第4節 国内各地での国際交流施策の展開

  1. 外国人旅行者向けの情報提供
    (1)観光案内所の整備

    1外国人総合観光案内所(TIC)
     国際観光振興会は、総合観光案内所(TIC:ツーリスト・インフォメーション・センター)(東京、京都の計2か所)を運営し、日本旅行に関する情報の提供を始め、我が国の文化、生活、産業等あらゆる情報を外国人旅行者に提供している。
     総合観光案内所は、日本人の生活様式そのものや、伝統文化をそのまま体験したいといったように外国人旅行者のニーズの個別化・多様化に対応して情報提供を行っている。

    東京ツーリスト・インフォメーション・センター

    2「i」案内所
     「i」案内所とは全国各地に地方公共団体又は観光協会が設置している観光案内所のうち、外国人旅行者に対応可能なものであり、国際観光振興会のTICとの連携により、外国人旅行者に対して全国的に充実した案内や情報の提供を行っている。13年3月現在で全国72都市・106か所に「i」案内所が整備されている。

    2)宿泊情報等の提供
     外国人に向けた低廉旅行に関する情報提供の希望が増加している。このため、国際観光振興会は低廉な料金で外客の受け入れが可能である宿泊施設「ウェルカム・イン」の無料予約制度の情報を提供しているほか、低廉な旅行方法、経済的な交通手段、観光施設などの情報提供等を行い、外国人旅行者の旅行費用の低廉化に努めている。

    3)外国人旅行者サポートサービスの提供
     国際観光振興会はトラベルフォン(外国人旅行者が全国どこからでも通話料無料で電話により観光案内や通訳が受けられる制度)、テレツーリスト・サービス(東京近郊で開催される催事、年中行事、スポーツ等に関する英語による自動応答式電話案内)等を通じ、外国人旅行者の言葉の障害を除去し、我が国を一人歩きできる環境の整備に努めている。

  2. 地方公共団体が行う国際交流
    1)アジアを重点とした外客誘致活動の強化
     訪日外客に占めるアジア人の比率は、昭和63年に初めて50%を超え、平成12年には、60.0%となった。このうち、韓国と台湾は、訪日外客数の1位と2位を占めており、共に米国、欧州全体からの訪日客を上回るに至っている。
     他方、近年ソウル、香港、シンガポールなどアジア諸都市と日本、特に地方都市とを結ぶ航空路線が増大した結果、地方の国際化の潮流とあいまって、地方公共団体による近隣アジア諸国・地域からの観光客誘致活動が活発化しており、国際観光振興会との協力により積極的な誘致宣伝活動を実施している。

    2)国際観光テーマ地区外客誘致推進事業(JAPAN QUEST)の実施
     本事業は、地方公共団体が企画したプログラムにより、日本に滞在する外国人に国際観光テーマ地区など日本の大都市以外の地域への旅行の機会を提供し、我が国の伝統文化や慣習、産業などの紹介、ホームステイによる地元住民との交流等を通じて、参加者に対日理解を深めてもらうとともに、地方における国際交流の促進、国際化の推進を図ろうとするものである。12年度は、北海道、和歌山県の2地域において実施され15ケ国より計35名の在日外国人が参加した。

    JAPAN QUEST 和歌山プログラム(備長炭で風鈴づくり体験)

  3. 国際民間交流の拡大
    (1)国際観光交流の推進

     国際観光振興会は、国際交流の推進を目指す内外の自治体や民間団体などに対し、交流関連情報の収集・提供、交流相手先の斡旋・仲介、交流事業の企画・運営支援などを通じて、外国人の日本への来訪を促進する国際観光交流支援事業を実施している。
     12年度には、米国、カナダ、ドイツの日本語学習者の日本文化体験旅行、米国の学生との写真交流・音楽交流、フランスの空手団体との交流など、多様な訪日交流の実現を支援した。
     さらに、韓国からの訪日修学旅行を促進する目的で、韓国の中学・高等学校長など10名の教育関係者を招へいし、関東地域を視察してもらうとともに、関係者との意見交換会を開催し、韓国人修学旅行生の受入れの課題とその解決策を話し合った。
     また、地域の国際交流の重要な要素であるホームステイ制度の活性化や受入ノウハウの向上を支援するため、ホームステイ受入講習会を開催するとともにホームスティ受入マニュアルを関係団体へ配布した。

    2)善意通訳(グッドウィル・ガイド)の普及運動
     善意通訳普及運動とは、街頭・車中等で困っている外国人旅行者に善意で通訳を行うボランティア運動のことであり、国際観光振興会により推進されている。善意通訳者に対しては、同会が善意通訳バッジと善意通訳カードを交付している。13年3月現在、全国の善意通訳者の数は約4万7千人、各地で自主的に組織された善意通訳組織は、36都道府県78団体に上っている。これらの団体では、多数の外国人が参加する国際的なイベントへのボランティア通訳、エスコート役としての協力、その他各地で活発なボランティア活動を行っている。

