4 住民による主体的な活動  これまでも、住民の主体的な活動がまちづくりを支えてきており、町内会、自治会等の地域に根ざした団体のきめ細やかな活動により、その区域の住民相互の意志を調整し、良好な地域社会の維持・形成のためのコンセンサスの形成や様々な町内美化の活動等が進められ、地域の核として活躍されてきた経緯がある。  自治省の調査(「地縁による団体の認可事務の状況等に関する調査結果」(平成8年度))によると、町内会、自治会等地縁に基づいた団体は名称も活動範囲も多様であるが、全国で29万3,227団体ある。これらの地縁団体は市町村の区分けよりもさらに細かいエリア(町の○丁目単位)により構成されており、より地域密着型で住民のニーズを取りまとめ、活動に移す機能を担っていた。  地方自治法の平成3年の改正(注)により、これらの団体は市町村長の認可を受けることで法人格を取得し、不動産等の登記上の権利を取得することなどが可能となった。認可を受けた団体は平成8年で8,691件存在する。また、この認可を受けた地縁団体の活動としては、「住民相互の連絡(回覧版、会報の回付等)」(89.1%)、「集会施設の維持管理」(81.8%)が多いが、「区域の環境美化、清掃活動」(87.0%)を行い、美しいまちなみを保つことに貢献してきたほか、「スポーツ・レクリエーション活動」(35.9%)、「文化レクリエーション活動」(36.1%)、「盆踊り、お祭り、敬老会、成人式等の行事開催」(29.2%)など、地域コミュニティを結束し、地域のアイデンティティや地域への帰属感・一体感を高めるための活動主体としての役割を果たしてきた(図表4-2-7)。  しかし、近年では、昔ながらの町内会・自治会と別途に、地域横断的な組織の活動が顕著になってきている。特に、まちづくりなど、近隣の住所を範囲とした活動ではなく、住民の生活圏を視野に入れたより広範囲での活動が望ましい場合もある。また、町内会・自治会等は住民生活に密着した幅広い分野を活動内容としているため、個別のテーマを専門的に深く追求していく場合には、ある目的に特化した団体の方が目的に照らした機動的な動きが可能であり、その目的を達成するための活動に共感を覚える人々を広く集めることができる利点もある。  また、東京都が、「町内会・自治会が抱える問題点」を都内の町内会・自治会及びその連合会2,889団体に調査したところ(図表4-2-8)、「役員の引き受け手がいない(66.5%)」「役員の高齢化・固定化(44.8%)」をあげる団体が多く、町内会・自治会活動の中心的存在が弱体化していることが分かる。また、東京都は、平成12年(2000年)時点では全国平均よりも65歳以上の高齢者の全住民に占める割合(高齢化率)が低いが、平成22年(2010年)以降は全国水準を上回る高齢都市となる(図表4-2-9)。このような全国平均よりも早く高齢化が進行すると推計される中で、将来の町内会・自治会活動の停滞が危惧される。  現在では、NPO、ボランティア等脱地縁的で、活動の目的を「まちづくり」「環境」「福祉」などに限定した「テーマ・コミュニティ」が広がっており、近隣を越えた広い範囲の住民活動主体が、今後、まちづくり・景観づくりにおいて活躍されることを期待する。  ここでは、このような住民が主体となって景観を保全するために取り組んでいる例を海外の事例・制度を含めて以下に紹介してみたい。 (注)地方自治法(昭和22年法律第67号)(抄) 第260条の2 町又は字の区域その他市町村内の一定の区域に住所を有する者の地縁に基づいて形成された団体(以下本条において「地縁による団体」という。)は、地域的な共同活動のための不動産又は不動産に関する権利等を保有するため市町村長の認可を受けたときは、その規約に定める目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。