(シビック・トラスト活動)
「シビック・トラスト」は英国のロンドンに本拠地を置く独立の慈善団体であり、1957年に設立された。法人格を持たず、法律等の設立根拠はない。収入は、産業界からの寄付金、政府等からの助成金、出版収入、個人会員等からの会費等による。「シビック・トラスト」は、地域の環境の中でも「築かれた環境(built environment)」に重点を置き、人々が生活し、働いている地域に愛着を持ち、市民の自発的な活動によりその世話をすることを目指している。「シビック・トラスト」と同種の目的を持った活動を総称して「シビック・トラスト活動」と呼ぶ。
英国では従来から、公益信託方式(トラスト方式)により、一定の財産(不動産等)について、公共的な目的のために、責任をもって公正に管理する主体を設定し、財産の提供者との信頼関係の下、公的な機関の監督に服しつつ、財産を公共的に活用する手法が用いられている。「シビック・トラスト」においても、「シビック・トラスト」に登録をしている「地域アメニティー団体」(平成9年時点で約900団体が存在)を中心に、不動産を買取り又は受贈等により取得し、快適で心地よい環境を生み出し、一般に開放するなどしている。
我が国では、平成7年の都市緑地保全法の改正により、地方公共団体又は緑地管理機構と土地の所有者との契約に基づき、都市内に残された貴重な緑地を保全・管理するとともに、これらを周辺住民が利用できる緑地として公開する制度(市民緑地制度)を創設した。その際、一定の緑地整備・管理能力を有する公益法人について、緑地管理機構として指定し、地方公共団体と同様に市民緑地の整備・管理主体として位置付けることで、民間団体による自発的な緑地の保全、緑化の推進を支援している。
〈緑地管理機構((財)せたがやトラスト協会)の取組み〉
(財)せたがやトラスト協会(以下、「せたがや協会」とする。)は、区民や企業等の参加、協力を得ながら世田谷区に残る自然的環境、歴史・文化的環境を守り、やすらぎとうるおいのある世田谷のまちづくりに寄与することを目的として、平成元年4月に設立され、同年10月に財団法人となった。平成8年には、都市緑地保全法に基づく「緑地管理機構」の指定を東京都知事から受けた。
せたがや協会の運営は、区からの補助金と個人、家族、法人、グループ単位による会員からの会費や土地、家屋などの寄付により賄われている。
せたがや協会の活動としては以下のとおり。
1) イベントの開催や調査研究
2) 緑化活動の支援
3) 環境を守るためのボランティア、インストラクターの育成
4) 都市緑地保全法上の「市民緑地制度」を活用し、屋敷林など優れた緑地を所有している個人とせたがや協会が保全契約を締結した上で、せたがや協会が緑地を良好な状態に維持するための樹木の枝打ち、下草刈り、病害虫の防除等の管理を行っているほか、緑地を一般に公開している。現在では3ヶ所の緑地がせたがや協会により管理されている。
5) 世田谷区が指定した特別保護区の維持管理や保存樹木・樹林地の管理支援の受託を行っている。現在では3ヶ所の広場、庭園の管理を受託している。
*緑地管理機構制度
平成7年の都市緑地保全法の改正により設けられた制度。都市における緑地の保全及び緑化の推進を目的として設立された民法第34条の法人の申請により、「緑地管理機構」として都道府県知事が指定する。
緑地管理機構の業務は
1) 市民緑地の設置・管理、都市計画区域内の緑地の買取り及び買い取った緑地の保全
2) 緑地の保全、緑化の推進に関する情報・資料の収集と提供
3) 緑地の保全、緑化の推進に関する助言、指導
4) 緑地の保全、緑化の推進に関する調査、研究
とされており、民間の活力を用いて都市の緑化を推進することとなると期待される。
現在では2団体が指定されている。
