平成12年度の観光をめぐるトピックス

平成12年の訪日外国人旅行者は476万人と過去最高

平成12年の日本人海外旅行者は1、782万人と過去最高

観光政策審議会が「21世紀初頭における観光振興方策―観光振興を国づくりの柱に―」を答申(12.12.1)

「新ウェルカムプラン21」について(12.5.30)

映画の舞台は観光地―フィルム・コミッション設立の気運

被災地における観光振興

日中文化観光交流使節団2000と中国人団体観光旅行の受け入れの開始(12.5.20/12.9)

旅行取引もIT時代に突入

交通バリアフリー法の施行(12.11.15)

「観光振興に寄与する高規格幹線道路等の供用(東海北陸自動車道・山陰自動車道等)」

琉球王国のグスク及び関連遺産群の世界遺産への登録


平成12年の訪日外国人旅行者は476万人と過去最高
 訪日外国人旅行者数については、11年はアジア地域の景気回復等を背景に、444万人と過去最高を記録したが、12年は、為替レートの安定、アジア地域における日本への関心の高まり等を背景に、すべての月でプラス成長となり、476万人(対前年比7.2%増)と過去最高を記録した。
 このように、訪日外国人旅行者数が過去最高を記録したとはいえ、未だに日本人海外旅行者数と比較すると4分の1程度にとどまっており、引き続き海外旅行者の訪日を積極的に促進していくことが必要である。

山口県萩市内を訪れる外国人観光客

「横浜」を訪れる外国人観光客

 

平成12年の日本人海外旅行者は1、782万人と過去最高
 日本人海外旅行者数については、12年は、前年末の2000年問題による海外旅行手控えの反動や、シドニー五輪及びハッピーマンデー等によ る影響を背景に、1、782万人(対前年比8.9%増)となり、過去最高を記録した。
 特に、韓国への日本人海外旅行者数は、9年から4年連続で対前年の伸び率で二桁の増加が見られた。
 国際観光は非常に幅広い層で行われる国際交流であり、各国の相互理解を深め、友好・信頼関係を強め、ひいては国際平和にも貢献すると いう点で大きな役割が期待されている。

日本人海外旅行者の出発風景(新東京国際空港)

関西国際空港

 

観光政策審議会が「21世紀初頭における観光振興方策―観光振興を国づくりの柱に―」を答申 (12.12.1)
 観光をめぐる経済・社会環境の変化に対応し、また、平成7年の答申において示された観光政策の基本的な方向をより具体化していくため、 観光政策審議会が運輸大臣に平成12年12月1日「21世紀初頭における観光振興方策―観光振興を国づくりの柱に―」を答申した。これは、11 年4月の諮問に答えたものである。
 答申では、観光をめぐる経済・社会環境の変化を踏まえて、今後、観光振興を国づくりの柱に据えていくことを提言しており、21世紀初頭に おいて早急に検討・実現すべき具体的施策の方向を提示し、関係者等に向けて具体的行動を要請している。国土交通省は、答申を受け、これを 実現するための取組みを行っていくこととしている。

観光政策審議会

観光政策審議会 答申

 

「新ウェルカムプラン21」について(12.5.30)
 平成12年5月に開催された「観光産業振興フォーラム(第2回通常総会)」において「訪日外客倍増に向けた取組みに関する緊急提言」が採 択され、概ね2007年を目途に訪日外国人数800万人を目標とすることとした「新ウェルカムプラン21」が取りまとめられた。「新ウェルカム プラン21」においては、従来の「ウェルカムプラン21」に基づく取組みに加えて、
  イ.外国人の来訪促進に関する国民的合意の形成
  ロ.国・地方における外国人来訪促進のための取組みの充実強化
  ハ.民間の観光業界における外国人来訪促進のための取組みの充実強化
の事項が盛り込まれている。現在、同プランに基づき、訪日外国人倍増に向けて、官民一体となって積極的に取り組んでいるところである 。

観光産業振興フォーラム

グッドウィル・ガイド(善意通訳)

 

