第8節 観光に係る安全確保対策の展開

  1. 交通安全対策の推進
    (1)鉄道の安全対策
     
    自動列車停止装置(ATS)の設置・改良、列車集中制御装置(CTC)化等による安全・安定輸送の確保やホームにおける安全対策を推進するとともに、適正な運行管理、厳正な服務、確実な運転取扱い等に関して所要の指導を行う。
     踏切道の事故防止対策については、「踏切道改良促進法」及び平成13年度を初年度とする第7次踏切事故防止総合対策に基づき、引き続き踏切道の立体交差化、構造改良、踏切保安設備の整備等の対策を総合的に推進することとし、一定の要件を満たす事業者に対しては、踏切保安設備の整備費の一部を補助する。

    2)道路交通の安全対策
    1道路交通環境の整備
     安全かつ円滑・快適な道路交通環境の整備を図るため、13年度は特定交通安全施設等整備事業七箇年計画(8〜14年度)の第6年度として、交通安全施設等の一層の整備拡充を図る。
     都道府県公安委員会においては、13年度事業として、新交通管理システム(UTMS)構想に基づく既設交通管制センターの高度化、信号機の高度化、高速走行抑止システム、対向車接近表示システム、駐車誘導システム、違法駐車抑止システム、旅行時間計測提供システム、公共車両優先システム(PTPS)、交通情報板、光ビーコン、道路標識等の整備を引き続き推進する。
     道路管理者においては、歩道及び自転車道の整備、交差点の改良、道路照明、道路標識、道路情報提供装置、自転車駐輪場、自動車駐車場等の整備を引き続き推進する。
     これら、事業の実施に当たっては、以下の事項に重点を置いて交通安全施策を推進する。

     事故多発地点緊急対策事業、コミュニティ・ゾーン形成事業等を推進する。
     駅、病院、福祉施設等主要施設周辺に重点を置いて幅の広い歩道等の整備を推進する。
     「交通安全総点検」に基づく交通安全施設等の整備を推進する。

    2 道路交通情報の提供
     観光地周辺の交通渋滞を防止するため、道路交通情報通信システム(VICS)の整備を推進する。

    3交通規制等
     都市間幹線道路、観光地道路等における交通の安全と円滑を図るため、長距離にわたる追越しのための右側部分はみ出し通行禁止規制区間については、速度の遅い車が後続車に進路を譲ることができる登坂車線、付加車線(ゆずりあい車線)等の設置を促進する。

    4高速道路の事故防止
     高速道路利用者は年々増加しており、特に春秋の行楽期や旧盆期、年末年始に高速道路の利用が集中し、これに伴う交通事故や交通渋滞が発生している。このため、パトロール活動を強化し、高速運転安全5則の励行を呼びかけ、シートベルト着用の徹底を指導するほか、著しい速度超過等の取締りを強化する。また、ドライバーのニーズに応じた適切な交通情報を提供するなど、高速道路における交通の安全と円滑の確保に努める。
     また、総合的な交通安全対策を実施する観点から、一般道路における計画とも連携を図りつつ、高速自動車国道等における交通安全対策に関する事業計画に基づき、交通安全施設の整備を計画的に進めるとともに、渋滞区間の拡幅、道路交通情報の提供等を積極的に推進する。

    5行楽地等の交通事故防止対策
     行楽期等においては、行楽地等において、交通事故や交通渋滞が発生しているため、必要に応じた交通規制、交通整理に努めるとともに、交通事故の発生状況等を踏まえた効果的な交通指導取締りを推進する。

    6自動車運送事業の安全の確保
     輸送の安全確保は、運送事業者の使命であることから、運行管理・車両管理の適正化の徹底を推進する。特に運行管理制度について、改正道路運送法により、バス、ハイヤー・タクシーについても運行管理者試験制度を導入するとともに、自動車事故報告規則の改正による事故実態の把握の充実及び死亡・重傷事故等を惹起した運行管理者に対する特別講習制度の導入等により安全運行の徹底を図る。
     また、整備不良車の運行を防止し、自動車事故の低減を図るため、「自動車点検整備推進運動」及び「不正改造車を排除する運動」を全国的に展開するなど、自動車の使用者に対して広報に努める。

