、昭和58年以来連続して第一位を占め続けており、国民の余暇活動に関する志向の根強さがうかがえる(住生活23.7%,食生活19.3%)(表1−1)


  2. 国内観光の状況

    (1) 10年の国内観光は、海外旅行が景気の低迷等により久々に減少する中、宿泊・観光レクリエーションの回数及び宿泊数は、ほぼ前年並みとなり、また、消費総額は昨年に引き続き前年を上回った。

    1. 宿泊観光・レクリエーション旅行を行った者は延べ2億 500万人、1人当たり1.62回となっており、消費総額は全体で8兆 6,700億円、1人当たり6万 8,600円となっている(表1−2)

    2. 10年の国内旅客輸送は、国内航空運送事業分野において約35年ぶりとなる新規航空会社の就航により、割引運賃の拡充、輸送力の拡大等が進み、好調を維持したが、それ以外の各輸送機関はともに低調に推移した(表1−3)

    3. 10年の主要旅行業者50社の総取扱高は、前年比 4.7%減の6兆 615億円であった。このうち、国内旅行は、年計では前年比 2.3%減、海外旅行は前年比 8.0%減であった(表1−4)

    (2) 阪神・淡路地域の観光の状況
     平成7年1月に発生した阪神・淡路大震災により、観光面においても多大な影響が出たが、鉄道、道路等の交通施設、文化財、博物館・美術館は、一部を除いて全て現状に回復した。また、劇場や遊園地などの民間の観光関係施設、旅館等の主要宿泊施設も、そのほとんどが営業を再開している。
     その結果、神戸市の調査によれば、10年における神戸市の観光入込客数は、震災前の6年の入込客数( 2,440万人)を超える 2,528万人となっている。


  3. 国際観光の状況

    (1) 国民の海外旅行
     10年の日本人海外旅行者数は、前年比99万人(5.9%)減の 1,581万人であり、長引く景気の低迷等を背景に、3年以来の減少となった(図1−1)
     主な旅行先の上位5位は、アメリカ( 495万人)、韓国( 190万人)、中国( 100万人)、タイ(78万人)、台湾(77万人) となっている。
     目的別では、観光を目的とした海外旅行が 1,297万人で全体の82.1%を占めている。
     性別構成を見ると、男性(53.7%、 849万人)が女性(46.3%、 732万人) を上回っているが、伸び率の推移を見ると、女性が男性を上回っている。年齢階層別では、男女共に20〜40歳代が6割以上を占め、性別では、男性の場合は30歳代が、女性の場合は20歳代がそれぞれ最も多い(図1−2、3)
     海外旅行者の平均旅行日数は 8.4日となっており、ここ数年、8日程度で推移している。

    (2) 外国人旅行者の訪日
     10年の訪日外国人旅行者数は、前年比11万人(2.7%) 減の 411万人となった(図1−1)
     訪日外国人旅行者数を国籍・地域別に見ると、台湾が84万人と最も多く、以下、韓国72万人、アメリカ67万人、イギリス(香港)30万人、中国27万人の順となっている。対前年伸び率では、中国(香港)(74.6%増)、イギリス(香港)(29.0%増)、オーストラリア(21.9%増)の増加が目立っている。
     州別構成比は、アジア州54.5%、ヨーロッパ州21.1%、北アメリカ州19.2%の順となっており、アジア州が主流となっている(図1−4)
     訪日外国人の平均滞在日数は、 8.8日となっており、回復傾向にある。
     訪日外国人の主な訪問地は、東京、大阪、京都、名古屋の順となっている。総じて、アジア地域からの旅行者にはテーマパークの人気が高く、また、韓国、台湾を中心として、九州地域の人気が高い。

    (3) 国際旅客輸送状況
     10年の日本人海外旅行者、入国外国人の国際旅客輸送は、98.9%が航空輸送により行われている。
     航空機を利用して我が国から出国した日本人海外旅行者及び入国外国人の約78.1%が成田空港及び関西国際空港からの発着である。

    (4) 国際旅行収支
     10年の我が国の国際旅行収支(旅客運賃を含む。)は、受取が 7,409億円(前年比 0.8%減)、支払は4兆 6,131億円(同 7.7%減)で、収支の赤字は前年に比べ 3,794億円減の3兆 8,722億円となった。


II 景気低迷下における我が国の観光レクリエーションの動向及びそれに対する対応

  1. 日本人の観光レクリエーションの動向

    (1) 最近の日本人の国内観光の動向

    1. 10年度の国内観光旅行市場は横ばい傾向
       国民の観光レクリエーション活動は、日帰りの観光レクリエーション、国内の宿泊観光旅行(以下、「国内観光旅行」という。)、海外旅行等様々な形で展開されており、今や国民生活に欠くことのできないものとして定着し、また、その重要性を増大させてきている。
       このうち、国内観光旅行は、近年の我が国社会の構造変化等によるニーズの多様化に直面し、長期的な停滞傾向にあるため、国内観光振興のための様々な取組がなされ、9年においては僅かながら回復傾向が見られた。
       10年は、景気の低迷という厳しい経済状況の下で、国内宿泊観光レクリエーションは、業務関係の旅行回数が減少したものの、観光関係の旅行回数は増加し、全体では、旅行回数は微増、宿泊数は微減、消費総額は増加となった。このことは景気の低迷状況の中にありながらも、国民の国内観光に関する志向は依然根強く、国民生活にとって国内観光が欠かせないものとなっていることが伺える。

    2. 最近の国内観光の動向

      ア 国内旅行取扱額の減少
       主要旅行業者50社の10年の国内旅行取扱額が前年比で減少となった要因としては、法人の団体旅行の落込み、低価格旅行商品の販売競争の激化等が考えられる。

      イ 「安・近・短」旅行と「安・遠・短」旅行の傾向の並存
       国民の宿泊旅行については、従来より、いわゆる「安(旅行商品の低廉化)・近(近距離への旅行)・短(短い日数の旅行)」の傾向が指摘されてきたが、10年には、このような傾向と並び、北海道、沖縄方面を中心とした「安・遠(遠距離への旅行)・短」の旅行が人気を集めた。

      ウ 旅行商品の低廉化の進展
       長引く景気の低迷状況の中で、従来、海外旅行に対して割高感が指摘されていた国内旅行商品について、消費者の低価格傾向に対応して、観光関連産業によって低価格の商品開発への取組がなされたこと、航空企業によって多様な利用者ニーズに対応した運賃・料金が設定されたこと、10年後半に国内航空事業に新規企業が参入したこと等を背景に、旅行商品の一層の低廉化が進展した。