映画の舞台は観光地―フィルム・コミッション設立の気運
 映画等のロケーション撮影をスムーズに進めるための支援組織をフィルム・コミッション(FC:Film Commission)といい、現在、欧米を中心 に世界25カ国に約270の団体が自治体コンベンション・ビューロー等に設置されており、地域の経済・観光振興に大きな効果を上げている。
 日本には、この支援組織がなく、撮影環境も良くないことから、ここ10年余り米国メジャー系の映画撮影が全く行われていなかった。この 状況を憂う映画関係者が中心となり、12年2月、民間による任意の「FC設立研究会」が設立されるとともに、9月に「全国シンポジウム」、11月 に東京国際映画祭で「国際シンポジウム」が開催され、我が国のFC設立運動の状況を国内外に発信するなどしてFC設立の気運が盛り上がった 。この動きは、発足当初からマスコミ等にも報道され、予想を遥かに上回る早さで地方自治体の間に地方FC設立の動きが広まり、現在、東京都、 大阪商工会議所及び神戸、横浜、北九州の各市にFCが設立されたところである。
 この新しい動きに対しては、外客誘致の促進や観光による地域振興の観点から今後も積極的に支援をしていくこととしている。

フィルム・コミッション(神戸市内での撮影風景)

フィルム・コミッション(設立研究会資料)

 

被災地における観光振興
 平成12年3月の北海道有珠山の噴火災害、6月の三宅島の噴火災害及び伊豆諸島近海の地震災害、10月の鳥取県西部地震により、直接的な被 害を受けた地域はもとより周辺地域も風評被害によって観光に大きな打撃を受けた。
 そのため、国、自治体、観光関係者が協力して、ポスターの作成・掲示、正確な情報の提供や旅行商品の重点的企画等の種々の対策を講じる ことにより、これら地域への観光客の来訪促進を支援した。
 また、特に、北海道では、「ガンバル フンバル 北海道」キャンペーンを実施し、北海道観光キャラバン隊が全国を回るなど元気な北海道 をアピールするとともに、鳥取・島根県では、鳥取・島根地域の観光魅力を広く訴えることにより観光復興のきっかけとするため、平成12年11月27日に米子市において、「鳥取・島根観光復興フォーラム―元気いっぱい!鳥取・島根―」を開催した。
 さらに、大島、新島等では、旅行業者、マスコミ等関係者、一般参加者及び島嶼関係者等による「洋上シンポジウム」を開催した。

「ガンバル フンバル 北海道」キャンペーン事業の一環「感動市場2000」(有珠山昭和新山会場)

「元気いっぱい! 鳥取・島根」ポスター

 

日中文化観光交流使節団2000と中国人団体観光旅行の受け入れの開始(12.5.20/12.9)
 平成12年5月、西暦2000年を記念して、当初予定していた2、000人をはるかに越える約5、000人からなる「日中文化観光交流使節団2000」が 訪中し、20日には、人民大会堂において使節団の特別顧問二階運輸大臣、中馬総括政務次官らが江沢民国家主席らと会談を行うとともに、記念 式典を行った。これを契機として、日中双方向の観光交流の拡大のため、12年6月20日、中国からの訪日団体観光客の受け入れについて日中政 府間で調整を終え、9月13日の第一陣の来日を機に、中国からの団体観光旅行が開始された。
 本団体観光旅行は、訪日外国人旅行者数の増大だけでなく、国民レベルの相互交流を拡大させ、日中両国民の相互理解を深めていくことに も役立つものである。さらに、国土交通省では、二国間の交流拡大にとどまらず、韓国等の東アジアの近隣諸国との観光交流の拡大を通じ、東 アジア全体の受入観光客の増大を目指しているところであり、「観光は平和のパスポート」を体現できるよう、観光を通じて諸外国との友好 関係の強い絆を築いていくために努力していくこととしている。

中国人団体観光旅行(浅草)

日中文化観光交流使節団

 

旅行取引もIT時代に突入
 IT社会の到来に伴い、インターネットを利用した旅行取引が拡大している。旅行商品はその特性上電子商取引に適した商品であるため、こ の傾向は今後も続くものと予測されており、また、旅行商品は携帯端末による取引の規模が大きいことも特徴として挙げられている。
 こうした動きに合わせ、電子旅行取引の普及に応じた消費者保護等の環境整備が必要となっている。12年6月には旅行業協会において、イ ンターネットを利用した旅行取引に関するガイドラインを制定した。消費者が安心して取引できるよう、ガイドラインを遵守している旅行業 者のホームページに対し、旅行業協会が適正マーク(e‐TBTマーク)を交付している。また、12年11月には、旅行契約の契約時に義務付けている 書面の交付について、電子的手段によってもできるよう旅行業法の改正を行った。これにより、インターネット等による取引において、書面を 郵送することなく契約を締結することが可能になり、また、携帯電話では、予約や商品紹介にとどまっていたものが、契約締結まで可能になっ た。
 国土交通省では、今後も電子旅行取引の拡大に応じ、適切な環境整備を行っていくこととしている。

