ウィリアム・メレル・ヴォーリズ(一柳米来留)

 アメリカ人ウィリアム・メレル・ヴォーリズ(1880〜1964)は、1905年に滋賀県近江八幡市に英語の教師として来日し、その後、1908年に建築設計監督業を始め、全国に教会、学校、病院、住宅、商業施設など1,600余りの建築物を手がけたとされている。日本国籍を取得(1941年)し、大戦中も日本に留まり、1958年近江八幡市名誉市民第一号となった。その建築作品は、西洋建築を積極的に取り入れながらも、華美な装飾をさけ、日本の気候風土や住習慣に適応させた実用性の高い素朴な建築が多く、長い歳月を経た現代においてもなお評価が高い。また結核療養所や保育所などにも取り組み、広く社会公共の事業に貢献し、勲三等瑞宝章を受章した。


 「建築主任であっても、新しい建築を引き受ける場合には、建物と敷地の釣り合いとか、その家に住もうとする人の生活様式や職業などを理解するために、十分時間をかけて研究しなければならない。そうでなければ、たとい建築家の評判を高めるような、壮大な建物を作ることができても、かんじんの中に住む人は、建築家の幻想の所産にすぎない芸術作品のおかげで、自分らの生活や職業を、その建築物に合わせて調節せねばならないという不便な結果になってしまう。」
「失敗者の自叙伝(昭和45年)」より
 「何か変わっていて、人を驚かすような、異様な、グロテスクな、怪物的なものでさえあれば、“現代的”な建築であると思いこむ人があまりにも多くなってきた。こうして、到るところにそのような建物の数かぎりない見本が建てられつつある。」「建物の風格は人間の人格と同じく、その外見よりもむしろ内容にある。」
「W.M.Vories & Company Architects(昭和12年)」より

 「もっとも重大な問題は育児室です。家を建てるのは、現在の自分のためもありましょうが、大方は将来のため、子供のためにする。これが中心目的です。」「私は、現在の家でも、古い悪い昔の形にできた日本家でも、充分理想的なものに改造することができると思います。殊に田舎の家が容易に改築できます。」「わずかな頭の使い工合で、同じ面積、同じ壁、同じ高さ、同じ屋根、古いそのままに、理想的とは言わないまでも、これ位便利な家ができるのです。それが建築の特徴です。…ですから修繕の問題は、経済の方面から、生活上便利の上から、至極大事なことであって…」
「吾家の設計(大正12年)」より
 〜育児室や建築物の修繕が大事であるという言葉は、少子化が進むとともに、耐久性の高い住宅ストックやリフォーム市場の整備が必要な今後の状況においても参考となる。

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<主な作品>
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