      エ 体験型レクリエーションが人気
       観光地での行動は、「温泉などでの休養」、「自然風景鑑賞」が多いが、他方で「特産品などの買物、飲食」、「遊園地・レジャーランド」などの体験型の旅行も人気を集めている。

      オ 国内旅行での支出傾向
       国内旅行で最も費用をかけたいところは、「宿泊施設」、「食事」、「現地での観光・オプション」の順になっているのに対して、海外旅行では、「宿泊施設」、「現地での観光・オプション」、「食事」の順となっている(図2ー1)
       また、20・30歳代では、「旅行回数は少なくても贅沢に楽しみたい」と考える傾向が強くなっており、低価格商品と並んで、多様化した旅行商品が求められる傾向にある(図2ー2)

      カ 職場関連の旅行の不振
       近年の景気の低迷状況の中で、企業における職場旅行、招待・報奨旅行は、非常に厳しい状況となっている。他方で、サークルや地域の親睦旅行は健闘している。

      キ 中年・高年世代が旅行需要の支え
       団体旅行は、価値観の多様化、景気の低迷等を背景に、大幅な減少傾向にあり、他方で、個人旅行は好調さを維持している。今後、中高年世代は、旅行需要を支える重要な年齢層になってくるものと予想される。

    (2) 最近の日本人の海外旅行の動向

    1. 10年の海外旅行は7年ぶりのマイナス成長
       我が国の海外旅行者は、国民の所得水準の向上、自由時間の増大、手軽に利用できる海外パッケージツアーの普及、円高傾向等を背景として、平成3年の湾岸危機の影響による落ち込みを除き、9年まで順調に増加してきたが、10年における国内景気の低迷状況、先行き不安感、円安傾向等を背景に、7年ぶりの減少に転じた。
       歴年での前年割れは、昭和39年の海外旅行自由化以来、第二次石油ショックの昭和55年、湾岸危機後の平成3年に続き3回目となる。

    2. 最近の海外旅行の動向

      ア 20歳代、40歳代の世代の海外旅行は減少傾向
       4年から10年までの海外旅行者の性別・年齢階層別構成比率をみると、男女共に20歳代、40歳代の世代の海外旅行が減少する一方で、60歳代の世代は増加傾向にある。特に、40歳代の男性と20歳代の女性の構成比率の減少が目立っている(図2ー3)

      イ リピーターが海外旅行需要を支える
       海外旅行の経験者の割合は47%と、この10年間で約20%近く増加しており、また、海外旅行を2回以上経験した人の割合も、この10年間で2倍以上に増加しており、リピーターが海外旅行需要の下支えとなっている(図2ー4)

      ウ 韓国への旅行者の増加
       10年の日本人の海外旅行は、対ドルの円安傾向、東南アジアの経済・政治情勢の悪化等を背景として、旅行先による増減の差が目立った。
       このうち、韓国への旅行者数は、韓国通貨ウォンの対円安傾向が続く中で、買物等を目的とした女性旅行者の増加等により、10年は年間を通じて前年を上回り、約 190万人の日本人が訪れた(図2ー5)

      エ 海外旅行商品の低価格化
       10年の主要旅行業者50社の海外ブランド商品(主催旅行)の取扱人数が、前年比で概ねプラスとなっているのに対して、その取扱額は、概ねマイナスとなっている。
       このような傾向の背景としては、国際線の航空運賃の下限が撤廃されたこと等によって、日本発の海外旅行パック商品の値下げ競争が激しくなっていることが挙げられる。

    (3) 最近の旅行業、航空企業の動向
     旅行商品の価格競争が進展する中で、観光関連産業は、総じて減益の環境下にあり、旅行業では、海外旅行者の減少、旅行商品の低価格化競争に伴い、厳しい経営環境に置かれている企業もあり、倒産に至った企業も一部にある。
     このような経営情勢に対応するため、旅行業者は、新聞広告販売、コンビニエンスストアでの商品販売の開始等により、旅行商品販売の強化に努めている。
     また、我が国の航空企業は、航空ネットワークの拡充や輸送力の増強、多様な利用者ニーズに対応した運賃・料金等の設定に努めるとともに、経営の効率化の課題に取り組んでいる。


  2. 外国人旅行者の訪日の動向ラ16

    (1) 訪日外国人旅行者数は3年ぶりにマイナス成長
     訪日外国人旅行者数は、9年で 422万人と史上初めて 400万人台を達成した。10年は、香港及び欧米諸国からの訪日客は好調な伸びを示したが、深刻な経済不振を背景とした韓国からの訪日客の大幅な減少等により、前年比約3%減の411万人となり、阪神・淡路大震災が発生した7年以来3年ぶりにマイナス成長となった。

    (2) 受入数は国際的に見て依然として低水準
     訪日外国人旅行者数を、世界における外国人旅行者受入者数と比較すると、日本は世界第32位であり、地理的にほぼ同条件にある韓国よりも若干多い数値となっている(図2ー6)
     また、世界の主要国・地域の人口規模と外国人旅行者の受入数を比較すると、訪日外国人旅行者数は国際的に見ても依然低い水準にあり、日本人海外旅行者数の約4分の1と、不均衡な状態が続いている(図2ー7)

    (3) アジア諸国からの訪日旅行者の減少
     アジア諸国からの訪日旅行者は、昭和40年代より急速な伸びを示しており、平成7年以降は、全体の約6割を占めるに至った。
     こうした中、近年の東南アジア地域や韓国の経済危機の影響により、10年のアジア諸国からの訪日旅行者は、前年比約11%減と大幅な減少を示した。

    (4) 商用客の訪日の減少
     経済が比較的好調な欧州・北米からは、観光客が約17%増、商用客が約1%減となっており、我が国の景気の低迷が特に商用客の訪日客数にも影響を与えていると推測できる。


  3. 我が国観光の再生に向けた政府の取組  

     21世紀を間近に控え、我が国においては、国民の多様化した価値観に対応して、国民一人一人がゆとりとうるおいを感じられる生活の実現が重要な課題となっている。このため、景気の低迷が続く現下の我が国の経済情勢の中で、政府としては、緊急経済対策などを通じて観光の振興のための諸施策を講じており、また、「生活空間倍増戦略プラン」においても「遊空間の拡大」を重要な分野として位置づけている。
     今後とも、国、地方公共団体及び観光関連産業との緊密な連携により、国民が将来にわたり夢と希望を持てるような観光関連の施策を展開することは、政府の重要な政策課題の一つである。