適正マーク(e-TBTマーク)

携帯電話による旅行取引

 

交通バリアフリー法の施行(12.11.15)
 我が国では、他に例を見ない急速な高齢化が進んでおり、2015年には国民の4人に1人が65歳以上の高齢者となる本格的な高齢社会を迎える 。また、障害を持つ人が障害を持たない人と同じように社会に参加できる「ノーマライゼーション」の考え方も広まってきている。
 こうした状況を踏まえ、12年5月17日、高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の利便性及び安全性の向上を促進することを目 的とする「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(交通バリアフリー法)」が公布された。
 同法は、交通事業者に対し交通施設を新たに整備・導入する場合にはバリアフリー化を義務付けるとともに、鉄道駅等の旅客施設を中心と した一定の地区において、市町村が作成する基本構想に即して、旅客施設、周辺の道路、駅前広場、信号機等の重点的・一体的なバリアフリー化 を進める制度を導入することを内容としている。
 同法は、12年11月15日から施行され、高齢者、身体障害者をはじめ、すべての人が、より快適で安全な旅行を楽しめるようになることが期待 される。

ノンステップバス

駅エレベーター

 

「観光振興に寄与する高規格幹線道路等の供用(東海北陸自動車道・山陰自動車道等)」
 名神高速道路と北陸自動車道とを相互に連絡する東海北陸自動車道は、富山県側から五箇山〜福光間16kmが平成12年9月30日に、愛知県側 から荘川〜飛騨清美間19kmが同年10月7日に開通した。五箇山〜福光間は、散居村の田園風景が広がる砺波平野を抜け、世界遺産・合掌造り集 落などで知られる五箇山地方へ至り、観光客の増加など地域の活性化が大きく期待されている。また、その玄関口である五箇山ICは「森のイ ンター」をイメージしており、城端SAでは高速自動車国道活用施設としては全国初めて滞在型の温泉施設と連結している。荘川〜飛騨清美間 は、世界遺産の白川郷、奥飛騨温泉郷、高山の古い町並みなどが沿線にあり、遠方の観光客からも注目を集めている。
 また、平成13年3月24日、山陰自動車道(宍道〜松江玉造)及び安来道路、松江道路が開通した。
 本道路の開通により、中国横断自動車道岡山米子線等の高規格幹線道路と一体となって、島根県内はもとより四国・近畿地方との広域交流 が促進されている。
 山陰道周辺は、大山(だいせん)、宍道湖(しんじこ)、日御碕(ひのみさき)、数々の温泉や年間約220万人の観光客が訪れる出雲大社(いずもた いしゃ)、古代出雲国を象徴する358本もの銅剣が発見された国指定史跡の荒神谷(こうじんだに)遺跡、国際文化観光都市に指定されている松 江市など、自然・歴史・文化に恵まれた観光資源豊かな地域であり、快適な観光ルートとして観光客に喜ばれている。さらに開通を記念し、周 辺市町が連携したイベントの開催や島根・鳥取両県が連携した山陰路観光キャンペーンなどを実施している。

東海北陸自動車道 五箇山IC〜福光IC開通式

安来道路 安来ICより松江方面を望む

 

琉球王国のグスク及び関連遺産群の世界遺産への登録
 12年11月27日から12月2日にかけてオーストラリアで開催された第24回世界遺産委員会において、「琉球王国のグスク及び関連遺産群」が 、世界遺産に登録された。日本では11番目の世界遺産となる。
 登録された遺産群は、琉球国王の居城であった首里城跡(しゅりじょうあと)等の5つのグスク、斎場御嶽(せいふぁうたき)等の2つの祭祀拠 点、王家別邸の庭園であった識名園(しきなえん)、第二尚氏王統の陵墓である玉陵(たまうどぅん)の計9つの史跡、特別名勝、重要文化財である 。
 いずれも14世紀後半から18世紀末にかけて生み出された、琉球地方独自の特徴を表す文化遺産群である。
 今後、これら世界遺産の保全を図りつつ、琉球の歴史・文化を伝えるため、観光等をも含めた活用方法について検討が深まることが期待さ れる。

識名園

首里城跡