平成12年度 観光の状況に関する年次報告

はじめに

 21世紀という新しい時代を迎えたいま、我が国の経済社会システムは様々な面で大きな変革を迫られている。規格大量生産型の社会から多様な情報と個性を尊重する知恵の社会への飛躍である。
 これに伴い、社会を構成する基盤であるひとりひとりの国民も「自立した個人」として主体的に社会にかかわりを持っていくことが求められる時代が到来すると予想される。
 我が国が21世紀においても主要なプレーヤーとして世界に貢献していくためには「自立した個人」が、楽しく活力を保って毎日を暮らせる環境を実現していくことが大事であるが、観光は日常生活を離れて生活の変化を求める人間の基本的欲求を充足するものとして、人間性の回復、健康・体力の維持向上に重要な手段となっており、人々の生活にゆとりとうるおいを与えるとともに、魅力ある観光地づくりを通じ地域住民の誇りと生きがいの基盤形成にも寄与するものであることから、観光の振興がますますその重要性を増していくと思われる。
 また、近年においては産業構造の変化等から従来の地域構造が機能しなくなり、国内各地域において「まち」の停滞が指摘されるなか、観光振興を通じて地域固有の自然・文化や伝統の保持・発展を図り魅力ある地域を実現していくことは地域の活性化にも大きく寄与するものである。


 さらに、グローバル化が進展する中にあって、外国人との直接的な交流の場を提供する国際観光の振興は国際相互理解の増進、国際親善ひいては国際平和にも貢献するという大きな意義を有している。
 観光産業が幅広い分野を包含した総合産業であることを考えればその発展が国民経済に与える効果についても注目すべきである。
 我が国が現在おかれている状況と観光のもつ役割や意義を考えあわせると、観光振興を国づくりの柱として据え、国、地方公共団体、経済界等が連携してその振興を図っていく時代が到来したと言える。
 この冊子は、観光基本法に基づき、観光の状況及び政府が観光に関して講じた施策について報告するとともに、交通政策審議会の意見を聴き、観光について講じようとする政策を明らかにするものである。
 具体的には、まず、「平成12年度観光の状況に関する年次報告」として、第1章において主に12年における観光の状況を取りまとめ、第2章において観光振興をめぐる新たな動きとして、観光政策審議会答申(12年12月1日)の概要等を記載した。また、第3章において国際観光の振興施策の展開を、第4章において国内観光の振興施策の展開として、国・地方公共団体等の連携施策の展開、旅行に係る消費者保護・サービス向上施策の展開、観光資源の保全・保護施策の展開、観光レクリエーション施設等の整備施策の展開、地方公共団体による観光振興施策の展開等について取りまとめた。
 また、「平成13年度において講じようとする観光政策」として、第1章において「触れ合いと活力に満ちた観光交流大国日本」の実現をめざして展開する諸施策の方向を、第2章において、国際観光の振興に向けた総合的施策の展開をめざして、第3章において、国・地方公共団体等の連携施策の展開などを含めて国内観光振興のための幅広い施策の展開をめざして、13年度において講じようとする政府の各種施策を明らかにしている。