    3)航空保安施設の整備等
    1  航空路施設としては、洋上空域等における航空交通の安全性、効率性及び管制処理能力の向上を図るため、衛星を利用した航空管制等を行うための航空衛星システムの整備を推進する。
     さらに、秋田県に洋上航空路監視レーダーを新設する等、航空路監視レーダーの性能向上整備を進めるとともに、方位・距離情報提供施設について、いわき等8か所の性能向上整備を進める。
    2  空港用施設としては、中部国際空港等8か所において空港監視レーダー及び新東京国際空港等7か所においてターミナルレーダー情報処理システムの新設又は性能向上を進める。
     また、能登空港等15か所に計器着陸装置、新北九州空港等22か所に方位・距離情報提供施設、東京国際空港等40か所に精密進入用灯火等の新設又は性能向上を進める。

    4)海上交通
    1安全確保
     海上交通の安全を確保するため、その違反が海難の発生に直接結び付くおそれのある海事関係法令の励行に重点を置き、あらゆる機会を通じて指導取締りを実施する。特に、海洋レジャー活動が活発化する時期等には、旅客船、カーフェリー、遊漁船、海上タクシー等を重点に全国一斉の安全指導を実施するほか、海上輸送活動が活発化する年末年始には、これらの船舶に対する全国一斉の指導取締りを実施する。
     船舶の安全かつ能率的な運航を確保するため、航路標識の新設及び改良改修を計画的に推進する。
     旅客船等の安全を確保するため、運航監理官による乗船監査、事業所監査、運航管理者研修等を実施することにより、運航管理規程の遵守、安全意識の高揚等運航管理の一層の適正化を図る。
     旅客船等の海難防止については、海上交通関係法令等の遵守、緊急時の避難・救助訓練の実施等について指導を行う。
     プレジャーボート等の海難防止については、海難防止講習会の実施等により、気象・海象情報の的確な把握等事故防止指導を行う。
     また、民間有志による安全活動の育成を目的とした海上安全指導員制度を推進するとともに、小型船安全協会等民間団体の自主的な安全活動を積極的に支援する。
     さらに、不幸にして事故に遭遇した場合は、救命胴衣の着用が生存率を向上させるため有効であることから、平成12年に引き続き、救命胴衣の常時着用、連絡手段の確保(防水パックに入れた携帯電話等の携行)、緊急通報用電話番号「118番」の有効利用を三つの基本とする「自己救命策確保キャンペーン活動」を推進する。
     遊漁船の海難防止については、「遊漁船業の適正化に関する法律」に基づく種々の安全対策の徹底を図るため、全国遊漁船業協会が開催する事故防止講習会等の場を活用しつつ機会あるごとに関係者に対する安全指導を行う。
     そのほか、航海用電子海図等の整備を進めるとともに、電子水路通報を発行する。
     なお、(財)日本水路協会において、航海用電子参考図の更新版を発行する。
     また、安全性、利便性の面で質の高いマリーナの普及を図るため、施設のみならず管理・運営の面でも優れたマリーナを認定する優良マリーナ認定制度を活用して利用者に対する安全対策の充実を図る。

    2 海難救助体制
     海難が発生した場合に迅速、的確な救助を行うため、巡視船艇、航空機によるパトロールを実施するほか、巡視船艇・航空機、情報通信網等の整備を推進する。また、世界的な枠組みの中で、捜索救助に関して隣接国との協力連携を強化する一方、日本の船位通報制度への参加促進とその有効な活用、特殊救難体制、救急救命体制及び洋上救急体制の充実強化、さらには沿岸部に空白のない救助体制を構築するため民間による救助体制の整備に対して積極的に支援、指導を行い海難救助体制の強化を図る。

     

  2. 宿泊施設等における安全対策
    (1)火災防止対策
    1
    宿泊施設
     旅館、ホテル等のうち、特に既存不適格建築物については、当該建築物の安全性を確保するため、建築物防災週間等の機会をとらえて防災査察を実施し、改善指導に努めるとともに、一定規模以上の旅館、ホテル等に対しては「建築基準法」に基づき定期的に維持保全の状況について調査報告を求め、防火・避難上の安全の確保を図る。
     自動火災報知設備、屋内消火栓設備及びスプリンクラー設備等の主要な消防用設備等が未設置である悪質な「消防法」の違反の旅館・ホテル等に関して早急な是正指導の徹底を推進するとともに、防火基準適合表示制度(いわゆる「適マーク制度」)による「適マーク」未交付の旅館・ホテル等について不備事項に関する是正指導の促進を行い、これらの旅館・ホテル等における防火安全体制の確立を図る。
     また、消防用設備等の設置及び適正な維特管理の推進を図るとともに、火災発生時における旅館・ホテル等の従業員等の初動対応能力の確立、防火管理体制が最も手薄となる夜間の防火安全体制の整備、高齢者、視聴覚障害者等に対する火災安全対策の推進などを通じた旅館・ホテル等における実態的な防火安全体制の充実及び維持の徹底を促進する。

