第2節 新ウェルカムプラン21による総合施策の展開

 外国人旅行者の訪日促進と地方圏への誘致は、国際社会の対日理解の増進とともに地方の国際化・活性化に資するものであるが、訪日外国人旅行者数は平成9年に史上初めて400万人台に達したものの依然として国際的に見て低水準にある。
 そのため、8年4月1慨ね2005年までに訪日外国人旅行者数を倍増(700万人)させ2地方圏への誘客を促進することを目的とした「ウェルカムプラン21(訪日観光交流倍増計画)」についての提言がなされた。9年6月には特に2の具体化を図るため、「外国人観光旅客の来訪地域の多様化の促進による国際観光の振興に関する法律(略称:外客誘致法)」が施行された。
 また、12年5月には、「観光産業振興フォーラム」において「訪日外客倍増に向けた取組みに関する緊急提言」が採択され、慨ね2007年を目途に外客数800万人を目標とすることとした「新ウェルカムプラン21」が取りまとめられた。「新ウェルカムプラン21」においては、従来の「ウェルカムプラン21」に基づく取組みに加えて、国・地方における外国人来訪促進施策の充実強化、民間の観光業界における外国人来訪促進のための取組みの充実強化等の事項が盛り込まれている。
 現在、「新ウェルカムプラン21」及び「外客誘致法」に基づいて以下の施策を推進している。

  1. 国際観光テーマ地区の整備と重点的海外宣伝の実施
     外客誘致法に基づき、優れた観光資源を有する地域と宿泊拠点とからなる地域をネットワーク化して、外国人旅行者が3〜5泊程度で周遊できる観光ルートを整備する広域的な地域である外客来訪促進地域(通称「国際観光テーマ地区」)の形成が現在進められているが、同地区が盛り込まれた「外客来訪促進計画」について、13年2月までに合計11地域について国土交通大臣の同意がなされた。
     同テーマ地区については、国際観光振興会による重点的海外宣伝の実施など、関係者一体となった取組みが行われている(図3-2-1)。
    国際観光テーマ地区・南東北地区紹介パンフレット

    図3-2-1 国際観光テーマ地区一覧

  2. 国際交流拠点・快適観光空間の整備
     国際観光テーマ地区を訪れる外国人旅行者のため、同テーマ地区の拠点に地域の歴史、文化、自然等の紹介機能や体験機能を備えた「国際交流拠点」を整備することとしており、1カ所が完成し、ほか3カ所において整備が行われている。さらには、11年度から、同テーマ地区を訪れる外国人旅行者にルート化された生きた街を散策してもらい、人々の生活に触れ、住民との交流を図ることができる魅力ある観光地づくりを目的とした「快適観光空間」の整備が全国2カ所で行われている(図3-2-2)。

    図3-2-2 国際交流拠点・快適観光空間全国配置図

  3. 外国人旅行者の国内旅行費用の低廉化と接遇の向上
     博物館、宿泊施設、飲食店、レジャー施設、交通機関等を利用する際に提示することにより割引等の優遇措置を受けられる「ウェルカムカード」については、国のモデルプロジェクトとして、9年10月に青森県で、10年8月に香川県で導入されたほか、12年5月に「瀬戸内国際観光テーマ地区」においても導入された。また、同様の制度が成田市、福岡市等でも導入されている(表3-2-1)。この他にも、国内の主要な航空会社、鉄道会社における外国人向けの割引運賃の設定、外客誘致法に基づく共通乗車船券の導入など、外国人旅行者の国内旅行費用の低廉化のための取組みが各方面でなされている(表3-2-2)。

    表3-2-1 ウェルカムカード等発行状況 

    ウェルカムカード(広島県・山口県・愛媛県,北九州市) 

    表3-2-2 外客向け割引運賃制度及び共通乗車船券の導入の例

  4. 次世代観光情報基盤の整備
     訪日外国人旅行者の接遇の向上については地域限定通訳案内業制度に関する研修が実施された。同研修を含む一定の要件を備えた者については申請により免許が交付されている。
     外国で入手可能な日本の観光情報が極端に不足している現状に鑑み、日本の各種観光情報を外国語及び日本語により電子データ化し、インターネットを通じて提供するとともに、一部宿泊施設についてはホームページ上で予約ができる機能も付加した次世代観光情報基盤の整備を進め、12年3月には国際観光振興会のホームページを全面再構築した(http://www.jnto.go.jp)。これにより地方公共団体、民間団体等と連携し、地域観光情報、宿泊・飲食施設情報、交通情報、季節情報等を一元的に提供している(図3-2-3)。今後は本情報システムを活用した訪日外国人の増加が期待される。

