第7節 観光基盤施設の整備施策の展開

第7節のポイント
 鉄道、道路交通、航空、海上交通等各旅客輸送施設の整備を推進した。また、整備新幹線については、着実に整備を進めた。
 観光地の環境衛生施設の整備を推進した。

  1. 旅客輸送施設の整備
    (1)鉄道の整備等

    1鉄道
     幹線鉄道の整備については、国土の均衡ある発展と地域の活性化を図るため、整備新幹線の整備及び主要幹線鉄道の高速化等を推進している。整備新幹線については、平成10年1月の政府・与党整備新幹線検討委員会の検討結果等に基づき、12年度においても整備を着実に推進した。又、12月に政府・与党申合せをとりまとめ、既に着工した区間の工期短縮と、新たな区間の着工等をとりきめた。
     また、11年度には、幹線鉄道等活性化事業費補助制度を活用して愛知環状鉄道の高速化事業及び乗継円滑化事業、並びに大阪外環状鉄道及び西名古屋港線の旅客線化事業を推進した。
     大都市鉄道の整備については、引き続き輸送力増強のために地下鉄、ニュータウン鉄道等の整備を推進しており、12年度においては、地下鉄では都営大江戸線(新宿〜都庁前間)等が開業した。
    都営大江戸線

    2 輸送サービス
     一方、近年の国民生活の水準の向上等に伴い、快適な輸送サービスの提供が求められており、新型車両の導入等のサービス向上に努めている。特に、長距離列車では、豪華寝台車両、女性客等のプライバシー保護のために個室寝台車両等の充実等が進められている。このほか、空港アクセス用列車、周辺観光地や特産品の情報展示を行う行楽地向け列車等利用者利便の向上に資する車両や、車内の禁煙・分煙化、身体障害者対応トイレの導入、車椅子用スペースの確保等社会ニーズに対応した車両も導入されている。

    2)道路の整備と公共交通機関等による輸送サービスの向上
    1道路
     国民経済の健全な発展と国民生活の向上を図るため、道路整備は、数次の五箇年計画を経て進められ、表4-7-1・表4-7-2に示すような整備状況となっている。高規格幹線道路の供用延長は13年3月末現在で7,843km、国・都道府県道の整備延長は11年4月現在で9万4,757kmである。

    表4-7-1 高規格幹線道路等の整備状況 

    表4-7-2 一般道路の整備状況

      ア.高規格幹線道路と地域高規格道路
     高速自動車国道については、12年度に四国縦貫自動車道、伊予〜大洲等新たに計13区間を供用し、全体供用延長は6,861kmとなった。
     一般国道の自動車専用道路については、12年度までの供用延長は341kmとなっている。また、高速自動車国道と並行する一般国道の自動車専用道路についても国道9号安来道路等新たに6区間を供用し、全体供用延長は477kmとなった。

    関越自動車道新潟線・藤岡ハイウェイオアシス(群馬県) 四国縦貫自動車道「伊予〜大洲」開通式(愛媛県)

     また、高速道路等のサービスエリア・パーキングエリアとその周辺地区を一体的・計画的に整備を図ることにより、地域の活性化に資する地域拠点整備事業を進めており、供用中15か所、事業中3か所となった。また、平成10年の高速自動車国道法の一部改正により民間事業者による商業施設等と高速自動車国道との連結が可能となり、供用中、事業中各1か所となっている。
     さらに、全国的な高規格幹線道路と一体となって、高い走行サービスを提供できる規格の高い幹線道路網を形成する地域高規格道路については、路線の指定(候補路線110路線、計画路線186路線)、区間の指定(調査区間約1、135km、整備区間2,857km)を踏まえて整備を推進した。
     加えて、車載機にリアルタイム情報を提供することがVICSの特徴であるため、全国の高速道路と27都道府県ヘサービスを拡大した他、ETC(ノンストップ自動料金支払いシステム)の本格運用を開始する等ITS(高度道路交通システム)の導入・展開を推進した。

      イ.一般国道と地方道
     一般国道及び地方道において、道路ネットワークの整備を進めるとともに歩道等交通安全施設の設置、地震、豪雨等に対する防震災対策等の事業等を推進した。また、インターネットを活用し、道路の災害情報の提供に努めた。
     地形的な制約により相互の交流が遅れている地域間の交流を促進し、地域の活性化を図る「交流ふれあいトンネル・橋梁整備事業」を推進した。
     主要な幹線道路等において、安全で快適な道路交通環境及び地域交流の核を形成するため、物産館等の地域振興施設と休憩施設を一体的に整備する「道の駅」の整備を推進した。
     また、まちづくりと一体となったみちづくりを実施し、面的に質の高い道路空間整備を行う「くらしのみちづくり事業」を推進した。
     加えて、案内標識の整備を推進するとともに、外国人利用者の利便性の向上を図るため、案内標識に英語併用表示を行った。

      ウ.有料道路
     日本道路公団による一般有料道路については、首都圏中央連絡自動車道(八王子〜鶴ケ島)等継続35路線の事業を促進するとともに、新たに東海環状自動車道(豊田東〜美濃関)等7路線に着手し、南風原道路等4路線を供用した。
     また、地方道路公社による一般有料道路は、継続24路線の整備を推進するとともに、新たに西宮北有料道路(兵庫県道路公社)の整備に着手し、高岡砺波道路等8路線を供用した。

