(国際競争力確保の上で不可欠な環境問題の視点)  国際競争の中で経済発展を考える際にも、現在地球規模の環境問題を無視できない状況となっている。我が国においては、経済発展のために大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会を構築した結果、環境に対して大きな負荷となり、その影響が我々の経済活動や日常生活だけでなく生存基盤までも脅かすということを認識させられてきた。つまり、健全な国土なくしては経済的発展もあり得ないという当然のことをようやく自覚するに至ったのである。世界的にも、地球環境問題が人類共通の優先課題と認識される中、国レベルで環境問題に積極的に取り組むことが国際競争に参加する前提条件となっている。例えば、地球温暖化については、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の第2次報告書(1995年)において、「2100年には全地球平均気温で1.0〜3.5℃上昇し、その結果海面水位は15〜95cm程度上昇する」という推計等の影響が示され、このような事態を回避すべく温室効果ガス(二酸化炭素、メタン等)の削減に向けて国際的な取組みが行われている。海面上昇一つとっても島国である我が国にとっては影響が大きく、砂浜等貴重な国土の消失やそれに伴う植生、生態系への悪影響、水資源への影響、氾濫域の拡大等が生じ得る重大な問題であり、住宅・社会資本分野においても、住宅・建築物の断熱化等による省エネルギー化、自動車交通の円滑化によるエネルギー効率の向上、二酸化炭素排出の少ない都市構造の形成等の取組みを行っている。特に大都市圏の都市では高密度のエネルギーが消費されることと地表の大部分がコンクリート等で覆われ水分の蒸発が妨げられることとが相まって気温が高くなるヒートアイランド現象が引き起こされ、都市生活に一層のエネルギーの消費による二酸化炭素の排出を促すという悪循環を形成しているが、景観だけでなく地球温暖化防止の観点からも、気温上昇の抑制に効果のあるとされる緑や水空間に配慮したまちづくりを行うことが求められよう。  また、幹線道路の沿道環境は、騒音、大気とも厳しい状況が続いており、その改善のため、自動車単体対策、低公害車の普及、交通流対策、道路構造対策などの総合的な取組みを関係機関等が協力して進めることが必要である。  一方、企業や国民個々人においても環境に対する明らかな意識の改善の動きが見られる。これは平成11年の夏以降我が国でも発売されている「エコファンド(環境への配慮の度合いが高く、かつ株価のパフォーマンスも高いと判断される企業の株式に集中投資する投資信託)」の好調や、企業等のISO14001(環境を維持し継続的に改善する仕組み(環境マネジメントシステム)に関する国際規格)の認証取得数の急増などに示されている(図表2-1-21)。エコファンドについては、消費者の環境に対する意識の高まりのみならず(図表2-1-22(a))、環境配慮度の高い企業は成長するというイメージを多くの投資家が認識するようになったことが人気の理由と考えられる(図表2-1-22(b))。また、ISO14001の認証取得の増加は、こうした消費者の環境意識の高まりを企業が意識した表れであるとともに、企業自身が環境対策を制約条件ではなくコスト削減、顧客の確保、環境技術の開発等を通じた競争力強化の要因であると認識するようになったことによると見られている。このように、環境と経済の結びつきの強まりは個々の企業活動においても見られるところである。  これらに見られるように、我が国においても環境に対する意識が着実に醸成されつつあるが、今後は目先の利益にとらわれるのではなく、国、地方公共団体、企業や住民が協力することによって、環境と共生し、持続的な発展が可能となる国づくり・まちづくりを行い、「魅力的な国」の形成を実現する段階に入っており、住宅・社会資本の果たし得る役割は大きい。  なお、ここで述べた環境に関する具体的な取組みについては、「第2 国土建設施策の動向」の「I 環境政策の展開」を参照されたい。