    2 林野
     全国山火事予防運動実施期間(3月1日〜7日)及び4・5月の林野火災多発時期を中心にポスター、テレビ、新聞等による広報を行い、防火思想の啓発・普及に努めるとともに、監視パトロールの実施等の出火防止対策を推進し、さらに、林野火災防御訓練を実施するなど、林野火災の総合的な予防対策を強化する。
     また、林野火災に対する消防力の充実強化を図るため、防火水槽等の整備に努めるほか、近隣都道府県のヘリコプターによる応援出動を積極的に実施するなど広域的な対応力の強化を推進する。

    2)食品衛生対策
     「食品衛生法」に基づき、必要に応じ、食品、添加物等の規格基準の設定等従来から実施している施策を推進するほか、食品衛生監視体制の充実、試験研究体制の整備拡充を行うとともに、営業者の衛生上講ずべき措置の基準の運用を強化し、飲食による衛生上の危害の発生の防止に努める。
     なお、旅館、飲食店等に対しては、その衛生整備の設置改善等に要する資金について、引き続き国民生活金融公庫及び沖縄振興開発金融公庫から融資を行い、衛生水準の向上の推進に努める。

     

  3. 観光地における自然災害防止対策の推進
     土砂災害が発生しやすい環境にある観光地については、砂防工事等を強力に推進するとともに、火山噴火警戒避難対策事業等の警戒避難体制の確立等のソフト対策をあわせて実施することにより総合的な土砂災害対策を推進し、安全度の向上と併せて地域活性化を促進する。
     また、幹線道路と主要鉄道が平行している等の交通が集中する地域や被災時に孤立化の危険のある箇所における土砂災害対策を推進するとともに、道路防災総点検にもとづく道路の防災、震災、雪寒対策を推進する。
     さらに、観光地の周辺の森林について、山崩れなど山地災害を防止するための治山事業を推進するとともに、特に良好な自然環境を有する地域等において、環境保全保安林整備事業を実施することにより、安全の向上と併せて自然景観等の観光資源の向上に寄与する。

  4. 気象等の情報の提供
     観光旅行者の安全を確保するため、気象、地象、水象に関する観測・監視体制の強化及び予報・警報等の精度向上、迅速かつ的確な気象情報の提供を推進する。
     また、インターネット等を活用した道路の災害情報の提供を推進する。

    1)台風・集中豪雨雪等観測予報体制の強化
     台風・集中豪雨・豪雪等の自然現象を早期かつ正確に把握するため、気象観測施設、気象レーダー観測網等の更新を行う。
     平成12年度末に更新した解析予報システムを活用して、台風強度予報を48時間先まで延長するなど、台風・集中豪雨雪の監視・予報の高度化を図るとともに、週間天気予報の予報の信頼度に関する情報を付加し、予報の精度に応じた利用に供する計画である。
     また、防災気象情報の高度化及び迅速な伝達のため、沖縄気象台管内の気象資料伝送網を更新する。
     さらに、出水・渇水時における雨量、水位の情報はもとより河川・流域に関する情報を積極的に活用するため、インターネットや携帯端末等により国民へのリアルタイムの観測情報を提供し、また、(財)河川情報センターを通じ、地方公共団体、報道機関等に対して情報提供を行う。
     土砂災害等の頻発する地域においては、土砂災害を防止するため、監視装置の設置などITを活用した情報基盤の整備を行い危機を的確に把握し、警戒避難体制の一層の整備を推進する。
     また、河川管理者及び関係機関の連携による河川利用に関する各種施策の実施等により、河川利用者の自己責任や河川の自然性を踏まえた適正な河川利用、出水時等における安全確保を推進する。

