(市民による景観向上のための直接資金投資)

 まちの景観を向上させるために、市民が直接に資金を投資して実現した例もある。古くは文政時代に、大分県の豪商3人が領民が年貢米を運ぶ際に交通の難所である三重川の柳井瀬を渡る苦労を思いやり、私費を投じて石橋を架けた、ということもある。3人は私財投入によって身代が傾き、没落するのだが、彼らの努力の成果が今なお人々に利用され、また歴史的景観となって親しまれている虹澗橋であり、単独アーチ型の石橋としては県下最大規模をもつ県指定の有形文化財となっている。このように、市民による直接の資金投資によって、利用する方々に親しまれる景観を作り上げることも可能なのである。
〈釧路川の幣舞橋の彫像〉
 釧路川は屈斜路湖に源を発し、釧路湿原を形成して太平洋に注ぐ、港町釧路を育んできた川であり、その最下流に架かる幣舞橋は釧路の町の発展を支えてきた。幣舞橋は豊平川に架かる豊平橋、石狩川に架かる旭橋とともに北海道の三大名橋と呼ばれており、明治22年に釧路に最初の架橋が誕生して以来、厳しい自然環境により数度の建替え工事が必要とされた。最初の架橋は当時の資金不足から地元企業による投資で実現し、また昭和27年の十勝沖地震の揺れや津波にも耐えて、人々は橋を渡って高台に避難することができた、というように、市民との思い出の深い橋であり、心の支えとなる橋であった。昭和50年の建替え(最終)に際しては、広く市民から、どのようなイメージの橋にするべきかの意見が市民に求められ、市民の意見によって橋脚上に4基の彫像を設置することが決められた。しかし、財政状況により資金計画が難航し、一時は彫像の資金が調達できずにいた中で、4基の彫像に関しては市民からの全額募金により賄うこととなり、1年余りの募金活動の結果、5,200万円もの資金が集まった。このような市民の投資によって、現在の美しく芸術性溢れる幣舞橋が実現している。
〈中心市街地の活性化を行っているアメリカのNPO〉
 アメリカでは、地域の産業を活性化させることを目的とした環境整備を行うBID(Business Improvement District)が中心市街地を活性化させることに役立っている。BIDは非営利団体であり、設立に際しては市政府の認可を必要とし、その活動は市政府の監視を受ける。BIDは治安維持、清掃、公的施設の管理などの行政上乗せ的なサービスや、マーケティング・サービスなどを独自に地域に提供し、その活動に必要な資金は、州法及び市条例に基づいて地区内の不動産所有者から負担金という形で徴収する。
 BIDの活動に対する不動産所有者の反応は良く、BIDによる中心市街地活性化は高い効果をあげているといえる(図表4-2-12)。

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