(2)21世紀に向けた建設技術の新たな展開 イ 技術研究開発の推進の必要性  建設分野における技術研究開発は、広範な分野の技術を総合したものであるため、その技術研究開発の成果は、国民生活、経済活動等に大きな波及効果をもたらすものである。この認識のもと、政府の総合的な科学技術政策に関わる動向を絶えず先取りしつつ、建設技術開発の推進を図ることが重要であり、常に新しい視点、例えば、人文科学、社会科学を含めた総合的な科学技術政策の観点等から建設技術政策のあり方を見直し、新たな展開を図ることが必要である。 ロ 建設分野における技術研究開発の方向性・目標  建設分野における技術研究開発は、以下に示す方向性・目標に向かって、積極的に推進している。 1) 安全と安心の確保  地震、台風等の自然災害、交通事故、労働災害、犯罪等の日常生活上の危険や障害の発生防止に努めるとともに、これらの発生を前提にした対策を講ずることにより、全ての人々がやすらぎのある安全で安心した暮らしを送ることのできる社会システムを構築すること。 2) 経済活力の維持 イ)低コスト社会の実現  我が国社会全体が有している高コスト構造を是正し、経済的で効率的な暮らしやすい社会を維持・発展させること。 ロ)新規産業の創出等による雇用機会の確保  産業の空洞化等に対応し、良質の雇用機会を確保していくため、高付加価値型の新規産業を創出する社会環境を構築していくこと。 3) 自然生態系と地球環境の保全・回復  野生生物の多様性の確保を図るなど地域における自然生態系を保全・回復し、良好な生活環境を確保すること。  また、地球温暖化、オゾン層の破壊、砂漠化の進展等の地球規模での環境問題への対応を図り、人類の生存基盤を確保すること。  その際、国際的な連携・交流を視野に入れるとともに、環境問題に取り組むNGO、NPO等との適切な連携を図り、その蓄積した各種ノウハウ等の活用を図ること。 4) 多様な価値観等の尊重 イ)人間らしさの尊重  誰もが健康で生き甲斐を実感できるとともに、ライフサイクルに応じて充実した生活を営むことができ、憩い、ふれあい、くつろぎ、感性も重視されるなど、快適な生活環境の下、各人の価値観に応じた人間らしい生活を享受できる社会を構築すること。 ロ)伝統、歴史、文化、自然等を尊重した地域らしさ、日本らしさの醸成  地域住民の主体性の下、歴史・伝統・文化、風土・自然等に根ざした地域の個性が尊重され、いわゆる「まちの顔」が確立されること等により地域らしさが醸成されるとともに、一人一人が「日本らしさ・日本のよさ」を再認識し、これに喜びや誇りを感じることができるような社会を構築すること。 5) 多様な交流・連携のための情報化、ネットワーク化の推進  地域交流・連携を支える人流・物流インフラが整備、管理されるとともに、新たな交流・連携手段としての情報通信インフラがマルチメディア等の様々な手段により整備された社会を実現すること。 6) 国際社会への貢献  地球環境問題等への対処、発展途上国に対する支援等の国際貢献を充実するとともに、国際標準化の動きとの協調を図る等、我が国の国際社会における位置・立場に応じた適切な役割を果たしていくこと。