5. 観光資源保護活動等の推進
(1)観光資源保護思想等の普及
1 観光週間
 「観光道徳の高揚と観光資源の保護週間(観光週間)」は、国民の観光に関する正しい観念の普及と観光資源の保全などについて広く国民に広報するため、閣議了解(40年5月)により設けられたもので、毎年8月1日から7日までの1週間実施している。

観光週間ポスター

 12年においても関係省庁及び都道府県が主催し、「観光道徳の高揚」、「観光地の美化」及び「健全な観光旅行の促進」を実施目標とし、より効果的に広報する手段として「旅に出て 日本の四季を見直そう」を統一テーマとし、関係98団体の協賛を得て第36回「観光週間」を実施した。
 観光週間期間中、国、地方公共団体、協賛団体によりキャンペーン活動、美化清掃活動、関連の祭り・イベント等が行われた。

2自然保護思想
 自然に親しむ活動の普及のため、毎年7月21日から8月20日までを「自然に親しむ運動」月間としている。12年においても、自然観察会等の自然とのふれあいを推進するための行事を全国の自然公園等で実施し、この運動の中心行事である自然公園大会(第42回)を室戸阿南海岸国定公園(徳島県海南町)において開催した。
 また、自然とふれあいながら歩くことを推奨するため、毎年10月の1か月間を「全国・自然歩道を歩こう月間」として全国の自然歩道等において各種行事を実施した。
 自然公園の保護と適正な利用のため、自然公園指導員約3,000名を委嘱し自然保護思想や利用マナーの普及啓発、安全利用等に関する指導等の推進を図った。
 国立公園の利用拠点においては、自然解説活動等の充実を図るため、「パークボランティア活動推進事業」を引き続き実施し、ボランティア養成研修会の実施、解説マニュアルや活動計画の策定等、ボランティアの活動条件整備を図るとともに、自然解説活動を指導する専門的人材を養成するため、「自然解説指導者等育成事業」を引き続き実施したほか、平成11年度からは、全国の国立公園等において、自然保護官等の指導・協力の下、小中学生に国立公園等のパトロールやマナーの普及、自然環境の維持・復元活動等を行うプログラムを提供した。

3 緑化思想
 国土緑化及び環境緑化思想の高揚・啓発を図るため、全国植樹祭、全国育樹祭の開催に対し引き続き助成するとともに、緑の少年団の育成等青少年緑化活動の活性化、巨樹・古木林等の保全技術の確立等緑化技術の開発・普及を図ったほか、「みどりの日」(4月29日)を中心とした各種緑化活動等を全国的に展開した。
 また、一般市民が森林・林業について学習できる拠点として、「教育のもり」を整備する事業に対し、助成した。
 都市公園においては、地球温暖化対策としての都市の緑等、都市緑地を持つ多面的な機能の重要性について国民意識の一層の高揚、啓発を図るために、特に人口の集中している都市内に、地元住民の参加協力により、更地から樹林地を創出する都市公園事業(「平成の森」づくり事業)の実施等により、幾世代にもわたる活動を通じて緑化思想の普及等の取組みを推進した。
 都市の緑化については、広く国民の理解と協力を得るため、「春季におる都市緑化推進運動」(4月1日〜6月30日)、「みどりの日」、「みどりの週間」(4月23〜29日)及び「都市緑化月間」(10月)に各種の都市緑化普及啓発活動を実施した。
 また、国営讃岐まんのう公園において第11回全国「みどりの愛護」のつどいを、栃木県において全国都市緑化フェアを開催し、フェアの中で全国都市緑化祭を実施した。

4文化財愛護思想
 文化財保護強調週間(11月1日〜7日)、文化財防火デー(1月26日)に際し関係行事を実施するなど、文化財保護に対する国民の理解と愛護思想の普及高揚に努めた。
 また、学校教育においては、社会科における文化財を活用した学習、クラブ活動における郷土史研究クラブ等の調査・研究活動、いわゆる「ゆとりの時間」の中で、地域の文化財学習や地域に伝わる竹細工、わら細工等の技術習得、民俗芸能等の体験学習等を通して、地域社会の中の文化財愛護にそれぞれ取り組んでいる。

