第2節 伸び悩む国内観光

  1. 最近の日本人の国内観光の動向
    (1)12年の国内観光レクリエーションは厳しい状況

     平成12年の我が国の観光は、我が国経済の緩やかな改善が続いているものの、個人消費は足踏み状態となっており、また、国民の旅行ニーズの多様化と高度化の中で、引き続き厳しい状況が続いている。
     12年の国内宿泊観光レクリエーションは、旅行回数、宿泊数、消費額ともに減少した。

    2)最近の国内観光の動向
    1個人・グループ旅行が好調
     個人消費の足踏状態が続く中で、個人の観光はツアー価格の低下や航空運賃の割引き効果を背景に、ツアー商品を中心に取扱額、取扱人数ともに好調を維持している。中でも特に、家族旅行の需要が高い。
     これに対し、団体・法人の旅行需要は、景気の先行き不安等を背景に引き続き低迷状況が続いている。

    2「安・近・短」旅行と「安・遠・短」旅行の傾向が続く
     国民の宿泊旅行については、従来より「安」(旅行商品の低廉化)、「近」(近距離)、「短」(短い日数)のいわゆる「安・近・短」旅行の傾向が指摘されてきた。
     このような旅行とともに、有珠山の噴火災害の影響により北海道方面が不調だったものの、遠距離方面への旅行も引き続き好調で、「安・遠(遠距離)・短」の傾向が続いている。この「安・遠・短」旅行の要因としては、低価格商品の販売、官民一体となった積極的な観光キャンペーンの展開に加え、航空運賃の自由化による航空機を利用した旅行商品の人気が挙げられる。

    3体験型レクリエーション等旅行ニーズの多様化
     観光地での行動は、「都市の散策」、「伝統文化とのふれあい」、「買物、飲食」、「テーマパーク、遊園地」、「海洋性レクリエーション」などの体験型レクリエーションも人気を呼んでいる。
     これらに加えて、近年の自然環境の保全・保護に関する関心の高まりなどから、少人数で自然や野生生物とのふれあい等を通じて自然保護に対する理解・認識を深めていくエコツーリズムヘの関心も高まっている。
     さらに、近年の自然志向への高まりを背景に、旅行業者と各地域の観光協会、農林漁業者や農協等との連携により、農山漁村地域を中心に自然、文化、人々との交流等を目的とした滞在型の余暇活動であるグリーン・ツーリズムヘの関心も高まっている。
     このような傾向は、文化遺産の見学が中核となっていた修学旅行においても表れてきており、農業体験や自然体験等による体験学習の比重が高まってきている。

  2. 宿泊旅行の動向
    (1)宿泊旅行の回数と宿泊数

     12年における国民の宿泊を伴う国内旅行の回数及び宿泊数は、国土交通省が実施した調査から推計すると表1-2-1、図1-2-1、2-2のとおりである。

    表1-2-1 国民1人当たり平均宿泊旅行回数及び宿泊数 

    図1-2-1 国内宿泊旅行回数の目的別構成比率 

    図1-2-2 国内宿泊旅行宿泊数の目的別構成比率

    1宿泊旅行の回数
     宿泊旅行に行った回数は、国民1人当たり平均2.56回(前年比0.8%減)、国民全体では延べ3億2、500万回と推計され、前年比で減少となった。これを旅行の種類別に見ると、「観光」が1人当たり平均1.32回(全旅行の51.6%)、「家事・帰省」が同0.50回(同19.5%)、「業務」が同0.40回(同15.6%)、「兼観光(業務、家事・帰省のついでに1泊以上付け加えて観光を行った場合をいう。)」が同0.19回(同7.5%)となっている。観光及び兼観光は、前年と比較して平均回数で1.52回と減少し、また、宿泊数の構成比率では宿泊旅行全体の59.1%と、ほぼ前年並みとなっている。

    2宿泊数
     年間を通じた宿泊日数は、国民1人当たり平均5.18泊(前年比4.2%増)、国民全体で延べ約6億5、700万泊と推計され、前年から増加に転じた。これを旅行の種類別に見ると、「観光」が国民1人当たり平均2.03泊(全旅行の39.1%)、「家事・帰省」が同1.29泊(同24.9%)、「業務」が同1.24泊(同23.9%)、「兼観光」が同0.44泊(同8.5%)となっている。宿泊旅行に占める観光及び兼観光は1人当たり平均2.47泊で、宿泊数全体の47.6%を占めている。

    2)宿泊観光・レクリエーション旅行の量と消費額
     12年における国民の宿泊を伴う観光・レクリエーション旅行の回数及び宿泊数並びに消費額は、表1-2-2のとおりになっている。

    表1-2-2 宿泊観光・レクリエーション旅行の量及び消費額

    1宿泊観光・レクリエーション旅行の量
     観光と兼観光を合わせた宿泊観光・レクリエーション旅行の量は、旅行回数で国民1人当たり平均1.52回(延べ人数約1億9,300万人)、宿泊数で同2.47泊(延べ宿泊数約3億1,300万泊)であり、旅行回数、宿泊数とも減少した。

    2宿泊観光・レクリエーション旅行の消費額
     観光と兼観光を合わせた宿泊観光・レクリエーション旅行の消費額は国民1人当たり約5万7、500円、全体では約7兆2、900億円と推計され、前年に比べ大きく減少した。
     国民1人当たりの消費額は、前年に比べて名目で11.1%減、実質で10.6%減となっている。
     観光と兼観光を合わせた宿泊観光・レクリエーション旅行の回数を月別に見ると、依然として夏休みを取る機会の多い8月が高く、年間の15.0%を占めている。
     月別旅行回数について12年と過去5年間の平均とを比較すると、12年の旅行回数は、7月、8月が減少したものの、1月、5月は増加しており、年間を通じた旅行回数の平準化が足踏み状態となっている(図1-2-3)。

    図1-2-3 月別宿泊観光・レクリエーション旅行の回数(1人当たり平均)

  3. 主要輸送機関の旅客輸送の実績
     12年の国内旅客輸送は、景気回復が足踏みの状態で推移したこともあり、フェリー、航空は前年を若干上回ったものの、総じて横ばいで推移した(表1-2-3)。

    表1-2-3 輸送機関別国内旅客輸送量

     輸送人員を見ると鉄道は、企業の雇用調整による定期旅客から定期外旅客へのシフトや少子化の影響による定期旅客の減少の一方、短距離の旅行・レジャーが堅調だったことからJR旅客会社計で0.1%減(対前年比、以下同じ)、民鉄計で0.6%減となった。
     バス(乗合、東京)は、自家用乗用車へのシフトや雇用者減、少子化に伴う定期需要の減少により2.4%減と9年連続で減少した。また、タクシー(東京)は、1.9%増と6年ぶりに増加した。
     フェリーは、航路再編等が一段落し、0.3%増となった。
     航空は、輸送力の拡大、割引運賃制度の拡充等により、計0.6%増と堅調に推移した。
     また、高速道路の通行自動車台数は14億6,578万台、2.3%増となった。

  4. 旅行業の取扱高動向
     12年の旅行業の取扱高について主要旅行業者50社の取扱状況を見ると、国内旅行、海外旅行とも増加傾向に転じ、年計では前年比1.7%増の5兆9,626億円となった。
     このうち、国内旅行の取扱いについては、年計では前年比0.2%増となり、また、海外旅行の取扱いについては、年計では前年比3.7%増となった(表1-2-4)。

    表1-2-4 主要旅行業者50社の総取扱高(平成12年)