    2)地震・火山対策の強化
     地震、火山の活動状況を把握し、迅速・的確に情報を発表する。また、地震に関する基盤的調査観測データの収集の推進及び火山に関する関係機関の観測データ・情報の共有化等体制の強化を図る。
     また、地震調査研究推進本部の方針のもと、全国的な地震調査観測施設の整備を推進する。
     さらに、地震予知・火山噴火予知に資するため、引き続き海底地殻変動観測システムを整備するとともに、引き続き沿岸海域海底活断層調査等を実施し、観測・解析技術の開発研究を推進する。
     地震の発生に備えた対策としては、緊急輸送道路において、橋梁等の耐震対策を進め、地震による被害の低減を図るとともに円滑な復興・復旧を支援する。
     加えて、火山砂防計画の策定及び砂防設備の整備並びに火山噴火に対する火山災害予想区域図の作成、監視装置や情報伝達装置の設置等の対策を実施し、総合的な火山砂防事業を推進する。
     また、災害時の道路の点検結果や被災状況等をインターネッ卜等で提供することにより道路の災害情報の迅速な提供を進める。
     特に平成12年に噴火し甚大な被害をもたらした有珠山及び三宅島については、火山砂防激甚災害対策特別緊急事業(平成13年度新規事業)等により、緊急的に火山災害対策を実施し、被害の最小限化を図る。

    3)海洋気象業務の強化
     海況・波浪・高潮等の実況把握・予測体制の更なる充実など海洋気象業務を強化し海難防止に努める。また、日本付近の気象や海況変動とも関わりの深いエルニーニョ現象の動向を監視・予測するとともに、地球規模の高度海洋監視システム(ARGO計画)を推進することにより、気候予報の精度向上等を図る。
     さらに、航路標識等において観測した風向、風速等局地的な気象・海象の情報をインターネット等で提供することなどにより、海難防止に努める。

  5. 遭難防止と救助対策の推進
    1)山岳遭難の防止対策
    1救助体制の強化・充実
     山岳救助隊等を設置し、計画的な救助訓練を通じて救助技術の向上に努めるとともに、救助活動用装備資機材を整備拡充するなど、救助体制の強化、充実を図る。

    2 安全登山の啓もう等
     山岳遭難の発生実態を把握、分析して、インターネットをはじめ、各種の広報媒体を通じ、国民に対し広く安全登山の注意を喚起するとともに、登山者及び関係団体等に対して、山岳情報の提供、登山計画書の提出の勧奨、安全指導等、安全登山の指導啓もうを推進する。また、関係機関、団体と連携して登山道における危険箇所の点検、道標の整備及び拡充に努める。

    2)水難の防止対策
     迅速かつ的確な水難救助を図るため、水難防止講習会等あらゆる機会を通じて、事故防止指導や救助訓練を実施するとともに、水上におけるレジャー活動の活発化する時期及び水域を考慮し、船舶・航空機を効果的に配備するなどの措置を講じる。特に、夏期における水難防止対策については、水難防止の呼び掛け、安全指導、安全な遊泳場所の確保、施設の整備、危険箇所の標示設定、緊急救助体制の確立等の諸対策を推進するとともに、特に人出や水難の多い場所に臨時警察官派出所等を設置し、常時監視体制を強化するほか、海浜パトロール、船舶・航空機による水浴場付近水域の監視活動を行う。

    3)避難体制の確立
     観光旅行者に対し、災害危険箇所及び避難場所・避難路などについて、周知するよう引き続き地方公共団体に要請する。
     また、災害危険性のある観光地を有する地方公共団体を重点に、事前に避難路及び避難計画を定め、観光地及びその周辺地域の避難誘導標識の設置、確実な情報伝達が可能な防災行政無線の整備など、避難誘導体制全般の整備促進を図る。さらに、防災関係機関との連携の下に、観光旅行者の存在も想定した防災訓練を定期的に実施するよう要請する。

     

  6. 自然災害への対応と観光需要の喚起
     
    平成12年3月の有珠山の噴火により被害を受けた北海道、同年6月の三宅島の噴火等により被害を受けた伊豆諸島等及び同年10月の鳥取県西部地震により被害を受けた鳥取県・島根県等においては、災害後の観光振興について必要な支援を行ったところであるが、今後とも引き続き自然災害があった際の風評被害等に対応し、必要に応じ、地元自治体、観光関係事業者等と連携し、観光促進キャンペーン等の観光需要の喚起のための支援を実施することとしている。