    図3-2-3 次世代観光情報システムのサービス・イメージ

     さらに、12年度には地図情報、観光データベース等の拡充に加えて、主要市場であるアジア地域における観光宣伝の強化に向けて、韓国語、中国語(簡体字・繁体字)でも情報発信するための整備を行った。

  5. 海外観光宣伝キャンペーンの実施
     国際観光振興会は、外国人観光客の訪日を積極的に推進することにより国内観光需要の早急な回復を図るため、次のキャンペーンを実施した。

    1)訪日旅行促進キャンペーン
     日本にとって最大の訪日旅行市場である韓国、外国旅行では最大の潜在市場である北米、欧州では最大市場である英国を対象に、新聞・雑誌等の活字媒体を活用し日本の観光魅力を紹介した広告掲載、インターネットを活用した訪日旅行促進の広報、ジャーナリスト及び旅行業者の招請、旅行業者セミナー等多角的な広告宣伝、広報PR事業を実施した。
     また、補正予算事業として、韓国、中国及び香港を対象に日本の観光魅力を紹介したテレビのスポット広告を実施した。

    2)大型イベントを活用したPR事業
     国際観光振興会は、韓国観光公社と協力して、2002年ワールドカップサッカー大会の開催に向け、世界の関心が日本と韓国に集まる機会をとらえ、日韓両国の競技開催都市とその周辺地域の観光魅力をアピールするためのキャンペーンを世界各地で実施した。
     また、日本単独の事業としては、12年6月から10月までドイツで開催された「ハノーバー国際博覧会」の来訪者に、日本の競技開催地の観光魅力をPRした。

  6. ワールドカップを活用した広報宣伝・受入体制の整備
     ワールドカップサッカー大会は、テレビ視聴者延べ400億人といわれるほど世界的にも関心が高く、日本の知名度を飛躍的に向上させる絶好の機会である。このため、2002年ワールドカップ開催を契機として国際観光振興、地域振興を図るため、競技開催地を中心とした日本の魅力を紹介するためのビデオ、パンフレット等による海外広報宣伝を行っているほか、外国人旅行者向けの実用旅行案内書等の充実、外客接遇のためのビデオの利用促進を国際観光振興会を通じて行っている。

    第50回 PATA年次総会(マレーシア)における2002年ワールドカップ開催地等のPR

  7. アジアの近隣諸国との観光交流の促進
    (1)日中両国の観光交流の促進

    1中国国民の訪日団体観光旅行の開始
     今後、中国をはじめとするアジア諸国からの旅行者の受入の促進を図ることは、わが国の訪日外国旅行者の増大につながるのみならず、近隣諸国との相互理解の増進にも資するものである。
     このような観点から、中国との観光交流の促進のため、政府間の調整を経て、12年9月13日の第一陣の来日を機に、中国国民の団体観光旅行が開始された。今後、この団体観光旅行を通じて日中間の観光交流の促進を図っていくこととしている。

    2国際観光振興会北京事務所の活動
     国際観光振興会北京観光宣伝事務所は、パンフレットの配布、ニュースレターの発行など現地における日本の観光情報の発信に努めているほか、11年9月には現地の旅行業者を対象とした初めての日本視察旅行を実施した。また、12年5月には日中文化観光交流使節団の訪中時に合わせて、北京においてジャパン・デーを開催するなど、地方公共団体、観光関係業界等と協力しながら、中国人の訪日旅行の促進を図った。

    日中文化観光交流2000 北京におけるジャパン・デーのトレードショー風景

    2)日韓両国の観光交流の促進
     12年11月の日韓観光振興協議会において、日韓両国民の相互交流と他地域からの来訪者の合計を現在の約900万人から平成18年までに1,600万人へと概ね倍増することを目指す「東アジア広域観光交流圏構想(EASTプラン)」について、日韓両国の観光当局において基本的な方向について合意し、今後両国観光当局で必要な施策を検討し、具体的に推進していくこととしている。
     さらに将来的には、中国をはじめとする周辺地域も含めたより広域の観光交流圏を形成し、同地域における観光交流の飛躍的な増大を目指すこととしている。