    (1) 観光政策審議会答申「今後の観光政策の基本的な方向について」(平成7年)
     7年6月の観光政策審議会答申「今後の観光政策の基本的な方向について」において、国内観光振興のため、国内旅行の大規模なシステム変更の必要性等が指摘された。同答申を受けて、国、旅行業者等観光関係事業者からなる国内観光促進協議会が設置され、行動計画の策定、推進に向けた協議、検討が行われた。また、国際観光振興のため、訪日外国人旅行者をおおむね2005年時点において 700万人に倍増させることを目指し「ウエルカムプラン21」が策定された。

    (2) 我が国の観光再生に向けた政府の取組

    1. 一部祝日の月曜日指定化と長期滞在型観光の開発・普及
       10年の通常国会において「国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律案」が、与党及び野党からそれぞれ提出され、同国会では継続審議となったが、その後10年10月の臨時国会において、「成人の日」及び「体育の日」をそれぞれ1月及び10月の第二月曜日とする改正案が可決、成立し、12年1月1日から施行されることとなった。
       こうした成果を活かすためにも、今後は、国内観光に関して旅行期間の長期化等の観光振興策を講じることが重要であり、長期滞在型旅行の推進施策に関する国内広報、観光案内設備の整備に広域的に取り組む自治体に対する補助を行い、長期滞在型観光の振興や国内観光機運の醸成を図ることとしている。

    2. 旅行者ニーズの多様化と次世代観光情報基盤の整備
       情報化が進展する中、観光に関する情報提供も量的には大幅に増加しているが、各種情報が散在、錯綜する等、利用者の利便性の観点からは、未整備な状況にある。
       また、訪日外国人旅行の促進のためにも、外国人向け情報提供体制の整備・充実が急務となっている。
       さらに、近年、温泉や自然志向の高まり、団体から個人・小グループ旅行へのシフトなど、旅行者ニーズの多様化と個別化が顕著であり、エコツアー、体験型ツアー等の新しい旅行形態へのニーズの高まりもみられる。
       このような状況に対応するため、国内の観光関係の各種情報を収集した大規模なデータベースを整備し、日本語及び外国語により、インターネット等を通じて国内外に情報を提供し、多様化した価値観を生かした国内旅行の促進や訪日外国人旅行者の増大を図ることとしている。

    3. 快適観光空間の整備と観光地の魅力の増進
       我が国の地方には、我が国独自の観光魅力が豊富に存在していることから、これらの地域への外国人旅行者の来訪を促進することにより我が国の多様な魅力を紹介し、日本人の生活、文化、行動等その素顔に直接接してもらうことは、諸外国の我が国に対する真の理解を深める観点から、大きな意義を有するとともに、地域経済の活性化にも大きく役立つものである。
       このため、「外国人観光旅客の来訪地域の多様化の促進による国際観光の振興に関する法律」に基づいて形成された外客来訪促進地域(通称「国際観光テーマ地区」)を定め、国際観光の振興を推進している。
       また、観光による地域の活性化の観点から、9年度から「観光地づくり推進モデル事業」を実施し、全国10か所のモデル地域において、観光地評価を踏まえた観光地づくりプログラムの策定及びその実施に取り組んでいる。

    4. 緊急経済対策
       政府は、日本経済を一両年のうちに回復軌道に乗せ、経済を再生させるために、10年11月16日に総額24兆円規模の緊急経済対策を決定し、このうち、国内観光振興緊急対策事業として、総額15億円の予算が計上された。
       その内容は、連泊割引の導入促進等により旅行期間の長期化、国内観光気運の醸成を図り、消費の拡大、景気の回復に寄与するため、長期滞在型旅行の推進施策に関する国内広報、観光案内設備の整備に広域的に取り組む自治体に対する補助を行うとともに、外国人の訪日を促進するための海外宣伝を実施することとしている。
       また、今回の緊急経済対策においては、国民が将来にわたり夢と希望を抱けるような未来社会の構築のため、「21世紀先導プロジェクト」として4つのテーマが選定された。そのテーマの一つである「安全・安心、ゆとりの暮らしを創るプロジェクト」の内容に「全年齢層を対象とした観光とイベントの振興」が定められ、今後新たに、各省庁が連携してこのプロジェクトに積極的に取り組むこととなった。

    5. 「遊空間の拡大」(生活空間倍増戦略プラン)
       11年1月に閣議決定された「生活空間倍増戦略プラン」において、「遊空間の拡大」は同プランの重要分野の一つに位置付けられ、魅力ある観光地づくり、国内観光の振興及び国際観光交流の促進、景観の維持・向上、ゆとりとうるおいのある空間の創出等を行うことにより、国民の余暇活動の充実、地域振興や国際交流等を可能とする遊空間の形成を図り、快適で魅力ある生活の実現を目指すことが定められた。
       具体的な目標として、日本人の旅行の平均宿泊数を 2.O泊(現在 1.6泊)にすることを目指すとともに、訪日外国人旅行者について概ね5年後の時点で 700万人(平成9年 422万人)を目指し、外国人観光客にとっても魅力のある観光拠点の整備を進めることが挙げられている。


  4. 観光をめぐる社会環境の変化と今後の課題

    (1) 観光をめぐる社会環境等の変化

    1. 我が国の人口構造の変化の動向
       1995年における日本の総人口は、1億 2,557万人であった。今後、2007年の1億 2,778万人をピークに、以降は減少傾向に転じ、2020年において我が国の総人口は、1億 2,413万人と1991年の水準に戻ると予想されている。
       また、近年の出生率の低下により、年少人口(0歳〜14歳)は、1978年の2,771万人をピークとして減少に転じ、その後減少速度はやや緩やかになるものの、少子化は着実に進行していくと予想される。
       一方、老年人口(65歳以上)は、今後急速に増加し、2010年には 2,813万人に達するものと予想され、21世紀には本格的な高齢社会が到来することが確実視されている。
       さらに、生産年齢人口(15歳〜65歳)は次第に減少に転じ、なかでも「団塊の世代」及び「団塊ジュニア世代」と呼ばれる多数の人口が集中する年齢層に位置する人々の年齢が次第に上昇し、総労働力人口の減少とともに、今後、若年労働力人口の減少、労働力人口の高齢化が益々進行すると予想されている。

