第3節 海外旅行と訪日旅行の不均衡が続く国際観光
(2)最近の海外旅行の動向
アジア地域への旅行者の増加
最近の国内旅行と同様に、海外旅行についても「安・近・短」旅行が人気を呼んでおり、対前年比で中国約20%増、韓国約13%増、タイ約8%増となっているなど、アジア地域への旅行者が増加した。中でも、韓国への旅行者は、平成9年以降増加し続けており、これは、昨年に引き続き通貨ウオンの対円安傾向により、旅行商品や旅行先での買物などに割安感があること、地方空港からの直行便の利用などにより、少人数による週末を利用した気軽な旅行先として人気を呼んでいることもその要因と考えられる。
高年世代(60歳代以上)の旅行者は、6年で1.6倍
平成6年から12年までの高年世代(60歳代以上)の海外旅行者数の推移を見ると、旅行者数全体では1,358万人から1,782万人と約31.1%伸びているが、このうち高年世代では154万人から250万人と6年間で約62.3%と平均を上回る高い伸びを示している。これは同期間における高年世代の人口構成比率が約23.9%の伸び率となっていることと比較しても、高い伸び率といえる。また、性別では、女性の伸びが約75.4%と男性の伸び約53.5%と比較して高い伸び率になっている(図1-3-3)。
このため、今後の更なる高齢化社会の進展の中で、これらの世代は・観光需要を支える重要な年齢層になるものと予想される。
家族旅行・熟年層が好調、20歳代が伸び悩み
12年の海外旅行の性別・年齢階層別の対前年比の伸び率の推移を見ると、年齢別では、10歳未満、10歳代、30歳代、50歳代以上の世代で昨年に引き続き高い伸び率を示している。これに対し、20歳代は、他の世代に比べ伸び率が低くなっており、年齢階層別で最も多い割合を占めている20歳代の伸び悩みが顕著である。また、性別では、概ね全ての世代で女性の伸び率が男性を上回っている(図1-3-4)。
このような傾向が生じている背景としては、団塊の世代が熟年を迎え、金銭的にも時間的にも余裕が出てきて、気軽に海外旅行を楽しむようになってきていることや、30歳代の夫婦が子供連れで海外での家族旅行を楽しむようになってきていることのほか、女性の晩婚化という世相を反映して、60歳以上の母親と30歳代の娘という母娘旅行が増加していること等が指摘されている。他方で、海外旅行需要の中心となっていた20歳代は、全体に占める割合は、依然高いものの、他の世代に比べ伸び率が低い傾向が続いており、若年世代の海外旅行離れが指摘されている。
(3)主な旅行先
海外旅行者の旅行先を見ると、上位5位はアメリカ、韓国、中国、タイ、台湾となっている(図1-3-2、表1-3-1)。
(4)目的別
目的別では、観光が1、458万人で全体の約82%、業務等が267万人で全体の約15%を占めている(表1-3-2、図1-3-5)。
(5)月別
月別に見ると、ピーク月は例年のとおり、夏季休暇の集中する8月で176万人となっている(図1-3-6)。
(6)性別
性別構成を見ると、男性は全体の53.5%に当たる954万人、女性は同46.5%に当たる828万人であり、依然として男性の比率が高い(図1-3-7)。
(7)年齢階層別
年齢階層別では図1-3-8のとおり男性、女性共に全体の約6割を20歳〜40歳代が占めており、これを性別に見ると、男性の場合、30歳代が209万人(男性全体の21.9%)と最も多く、次いで50歳代196万人(同20.5%)の順となっているのに対し、女性の場合には20歳代が265万人(女性全体の32.0%)と圧倒的に多く、次いで30歳代150万人(同18.1%)の順となっている。
また、海外旅行者の主要訪問先別・性別・年齢別の内訳は、
(8)旅行日数
海外旅行者の平均旅行日数は、表1-3-4のとおりで、12年は8.0日となっており、ここ数年間8日程度で推移している。