第2節 広がる政策の裾野

  1. 政府の取組み
    (1)日本新生のための新発展政策に基づく高齢者等に係る観光振興策の推進

     政府は、我が国の景気を自律的な回復軌道に乗せ経済を新生させるため、12年11月に新発展政策を決定した。
     このうち、観光分野については、約4億円が計上され、高齢者・障害者等が快適かつ安心して周遊できる環境整備として観光地バリアフリー化整備事業を行うとともに、WTO(世界観光機関)大阪総会やワールドカップサッカー大会の開催を控え、韓国及び中国等を中心にテレビやインターネットを用いた海外宣伝事業を行った。

    2)改正祝日法の施行による旅行環境の改善
     12年1月から「成人の日」及び「体育の日」を月曜日に指定する改正祝日法が施行された。
     これに伴い、昨年土曜日と合わせて実現する三連休(ゴールデンウィークを除く。)に関し、1月の成人の日、2月の建国記念の日、3月の春分の日、9月の敬老の日、10月の体育の日、11月の文化の日による三連休期間中に出発した旅行客数により旅行需要に与える影響を調査したところ、国内旅行、海外旅行とも概ね対前年同期比で約10%〜85%の増加が見られた。
     今後、「観光産業振興フォーラム」の祝日三連休化の倍増に係る活動等とも連携し、旅行等の余暇活動の拡大を通じ、ゆとりある生活の実現を図っていくこととしている。

    図2-2-1 平成12年の三連休の旅行需要に与えた効果について

    携帯情報端末による観光情報の提供 3)観光分野における情報インフラの整備
     21世紀においては、観光分野においても、インターネット等を利用した旅行予約、電子決済、携帯端末等による情報収集を行う時代の到来が予測される。
     このため、11年度から国内の観光関係の各種情報を収集した規模の大きなデータベースに基づき、外国語及び日本語により、インターネット等を通じ国内外に情報を提供する次世代観光情報基盤の整備に着手しているところである。
     また、電子地図上に様々な情報を表示するGIS技術(地理情報システム)を活用した携帯情報端末への観光情報の提供についても、11年11月末に「観光GIS利用促進協議会」が発足し、官民を挙げて、その整備・利用促進を行っている。

    4)国内の新たな観光交流拡大の啓発普及事業等
     旧来の団体旅行から脱却し、個人・家族旅行を振興させるため、「家族旅行の振興のための旅行商品実態調査」等を実施した。この結果等を踏まえ、関係者による取組みを促進していくこととしている。

    九州の観光を考える百人委員会 5)雇用創出・まちづくり事業
     観光を通じたまちづくりを図るため、観光振興に関する専門家などを各地方公共団体に派遣し、観光まちづくり、人材育成等の取組みに関
    する提言を行う等の観光振興支援事業を行っている。

  2. 観光関係事業者等における取組み
     21世紀に向けて、観光産業が我が国の基幹産業としての役割を果たしていくため、観光に関連する産業界等の組織として「観光産業振興フォーラム」が11年12月に発足した。その活動としてこれまで、祝日三連休化の倍増等のアピール、「訪日外国人倍増に向けた取組みに関する緊急提言」(新ウェルカムプラン21)等を行っている。
     また各地域における観光振興の高まりを受け、11年11月に北海道観光振興のために設立された「北海道の観光を考える百人委員会」に引き続き、各地において「観光を考える百人委員会」が設立された(表2-2-1)。

    表2-2-1 「観光を考える百人委員会」の設立状況

     こうした動きを契機に、観光関連の事業者や国、地方公共団体が一体となって観光振興に取り組み、日本経済の活性化に寄与していくことが期待される。