    2. 社会環境の変化
       近年の高齢社会において、60歳以上の年齢層の人々は、熟年世代としてライフスタイルが多様化し、生活者、消費者、労働者の立場から、観光関連活動への関わりがますます増加するものと予想され、地域における観光地づくり、祭り、伝統芸能、観光地などでのボランティアガイド等の場への参画も期待される。
       また、完全週休2日制のより一層の進展、一部祝日の月曜日指定化、学校の週5日制の14年度における実施等により、旅行発生の主要な要因である自由時間は、着実に増大していくものと想定される。
       さらに、情報通信メディアの進展による高度情報通信社会が到来し、インターネット等を活用した観光関連の情報ネットワークの拡大による様々な交流機会の増大、情報システムの拡充も期待される。

    (2) 我が国の観光再生に向けた今後の課題

    1. 国民の旅行環境の改善
       自由時間の拡充を図るための有給休暇の取得の促進、個人の好みに応じた旅行プラン作りを可能とする旅行環境づくり、グループ旅行、家族旅行などの旅行需要の質的変化への対応、高齢者のニーズに即した旅行情報の提供等が求められている。

    2. 国内観光地の再生
       国内観光の活性化に向けた最大の課題は、その受け皿となる国内観光地の再生であり、国内旅行と海外旅行の同一市場化の中で、国内観光地の魅力の増進が不可欠である。
       国内観光再生のための地方自治体・地域における取組の例として、「文化観光立県宣言」、「県文化観光基本計画(仮称)」の策定等地方自治体での長期ビジョンを持った取組、官民一体となった地域ぐるみでの街並み整備、地域の広域的連携による観光振興等の取組事例もある。
       今後、観光の重要性に対する理解の増進、観光地の個性化、明確なビジョンに沿った「まちづくり」、多様な観光メニューの提供、観光客の受入に際してのホスピタリティの向上、都市や農山村における観光魅力の増進、人材の育成・確保のための仕組みづくり等国内観光の再生に向けたより積極的な対応が求められる。

    3. 訪日外国人旅行者の誘致
       訪日外国人旅行者を誘致するため、官民共同での観光客の誘致、観光地における英語以外の外国語での案内表示の整備、外国語パンフレットの充実等地域において様々な取組が積極的に行われている。
       今後とも、「ウェルカムプラン21」、「外客誘致法」等に基づく訪日外国人旅行者の地域への受入体制の整備、国際観光振興会等による海外宣伝の強化、海外からの長期旅行者が滞在できる魅力のある観光拠点の整備、生活空間倍増戦略プランに基づいた「遊空間の拡大」による地域振興、国際交流等の促進への対応が求められる。

    4. 日本人の海外旅行
       最近の日本人の海外旅行市場は、20歳代の年齢層の減少、50歳代から60歳代の年齢層の増加という変化がみられ、今後、高年齢者マーケットに向けた旅行商品の企画・開発、魅力ある旅行目的地の開発等が、重要な課題となってくる。

    5. 観光関連産業
       観光事業者等観光関連産業は、近年の景気低迷下において国内観光の再生に向けて、懸命な取組を行っているところであるが、観光をめぐる社会環境等の変化の中で、引き続き、様々な課題への対応が求められている。   

      ア 宿泊業
       旅館・ホテル等の宿泊業においては、消費者の志向の変化に対応した料金体系の見直し、従来型の接客方式からの脱却、地域と一体となった誘客に向けた取組、共同宿泊プランや連泊割引の設定等が図られつつある。
       今後、連泊の促進、長期滞在型旅行の促進への取組の強化が求められる。
       また、質的な面では、宿泊自体の楽しみの増大、個人客に対応したサービス・施設体系の対応促進、労働力の確保等が、主な質的な課題として挙げられる。

      イ 旅行業
       旅行業においては、個人消費が低迷する中、旅行業者間の競争は一層激しさを増しており、最近の家族旅行の増大を受けた家族向け商品の充実、経済的、時間的にゆとりのある熟・高年層の潜在需要の喚起や一人旅の拡大を狙った商品の開発、昨今のアウトドア志向の高揚を背景とした各種体験型ツアー等、個別化、多様化する旅行者ニーズに対応した商品開発も見られる。また、日程・料金面でも様々な商品開発が行われている。
       今後は、旅行市場の変化に対応した、団体旅行からパック・個人旅行への旅行商品の転換、高齢者や障害者に向けた旅行情報の収集・提供、旅行情報システムの拡充、更なる経営の効率化が求められるとともに、旅行業に対する消費者の信頼の確保に努める必要がある。

      ウ 観光レクリエーション施設等
       近年、各種観光施設や郷土資料館・博物館等の観光レクリエーション施設においては、単に見るだけではなく、観光客が参加・体験する等の要素が求められているところであり、地域の文化、歴史等を興味深く紹介するハード・ソフト両面の工夫が必要である。
       また、テーマパーク等については、近年の景気低迷の中で、入場者の減少に伴う採算の悪化に直面する施設もあり、今後、各施設の個性化及びより一層のコストの削減等が求められている。

      エ 飲食・地域の特産品
       地域の食材や特産品は、旅行先の地域の特色を伝える主要な要素の一つとして、また、旅行の同行者や旅行先の人々とのコミュニケーションを深め、観光の魅力を高める重要な分野となっており、観光地の賑わいを創出し、季節波動の少ない通年型の観光地づくりのキーポイントになっている。
       しかしながら、海外旅行と比較すると、国内観光における土産品の多様性の乏しさ、内容の充実の遅れ、観光地における商店街の魅力の低下による買物等のための行動の減少等により、買物等に関する支出の志向は低調であり、今後、地域独自の特色あるメニューの開発・提供、選択肢に富んだ安全な飲食の提供、宿泊施設から「まち」に出て賑わいを感じられる受入体制の整備、地域の特色ある農水産物・加工食品・民工芸品等の開発・提供が必要である。

      オ 交通
       観光行動において交通機関は、より充実した楽しい旅行を構成する主要な要素となっており、より速く、より安く、という機能と効率の両面の向上が求められている。国内宿泊観光旅行費用の支出に関して見ると、交通費は宿泊費と並ぶ主要な支出分野となっており、航空分野など既に多様な利用者ニーズに対応した運賃・料金の進んでいる分野に加えて、今後の交通運輸分野における需給調整規制の廃止に伴い、他の分野においても運賃・料金の多様化等、利用者利便のより一層の増進が期待される。
       また、交通バリアフリー化に向けた施設整備への取組、大都市圏における混雑緩和、「ゆとり」、「安らぎ」を感じさせるハード・ソフト両面の連携強化、各種交通機関のネットワーク化、地球環境問題等を踏まえた公共交通機関の利用促進、訪日外国人旅行者に対する旅行費用の低廉化対策の一環としての外国人向け割引制度の積極的な展開、景観保持への一層の配慮等が求められる。