      エ.都市交通対策
     都市内道路の体系的な整備を図り、連続立体交差事業や交通結節点等の整備など公共交通機関の利便性向上、安全な歩行空間整備を推進するほか、TDM施策を推進し、交通の円滑化を進めた。
     さらに、駐車需要が集中する地区において、駐車場の位置、利用状況等の案内を行う駐車場案内システム、駐車場の位置等に関する情報と交通渋滞の状況等に関する情報とを運転者に一体的に提供し、空き駐車場へ誘導する駐車誘導システムの整備を推進した。

      オ.一般自動車道
     「道路運送法」の一般自動車道は、観光振興に重要な役割を果たしており、12年12月末現在、33事業者、44路線(総延長411.6km)が供用されている。このうち、国立公園区域内に20路線、国定公園区域内の12路線、県立公園区域内に6路線あり、これらの路線は全路線の約86%を占めている。

    2 バスターミナル
     バスターミナルは、バス輸送の効率化と道路交通の円滑化の観点からはもとより、観光の拠点として各都市でその整備が進められている。
     「自動車ターミナル法」の一般バスターミナルは、12年12月末現在で25か所が供用されている。
     また、地域のまちづくりと整合の図られた、地域の顔ともなるバス交通広場について整備を行い、駅周辺におけるまちの活性化を図る「バスの駅」整備事業について推進している。

    3バス・タクシー
     貸切バスは、団体での旅行やパック旅行等の移動手段として重要な役割を果たしている。12年2月1日に需給調整規制の廃止等を内容とする道路運送法の改正法が施行されたこと等により車両数が増加し、11年度末現在で約3万8,000両が運行されている。また、特定のゾーンにおける標準的な観光コースを定めた行先別運賃・料金の設定、ハイグレードな車両や特殊な装備を有する車両の導入等による利用者ニーズへの対応が行われ、小グループによる旅行、レジャーの増加に対応した小型の貸切バスの拡充が図られている。
     乗合バスも観光地を経由する路線の設定、数か所の名所・旧跡等の観光をパッケージにした定期観光バスの運行、都市間を結ぶ高速バス路線網の充実など、観光地を訪れる者の移動に大きな役割を果たしている。11年度末現在高速バスは、154事業者、1,532系統が運行されている。
     タクシーは、時間、距離等に縛られない個別的な輸送機関としての性質を有しており、観光に適した時間制運賃や一定の観光コースを運行する観光ルート別運賃の設定、観光型乗合タクシーの運行等により、利用者利便の向上を図っている。

    4レンタカー
     レンタカー事業は、豊富な車種を揃え、利用者の使用目的にかなったサービスを提供すること、料金の低廉化等により、年々着実な伸びを示し、11年度末現在の保有車両は約28万1,000台と対前年比4.8%増であり、過去10年間では約1.5倍の伸びを示している。

    3)空港の整備
     今後とも増大する航空輸送需要に対応するため、8年度を初年度とする空港整備七箇年計画に基づき、航空ネットワークの拠点となる大都市圏拠点空港の整備を最優先課題として推進し、一般空港等については継続事業を中心として整備を進めるとともに、既存空港の高質化等所要の整備を図る。
     12年度は、同計画に基づき、次のとおり整備を行った。
     新東京国際空港については、12年7月7日に、第1旅客ターミナルビル第2サテライトの改修工事を終えて供用を開始する等の既存施設の能力増強に取り組むとともに、2002年初夏のサッカーワールドカップ開催に間に合うよう2,180mの暫定平行滑走路の工事を推進した。
    新東京国際空港第1旅客ターミナルビル第2サテライト
     東京国際空港については、東旅客ターミナル整備を15年度末の供用開始をめざして推進した。
     関西国際空港については、4,000mの平行滑走路等を整備する2期事業を推進するとともに、既存の施設の能力増強等を行った。
     中部国際空港については、所要の法手続を経て、2005年3月の開港を目指し、平成12年8月1日に護岸工事に着手した。
     大阪国際空港については、エプロン新設等を行った。一般空港等については、滑走路の新設・延長事業として16空港の整備を行った。そのうち新規事業は百里飛行場、八丈島空港である。その他52空港においてターミナル地域、基本施設、航空保安施設の改修・改良等を行った。
     また、首都圏空港については、羽田空港の再拡張を含む複数候補地の抽出と総合的な評価・比較検討を行うため、学識経験者等からなる首都圏第3空港調査検討会(平成12年9月第1回)を開催し、調査検討を進めている。

    4)旅客船サービスの向上と港湾整備等
    1国内旅客船
     旅客航路事業者は、経営規模が小さい事業者が多いことから、運輸施設整備事業団との共有建造方式によって旅客船サービスの改善、輸送力の増強、安全性の向上等を図ったほか、離島航路については所要の助成措置を講じた。
     12年10月に施行された改正海上運送法により、需給調整規制が廃止され、運賃設定が認可制から届出制に改められる等の規制緩和が行われた。また、同改正においては生活航路の維持、安全確保・利用者保護の充実にも配慮した上で、事業者間の一層の競争促進による利用者利便の向上を図っている。

    2港湾と航路
     クルージング需要の増大、旅客交通の高速化への要請等に対応するため、伏木富山等18港において、旅客ターミナルの整備を推進するとともに、プレジャーボートの増大に対応するため、マリーナ等を整備した。また、船舶がふくそうする海域において船舶航行の安全を確保するため、関門航路等16航路において開発及び保全の事業を行った。

  2. 観光地の環境衛生施設の整備
    (1)水道

     地域の生活環境の保全及び向上を図るために、観光地についても、その特性を考慮した水道施設の整備の推進に努めてきた。

    2)下水道等
     地域の生活環境の保全及び向上を図るためには、下水道、合併処理浄化槽等の整備が重要であり、観光地についても、その特性を考慮してその整備の推進に努めてきた。