    3)ホームビジット制度
     ホームビジット制度とは、受入家庭の善意による協力を得て外国人旅行者が日本の家庭を訪れ、その日常生活に触れることを可能とするものであり、国際観光振興会が地方公共団体と連携して推進している。13年3月現在、全国で1都、2県、11市の873の家庭が本制度に協力しており、同会では、本制度の広報活動を行っている。
     その他、通訳案内業試験の実施、ホテル・レストラン等における外国人旅行者受け入れに関する講習会の実施等を行っている(表3-4-1、3-4-2)。

    表3-4-1 通訳案内業試験年度別・語学別合格者数 

    表3-4-2 通訳案内業免許取得者の語学別内訳

     

  4. 国際コンベンション等の振興
    (1)国際コンベンションの振興
     国際コンベンションの開催は、参加者相互間の情報交換や友好関係の確立等により、国際的な相互理解の増進、地域経済の活性化、地域の国際化等に資するものである。
    このような観点から、近年、多くの都市においては、国際会議場施設の整備やコンベンション推進機関の設立が積極的に行われているが、人材、ノウハウ及び事業費の不足など問題を抱えているところも多い。また、我が国における国際コンベンションの開催件数は欧米のコンベンション先進諸国に比ベ低い水準にとどまっている(図3-4-1)。

    図3-4-1 国別・国際会議開催件数の推移

     このため、「国際会議等の誘致の促進及び開催の円滑化等による国際観光の振興に関する法律(コンベンション法)」に基づき、49都市を「国際会議観光都市」として認定している(図3-4-2)。認定を受けた都市に対しては、国際観光振興会が国際会議等の誘致に関する情報の提供、諸外国における宣伝及び誘致活動に対する支援を実施するとともに、一定の要件を満たす国際会議等については、寄附金の募集、交付金の交付など、当該国際会議等の主催者への援助を行った。

    大型国際会議(京都国際会議場) 

    図3-4-2 国際会議観光都市一覧(49都市)

     国際観光振興会の国際コンベンション誘致センターでは、ニューヨーク、ロンドンの観光宣伝事務所に設けたセンターを通じて、国際コンベンションの誘致・宣伝活動の他、調査、コンサルティング、コンベンション開催決定権者の招請・受け入れ等の活動を行った。
     こうした状況の下、中小を含めた国際会議の我が国での開催件数は毎年着実に増加しており、平成9年には史上初めて2、000件の大台を越え、平成11年には2,475件となった(図3-4-1、表3-4-3)。

    表3-4-3 12年度の主な国際会議一覧表

     なお、官民で組織する「日本コングレス・コンベンション・ビューロー(JCCB)」では国際観光振興会を始め全国の国際会議観光都市・コンベンションビューロー及びコンベンション関連事業者が一体となって、コンベンションの誘致支援、人材育成等の各種事業を推進している。

    2)民間能力の活用による国際交流のための施設整備
     「民間事業者の能力の活用による特定施設の整備の促進に関する臨時措置法」に基づいて、国際交流の推進を図るための施設として、国際会議場施設等の整備を推進している。
     これらの施設の整備に対しては、補助金、NTT株式売却収入による無利子融資、政府系金融機関からの出融資等の支援措置が講じられている。

    3)国際競技大会への支援・協カ
     オリンピック競技大会など国際競技大会の開催は、国際親善や我が国のスポーツの振興等に大きな意義を有するものであり、国としても、必要な支援・協力を行っている。
     特に、2002年に日韓共同で開催されるワールドカップサッカー大会については、10年5月に大会支援のための特別措置法を制定し、また大会時の出入国の円滑化に向け日韓両国間で協議を行うなど、大会組織委貝会に対して必要な支援・協力を行っているところである。
     また、2008年オリンピックの大阪招致については、10年12月に大会の招致について閣議了解を行うなど必要な支援・協力を行っているところである。

    4)国際博覧会の開催の支援
     「自然の叡智」をテーマとして、愛知県瀬戸市の南東部及び長久手町の愛知青少年公園並びに豊田市の科学技術センター予定地で開催される2005年日本国際博覧会は、環境・資源エネルギー問題、人口・高齢化問題などの人類が克服していかなければならない問題やIT革命、生命科学等の新しい時代を拓く技術課題など21世紀に人類が共通して直面するテーマについて、万博という場を通じて問題を提起し、世界のひとりひとりに考えてもらう機会を提供する。
     平成12年度は、本博覧会の準備及び運営主体である財団法人2005年日本国際博覧会協会が行う会場計画・資金計画の策定、会場基本計画に基づく基本設計、一部実施設計及び、環境影響評価法制定を先取りした環境アセスメントの実施等を支援した。