【観光に関して講じた施策】

 政府は10年度においても前年度に引き続き、国際観光の振興及び国内観光の振興等、観光に関する施策を講じてきたが、これらのうち、主なものは次のとおりである。

III 国際観光の振興

  1. 外国人旅行者の訪日促進のため、国際観光振興会は、海外での観光展への参加・協力等の広報・宣伝活動、緊急経済対策の一環としての「対米訪日旅行促進キャンペーン」の実施、外国の旅行業者・報道関係者等に対する宣伝活動、インターネットによる海外への情報提供等を実施した。
     また、在外公館、国際交流基金の広報活動や日本放送協会の国際放送により対日理解の増進を図った。


  2. 国内における国際交流の推進対策として、外国人旅行者向けの総合観光案内所(東京、京都)の運営、全国各地の「i」案内所の整備・充実(10年12月現在95か所)、国際観光テーマ地区外客誘致推進事業(JAPAN QUEST)等を進めるとともに、善意通訳(グッドウィル・ガイド)の普及等を推進した。
     また, 国際コンベンションの振興を図るため、国際観光振興会に設置した誘致センターによる情報の提供、諸外国における宣伝、誘致活動への支援等を行うとともに、寄付金の募集等により受入れ体制の整備を進めた。
     さらに、2002年に日韓共同で開催されるサッカーのワールドカップの開催準備への支援・協力、愛知県において開催される2005年日本国際博覧会の準備等のための支援、2008年夏季オリンピックの大阪市への招請等の基本的枠組みの閣議了解等を行った。


  3. 旅行関連手続きに関しては、出入国管理、査証発給手続、検疫、通関等の各種手続等の円滑化を図った。


  4. 海外旅行者の増加に伴い、海外旅行中に病気、交通事故及び犯罪等に遭遇する日本人が増加しているため、外務省海外安全相談センター、国際観光振興会等が、パンフレット、ビデオ等を作成・配付し、広報・啓発に努めるとともに、インターネットを通じて5段階の「海外危険情報」を提供している。


  5. 観光関係国際機関等への協力、開発途上国に対する専門家の派遣、研修員の受入れ等の支援、協力を行った。

IV 国内観光の振興

  1. 国・地方公共団体等の連携による観光振興の取組

    (1) 国内観光の再生に向けた取組として、国・地方公共団体、観光関係事業者等の緊密な連携による、様々な観光振興施策が進められている。
     21世紀に向けた観光の新しい課題に対応していくため、地方ブロック単位で「広域連携観光振興会議(WAC21)」を開催し、より広域での観光振興を目指すこととした。10年11月には、第1回目の広域連携観光振興会議が東北ブロック(青森、岩手、宮城、秋田、山形及び福島の6県)において開催され、「東北六県観光立国宣言」がなされた。

    (2) 地域伝統芸能等は、地域固有の歴史、文化等を色濃く反映したものであり、地域の特色を活かした観光の振興を図るために、極めて効果的である。
     10年5月には、岐阜県高山市及び下呂町において「第6回地域伝統芸能全国フェスティバル」が開催されたほか、海外においても地域伝統芸能等を披露し、観光客の誘致に努めている。

    (3) 送客側と受入側の地方公共団体と観光産業とが協力し、首都圏の消費者をターゲットに新しい国内旅行の提案、旅についての総合的な情報の発信と交流、旅の魅力をアピールする展示と実演等を行う旅の総合イベントとして「旅フェア '98」が、10年4月に開催され、25万人の入場者があった。

    (4) 9年11月の政府の緊急経済対策を受けて、モデル地域における観光地評価を踏まえた観光地づくりプログラムの策定、観光振興イベント支援事業の集中的実施を内容とする「観光地づくり推進モデル事業」に関し、全国5ケ所の観光地について、事業に着手した。

    (5) 北海道は、豊かな自然・新鮮な味覚等の多彩な観光資源を有しており、来道者数もここ数年増加傾向にある。また、観光振興は、北海道において重要なテーマであり、政府においても、観光基盤の整備、観光資源情報ネットワークの充実、アウトドア活動に資する施設整備等を通じ、北海道の特色を生かした観光振興を積極的に支援している。

    (6) 沖縄県は、恵まれた自然景観・独特の伝統文化、歴史等、魅力的な観光・リゾート資源を有しており、観光客も年々増加している。また、観光振興は、沖縄県において重要なテーマであり、政府においても、沖縄振興開発特別措置法等を改正することにより、より一層の観光振興を図るとともに、道路整備等の関連インフラの整備等を通じて、積極的に支援している。


  2. 観光旅行者の保護及びサービスの向上

    (1) 旅行業等に係る施策

    1. コンビニエンスストア等における主催旅行商品等の販売の解禁、旅行業の登録及び更新の登録の有効期間の延長等の規制緩和の実施に併せ、立入検査及び報告徴収の強化、旅行業約款等の見直し検討委員会の設置等により消費者保護の充実を図った。また、10年6〜7月にかけて開催された「FIFAワールドカップフランス '98」において発生した、ワールドカップチケット問題に関して、旅行業者に対し、再発防止等の指導を行った。
       旅行業における公正な競争の確保、適正な情報提供の推進、観光土産品の品質、規格等の表示及び包装の適正化を図った。

    (2) 価格・サービスの多様化等

    1. 最近の国民の旅行ニーズの多様化等に対応するため、体験型旅行商品の提供、旅館における泊食分離制度の導入等新しい形態のサービスが提供されている。

    2. 従業員の慰安、社内の親睦等を目的とする全従業員を対象とした会社主催の4泊5日以内の従業員レクリエーション旅行については、少額不追求の趣旨を逸脱しないものに限り課税されないこととされており、日数や旅行先の選択の幅の広い多様な旅行を楽しむことができるようになっている。

    3. 鉄道運賃制度については、従来から運賃の50%までの営業割引等の設定・変更について届出制としているが、9年1月から、認可された上限運賃の範囲内であれば、路線別、季節別、曜日別などの多様な運賃の設定・変更を報告により行えることとし、改善を図っている。

    4. 国内航空運賃については、6年に5割以内の営業政策的な割引運賃を届出制とし、7年に標準原価を上限とする一定の幅の中で、航空会社が自主的に運賃を設定できる幅運賃制を導入しており、50%の事前購入割引、特定便割引等利用者の多様なニーズを踏まえた割引運賃等により、多様化、低廉化が進んでいる。

