文化財は、我が国の歴史、文化等の正しい理解のために欠くことができないものであり、また、将来の文化の向上発展の基礎となるものであることから、その適切な保存・活用を図ることが極めて重要である。 国は、貴重な国民の財産である文化財を保護するため、「文化財保護法」に基づき、建造物、絵画、彫刻などの有形文化財を国宝・重要文化財に、演劇、音楽、工芸技術などの無形文化財を重要無形文化財に、農具や漁猟用具、祭りや民俗芸能などの民俗文化財を重要有形・無形民俗文化財に、遺跡、名勝地、動植物などを史跡・名勝・天然記念物に指定し、歴史的な集落・町並みを重要伝統的建造物群保存地区として選定するなどして、その適切な保存・活用を図っている。重要無形文化財の指定に当たっては、併せて保持者、保持団体を認定している。 さらに、文化財の保存のために欠くことのできない伝統的な技術又は技能を選定保存技術として選定し、併せて保持者又は保存団体を認定している。 また、8年10月から文化財の保護手法の多様化を図るため、従来の指定制度に加え、新たに文化財登録制度を有形文化財のうち建造物について導入した。 13年1月1日現在の国指定文化財等の件数は表4-3-4のとおりである。 |
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文化財保護のための制限と支援
国は、指定等した文化財の適切な保存・活用を図るため、文化財の現状変更、修理、輸出などに一定の制限を課するとともに、管理、修理、公開などについて必要な指示、命令、勧告等ができることとなっている。
一方、有形文化財や史跡等の場合には、保存修理、防災施設の整備、買い上げ等に対し、無形文化財の場合には、伝承者養成や記録の作成等に対し、その保護に必要な助成措置等を講じている。
文化財の活用
国立博物館等における公開に加え、公私立の歴史民俗資料館等において地域の民俗文化財等の保存・活用を図っているほか、史跡や歴史的建造物等の整備・活用事業を推進している。
地方拠点史跡等総合整備事業(歴史ロマン再生事業)等
文化財の活用の観点から、地域の歴史的・文化的なシンボルとなっている史跡等について、その地域の歴史や文化にふれあうことのできる場として積極的に整備するため、遺跡等の復元にとどまらず、ガイダンス施設等の情報・学習提供機能を総合的に整備する地方拠点史跡等総合整備事業(歴史ロマン再生事業)を実施している。
また、我が国の歴史を理解する上で極めて重要な街道、水路などのうち、往時のたたずまいを残しているものを「歴史の道」として選び、それに添う地域と一体として保存・整備し、活用を図る歴史の道整備活用推進事業を実施している。さらに、平成8年には、都道府県教育委員会の協力により、より一層「歴史の道」への理解と関心を深めることを目的に、「歴史の道百選」として中山道(岐阜県)等78カ所の街道・運河を選定しており、更なる良好な「歴史の道」の選定のための調査を続けている。
このほか、天然記念物については、平成12年度まで野外観察施設や学習施設を設置し、公開活用を図る天然記念物整備活用事業を実施、また、別に平成10年度からは、史跡等を複合的・統合的に活用する方法についての研究開発である「ふれあい歴史のさと事業」を行っている。
(2)歴史的町並み・地域の保存等
歴史的集落・町並み
歴史的な集落・町並みの保存が、我が国の伝統的な文化を重視した地域の活性化や良好な環境づくりを目指した新しい村づくり、町づくりの一環として進められている。
伝統的な景観を持っている集落・町並みとして最近の調査では約1、000地区がリストアップされている。
集落・町並み調査を実施した市町村では、伝統的建造物群の保存と地域の活性化や良好な住環境を得るため、保存地区を決定し、保存計画を定めている(12年末で52市町村57地区)。また、市町村が決定した保存地区は、すべて文化財保護法に基づく重要伝統的建造物群保存地区として国の選定を受けている(図4-3-3)。 | ![]() |
(イ) 明日香村特別措置法に基づく施策
「明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境の整備等に関する特別措置法」に基づき、12年度には、次のような施策を講じた。
明日香村等に対する財政上の特別助成措置を講ずるとともに、「明日香村における生活環境及び産業基盤の整備等に関する計画」(計画期間は12年度から21年度まで)に基づき、引き続き道路、河川、下水道の整備等各種の整備事業を推進した。
明日香村整備基金の運用益等により、歴史的風土の保存を図るために行われる事業等各種の事業を推進した。