(持続可能な暮らしを支える「医・職・住」)
全国的な人口減少が進行していくことを前提とすれば、地域の活性化方策としては交流人口の拡大が主な関心事項になろう。この交流を生み出すためには、「元気」な地域の人々が積極的な交流への取組みや個性的なアイデアの創出・実践などを行うことが必要であるため、その地域において生き生きとした生活を送る土台が築かれていることが重要となる。この視点を展開すれば、地域内外を問わず居住対象として人々を引きつけるという意味における「持続可能な暮らし」に向けた生活環境づくりを行うことが地域の活性化のためには不可欠ということになる。なお、文脈から分かるように、ここで言う「持続可能な暮らしに向けた生活環境づくり」とは人口増加を前提とした宅地開発などの居住空間の「容量」の拡大を指すのではなく、後に見るように「地域の魅力」を増大させる基盤を整えることである。
さて、人口減少の及ぼし得る影響について上で見てきたが、ITの進展などによる生産性の向上等に期待すれば我が国の経済に対する影響については悲観的になる必要はなく、逆に大都市等においては空間の余裕が生まれることにより都市生活の向上が期待されるなどの良い面での影響も考えられ、人口減少自体は「国家の成熟化」に伴う安定化に向けたプロセスと認識することもできる。むしろ、この問題の本質は、現状のままでは人口集中の進む地域と人口減少の進む地域の二極化が加速される結果、全国の人口減少傾向とあいまって国土の大部分が過疎化し、社会資本を含めた国土の有効な利用が図られずに我が国の活力・競争力が低下する可能性があるということである。個人の価値観の多様化や社会環境の変化に伴い、個人は自分の生まれ育った地域・社会にとらわれることなく、ライフスタイルに応じた生活空間を求める傾向が強くなっているが、地方分権が進むことによって地方公共団体間のサービスの差が拡大し、さらにITの進展によって居住地の制約が少なくなる可能性などの後押しにより、「足による投票」の動きが我が国でも本格化することが考えられる。本来「足による投票」とは個人が自分の好みに合う公共サービスを受けられる地域に自由に移り住むことであり、現在居住する地方公共団体のサービスを含めた政治を選挙を通じて変えるよりも簡易かつ現実的であることからこのように呼ばれているが、ここでは公共サービスに限定することなく生活環境を含めた居住地域の選択を行うことを指している。この「足による投票」によって選択される地域であることが、全国的な人口減少に伴う地域間競争の時代において目指すべき姿となる。
それでは、地域の人々が生き生きとした生活を送り、また、「足による投票」によって選択される「魅力的な地域」とはどのようなものなのか。ここでは、生活環境づくりの視点から、個々人が地域で生活を営むための基本要素が「衣・食・住」であることに対する概念として、地域が活きていくための基本要素、すなわち地域が活性化し今後安定的な成長を遂げ持続していくための基本要素を「医・職・住」とし、その地域に人々が持続的に住むための「医・職・住」に地域ごとに特色のある他のサービス(「遊・学」など)を付加しその充実を各地域が図っていくことにより、「魅力的な地域」として発展していくことを期待したい。