    (3) 観光情報提供体制の整備等

    1. 日本観光協会によるインターネットを通じた国内観光の情報提供、国際観光振興会によるインターネットを通じた観光情報の海外提供、コミュニティ放送局の開局、マルチメディア等を利用した各種観光情報の提供等観光情報提供体制の充実に努めた。

    2. 座席予約システム、移動体情報システム等各種情報システムを活用して予約の容易化・総合化、移動時間の有効活用等が図られた。

    3. コンピュータ西暦2000年問題に関し、我が国における交通、旅行、宿泊等の観光関連分野において、2000年問題の国民への周知等を通じて、システムの改修等、民間部門の徹底した対応を促進した。

    (4) 高齢者・障害者等の円滑な移動の確保
     公共交通機関、宿泊施設、文化施設等及びその他観光関連施設において、高齢者・障害者等の円滑な移動を確保するため、エスカレーター・エレベーターの設置等の施設の整備改善などのバリアフリー化を推進するとともに、運賃の割引措置等を講じた。


  3. 観光資源の保全・保護

    (1) 国立公園等自然公園の整備、森林の保全管理、河川、湖沼及び海洋環境の保全、都市緑地の保全、温泉の保護、野生生物の保護等を推進し、自然とのふれあいの要請にこたえるとともに、自然環境の保全を図った。

    (2) 国宝・重要文化財等の文化財の保存・活用、無形文化財の伝承者養成等を進め、また、歴史的集落・町並み、歴史的港湾についての保存・活用を図った。

    (3) 10年11〜12月に京都において開催された、第22回世界遺産委員会会議において、「古都奈良の文化財」が我が国で9番目の世界遺産として、新たに世界遺産一覧表に記載された。

    (4) 都市、農山漁村、水辺、道路について景観の整備を促進し、良好な景観の形成と魅力あるまちづくり等を進めた。

    (5) 「旅しよう 日本列島再発見」を統一テーマとした第34回観光週間(8月1日〜7日) 、みどりの週間(4月23日〜29日)等を通じて、観光資源の保全・保護等について、広報・啓発等を行った。


  4. 観光レクリエーション施設等の現況と整備

    (1) 公的観光レクリエーション施設等
     各省庁においては、@宿泊を中心とするレクリエーション施設等、A農山漁村地域におけるレクリエーション地区等、B森林・公園等を活用したレクリエーション施設等、C自然体験施設・親水レリエーション施設等を総合的・広域的に整備した。

    (2) 民間活力の活用による総合保養地域の整備
     民間活力の活用に重点を置いて整備し、ゆとりある国民生活の実現と地域振興を図るために「総合保養地域整備法」に基づき整備が進められ、多数のプロジェクトが供用され地域の活性化に貢献している。リゾート整備を着実に整備・推進するため、アドバイザーの派遣等を行っている。

    (3) 民間観光レクリエーション施設
     国民の観光レクリエーション需要の高まりに伴い、民間等により、レジャーランド、オートキャンプ場、一般キャンプ場、スキー場、マリーナ、クアハウス、ゴルフ場、観光牧場等様々な観光レクリエーション施設等が全国的に整備・運営されている。


  5. 観光関連施設の現況と整備

    (1) 博物館、美術館等の整備・充実を図り、所蔵品を収集・保管・展示して一般の利用に供するとともに、解説書の発行や各種講座等を開催した。

    (2) 国立競技場等の体育・スポーツ施設や青年の家等の青少年教育施設の整備を進めた。また、パラグライダー等のスカイレジャーの進展に対応し、安全の確保及びその振興・普及に係る施策を進めている。


  6. 宿泊・休養施設の現況と整備

    (1) 一定規模のホテル・旅館等について、近代化を推進するため環境衛生金融公庫において設備資金等の融資を行うとともに、「国際観光ホテル整備法」に基づく登録ホテル・旅館については、政府系金融機関による融資によって施設整備を支援した。

    (2) 宿泊施設やサービス・料理の面で高齢者が利用しやすい旅館・ホテルとして一定の基準を満たした旅館等をシルバースター旅館として認定登録し、従業員等に対し研修を実施しており、11年2月現在 694軒が認定登録されている。

    (3) 公的施設等として、国民宿舎、ユースホステル等の運営、整備を行った。


  7. 観光基盤施設の現況と整備

    (1) 鉄道については、整備新幹線の既着工3線4区間の整備を推進するとともに、新規に3線3区間を着工した。
     また、主要幹線鉄道では、引き続き宗谷線及び豊肥線の高速化事業を推進するとともに、愛知環状鉄道の高速化事業に着手した。
     さらに、車両の居住性の向上や移動制約者対応トイレの導入等の社会的ニーズへの対応等の観点から、輸送サービスの改善が進められている。

    (2) 道路については、高規格幹線道路、地域高規格道路、一般国道及び地方道、有料道路の整備・建設を促進し、「道の駅」や「ハイウェイオアシス」の整備を進めた。高速自動車国道は、東北横断自動車道寒河江〜西川区間等の開通により、全体供用延長が 6,453]となった。
     また、一般自動車道やバスターミナルの整備・運営、観光地のバス・タクシーについて、利用者利便の向上が図られている。

    (3) 空港については、航空ネットワークの拠点となる大都市圏における拠点空港の整備を最優先課題として推進するとともに、一般空港等の整備を進めた。
     また、航空運送分野における競争促進を通じて利用者利便の向上を図るため、国内線のダブル・トリプルトラック化、国際線の複数社化を推進した。
     さらに、羽田空港新C滑走路の供用に伴う発着枠配分を契機として、国内航空分野において2社が新規参入した。

    (4) 海上交通については、運輸施設整備事業団との共有建造方式による国内旅客船の整備を進めるとともに、旅客船ターミナル等の整備を行った。

    (5) 観光地の環境衛生施設について、地域の生活環境の保全及び向上を図るために、水道及び下水道の整備の推進に努めた。


  8. 国内観光の安全確保

    (1) 鉄道、道路、航空及び海上交通の交通安全対策
     鉄道事故の防止を図るため、自動列車停止装置(ATS)の整備等を推進するとともに、乗務員等の教育訓練の充実、厳正な服務の徹底及び適正な運行管理を指導した。
     道路については、交通事故が多発している道路等について、特定交通安全施設等整備事業七箇年計画に基づき交通安全施設等の整備拡充を図るとともに、交通安全思想の高揚、自動車運送事業者における適正な運行管理の確保及び整備不良車両の運行防止等により交通事故の防止を図った。
     航空における安全の確保のため、航空保安施設の整備、航空機の運航の安全の確保、ハイジャック等に対する航空保安対策を行った。
     海上交通の安全を確保するため、海事関係法令の励行、旅客船の運航管理制度の徹底、プレジャーボート等の海難防止指導等により事故防止に努めた。