2)ナショナル・トラスト活動の推進
 ナショナル・トラスト活動は、募金活動等を通じて民間の自主的参加を得て、歴史的価値を有する文化遺産や良好な自然環境を有する土地等を取得し、それらの適正な管理、保全及び活用を図っていこうとする運動であり、観光資源の保護や自然環境の保全の観点から、12年度においては次のような施策を講じた。

ナショナル・トラスト活動(長浜鉄道文化館)

1 観光資源の保護と活用
 (財)日本ナショナルトラストにおいては、市民からの募金等により、国民的財産として後世に継承するべき観光資源を適切に保護・管理しつつ、広く一般に公開し、活用する事業を行っている。
 12年度は、日野商人と桟敷窓の町並み(滋賀県日野市)、渡名喜島伝統集落周辺域の自然歴史的景観(沖縄県渡名喜村)、浮野の里(埼玉県加須市)に係る観光資源保護調査などを実施しており、国としてはナショナル・トラスト活動の推進を図るため、同財団が実施するシンポジウム等を支援するなどの施策を講じた。

2自然環境の保全
 現在、和歌山県の「天神崎保全市民運動」など全国各地において推進されているナショナル・トラスト活動は、国民自らの手による自然保護活動として極めて有意義なものであり、更に普及、定着していくことが期待される。
 このため、12年度には、ナショナル・トラスト活動の普及のための小冊子を作成するなど同活動の普及啓発の施策を講じた。また、(社)日本ナショナル・トラスト協会が、第18回ナショナル・トラスト全国大会を静岡県清水町で開催し、ワークショップ、シンポジウム等を通じて、活動の趣旨の一層の周知を図った。

3)観光地における美化・環境衛生対策の実施
1自然公園
 国立公園内の集団施設地区とその周辺の美化清掃事業を関係都道府県等の協力の下に実施するとともに、その他の主要な地域においても、美化清掃団体を現地に組織し、12年度も引き続き実施した。
 また、8月の第1日曜日を「自然公園クリーンデー」とし、関係都道府県の協力の下に全国の自然公園で一斉に美化清掃活動を行った。

2自然公園美化管理財団
 (財)自然公園美化管理財団は、自然公園内での歩道、便所、休憩所等の公共的施設の清掃、補修のほか、利用最盛期に集中する自動車の整理、誘導等、美化清掃活動、公園施設等の維持管理、利用者に対する自然保護思想の啓発普及等の事業を中部山岳国立公園上高地地区等21支部(事業所)において行った。

3都市公園
 都市公園については、地方公共団体が地域住民等の協力を得て清掃、補修等のきめ細かい管理を行っている。また、国営公園については、快適な利用が可能となるよう国が清掃等維持管理を行っている。

4廃棄物処理
 観光地においては、観光客が集中する特定の季節に排出されるごみ、し尿の量が著しく増大し、市町村による廃棄物の適正な処理に多くの困難が生じる場合がある。このため、廃棄物処理施設の設置に当たっては、廃棄物の質及び量の季節的変動を考慮に入れて施設の能力を設定することを定めており、これに沿って補助を行った。また、自然公園等優れた自然環境を有する地域を、し尿と生活雑排水を併せて処理することのできる合併処理浄化槽に対する国庫補助制度の対象地域とすることにより、合併処理浄化槽の設置を積極的に推進している。
 観光地におけるごみの処理は、空き缶等を各自持ち帰るなどのマナーの向上を始めとして、総合的に施策を推進する必要がある。

5衛生監視
 海水浴場及びプールについては、海水浴場水質保全対策要綱、遊泳用プールの衛生基準等に準拠して、監視・指導を行った。
 また、ホテル、旅館、民宿、ペンションや山小屋、バンガロー等の宿泊施設等の観光旅行者の利用施設については、営業者に対する保健所の環境衛生監視員による監視・指導が行われている。