    (2) 宿泊施設等における安全対策
     旅館、ホテル等の防火対策として、建築基準法、消防法による指導、防火基準適合表示制度の推進等を図った。
     また、ホテル・旅館、飲食店等食品関係営業者について、食品衛生監視員の指導、食品衛生法に基づく管理運営基準の遵守の徹底を図った。

    (3) 観光地における自然災害防止対策
     台風や集中豪雨などの気象条件により土砂災害の発生しやすい環境にある山地流域については、砂防工事を実施するとともに、総合的な土砂災害対策の推進、火山噴火警戒避難対策事業の実施等の災害対策を推進した。

    (4) 気象等の情報の提供
     台風・集中豪雨雪対策等観測予報体制の強化、地震・火山対策の強化及び海洋・海上気象業務の強化を行い、観測体制の充実及び適時適切な予報・警報並びに情報の提供に努めた。

    (5) 遭難等の防止対策
     山岳遭難、水難防止を図るため、救助体制の充実、安全指導等諸施策を推進するとともに、観光旅行者に対し災害危険箇所及び避難地・避難路等の周知徹底を図るよう地方公共団体に対し指導を行うなど、避難体制の確立に努めた。


  9. 地方公共団体による観光振興の取組

    (1) 地方公共団体は、地域経済にとって多大な影響を及ぼす観光産業の振興のために、全国各地で特色あるイベントやキャンペーン、物産展等を実施・開催している。
     また、インターネットのホームページを活用して情報発信等を行うなど、観光宣伝に努めるとともに、地元の観光従事者の接遇の向上や観光バスの整備等受入れ体制の充実にも努めている。

    (2) 地方公共団体は、交流を通じた様々な地域振興の観点から、観光振興に積極的に取り組んでおり、観光基本計画等を策定し、総合的な推進を図っている。
     また、観光関連産業は、交通産業、旅行業、宿泊業、飲食産業、土産品産業等幅広い分野を包含した産業であり、その消費額の規模や関連する雇用規模からみて地域経済に多大な貢献をしている。このため地方公共団体は、観光情報の発信・提供、各種キャンペーンの実施、外国人観光客誘致の促進、観光客の受入体制の充実等を図っている。
     さらに、自然環境の保全、文化財の保護、観光地の美化清掃等を進めるとともに、国の支援・協力を受け、また独自に、観光施設・観光基盤の整備を行っている。


【平成11年度において講じようとする観光政策】

 平成11年度においては、従来の観光関係施策の充実強化に努めるほか、以下の事項について重点的に実施することとしている。

I 国際観光の振興

  1. 「ウェルカムプラン21」による外国人旅行者の訪日の促進を図るため、国際観光テーマ地区の整備と観光宣伝の実施、国際交流拠点・快適観光空間の整備、外国人旅行者の国内旅行費用の低廉化と接遇の向上、ワールドカップサッカー大会の開催を活用した広報・宣伝、受入体制の整備を図る。
     さらに、アジア圏を中心とした訪日促進諸事業の実施、米国向けの訪日旅行促進のための広報・宣伝事業を推進する。


  2. 在外公館等で各種広報活動を積極的に展開するとともに、昆明世界園芸博覧会・ハノーバー国際博覧会に参加・出展を行うべく準備を進める。
      また、国際コンベンションの一層の振興を図るため、誘致の促進、開催の円滑化を柱とした総合的な施策を講じるとともに、日韓共催で行われる2002年のサッカーのワールドカップについての支援協力、愛知県における2005年日本国際博覧会の開催についての、博覧会協会に対する指導・助言等を行う。


  3. 出入国管理、検疫、通関等の旅行関連手続の円滑化を図るとともに、日本人海外旅行者の安全確保のため、外務省海外安全相談センターや国際観光振興会による旅行の安全に関する情報の提供、相談・案内業務の実施、安全対策の啓発、旅行業者等への積極的な情報提供に努める。 


  4. 世界観光機関(WTO)等が行う観光関係の活動について協力するとともに、開発途上国に対する技術協力の一環として、国際協力事業団を通じた観光分野の研修員の受入れ、専門家の派遣及び開発調査の充実を図る。


II 国内観光の振興

  1. 国・地方公共団体等の連携による観光振興の取組

    (1) 観光資源の保全・保護、公的観光レクリエーション地区・施設の整備、観光関連施設の整備、宿泊・休養施設の整備、観光基盤施設の整備等に関して地方公共団体を支援し、地域における観光の振興を引き続き進める。

    (2) 10年度に成立した一部祝日の月曜日指定化のための「国民の祝日に関する法律」の一部改正などを受け、旅行期間の長期化、国内観光機運の醸成により、消費の拡大、景気の回復を図るため、旅行需要喚起等のための施策を推進し、長期滞在型観光を推進する。

    (3) 広域連携での観光振興方策を討議し、官民一体での各種施策の展開により、地域の活性化を目指し、「第2回広域連携観光振興会議(WAC21)」を、北陸地域において開催するとともに、和歌山県において「第7回地域伝統芸能全国フェスティバル」を行う。また、11年度に和歌山県において開催される「南紀熊野体験博」に対して各種の支援措置を講じる。

    (4) 国内旅行の促進と旅行を通じた交流人口の増大による地域の活性化を図るために、都道府県等と旅行関連産業が連携し開催する旅の総合見本市「旅フェア'99」を、11年4月に愛知県のナゴヤドームで開催する。

    (5) 受入側の地域と送客側の観光産業が連携して、共同で地域観光発展方策について協議する「デスティネーション開発協議会」を引き続き開催するとともに、10年度に着手した5カ所の「観光地づくり推進モデル事業」について、引き続き事業を実施していく。

    (6) 北海道観光のより一層の振興を図るため、道路・空港・港湾等の整備や観光情報システムの充実等の観光基盤の整備について各種の措置を講ずる。

    (7) 沖縄の基幹産業ともいえる観光の振興を図るため、11年度においても本土〜那覇間の航空運賃の低減に向けた措置を講じるとともに、観光振興に資するため、引き続き関連施設の整備推進等を行う。


  2. 観光旅行者の保護及びサービスの向上

    (1) 一層の消費者保護を図るため、8年4月から施行されている旅行業法の円滑な実施を引き続き図る。
     また、各運輸事業者による各種運賃・料金施策等利用者サービスの充実を図る。

    (2) インターネット等の情報通信メディア等を活用し、国民に観光地の最新情報を正確かつ迅速に提供するための観光情報提供体制の整備を進める。

    (3) コンピュータ西暦2000年問題に関し、我が国における交通、旅行、宿泊等の観光関連分野において、システムの改修等民間部門の徹底した対応を促すとともに、日本人海外旅行に関し、関係省庁、関係機関等が連携し、海外における2000年問題に関連した情報の収集に努める。

    (4) 公共交通機関等における高齢者・障害者の円滑な移動の確保のためのバリアフリー施設の整備を進めるとともに、割引運賃等の措置を引き続き実施する。


  3. 観光資源の保全・保護

    (1) 自然公園の公園計画について所要の見直しを進める。また、国有林野では、適切な森林の管理施業を推進するとともに、保護林の設定、世界遺産に登録された屋久島、白神山地を始めとする既存の保護林の適切な保護管理等により自然環境の保全・形成を図る。

    (2) 水質の保全を図るため、水生植物等の生態系を活用した水質浄化施設の整備を推進する。また、水質・底質の浄化を図る海域環境創造事業を実施する。

    (3) 文化財等の文化遺産の保護・保存・活用を一層推進するとともに、都市景観、農山漁村景観等の整備等を推進する。

    (4) 第35回観光週間(8月1日〜7日)、自然に親しむ運動、みどりの週間、文化財保護強調週間等を通じて、観光資源の保全・保護に関連する広報啓発活動を実施する。


  4. 観光レクリエーション施設等の整備

    (1) 公的観光レクリエーション施設等の整備

    1. オートキャンプ等の施設を自然の中に確保する自動車旅行拠点(家族キャンプ村)の整備を6地区で継続するとともに、北海道オートリゾートネットワーク構想関連施設の整備を行う。

    2. 過疎地の有する自然環境を有効に活用する過疎地域滞在施設整備モデル事業地区の整備を8地区で継続するほか、新たに8地区の整備に着手する。

    3. 農山漁村地域において、その自然、文化、人々との交流を楽しむ滞在型の余暇活動であるグリーン・ツーリズムの推進を図るため、新たに子供達を対象とした実践活動事業を創設する。

    4. 国立・国定公園の利用者が自然と十分にふれあうことができるよう園地、歩道等を重点的に整備する。また、国営武蔵丘陵森林公園等16公園の整備を引き続き行う。

    5. 豊かな自然、歴史・文化的施設を連絡する歩行者専用道路を整備し、訪れた人が安全かつ快適に散策等を楽しむことができる「ウォーキング・トレイル」事業を推進する。

    6. 国民の健康を増進するため、周辺の砂浜の保全・復元、遊歩道の整備等健康増進のために利用しやすい海岸づくりや教育関連施設等の施策と連携し、世代間の交流の場、自然・教育活動の場等として利用しやすい海岸づくりを行う。

    (2) 「総合保養地域整備法」の適切な運用により、中長期的な視点から魅力ある多様な総合保養地域の整備を推進する。


  5. 観光関連施設の整備
     博物館、美術館や体育・スポーツ施設の整備、充実を図るとともに、新国立劇場においては、年間を通じオペラ等の公演のほか、研修事業の実施等を行う。  さらに、沖縄振興策の一つとして、組踊等沖縄伝統芸能の保存振興とアジア・太平洋地域との交流の拠点となる「国立組踊劇場(仮称)」の設立準備を進めるための具体的な調査検討を行う。


  6. 宿泊・休養施設の整備
     宿泊施設の整備に対する融資制度により、施設整備の支援を行うとともに, 高齢者等の利用に配慮した宿泊施設の整備を図るため、シルバー・スター登録制度の普及を促進する。


  7. 観光基盤施設の整備

    (1) 整備新幹線の建設、主要幹線鉄道の高速化、輸送力増強及び輸送サービスの向上等を促進するための都市鉄道の整備を推進する。

    (2) 道路整備五箇年計画に基づき、「新たな経済構造実現に向けた支援」等4つの緊急課題に重点を置き、道路政策を重点的かつ計画的に推進する。

    (3) 空港整備七箇年計画に基づき、大都市圏の拠点空港の整備を優先課題として空港整備を推進する。

    (4) 港湾整備七箇年計画に基づき、旅客船ターミナル、マリーナ等の整備を図る。

    (5) 下水道整備七箇年計画に基づき、公共下水道、流域下水道、特定環境保全公共下水道等の整備を図る。


  8. 国内観光の安全確保

    (1) 鉄道事故の防止を図るため、自動列車停止装置(ATS)等の整備を進める。

    (2) 近年の交通事故の多発傾向にかんがみ、安全かつ円滑・快適な道路交通環境の整備を図るため、特定交通安全施設等整備事業七箇年計画に基づき、交通安全施設等の一層の整備拡充を図る。

    (3) 航空交通の安全性、効率性及び管制処理能力の向上を図るため、衛星を利用した航空管制を行うための航空衛星システムの整備を引き続き推進し、12年度からの運用開始を目指す。

    (4) ハイジャック事件等の防止のための航空保安対策の一層の推進を図るとともに、航空分野における危機管理の充実を図るため、新たに国管理空港に監視カメラや通信回線用機器等を整備し、航空危機管理体制の迅速かつ的確な管理体制を構築する。(5) 海上交通の安全を確保するため、海事関係法令の励行に重点を置くとともに、航路標識の新設等を計画的に推進する。

    (6) 宿泊施設等における防火安全体制を確立するため、防火基準適合表示制度の充実及び一層の推進を図る。

    (7) 気象、地象、水象に関する観測・監視体制の強化及び予報・警報等の精度向上等的確な気象情報の提供を推進する。

    (8) 山岳遭難に関し、救助体制の強化・充実、安全登山の注意喚起を図る。また、迅速かつ的確な水難救助を図るための指導や救助訓練等を実施する。


  9. 観光関係行政機関等の活動

    (1) 観光政策審議会を始め各観光関係審議会は、適宜所管の事項について調査、審議を進める。

    (2) 観光関係団体の活動に対し引き続き支援、指導を行い、観光の振興を図る。